説明

抗老化化合物を使用するタンパク質の産生方法

抗老化化合物、例えば、抗酸化剤カルノシンなどを含む細胞培養物中でタンパク質を産生する方法が提供される。本発明の教示によれば、抗老化化合物を含む細胞培養培地中で増殖される細胞は、生存および生産性の増大を示す。さらに、抗老化化合物の存在下で増殖される細胞培養物は、その細胞培養培地で示される高分子量凝集体のレベルが低い。特定の実施形態では、本発明は、目的のタンパク質の産生を強化する組成物を提供する。任意の種々のタンパク質は、本発明の方法および組成物によって産生され得る。例えば、特定の実施形態では、本発明の方法および組成物は、抗体を産生するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年4月23日に出願された米国仮特許出願第60/913,382号と同時係属中であり、少なくとも一人の発明者を共有し、そしてこの米国仮特許出願への優先権を主張する。この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本開示は概して、哺乳動物細胞培養物中のタンパク質の産生に関する。特に本開示は、優れた質を有しながら生存度を維持しかつ産生を増大するために、抗老化化合物、例えば、カルノシンの存在下で哺乳動物細胞を培養することに関する。培養細胞は、多くのタンパク質産物を産生している。これらの産物、例えば、ハイブリドーマ産生モノクローナル抗体は、治療、研究または他の出願のために用いられ得る。動物細胞、とりわけ哺乳動物細胞はしばしば、タンパク質を産生するために用いられる。不幸にも、動物細胞を用いれば、産生の過程には時間がかかりかつ費用がかかることになる。
【0003】
細胞培養培地に対して化学剤を添加すれば、細胞を誘導して産物を産生させ、これによって全体的収率を増大することによって細胞の産生を増大できる。用いるのに最適の剤は多数の要因に依存して変化し、この要因としては所望のタンパク質産物および細胞タイプが挙げられる。同様の要因はまた、添加される選択剤の量、およびその剤が細胞培養培地に添加される時に影響する。剤の例は、アルカン酸類または塩類、尿素誘導体類、またはジメチルスルホキシド(DMSO)である。化学剤、例えば、酪酸ナトリウムは、タンパク質産生に多様な影響を有し得る。ある剤の添加は、細胞の特定の生産力を増大し得るだけでなく、細胞毒性効果を有し、かつ細胞増殖および生存度を阻害し得る。
【0004】
細胞がタンパク質を産生する場合、代表的にはこのタンパク質は細胞培養培地中に分泌される。しかしこの特定のタンパク質だけが、培地中の問題ではなく;高分子量凝集体、酸性種、および他の物質もしばしば培地中にあり、これによって精製の過程がさらに困難かつ費用がかさむものになり得る。技術および方法が、産生の質を改善するのに利用可能であり、これによってより十分なタンパク質産生が可能になり;これには、とりわけ、バイオリアクターの条件を変化すること、または種々の細胞株を用いることが挙げられる。しかし、それにもかかわらず、この分野では、改良された精製プロセスが得られるタンパク質産生の技術および方法の必要性がのこっている。
【0005】
従って、必要なものは、高い細胞生存度を維持しながら目的のタンパク質の発現を増強し得る、細胞培養培地に添加される化学剤である。さらに、必要なものとは、細胞培養培地中の高分子量凝集体および酸性種の量を減らすことによってこのタンパク質の産生の質を増大する剤である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
特定の実施形態では、本開示は、タンパク質産物の産生を増強するためのプロセスに関する。例えば、特定の実施形態では、本発明は、目的のタンパク質の全体的な産生が増強されるように、抗老化化合物を含む培地中の目的のタンパク質を発現する宿主細胞を培養する方法を提供する。特定の実施形態では、このような抗老化化合物はカルノシンを含む。
【0007】
特定の実施形態では、本発明は、目的のタンパク質の産生を強化する組成物を提供する。任意の種々のタンパク質は、本発明の方法および組成物によって産生され得る。例えば、特定の実施形態では、本発明の方法および組成物は、抗体を産生するために用いられる。特定の実施形態では、本発明の方法および組成物は、必要に応じて1つ以上のさらなるタンパク質部分に連結されているレセプターを産生するために用いられる。例えば、本発明の方法および組成物を、TNFR融合タンパク質を産生するために用いてもよい。
【0008】
特定の実施形態では、本発明は、宿主細胞中で発現される目的のタンパク質の産生を増強する抗老化化合物を含む細胞培養培地を提供する。特定の実施形態では、このような抗老化化合物はカルノシンを含む。特定の実施形態では、遺伝子操作された宿主細胞を、接種培地と組み合わせて、細胞培養培地を形成し、これをバイオリアクターで増殖する。所望のタンパク質産物の産生実行の間、バイオリアクターの条件は変更されてもよく、ならびに/または補充物を添加して、生産性を増大するか、および/もしくは生存度を維持してもよい。補充物としては、フィード培地(feed medium)および/または1つ以上の添加物、例えば、本開示においては、カルノシンおよび/または他の抗老化化合物を挙げることができる。
【0009】
哺乳動物宿主細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、バイオリアクターにおいて産生実行の終わり近くに生存度の減少を経験し得る。抗老化剤、例えば、カルノシンおよびそのアナログを細胞培養培地に添加することで、タンパク質が回収されるまで、生きている細胞数および細胞の生存度をより高く維持することが助けられるということが発見されている。
【0010】
さらに、生産性の増大のための方法、例えば、増殖期の後および/または産生実行の産生期の間に温度を変化させることなどが、本発明に従って用いられ得る。単なる一例であるが、タンパク質産物、特に増殖分化因子−8(GDF−8)の抗体の産生の間、温度を下向きにシフトさせて、生産性を開始および増大することを補助する。特定の実施形態では、カルノシンなどの抗老化化合物の添加によって細胞増殖の生産性の増大が助けられる。特定の実施形態では、抗老化化合物は、このような温度シフトの前、間および/または後に添加されてもよい。
【0011】
細胞培養培地へのカルノシンなどの抗老化化合物の添加は、タンパク質産生の全体的な質を増大することも発見されている。タンパク質の産生の間、高分子量凝集体が他の望ましくない種とともに、細胞培養培地中にある。カルノシンの添加は、高分子凝集体の量を減らし、かつ産生の質を向上させる。特定の実施形態では、カルノシン以外の抗老化化合物の添加は、このような高分子量凝集体の蓄積を減らし、かつ産物の質を改善する。特定の実施形態では、カルノシンは、1つ以上の追加の抗老化化合物と組み合わせて添加される。
【0012】
細胞培養培地に添加される抗老化化合物(例えば、カルノシン)の濃度は、とりわけ、例えば、細胞のタイプ、所望の産物、およびバイオリアクターの条件を含む、このプロセスの多くの要因に依存して変化し得る。また、カルノシンは、そのアナログ;アセチル−カルノシン、ホモ−カルノシン、アンセリン、およびβアラニンで置換されてもよい。特定の実施形態では、カルノシンは、1つ以上の他の抗老化化合物と組み合わせて提供される。特定の実施形態では、細胞培養培地中の抗老化剤(例えば、カルノシン)の濃度は、約5mM〜約100mMである。特定の実施形態では、その濃度は、約10mM〜約40mMである。特定の実施形態では、その濃度は約20mMである。
【0013】
任意の適切な培養手順および接種培地は、タンパク質産生のプロセスにおいて細胞を培養するために用いられ得る。血清および無血清培地の両方を用いてもよい。さらに、培養方法を用いて、特定の細胞タイプおよびタンパク質産物に適切であるように細胞を培養してもよい。このような手順は公知であって、細胞培養分野の当業者によって理解される。
【0014】
本開示の他の特徴および利点は、以下の説明から、および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】MYO−29の酸性ピークに対するカルノシンの効果。
【図1b】高分子量凝集体に対するカルノシンの効果。
【図1c】酸性ピークに対する種々の日でのカルノシン添加の効果。
【図1d】高分子量凝集体に対する種々の日でのカルノシン添加の効果。
【図2a】日々の生存している細胞密度に対するカルノシンの効果。
【図2b】日々の細胞生存度に対するカルノシンの効果。
【図2c】日々の力価に対するカルノシンの効果。
【図2d】累積の特異的細胞産生性に対するカルノシンの効果。12日目および14日目のバーは、左から右に以下に相当する:コントロールA D10フィード、20mMカルノシンD10フィード、コントロールB D10フィード、20mMカルノシン(D10フィードなし)、およびコントロールC(D10フィードなし)。
【図2e】高分子量凝集体に対するカルノシンの効果。12日目および14日目のバーは、左から右に以下に相当する:コントロールA D10フィード、20mMカルノシンD10フィード、コントロールB D10フィード、20mMカルノシン(D10フィードなし)、およびコントロールC(D10フィードなし)。
【図3a】生存細胞密度に対するカルノシンの異なる濃度の効果
【図3b】日々の細胞生存度に対する種々の濃度のカルノシンの効果。
【図3c】日々の力価に対する種々の濃度のカルノシンの効果。
【図3d】累積の特異的細胞産生性に対する種々の濃度のカルノシンの効果。バーは、左から右に以下に相当する:コントロールP2、コントロールP5、20mMカルノシンおよび40mMカルノシン。
【図3e】高分子量凝集体に対する種々の濃度のカルノシンの効果。バーは、左から右に以下に相当する:コントロールP2、コントロールP5、20mMカルノシンおよび40mMカルノシン。
【図4】カルノシンを含有するかまたは欠いている培地中で増殖される組み換えTNFR融合タンパク質を産生するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株の生存細胞密度プロフィール。コントロールの条件は4つのコントロールのバイオリアクター実行の平均である。
【図5】カルノシンを含有するかまたは欠いている培地中で増殖される組み換えTNFR融合タンパク質を産生するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株の細胞生存度プロフィール。コントロールの条件は4つのコントロールのバイオリアクター実行の平均である。
【図6】凝集体/誤って折り畳まれたTNFR融合タンパク質の割合に対するカルノシンの効果。コントロールの条件は4つのコントロールのバイオリアクター実行の平均。
【図7】組み換えTNFR融合タンパク質を産生するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって産生される高分子量(HMW)凝集体の割合に対するカルノシンの効果。コントロールの条件は4つのコントロールのバイオリアクター実行の平均である。
【図8】カルノシンを含有するかまたは欠いている培地中で増殖される組み換えTNFR融合タンパク質を産生するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株の産生力価のプロフィール。コントロールの条件は4つのコントロールのバイオリアクター実行の平均である。
【図9】カルノシンを含有するかまたは欠いている培地中で増殖される組み換えTNFR融合タンパク質を産生するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株の特異的な細胞産生性のプロフィール。コントロールの条件は4つのコントロールのバイオリアクター実行の平均である。
【図10】カルノシンを含有するかまたは欠いている培地中で増殖されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって産生される組み換えTNFR融合タンパク質の、参照物質の割合として表現した、総シアリル化プロフィール。コントロールの条件は、4つのコントロールのバイオリアクター実行の平均である。
