説明

抗引き戻し医療用バルブ

【課題】医療用バルブを提供こと、より具体的には、医療用バルブにおける流体の引き戻しを実質的に排除すること。
【解決手段】医療用バルブ(10)内のグランド部材(28)は、このバルブが閉モードから開モードへ推移する場合に、実質的に一定の内部容積または拡大する内部容積を有するように構成される。このために、このバルブは、流路を収容する内部を形成するハウジング(14)、およびこの内部内の固定支柱部材を有する。この支柱部材は、流路の一部であるルーメン(36)を有する。このルーメンはハウジングの内部に向けた開口部(34)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(代理人事務処理番号:1600/169WO)
(発明の分野)
本発明は、概して、医療用バルブに関し、より具体的には、本発明は、医療用バルブにおける流体の引き戻しを実質的に排除することに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
一般的に、医療用バルブデバイスは、多くの場合、非侵襲的に患者の脈管構造へ流体を注入する(または患者の脈管構造から流体を抜き取る)のに繰り返し利用され得るシールされたポートとして作用する。その結果、医療用バルブによって、このような患者の皮膚が針によって繰り返し穿孔されることを必要とすることなく、自由にアクセスされることが可能になる。
【0003】
これらの目的のために、予備的な工程として、医療関係者は、患者に適切に固定された医療用バルブに注射器を挿入する。例えば、このバルブは、反対側が患者の静脈に固定されたカテーテルに結合され得る。いったん挿入されると、流体は、自由にその患者に注入され(または患者から抜き取られ)得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、その注射器がバルブから抜き取られる場合に問題が生じる。具体的には、引き抜かれる注射器によって生成される背圧(すなわち、近位方向に向かう圧力)が、血液を(取付けられたカテーテルを介して)そのバルブの中へ近位方向に引き得る。バルブを凝固させることおよびバルブの機械的操作を妨げることに加えて、バルブ中(またはカテーテル中)の血液は、それの滅菌性を危うくする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明の1つの局面に従って、医療用バルブ内のグランド部材は、このバルブが閉モードから開モードへ推移するにつれて、実質的に一定かまたは拡大する内部容積を有するように構成される。そのために、このバルブは、流路を収容する内部を形成するハウジング、およびその内部内の固定支柱部材を有する。この支柱部材は、上記流路の一部分であるルーメンを有する。このルーメンは、上記ハウジングの内部に向けた開口部を有する。このバルブは、さらに、上記支柱部材に外接して可変容積領域を形成するグランド部材を備え、この可変容積領域は、少なくとも一部分はこのグランド部材自体と上記支柱部材との間に形成される。加えて、この可変容積領域は、上記流路の一部分であるが、その一方でこのグランド部材は、閉モードにある場合、上記支柱ルーメン開口部を閉塞する。この可変容積領域は、その閉容積(すなわち、上記バルブが閉モードにある場合)以上である開容積(すなわち、上記バルブが開モードにある場合)を有する。
【0006】
いくつかの実施形態において、この可変容積領域は、閉モードにある場合、閉じている。さらに、上記バルブが、閉モードから開モードに向かって推移するにつれて、上記グランド部材は、半径方向外側に動く。このような場合、この半径方向外側への動きは、上記支柱部材ルーメンへの開口部を実質的に開く。
【0007】
抗引き戻し効果を提供するために、上記開容積は、上記閉容積よりも大きいか、または上記閉容積と実質的に等しい。いくつかの実施形態において、上記グランド部材は、上記ハウジングの近位ポートと実質的に同じ高さにあるかまたはこの近位ポートの近位方向に延びる近位端を有する。第2の再利用可能なシールを提供するために、上記グランドの近位端は、スリットを有し得る。
【0008】
上記グランド部材は、シール用隆起(sealing ridge)を有し、このシール用隆起は、閉モードにある場合、上記支柱ルーメン開口部を閉塞する。さらに、上記グランド部材は、主要壁部分およびローブ形部分(lobed portion)を有する。この主要壁厚みは、上記ローブ部分壁厚みよりも大きい。実際に、このローブ形部分は、この主要壁部分から半径方向外側に延びる。上記バルブが開モードに向かって動くにつれて、このローブ形部分は、半径方向外側に動く。
【0009】
種々の実施形態において、閉モードにある場合、上記可変容積領域は、上記支柱部材および上記グランド部材にのみよって境界を定められる。抗引き戻し効果を提供するために、上記流路は、上記可変容積領域が変化するにつれて変化する全容積を有する。例えば、その可変容積領域の容積が増加するにつれて、その流路の全容積が、増加し得る。
【0010】
本発明の別の局面に従って、医療用バルブは、内部を形成するハウジング、およびこの内部内の固定支柱部材を有する。この支柱は、この内部を通って流体を流すためのルーメンを有する。このバルブはまた、そのハウジングの内部内にグランド部材を有する。このグランド部材は、上記支柱部材によっても境界を定められる可変容積領域を形成する。このグランド部材は、閉モードにある場合、上記ルーメンを閉塞する。閉モードにある場合、上記可変容積領域は、閉容積を有し、開モードにある場合、開容積を有する。この開容積は、この閉容積以上である。
【0011】
本発明の別の局面に従って、医療用バルブは、内部および遠位ポートの両方を形成するハウジングを有する。このバルブはまた、このハウジングの内部内にグランド部材を有する。このグランド部材は、主要部分および突出部分を有し、これらは一緒になって可変容積領域を形成する。この突出部分は、この主要部分に対して半径方向外側に突き出している。さらに、この突出部分は、突出壁によって規定され、一方で上記主要部分は、主要壁によって規定される。突出壁は、主要壁の厚みよりも薄い厚みを有する。他の局面と類似の様式で、この可変容積領域は、閉モードにある場合、閉容積を有し、開モードにある場合、開容積を有する。この遠位ポートを通る内部への正味の流体の引き戻しを実質的に防ぐために、この開容積は、閉容積以上である。言い換えれば、開モードから閉モードへの上記バルブの実質的に完全なストロークの間、そのバルブに残る引き戻された流体の全量は、約ゼロマイクロリットル以下であるべきである。
