説明

抗原賦活化液、抗原賦活化方法及び細胞の検出方法

【課題】細胞を破損することなく、抗原を賦活化できる試薬及び方法を得ることを課題とする。
【解決手段】非架橋型固定化液を用いて液相固定された細胞の抗原を賦活化するための、水素結合切断剤である尿素を含有する抗原賦活化液、及び該抗原賦活化液を用いる抗原賦活化方法。更に該方法により賦活化された抗原を認識しうる抗体を用いて、該抗原を有する細胞を免疫染色する段階を含む、細胞検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非架橋型固定液を用いて液相固定された細胞が有する抗原を賦活化するための抗原賦活化液、抗原賦活化方法、及び細胞の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疾患の診断方法として、喀痰、尿、胸水、腹水、胆汁、穿刺吸引液、子宮頸部から採取した試料などの検体に含まれる異常細胞を検出して診断する細胞診が知られている。これら検体中の異常細胞は、色素による染色や免疫染色後の顕微鏡での観察、フローサイトメータによる検出などの方法により、形態や染色状態などの情報に基づいて検出される。
細胞診では、病院などの臨床現場で採取された検体中の細胞をできるだけ採取されたままの形態に保ち、検査時に染色等の処理を施して顕微鏡観察や各種分析が行われる。よって、検体中に含まれるタンパク質分解酵素などの影響を受けないようにして、細胞を採取されたままの状態に保存することが重要である。このような保存は、通常、細胞を固定することにより行われる。
細胞の固定方法の例として、ホルムアルデヒド、アルコールなどを含む液体中で細胞を保存する液相固定が知られている。
【0003】
固定された細胞を、例えば標識抗体を用いて免疫染色する場合、固定された細胞の抗原を露出させて抗体の結合を可能とするために、抗原賦活化が行われることが知られている。
例えば、スライドグラス上でホルマリン固定された細胞の抗原賦活化のために、メチル無水マレイン酸を用いる方法が、特開2002−350430号(特許文献1)に開示されている。
しかし、上記のような従来の抗原賦活化の方法では、固定された細胞に対して60〜121℃まで加熱して抗原を賦活化する必要があるが、特に液相固定された細胞の抗原賦活化の際には熱によって細胞が破損することがあり、正確な診断を行うことができなくなる可能性があった。
【特許文献1】特開2002−350430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の現状に鑑み、細胞を破損することなく、抗原を賦活化できる試薬及び方法を得ることを目的とする。
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するために研究を重ねる過程において、従来公知の抗原賦活化液を用いて、液相固定された試料中の細胞が有する抗原の賦活化を試みたところ、ある一定以上の温度を加えた場合に抗原の賦活化が急速に進むことを観察した。また、液相固定された試料をトリプシン、ペプシン、パパインなどのタンパク質分解酵素により処理しても、抗原の賦活化が行われないことも観察した。これらのことから、液相固定された試料中の抗原分子間、抗原分子とその近傍の分子との間、及び/又は抗原分子の周囲の分子間には水素結合が存在し、これらの水素結合を切断する(水素結合のエンタルピーを超えるエネルギーを与える)ことにより、抗原分子が露出されて(抗原が賦活化され)、抗体の抗原への結合が可能になるのではないかと仮定した。
そして、水素結合を切断できる物質を含む液体を用いることにより、加熱により細胞を破損することなく、液相固定された細胞が有する抗原を賦活化できることを見出して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水素結合切断剤を含有することを特徴とする、非架橋型固定液を用いて液相固定された細胞の抗原を賦活化するための抗原賦活化液を提供することを目的とする。
本発明はまた、非架橋型固定液を用いて液相固定された細胞と、上記の抗原賦活化液とを接触させることを含む、細胞の抗原を賦活化する方法を提供することをも目的とする。
本発明はさらに、非架橋型固定液を用いて液相固定された細胞と、上記の抗原賦活化液とを接触させて細胞が有する抗原を賦活化し;上記の賦活化された抗原を認識し得る抗体を用いて該抗原を有する細胞を免疫染色し;上記の染色された細胞を検出することを含む、細胞の検出方法を提供することをも目的とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抗原賦活化液を用いることにより、非架橋型固定液を用いて液相固定された細胞の形態を保持しながら該細胞が有する抗原を賦活化させることができる。また、本発明の抗原賦活化液を用いることにより、検体中の夾雑物を除去することもできるので、標的細胞の検出や測定をより良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の抗原賦活化液は、液相細胞診(Liquid Based Cytology; LBC)用の試料中の細胞が有する抗原を賦活化するためのものである。
