説明

抗肥満剤および抗肥満食品

【課題】通常の食事を取りながら、肥満の大きな原因となる脂質(トリアシルグリセロール)が体内に吸収されることを防ぐ抗肥満剤を提供する。
【解決手段】ラクトバチルス・ラムノーサスATCC53103を有効成分として含有する抗肥満剤、および前記乳酸菌を有効成分として含有する抗肥満飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗肥満剤および抗肥満食品に関し、更に詳細には、脂質の消化管から取り込まれることを抑制し、肥満となることを防ぐことのできる抗肥満剤および抗肥満食品に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、体脂肪の過剰を特徴とする体重制御系の疾患である。近代社会では、運動不足と、カロリー過剰な食事の結果、体内で中性脂肪が蓄積され、肥満と判断される人が増加の一途をたどっており、大きな問題となっている。
【0003】
この肥満を防ぐには、摂取する脂肪を消耗するのに十分な運動を行うことが一番であるが、現実には、運動を行うことは難しく、脂肪の摂取を減らすことが求められている。
しかしながら、無理な食事制限で肥満を抑えようとすると、他の必要な栄養素の摂取量が不足したり、バランスを崩す結果、体に悪影響を与えることもあった。これは、いわゆるダイエット食品と呼ばれる、栄養素が少ないにもかかわらず満腹感を与える食品を摂取した場合にも同じことがいえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、通常の食事を取りながら、肥満の大きな原因となる脂質(トリアシルグリセロール)が体内に吸収されることを防ぐことのできる手段の開発が強く求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、脂質が体内に吸収されるメカニズムに注目し、肥満の抑制方法に関し研究を行った結果、腸内の微生物叢(フローラ)が脂質を摂取分解すれば、結果的に人が摂取する脂質は減少し、自然に肥満が防止できることに気づいた。そして、このような脂質を摂取分解しうる微生物について、鋭意検索を行っていたところ、乳酸菌に属する微生物中にそのような作用を有するものを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、ラクトバチルス・ロイテリに属し、以下の(1)ないし(3)のアミノ酸配列または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるリパーゼを産生する微生物を有効成分とする抗肥満剤である。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然としてリパーゼ活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。
【0007】

【0008】
また本発明は、ラクトバチルス・ロイテリに属し、上記(1)ないし(3)のアミノ酸配列または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるリパーゼを産生する微生物を有効成分とする抗肥満飲食品である。
【0009】
更に本発明は、下記(5)ないし(7)で表されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるサブユニットで構成されるグリセロール分解酵素である。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然としてグリセロール分解活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。
【0010】

【0011】
更にまた本発明は、次の(8)で表されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表される腸管付着性プロテインである。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然として乳酸菌を腸管粘膜細胞近傍に付着させる活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。

【発明の効果】
【0012】
本発明の抗肥満剤および抗肥満飲食物は、これを摂取することで通常の食事をしながらも脂質の腸管からの吸収を防ぐことができるものである。そして、乳酸菌は古くからヨーグルトや発酵乳等の発酵食品の製造に使用されているものであり、安全性も極めて高いものであるから、安心して摂取することのできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】L.ロイテリJCM1112Tの代謝マップを示す図面である。
【図2】L.ロイテリJCM1112T又はL.ラムノーサスATCC53103を投与したラット群の経時的な体重増加を対照群と対比して示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の抗肥満剤および抗肥満飲食品(以下、「抗肥満剤等」ということがある)の有効成分である微生物は、乳酸菌であるラクトバチルス・ロイテリに属し、上記の(1)ないし(3)のアミノ酸配列(配列表の1、3、5にそれぞれ対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるリパーゼ(以下。「本発明リパーゼ類」という)を産生することのできるものである(以下、「本発明乳酸菌」という)。
【0015】
この本発明リパーゼ類は、腸管粘膜細胞近傍に存在する脂質(トリアシルグリセロール)脂肪酸とグリセロールに分解し、本発明乳酸菌中に取り込まれる。そして、図1に示すように取り込まれた脂肪酸は菌体構成要素として利用され、グリセロールは種々の代謝経路を経て二酸化炭素、アセトン、エタノール、ラクテートあるいはロイテリンとなる。
【0016】
本発明乳酸菌は、上記のリパーゼ類を産生する能力、すなわち、上記リパーゼをコードするヌクレオチド配列(遺伝子)を有する他、トランスポーターをコードする遺伝子として次の(4)で表されるヌクレオチド配列(配列表の8に対応)を有することが好ましい。また、本発明には、下記(4)で表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつグリセロールトランスポーター活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(4)で表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグリセロールトランスポーター活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0017】

