説明

抗真菌剤組成物

【課題】 水虫症状の原因が、白癬菌属かカンジダ属かという区別無く治療効果の高い薬剤を提供する。
【解決手段】 (A)アゾール系外用抗真菌剤及び(B)モルホリン系外用抗真菌剤、パラベン及び月桃抽出物から選択される1又は2以上の化合物を組み合わせたことを特徴とする外用抗真菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗真菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾール系抗真菌剤であるラノコナゾールは公知の化合物であり、農園芸用殺菌剤として有用であること(特許文献1)、抗真菌剤として有用であること(特許文献2)及びその光学活性体の有用性について知られている(特許文献3)。
【0003】
2−(1,3−ジチオラン−2−イリデン)−1−アゾリルアセトニトリル化合物及びピロールニトリンをはじめとする抗真菌活性化合物との組合せによる白癬菌及びカンジダ菌効果に対する抗真菌作用が検討されている(特許文献4)。抗真菌活性化合物は、具体的には、ピロールニトリン、ウンデシレン酸亜鉛、シクロピロスクオラミン、塩化ベンゼトニウム、ハロプロジン、トルナフタート又は塩酸クロルヘキシジン等の化合物が開示されている。
【0004】
アモロルフィン(一般名、化学名:(±)−シス−2,6−ジメチル−4−〔3−〔4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル〕−2−メチルプロピル〕モルホリン)又はその塩類の混合剤の例としては、局所的及び全身的抗真菌活性成分及び生理学的に許容されるラッカー基剤の配合物からなる製剤が開示されている(特許文献5、6)。本製剤は、爪真菌症の上述の局所的/全身的併用療法に伴う、副作用等の既知の欠点のない製剤である。たとえば、全身的抗真菌剤であるイトラコナゾールは、ラッカー基剤中に局所的抗真菌剤としてのアモロルフィン等と併用すれば、局所適用後、尿素付加等によらないで治療有効濃度が爪を通して浸透することが記載されている。
【0005】
エチルパラベン等のパラベン類は古くから知られた防腐・抗菌剤である。月桃精油は、ショウガ科のAlpinia属の月桃から抽出される精油で、様々な作用を持つ物であり、白癬菌を用いた抗菌作用試験が開示されている(特許文献7)。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−218387号公報
【特許文献2】特開昭62−93227号公報
【特許文献3】特開平2−275877号公報
【特許文献4】特開2002−114680号公報
【特許文献5】特公昭60−26105号公報
【特許文献6】特表2003−525910号公報
【特許文献7】特開平5−201821号公報、実施例6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に治りにくいといわれている水虫の治療には、長期間薬を塗布しなければならず、また、その再発が多いことが永年問題になっている。水虫のより根本的な治療には、菌の活動を抑制するだけでなく、治療効果の高い薬剤の開発が望まれている。さらに、水虫症状の原因が、白癬菌属かカンジダ属かという区別は専門医が顕微鏡でみるか、菌を培養することによってのみ判別できるものであり、判別が難しいことから双方に効く薬剤が重要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、白癬菌属及びカンジダ属の双方に効力を有する治療剤を見出すべく検討した。その結果、アゾール系外用抗真菌剤、特に〔4−(2−クロロフェニル)−1,3−ジチオラン−2−イリデン〕−1−イミダゾリルアセトニトリル(一般名:ラノコナゾール)とある種の外用抗真菌剤及び/又は殺菌剤を含有した外用抗真菌剤が、有意に効力を相乗的に増強することを見出し、その知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)(A)アゾール系外用抗真菌剤及び(B)モルホリン系外用抗真菌剤、パラベン及び月桃抽出物から選択される1又は2以上の化合物を組み合わせたことを特徴とする外用抗真菌剤。
(2)アゾール系外用抗真菌剤が、ラノコナゾール、ルリコナゾール、ビフォナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、チオコナゾール、クロコナゾール、エコナゾール、イソコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール、ネチコナゾール、セルタコナゾール及びオキシコナゾールから選択される1又は2以上のアゾール系外用抗真菌剤である(1)に記載の外用抗真菌剤。
(3)アゾール系外用抗真菌剤がラノコナゾールである(1)に記載の外用抗真菌剤。
(4)パラベンがエチルパラベンである(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
(5)月桃抽出物が月桃精油である(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
(6)モルホリン系外用抗真菌剤がアモロルフィン又はその塩類である(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