本明細書において「非架橋型固定液」とは、細胞を脱水及び脱脂させ、水素結合によって細胞の抗原を安定化させる非架橋型固定剤(例えば、アルコールなど)を含む固定液のことをいう。すなわち、「非架橋型固定液」は、タンパク質を架橋することによって細胞の抗原を安定化させる架橋型固定剤(例えば、アルデヒドなど)を含む固定液とは異なるものである。なお、非架橋型固定液は、主に水素結合によって抗原の安定化を行うものであればよく、本発明の抗原賦活化液による抗原賦活化処理に影響を与えない程度の架橋型固定剤を含んでいてもよい。
また、「液相細胞診」とは、液体中に懸濁された細胞に基づいて疾患の診断を行う診断方法のことをいう。
【0009】
また、「液相細胞診用の試料」とは、例えば、液相細胞診を行うことを目的として、生体から採取した検体を適切な液体に懸濁し、次いで、固定液を加えることにより細胞を固定して調製されたものや、生体から採取した検体を直接固定液に懸濁したものなどを指す。
また、本明細書では上記のように液中で細胞を固定する方法を「液相固定」と呼ぶ。例えば、パラフィン包埋による固定などは、ここでいう「液相固定」には含まれない。
液相細胞診用の試料中の細胞は、上記のようにして固定することにより、細胞の形態を損なうことなく、例えば検査機関などに運搬され得る。
【0010】
本明細書において、「抗原賦活化」とは、固定された細胞の抗原を露出させて抗体の結合を可能とすることをいう。本発明においては、抗原賦活化により、細胞表面だけでなく細胞内の抗原とも抗原抗体反応が可能となる。
本明細書において、「固定」とは、診断用の試料の作製を目的として、細胞及び組織の形態や構造をできるだけ変化させずに保持するように処理することをいう。一般的に、ホルマリン固定、アルコール固定などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0011】
本明細書において「検体」とは、生体から採取され、いかなる処理も施していない細胞を含む成分のことであり、子宮頸部及び子宮内膜から採取した細胞、喀痰、尿、胸水、腹水、胆汁、穿刺吸引液、血液などを含む。
【0012】
本発明の抗原賦活化液は、水素結合切断剤を含む。「水素結合切断剤」は、分子間の水素結合を切断でき、細胞の形態に与える影響が小さいものが好ましく、例えば尿素、チオ尿素、ポリエチレングリコール、グリセロール、フェノール、アセトアミド、ホルムアミド、チオシアン酸ソーダ、サリチル酸ソーダ、臭化リチウム、アルギニン、アルギニン塩、グアニジン、グアニジン塩、レゾルシノール、カテコール、ジヒドロキシアセトン、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。
【0013】
上述のような水素結合切断剤を含む抗原賦活化液が液相固定液中の細胞の抗原を賦活化するのに適している理由は、以下の通りである。
細胞内に存在する抗原分子を水よりも極めて極性の小さい溶媒である固定液と接触させると、抗原分子は極性の小さい固定液の溶媒よりもその近傍に存在する極性の大きな分子と強固な水素結合を形成する。この水素結合によって抗原分子の立体構造が変化する。このため、溶媒を水に置換しても容易には水に溶解しない。上述したように、本発明者らの検討によると、細胞を保存した固定液を加熱することによって抗原が賦活化されるのは、熱エネルギーによって固定液中で抗原分子が近傍の分子と形成していた水素結合が切断され、再び抗原分子が水分子を引きつけることで本来の立体構造に戻るためであると考えられる。また、固定液内の抗原分子が周辺に存在する分子にマスクされているだけであれば、この分子を分解する酵素で処理すれば抗原は賦活化されるはずであるが、本発明者らによりこのような酵素処理では抗原を賦活化できないことが確認された。
以上のことより、固定液中の抗原分子が抗体と反応しない(或いは反応し難い)のは、固定液中の抗原分子と近傍の分子(抗原分子又は他の分子)との間の水素結合及び/又は抗原分子の周辺に存在する分子同士の水素結合が原因であると考えられる。
【0014】
本発明の抗原賦活化液は、水素結合切断剤の作用によって上記のような水素結合を切断して抗原を露出させるため、熱を加えずに抗原を賦活化することができる。また、水素結合切断剤として尿素を用いた場合は、試料中に含まれる細胞以外の夾雑物、例えば細胞が溶解したために出現する裸核や、赤血球、粘液糸などを除去する効果もあるので、抗原賦活化液を使用したあとの細胞の検出が容易になるので好ましい。
【0015】