【0018】
この遺伝子は、グリセロールを本発明乳酸菌の細胞内に取り込むトランスポーターをコードするものであり、取り込まれたグリセロールは、図1のように、乳酸菌内の酵素により代謝を受ける。
【0019】
更に、本発明乳酸菌は、前記式(5)ないし(7)で表されるアミノ酸配列(配列表の配列番号9、11、13にそれぞれ対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるサブユニットで構成されるグリセロール分解酵素を有するものであることが好ましい。このサブユニット(5)ないし(7)で構成されるグリセロール分解酵素は、pdu(propanediol utilization)オペロン中で機能するグリセロール デハイドラターゼ(glycerol dehydratase)であり、本発明リパーゼの作用により生じたグリセロールを効率よく代謝することができるものである。
【0020】
なお、このサブユニット(5)ないし(7)をコードするヌクレオチド配列(9)ないし(11)(配列表の配列番号10、12、14にそれぞれ対応)を、遺伝子工学の手法により他の乳酸菌等に組み込むことにより、グリセロール分解性の高い乳酸菌を得ることも可能となる。また、本発明には、下記(9)ないし(11)で表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつグリセロール分解活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(9)ないし(12)で表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグリセロール分解活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。



【0021】
更にまた、本発明乳酸菌は、次の(8)のアミノ酸配列(配列表の配列番号15に対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表される腸管付着性プロテインを保有するものであることがより好ましい。
【0022】

【0023】
この腸管付着性プロテインは、乳酸菌を腸管粘膜細胞近傍に付着させる作用を有するものであり、これを有する本発明乳酸菌は、一定の期間腸管粘膜近傍に存在し、安定に脂質を取り込むことが可能となる。なお、このプロテインをコードする次の(12)で表される遺伝子(配列表の配列番号16に対応)を、公知の手法により他の乳酸菌に組み込むことにより、腸管内での滞在時間の長い乳酸菌を得ることが可能となる。また、本発明には、下記(12)で表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつ乳酸菌を腸管粘膜細胞近傍に付着させる活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(12)で表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ乳酸菌を腸管粘膜細胞近傍に付着させる活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0024】

【0025】
また、本発明乳酸菌は、下記式(16)ないし(20)のいずれかで表されるアミノ酸配列(配列表の配列番号17、19、21、23、25にそれぞれ対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるグリセロール分解酵素を有するものであることが好ましい。このグリセロール分解酵素は、アルコールデヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase;図1中のADH(8))であり、本発明リパーゼの作用により生じたグリセロールを効率よく代謝することができるものである。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然としてグリセロール分解活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。
【0026】

【0027】

【0028】

【0029】

【0030】

【0031】
なお、このグリセロール分解酵素(16)ないし(20)をコードする下記ヌクレオチド配列(32)ないし(36)(配列表の配列番号18、20、22、24、26にそれぞれ対応)を、遺伝子工学の手法により他の乳酸菌等に組み込むことにより、グリセロール分解性の高い乳酸菌を得ることも可能となる。また、本発明には、下記(32)ないし(36)のいずれかで表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつグリセロール分解活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(32)ないし(36)のいずれかで表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグリセロール分解活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】

【0037】
また、本発明乳酸菌は、下記式(21)もしくは(22)で表されるアミノ酸配列(配列表の配列番号27、29にそれぞれ対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるグリセロール分解酵素を有するものであることが好ましい。このグリセロール分解酵素は、アルコールデヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase;図1中のADH(8))であり、本発明リパーゼの作用により生じたグリセロールを効率よく代謝することができるものである。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然としてグリセロール分解活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。
【0038】