【0012】
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
医療用バルブであって、該医療用バルブは、内部流路を通る流体流れを許容する開モードを有し、該医療用バルブはまた、該内部流路を通る流体流れを妨げる閉モードを有し、該医療用バルブは、以下、
該流路を収容する内部を形成するハウジング;
該内部内の固定支柱部材であって、該支柱部材は、該流路の一部分であるルーメンを有し、該ルーメンは、該ハウジングの該内部に向けた開口部を有する、支柱部材;および
該支柱部材に外接して可変容積領域を形成するグランド部材であって、該可変容積領域は、少なくとも一部分は該グランド部材と該支柱部材との間に形成され、該可変容積領域は、該流路の一部分であり、該グランド部材は、該閉モードにある場合、該支柱ルーメン開口部を閉塞する、グランド部材;
を備え、
該可変容積領域は、該閉モードにある場合、閉容積を有し、
該可変容積領域は、該開モードにある場合、開容積を有し、
該開容積は、該閉容積以上である、医療用バルブ。
(項目2)
前記可変容積領域が、前記閉モードにある場合、閉じられている、項目1に記載の医療用バルブ。
(項目3)
前記バルブが、前記閉モードから前記開モードに向かって推移するにつれて、前記グランド部材が、半径方向外側に動き、該半径方向外側への動きが、前記支柱部材ルーメンへの開口部を実質的に開く、項目1に記載の医療用バルブ。
(項目4)
前記開容積が、前記閉容積よりも大きい、項目1に記載の医療用バルブ。
(項目5)
前記開容積が、前記閉容積と実質的に等しい、項目1に記載の医療用バルブ。
(項目6)
前記ハウジングが、近位ポートを有し、前記グランド部材が、該近位ポートと実質的に同じ高さにあるかまたは該近位ポートの近位方向に延びる近位端を有する、項目1に記載の医療用バルブ。
(項目7)
前記グランドの近位端が、スリットを有する、項目6に記載の医療用バルブ。
(項目8)
前記グランド部材が、シール用隆起を有し、該シール用隆起は、前記閉モードにある場合、前記支柱ルーメン開口部を閉塞する、項目1に記載の医療用バルブ。
(項目9)
前記グランド部材が、主要壁部分およびローブ形部分を有し、該主要壁部分は、主要壁厚みを有し、該ローブ形部分は、ローブ壁厚みを有し、該主要壁厚みは、該ローブ壁厚みよりも大きい、項目1に記載の医療用バルブ。
(項目10)
前記ローブ形部分が、前記主要壁部分から半径方向外側に延びる、項目9に記載の医療用バルブ。
(項目11)
前記バルブが開モードに向かって動く際に、前記ローブ形部分が、半径方向外側に動く、項目9に記載の医療用バルブ。
(項目12)
前記閉モードにある場合、前記可変容積領域が、前記支柱部材および前記グランド部材のみによって境界を定められる、項目1に記載の医療用バルブ。
(項目13)
前記流路の全容積が、前記可変容積領域が変化するにつれて変化する、項目1に記載の医療用バルブ。
(項目14)
前記流路が、前記可変容積領域の容積が増加するにつれて増加する全容積を備える、項目13に記載の医療用バルブ。
(項目15)
医療用バルブであって、該医療用バルブは、内部流路を通る流体流れを許容する開モードを有し、該医療用バルブはまた、該内部流路を通る流体流れを妨げる閉モードを有し、該医療用バルブは、以下、
該流路を収容する内部を形成するハウジング;
該内部を通って流体を流すための固定手段であって、該固定手段は、該流路の一部分であるルーメン手段を有し、該固定手段はまた、該ルーメン手段にアクセスするための手段を有する、固定手段;および
該固定手段により境界を定められた可変容積領域を形成するための手段であって、該形成する手段は、該閉モードにある場合、該アクセスする手段を閉塞する、手段;
を備え、
該可変容積領域は、該閉モードにある場合、閉容積を有し、
該可変容積領域は、該開モードにある場合、開容積を有し、
該開容積は、該閉容積以上である、医療用バルブ。
(項目16)
前記可変容積領域が、前記閉モードにある場合、閉じられている、項目15に記載の医療用バルブ。
(項目17)
前記バルブが、前記閉モードから前記開モードに向かって推移するにつれて、前記形成する手段が、半径方向外側に動き、該半径方向外側への動きが、前記アクセスする手段を実質的に開く、項目15に記載の医療用バルブ。
(項目18)
前記開容積が、前記閉容積よりも大きい、項目15に記載の医療用バルブ。
(項目19)
前記開容積が、前記閉容積と実質的に等しい、項目15に記載の医療用バルブ。
(項目20)
前記閉モードにある場合、前記形成する手段が、前記アクセスする手段を閉塞するためのシール用隆起手段を備える、項目15に記載の医療用バルブ。
(項目21)
前記形成する手段が、グランド部材を有する、項目15に記載の医療用バルブ。
(項目22)
前記固定手段が、固定支柱部材を備える、項目15に記載の医療用バルブ。
(項目23)
前記ルーメン手段が、前記固定手段内のルーメンを備え、前記アクセスする手段が、該ルーメンに向けた開口部を備える、項目15に記載の医療用バルブ。
(項目24)
医療用バルブであって、該医療用バルブは、流体流れを許容する開モードおよび流体流れを妨げる閉モードを有し、該医療用バルブは、以下、
内部を形成するハウジング;
該内部内の固定支柱部材であって、該支柱部材は、該内部を通って流体を流すためのルーメンを有する、固定支柱部材;および
該ハウジングの該内部内のグランド部材であって、該グランド部材は、該支柱部材によっても境界を定められた可変容積領域を形成し、該グランド部材は、該閉モードにある場合、該ルーメンを閉塞する、グランド部材;
を備え、
該可変容積領域は、該閉モードにある場合、閉容積を有し、
該可変容積領域は、該開モードにある場合、開容積を有し、
該開容積は、該閉容積以上である、医療用バルブ。
(項目25)
前記閉モードにある場合、前記可変容積領域が、閉じられている、項目24に記載の医療用バルブ。
(項目26)
前記バルブが、前記閉モードから前記開モードに向かって推移するにつれて、前記グランド部材が、半径方向外側に動き、該半径方向外側への動きが、前記ルーメンを実質的に開く、項目24に記載の医療用バルブ。
(項目27)
前記開容積が、前記閉容積よりも大きい、項目24に記載の医療用バルブ。
(項目28)
前記開容積が、前記閉容積と実質的に等しい、項目24に記載の医療用バルブ。