細胞形態に基づいて検出を行う細胞診の場合は、検出対象となる細胞の形態をより完全に保存することが好ましい。この観点から、抗原賦活化液中の切断剤の濃度は充分に賦活化でき且つ細胞形態に対して大きな悪影響を与えない程度であることが好ましく、切断剤の種類によって適宜選択される。例えば、切断剤として尿素を用いる場合、抗原賦活化液中の尿素濃度は10〜30w/v%であることが好ましく、より好ましくは10〜15w/v%である。尿素濃度が10w/v%未満であると、充分に水素結合を切断する作用を得られない可能性が高い。また、尿素はタンパク質を変性させ、細胞を損傷する作用があるため、30w/v%を超える尿素濃度の抗原賦活化液では検出対象の細胞や細胞核が損傷する可能性が高く、形態に基づいて行われる細胞診に用いるのは好ましくない。従って、上記の濃度範囲が好適であるといえる。この範囲の濃度であれば、抗原賦活化液で処理しても細胞の変形(例えば核の膨化)を抑制し、かつ充分に水素結合を切断する作用を得ることができる。
【0016】
本発明の抗原賦活化剤は、弱アルカリ性であるのが好ましい。本明細書において、弱アルカリ性とは、pH7〜9の範囲である。この範囲のpHであれば、抗原の賦活化を良好に行うことができる。
上記のpHを保つために、本発明の抗原賦活化剤は、適切な緩衝剤を含有するものが好ましい。7〜9の範囲のpHを保つことができる緩衝剤としては、下記の一般式(I):
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、X及びYは同一又は異なって、−OH又は−SO3Hであり、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又は−OHであり、n1及びn2は同一又は異なって、0又は1である)
で表される化合物が好ましい。このような化合物としては、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPS)、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)二水和物(POPSO)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)などが挙げられる。これらの化学式を、以下に示す。
【0019】
【化2】

【0020】
上記の緩衝剤の濃度は、本発明の抗原賦活化液のpHを適切な範囲に保つことができる範囲であればよく、緩衝剤の種類により適宜選択することができる。例えば、HEPPSであれば、10〜100mMが好ましい。
【0021】
本発明の抗原賦活化液は、液相細胞診用の試料中の夾雑物の除去を促進するための物質を含んでいてもよい。このような物質としては、チオール化合物が挙げられ、アセチルシステイン、2−メルカプトエタノールなどが挙げられる。
【0022】
本発明の抗原賦活化液は、キレート剤をさらに含むことができる。このような物質としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N',N'−四酢酸(EGTA)などが挙げられる。
【0023】
本発明の抗原賦活化液は、適切な媒体、好ましくは水に上記の水素結合切断剤と、任意に緩衝剤、夾雑物の除去を促進するための物質、無機物を除去するためのキレート剤とを混合することにより製造することができる。
【0024】
本発明の別の観点は、液相固定された細胞と、上記の抗原賦活化液とを接触させることを含む、細胞の抗原を賦活化する方法である。
本発明において、液相固定された細胞とは、生体から採取した検体に固定液を加えることにより、又はこれに相当する方法によって検体中の細胞の形態を保存する目的で処理された細胞のことである。固定は、一般に、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノールなどを含む市販の固定液を用いて行われるが、グルタルアルデヒドなどのアルデヒドを含んだ市販の固定液を用いても行うことができる。
【0025】
上記の固定液中に固定された細胞に対して染色等の処理を施す場合は、好ましくは固定液の除去を行う。固定液を除去する方法としては、通常用いられる方法であれば特に限定されず、遠心分離、ろ過などが挙げられる。遠心分離、ろ過などは繰り返し行って、細胞を洗浄して固定液をできるだけ除去することがより好ましい。
【0026】
固定液の除去後、抗原賦活化液を添加して細胞の抗原を賦活化することができる。細胞と抗原賦活化液とを接触させる量の割合は、用いる検体の種類により適宜選択することができる。例えば、子宮頸部の細胞105個当たり抗原賦活化液(尿素濃度15w/v%)を100〜1000μl加えるのが好ましく、より好ましくは250〜600μlである。
【0027】
接触させる温度は、細胞に損傷を与えない温度であればよく、室温、すなわち10〜40℃が好ましい。
上記の細胞と抗原賦活化液とを混合し、細胞を抗原賦活化液中に一定時間浸漬させることが好ましい。この浸漬時間は、5〜60分が好ましい。この範囲の浸漬時間であれば、抗原の賦活化を充分に行うことができる。検査の迅速性の観点からは、30分以内がより好ましい。この浸漬の間に、攪拌を数回行ってもよい。
【0028】
上記のようにして抗原を賦活化した後に、抗原賦活化液を除去し、細胞を洗浄し、適切な免疫染色を行って、顕微鏡観察、フローサイトメトリなどによる細胞の識別、画像処理による細胞形態の観察などにより、免疫染色された細胞を検出することができる。
【0029】