【0039】

【0040】
なお、このグリセロール分解酵素(21)または(22)をコードする下記ヌクレオチド配列(37)または(38)(配列表の配列番号28、30にそれぞれ対応)を、遺伝子工学の手法により他の乳酸菌等に組み込むことにより、グリセロール分解性の高い乳酸菌を得ることも可能となる。また、本発明には、下記(37)または(38)で表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつグリセロール分解活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(37)または(38)で表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグリセロール分解活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0041】

【0042】

【0043】
また、本発明乳酸菌は、下記式(23)ないし(25)のいずれかで表されるアミノ酸配列(配列表の配列番号31、33、35にそれぞれ対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldehyde dehydrogenase)を有するものであることが好ましい。このアルデヒドデヒドロゲナーゼは、図1中に示すaldehyde dehydrogenase(9)であり、本発明リパーゼの作用により生じたグリセロールを効率よく代謝することができるものである。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然としてアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。
【0044】

【0045】

【0046】

【0047】
なお、このアルデヒドデヒドロゲナーゼ(23)ないし(25)をコードする下記ヌクレオチド配列(39)ないし(41)(配列表の配列番号32、34、36にそれぞれ対応)を、遺伝子工学の手法により他の乳酸菌等に組み込むことにより、グリセロール分解性の高い乳酸菌を得ることも可能となる。また、本発明には、下記(39)ないし(41)のいずれかで表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(39)ないし(41)のいずれかで表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0048】

【0049】

【0050】

【0051】
また、本発明乳酸菌は、下記式(26)で表されるアミノ酸配列(配列表の配列番号37に対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるグリセリン酸キナーゼ(glycerate kinase)を有するものであることが好ましい。このグリセリン酸キナーゼは、図1中に示すGlycerate kinase(10)であり、本発明リパーゼの作用により生じたグリセロールを効率よく代謝することができるものである。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然としてグリセリン酸キナーゼ活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。
【0052】

【0053】
なお、このグリセリン酸キナーゼ(26)をコードする下記ヌクレオチド配列(42)(配列表の配列番号38に対応)を、遺伝子工学の手法により他の乳酸菌等に組み込むことにより、グリセロール分解性の高い乳酸菌を得ることも可能となる。また、本発明には、下記(42)で表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつグリセリン酸キナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(42)で表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグリセリン酸キナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0054】

【0055】
また、本発明乳酸菌は、下記式(27)で表されるアミノ酸配列(配列表の配列番号39に対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるグリセロールキナーゼ(glycerol kinase)を有するものであることが好ましい。このグリセロールキナーゼは、図1中に示すGK(5)であり、本発明リパーゼの作用により生じたグリセロールを効率よく代謝することができるものである。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然としてグリセロールキナーゼ活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。
【0056】

【0057】
なお、このグリセロールキナーゼ(27)をコードする下記ヌクレオチド配列(43)(配列表の配列番号40に対応)を、遺伝子工学の手法により他の乳酸菌等に組み込むことにより、グリセロール分解性の高い乳酸菌を得ることも可能となる。また、本発明には、下記(43)で表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(43)で表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0058】

【0059】
また、本発明乳酸菌は、下記式(28)で表されるアミノ酸配列(配列表の配列番号41に対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるグリセロール3リン酸デヒドロゲナーゼ(glycerol-3-phosphate dehydrogenase)を有するものであることが好ましい。このグリセロール3リン酸デヒドロゲナーゼは、図1中に示すGPD(6)であり、本発明リパーゼの作用により生じたグリセロールを効率よく代謝することができるものである。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然としてグリセロール3リン酸デヒドロゲナーゼ活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。
【0060】

【0061】
なお、このグリセロール3リン酸デヒドロゲナーゼ(28)をコードする下記ヌクレオチド配列(44)(配列表の配列番号42に対応)を、遺伝子工学の手法により他の乳酸菌等に組み込むことにより、グリセロール分解性の高い乳酸菌を得ることも可能となる。また、本発明には、下記(44)で表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつグリセロール3リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(44)で表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグリセロール3リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0062】