【図11】カルノシンを含有するかまたは欠いている培地中で増殖されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって産生される組み換えTNFR融合タンパク質の、総N結合オリゴサッカライドの割合として表現した、シアリル化N結合オリゴサッカライドの分布。コントロールの条件は、4つのコントロールのバイオリアクター実行の平均である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
昔からの慣習に従い、「1つの、ある(不定冠詞:aおよびan)」という用語は、請求の範囲を含めて本出願で用いられる場合、「1つ以上」を意味する。本発明が、ある特定の程度の特殊性で記載されていてさえ、多くの代替、改変およびバリエーションが本開示に照らして当業者に明白になるであろうことが明らかである。従って、本発明の趣旨および範囲内におさまるこのような代替、改変およびバリエーションの全てが、定義される請求の範囲によって包含されるものとする。
【0017】
本明細書において用いる場合、「抗老化化合物」という用語は、細胞培養物に添加された場合、その中での細胞増殖の生存、増殖および/または寿命を促進する任意の剤または化合物をいう。特定の実施形態では、細胞培養中のこのような抗老化化合物の使用は、抗老化化合物を欠く以外は同一の培養条件下で観察されるよりも、力価の増大、細胞特異的産生性の増大、細胞の生存度の増大、積算生存細胞密度の増大、高分子量凝集体の蓄積の低下、および/または酸性種の蓄積の減少を生じる。本発明の方法および組成物に従って用いられ得る抗老化化合物の非限定的な例としては、カルノシン、アセチル−カルノシン、ホモ−カルノシン、アンセリンおよびβアラニンが挙げられる。特定の実施形態では、2つ以上の抗老化化合物が本発明の組成物および方法に従って用いられ得る。
【0018】
「宿主細胞」という句は、細胞培養培地中で遺伝子操作され得るか、ならびに/または増殖および生存し得る細胞を指す。代表的には、細胞は、目的の大量の内因性タンパク質もしくは異種タンパク質を発現し得、かつそのタンパク質を保持し得るか、またはそれを細胞培養培地中に分泌し得る。
【0019】
宿主細胞は代表的には「哺乳動物細胞」であって、これは脊椎動物細胞の非限定的な例を含み、これにはベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓(293)細胞、正常胎児アカゲザル二倍体(FRhL−2)、およびマウス骨髄腫(例えば、SP2/0およびNS0)細胞が挙げられる。当業者は、本発明の方法および組成物に従って用いられ得る他の宿主細胞を承知している。
【0020】
「細胞培養培地」という用語は、細胞が増殖し、かつ所望のタンパク質を産生し得る条件下で細胞生存を支持するための栄養物を含有する溶液をいう。「接種培地(inoculation medium)」または「接種培地(inoculum medium)」という句は、細胞の培養が開始される栄養を含む溶液または物質をいう。特定の実施形態では、「フィード培地(feed medium)」は、接種培地と同様の栄養を含むが、培養の開示後に細胞に供給される溶液または物質である。特定の実施形態では、フィード培地は、接種培地に存在しない1つ以上の成分を含む。特定の実施形態では、フィード培地は、接種培地に存在する1つ以上の成分を欠く。細胞培養の分野における当業者は、何の成分が接種培地およびフィード培地を形成するかを過度の実験なしに承知するであろう。代表的には、これらの溶液によって、細胞の増殖および生存にとって必要である必須および非必須のアミノ酸類、ビタミン類、エネルギー源類、脂質類、および微量元素類が提供される。特定の実施形態では、接種培地、フィード培地または両方とも、抗老化化合物を含む。
【0021】
本明細書において用いる場合、「細胞培養特徴」という用語は、細胞培養物の観察可能な特徴、および/または測定可能な特徴を指す。本発明の方法および組成物は、1つ以上の細胞培養特徴を改善するために有利に用いられる。特定の実施形態では、細胞培養特徴の改善には、細胞培養特徴の大きさの増大を包含する。特定の実施形態では、細胞培養特徴の改善には、細胞培養特徴の大きさの減少を包含する。非限定的な例では、細胞培養特徴は、力価、細胞特異的生産性、細胞生存度、積算生細胞密度、高分子量凝集体の蓄積、および/または酸性種の蓄積であってもよい。当業者は、本発明の方法および組成物を用いて改善され得る他の細胞培養特徴を承知するであろう。
【0022】
「規定培地」という用語は、本明細書において用いる場合、培地の成分が両方とも既知であり、かつ管理されている培地をいう。規定培地は、未知および/または非管理の成分を含む血清または加水分解産物などの複雑な添加物を含まない。
【0023】
「複合培地(complex medium)」という用語は本明細書で用いる場合、同一性または質が未知または未管理のいずれかである少なくとも1つの成分を含む培地をいう。
【0024】
「細胞株」という句は、一般に、目的のタンパク質を発現する初代宿主細胞をいう。いくつかの実施形態では、細胞は、所望のタンパク質をコードするか、および/または連結された配列(内因性であるかまたは異種であるかのいずれか)の発現を活性化する制御配列を含んでいる内因性のDNAでトランスフェクトされている。特定の実施形態では、このように遺伝子改変された細胞に由来する細胞が、細胞株を形成し、かつタンパク質産物を増殖させかつ産生する細胞培養培地に置かれる。特定の実施形態では、細胞株は、内因性のDNAでトランスフェクトされておらず、かつ目的の内因性タンパク質を発現する初代宿主細胞を含む。
【0025】
細胞培養培地の「増殖期」とは、細胞が急速な分裂を受けており、かつ指数関数的にまたは指数関数に近く増殖している期間をいう。代表的には、細胞は、一般に1〜4日間、細胞増殖に最適化された条件で培養される。増殖期の条件は、約35℃〜42℃、一般には約37℃の温度を含んでもよい。増殖期の長さおよび増殖期の培養条件は変動してもよいが、一般には、細胞培養分野の当業者に公知である。特定の実施形態では、増殖期の細胞培養培地は、フィード培地を補充される。
【0026】
「移行期」とは、細胞培養培地が増殖期と一致する状態から産生期と一致する状態にシフトされている期間に存在する。移行期の間、とりわけ温度のような要因はしばしば変化する。特定の実施形態では、移行期にある細胞培養培地はフィード培地を補充される。
【0027】
「産生期」は、増殖期と移行期の両方の後に存在する。細胞の指数関数的増殖が終わり、タンパク質産生が主な目的である。細胞培養培地を補充して産生を開始してもよい。特定の実施形態では、産生期にある細胞培養培地はフィード培地を補充される。さらに、産生期の間の細胞培養培地の温度は、一般には、増殖期(これが代表的には産生を促進する)の間よりも低くてもよい。産生期は、所望のエンドポイントが得られるまで続く。
【0028】
「生細胞密度」という句は、特定の容積中の、一般には1mlあたりの細胞培養培地に生存している細胞の総数をいう。「細胞生存度」という句は、パーセンテージとして表わされる、細胞の総数(死んでいるのと生きているのと両方)に比較した生きている細胞の数をいう。
【0029】
「積算生細胞密度(integrated viable cell density)」、「IVCD」:「積算生細胞密度」または「IVCD」という用語は、本明細書において用いる場合、培養の経過にまたがる生細胞の平均密度に、培養が行われた時間を掛けたものを指す。産生されるタンパク質の量が、その培養の経過にまたがって存在する生細胞の数に比例する場合、積算生細胞密度は、培養の経過にまたがって産生されるタンパク質の量を見積もるのに有用なツールである。
【0030】
「高分子量凝集体」という用語は、一般には誤って折り畳まれたタンパク質または少なくとも2つのポリペプチドの不適切な会合をいう。この会合は、限定はしないが、共有結合、非共有結合、ジスルフィド結合または非還元性架橋を含む任意の方法によって生じ得る。特定の実施形態では、本発明の方法および組成物が、高分子量凝集体の蓄積を軽減するために有利に利用される。
【0031】
「抗酸化剤」という句は、遊離のラジカルをブロックすることによって、脂質、タンパク質、DNAおよび他の必須高分子に対する酸化的損傷を妨げ得る化合物をいう。
【0032】
「治療用タンパク質」:「治療用タンパク質」とは、タンパク質もしくはペプチドであって、それが作用する身体のある領域に対して、または中間体を介してそれが遠位で作用する身体のある領域に対して生物学的影響を有するタンパク質もしくはペプチドである。治療用タンパク質は、本明細書において下にさらに詳細に記載されるように、例えば、分泌タンパク質、例えば、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、可溶性レセプター、レセプター融合物、サイトカイン、増殖因子、酵素、または凝固因子などであってもよい。上述で列挙したタンパク質は事実上単なる例示であって、限定の言及ではないものである。当業者は任意のタンパク質が本発明に従って用いられ得ることを理解し、かつ特定のタンパク質が必要に応じて産生されるように選択できるであろう。
【0033】
本明細書において用いる場合、ポリペプチド、タンパク質およびペプチドという用語は同義であって、交換可能に用いられる。従って、本明細書において用いる場合、タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドの大きさは一般に、2つより多いアミノ酸を含む。例えば、タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドは、約2〜約20アミノ酸、約20〜約40アミノ酸、約40〜約100アミノ酸、約100アミノ酸〜約200アミノ酸、約200アミノ酸〜約300アミノ酸などを含んでもよい。
【0034】
本明細書において用いる場合、アミノ酸とは、任意の天然に存在するアミノ酸、当該分野で公知の任意のアミノ酸誘導体またはアミノ酸模倣物をいう。特定の実施形態では、タンパク質またはペプチドの残基は、アミノ酸残基の配列を中断する非アミノ酸がなんらなしに、連続している。他の実施形態では、この配列は、1つ以上の非アミノ酸部分を含んでもよい。特定の実施形態では、このタンパク質またはペプチドの残基の配列は、1つ以上の非アミノ酸部分で中断されてもよい。
【0035】
「抗体」:「抗体」という用語を用いて、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子を指し、これには抗体フラグメント、例えば、Fab’、Fab、F(ab’)、単独ドメイン抗体(DAB類)、Fv、scFv(単鎖Fv)などが挙げられる。種々の抗体ベースの構築物およびフラグメントを調製および用いるための技術は当該分野で周知である。抗体を調製および特徴づけるための手段はまた当該分野で周知である(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと:参照によって本明細書に援用される)。例えば、抗体は、少なくとも1つ、好ましくは2つの全長重鎖、ならびに少なくとも1つ、および好ましくは2つの軽鎖を含んでもよい。「抗体」という用語は本明細書において用いる場合、抗体フラグメントまたは改変体分子、例えば、抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、単鎖Fvフラグメント、重鎖フラグメント(例えば、ラクダ科動物(camelid)VHH)および結合ドメイン−免疫グロブリン融合物(例えば、SMIPTM)を包含する。
【0036】
抗体は、モノクローナル抗体であってもまたは単一特異性抗体であってもよい。抗体はまた、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、またはインビトロで生成された抗体であってもよい。さらに他の実施形態では、抗体は例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有する。別の実施形態では、抗体は、例えば、κまたはλから選択される軽鎖を有する。一実施形態では、この定常領域は、変更、例えば、抗体の特性を改変するように改変される(例えば、以下の1つ以上を増大または低減するように:Fcレセプター結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能)。代表的には、この抗体は特異的には、事前に決定された抗原、例えば、障害(例えば、神経変性障害、代謝性障害、炎症、自己免疫障害および/または悪性疾患)に関連する抗原に結合する。