(7)(A)アゾール系外用抗真菌剤及び(B)モルホリン系外用抗真菌剤、パラベン及び月桃抽出物から選択される1又は2以上の化合物の合計量の重量比率(A):(B)が1:640000〜100:1である(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
(8)外用抗真菌剤全体に対して(A)アゾール系外用抗真菌剤0.01〜10重量%及び(B)モルホリン系外用抗真菌剤、パラベン及び月桃抽出物から選択される1又は2以上の化合物の合計量0.025〜20重量%からなる(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
(9)外用抗真菌剤が医療用外用抗真菌剤である(1)乃至(8)のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
【発明の効果】
【0010】
モルホリン系外用抗真菌剤若しくはその塩類、パラベン及び月桃抽出物から選択される外用抗真菌剤又は殺菌剤及びアゾール系外用抗真菌剤特にラノコナゾールの組み合わせにより抗真菌作用が相乗的に増強される。したがって、本発明の薬剤は、白癬菌及びカンジダに対して効力の強い抗真菌作用を示し、短期間に治療効果をあげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
本発明におけるアゾール系外用抗真菌剤は特に限定されないが、例えばラノコナゾール(一般名、化学名:〔4−(2−クロロフェニル)−1,3−ジチオラン−2−イリデン〕−1−イミダゾリルアセトニトリル)、ルリコナゾール(一般名、化学名:(R)−(+)−(E)−〔4−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジチオラン−2−イリデン〕−1−イミダゾリルアセトニトリル)、ビフォナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、チオコナゾール、クロコナゾール、エコナゾール、イソコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール、ネチコナゾール、セルタコナゾール又はオキシコナゾールからなる群より選択される1種又は2種以上の外用抗真菌剤が挙げられる。好ましくはラノコナゾール又はルリコナゾールであり、ラノコナゾールが特に好ましい。本発明のアゾール系外用抗真菌剤は、塩の態様であってもよく、本明細書における「アゾール系外用抗真菌剤」なる用語は塩をも包含する概念である。
【0013】
塩類とは特に限定されるものではないが、薬理学的に許容される塩類であれば良く、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸との塩、酢酸、蓚酸、琥珀酸、メタンスルホン酸等の有機酸との塩、銅、亜鉛等の金属類との塩などが挙げられる。
【0014】
本発明におけるモルホリン系外用抗真菌剤としては特に限定されないが、例えば、アモロルフィン又はその塩類が挙げられる。アモロルフィン又はその塩類の好ましい態様としては、塩酸アモロルフィンが好ましい。
【0015】
本発明におけるパラベンとしては、例えばメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等が挙げられるが、好ましくはエチルパラベンである。
【0016】
本発明における月桃抽出物の月桃は、ショウガ科のAlpinia属植物であって、月桃(Alpinia pesionsa K. Schum.)、タイリン月桃(Alpinia urarensis Hay.)、フイリ月桃(Alpinia sanderae Sand.)、ヤクチ(Alpinia oxyphilla l.)、タイワン月桃(Alpinia sp.)などが存在する。月桃は、沖縄、小笠原、台湾、東南アジアに自生する多年生植物で、熱帯・亜熱帯の生産性の高いバイオマスである。
本発明における月桃抽出物には、例えば、上記月桃から選択される植物の葉を水蒸気蒸留した月桃精油、根や種子を粉砕後抽出したもの等が用いられるが、入手の容易性や成分内容からは、市販の月桃精油を用いるのが好適である。抽出物の製造における抽出は、必要に応じて有機溶媒等を用いて実施することもできる。また、抽出物は粗抽出物を用いても良く、又は月桃精油あるいは更に精製したものを用いることもできる。好ましくは月桃精油である。
【0017】
各成分の含有量は用途や製剤・剤型等により異なるため特に制限はないが、通常は、アゾール系外用抗真菌剤(A)は、外用抗真菌剤全体に対して0.000001〜10重量%程度であり、好ましくは0.0001〜5重量%であり、さらに好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%である。
化合物(B)群は、化合物により異なるが、2種以上含む場合はその合計量が、外用抗真菌剤全体の下限0.02%程度、上限64重量%程度である。好ましくは0.025〜20重量%、さらに好ましくは、0.2〜20重量%程度であり、特に好ましくは、0.5〜10重量%である。より詳しくは、外用抗真菌剤全体に対するモルホリン系外用抗真菌剤の含有量は0.05〜10重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%である。外用抗真菌剤全体に対するパラベンの含有量は0.01〜64重量%であり、好ましくは0.2〜20重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。外用抗真菌剤全体に対する月桃抽出物の含有量は0.05〜64重量%であり、好ましくは0.1〜20重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0018】