【0063】
また、本発明乳酸菌は、下記式(29)ないし(32)のいずれかで表されるアミノ酸配列(配列表の配列番号43、45、47に対応)または当該アミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列で表されるトリオースリン酸イソメラーゼ(triosephosphate isomerase)を有するものであることが好ましい。このトリオースリン酸イソメラーゼは、図1中に示すTriosephosphate isomerase(15)であり、本発明リパーゼの作用により生じたグリセロールを効率よく代謝することができるものである。ここでいう、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列とは、これらのもとの配列と等価の配列を意味し、依然としてトリオースリン酸イソメラーゼ活性を保持する配列をいう。このようなアミノ酸配列としては、80%以上の相同性を示すものが挙げられる。
【0064】

【0065】

【0066】

【0067】
なお、このトリオースリン酸イソメラーゼ(29)ないし(31)をコードする下記ヌクレオチド配列(45)ないし(47)(配列表の配列番号44、46、48に対応)を、遺伝子工学の手法により他の乳酸菌等に組み込むことにより、グリセロール分解性の高い乳酸菌を得ることも可能となる。また、本発明には、下記(45)ないし(47)のいずれかで表されるヌクレオチド配列と相同性が80%以上であって、かつトリオースリン酸イソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び下記(45)ないし(47)のいずれかで表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつトリオースリン酸イソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列も含まれる。
【0068】

【0069】

【0070】

【0071】
以上説明した本発明乳酸菌は、ラクトバチルス・ロイテリに属する微生物を、常法に従って遺伝子解析することにより得ることができる。例えば、多くのラクトバチルス・ロイテリに属する微生物について、リパーゼ(1)ないし(3)をコードする下記の遺伝子(13)ないし(15)(配列表の配列番号2、4、6にそれぞれ対応)と相同性が高いヌクレオチド配列が存在するかどうかを調べることにより、目的とする本発明乳酸菌を得ることができる。
【0072】