上記の免疫染色は、賦活化された抗原を認識し得る抗体を用いて行うことができ、当該技術において公知の方法を用いることができる。例えば、子宮頸がんに関する細胞を検出する場合は、子宮頸部の上皮細胞の核マトリックスタンパク質であるNMP179に対する抗NMP179抗体を用いる方法が挙げられる。
従来、固定された細胞に対して、細胞の表面に存在する抗原を認識する抗体を用いて、抗原を賦活化させずに免疫染色することが知られている。しかしながら、本発明による抗原賦活化を行うことにより、細胞の内部に存在する抗原をも賦活化することができ、これらの抗原に対する抗体を用いて免疫染色を行うことができる。
【0030】
上記のようにして免疫染色された細胞の検出は、当該技術において公知の方法により行うことができる。
例えば、免疫染色された細胞を含む試料をスライドグラスに塗沫し、スライドグラス上の細胞を顕微鏡で観察し、免疫染色された細胞を検出することができる。顕微鏡による検出の際は、目視により免疫染色された細胞を検出してもよく、スライドグラス上の細胞をカメラで撮像し、画像処理用のソフトウェア等を用いて画像を解析することにより免疫染色された細胞を検出してもよい。
また、図5に示すような構成を有する撮像手段を備えたフローサイトメータを用いて、免疫染色された細胞を検出することもできる。この装置140では、F1〜F3でフローセルを通過した細胞からの側方蛍光を検出し、FFLで前方蛍光、FSCで前方散乱光、SSCで側方散乱光を検出するとともに、カメラで細胞画像を撮像する。
【0031】
さらに詳述すると、まず488nmの発振波長を持つ青色レーザー(Arイオンレーザー)がレンズ101を経ることにより、短径10μm、長軸100μm程度の扁平なビームプロファイルを持つように整えられて、フローセルに照射される。
レンズ101を通して出射された励起光が、フローセルを経てビームストッパ102に結像し、一次光はここで遮られる。細胞からの蛍光/散乱光は対物レンズ103で集められ、530nm以上の波長の光が通過する性質を持ったダイクロイックミラー104を経て、10度前後の立体角の蛍光が検出器105(光電子増倍管:PMT)に入射され、そこで前方蛍光(FFL)が検出される。530nm以下の波長を持つ光は、同様に10度前後の立体角の散乱光が検出器106(フォトダイオード:PD)に入射され、そこで前方散乱光(FSC)が検出される。
【0032】
一方、細胞から発せられた側方蛍光/側方散乱光は、フローセルの側方に配置された高い開口数(NA)をもつ対物レンズ107で集められる。対物レンズ107を出射した光は、まず740nmより短い波長の光を反射する性質を持ったダイクロイックミラー108に通される。このミラー108を反射した側方蛍光/側方散乱光は、まず500nm以下の波長をもつ光を反射する性質を持ったダイクロイックミラー109を経て、さらに中心波長474nm、通過波長49nmの干渉フィルタ110を経てSSCの検出器111(光電子増倍管:PMT)に入射され、そこで側方散乱光が検出される。ダイクロイックミラー109を通過した光は、550nm以下の波長を持つ光を反射する性質を持ったダイクロイックミラー112を経て、中心波長534nm、通過波長26nmの干渉フィルタ113を経てFL1の検出器114(光電子増倍管:PMT)に入射され、そこで緑蛍光が検出される。
【0033】
ダイクロイックミラー112を通過した光は、ダイクロイックミラー115で630nm以下と630nm以上の光に分けられる。分けられた一方の光は、中心波長597nm、通過波長49nmの干渉フィルタ116を経てFL2の検出器117(光電子増倍管:PMT)に入射され、そこで橙蛍光が検出され、他方の光は、中心波長689nm、通過波長46nmの干渉フィルタ118を経て、FL3の検出器119(光電子増倍管:PMT)に入射され、そこで赤蛍光が検出される。
【0034】
捕捉された前方散乱光(FSC)、前方蛍光(FFL)、側方散乱光(SSC)、緑蛍光(FL1)、橙蛍光(FL2)、赤蛍光(FL3)はA/D変換後、解析部130に入力される。そこでリアルタイムで信号処理され、これらの信号がある特徴を持っていれば、解析部130からトリガー信号を送り、780nmの発振波長を持つ近赤外のパルスレーザ120を発光させる。このパルスレーザ120は透過照明光として働き、フローセルから出射した光は、一番目のダイクロイックミラー108を通過し、カメラ121にて結像し、撮像データが解析部130に送られる。このようにして特定の散乱光及び蛍光の特徴を持つ細胞の静止画を得ることができる。
【0035】
解析部130においては、種々の所望の解析の他、更に撮像された画像を加味して判定し、結果を表示部131に表示する。
【0036】
本発明の別の観点は、液相固定された細胞と、上記の抗原賦活化液とを接触させて細胞が有する抗原を賦活化し;該賦活化された抗原を認識し得る抗体を用いて該抗原を有する細胞を免疫染色し;該染色された細胞を検出することを含む、細胞の検出方法でもある。
【実施例】
【0037】
以下の実施例において、本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0038】