(A)アゾール系外用抗真菌剤及び(B)モルホリン系外用抗真菌剤、パラベン及び月桃抽出物から選択される1又は2以上の化合物の合計量の重量比率(A):(B)は1:640000〜100:1が挙げられる。好ましくは1:64000〜10:1であり、特に好ましくは1:16000〜2:1である。
【0019】
また各成分の重量比については、アゾール系外用抗真菌剤は、モルホリン系外用抗真菌剤1重量部に対し、0.03〜10重量部であり、好ましくは0.05〜2重量部である。アゾール系外用抗真菌剤は、パラベン1重量部に対し、0.000006〜10重量部であり、好ましくは0.000015〜2重量部である。アゾール系外用抗真菌剤は、月桃抽出物1重量部に対し、0.0000015〜10重量部であり、好ましくは0.000006〜2重量部である。
【0020】
本発明の外用抗真菌剤は、(A)アゾール系外用抗真菌剤(以下(A)とする)と(B)モルホリン系外用抗真菌剤、パラベン及び月桃抽出物から選択される1又は2以上の化合物(以下(B)とする)とを組み合わせてなるもの(即ち、併用剤)であってもよく、投与時に(A)と(B)とを組み合わすことができるものであってもよい。従って、本発明の外用抗真菌剤は、投与時に(A)と(B)とを組み合わすことができるものであれば、(A)と(B)とを同時に製剤化して得られる単一の製剤であっても、(A)と(B)とを別々に製剤化して得られる2種の製剤を組み合わせたものであってもよい。投与形態は、特に限定されず、例えば、(1)(A)と(B)とを含有する組成物、即ち、単一の製剤としての投与、(2)(A)と(B)とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同時投与、(3)(A)と(B)とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の時間差をおいての投与(例えば(A)と(B)の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)等が挙げられる。
【0021】
本発明の外用抗真菌剤は、外用剤として投与する場合、投与量は投与する患者の症状、年齢、投与方法等によって異なるが、成人1日当たり、(A)として通常0.0016μg/kgから17mg/kg/day程度、好ましく1日3回、0.1μg/kg/回 から1.6mg/kg/回程度、より好ましくは1日1回、84μg/kg/回程度である。同様に、1日あたりの投与量は、(B)として通常0.3μg/kgから11mg/kg/day程度、好ましく1日3回、3μg/kg/回から3.3mg/kg/回程度、より好ましくは1日1回、0.8mg/kg/回程度である。
【0022】
本発明の外用抗真菌剤は、必要に応じて公知の添加剤などを混合して常法により、クリーム剤、液剤、ローション剤、乳剤、チンキ剤、軟膏剤、水性ゲル剤、油性ゲル剤、エアゾール剤、パウダー剤、シャンプー、石鹸、爪塗布用エナメル剤などの外用製剤等とすることができる。
【0023】
本発明の外用抗真菌剤には、上記成分の他に水溶性成分、油性成分、粉末成分、界面活性剤、高分子成分、増粘剤、粘着性改良剤、被膜形成剤、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、保存剤、保型剤、保湿剤、皮膚保護剤、清涼化剤、香料、着色剤、キレート剤、潤沢剤、抗炎症剤、鎮痒剤、血行促進剤、収斂剤、組織修復促進剤、制汗剤、植物抽出成分、動物抽出成分等を必要に応じて配合することができる。
【0024】
水溶性成分としては、例えばプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エタノール等の低級アルコール類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等の低分子ケトン類、マクロゴール類などが挙げられる。
【0025】
油性成分としては、例えばオレイルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、セタノール、ベンジルアルコール等の高級アルコール類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ラノリン等の脂肪酸エステル類、牛脂、オリーブ油等の中鎖脂肪酸トリグリセリド類、スクワレン、スクワラン等の脂肪酸、ホホバ油、ゲイロウ、白色ワセリン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、l−メントール、d−カンファー、シネオール、ゲラニオール、リモネン、プレゴン、チモール、アフィジコリン、ホルスコリン、フィタン酸、フィトール等のテルペン類、乳酸メンチル等のテルペノイドのカルボン酸エステル類、クロタミトン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2−メトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類などが挙げられる。