【0037】
Small Modular ImmunoPharmaceuticals(SMIPTM)は結合ドメインポリペプチドを含む改変体分子の例を提供する。SMIPならびにそれらの用途および適用は、例えば、米国特許出願公開第2003/0118592号、同第2003/0133939号、同第2004/0058445号、同第2005/0136049、同第2005/0175614号、同第2005/0180970号、同第2005/0186216号、同第、2005/0202012号、同第2005/0202023号、同第2005/0202028号、同第2005/0202534号、および同第2005/0238646号、ならびにその関連の特許ファミリーのメンバー(その全てが全体として本明細書に参照によって援用される)に開示される。
【0038】
単独ドメイン抗体は、抗体であってその相補性決定領域が単独ドメインポリペプチドの一部である抗体を包含し得る。例としては、限定はしないが、重鎖抗体、天然に軽鎖を欠く抗体、従来の4鎖抗体由来の単独ドメイン抗体、操作された抗体および抗体由来のもの以外の単独ドメイン足場が挙げられる。単独ドメイン抗体は当該分野で任意のものであっても、または任意の次世代単独ドメイン抗体であってもよい。単独ドメイン抗体は、限定はしないがマウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ウシを含む任意の種由来であり得る。本発明の一局面によれば、単独ドメイン抗体は、本明細書において用いる場合、軽鎖を欠く重鎖抗体として公知の天然に存在する単独ドメイン抗体である。このような単独ドメイン抗体は例えば、国際公開第9404678号に開示される。明確化のために、天然には軽鎖を欠く重鎖抗体由来のこの可変ドメインは本明細書において、VHHまたはナノボディ(nanobody)として公知であり、これで4鎖免疫グロブリンの従来のVHとは識別される。このようなVHH分子は、ラクダ科の種において、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコにおいて惹起された抗体に由来し得る。ラクダ科以外の他の種は、軽鎖を天然には欠く重鎖抗体を産生し得る;このようなVHH類は本発明の範囲内である。
【0039】
抗体の「抗原結合フラグメント」という用語内に包含される結合フラグメントの例としては以下が挙げられる(i)Fabフラグメント(VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる単価フラグメント);(ii)F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合される2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント);(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント;(vi)ラクダ科動物のまたはラクダ化された可変ドメイン、例えば、VHHドメイン;(vii)単鎖Fv(scFv);(viii)二価特異的抗体;および(ix)Fc領域に融合された免疫グロブリン分子の1つ以上のフラグメント。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは別の遺伝子によってコードされるが、それらは、VLおよびVH領域が対になって単価分子を形成する単一タンパク質鎖としてそれらが作製されることを可能にする合成リンカーによって、組み換え方法を用いて結合され得る(単鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−26;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879〜83を参照のこと)。このような単鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語内に包含されるものとする。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、このフラグメントは、インタクトな抗体と同じ方式で機能について評価される。
【0040】
「二価特異的」抗体または「二機能的」抗体以外、抗体は有している各々の結合部位が同一であることが理解される。「二価特異的」または「二機能的抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖の対および2つの異なる結合対を有する人工のハイブリッド抗体である。二価特異的抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む種々の方法によって産生され得る。例えば、Songsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315〜321(1990);Kostelnyら,J.Immunol.148,1547〜1553(1992)を参照のこと。
【0041】
「バイオリアクター」という句は、細胞培養培地が含まれ得、かつ培養期間の間、その内部条件、例えば、pHおよび温度が管理され得る容器を指す。
【0042】
「フィード・バッチ培養」とは、最初にバイオリアクターに細胞が接種培地とともに接種される、細胞を培養する方法をいう。次いでこの細胞培養培地は、栄養成分および/または他の補充物を含むフィード培地での産生実施全体にわたって1回以上のポイントで補充される。
【0043】
「バッチ培養」とは、産生実施全体のためのすべての必須の栄養物および補充物とともに細胞がバイオリアクター中に接種される、細胞培養の方法をいう。この産生の期間全体にわたって細胞培養培地に栄養物添加は行われない。
【0044】
「灌流培養」とは、バッチ培養法またはフィード・バッチ培養法とは異なる細胞培養の方法であって、目的の発現されたタンパク質を単離および/または精製する前に培養が終わらないか、または終わる必要がなく、かつ新しい栄養および他の成分が定期的にまたは連続的にこの培地に添加され、この間、この発現されたタンパク質が定期的にまたは連続的に回収される方法を指す。添加される栄養物の組成は、細胞の必要性、最適タンパク質産生の要件、および/または当業者に公知の任意の種々の他の要因に依存して、細胞培養の経過の間変化されてもよい。
【0045】
「発現」という句は、宿主細胞内で生じる転写および翻訳をいう。発現のレベルは一般には、宿主細胞によって産生されているタンパク質の量に関する。
【0046】
「細胞特異的生産性」などは、特異的な、1細胞あたりとしての、産物発現率を指す。細胞特異的生産性は、一般には、1日あたり10個の細胞あたりに産生されるタンパク質のマイクログラムとして、または1日あたり10個の細胞あたりに産生されるタンパク質のピコグラムとして、測定される。
【0047】
本明細書において用いる場合、「力価」という用語は、所定の量の培地容積における細胞培養によって産生される組み換え発現されたタンパク質の総量を指す。力価は代表的には、1ミリリットルの培地あたりのタンパク質のミリグラムまたはマイクログラムの単位として表現される。
【0048】
当業者は、本明細書に開示される方法が、当該分野で慣用的に用いられかつ培養される多くの周知の哺乳動物細胞を培養するのに用いられ得、すなわち、本明細書に開示される方法は本開示での使用にのみ限定されないことを理解する。
【0049】
本発明の特定の実施形態の詳細な説明
カルノシンのような抗老化化合物を用いて細胞培養の生存度および生産性を改変することが発見されている。例えば、カルノシンの添加は、細胞生存度を維持し、かつ細胞の生産性を改善し、かつ所望のタンパク質産物の産物の質を改善する。カルノシンは抗酸化剤であって、抗老化化合物であり、これはまた動物の筋肉および神経組織に高レベル(最大20mM)で存在する天然に存在するジペプチドでもある。抗酸化剤であることで、カルノシンはまた、遊離のフリーラジカルスカベンジャーおよびグリコシル化インヒビターである。一般には、カルノシンは反応性種を非反応性種に変換し、それによってタンパク質、DNAおよび他の重要な分子を保護する。抗老化化合物であるカルノシンは、培養培地中で20mMの濃度で、ヒト二倍体線維芽細胞およびヒト胎児肺(初代細胞株)の寿命を伸長し得る。本発明は、目的のタンパク質を産生するために細胞培養物中で抗老化化合物(限定はしないがカルノシンを含む)を用いことが有利であるという驚くべき知見を包含する。特定の実施形態では、目的のタンパク質を産生するために細胞培養物中でこのような抗老化化合物を用いて、1つ以上の改善された細胞培養特徴(限定はしないが、力価の増大、細胞特異的産生性の増大、細胞の生存度の増大、積算生細胞密度の増大、高分子量凝集体の蓄積の低下、および/または酸性種の蓄積の減少を含む)を生じる。
【0050】
グルコース値の低い最小必須培地(MEM,Sigma)では、ヒトまたはげっ歯類の形質転換細胞および新生腫瘍細胞に対してカルノシンが細胞傷害性であるが、1mMのピルビン酸塩を含むダルベッコの改変イーグル培地(DMEM,Sigma)では細胞傷害性でないことが実証されている。(Hollidayら、Biochemistry(Moscow),65:843〜848,846)。さらに、低分子量化合物で透析されたウシ胎仔血清は、カルノシンの細胞傷害性効果の増大を除いた(同上)。1mMのオキサロ酢酸および1mMのαケトグルタラートがピルビン酸(どちらもカルノシンの例で用いられた接種培地またはフィード培地の成分ではない)と匹敵する効果を有することも確認された(同上)。しかし、ピルビン酸ナトリウムは、接種培地中のもとの成分であって0.5mMの濃度であり、カルノシン添加についてではなく、バイオリアクター系のインビボ条件において、および可能性のある代用のエネルギー源としてより優れた模倣物である。接種培地はまた無血清であり、これはカルノシンが細胞毒性効果を有することを意味するであろう。引用文献によれば、細胞培養培地に対するカルノシンの添加は、HollidayのMEM培地でみられるのと類似の細胞毒性効果を有するであろう。本発明の方法および/または組成物を利用することによって、このような細胞毒性は、軽減または排除され、細胞生存度およびタンパク質産物が改善される。
【0051】
特定の実施形態では、カルノシンは、約5mM〜約100mMの間の濃度で細胞培養培地中に提供される。特定の実施形態では、カルノシンは、約10mM〜約40mMの濃度で、例えば約20mMの濃度で細胞培養培地中に提供される。特定の実施形態では、カルノシンは細胞培養培地中に、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100mM、またはそれ以上の濃度で提供される。特定の実施形態では、このようなカルノシンの濃度は、例えば、1つ以上のフィード培地中に、細胞培養プロセスの間、複数回カルノシンを添加することによって細胞培養中で達成される。利用されるカルノシンの濃度は、細胞株または産物に対して求められている所望の効果を含む他の要因のうちでも、細胞培養培地および用いられている細胞株に依存する。カルノシンのアナログ、例えば、アセチル−カルノシン、ホモ−カルノシン、アンセリンおよびβアラニンはまた、類似の効果について細胞培養培地に提供され得る。これらのアナログのうち1つ以上が細胞培養培地に提供され得る。特定の実施形態では、このようなアナログが、カルノシンを欠く細胞培養培地に提供される。特定の実施形態では、このようなアナログは、カルノシンと組み合わせて細胞培養培地中に提供される。特定の実施形態では、このようなアナログは、約5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100mM以上という濃度で提供される。
【0052】
特定の実施形態では、目的のタンパク質を産生するためには、最初に宿主細胞を、あるタンパク質をコードする外因性のDNAを用いてトランスフェクトまたは形質転換して形質転換細胞を得て、これで所望のタンパク質産物を構成的に産生する。特定の実施形態では、この細胞に導入された核酸分子は、本発明に従って発現されることが所望されるタンパク質をコードする。特定の実施形態では、核酸分子は、調節性配列を含むか、または細胞による所望のタンパク質の発現を誘導または増強する遺伝子産物をコードする。非限定的な例として、このような遺伝子産物は、目的のタンパク質の発現を増大する転写因子であってもよい。
