説明

抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤

【課題】抗菌・抗カビ効果を有すると共に、シロアリに対し高い殺蟻効果と藻に対し高い防藻効果を有し、また人体などの生体に対する毒性が少なく、然も長期に亘って高い殺蟻効果と防藻効果を保持し、更に生活環境に対する安全性を保持したシロアリ防徐作用および防藻作用を有すると共に、殺蟻効果および防藻効果が短期間内に有効に達せられる抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤を提供する。
【解決手段】ホウ素およびアルカリ土類金属複酸化物の化学組成式aMO・bB(M:アルカリ土類金属、a/b:0.5〜3の数値)で表される物質より成り、且つ抗菌・抗カビ効果を有する物質をシロアリ防徐および防藻剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に抗菌・抗カビ効果を有する焼成コレマナイトを用いたシロアリ防徐および防藻剤に係り、抗菌・抗カビ効果の外に、シロアリに対し高い防徐効果を有すると共に、藻に対しても高い防藻効果を有し、また人体などの生体に対する毒性が少なく、しかも長期に亘って高い防蟻効果と防藻効果を保持し、更に生活環境に対する安全性を保持した抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
シロアリが人類の生活環境に対し害をなすことは明らかであり、シロアリを防除することについては従来から種々に検討が重ねられてきたが、今日においても必ずしも安定、且つ的確な手法が確立されるに至っていない。すなわち、シロアリ防除剤としては、有機リン酸系のものや、ビレスロイド系や有機塩素系のものがよく採用されており、家屋その他の建築物における床下のシロアリの進出、ないし通過する可能性の高い個所に散布し、あるいは噴霧または分散することが一般的であって、そのための機器、手法や部材その他については各種の提案が重ねられている。しかしながら、これら有機系薬剤はシックハウスの原因物質の1つとして大きな問題となっている。
【0003】
一方、建造物の外装材や外構材が黒色に汚れ、美観を損ねているという現象がある。これらの原因は細菌、カビ、藻類などの微生物によるものであり、近年、ビル・住宅外装の高級化に伴い大きな問題となっている。
【0004】
従来、コレマナイトを用いるシロアリ防除剤として特開平2000−26218号公報に開示されたものが公知である。また、従来、コレマナイトを用いる防藻剤は、実用に供されてない。一方、コレマナイト粒子を焼成することにより抗菌・抗カビ効果を有することは、特開2002−20210号公報に開示されて公知である。
【特許文献1】特開平2000−26218号公報
【特許文献2】特開2002−20210号公報
【0005】
前記特許文献1で開示されたものは、水に対し難溶性を有するホウ素含有鉱物コレマナイトを用いることにより、シロアリなどの防除に関して、成分が溶出し難いことから、土壌中にも溶出し難く、長期の防除効果を期待することができる。更に、コレマナイトは揮発もしないことから、シックハウスの問題も起こり難く、施工上の安全性も確保できる。しかしながら、抗菌・抗カビ効果も持たないことから、木材の腐朽菌に対しては、効果が期待できない。
【0006】
前記特許文献2で開示された主眼は、ホウ素およびアルカリ土類金属複酸化物の化学組成式aMO・bB(M:アルカリ土類金属、a/b:0.5〜3の数値)で表される物質、または、ホウ素およびアルカリ土類金属から構成される鉱石を酸化、中性または還元雰囲気中で焼成することにより生成された物質、あるいはホウ素塩とアルカリ土類塩、またはそれらを主成分とする物質を混合して加熱することにより生成された物質(以下、前記3つの物質を「抗菌・抗カビ物質」と略称する)が抗菌・抗カビ効果を有しているということであるが、前記各物質がシロアリ防徐および防藻剤として機能することについては、これまで全く検討されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、抗菌・抗カビ効果を有するものとして公知となっている前記抗菌・抗カビ物質をシロアリ防徐および防藻剤として用いることにより、木材をシロアリから防除するだけではなく、木材の腐朽菌に対しても有効なことから、木材腐朽防除の付加価値を有すると共に、効果の長期持続性を得しめ、然もシックハウスや施工上の安全性を確保することができ、更に、建造物の外装材や外構材に発生する藻の発生を阻止することができる抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤を提供しようとする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記焼成コレマナイトを用いた抗菌・抗カビ効果を有する抗菌・抗カビ物質を、シロアリ防徐および防藻剤とすることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防藻剤は、抗菌・抗カビ効果を有する外に、シロアリおよび藻の防除に関し、高い殺蟻効果および防藻効果を短期間内に発揮せしめると共に、人体に対する安全性が高く、然もシロアリ防徐効果および防藻効果を長期に亘って維持せしめ、更にはその製造調整が簡易であるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
抗菌・抗カビ効果を有する前記抗菌・抗カビ物質を、シロアリ防徐および防藻剤とすることにより、人体に害を与えることなく殺蟻効果および防藻効果を発揮した。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例につき詳細に説明する。本発明者は、前記特許文献2で開示されているように、抗菌・抗カビ物質が抗菌・抗カビ効果を有することを立証し、抗菌および抗カビ剤並びにその製造方法を発明した。そして更に、本発明者は、前記抗菌・抗カビ効果を有する抗菌・抗カビ物質が、シロアリに対する殺蟻性および藻に対する防藻性においても有用であることを確認し、本発明をなしたものである。
【0012】
すなわち、前記抗菌・抗カビ物質中、特にホウ素系天然鉱物であるコレマナイトCa11・5HOについて仔細に検討したところ、50μm〜3μm程度のコレマナイト素材を350℃以上、好ましくは500℃で空気または二酸化炭素雰囲気中で1時間焼成することにより、(1)式に示すような反応式となり、CaO・2Bが生成される。
【0013】
【化1】