(項目29)
前記ハウジングが、近位ポートを有し、前記グランド部材が、該近位ポートと実質的に同じ高さにあるかまたは該近位ポートの近位方向に延びる近位端を有する、項目24に記載の医療用バルブ。
(項目30)
前記グランドの近位端が、スリットを有する、項目29に記載の医療用バルブ。
(項目31)
前記グランド部材が、シール用隆起を備え、該シール用隆起は、前記閉モードにある場合、前記支柱ルーメンを閉塞し、該シール用隆起は、閉モードにある場合、該支柱部材に接触して該ルーメンを閉塞する、項目24に記載の医療用バルブ。
(項目32)
前記グランド部材が、主要壁部分およびローブ形部分を有し、該主要壁部分は、主要壁厚みを有し、該ローブ形部分は、ローブ壁厚みを有し、該主要壁厚みは、該ローブ壁厚みよりも大きい、項目24に記載の医療用バルブ。
(項目33)
前記ローブ形部分が、前記主要壁部分から半径方向外側に延びる、項目32に記載の医療用バルブ。
(項目34)
前記バルブが開モードに向かって動く際に、前記ローブ形部分が、半径方向外側に動く、項目32に記載の医療用バルブ。
(項目35)
医療用バルブであって、該医療用バルブは、流体流れを許容する開モード、および流体流れを妨げる閉モードを有し、該医療用バルブは、以下、
内部を形成し、遠位ポートを有するハウジング;および
該ハウジングの該内部内のグランド部材であって、該グランド部材は、主要部分および突出部分を備え、該主要部分および該突出部分は、一緒に可変容積領域を形成し、該突出部分は、該主要部分に対して半径方向外側に突き出し、該突出部分は、突出壁によって規定され、該主要部分は、主要壁によって規定され、該突出壁は、該主要壁の厚み未満の厚みを有する、グランド部材;
を備え、
該可変容積領域は、該閉モードにある場合、閉容積を有し、
該可変容積領域は、該開モードにある場合、開容積を有し、
該遠位ポートを通る該内部への正味の流体の引き戻しを実質的に妨げるために、該開容積は、閉容積以上である、医療用バルブ。
(項目36)
前記内部内に固定支柱部材をさらに備え、該支柱部材は、前記閉モードにある場合、前記グランド部材によって閉塞されるルーメンを有する、項目35に記載の医療用バルブ。
(項目37)
前記グランド部材が、前記支柱部材に外接する、項目36に記載の医療用バルブ。
(項目38)
前記バルブが、前記閉モードから前記開モードに向かって推移するにつれて、前記グランド部材が、半径方向外側に動き、該半径方向外側への動きが、前記ルーメンを実質的に開く、項目36に記載の医療用バルブ。
(項目39)
前記閉モードにある場合、前記可変容積領域が、閉じられている、項目35に記載の医療用バルブ。
(項目40)
前記開容積が、前記閉容積よりも大きい、項目35に記載の医療用バルブ。
(項目41)
前記開容積が、前記閉容積と実質的に等しい、項目35に記載の医療用バルブ。
(項目42)
前記ハウジングが、近位ポートを有し、前記グランド部材が、該近位ポートと実質的に同じ高さにあるかまたは該近位ポートの近位方向に延びる近位端を有する、項目35に記載の医療用バルブ。
(項目43)
前記内部が流路を備え、該流路は、前記可変容積領域が変化するにつれて変化する容積を有する、項目35に記載の医療用バルブ。
【0013】
上記の内容および本発明の利点は、添付の図面を参照して、本発明の以下のさらなる説明から、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の種々の実施形態に従って構成され得る医療用バルブを概略的に示す。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に従う図1の医療用バルブの、線X−Xに沿った、断面図を概略的に示す。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に従う図1の医療用バルブの、線X−Xに沿った、断面図を概略的に示す。
【図4】図4は、本発明の第3の実施形態に従う図1の医療用バルブの、線X−Xに沿った、断面図を概略的に示す。
【図5】図5は、本発明の第4の実施形態に従う図1の医療用バルブの、線X−Xに沿った、断面図を概略的に示す。
【図6】図6は、図5に示されるグランド部材の斜視図を概略的に示す。
【図7】図7は、図6に示されるグランド部材の半径方向の断面図を、線7−7に沿って概略的に示す。
【図8】図8は、図6に示されるグランド部材の長手方向の断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(例示的実施形態の説明)
本発明の例示的な実施形態において、医療用バルブは、ノズルまたは注射器がそれから引き抜かれる際に、流体の引き戻しを実質的に排除するように構成される。具体的には、1つのこのような実施形態において、この医療用バルブは、ノズルまたは注射器が引き抜かれる際に、正味の陰圧も正味の陽圧も生成しない。その結果、そのノズルが引き抜かれた後に、このバルブから放出された(またはこのバルブの中へ引き込まれた)正味の流体は、実質的にゼロに等しい。
【0016】
これらの目的のために、上記医療用バルブの例示的な実施形態は、ある容積を有する流路を有し、その容積は、バルブが、開モード(すなわち、流体流れを許容し、「開位置」とも呼ばれる)または閉モード(すなわち、流体流れを妨げ、「閉位置」とも呼ばれる)のいずれにある場合も、実質的に同じである。より具体的には、この流路の一部分は、固定部材の上に配置される弾性部材から形成される。閉モードから開モードに向かって推移する際に、この弾性部材は、半径方向に膨張し、かつ長手方向に圧縮する。この膨張および収縮は、バルブが閉モードから開モードへ推移する場合に、上記流路内の全体の容積が実質的に一定であることを確実にするよう寸法決めされ、構成される。同様にして、閉位置に戻る場合には、上記弾性部材は、反対の様式で作動し、従ってさらに流路の容積を維持する。この実施例および関連する実施例の詳細は、以下に考察される。
【0017】
他の実施形態において、上記バルブは、ノズルまたは注射器が引き抜かれる際に、正の、遠位方向を向いた(すなわち、その出口を向いた)圧力を生成する。このような圧力は、このような場合に流体がバルブの中へ引き込まれるのを防ぐはずである。これらの目的のために、上記膨張可能な部材は、バルブが開モードに向かって推移する場合は上記流路の体積を膨張させ、バルブが閉モードに向かって推移する場合は上記流路の容積を減少させるように寸法決めされ、構成される。この実施例および関連する実施例の詳細もまた、以下に考察される。