【0053】
特定の実施形態では、タンパク質の発現を指向する核酸は宿主細胞に安定に導入される。特定の実施形態では、タンパク質の発現を指向する核酸は宿主細胞に一過性に導入される。当業者は、実験的必要性、商業的必要性または他の必要性に基づいて細胞中に核酸を安定または一過性に導入するか否かを選択できる。
【0054】
目的のタンパク質をコードする遺伝子は、1つ以上の調節性の遺伝子制御エレメントに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子制御エレメントは、タンパク質の構成的発現を指向する。ある実施形態では、目的のタンパク質をコードする遺伝子の誘導性発現を提供する遺伝子制御エレメントを用いてもよい。誘導性遺伝子制御エレメント(例えば、誘導性プロモーター)の使用によって、細胞中のタンパク質の産生の調節が可能になる。真核生物細胞における使用のための潜在的に有用な誘導性遺伝子制御エレメントの非限定的な例としては、ホルモン調節性エレメント(例えば、Mader,S.およびWhite,J.H.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5603〜5607,1993を参照のこと)、合成のリガンド調節性エレメント(例えば、Spencer,D.M.et al.,Science 262:1019〜1024,1993を参照のこと)および電離放射線−調節性エレメント(例えば、Manome,Y.et al.,Biochemistry 32:10607〜10613,1993;Datta,R.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10149〜10153,1992を参照のこと)が挙げられる。当該分野で公知のさらなる細胞特異的または他の調節性のシステムは、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いられ得る。
【0055】
細胞培養物に対して、およびタンパク質の発現に対して感受性の任意の宿主細胞を本発明に従って利用してもよい。この宿主細胞は一般には哺乳動物細胞、さらに詳細には動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。本発明に従って用いられ得る哺乳動物細胞の他の非限定的な例としては、BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/l、ECACC No:85110503);ヒト網膜芽細胞腫(PER.C6,CruCell,Leiden,The Netherlands);SV40によって形質転換されるサル腎臓CV1株(COS−7,ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(懸濁培養物中での増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞、Grahamら,J.Gen Virol.,36:59,1977);ベビー・ハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/−DHFR(CHO,UrlaubおよびChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216,(1980));マウス・セルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243〜251,(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCC CRL−1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa,ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファロー・ラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(WI38,ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44〜68,(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞腫株(Hep G2)が挙げられる。
【0056】
ポリペプチド
宿主細胞で発現可能な任意のポリペプチドは、本発明に従って生成され得る。このポリペプチドは、宿主細胞に内因性である遺伝子から発現されても、または宿主細胞に導入される異種遺伝子から発現されてもよい。ポリペプチドは、天然に存在するものであってもよいし、あるいはヒトの手によって操作または選択される配列を有してもよい。本発明に従って産生されるべきポリペプチドは、天然に個々に生じるポリペプチドフラグメントからアセンブルされてもよい。さらに、またはあるいは、この操作されたポリペプチドは、天然には存在しない1つ以上のフラグメントを含んでもよい。タンパク質またはペプチドは、標準的な分子生物学の技術を通じたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの発現、天然の供給源からのタンパク質またはペプチドの単離、あるいはタンパク質またはペプチドの化学的合成を含む、当業者に公知の任意の技術によって作製され得る。公知の遺伝子のコード領域は、本明細書に開示の技術を用いて、または当業者に公知のとおり増幅および/または発現されてもよい。あるいは、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの種々の市販の調製物が、当業者に公知である。
【0057】
本発明に従って望ましくは発現され得る治療用タンパク質は、目的または有用な生物学的もしくは化学的活性に基づいて選択される場合が多い。例えば、本発明は任意の薬学的、または市販の関連の酵素、凝固因子、レセプター、抗体、ホルモン、調節因子、抗原、結合剤などを発現するために使用され得る。本発明に従って産生され得る治療用タンパク質の以下の列挙は、実際は単に例示であって、限定する言及ではない。当業者は、任意のポリペプチドが本発明に従って発現され得、彼らの特定の必要性に基づいて産生されるべき特定のポリペプチドを選択できるということを理解する。
【0058】
融合タンパク質
融合タンパク質は一般に、二次ポリペプチドまたはタンパク質の全てまたは一部に対して、N末端またはC末端で連結された、標的化ペプチドの全てまたはかなりの部分を有する。例えば、融合によって他の種由来のリーダー配列を使用して異種宿主中のタンパク質の組み換え発現を可能にしてもよい。別の有用な融合としては、融合タンパク質の精製を容易にするための抗体エピトープのような免疫学的に活性なドメインの付加が挙げられる。融合タンパク質は、標的化部分、例えば、可溶性のレセプターフラグメントまたはリガンド、および免疫グロブリン鎖、Fcフラグメント、種々のアイソタイプの重鎖定常領域(例えば、以下を含む:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgE)を含んでもよい。例えば、融合タンパク質は、レセプターの細胞外ドメインを含んでもよく、そして例えば、ヒト免疫グロブリンFc鎖(例えば、ヒトIgG1もしくはヒトIgG4、またはそれの変異型)に融合されてもよい。一実施形態では、ヒトFc配列は、1つ以上のアミノ酸で変異されており、例えば、野性型配列から254および257残基でFcレセプター結合が減るように変異されている。融合タンパク質はさらに、第二部分、例えば免疫グロブリンフラグメントに対して第一の部分を連結するリンカー配列を含んでもよい。例えば、融合タンパク質は、ペプチドリンカー、例えば、約4〜20、さらに好ましくは5〜10アミノ酸長のペプチドリンカーを含んでもよい;特定の実施形態では、ペプチドリンカーは8アミノ酸長である。例えば、融合タンパク質は、式(Ser−Gly−Gly−Gly−Gly)y(ここでyは1、2、3、4、5、6、7または8である)を有するペプチドリンカーを含んでもよい。他の実施形態では、追加のアミノ酸配列を融合タンパク質のN末端またはC末端に付加して、発現、立体的可塑性、検出および/または単離もしくは精製を容易にしてもよい。
【0059】
融合の接合部かまたはその付近に切断部位があれば、精製後の外来ポリペプチドの切り出しが容易になるであろう。他の有用な融合としては、機能的ドメイン、例えば、酵素からの活性部位、グリコシル化ドメイン、細胞標的シグナルまたは膜貫通領域の連結が挙げられる。融合タンパク質に組み込まれ得るタンパク質またはペプチドの例としては、細胞増殖抑制タンパク質類、細胞破壊的タンパク質類、プロアポトーシス剤類、血管新生阻害剤類、ホルモン類、サイトカイン類、増殖因子類、ペプチド薬類、抗体類、Fabフラグメント抗体類、抗原類、レセプタータンパク質類、酵素類、レクチン類、MHCタンパク質類、細胞接着タンパク質類および結合タンパク質類が挙げられる。融合タンパク質を生成する方法は当業者には周知である。このようなタンパク質は、例えば、二機能的架橋試薬を用いる化学的結合によって、完全な融合タンパク質の新規合成によって、または二次ペプチドもしくはタンパク質をコードするDNA配列に対する標的ペプチドをコードするDNA配列の結合によって、続いて、インタクトな融合タンパク質の発現によって産生され得る。
【0060】
抗体
抗体とは特定の抗原に特異的に結合する能力を有するタンパク質である。薬剤または他の市販の剤として現在用いられているかまたは検討中である多数の抗体を考慮すれば、本発明による抗体の産生は特別な関心のものである。例えば、本発明は、産生される抗体の誤った折り畳みおよび/または凝集が低減される細胞培養中で抗体を産生するために用いられ得る。
【0061】
特定の実施形態では、本発明の方法および/または組成物は、増殖分化因子−8(GDF−8)に対する抗体を産生するために使用される。GDF−8抗体の非限定的な例としては、Myo29、Myo28、およびMyo22が挙げられる。特定の実施形態では、本教示に従って産生されるGDF−8抗体は、ヒトIgGアイソトープの形態で産生される。特定の実施形態では、本発明の方法および/または組成物は、その全体が参照によって本明細書に援用される、GDF−8に対する中和抗体およびその使用と題された、国際公開第WO2004/037861号に記載されるようなMYO29抗体を産生するために使用される。
【0062】
本発明に従って産生され得る他の代表的な市販の治療タンパク質としては、例えば、AVASTIN[Bevacizumab(ベバシズマブ)]、CAMPATH[Alemtuzumab(アレンツズマブ)]、ERBITUX[Cetuximab(セツキシマブ)]、HERCEPTIN[TRASTUZUMAB(トラスツズマブ)]、HUMIRA[Adalimumab(アドリムマブ)]、LUCENTIS[Ranibizumab(ラニビズマブ)]、MYLOTARG[gemtuzumab ozogamicin(ゲムタズマブオゾガマイシン)]、MYCSCINT[Imicromab Penetate(イミクロマブ ペンテート)]、PROSTASCINT[Capromab Pendetide(カプロマブ ペンデチド)]、RAPTIVA[Efalizumab(エファリズマブ)]、REMICADE[Infliximab(インフリキシマブ)]、REOPRO[Abciximab(アブシキシマブ)]、RITUXAN[Rituximab(リツキシマブ)]、SIMULECST[Basilximab(バシルキシマブ)]、SOLIRIS[Eculizumab(エクリズマブ)]、SYNAGIS[Palivizumab(パリビズマブ)]、TYSABRI[Natalizumab(ナタリズマブ)]、VECTIBIX[Panitumumab(パニツムマブ)]、VERLUMA[Nofetumomab(ノフェツモマブ)]、XOLAIR[Omalizumab(オマリズマブ)]、ZANAPAX[Daclizumab(ダクリズマブ)]、ZEVALIN[Ibritumomab Tiuxetan(イブリツモマブチウキセタン)]などが挙げられる。