【0073】
本発明において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート、100μg/mLの熱変性ニシン精子DNAを含む溶液中で、プローブとともに50〜65℃の温度で一晩保存しハイブリダイズさせる、という条件が挙げられる。
【0074】
更に、トランスポーター遺伝子(4)を有する本発明乳酸菌、グリセロール分解酵素サブユニットをコードする遺伝子(9)ないし(11)、グリセロール分解酵素をコードする遺伝子(32)ないし(38)、アルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(39)ないし(41)、グリセリン酸キナーゼをコードする遺伝子(42)、グリセロールキナーゼをコードする遺伝子(43)、グリセロール3リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(44)、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする遺伝子(45)ないし(47)、または腸管付着性プロテインをコードする遺伝子(12)を有する本発明乳酸菌も上記と同様にして得ることができる。
【0075】
上記した本発明乳酸菌の代表的なものとしては、理化学研究所の標準株であるラクトバチルス・ロイテリ JCM1112Tを挙げることができる。
【0076】
本発明の抗肥満剤は、上記の本発明乳酸菌を、経ロ投与可能で生きたまま腸管に到遠させうる生菌剤とすることにより調製される。この剤形については特に制約はなく、例えば、粉末剤、顆粒、錠剤、カプセル剤などの固形、ゼリー、ペーストなどの半固形、懸濁液、シロップなどの液状であってもよい。これらの各剤形は製薬分野で公知の方法により製造することができる。
【0077】
上記抗肥満剤に配合される本発明乳酸菌は、公知の乳酸菌の培養方法を適用して培養を行うことができる。この培養方法としては、常法に従い本発明乳酸菌を液体培養し、得られた培養物をそのまま利用しても、また、この培養物から遠心分離等の手段により菌体を集めて用いても、あるいは培養物を凍結乾燥して粉末状にしたものを用いてもよい。
【0078】
固形状である本発明肥満剤の一般的な製法としては、本発明乳酸菌を、水、デンプン、微細結晶セルロース、小麦粉、砂糖などの担体とともに配合し、所望の形態とする方法が挙げられる。上記担体も公知であり、使用形態に合わせ、適宜選択して使用することができる。より具体的には、常法により培養して得られた本発明乳酸菌の菌体を凍結乾燥粉末とし、これ砂糖と混合することにより粉末剤を調製してもよい。また、本発明乳酸菌の菌体を適切な錠剤用担体とともに混合し、これを常法に従って打錠して錠剤を得ることもできる。更に、本発明乳酸菌の湿菌体をシロップ中に懸濁してシロップ剤としてもよい。本発明の抗肥満剤の調製に当たっては、必要に応じて他の成分、例えば、他の微生物や有効成分、あるいは甘味料、香料、着色剤などを含有していてもよい。
【0079】
上記のようにして得られる抗肥満剤の投与量は、対象の身体的状況、例えば健康状態、体重、年齢、既往症、使用される他の成分などを考慮して、適宜決定することができるが、一般的には本発明乳酸菌の菌数として、大人一人当たりおおよそ10から10CFU/日程度前後である。
【0080】
また、本発明乳酸菌を使用して抗肥満飲食物を調製するには、従来公知の乳酸菌の培養方法を利用して経口摂取可能な発酵食品とすればよい。具体的には、ヨーグルトなどの発酵乳、乳酸菌飲料、発酵ソーセージなどの食品とすることができ、これらの食品の製造は、使用乳酸菌の1部または全部を本発明乳酸菌とすることにより行うことができる。また、本発明乳酸菌をより多く含む形態とし、健康食品や機能性食品とすることもできる。この抗肥満飲食品の調製に当たっては、本発明乳酸菌単独でなく他の乳酸菌を含んでいても良いことは言うまでもなく、また、食品添加物または調味料などを加えてもよい。
【0081】
本発明乳酸菌は、後記実施例に示すように有意な体重増加抑制効果(痩身効果)が認められるものであるが、その理由は、次の通りと考えられる。
【0082】
すなわち、図1に示すように、本発明乳酸菌は、消化管内の脂肪分を、3つのリパーゼ(リパーゼ(1)〜(3))の働きにより、グリセロールと脂肪酸に分解する。そして分解されたグリセロールは、本発明乳酸菌の有するトランスポーター(PduF;(4)のヌクレオチドがコードする)により菌体内に取り込み、更に菌体内のグリセロール分解酵素遺伝子(PduCDE;サブユニット(5)ないし(7)で構成される)により代謝され、ロイテリンを産生、もしくは本菌自身のエネルギー源に変換される。
【0083】
一方、脂肪酸は、本菌の菌体成分として利用され、これが生体内に吸収されることはない。更に、(8)のペプチドは、本発明乳酸菌が人や哺乳動物の腸管に定着するための機能を有し、一定時間安定して本発明乳酸菌が腸管内に存在することを可能にする。
【0084】
以上のように、本発明乳酸菌は安定に腸管内に存在し、積極的に脂肪を分解し、かつその代謝物を利用ないしは更に代謝するために、脂質が腸管から体内に吸収されることを抑制し、通常の食事を摂取する場合であっても肥満を防止し、痩身効果の維持と向上をもたらすことができるものである。