【0018】
図1は、注射器または他の型のノズルがバルブから引き抜かれる際に、流体の引き戻し(別名、「逆流」および「還流」)を低減するように構成されている医療用バルブ10を概略的に示す。バルブ10は、このノズルを受けるための近位ポート12、バルブ10を通って流れる流体を制御する内部バルブ機構(図2〜5に示される)を有するバルブ本体14、および流体をバルブ10と患者との間に向ける遠位ポート16を備える。バルブ10の遠位ポート16は、図1に示されるその位置にあってもよく、バルブ10の長手方向の寸法に直交する位置にあってもよく、または何らかの他の位置にあってもよい。上記流体は、好ましくは液体形態(例えば、液体医薬品)である。本明細書中での考察の多くは、近位ポート12を流体入口として、そして遠位ポート16を流体出口(本明細書中では、「出口16」とも呼ばれる)として言及し、近位ポート12および遠位ポート16はまた、それぞれ、出口ポートおよび入口ポートとしても利用され得る。
【0019】
バルブ10は、拭き取り可能な、ルアー注射器活性化型バルブである。このバルブ機構の頂部表面は、従って、遠位ポート12と実質的に同じ高さであるか、または遠位ポート12からわずかに外側に延びるべきである。当業者に公知のように、この配置によって、このバルブ機構の頂部表面が、綿棒または他のクリーニング装置で容易に洗浄されるようになる。しかし、他の実施形態において、バルブ10は、スワッブバルブ(swab valve)ではない。
【0020】
図2〜5は、図1に示されるバルブ10の4つの異なる実施形態を示す。しかし、すべての図全体で、同じ参照番号が使用される。例えば、それらは異なる実施形態であるが、バルブの各実施形態は、以下に続く図面および説明において、参照番号「10」により同定される。第2の例として、各実施形態は、グランドを有し、これは、すべての関連する図において参照番号「28」により同定される。しかし、それらの同一の参照番号付けは、それらが、構造および機能において同一であることを包含すると解釈されるべきではない。以下に注記されるように、(とりわけ)各バルブおよび各グランドは、ある程度は異なって作動し得る。しかし、他の要素は、同一に作動し得る。
【0021】
図2は、閉位置にある医療用バルブ10の1つの実施形態の、(図1の線X−Xに沿った)断面図を概略的に示す。より詳細には、図1における配置は、注射器または他の型のノズルがバルブから引き抜かれる際に、バルブ10が流体の引き戻しを実質的に排除することを可能にする。上に注記したように、この低減は、遠位ポート16での陽圧(すなわち排出)、または遠位ポート16での正味ゼロの圧力のいずれかをもたらし得る。
【0022】
とりわけ、バルブ10は、凸状近位部分で終結する中空の支柱部材20に結合される一体型ハウジング18を備える。このハウジングの内部は、いろいろな型のノズルに抗引き戻し効果を提供するように輪郭を決められる。具体的には、ノズルの受けるためのテーパー状の近位領域22、および長手方向に隣接し遠位方向に広がる領域24を有するように輪郭を決められる。近位領域22は、例示的には、種々の型のノズル(例えば、ISO/ANSI標準に従うノズル(例えば、ISO/ANSI標準に従うルアー注射器))を受けるように輪郭が決められる。近位領域22および広がる領域24に加えて、この内部はまた、広がる領域24の内部寸法より有意に大きい内部寸法を有する中央領域26を有する。
【0023】
バルブ内部は、弾性、圧縮可能かつ引き伸ばし可能な部材(これ以降、「グランド(gland)28」)を備え、この部材は支柱部材20と一緒になってバルブ10を通る流体流れを制御する。例示的な実施形態において、グランド28は、ハウジング18の内部縁30と支柱部材20の半径方向の表面32との間でバルブ10内に固定される。支柱部材20およびグランド28の相互作用の詳細は、以下に考察される。
【0024】
図2に示される実施形態において、支柱部材20は、閉じた近位端および(支柱部材20の近位端の近傍の)横断チャネル34を有し、このチャネル34は、内側の支柱部材流れチャネル36(その支柱部材を貫くルーメン)につながる。支柱部材流れチャネル36は、遠位ポート16で終結する。従って、開の場合には、流体は横断チャネル34を経由して支柱部材流れチャネル36を通って支柱部材20内に流れ込み得、そして遠位ポート16から流れ出得る。代替の実施形態において、横断チャネル34を使用するよりはむしろ、流体は支柱部材20の近位端にある開口部(示さず)を経由して支柱部材流れチャネル36にアクセスし得る。しかし、このような代替の実施形態は、単一のシールのみを有し得るか(以下の考察を参照のこと)、または上記の開口部をさらにシールするように構成され得る。
【0025】
グランド28は、バルブ10の内部の内で唯一の可動式の部分である。このために、グランド28は、拭き取り可能なシールセクション38および管状部分42を有し、シールセクション38は、それを貫く、通常は閉じられたスリット40を有し、管状部分42は、シールセクション38からその基部まで延びる。閉の場合には、グランド28および支柱部材20により形成される容積は、閉容積と考えられる。以下に注記されるように、スリット40が開くか、または横断チャネル34が閉塞していないほどグランド28が遠位方向に十分な量押し込まれた後は、この容積はもはや閉じているとは考えられない。この容積は、本明細書中で「可変容積領域」と呼ばれる。しかし、種々の実施形態の原理が、他の型の可変容積領域(例えば、他の構成要素またはさらなる構成要素により形成される領域)に適用され得ることが予想される。従って、上記の可変容積領域の考察は、例示的なものであり、そして本発明のすべての実施形態を限定することは意図されない。
【0026】
管状部分42は、2つの小部分を有する:つまり、1)通常は中空の近位管部分44であって、閉モードにある場合は、支柱部材20の近位に存在する、近位管部分44、および2)通常は実質的に支柱部材20を取り囲み、支柱部材20に対して等しい高さにある遠位管部分46。支柱部材20に対して半径方向に圧縮する力(例えば、締まり嵌め)に起因して、遠位管部分46は、通常は横断チャネル34を閉塞し、その結果、閉モードにある場合には、第2のシールとして作用する。このシールならびに管状部分38および42に加えて、グランド28はまた、(上記のように)支柱部材20とハウジング18との間に固定される取付け部48を有する。