【0063】
特定の実施形態では、上記のモノクローナル抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体は、天然にはいかなる種のいかなる抗体にも事実上存在しないアミノ酸残基を含む。これらの外来の残基は例えば、モノクローナル抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体に対して新規のまたは改変された特異性、親和性またはエフェクター機能を付与するために利用され得る。
【0064】
凝固因子
凝固因子は、薬剤および/または市販の剤として有効であることが示されている。血友病Bは、罹患者の血液が凝固できない障害である。従って、出血を生じるなんらかの小さい傷が可能性としては命にかかわる事象である。血友病のような疾患の処置における組み換え凝固因子の重要性を考慮すれば、本発明による凝固因子の産生は特に目的のものである。特定の実施形態では、本発明は細胞培養において凝固因子を産生するために用いられてもよく、ここでは産生される凝固因子の誤った折り畳みおよび/または凝集が軽減される。
【0065】
例えば、凝固因子IX(第IX因子または「FIX」)は、単鎖の糖タンパク質であって、それが欠乏すれば血友病Bが生じる。FIXは、活性化ペプチドの遊離によって2つの鎖のセリンプロテアーゼ(第IXa因子)へ活性化され得る単鎖酵素前駆体として合成される。第IXa因子の触媒ドメインは、重鎖に位置する(その全体が参照によって本明細書に援用される、Changら,J.Clin.Invest.,100:4,1997を参照のこと)。本発明に従って産生され得る他の凝固因子としては、組織因子、およびフォン・ヴィレブランド因子および/または市販の血液凝固因子が挙げられる。本発明に従って産生され得る代表的な市販の血液凝固因子としては、ALTEPLASE[Tissue Plasminogen Activator;t−PA]、BENEFIX[第IX因子]、HEMOFIL[抗血友病因子;第XIII因子]、RECOMBINATE(組み換え抗血友病因子)などが挙げられる。
【0066】
酵素
薬剤および/または市販の剤として有効であることが示されており、かつ本発明の教示にしたがって望ましくは産生され得る別の分類のポリペプチドとしては酵素が挙げられる。疾患の処置および他の商業的用途および製剤学的用途における組み換え酵素の重要性を考慮すれば、本発明による酵素の産生は特に目的のものである。例えば、本発明は、細胞培養において酵素を産生するために用いられてもよく、ここでは産生された酵素の誤った折り畳みおよび/または凝集が軽減されている。本発明に従って産生され得る代表的な市販の酵素としては、例えば、ACTIVASE[Recombinant alteplase]、CEREDASE[Alglucerase]、CEREZYME[Imiglucerase]、PULMOZYME[DNase]などが挙げられる。
【0067】
増殖因子および他のシグナル伝達分子
薬剤および/または市販の剤として有効であることが示されており、かつ本発明の教示に従って望ましくは産生され得る別の分類のポリペプチドとしては、増殖因子および他のシグナル伝達分子が挙げられる。増殖因子は、細胞によって分泌されて、他の細胞上でレセプターに結合しかつレセプターを活性化する糖タンパク質である場合が多く、これがレセプター細胞における代謝性または発達性の変化を開始する。増殖因子および他のシグナル伝達分子の生物学的重要性、ならびに可能性のある治療剤としてのそれらの重要性を考慮すれば、本発明に従うこれらの分子の産生は、特に関心のあるものである。例えば、本発明は細胞培養中で増殖因子または他のシグナル伝達分子(ここではこの産生された増殖因子または他のシグナル伝達分子の誤った折り畳みおよび/または凝集が低減されている)を産生するために用いられてもよい。
【0068】
哺乳動物増殖因子および他のシグナル伝達分子の非限定的な例としては、サイトカイン;上皮細胞成長因子(EGF);血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞成長因子類(FGF類)、例えば、aFGFおよびbFGF;トランスフォーミング増殖因子類(TGF類)例えば、TGF−αおよびTGF−β(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、またはTGF−β5;インスリン様増殖因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質類;CDタンパク質類、例えば、CD−3、CD−4、CD−8、およびCD−19;エリスロポエチン(代表的な市販のエリスロポエチンとしては、例えば、ARANESEP[ダルベポエチン];CEA−SCAN[Arcitumomab(アルシツモマブ)]、EPOGEN[エポエチンα];PROCRIT[エポエチンα])などが挙げられる);骨誘導因子類;免疫毒素類;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン−α、−β、および−γ(代表的な市販のインターフェロンとしては、例えば、ACTIMUNNE[インターフェロンγ−1b]、AVONEX[インターフェロンβ−1a]、REBIF[インターフェロンβ−1a]、BETASERON[インターフェロンβ−1b])などが挙げられる);コロニー刺激因子類(CSF類)、例えば、M−CSF、GM−CSF、およびG−CSF(代表的な市販のコロニー刺激因子としては、例えば、GRANUCYTE、レノグラスチム、LEUKINE[Sargramostim(サルグラモスチム)])などが挙げられる);インターロイキン類(TL類)、例えば、IL−1〜IL−10;腫瘍壊死因子(TNF)αおよびβ;インスリンA−鎖;インスリンB−鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォン・ヴィレブランド因子;抗−凝固因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼまたはヒトの尿もしくは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン、造血増殖因子;エンケファリナーゼ;ランテス(RANTES)(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted(正常T細胞の発現および分泌の活性制御物質));ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);ミュラー管阻害物質;レラキシンA鎖;レラキシンB−鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5もしくはNT−6)、または神経成長因子、例えば、NGF−βが挙げられる。当業者は、本発明の方法および組成物に従って発現され得る他の増殖因子またはシグナル伝達分子を承知するであろう。
【0069】
レセプター
薬剤および/または市販の剤として有効であることが示されており、かつ本発明の教示に従って望ましくは産生され得る別の分類のポリペプチドとしてはレセプターが挙げられる。レセプターの生物学的重要性およびそれらの可能性のある治療剤としての重要性を考慮すれば、本発明によるこれらの分子の産生は特に関心のあるものである。例えば、本発明は、細胞培養においてレセプターを産生するために用いられてもよく、ここでは産生されたレセプターの誤った折り畳みおよび/または凝集が軽減される。
【0070】
レセプターは代表的には、細胞外のシグナル伝達リガンドを認識することによって機能する膜貫通糖タンパク質である。レセプターはリガンド認識ドメインに加えてタンパク質キナーゼドメインを有する場合が多い。このタンパク質キナーゼドメインは、リガンド結合の際に標的細胞内分子をリン酸化することによってシグナル伝達経路を開始し、これによって細胞内の発達または代謝性の変化がもたらされる。特定の実施形態では、膜貫通レセプターの細胞外ドメインを、本明細書に開示される方法およびシステムに従って産生する。特定の実施形態では、膜貫通レセプターの細胞内ドメインは、本明細書に開示される方法およびシステムに従って産生される。
【0071】
特定の実施形態では、腫瘍壊死因子インヒビターは、腫瘍壊死因子αおよびβレセプターの形態で(TNFR−1;1991年3月20日公開の欧州特許第417,563号;およびTNFR−2、1991年3月20日公開の欧州特許第417,014号、その各々がその全体が参照によって本明細書に援用される)本発明のシステムおよび方法に従って発現される(概説については、その全体が参照によって本明細書に援用されるNaismithおよびSprang,J Inflamm.47(1〜2):1〜7,1995〜96を参照のこと)。いくつかの実施形態によれば、腫瘍壊死因子インヒビターは、可溶性のTNFレセプターを含む。特定の実施形態では、腫瘍壊死因子インヒビターは、免疫グロブリンのFc領域を含む免疫グロブリンタンパク質の任意の部分に融合された可溶性のTNFRを含む。特定の実施形態では、本発明のTNFインヒビターはTNFRIおよびTNFRIIの可溶型である。特定の実施形態では、本発明のTNFインヒビターは、可溶性のTNF結合タンパク質である。特定の実施形態では、本発明のTNFインヒビターは、TNFR−Fc、例えば、エタネルセプト(etanercept)である。本明細書において用いる場合、「エタネルセプト」とは、p75 TNF−αレセプターの細胞外部分の2つの分子(各々の分子は、ヒトIgG1の235アミノ酸のFc部分からなる)の二量体であるTNFR−Fcを指す。本発明によれば、抗老化化合物、例えば、カルノシンは、TNFR−Fcの産生の間の誤った折り畳みおよび/または凝集されたタンパク質の量を減らすために用いられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明に従って産生されるべきレセプターは、レセプターチロシンキナーゼ類(RTK類)である。RTKファミリーは、種々の機能の多くの細胞タイプに重要であるレセプターを包含する(例えば、その各々が参照によって本明細書に援用される、YardenおよびUllrich,Ann.Rev.Biochem.57:433−478,1988;UllrichおよびSchlessinger,Cell 61:243−254,1990を参照のこと)。RTK類の非限定的な例としては、腫瘍壊死因子αおよびβのレセプター、線維芽細胞成長因子(FGF)レセプターファミリーのメンバー、上皮成長増殖因子(EGF)レセプターファミリーのメンバー、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプター、免疫グロブリンおよびEGF相同性ドメイン−1(TIE−1)およびTIE−2レセプター(Satoら,Nature 376(6535):70−74,1995、その全体として参照によって本明細書に援用される)およびc−Metレセプターを有するチロシンキナーゼ(そのいくつかは血管形成を直接または間接的に促進することが示唆されている)が挙げられる(Mustonen and Alitalo,J.Cell Biol.129:895−898,1995)。RTKの他の非限定的な例としては、胎児肝臓キナーゼ1(FLK−1)(キナーゼ挿入ドメイン含有レセプター(kinase insert domain−containing receptor)(KDR)(Termanら,Oncogene 6:1677−83,1991)または血管内皮細胞増殖因子レセプター2,VEGFR−2と呼ばれることもある)、fms−様チロシンキナーゼ−1(Flt−1)(DeVriesらScience 255;989−991,1992;Shibuyaら,Oncogene 5:519−524,1990)、(血管内皮細胞増殖因子レセプター1(VEGFR−1)、ニューロピリン−1と呼ばれるときもある)、エンドグリン、エンドシアリンおよびAx1が挙げられる。当業者は、本発明に従って発現され得る他のレセプターを承知するであろう。
【0073】