【0085】
また、本発明の一つの態様として、本発明乳酸菌の肥満症の予防または治療のための使用を含むものであり、さらに、本発明乳酸菌の抗肥満剤の製造のための使用を含むものである。
【0086】
さらにまた、本発明のもう一つの態様として、肥満症の患者に本発明乳酸菌を投与することを特徴とする肥満症の治療方法を含むものであり、また、本発明抗肥満剤を投与することを特徴とする肥満症の治療方法を含むものである。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制約されるものではない。
【0088】
実 施 例 1
L.ロイテリ JCM1112Tの抗肥満効果試験:
下記の材料および方法により、L.ロイテリJCM1112Tの抗肥満効果を調べた。
【0089】
使用材料および試験方法:
(1)使用実験動物
SPFグレードのウイスター(Wistar)系ラット(8週齢−雄;日本SLC株式会社)の体重約180〜200gのものを使用し、実験室搬入日より7日間の馴致期間を設け、実験を開始した。飼育環境は、温度22±1℃、湿度55±5%、照明時間12時間(8時〜20時)に設定し、ラットは1匹/ゲージとし、滅菌蒸留水を給水瓶にて、またラット用放射線滅菌固形試料(CE−2、日本クレア)を給餌器にて、それぞれ自由摂取とした。用いた飼育器具はすべて高圧蒸気滅菌器により滅菌したものを使用した。
* 飼育繁殖用(粗脂肪 4.6%)
【0090】
(2)被験菌液の調製
被験菌として、L.ロイテリ JCM1112T(理化学研究所の標準菌であり、同所より分譲を受けた)およびL.ラムノーサス ATCC53103(GG株)を使用した。これら被験菌は、MRS液体培地(Oxid)に接種して37℃で一晩培養し、プレ培養液とした。このプレ培養液を1%量となるように新たなMRS液体培地に添加し、37℃で18時間培養したものを被験菌液とした。
【0091】
(3)被験菌液の投与
前記実験動物を各被験菌投与群および対照群(1群は各5匹)に分け、上記被験菌液を被験菌投与群に経口投与により投与した。被験菌液の投与は、ゾンデを用い、強制的に行った。投与菌液は用時調製し、投与菌量はラット1匹当り10CFUとした。また、コントロール群には同容量のPBSを投与した。
【0092】
(4)体重測定および一般症状の観察
実験動物の体重は毎日、体重計にて測定した。一般症状は毎日観察した。症状は個体別に記録し、顕著な変化がみられた症状項目を発現個体数で表した。
【0093】
(5)結果
図2に、上記ラクトバチルス属細菌をそれぞれ投与したラット群および無投与のラット群について、経時的な体重の増加の様子を示す。この図から明らかなように、無投与群に比べ、L.ロイテリ JCM1112T投与群は、有意に体重の増加が抑制されており、この程度は、L.ラムノーサス ATCC53103投与群より大きかった。
【0094】
なお、実験動物の健康状態が良好であることは、順調な増体重の推移で示されると共に、各群のラットの検診から確認した。
【0095】
参 考 例 1
L.ロイテリJCM1112Tのゲノム解析:
L.ロイテリJCM1112Tから、次の薬品を用い、以下の方法によりDNAを取得し、ゲノム解析を行った。
【0096】
DNA取得方法:
(薬 品)
・Nuclei Lysis solution(Wizard genome DNA purification kit;
Promega社製)
・生理食塩水
・50mM EDTA(pH7.0)
・50mg/ml リゾチーム溶液(使用当日に、所定量のリゾチームを、TE緩衝
液、0.25M Tris−HCl(pH8.0)又は10mM Tris−HCl(pH8.0)/
10mM EDTA/0.5%SDSで溶解し、調製する)
・2mg/ml EDTA
・フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール(25:24:1)混液
(以下、「PCI」と略す)
・クロロホルム・イソアミルアルコール(24:1)混液(以下、「CIA」と略す)
・99% エタノール
・70% エタノール
・TE 緩衝液
【0097】
(方 法)
1.L.ロイテリJCM1112Tを、静置条件下、37℃で24時間培養し、得ら
れた培養液(50ml)を3,500r.p.mで、15分間遠心分離後、生理食塩
水で懸濁する。
2.1.で得られた懸濁液を3,500r.p.mで、15分間遠心分離し、上清を捨て
50mM EDTA 5mlで懸濁する。
3.2.で得られた懸濁液に、50mg/ml リゾチーム溶液を200μlを加え、
37℃で60分間インキュベートする。(この際、エアーインキュベーターを使用
する場合には、インキュベート時間を2−3時間とする。)
4.インキュベート後、3,500r.p.mで15分間遠心分離し、上清を捨てる。
5.4.で得た沈殿物に、Nuclei Lysis Solution 5mlを加え、80℃で10分間
インキュベートする。
6.2mg/ml RNase A 1μlを加え、37℃で45分間インキュベートする。
7.PCI 10mlを加え、混合し、3,500r.p.m.で15分間遠心分離する。