実施例1:子宮頸部の細胞を用いた細胞の固定、抗原の賦活化及び染色
<目的>
子宮頸がんは、子宮頸部から採取した細胞を用いて診断が行われる。子宮頸部の細胞は、性周期により細胞の形態が大きく変化することが知られている。すなわち、エストロゲンが放出される増殖初期、増殖中期及び増殖後期には、形態が安定した比較的強固な細胞が多く存在するが、プロゲステロンが放出される分泌前期、分泌中期及び分泌後期には、デーデルライン桿菌が出現して細胞を溶解するので、裸核が出現し、赤血球や粘液などの夾雑物も増加する。
このように、異なる形態の細胞を含む可能性がある検体に含まれる細胞を固定した後に抗原の賦活化を行う場合、熱を加える従来の抗原賦活化方法を用いると、熱に感受性の高い細胞は熱により溶解してしまう可能性がある。本発明の抗原賦活化液を用いた抗原賦活化方法では、このような種々の形態の細胞を含む可能性がある子宮頸部から採取した検体であっても、細胞を元の状態からほとんど変化させずに抗原を賦活化できることを確かめるために、以下の実験を行った。
【0039】
(1−1)抗原の賦活化に対する尿素の濃度の影響
本発明の抗原賦活化液中の尿素の濃度による抗原の賦活化への影響を調べるために、次の実験を行った。
<アルカリホスファターゼ(ALP)/ベクターレッド染色>
分泌期の子宮頸部から採取した細胞5万個に、固定液(Preservcyt、Cytyc社)を添加し、キュベット(EZ Megafunnel, Shandon Inc)に入れ、サイトスピン(1500rpm、5分:Shandon Inc.)を用いてスライド(Dako corp cat#S4103)に貼り付けた。これを一晩、室温で乾燥させた。
乾燥させたスライドを染色バット金具(アズワンCH-0510-075)にセットし、CytoLyt(Cytec社)で満たされた染色バット(アズワンCH-0510-065)に移し、室温で30分間静置した。スライドを染色バット金具ごと、逆浸透膜ろ過した水(RO水)の入った染色バットに移し、5回、上下に出し入れして洗浄した。
【0040】
スライドを染色バット金具ごと、尿素を0%、10w/v%、20w/v%及び30w/v%のそれぞれの濃度で含有する抗原賦活化液(その他の成分として、10mM EGTA、及び50mM HEPPS(pH9.0)を含有)の入った染色バットに移し、室温で30分間静置して、抗原の賦活化を行った。
スライドを染色バット金具に入れ、これを、EGTA含有洗浄液(50 mM Tris-HCl, 0.3 M NaCl, 0.1% Tween-20, 0.1% Brij, 及び10mM EGTAを含有)の入った染色バットに移し室温で5分間静置した。
次いで、このスライドを、EGTAを含まない洗浄液(50 mM Tris-HCl, 0.3 M NaCl, 0.1% Tween-20及び 0.1% Brijを含有)で洗い流し、染色バット金具に入れ、これをEGTAを含まない洗浄液の入った染色バットに移して室温で10分程度静置した(この工程を以下、洗浄工程という)。これ以降の工程で用いた洗浄液は、いずれもEGTAを含まないものである。
【0041】
スライドを一枚ずつ取り出し、スライドグラスの細胞塗抹部分以外をキムワイプなどで拭き取り、Pap Pen(Dako S2002)で細胞塗抹部分を囲んだ。これを湿潤箱の中におき、洗浄液を滴下した。これ以降の工程でスライドに溶液を滴下する場合は、湿潤箱中で操作及び静置を行った。
【0042】
スライドに、ブロッキング液(4% Normal Rabbit Serum Dako X0902, 0.5% BSA , 25 mM Tris-HCl, 0.15 M NaCl, 0.1% Tween-20及び0.1% Brijを含有)を滴下し、室温で30分間静置した。スライドグラスを垂直に立て、スライド上の液を流した後、一次抗体溶液(抗NMP179抗体、マトリテック社、0.1μg/mL)250μlを滴下し、25℃で1時間静置した。
さらに、二次抗体Rabbit anti Mouse IgG(APAAPキットDako #Z0259)を25 mM TBSで80倍希釈し、スライドに500μl滴下し、37℃で15分間静置した。
次に、三次抗体 Alkaline phosphatase-anti-alkaline phosphatase complex solution(APAAPキット:DAKO #D0651)を25mM TBSで40倍希釈し、スライドに500μl滴下し、37℃で15分間静置した。
次に、二次抗体Rabbit anti Mouse IgG(APAAPキットDako #Z0259)を25 mM TBSで80倍希釈し、スライドに500μl滴下し、37℃で10分間静置した。
そして、三次抗体 Alkaline phosphatase-anti-alkaline phosphatase complex solution(APAAPキット:DAKO #D0651)を25mM TBSで40倍希釈し、スライドに500μl滴下し、37℃で10分間静置して、抗原抗体反応を行った。その後、洗浄工程を行った。
【0043】