【0027】
閉の場合(これが通常の状態である)には、バルブ10は、近位ポート12と遠位ポート16との間の流体連絡を妨げるめに、その2つの余分なシールを使用する。具体的には、グランド28は、横断チャネル34を通る流体流れを妨げ、一方でスリット40は、シールセクション38を通る流体の流れを妨げる。いくつかの実施形態において、グランド/横断チャネルシールは、スリット40が耐え得る背圧よりもより高い背圧に耐え得る。
【0028】
グランド28の近位端でスリット40を取り囲む表面に対するノズルの挿入は、バルブ10を開く。具体的には、ノズルの挿入は、グランド28のシールセクション38および管状部分42を圧縮させ遠位方向に移動させる。その結果、スリット40は開き、シールセクション38は、軸方向に圧縮し、かつ半径方向に膨張する。同様にして、管状部分42は、軸方向に圧縮し、かつバルブ内部の中央部分26の中へ/中央部分26内で半径方向に膨張する。閉モードから開モードへの推移における何らかの地点で、管状部分42は、もはや横断チャネル34と接触せず(すなわち、もはや閉鎖しない)、その結果、バルブ10を完全に開ける。当業者は、ノズルが予め特定された量だけ挿入された後に、バルブ10が開くように、(横断チャネル34に)グランド28の半径方向内側への圧力を配置し得る。
【0029】
開の場合は、上記可変容積領域は、「開容積」を有すると考えられ、この容積は、上記の軸方向の圧縮および半径方向の膨張に基づく。対応する様式において、閉の場合は、この可変容積領域は、「閉容積」を有すると考えられる。例示的な実施形態において、グランド28の材料および寸法は、1)開容積と閉容積との両方が、実質的に等しいか、または2)開容積が、閉容積よりも大きいことを確実にするように選択される。
【0030】
この実施形態において、上記流路の他の領域は、実質的に一定であるので、バルブ10の流路内の流体を収容するための全容積は、可変容積領域に対応する様式で変化する。従って、可変容積領域の容積が増加する場合、その流路の全容積は増加する。同様にして、可変容積領域の容積が減少する場合、その流路の全容積は減少する。
【0031】
開容積および閉容積が実質的に等しい場合、ノズルが引き込められる際のノズルのストローク(すなわち、「引き込みストローク」)の間に遠位ポート16での分かるほどの正味の陽圧または正味の陰圧は存在してはならない。特に、引き込みストロークの間に、上記可変容積領域は、厳密に一定の容積を維持しなくてもよく−絶えず変動してもよいことが予想される。このような場合、引き込みストロークの特定の地点で、遠位ポート16は、少量の流体を引き得る。しかし、引き込みストロークの他の地点で、遠位ポート16は、少量の流体を押し出し得る。いずれの場合においても、遠位ポート16から何らかの無視し得る流体の還流および流体の正の放出があり得る。しかしながら、実質的に等しい開容積および閉容積をともなう種々の実施形態は、遠位ポート16中の、または遠位ポート16からの正味の流体(すなわち、引き込みストローク全体の間の正味の流体量)は、無視し得る量以下であることが確実である。いくつかの実施形態において、バルブ10は、これらの容積が、少なくとも横断チャネル34が開かれた後に、実質的に一定に留まることを確実にするように構成され得る。
【0032】
逆に、開容積が閉容積よりも大きい場合、ノズルが引き込まれた場合に、遠位ポート16で陽圧が発生する。従って、その場合、バルブ10内の分かるほどの量の流体が遠位ポート16から押し出される。流体を押し出すことは、その際に流体がバルブ10の中へ引かれることを防げるはずである。
【0033】
バルブ10は、従来のプロセスに従って製造され得る。例えば、ハウジング18および支柱部材20は、剛直なプラスチックから作製され得る一方、グランド28は、医療用グレードのエラストマー材料(例えば、シリコーンまたはゴム)から形成され得る。類似の特性を有する他の材料は、使用され得るが、しかし、それはそれらが本明細書中に考察される機能を発揮し得る限りにおいてである。
【0034】
組立ての間、グランド28は、最初に、ハウジング18の中へ挿入され得、次いで支柱部材20が、ハウジング18に固定され得る。しかし、他の組立て方法は、最初にグランド28および支柱部材20を単一の(結合されない)組立て部品として結合し得る。この組立て部品は、次いでハウジング18の遠位端に挿入され得る。当然、バルブ10を組立てる他の方法が、使用され得る。従って、特定の方法の考察は、例示的なものであり、本発明の種々の実施形態の範囲を限定することを意図されない。いずれの場合にも、ハウジング18および支柱部材20は、従来の手段(例えば、スナップ嵌め)により、一緒に固定され得る。あるいは、上記ハウジングおよび支柱部材20は、超音波溶接により一緒に固定され得る。
【0035】
図3は、図1に示される医療用バルブ10の第2の実施形態の断面図を概略的に示す。ハウジング18は、遠位ハウジング部分15に結合する近位ハウジング部分13を備える。とりわけ、遠位ハウジング部分15は、ねじ状スカート40、支柱部材20、および近位ハウジング部分13に結合するための機構を備える。図3に示される実施形態において、スナップ嵌め機構が使用される。しかし、上記のように、他の従来の結合方法が使用されてもよい。
【0036】
図3に示される実施形態におけるグランド28はまた、支柱部材20の上に嵌合するグランド部分内に複数の薄い部分52を有する。薄い部分52は、グランド28を遠位方向に押すための十分な支柱強度を維持しつつ、支柱部材20の上でグランドの伸縮を容易にする。
【0037】
図4は、図1に示される医療用バルブ10の第3の実施形態の、線X−Xに沿った断面図を概略的に示す。バルブ10のこの実施形態は、例示的に、3つの構成要素から作製される;つまり、入口12を有する近位ハウジング部分13、出口16を有する遠位ハウジング部分15、およびグランド28。2つのハウジング部分18および20は、硬質のプラスチック材料から形成され、一緒にスナップ嵌めされるかまたは溶接され、バルブ本体/ハウジング14を形成する。
【0038】
他の実施形態に類似の様式で、ハウジング部分18および20は、特定形状の内部を形成する。具体的には、この内部は、ノズルを受けるためのテーパー状の近位領域22、長手方向に隣接し遠位方向に広がる領域24、およびより大きい中心領域26を有する。これらの領域は、例示的には、図2を参照して上で考察されたこれらの対応する領域に類似である。