8.上清を新しいチューブに移し、さらにPCI 10mlを加え、混合する。
9.同様の操作を合計3回繰り返す。(タンパク質層が確認できなくなるまで行う)
10.CIA 10mlを加え、おだやかに混合後、3,500r.p.mで15分間遠心
分離する。(フェノールの除去)
11.上清を新しいチューブに移し、エタノール沈殿を行う。
12.11.で得た沈殿物を、TE緩衝液 1mlに溶解し、乳酸菌DNAを得る。
【0098】
ゲノム解析方法:
上記のようにして得たDNAについて、構造遺伝子予測とアノテーションを行った。この構造遺伝子予測等は、GENOMEGAMBLER(Sakiyama, T., Takami, H., Ogasawara, N., Kuhara, S., Kozuki, T., Doga, K., Ohyama, A., Horikoshi, K., An automated system for genome analysis to support microbial whole-genome shotgun sequencing., Biosci. Biotechnol. Biochem., 64:670-673. 2000.)、GLIMMER 2.0(Salzberg, SL., Delcher, AL., Kasif, S., and White, O., Microbial gene identification using interpolated Markov models., Nucleic. Acid. Res., 26:544-548. 1998.)およびBLAST program blastp (Altschul, SF., Gish, W,. Miller, W., Myers, EW., and Lipman, DJ., Basic local alignment search tool., J. Mol. Biol., 215:403-410. 1990.)の結果を併用して行った。
【0099】
また、ドメイン構造の解析は、INTERPRO(Mulder, NJ., Apweiler, R., Attwood, TK., Bairoch, A., Barrell, D., Bateman, A., Binns, D., Biswas, M., Bradley, P., Bork, P., Bucher, P., Copley, RR., Courcelle, E., Das, U., Durbin, R., Falquet, L., Fleischmann, W., Griffiths-Jones, S., Haft, D., Harte, N., Hulo, N., Kahn, D., Kanapin, A., Krestyaninova, M., Lopez, R., Letunic, I., Lonsdale, D., Silventoinen, V., Orchard, SE., Pagni, M., Peyruc, D., Ponting, CP., Selengut, JD., Servant, F., Sigrist, CJ., Vaughan, R., and Zdobnov, EM., The InterPro Database, 2003 brings increased coverage and new features., Nucleic. Acids. Res., 31:315-318. 2003. ;http://www.ebi.ac.uk/interpro)を、分子系統樹の作成には、CLUSTALW(Thompson, JD., Higgins, DG., and Gibson, TJ., CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice., Nucleic. Acids. Res., 22:4673-4680. 1994.;http://clustalw.genome.ad.jp/)を使用した。
【0100】
更に、使用したDNAおよびアミノ酸シークエンスは、National Center of Biological Information(NCBI, http://www.ncbi.nlm.nih.gov)およびKEGG database (Ogata, H., Goto, S., Sato, K., Fujibuchi, W., Bono, H., and Kanehisa, M., KEGG: Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes., Nucleic. Acids. Res., 27:29-34., 1999. ;http://www.genome.ad.jp/kegg/kegg2.html)から、ラクトバチルス属細菌のドラフトシークエンスはDOE JOINT GENOME INSTITUTE(JGI ;http://www.jgi.doe.gov/JGI_microbial/html/index.html)から入手した。
【0101】