VECTOR SK-5100 Alkaline Phosphatase Substrate Kit 1(vecter Labs)の1、2、3液を順次4滴ずつ希釈液(200mM Tris-HCl (pH8.4) 10ml + 100mM Levamisole 100μl + 100% Tween20 10μl)に加え、スライドに500μl滴下した。室温で遮光しながら30分間静置して染色を行った。スライドを、25mM TBS、RO水、次いで水道水で洗浄した。
マイヤーのヘマトキシリン染色液(武藤化学社製)を3倍希釈し、ろ紙(ADVANTEC 定性ろ紙No.1)で濾過後、染色バットに入れた。ここに、スライドを染色バット金具ごと移し、室温で1分間静置して、カウンター染色を行った。染色後、水道水でスライドを洗浄した。
【0044】
スライドを、以下のように処理して脱水及び透徹処理した。
95% EtOH、室温、1分間静置
95% EtOH、室温、1分間静置
100% EtOH、室温、1分間静置
100% EtOH、室温、1分間静置
100%キシレン、室温、1分間静置
100%キシレン、室温、5分間静置
最後に、Clarion(Biomeda M05)を用いてスライドを封入した。
【0045】
得られた標本の顕微鏡写真を図1に示す。図1から明らかなように、尿素の濃度が増加するにつれて、免疫染色の強度が上昇していることが確認された。
【0046】
上記のALP/ベクターレッド染色の代わりに、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)/タイラマイド染色(方法は、以下に記載する)を行い、図5に示す構造を有するフローサイトメータを用いて前方散乱光及び側方散乱光を測定して全細胞数を測定し、さらに前方散乱光及び緑色蛍光を測定して、蛍光強度の強い細胞数(緑色蛍光強度が50〜254の間である細胞の数)を測定した。蛍光強度の強い細胞数の全細胞数に対する割合と、尿素の濃度との関係を示すグラフを、図2に示す。図2は、それぞれ異なる3検体について行った測定の結果を示す。
この結果、尿素の濃度が高くなるにつれて蛍光強度の強い細胞の割合が増加しており、尿素濃度が高くなると免疫染色をよりよく行うことができていること、つまり抗原の賦活化効果がより高くなることがわかる。
【0047】
<西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)/タイラマイド染色法>
分泌期の子宮頸部から採取し、固定液(Preservcyt、Cytyc社)を加えた細胞105個を、エッペンドルフチューブに入れ、遠心分離機(HITACHI CF 15R)を用いて10,000rpmで1分間遠心分離した。上清を捨て、0.05%Tween含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS−T、pH7.4)750μlを加え、上記と同様の条件で遠心分離して上清を捨てた。得られた細胞を、固定された細胞として用いて、以下の抗原賦活化を行った。
尿素を0%、10w/v%、20w/v%及び30w/v%のそれぞれの濃度で含有する抗原賦活化液(その他の成分として、10mM EGTA、50mM HEPES、pH9.0を含有)500μlを上記の細胞に加え、室温で軽く混合した。15分間静置した後、2回混和し、再び室温で15分間静置した。上記と同様の条件で遠心分離し、上清を捨てた。
ここに、PBS−T 750μlを加え、同様に遠心分離して上清を捨てた。これを洗浄工程とし、この洗浄工程を3回繰り返した。
【0048】
上記の方法により賦活化処理した細胞に、PBSで希釈した2%過酸化水素水1mlを加えて室温で30分間、4rpmで振とうした。これを遠心して上清を捨て、750μlのPBS−Tを加えた。0.5%ブロッキング液(TSAブロッキング、Perkin Elmer)を750μl加え、室温で30分間、4rpmで振とうした。その後、遠心して上清を捨てた。
ここに、核マトリックスタンパク質を認識する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗NMP179抗体溶液(マトリテック社製、2μg/ml)を400μl加え、室温で30分間、4rpmで振とうした。遠心して上清を捨て、細胞をPBS−T750μlで3回洗浄した。200μlのタイラマイド染色液(Fluorescein Tyramide Reagent、Perkin Elmer)を加え、遮光条件下、室温で30分間、4rpmで振とうした。その後、細胞を遠心して上清を捨て、PBS−T750μlで3回洗浄した。
得られた細胞を、フローサイトメトリを用いた測定に供した。
【0049】
実施例2:本発明の抗原賦活化液による処理の影響
本発明の抗原賦活化液が、診断に与える影響について調べるために、次の実験を行った。
従来、子宮頸がんは、パパニコロウ染色による診断が行われることが多い。パパニコロウ染色による診断は、子宮頸部から採取した細胞をパパニコロウ染色液で染色し、染色された細胞や核の形態、染色状態等を顕微鏡で観察して細胞の異型度を診断する方法であり、パパニコロウ染色液が、良性細胞の核と悪性の異型細胞の核とを染め分けることができることに基づく分類方法である。日本母性保護産婦人科会の分類によると、以下の表1に示す分類により判定が行われている。