【0026】
有機、無機粉末成分としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、カオリン、アエロジル、酸性白土、マイカ、トウモロコシデンプン、メタケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
【0027】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。
【0028】
増粘、被膜形成、接着性改良、その他を目的とする高分子としてはアクリル酸ポリマー、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエーテル類、キサンタンガム等の多糖類などが挙げられる。
pH調整剤としては、例えばクエン酸、乳酸、酒石酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の有機酸類、ピロリン酸ナトリウム等の有機酸塩類、水酸化ナトリウム等の無機塩基類、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類などが挙げられる。
抗酸化剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、α−トコフェロール、エリソルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としてはEDTA−2Naなどが挙げられる。
【0029】
防腐剤又は保存剤としてはベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸等が挙げられる。保型剤としては、例えば植物性テキシトリン・蔗糖エステル等が挙げられる。保湿剤としては、例えばヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、グリコシルトレハロース、キシリトール、ソルビトール等の糖類、コラーゲン、アルギニン、加水分解シルク、セリシン等の蛋白質やアミノ酸類、乳酸ナトリウム、後述の植物抽出成分等が挙げられる。皮膚保護剤としては、例えばリボフラビンリン酸ナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、シアノコバラミン等のビタミン誘導体類、グリコシルルチン等のポリフェノール類、ヒドロキシプロリン、ジパルミトイルヒドロキシプロリン等のヒドロキシプロリン又はその誘導体、セラミド、アミノカプロン酸、ステアロキシメチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸等のシロキサン誘導体、セレブロシド等の糖脂質類等が挙げられる。
【0030】
清涼化剤としてはハッカ(l−メントール)、カンフル、エタノール、ユーカリ油等が、香料としては、例えば、着色剤としては、特に限定は無いが例えば赤色202号、酸化鉄等が、キレート剤としては、例えばEDTA−2Na(エデト酸塩)、エチドロン酸4Na、三リン酸5Na、ペンテト酸5Na等が、潤沢剤としては、例えばシリカ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0031】
抗炎症剤、鎮痒剤としては、クロタミトン、グリチルリチン酸塩、オレアノール酸等のサポゲニン類、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、ジメンヒドリナート、プロメタジン等の抗ヒスタミン剤、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、アミノ安息香酸エチル及びこれらの塩等の局所麻酔剤、アラントイン、オキシポリエントキシドデカン、アミノ安息香酸エチル等が挙げられる。尿素、フタル酸ジエチル等の有機酸エステル類、乳酸等の有機酸類、鯨蝋、コレステロール等の油脂類等の角質軟化剤を添加することもできる。血行促進剤としては、例えばニコチン酸ベンジル、ヘパリン類似物質、トウガラシ等が、収斂剤としては、例えば塩化アルミニウム、アルジオキサ等が挙げられる。組織修復促進剤としては、例えばアルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート、塩化リゾチーム等が、制汗剤としては、例えばハロゲン化アルミニウム、ヒドロキシハロゲン化アルミニウム、オキシハロゲン化ジルコニウム、ヒドロキシハロゲン化ジルコニウム、及びそれらの混合物のようなアルミニウム塩及びジルコニウム塩等のアルミニウム、ジルコニウム及び亜鉛の無機塩及び有機塩若しくは錯体及びそれらの混合物等、クエン酸、乳酸、こうじ酸、メントール等が挙げられる。
【0032】
植物抽出成分としては、例えばアロエエキス、オウゴンエキス、ソウハクヒエキス、モモ葉エキス、クチナシ葉エキス、エゾウゴキエキス、オウバクエキス、オトギリソウエキス、米糠エキス、緑茶エキス、甘草エキス、紅藻エキス、チョウジエキス、トウキエキス、トウガラシエキス、ローズマリー油等が挙げられる。
動物抽出成分等としては、例えば冬虫夏草エキス、ローヤルゼリーエキス等が挙げられる。