特定の実施形態では、本発明に従って産生されるレセプターとは、Gタンパク質カップリングレセプター(GPCR)である。GPCR類は薬物の作用および開発のための主な標的である。実際、レセプターは、現在公知の薬物の半分以上をもたらしており(Drews,Nature Biotechnology,14:1516,1996)GPCR類は、GPCRを拮抗するかまたはアゴナイズする臨床的に処方される薬物のうち30%で治療介入の最も重要な標的となっている(Milligan,G.and Rees,S.,TIPS,20:118〜124,1999)。これらのレセプターは確立された、治療標的として証明された歴史を有しているので、本発明によるGPCR類の産生も特に関心のあるものである。
【0074】
一般に、本発明の実施者は、目的の彼らのタンパク質またはポリペプチドを選択し、かつその正確なアミノ酸配列を知るであろう。本発明に従って発現されるべき任意の所定のポリペプチドは、それ自体の特定の特徴を有し、かつ培養された細胞の細胞密度または生存度に影響し得、そして同一の培養条件下で増殖される別のポリペプチドまたはタンパク質よりも低レベルで発現されてもよい。当業者は、本発明の培地および本明細書に記載の方法を適切に改変して、所定の発現されたポリペプチドまたはタンパク質の細胞増殖、力価、折り畳みまたは任意の他の特性を最適化することができるであろう。
【0075】
当業者は本発明の方法および組成物に従って発現され得る他の有用なおよび/または所望のタンパク質を認識するであろう。
【0076】
細胞株は所望のタンパク質産物を産生するための種々の技術を用いて培養され得る。細胞株は、細胞培養培地の目的、または産物の使用に依存して、小規模で産生してもまたは大規模で産生してもよい。例えば、細胞はバイオリアクターで増殖されてもよい。特定の実施形態では、このバイオリアクターの容積は、少なくとも1リットルであって、かつ10、100、250、500、1000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットル以上の容積であっても、またはその間の任意の値であってもよい。さらに、用いられ得るバイオリアクターとしては限定はしないが、攪拌タンクバイオリアクター、流動層リアクター、中空糸(ホロー・ファイバー)バイオリアクター、またはローラーボトルが挙げられる。このシステムはまた、バッチ、フィード・バッチまたは連続/灌流の方式で操作してもよい。細胞培養培地を管理およびモニターするためのバイオリアクターおよび方式は細胞培養の当業者に公知である。本実施例では、利用されるシステムは、攪拌タンクバイオリアクターであって、フィード・バッチ方式で操作される。
【0077】
このバイオリアクターは一般には、接種培地および選択された細胞株、例えば、TNFR融合タンパク質細胞株(所望のタンパク質産物を安定に発現および産生するようにトランスフェクトされ得る)を播種される。市販の培地、例えば、最小必須培地(MEM,Sigma)、Ham’sF10(Sigma)、またはダルベッコの改変イーグル培地(DMEM,Sigma)を基本培地として用いてもよい。次いで、これらの基本培地にアミノ酸類、ビタミン類、微量元素類、および/または他の成分類(産生の実行の間に用いられる接種培地またはフィード培地を産生するため)を補充してもよい。特定の実施形態では、基本培地は、細胞の堅調な増殖を可能にするため、細胞生存度を増大するため、細胞生産性を増大するため、積算生細胞密度を増大するため、および/またはカルノシンの存在下で産生されたタンパク質の量を改善するために変更される。例えば、基本培地に、ピルビン酸塩、オキサロ酢酸および/またはα−ケトグルタレートを補充してもよい。当業者は、過度の実験なしに本発明の方法および組成物で用いるための基本培地を変更し得る。
【0078】
特定の実施形態では、細胞は、抗老化化合物を含有する任意の種々の化学的に規定された培地で培養され、ここでこの培地の成分は公知であってかつ管理されている。例えば、規定の培地は代表的には、血清または加水分解産物などの複雑な添加物を含まない。特定の実施形態では、細胞を、抗老化化合物を含有する任意の種々の複合培地(この培地の全ての成分が既知であるか、および/または制御されているのではない)中で培養する。特定の実施形態では、このような抗老化化合物はカルノシンを含む。
【0079】
バイオリアクターの条件は、代表的には、約6.5〜約7.5のpH設定で管理される。pHは酸、一般にはCO、または塩基、例えば、炭酸水素ナトリウムを用いて調節される。溶存酸素は、空気飽和の約5〜90%で制御され、温度は増殖期の間、30℃〜42で保持される。細胞培養の当該分野おける当業者は、所望の結果を得るために使用される細胞株および方法に基づいてバイオリアクターの条件を過度の実験なしに変更し得る。
【0080】
本発明の組成物および方法は、タンパク質の発現の影響を受けやすい任意の細胞培養方法またはシステムで用いられ得る。例えば、目的のタンパク質を発現する細胞は、バッチ培養またはフィード・バッチ培養で増殖されてもよく、ここでこの培養は、タンパク質の十分な発現後に終わり、その後にその発現されたタンパク質が回収され必要に応じて精製される。あるいは、目的のタンパク質を発現する細胞は、灌流培養で増殖されてもよく、ここでは培養は終わらず、新しい栄養および他の成分がその培養に定期的にまたは連続的に添加され、その間その発現されたタンパク質は定期的にまたは連続的に回収される。
【0081】
細胞が播種された後、それは、増殖期を経過し、その間、その細胞の数は一般には指数関数的に増大する。増殖期の間、細胞培養の温度もしくは温度範囲は、細胞培養物が生きたままであるか、高レベルのタンパク質が産生されるか、代謝性廃棄産物の産生または蓄積が最小限になる温度もしくは温度範囲か、および/またはこれらの任意の組み合わせもしくは実施者によって重要とみなされる他の要因に主に基づいて選択される。非限定的な例として、CHO細胞はよく増殖して、高レベルまたはタンパク質を約37℃で産生する。一般には、ほとんどの哺乳動物細胞はよく増殖するか、および/または約25℃〜42℃の範囲内で高レベルもしくはタンパク質を産生し得るが、本発明の開示によって教示される方法は、これらの温度に限定されない。特定の哺乳動物細胞はよく増殖するか、および/または約35℃〜40℃の範囲内で高レベルのタンパク質を産生し得る。特定の実施形態では、この細胞培養物は、増殖期の間、1回以上、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45℃という温度で増殖される。当業者は、細胞の要件、および実施者の産生の要件に依存して、細胞を増殖する適切な温度または温度範囲を選択できる。
【0082】
増殖期の後は移行期であって、この間は、細胞は、温度変化のような周囲に生じる任意の変化に適応する。生じる変化は代表的には、産生期のパラメーターである。本実施例では、4日目、温度は、約37℃から約31℃に低下した。しかし、この温度シフトは、2回以上生じてもよく、かつ下向き方向にいく必要はない。さらに、移行期および温度シフトは、産生の実行の間、任意の日に生じ得る。産生の方法のほとんどが、多段階のプロセスを含むが、カルノシンはまた、単相のプロセスで利用されてもよい。
【0083】
培養の温度をシフトする場合、その温度シフトは、比較的徐々にであってもよい。例えば、温度変化を完了するためには数時間または数日間を要する場合がある。あるいは、温度シフトは、比較的急激であってもよい。温度は培養プロセスの間、着実に増大されても減少されてもよい。あるいは、温度は、培養プロセスの間種々の時間で別個の量で増大されても減少されてもよい。この引き続く温度(単数または複数)または温度範囲(単数または複数)は、最初のまたは以前の温度(単数または複数)または温度範囲(単数または複数)よりも低くても高くてもよい。当業者は、多数の別個の温度シフトがこれらの実施形態に包含されるということを理解する。例えば、温度は一回シフトされてもよく(高い方または低い方の温度または温度範囲へのいずれか)、この細胞は特定の期間、この温度または温度範囲で維持され、その後にその温度が新しい温度または温度範囲へ再度シフトされてもよく、ここで前の温度または温度範囲よりもこの温度または温度範囲は高くても低くてもよい。各々の別個のシフトの後の培養の温度は、一定であってもよいし、または特定の温度範囲内で維持されてもよい。
【0084】
最終的に、細胞数が実質的に増大しないが、細胞が所望のタンパク質産物を産生する産生期がある。しかし、当業者は、特定の実施形態では、細胞が産生期の間増殖しかつ数が増大し続け得るということを理解するであろう。この相の間、バイオリアクターの環境は、細胞が産生性である可能性がさらに高い条件で制御される。例えば、温度は一般には、タンパク質産物の産生が誘導される、増殖期の温度とは違う温度、例えば31℃で保持される。産生の実行を通じて、細胞は、その細胞に必要であり得る栄養物および補充物を含有するフィード培地を供給され得る。例えば、特定の場合、引き続く産生期の間、細胞によって枯渇されるかまたは代謝されている栄養物または他の培地成分を細胞培養物に対して補充することが有益または必須であり得る。非限定的な例として、ホルモンおよび/または他の増殖因子、特にイオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、およびホスフェート)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(通常は極めて低い最終濃度で存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、またはグルコースもしくは他のエネルギー源を用いて細胞培養を補充することが有益または必要である場合がある。これらの補充成分は全てが細胞培養物に一度に添加されてもよいし、または一連の付加で細胞培養物に提供されてもよい。特定の実施形態では、抗老化化合物が、産生期の間に1回以上フィード培地に提供される。
【0085】
特定の実施形態によれば、抗老化化合物、例えば、カルノシンの、産生期の間の細胞培養培地中での使用は、接種培地に提供されようと、またはフィード培地に提供されようと、細胞生存度、および/または特異的なタンパク質産生を増大し、これによって産生されるタンパク質の全体的収率を改善する。
【0086】
タンパク質産物プロセスの局面は、細胞培養の分野における当業者によって決定される。パラメーター、例えば、播種密度、産生物培養の期間、収集の間の操作条件(とりわけ、上述のものを含む)が、細胞株および細胞培養培地の関数である。従って、このパラメーターは、細胞培養の分野において当業者によって過度の実験なしに決定され得る。
【0087】
増殖期の間の温度または温度範囲と同様、産生期の間の細胞培養の温度または温度範囲は、細胞培養物が生きたままであり、高レベルのタンパク質が産生され、産物もしくは代謝性廃棄産物の蓄積が最小化される温度もしくは温度範囲か、および/またはこれらの任意の組み合わせ、または実施者によって重要とみなされる他の要因に主に依存して選択される。一般には、ほとんどの哺乳動物細胞は、生きたままであり、約25℃〜42℃の範囲内で高レベルまたはタンパク質を産生するが、本開示によって教示される方法は、これらの温度に限定されない。特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、生きたままであり、かつ約25℃〜35℃という範囲内で高レベルまたはタンパク質を産生する。特定の実施形態では、この細胞培養物は、産生期の間1回以上、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45℃という温度で増殖される。当業者は、産生期の間に細胞を増殖する適切な温度(単数または複数)または温度範囲(単数または複数)を、細胞の特定の要件、および実施者の特定の産生要件に依存して選択可能である。細胞は、実施者の必要性および細胞自体の要件に依存して、任意の時間増殖され得る。
【0088】
特定の実施形態では、バッチ培養および/またはフィード・バッチ培養は、実施者の要件によって決定されるとおり、培養物が1つ以上の関連の培養条件に一旦達すれば終わらされる。特定の実施形態では、バッチ培養またはフィード・バッチ培養は、発現されるタンパク質が十分に高い力価に一旦達すれば、細胞密度が十分に高いレベルに一旦達すれば、発現されるタンパク質が十分に高い細胞密度に一旦達すれば、および/または代謝性廃棄産物(例えば、乳酸塩および/またはアンモニウム)の望ましくない産生もしくは蓄積を妨げるために終わらされる。当業者は、実験的、商業的および/または他の考慮に基づいて、バッチ培養またはフィード・バッチ培養が終わらされるべきときを決定するために用いられ得る他の関連の培養条件を承知するであろう。