【0050】
【表1】

【0051】
そこで、本発明の抗原賦活化液で処理する前後の細胞について、パパニコロウ染色を行い、抗原賦活化液による抗原賦活化処理がパパニコロウ判定結果に影響を与えるか否かについて調べた。
検体として、増殖期前期(1検体)、増殖期中期(1検体)、増殖期後期(1検体)、分泌期前期(2検体)、分泌期中期(1検体)、分泌期後期(3検体)、及び閉経後(4検体)の患者から採取した細胞を用いた。
これらの検体は、採取後にPreservcyt (Cytyc)社を用いて固定されている。
固定された検体の一部分を、パパニコロウ染色に供して顕微鏡で観察し、パパニコロウ判定を行った。パパニコロウ染色は、武藤化学社製パパニコロウ染色液を用いて行った。
【0052】
残りの検体に、尿素を15w/v%で含有する抗原賦活化液(その他の成分として、10mM EGTA、及び50mM HEPES(pH9.0)を含有)500μlを加え、室温で軽く混合した。15分間静置した後、2回混和し、再び室温で15分間静置した。上記と同様の条件で遠心分離し、上清を捨てた。ここに、PBS−T 750μlを加え、同様に遠心分離して上清を捨てた。これを洗浄工程とし、この洗浄工程を3回繰り返した。
このようにして抗原賦活化した細胞を、上記と同様にしてパパニコロウ染色を行った。
結果を、以下の表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
上記の表2から、従来法に基づくパパニコロウ判定結果(本実施例の抗原賦活化液による抗原賦活化処理前の判定結果)と、本実施例の抗原賦活化液による抗原賦活化処理を行った後のパパニコロウ判定結果とは非常によく整合していた(一致率=100%)。このことから、本発明の抗原賦活化液による処理は、細胞や核の形態に影響を与えないことが確認された。
【0055】
実施例3:画像処理による細胞の検出
子宮頸部検体において、子宮頸がんの診断を行うために必要な細胞は、扁平上皮細胞である。この細胞は、増殖期にはある程度の形状を保っている(膨化などにより破砕していない)ので、撮像すると、図3(A)の点線部(a)で示す領域(扁平上皮細胞出現領域)に出現する。しかし、裸核や細胞の破砕物などの夾雑物は、図3(A)の(b)で示す領域(夾雑物出現領域)に出現する。例えば、図3(A)で用いた検体を100℃で加熱処理(従来の抗原賦活化)すると、図3(B)に示すように、裸核や細胞破片が増え、形状を保った細胞が少なくなる。また、分泌期の検体でも、デーデルライン桿菌の影響により溶解した細胞が多くなるので、裸核や溶解された細胞が図3(B)の(b)の領域(夾雑物出現領域)に示すようなグラフの下部の領域に多く出現することとなる。なお、図3の横軸は細胞の真円度(左に行くほど細胞が丸形に近く、右に行くほど細胞の凹凸がある)を表し、縦軸は細胞の面積を表す。
【0056】
実施例2で用いたのと同じ増殖期前期、中期及び後期、並びに分泌期前期、中期及び後期の検体をそれぞれ、実施例2と同様にして、尿素15w/v%を含有する抗原賦活化液で抗原賦活化処理を行った。処理後、タイラマイド染色を行い、染色処理後の細胞を含む検体をスライドグラスに滴下した。このスライドグラスを倒立型顕微鏡Zeiss社製AxioVert200(コンデンサ:LDコンデンサ(N.A.0.55)Ph2、対物レンズ:20倍LD AchroPlan (N.A.0.4) Ph2、蛍光フィルタ:フィルタセット#17)に載置し、スライドグラス上の細胞をCCDカメラZeiss社製AxioCamHRcを用いて1秒間の露光時間で撮像した。MediaCybernetics社製Image-Pro Plus (ver. 4.5.1.23)で解析し、撮像した細胞の面積と真円度を算出した。この算出結果を基に、細胞の面積(縦軸)と真円度(横軸)を二軸とする分布図を作成した。
【0057】
作成した分布図を、図4に示す。図4から明らかなように、生理周期の何れの時期の検体を用いても、本発明の抗原賦活化液による抗原賦活化処理を施したにもかかわらず、扁平上皮細胞出現領域に出現する細胞数はほとんど変化しない。これは、子宮頸がんの診断に重要な扁平上皮細胞の形態がほとんど変化していないことを示す。
【0058】