これらの医薬品又は化粧品等として許容される添加物はいずれも、一般に製剤に用いられるものが使用できる。
【0033】
本発明の外用抗真菌剤は、各種白癬菌、カンジダ菌に有効である。その他の用途として、植物病原性真菌類や工業用殺菌剤の対象である真菌類の殺菌、抑制、防除にも用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下実施例、製造例及び試験例を挙げ、本発明を具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.(クリーム処方例)
ラノコナゾール 50g
塩酸アモロルフィン 50g
セトステアリルアルコール 1,000g
セバシン酸ジエチル 600g
中鎖脂肪酸トリグリセリド 800g
ポリソルベート60 400g
ソルビタンモノステアレート 200g
メチルパラベン 15g
プロピルパラベン 5g
ベンジルアルコール 100g
ジブチルヒドロキシトルエン 2g
精製水 残量
全 10,000g
【0035】
製造例1.油相成分(ラノコナゾール、塩酸アモロルフィン、セトステアリルアルコール、セバシン酸ジエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ポリソルベート60、ソルビタンモノステアレート、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、ジブチルヒドロキシトルエン)を加温混合後、冷却し攪拌しながら水相成分(メチルパラベン、精製水)を加えクリーム10,000gを製造する。
【0036】
実施例2.(液剤処方例)
ラノコナゾール 50g
エチルパラベン 1,000g
マクロゴール400 3,300g
メチルエチルケトン 1,000ml
エタノール 4,500ml
精製水 残量
全 10,000ml
製造例2.上記各成分を混合溶解して液剤10,000mLを製造する。
【0037】
実施例3.(クリーム処方例)
ラノコナゾール 100g
月桃精油 1,000g
セトステアリルアルコール 1,000g
セバシン酸ジエチル 600g
中鎖脂肪酸トリグリセリド 800g
ポリソルベート60 400g
ソルビタンモノステアレート 200g
メチルパラベン 15g
プロピルパラベン 5g
ベンジルアルコール 100g
ジブチルヒドロキシトルエン 2g
精製水 残量
全 10,000g
製造例3.製造例1.に準じてクリーム10,000gを製造する。
【0038】
試験例1.
(被験物質)ラノコナゾール、アモロルフィン、月桃精油及びエチルパラベンをジメチルスルホキシドに溶解し、溶媒で2倍希釈系列を作成した。各化合物の混合液を調製し、抗菌活性測定の際、薬剤と培地を1:99の割合で混合した。
(試験方法)感受性測定用培地としてサブロー寒天培地(DIFCO)を用いた。薬剤を含むサブロー寒天培地上に白癬菌は106分生子/mlに調製した菌液を接種し、27℃で7日間培養した。カンジダは106細胞/mlに調製した菌液を接種し、35℃で2日間培養した。抗菌活性は培養終了時に菌の発育が認められない最小の薬剤濃度(MIC:最小発育阻止濃度)からFICインデックス(Fractional Inhibitory Concentration index)を算出した。
【0039】
計算式;
FIC index = a/a0 + b/b0,
a:併用時のラノコナゾールのMIC、
a0: ラノコナゾール単独のMIC、
b:併用時のアモロルフィン、月桃精油あるいはエチルパラベンのMIC、
b0: アモロルフィン、月桃精油あるいはエチルパラベン単独のMIC
併用効果の有無を判定するための基準;
FIC index ≧2:拮抗作用、
2>FIC index ≧1:相加作用、
FIC index<1:相乗作用
【0040】
(結果)
下記各表中、薬剤「併用」時のMICの値は、各濃度組合せで併用時の抗菌効果の有無を確認し、併用による場合の各剤のMIC及びFIC indexを示している。例えば、表1でIFO5810に対するMICは、ラノコナゾールが単独0.016μg/リットルで、アモロルフィン単独0.063μg/リットルでMICを示すのに対して、アモロルフィン0.004μg/リットル若しくはより高濃度との併用でMICを示すのがラノコナゾール0.008μg/リットルの場合となっており、単独よりもそれぞれが低濃度の組み合わせでMICを示していることがわかる。相加効果、相乗効果等の判断は上記FIC indexによる。アモロルフィンが予想よりはるかに低いMICを示した結果、FIC indexが0.563となり相乗効果であることがわかる。
【0041】
表1及び2に白癬菌に対する併用効果結果を示す。ラノコナゾールとアモロルフィンを併用した場合、Trichophyton mentagrophytes及びTrichophyton rubrumに対するFICインデックスはそれぞれ0.5〜0.625及び0.25〜0.5であり、両化合物は白癬菌に対して相乗効果を示した。ラノコナゾールと月桃精油を併用した場合、Trichophyton mentagrophytes及びTrichophyton rubrumに対するFICインデックスはそれぞれ0.625〜1及び0.5〜0.625であり、両化合物は白癬菌に対して相加又は相乗効果を示した。ラノコナゾールとエチルパラベンを併用した場合、Trichophyton mentagrophytes及びTrichophyton rubrumに対するFICインデックスはそれぞれ<0.5〜<1及び<0.75〜<1であり、両化合物は白癬菌に対して相乗効果を示した。