【0039】
遠位ハウジング部分15はまた、凸状近位部分で終結する固定の中空の支柱部材20を有する。例示的に2つの通し穴を有する輪状の溝(これ以降、「溝54」)が、支柱部材20の外側表面の周りに、外周方向に形成される。これらの通し穴は、横断チャネル34を効果的に形成し、従って、また参照番号34により同定される。これら2つの通し穴34は、支柱部材20を通って延びる流れチャネル36へのポートを形成する。
【0040】
本発明の例示的な実施形態に従って、バルブ10はまた、弾性、圧縮可能かつ引き伸ばし可能なグランド28を有し、このグランド28は、支柱部材20の周りに配置され、そして近位ハウジング部分13と遠位ハウジング部分15との間に固定される。より具体的には、グランド28は、例示的には、支柱部材20の上に配置されて、閉モードにある場合は、通常、バルブ10を通る流体流れを閉塞する。そのために、グランド28は、その内壁から半径方向内側に延びるシール用隆起58を有する。支柱部材20との密な嵌合を確実にするために、シール用隆起58は、閉モードにある場合は、通常は、溝54とぴったり噛合っている。従って、溝54およびシール用隆起58は、噛合う場合に2つの通し穴34を閉じるために、補完的な形状であるように形成される。
【0041】
シール用隆起58と溝54との間の確実な嵌合を確実にするために、グランド28は、通常は半径方向内側に予め負荷される力を付与するような様式で、ハウジング内部の内にに固定される。そのために、シール用隆起58は、近位ハウジング部分13と遠位ハウジング部分15との間に通常は圧縮可能に固定されるシールリング60の一部分である。さらに、シールリング60は、通常は、溝54内での確実な嵌合を確実にする半径方向に圧縮する力の下にあり、従って、2つの通し穴34を通る流体流れを閉塞する。半径方向の力の量は、バルブ10のこの部分が、比較的高い背圧(例えば、予想される使用の間に生じ得るより高い圧力(例えば、約60p.s.i.までの圧力または約60p.s.i.よりも大きい圧力))に耐え得る高圧シールを効果的に形成することを確実にするように、設計の間に選択され得る。しかし、他の実施形態は、予めの負荷を排除する。
【0042】
例示的な実施形態において、グランド28はまた、通常は、バルブ10の入口12と同じ高さであるか、またはわずかにその上に延びるシールセクション38を有する。従って、他の実施形態と類似の様式で、バルブ10は、「拭き取り可能」ルアー注射器活性化型バルブであると考えられる。シールセクション38は、低圧シールとして作用するように構成される。より具体的には、シールセクション38は、通常は閉じているスリット40を有する。入口12の中へ挿入される場合、ノズルまたは注射器は、シールセクション38を変形させ、その結果、この低圧シールを開く。
【0043】
本明細書中で考察される種々の実施形態において、スリット40は、グランド28がハウジング14内に据付けられない場合は、通常は閉じられている。従って、半径方向の力は、スリット40を閉じるために(ハウジング14により)必要とはされない。実際、いくつかの実施形態において、シールセクション38の外寸は、入口12の内寸よりも小さい。しかし、代替の実施形態において、入口12の内寸は、グランド28のシールセクション38の外寸よりも小さい。その結果、このような実施形態において、ハウジング14は、シールセクション38を締め付け、それによってスリット40を押して閉じる。当業者は、バルブ10が閉モードにある場合に、スリット40の閉鎖を確実にするように、入口12を形作り得る。
【0044】
上記のように、高圧シールは、比較的高い圧力に耐え得ることが予想される。従って、この高圧シールの性能に起因して、低圧シール(すなわち、シールセクション38を介してのスリット40)が大きい背圧に抵抗することは必要ではない。しかし、いくつかの実施形態において、低圧シールはまた、相対的に高い背圧に抵抗するように形成され得る。
【0045】
シールセクション38およびシールリング60に加えて、グランド28はまた、シールセクション38のいくらか緩く規定される遠位端から遠位に、ハウジング14の近位方向に面した内面まで延びる主要部分62を有する。実際、シールリング60は、グランド28の主要部分62から半径方向外側に延びる。従って、バルブ10は、2つの部分を有する流路を有する;つまり、主としてグランド28により形成される動的部分64(すなわち、可変容積領域)、および部分的に支柱部材20により形成される静的部分66。より具体的には、動的部分64は、一般に、グランド28と支柱部材20との間に形成される領域を含む。従って、この部分50は、スリット40から、グランド主要部分62を通って支柱部材20の2つの通し穴34まで、そしてハウジング内部の基部まで延びる。静的部分66は、支柱部材20の内部から、出口16まで延びる。言い換えれば、支柱部材を貫くルーメンは、静的部分66を形成する。
【0046】
上で考察された他の実施形態と類似の様式で、グランド28の主要部分62は、上記流路の動的部分64の容積を変えるように、長手方向に圧縮可能であり、かつ半径方向に膨張可能である。特に、ノズル(例えば、ルアー注射器)が入口12に挿入される場合、グランド28のシールセクション38は、つぶれて(上記のように)スリット40を変形させる。しかし、同時に、グランド28の主要部分62は、長手方向に圧縮しかつ半径方向に膨張する。十分な量の半径方向の力がグランド主要部分62に付与された場合、シール用隆起58は、溝54とのそのぴったり噛合った接触から半径方向外側に動く。言い換えれば、シールリング60での半径方向の力が、シールリング60により付与される予め負荷された半径方向内側の圧縮力に等しいか、またはそれよりもわずかに大きい場合、シール用隆起58は、通し穴34との閉塞する接触から半径方向外側へ動く。その結果、2つの通し穴34は開き、従って、バルブ10を通る流体流れが可能になる。
【0047】
上記のように、いくつかの実施形態において、(挿入されたノズルに応答した)グランド28の圧縮作動および膨張作動によって、流路の動的部分64の形状が、変化する。その形状が変化するものの、動的部分64の正味の容積が、バルブ10が開モードと閉モードとの間で推移するとき、実質的に一定のままであることを確実にするように、ニュートラルの実施形態が構成される。そのため、近位ハウジング部分13の内壁間のクリアランスの量は、グランド28の予期される圧縮特性の関数として選択される。結果として、出口16は、無視できない陽圧も陰圧も発生せず、このようにして、無視できない流体の引き戻しを排除する。