以上の情報に基づき、(13)ないし(15)で示される遺伝子は、それぞれリパーゼをコードするものと、(4)で示される遺伝子は、トランスポーター遺伝子をコードするものと、(9)、(10)および(11)で示される遺伝子は、グリセロール分解酵素をコードするものと、(12)で示される遺伝子は、接着性遺伝子であることがそれぞれ判明した。また、(32)ないし(38)で示される遺伝子はグリセロール分解酵素をコードし、(39)ないし(41)で示される遺伝子はアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードし、遺伝子(42)で示される遺伝子はグリセリン酸キナーゼをコードし、(43)で示される遺伝子はグリセロールキナーゼをコードし、(44)で示される遺伝子はグリセロール3リン酸デヒドロゲナーゼをコードし、(45)ないし(47)で示される遺伝子はトリオースリン酸イソメラーゼをコードするものと判明した。
【0102】
参 考 例 2
グリセロール分解遺伝子の増幅:
参考例1で精製されたDNAをテンプレート、次のヌクレオチド配列をプライマーとし、下記反応液を使用してPCRを行った。なお、PCR条件も下に示す。
【0103】
(使用プライマー)
pduCDE(F):
CACCATGAAACGTCAAAAACGATTT
pduCDE(R):
AAAAGCTTAGTTATCGCCCTTTAGC
【0104】
(PCR反応液)
テンプレートDNA: 1μl
KOD−plus : 1μl
10×KOD−plus緩衝液: 5μl
dNTP(各2mM) : 5μl
プライマー(20mm): 各1μl
MgSO(25mm): 2μl
脱イオン水(D.W.): 34μl
【0105】
(PCR条件)
(1)94℃で3分間保持する。
(2)94℃で15秒間保持する。
(3)56℃(Tm)で30秒間保持する。
(4)68℃で3分30秒間保持する。
(5)(2)ないし(4)を30サイクル行う。
(6)4℃で保存する。
【0106】
参 考 例 3
L.ロイテリ由来リパーゼ遺伝子および接着性遺伝子の増幅:
プライマーを下記のものに代える以外は参考例2と同様にしてPCRを行ない、リパーゼ遺伝子および接着性遺伝子を増幅した。
【0107】
(使用プライマー)
リパーゼ(1)
5’-ATGGTGAAATTGATGACAAT
5’-TTATTTAAATTGATCGCCAA
リパーゼ(2)
5’-TTGATTTATGTTTTAAAAGA
5’-CTATGACCGAGTTAAATACT
リパーゼ(3)
5’-ATGGAAATTAAAAGTGTTAA
5’-CTAAATTAAATTCAGTTCAG
接着性遺伝子
5’-ATGTTCGGTCACGATGGCCG
5’-TCAAATTTCAGAAGGATCAT
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明乳酸菌の代表であるL.ロイテリJCM1112Tを使用した上記実施例の結果から、明らかなように、この微生物の投与により実験動物の健康を損ねることなく、また特段栄養摂取に制約を加えることなく体重の増加を抑制することができるものであった。
【0109】
従って、本発明乳酸菌を利用する抗肥満剤ないし抗肥満飲食品は、このものを摂取するだけで、特段の治療、処置を要さず肥満を防ぎ、痩身効果を得ることができるものである。
【0110】
また、本発明乳酸菌から見出されたグリセロール分解酵素のサブユニットをコードする遺伝子ないしは腸管付着性プロテインをコードする遺伝子を、公知の手法により他の乳酸菌に組み込むことにより、グリセロール分解性の高い乳酸菌や腸管内での滞在時間の長い乳酸菌を得ることが可能となり、他の有用な乳酸菌の改質にも有利に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満の予防及び/又は治療用のラクトバチルス・ラムノーサスに属する微生物を有効成分として含有する抗肥満剤であって、ラクトバチルス・ラムノーサスに属する微生物がラクトバチルス・ラムノーサスATCC53103である抗肥満剤。
【請求項2】
大人一人当たりの投与量が、ラクトバチルス・ラムノーサスATCC53103の菌数として10〜10CFU/日である請求項1記載の抗肥満剤。
【請求項3】
肥満の予防及び/又は治療用のラクトバチルス・ラムノーサスに属する微生物を有効成分として含有する抗肥満飲食であって、ラクトバチルス・ラムノーサスに属する微生物がラクトバチルス・ラムノーサスATCC53103である抗肥満飲食品。
【請求項4】
請求項1又は2記載の抗肥満剤の製造のためのラクトバチルス・ラムノーサスATCC53103の使用。
【請求項5】
請求項3記載の抗肥満飲食品の調製のためのラクトバチルス・ラムノーサスATCC53103の使用。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−206057(P2011−206057A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114716(P2011−114716)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【分割の表示】特願2007−528471(P2007−528471)の分割
【原出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】