表3にカンジダに対する併用効果結果を示す。ラノコナゾールと月桃精油を併用した場合、Candida albicansに対するFICインデックスは≦0.188〜0.313であり、両薬剤は著しい相乗効果を示した。ラノコナゾールとエチルパラベンを併用した場合、Candida albicansに対するFICインデックスは<0.625〜<1であり、両薬剤は相乗効果を示した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
試験例2.モルモット足白癬モデルにおける治療試験
片面をアルミホイルで覆ったペーパーディスク(厚さ1.5mm、直径8mm)に接種菌液(白癬菌Trichophyton mentagrophytes TIMM 2789、1×10分生子/ml)をしみ込ませ、モルモット(雄ハートレーHartley系、体重400から600g、日本エスエルシー(株))後肢足底部に伸縮性粘着テープで7日間固定感染する。供試薬剤を菌接種開始10日後から1日1回0.1mlずつ足底全体に塗布し、塗布期間は3日間とする。薬剤最終塗布後5日目に局所皮膚の培養試験を以下のとおり行う。足底部及び足踵部の皮膚を摘出し、両部位より各10個の皮膚小片(約2mm角)を切り出す。各小片を抗生物質を含有するサブローグルコース寒天培地(Sabouraud's glucose agar)上に埋め込み、27℃で14日間培養し、菌のコロニーが発育したものを菌陽性小片とする。菌陽性小片を1個でも含む感染局所(足底部及び足踵部を合わせた部位)を菌陽性と判定する。さらに、感染局所の足底部及び足踵部ごとに、菌陽性小片数に基づいて次のとおりスコアー化し、感染強度とする。すなわち、菌陽性小片中、菌陽性小片の個数が10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0の場合をそれぞれ+10、+9、+8、+7、+6、+5、+4、+3、+2、+1、0とした。得られた菌陽性率及び平均感染強度について、それぞれフィッシャーの正確確率検定法及びマン−ホウィットニーのU検定法により解析する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の医療用外用抗真菌剤は、医療用途の抗真菌剤、特に外用抗真菌剤として有用である。爪白癬等難治性の真菌症に対しても強い効果が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アゾール系外用抗真菌剤及び(B)モルホリン系外用抗真菌剤、パラベン及び月桃抽出物から選択される1又は2以上の化合物を組み合わせたことを特徴とする外用抗真菌剤。
【請求項2】
アゾール系外用抗真菌剤が、ラノコナゾール、ルリコナゾール、ビフォナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、チオコナゾール、クロコナゾール、エコナゾール、イソコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール、ネチコナゾール、セルタコナゾール及びオキシコナゾールから選択される1又は2以上のアゾール系外用抗真菌剤である請求項1記載の外用抗真菌剤。
【請求項3】
アゾール系外用抗真菌剤がラノコナゾールである請求項1に記載の外用抗真菌剤。
【請求項4】
パラベンがエチルパラベンである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
【請求項5】
月桃抽出物が月桃精油である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
【請求項6】
モルホリン系外用抗真菌剤がアモロルフィン又はその塩類である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
【請求項7】
(A)アゾール系外用抗真菌剤及び(B)モルホリン系外用抗真菌剤、パラベン及び月桃抽出物から選択される1又は2以上の化合物の合計量の重量比率(A):(B)が1:640000〜100:1である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
【請求項8】
外用抗真菌剤全体に対して(A)アゾール系外用抗真菌剤0.01〜10重量%及び(B)モルホリン系外用抗真菌剤、パラベン及び月桃抽出物から選択される1又は2以上の化合物の合計量0.025〜20重量%からなる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。
【請求項9】
外用抗真菌剤が医療用外用抗真菌剤である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の外用抗真菌剤。

【公開番号】特開2007−84496(P2007−84496A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276847(P2005−276847)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】