さらに、本発明の抗原賦活化液を用いて処理することにより、夾雑物出現領域に出現する裸核や破砕細胞、赤血球などの夾雑物が除去されていることもわかる。これを示す顕微鏡写真を図6に示す。図6の写真は、生理周期が分泌期後期の被験者より採取した検体の顕微鏡写真であり、上段に抗原賦活化処理を行わずにパパニコロウ染色を施し、撮像した写真を示し、下段に抗原賦活化処理を行った後にパパニコロウ染色を施し、撮像した写真を示す。上段の写真の抗原賦活化処理を行っていない検体では、検出対象である扁平上皮細胞だけでなく、赤血球やその他夾雑物が数多く観察されるが、下段の写真の抗原賦活化処理を行った検体では、検出対象である扁平上皮細胞はその形態を保ち、一方で赤血球や夾雑物はほとんど観察できない状態となっている。すなわち、本発明の抗原賦活化液を用いて処理することにより、診断に必要のない夾雑物をも除去できるという効果があることがわかる。抗原賦活化液による処理によって夾雑物が減少すると、検鏡による細胞診の際に、目的とする細胞以外の物質が少ないため検鏡の負担が低減される。また、フローサイトメータを用いて測定される散乱光情報や蛍光情報に基づいて細胞の検出をする際も、夾雑物が少ないために測定精度が向上する。さらに、撮像した細胞の画像に基づいて細胞の検出を行う場合は、夾雑物が少ないために画像認識ソフトによる画像認識が容易となり、細胞の画像解析の自動化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】種々の濃度で尿素を含有する抗原賦活化液を用いて抗原賦活化した細胞を、アルカリホスファターゼ標識抗体を用いた染色により染色した後の顕微鏡写真である。
【図2】尿素濃度に対する、抗体により認識され、蛍光を発すると、蛍光染色された細胞の割合との関係を示すグラフである。
【図3】子宮頸部から採取した検体に含まれる細胞を撮像解析した際のスキャッタグラム例(A)、及び子宮頸部から採取した検体を加熱処理した後、検体に含まれる細胞を撮像解析した際のスキャッタグラム例(B)を示す。
【図4−1】子宮頸部からの細胞を画像処理した結果の例を示す。
【図4−2】子宮頸部からの細胞を画像処理した結果の例を示す。
【図5】本発明の抗原賦活化方法により処理した細胞を分析するためのフローサイトメータの検出部を示す模式図である。
【図6】子宮頸部から採取した検体に対して抗原賦活化処理を行わずパパニコロウ染色を施した際の顕微鏡写真(上段)と、子宮頸部から採取した検体に対して抗原賦活化処理を行った後、パパニコロウ染色を施した際の顕微鏡写真(下段)とを示す。
【符号の説明】
【0060】
101 レンズ
102 ビームストッパ
103,107 対物レンズ
104,108,109,112,115 ダイクロイックミラー
105,106,111,114,117,119 検出器
110,113,116,118 干渉フィルタ
120 パルスレーザ
121 カメラ
130 解析部
131 表示部
140 フローサイトメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非架橋型固定液を用いて液相固定された細胞の抗原を賦活化するための賦活化液であって、水素結合切断剤を含有することを特徴とする抗原賦活化液。
【請求項2】
前記水素結合切断剤が尿素である、請求項1に記載の抗原賦活化液。
【請求項3】
抗原賦活化液中の尿素の濃度が10〜30w/v%である、請求項2に記載の抗原賦活化液。
【請求項4】
前記濃度が10〜15w/v%である、請求項3に記載の抗原賦活化液。
【請求項5】
弱アルカリ性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗原賦活化液。
【請求項6】
次の一般式(I):
【化1】

(式中、X及びYは同一又は異なって、−OH又は−SO3Hであり、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又は−OHであり、n1及びn2は同一又は異なって、0又は1である)
で表される緩衝剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗原賦活化液。
【請求項7】
前記緩衝剤が、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPS)である、請求項6に記載の抗原賦活化液。
【請求項8】
キレート剤をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗原賦活化剤。
【請求項9】
前記キレート剤が、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N',N'−四酢酸(EGTA)である、請求項8に記載の抗原賦活化液。
【請求項10】
非架橋型固定液を用いて液相固定された細胞と、水素結合切断剤を含有する抗原賦活化液とを接触させることにより、細胞の抗原を賦活化する方法。
【請求項11】
10〜40℃の温度で行う請求項10に記載の方法。
【請求項12】
非架橋型固定液を用いて液相固定された細胞と、水素結合切断剤を含有する抗原賦活化液とを接触させて前記細胞が有する抗原を賦活化し;
前記賦活化された抗原を認識し得る抗体を用いて該抗原を有する細胞を免疫染色し;
前記免疫染色された細胞を検出する
ことを含む、細胞の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−161138(P2008−161138A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355952(P2006−355952)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】