【0048】
代替の実施形態において、流路の動的部分64の内部容積は、開位置と閉位置との両方で実質的に同じであるものの、バルブ10がこのような位置の間を推移するとき、変動し得る。なお他の実施形態において、内部容積は、バルブ10が閉位置にある場合よりも、開位置にある場合により大きい。このような場合、バルブ10は、閉じている間、出口16を通る遠位方向の陽圧を生じる。従って、このような実施形態において、流体は、バルブ10が閉位置に向かって動く場合、出口16を通って押し出される。
【0049】
いくつかの実施形態において、グランド28の内部容積は、ノズルの貫通深さに依存する。詳細には、内部容積は、バルブ10内の特定の深さまで実質的に一定のままであり得る。しかし、さらなる遠位方向の挿入によって、内部グランド容積は、増加し得る。なお他の実施形態において、ノズルの長手方向深さに依存して、バルブ10の内部容積は、開位置と閉位置との間でのその進行の間、異なる時点において特定の量の流体引き込みおよび遠位方向の流体圧力の両方を有し得る。停止部材(図示せず)が、ノズルの挿入深さを制限するために、ハウジング14の内部に挿入され得る。
【0050】
グランド28は、種々のグランドおよびハウジングの設計パラメーターを適切に選択することによって意図されるように作動する。例えば、とりわけ、グランドのデュロメター硬度および可撓性(モジュラス)は、適切なグランドおよびハウジングの寸法と調和し、従って、所望の最終性能を提供するように選択される。反復試験プロセスもまた、グランド性能を微調節するために使用され得る。コンピューターシミュレーションツールによって、さらに、試験プロセスが向上され得る。例えば、グランド28の性能は、有限要素ソフトウェア(「FEA」ソフトウェア)(例えば、Rhode Island、WarwickのAbaqus East LLCによって配給される、ABAQUS EXPLICIT FEAソフトウェア)によってモデル化され得る。
【0051】
使用において、ニュートラル設計(すなわち、グランド28が位置の推移の際に実質的に同じ容積を維持する設計)が、その出口16を通した無視し得る量の流体の引き込みまたはポジティブな押しを引き起こすいくつかのエラー要因を有し得ることが予期される。しかし、このような無視し得る量は、ニュートラル設計の一般的な目的に対して主し得る影響を有するにすぎない。
【0052】
さらに、いくつかの実施形態は、その滅菌性をさらに保護するために、ハウジング14の内部を慣用的に利用可能な抗菌コーティングでコーティングし得る。あるいは、慣用的な抗菌剤が、ハウジングまたはグランドの材料内に直接組み込まれ得る。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態は、3つより多くの注目すべき構成要素(すなわち、近位ハウジング部分13、一体化した支柱部材20を有する遠位ハウジング部分15、およびグランド28)を有する。例えば、バルブ10はまた、シールリング60をその内部にさらに固定するために、その内部にグランド固定部材80を備え得る。もちろん、例示的実施形態は、このような部材を遠位ハウジング15内に組み込む。
【0054】
従って、例示的実施形態において、シール用隆起58に適用される半径方向内側の応力(「フープ応力」としても当該分野で呼ばれる)は、通常、バルブ10を通る流体流れを閉塞する。さらに、流路の動的部分64の容積は、バルブ10を通る流体の引き込みを実質的に排除する。
【0055】
図5は、閉位置における医療用バルブ10の第4の実施形態の断面図(図1の線X−Xに沿う)を概略的に示す。さらに詳細には、図5は、引っ込めストロークの間の流体引き戻しを実質的に排除するようにも構成された、図1に示される医療用バルブ10の実施形態の断面図を概略的に示す。上記のように、この減少は、遠位ポート16において陽圧、または遠位ポート16における正味ゼロの圧力のいずれかを生じ得る。
【0056】
とりわけ、バルブ10は、弾性、圧縮可能かつ引き伸ばし可能なグランド28を備えるハウジング14を備える。より詳細には、ハウジング18は、支柱部材20を組み込む遠位ハウジング15と連結された近位ハウジング部分13を備える。任意の慣用的な連結手段(例えば、超音波溶接または慣用的なスナップ嵌め技術)が使用され得る。グランド28および支柱部材20は、バルブ10を通る流体流れを制御するように協働する。例示の実施形態において、グランド28は、2つのハウジング部分の間でバルブ10内に固定される。支柱部材20とグランド28との相互作用の詳細は、以下に考察される。
【0057】
図5に示される実施形態において、支柱部材20は、閉じた凸状近位端および内部支柱部材流れチャネル36へと導く横断チャネル34を有する。他の実施形態と類似の様式で、支柱部材流れチャネル36は、遠位ポート16で終結する遠位流れチャネル68に合流する。従って、グランド28は、通常、横断チャネル34を閉塞するように予め装填され、流体流れを妨げる。下方向圧力の(例えば、ノズルによる)適用によって、グランド28は、横断チャネル34から分離し、結果として、バルブ10を開く。開く場合、流体は、1)横断チャネル34を経由し、2)支柱部材流れチャネル36を通り、3)遠位流れチャネル68を通り、そして4)遠位ポート16を出るように、支柱部材20内に流れ得る。
【0058】
他の実施形態と類似の様式で、グランド28は、バルブ10の内部内の唯一の可動部分である。このために、グランド28は、中を通る通常閉じたスリット40を有する拭き取り可能シールセクション38、シールセクション38からその基部へと延びる主要部分62、およびバルブ10内でグランド28を固定する半径方向取り付け部48を有する。本発明の例示的実施形態に従って、主要部分62は、複数の半径方向に突出するローブ(lobe)72を有する比較的厚みのある主要壁70を有する。ローブ72は、好ましくは、主要部分62の壁(すなわち、主要壁70)よりも薄い壁を有する。結果として、ローブ72は、主要壁70よりも少ない抵抗で膨張する。従って、ローブ72は、主要部分壁70よりも大きな距離で半径方向に膨張する。グランド28のこの部分の詳細は、以下にさらに詳細に考察される。
【0059】