【0089】
特定の実施形態では、産生の実施後に、タンパク質産物を、細胞培養培地から回収して、さらに伝統的な分離技術を用いて単離する。例えば、タンパク質は最初に遠心分離によって分離して、そのタンパク質を含む上清を得てもよい。さらに、またはあるいは、タンパク質産物は、宿主細胞の表面に結合されてもよい。このような実施形態では、この培地を取り出して、そのタンパク質を発現する宿主細胞を精製プロセスの第一段階として溶解する。哺乳動物宿主細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的破壊および高いpH条件への暴露を含む、当業者に公知の多数の手段によって達成され得る。
【0090】
従来のタンパク質精製方法を用いて、タンパク質はさらに単離され得る。所望のタンパク質産物を単離および精製する方法は、細胞培養の当該分野において公知である。特定の方法は、用いられる細胞株および求められる産物に依存する。
【0091】
抗老化化合物、例えば、カルノシンは、特定の細胞培養プロセスに最適の時間で培養培地に添加され得る。本実施例には、カルノシンの添加は、増殖期が実質的に完了した後に行い、移行期である。添加の間、細胞培養培地は、温度シフトから生じる新しい温度に適応されている。移行期は一般には、剤が添加されて産生期の開始が補助されたときである。しかし、カルノシンは増殖期および産生期を含む、最適結果を生じる産生試行の間、任意のポイントで添加されてもよい。カルノシンはまた、フィード培地などの他の成分と組み合わせて添加されてもよい。特定の実施形態では、抗老化化合物は、接種培地に提供され、細胞培養プロセス全体の間に細胞培養中に存在する。特定の実施形態では、2つ以上の抗老化化合物が、細胞培養培地に提供される。特定の実施形態では、2つ以上の抗老化化合物が接種培地中に提供され、全体的細胞培養プロセスの間に細胞培養中に存在する。特定の実施形態では、2つ以上の抗老化化合物が提供され、ここでは1つの抗老化化合物が、接種培地に提供されて、細胞培養プロセス全体の間に細胞培養に存在するが、細胞培養が開始された後、別の抗老化化合物が提供される。
【0092】
特定の実施形態では、細胞培養中に存在する抗老化化合物の濃度は、種々の細胞タイプおよび産物について異なる。特定の実施形態では、存在するカルノシンの濃度は、種々の細胞タイプおよび産物について異なる。一般には、その濃度は、毒性効果なしに産生性および質を向上するのに十分である。本実施例のためには、この範囲としては、限定はしないが5mM〜100mMが挙げられる。用いられるカルノシンの濃度は、細胞培養培地に依存して変化し得ることが理解される。特定の細胞株のカルノシンの適切な濃度は、従来の方法を用いて、例えば、2Lのバイオリアクターなどの慣用的な小規模の実験で決定されることが必要である場合もある。当業者は、当該分野で公知の細胞培養技術および診断方法を用いて、過度の実験なしにカルノシンまたは他の抗老化化合物の利点または最適濃度を決定できる。
【0093】
化合物ではなく、カルノシンまたは別の抗老化化合物を添加することの1つの利点は、生存度に対する効果である。代表的には、酪酸ナトリウムなどの化合物の添加にともなって細胞増殖は中断し、生きている細胞数が低下する(Kimら、Biotechnol Bioeng,71:184〜193,184)。しかし、以下の実施例は、細胞培養培地に対するカルノシンの添加が、カルノシンなどの抗老化化合物の非存在下で増殖される細胞培養で観察されるよりも収集の時点で高い生存度を生じるということを示す。さらに、このようなカルノシン含有細胞培養は、特異的な生産性の増大を示す。細胞生存および特異的生産性に対する正の効果を考慮すれば、全体的収率は高い。
【0094】
カルノシンなどの抗老化化合物が高分子量凝集体の量および/または酸性種の数を減らすということが別の利点である。高分子量凝集体および酸性種の量を減らすことで、タンパク質産物の精製が簡単になる。タンパク質をさらに効率的に単離することを可能にすれば、タンパク質産物を産生する費用は低下する。特定の実施形態では、抗老化化合物、例えば、カルノシンを用いて、誤って折り畳まれたタンパク質および/または凝集されたタンパク質の量を減らす。特定の実施形態では、カルノシン以外の抗老化化合物を用いて、高分子量凝集体および/または酸性種の量を減らす。特定の実施形態では、2つ以上の抗老化化合物を用いて、高分子量凝集体および/または酸性種の量を減らす。
【0095】
特定の実施形態では、細胞は、米国特許出願第11/213,308号、同第11/213,317号、および同第11/213,633号(その各々が2005年8月25日に出願され、その各々が本明細書においてその全体が参照によって援用される)に記載の任意の細胞培養方法に従って増殖される。例えば、特定の実施形態では、細胞は、培養アミノ酸濃度が約70mMより大きい培養培地中で増殖され得る。特定の実施形態では、細胞は、累積アスパラギンに対する累積グルタミンのモル比が約2未満である培養培地中で増殖されてもよい。特定の実施形態では、細胞は、累積総アミノ酸に対する累積グルタミンのモル比が約0.2未満である培養培地中で増殖されてもよい。特定の実施形態では、細胞は、累積総アミノ酸に対する累積無機イオンのモル比が約0.4〜1である培養培地中で増殖されてもよい。特定の実施形態では、細胞は、組み合わせた累積グルタミンおよび累積アスパラギンの濃度が約16〜36mMである培養培地中で増殖されてもよい。特定の実施形態では、細胞は、前述の培地条件のうち2、3、4または5つ全てを含む培養培地中で増殖されてもよい。このような培地の使用によって、高レベルのタンパク質産生が可能になり、アンモニウムおよび/または乳酸塩のような特定の望ましくない因子の蓄積が減らされる。
【0096】
ある実施形態では、細胞を2006年7月13日出願であり、かつその全体が参照によって本明細書に援用される、米国仮特許出願第60/830,658号に記載される1つ以上の条件のもとで増殖する。例えば、ある実施形態では、マンガンを約10〜600nMの濃度で含む培養培地中で細胞を増殖する。ある実施形態では、マンガンを約20〜100nMの濃度で含む培養培地中で細胞を増殖する。いくつかの実施形態では、マンガンを約40nMの濃度で含む培養培地において細胞を増殖する。糖タンパク質増殖におけるこのような培地の使用は、改良されたグリコシル化パターン(例えば、1つ以上のオリゴ糖鎖中の多数の共有結合した糖残基)を有する糖タンパク質の産生が生じる。
【0097】
本発明の特定の実施形態では、本発明の1つ以上の方法に従って産生されるタンパク質は、薬理学的活性を有し、かつ製剤の調製に有用である。本発明の1つ以上の方法に従って産生されるタンパク質は、被験体に投与されてもよいし、または最初に、非経口(例えば、静脈内)、皮内、皮下、経口、経鼻、気管支、眼、経皮(局所)、経粘膜、直腸および膣内経路を含むがこれらに限定されない任意の利用可能な経路による送達のために処方されてもよい。本発明の薬学的組成物は代表的には、哺乳動物細胞株から発現される精製されたタンパク質、送達因子(すなわち、上記のようなカチオン性ポリマー、ペプチド分子輸送体、サーファクタントなど)を、薬学的に受容可能な担体と組み合わせて含む。本明細書において用いる場合、「薬学的に受容可能な担体」という言葉は、薬学的な投与に適合する、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。補充的活性化合物も、この組成物に組み込まれてもよい。
【0098】
薬学的組成物は、投与の意図する経路に適合するように処方される。このような処方物は、当業者に公知である。特定の実施形態では、本発明によって産生されるタンパク質は、経口型および/または非経口型で処方される。特定の実施形態では、投与の容易性および投薬の均一性のために、このような経口型および/または非経口型を単位剤形として処方し、ここでは各々の単位が、必要な薬学的担体と会合して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性タンパク質を含む。当業者は、本発明に従って産生されるタンパク質に適切な単剤形処方物を承知するであろう。
【0099】
特定の実施形態および局面は、上記で詳細に考察される。本開示はさらに、以下の非限定的な実施例によって例示される。しかし、当業者は、これらの実施形態に対する種々の改変が、添付される特許請求の範囲内であることを理解する。カルノシンおよび/または他の抗老化化合物の添加が他の哺乳動物細胞培養物およびタンパク質産物に等しく適用可能であることが注目される。本発明の範囲を規定するのは請求の範囲およびその等価物であって、本発明は、特定の実施形態には限定されず、その説明によって限定されることもなく、そうあるべきでもない。
【実施例】
【0100】
(実施例1)
ディッシュ規模のカルノシン実験
MYO−29細胞株は、1Lの操作容積を有するバイオリアクター中で無血清の産生培地中で培養して、4日目に37℃〜31℃に温度シフトした。バイオリアクターのpHは、7.00で保持されて、溶存酸素は30%空気飽和であった。次いで細胞培養培地は、4日、7日および10日にバイオリアクターから採取して、8mlの操作容積を有する培養デッシュに入れて、31℃のインキュベーターに入れ、ここでこのディッシュ培養を12日まで培養した。この細胞に5日および7日にフィード培地を補充した。5日目、10%(v/v)のフィード培地をこの細胞培養物に添加し、7日目に、5%(v/v)のフィード培地を細胞培養物に添加した。10mMのカルノシンをそれぞれ4日、7日および10日に、このディッシュに添加し、その細胞培養培地を12日目に回収した。
【0101】
図1aは、7日目の培養物中における酸性ピークの量に対するカルノシン添加の効果を示す。図1bは、7日の培養での高分子量凝集体に対するカルノシンの効果を示す。図1cは、4日、対7日、対10日の酸性ピークに対するカルノシン添加の効果を示す。図1dは、同じ実験の結果、ただし高分子量凝集体についてを示す。全体として、カルノシンは、培養ディッシュにおいて酸性ピークおよび高分子量凝集体の両方を減らすことによる正の効果を有した。
【0102】
(実施例2)
細胞培養培地に対するカルノシン添加の効果
5つのバイオリアクターに、無血清接種培地中のMYO−29細胞株の1Lの操作容積を用いて0.9×10細胞/mlで接種した。全てのバイオリアクターに、14日の試行の3、5、7および12日に5(v/v)%のフィード培地を供給した。フィード培地の5%(v/v)の10日目の供給を2つのコントロールのバイオリアクターに添加し、その一方はカルノシンを含んでいた。バイオリアクターの条件は、37℃の温度、7.00のpHおよび30%の空気飽和の溶存酸素値で保持した。攪拌速度は、200rpmであって、散布ガスは空気と7%の二酸化炭素との組み合わせであった。
【0103】
全ての細胞を4日間培養し、この時点で20mMのカルノシンを2つのバイオリアクターに添加し、コントロールにはカルノシンの添加をせず、その温度はまた4日目に全てのバイオリアクター中で31℃にシフトした。そのバイオリアクターは、産生の試行の14日目に回収した。サンプルは、細胞培養培地の進行をモニターするために試行全体にわたって採取した。コントロールは期待とおりに機能した。
【0104】
図2aは、日々の生細胞密度を示す。図2bは、カルノシンを有するバイオリアクターの日々の細胞生存度が、カルノシンなしの2つのバイオリアクターに比較して回収された時点で高かったことを示す。図2cは、バイオリアクターの日々の力価およびカルノシンが存在する2つのバイオリアクターが回収の時点でより高い力価を有したことが示される。カルノシンを有する培養物は、図2dに示されるさらに優れた累積特異的細胞産生性を有した。図2eは、高分子量凝集体の量を示し、かつ本発明のカルノシンでバイオリアクター中の高分子量凝集体の量が低下することを示す。
【0105】
(実施例3)
種々の濃度のカルノシン添加の効果
4つのバイオリアクターに、無血清接種培地中のMYO−29細胞株の1Lの操作容積を用いて0.4×10細胞/mlで接種した。全てのバイオリアクターに、14日の試行の7日に5%(v/v)のフィード培地を全て供給した。バイオリアクターの条件は、37℃の温度、7.00のpHおよび30%の空気飽和の溶存酸素値で保持した。攪拌速度は、200rpmであって、散布ガスは空気と7%の二酸化炭素との組み合わせであった。
【0106】
全ての細胞を4日間培養し、この時点で温度はバイオリアクターの全てにおいて31℃にシフトした。また4日目、20mMのカルノシンを1つのバイオリアクターに添加し、第二は、40mMのカルノシンを添加し、そのコントロールはなんらカルノシンを添加しなかった。全てのバイオリアクターは、産生の試行の12日目に回収した。サンプルは、細胞培養培地の進行をモニターするために試行全体にわたって採取した。コントロールは一般に期待とおりに機能したが、1つのコントロールは前に示されたよりもわずかに低い毎日生存度を有した。
【0107】
図3aは、日々の生細胞密度を示し、異なるバイオリアクターは、4mMのカルノシンを有するバイオリアクター以外は、全く同様である。図3bは、カルノシンを有するバイオリアクターの日々の細胞生存度が、カルノシンなしの2つのコントロールのバイオリアクターに比較して回収された時点で高い生存度だったことを示す。図3cは、日々の力価;カルノシンが添加されたバイオリアクターおよびコントロールの1つが同様であったことを示す。40mMのカルノシンを有するバイオリアクターは、より高い累積特異的細胞産生性を有した(図3d)。図3eは、高分子量凝集体の量を示しており;全体として、コントロールに比較してカルノシン添加では高分子量凝集体の低下がある。
【0108】
(実施例4)
組み換えTNFR融合タンパク質の産物特徴を改善するための哺乳動物細胞培養におけるカルノシンの使用
TNFR融合タンパク質細胞株は、1Lの操作容積を有するバイオリアクター中で無血清産生培地中で培養した。1日目、温度を37℃から29.5℃にシフトし、酪酸ナトリウムを1mMの最終濃度に添加して、HMBAを最終濃度3mMに添加した。バイオリアクターのpHは、6.95に保持し、溶存酸素は60%空気飽和であった。2日目、カルノシンを20mMの最終濃度まで培養物に添加した。細胞に、3、6、8および10日目に5%(v/v)のフィード培地を補充した。細胞培養培地は、12日目に回収した。4つの別個のコントロールのバイオリアクターを行い、ここでは組み換えTNFR融合タンパク質を発現するCHO細胞を、カルノシンを2日目に添加しなかったこと以外は上記と同一の条件下で増殖した。図4〜11のコントロールのデータは、4つのコントロールのバイオリアクター試行の平均である。
【0109】
図4および図5から理解されるとおり、細胞増殖および細胞生存度は、カルノシン添加によって有意に影響されなかった。図6は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって測定した場合、誤った折り畳まれ、そして/または凝集されたTNFR融合タンパク質の量が、カルノシンを含む培地中で細胞が増殖されたとき有意に低下したことを示す。図7は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定した高分子量(HMW)凝集体の量がまた、カルノシンを含む培地中でTNFR融合タンパク質を発現する細胞が増殖されたとき有意に低下したことを示す。図8および図9は、それぞれ産物の力価および特異的細胞生産性は、TNFR融合タンパク質を発現する細胞がカルノシンを含む培地中で増殖されたとき増大したことを示す。最終的に、図10および図11は、産生されたTNFR融合タンパク質のグリコシル化は、この細胞がカルノシンを含む培地中で増殖されたとき有意に異なることがなかったことを示す。
【0110】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されているが、上記の説明は単なる例示である。本明細書に開示される実施形態のさらなる改変が細胞培養の当業者には思い浮かび、そして全てのこのような改変は、添付される請求の範囲に規定されるとおり実施形態の範囲内であるものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養物中でTNFR融合タンパク質を産生する方法であって、以下の工程:
細胞培養の条件下で発現される遺伝子である、TNFR融合タンパク質をコードする遺伝子を含む哺乳動物細胞を、抗老化化合物を含む細胞培養培地中で培養する工程と;
該タンパク質の発現を可能にするのに十分な条件および時間のもとで該培養物を維持する工程と;を包含し、
ここで該細胞培養物が、該抗老化化合物を欠く以外は同一の培地中、同一の条件下で観察される、対応する細胞培養特徴とは異なる改良された細胞培養特徴を示し;
ここで、該改良された培養特徴が、力価の増大、細胞特異的生産性の増大、細胞生存度の増大、積算生細胞密度の増大、高分子量凝集体の蓄積減少、酸性種の蓄積減少およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、
方法。
【請求項2】
前記抗老化化合物が、カルノシン、アセチル−カルノシン、ホモ−カルノシン、アンセリンおよびβアラニン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗老化化合物がカルノシンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗老化化合物が、約5mMと約100mMとの間の濃度で前記細胞培養培地中に存在する、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞培養物が、補充成分をさらに提供される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記補充成分が、フィード培地中で提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記補充成分が、ホルモンおよび/または他の増殖因子、特定のイオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびホスフェート)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(通常は極めて低い最終濃度で存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、グルコースまたは他のエネルギー源、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記補充成分が、抗老化化合物を含む、請求項5、6または7に記載の方法。
【請求項9】
TNFR融合タンパク質を産生する方法であって以下の工程:
細胞培養の条件下で発現される遺伝子である、TNFR融合タンパク質をコードする遺伝子を含む哺乳動物細胞を細胞培養培地中で、増殖期の間の細胞増殖誘導性の第一の温度または温度範囲で培養する工程と;
該細胞培養培地の温度または温度範囲をタンパク質産生誘導性の第二の温度または温度範囲にシフトさせる工程と;
該細胞培養培地中の宿主細胞を移行期から産生期への第二の温度または温度範囲で培養する工程と;を包含し、
ここで抗老化化合物が、該細胞培養物に添加され、その結果該細胞培養物が、抗老化化合物を欠く以外は同一の培地中、同一の条件下で観察される、対応する細胞培養特徴とは異なる改良された細胞培養特徴を示し;
ここで、該改良された細胞培養特徴が、力価の増大、細胞特異的生産性の増大、細胞生存度の増大、積算生細胞密度の増大、高分子量凝集体の蓄積減少、酸性種の蓄積減少およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、
方法。
【請求項10】
前記抗老化化合物が、前記細胞培養過程の開始時点で前記細胞培養培地に添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗老化化合物が、前記増殖期の間に前記細胞培養培地に添加される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗老化化合物が、前記移行期の間に前記細胞培養培地に添加される、請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗老化化合物が、前記産生期の間に前記細胞培養培地に添加される、請求項9〜12に記載の方法。
【請求項14】
抗老化化合物が、カルノシン、アセチル−カルノシン、ホモ−カルノシン、アンセリンおよびβアラニン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9〜13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗老化化合物がカルノシンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記抗老化化合物が、約5mMと約100mMとの間の濃度で前記細胞培養培地中に存在する、請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞培養物が、補充成分をさらに提供される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記補充成分が、フィード培地中で提供される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記補充成分が、ホルモンおよび/または他の増殖因子、特定のイオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびホスフェート)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(極めて低い最終濃度で通常は存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、グルコースまたは他のエネルギー源、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記補充成分が、抗老化化合物を含む、請求項17、18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記産生されたTNFR融合タンパク質が哺乳動物細胞に対して異種である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記TNFR融合タンパク質がTNFR−Fcを含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記TNFR−Fcがエタネルセプトである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法によって産生されたTNFR融合タンパク質。
【請求項26】
前記TNFR融合タンパク質がTNFR−Fcを含む、請求項25に記載のタンパク質。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載のタンパク質を調製するための方法であって、前記細胞培養培地からタンパク質を単離する工程をさらに包含する方法。
【請求項28】
前記タンパク質がさらに処方のために精製または処理される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記タンパク質が薬学的組成物中に処方される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記高分子量凝集体が誤って折り畳まれたタンパク質を含む、請求項1〜29のいずれか1項に記載のタンパク質を調製するための方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−524504(P2010−524504A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506425(P2010−506425)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/061125
【国際公開番号】WO2008/131375
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】