グランド28の主要部分62はまた、通常横断チャネル34を閉塞し、結果として、閉モードの場合に、注記された第2のシールとして作用する閉塞部分74を有する。従って、バルブ10は、2つのシール領域(すなわち、横断チャネル34のシールおよびシールセクション38のスリット40)を有する。従って、閉じた場合、その正常状態で、バルブ機構は、近位ポート16と遠位ポート16との間の流体連絡を妨げるために、その2つの余分なシールを使用する。詳細には、閉じた場合、グランド28は、横断チャネル34を通る流体流れを妨げ、一方、スリット40は、シールセクション38を通る流体流れを妨げる。
【0060】
いくつかの実施形態において、グランド/横断チャネルシールは、スリット40が耐えるよりも高い背圧に耐え得る。このために、閉塞部分74は、支柱部材20に対して約0.010インチの締まりばめを有するように形成され得る。バルブ10がより高い背圧に耐え得ることに加えて、支柱部材20に対する閉塞部分74の適合はまた、バルブ10の開くストロークにおいて適切な点で横断チャネル34を開くように選択される。
【0061】
図6は、図2に示されるグランド28の斜視図を概略的に示す。示されるように、グランド28は、主要部分62から延びる4つのローブを有する。ローブ72のそれぞれは、主要部分62に沿って、2つの他のローブ72から約90°半径方向に間隔を開けて配置される。代替の実施形態において、ローブ72は、グランド28の円周の周りに間隔をおいて配置されるよりもむしろ、長手方向に間隔をおいて配置され得る。言い換えると、グランド28は、そのより長い寸法に沿って間隔を開けて配置された2つ以上のローブ72を有し得る。さらに、取り付けセクション48は、バルブ10内でグランド28をさらに固定するために、円周隆起76およびフランジ78を有する。
【0062】
図7は、ローブ72と主要壁70との相対的な壁の厚みを示し、一方、図8は、グランド内部からのローブ72を示す。示されるように、主要壁は、ローブ壁70よりも数倍厚い。例えば、ローブ壁は、約0.010インチの厚みであり得、一方主要壁70は、約0.053インチの厚みであり得る。これらの相対的な厚みは、グランド28に対して十分な柱強度を提供して、圧縮された場合につぶれる可能性を最小化する。全体的につぶれる代わりに、ローブ72は、ある程度半径方向に膨張し、一方主要壁70は、その半径方向位置を実質的に維持する(弁の作動に有害に影響しないいくらかの膨張または変形に供される)。しかし、いくつかの実施形態において、主要壁70はまた、ローブ72が膨張する場合、半径方向に膨張する。
【0063】
グランド28の近位端においてスリット40に対してノズルを挿入すると、シールセクション38は、圧縮しかつ遠位に移動する。結果として、スリット40は、開き、シールセクション38は、軸方向に圧縮しかつ半径方向に膨張する。類似の様式で、主要部分62は、軸方向に圧縮しかつ半径方向に膨張する。詳細には、ローブ72は、半径方向に膨張し、一方主要壁70は、それほど有意でない程度に半径方向に膨張する。
【0064】
しかし、ノズルがバルブ10内に完全に挿入される前に、ローブ72が最大容積に達することが予期される。この点の後、ローブ72は、ある程度軸方向に圧縮し、これは、ローブ72の内部からいくらかの陽圧を生じ得る。対応する様式において、ノズルを完全な挿入から引き出す場合、ローブ72が実際に、収縮する前に、ある程度膨張し得ることが予期される。従って、ノズルの引き出しの間、いくらかの陰圧がバルブ10内に流体を引き込み得る。これらの不完全さにも関わらず、ローブ72が最終的に、ノズルがバルブ10から完全に引き出されるときまで、所望の抗引き戻し効果を生じることが予期される。このように、注記されるローブ圧縮のネガティブな影響は、バルブ10の全体的な作動に対して無視し得る影響を有すると予期される。
【0065】
閉モードから開モードへの推移におけるいくつかの点で、グランド28の閉塞部分74は、もはや、横断チャネル34と接触せず(すなわち、もはや閉塞せず)、結果として、バルブ10を完全に開く。開いた場合、可変容積領域の容積は、注記されるグランドの軸方向の圧縮および半径方向の膨張に基づく。例示される実施形態において、グランド28の材料および寸法は、1)開容積および閉容積の両方が、実質的に等しいか、または2)開容積が、閉容積より大きいことを確実にするように選択される。
【0066】
容積が実質的に等しい場合、ノズルが引き戻されるときに、遠位ポート16における認知可能な正味の陽圧も陰圧も無い。従って、このような場合、もしあるとしても、無視し得る量の流体の引き戻しまたは遠位方向の圧力のみが生じる。逆に、開容積が閉容積よりも大きい場合、ノズルが引き出される場合に、正味の陽圧が遠位ポート16において生じる。従って、この場合、バルブ10内の認識可能な量の流体が、遠位ポート16から追い出される。この流体の追い出しは、流体が、そのときにバルブ10内に引き込まれることを妨げる。
【0067】
バルブ10は、慣用的なプロセスに従って製造され得る。他の実施形態と類似の様式において、ハウジング14および支柱部材20は、剛性プラスチックから作製され得、一方グランド28は、医療用グレートのエラストマー材料(例えば、シリコーンまたはゴム)から形成され得る。さらに、支柱部材20は、図5に示されるように、ハウジング14の出口部分内に挿入される別々の片であり得るか、またはハウジング14と一体的であり得る。後者の場合、支柱部材20は、ハウジング14の一部とみなされる。これは、他の実施形態にも当てはまる。
【0068】
上記考察が本発明の種々の例示的な実施形態を開示するが、当業者が、本発明の真の範囲を逸脱することなく、本発明の利点のいくらかを達成する種々の改変を行い得ることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−147809(P2011−147809A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−97509(P2011−97509)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2006−521904(P2006−521904)の分割
【原出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(506029118)ナイプロ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】