【0014】
そこで、先ず、焼成して得られたコレマナイト焼成品と、焼成処理のなされない比較品とを準備し、これらのコレマナイト焼成品と比較品について、それぞれ日本木材保存協会第13号の室内試験に準じた試験を行った結果を示すと、表1の通りであった。
【0015】
【表1】

【0016】
前記表1の結果から、コレマナイト焼成品は、比較品(未焼成)に比しいずれも4分の1以下の短期間内に全部のシロアリが死滅することが確認され、有効な殺蟻性を有することが確認された。
【0017】
また、前記コレマナイト焼成品は、従来採用されている有機リン酸系や、ビレスロイド系、あるいは有機塩素系のものにおけるような揮発成分が、作業者や居住者に与えるような悪影響を実質的有効に回避せしめることができる。
【0018】
そして、本発明によるシロアリ防除剤は、粉体または粒材とすることにより、床下などにおける撒布を容易化し、所要の位置に対し、的確に撒布、展開せしめ、安定した防虫工法を実現せしめることができると共に、抗菌・抗カビ効果を有しているので、床、木材等の菌・カビの発生も合わせ阻止することができるのである。
【0019】
更に、本発明によるシロアリ防除剤を塗料に混入し、木材などに塗布すること、あるいは微粉砕した前記防除剤を溶液に分散させ、木材などに含浸させることにより、木材等をシロアリおよび木材腐朽から防除することができる。
【0020】
なお、珪砂を増量材として併用することによって施工性を良好とし、有効、且つ適切な撒布状態を的確に形成せしめる。前記珪砂を増量材として使用した実験結果は表1に記載されており、珪砂の量が少ないほど殺蟻性を有している。
【0021】
次に、前記生成された焼成コレマナイトは難水溶性であるため、これまでの水溶性物質に対するJIS等の防藻試験規格に対応し難いので、JISの試験法を変形させた方法により防藻試験を行った。
【0022】
すなわち、本発明者は、24WELLプレートを用いて防藻試験を行った。各WELLに、0.01%、0.1%および1%の各濃度に調整した焼成コレマナイト、および比較のために焼成していないコレマナイトを添加した液体培地2mlを調製し、藻の細胞を0.1ml(約10cell)滴下した。このプレートの上から、照度6000lxの光を蛍光灯で照射し、25℃で15日間振とう培養した。今回の試験には、一般的な藻類試験に使用されるSelenastrum capricornutumおよび外装材の汚染等でよく検出される藻類Chlorella
vulgarisおよびPlectonema radiosumを使用した。
【0023】
図1に、Selenastrum capricornutumについての試験結果写真を示す。Selenastrum capricornutumの場合、細胞密度が約10cell/ml以上に増殖すると液体培地が緑色になることから、その増殖の有無を目視で判定した。その結果、Selenastrum capricornutumに対しては、焼成コレマナイトを0.1%以上添加することで増殖が抑制されることが分かった。
【0024】
また、Chlorella vulgarisおよびPlectonema radiosumに対しても、試験結果の写真を示していないが、焼成コレマナイトを0.1%以上添加することで増殖が抑制されるという結果を得た。これらの結果より、焼成コレマナイトには抗菌および抗カビ効果に加えて、更に防藻効果が確認できる結果を得た。
【0025】
前記図1においては、コレマナイト焼成品のみしか試験を行っていないが、該コレマナイト焼成品以外のホウ素およびアルカリ土類金属複酸化物の化学組成式aMO・bB(M:アルカリ土類金属、a/b:0.5〜3の数値)で表される物質、または、ホウ素およびアルカリ土類金属から構成される鉱石を酸化、中性または還元雰囲気中で焼成することにより生成された物質、あるいはホウ素塩とアルカリ土類塩、またはそれらを主成分とする物質を混合して加熱することにより生成された物質も焼成コレマナイトと同様、抗菌・抗カビ効果を有すると共に、焼成コレマナイトと同様、ホウ素およびアルカリ土類金属であるので、防藻性と共に、シロアリ防除性を有していることが類推できる。
【0026】
そして、本発明による防藻剤は、粉体または粒材とすることにより、建造物の外装材や外構材における塗布、または混合を容易化し、所要の位置に対し、的確に塗布、または混合せしめ、安定した防藻工法を実現せしめることができると共に、抗菌・抗カビ効果を有しているので、菌・カビの発生をも合わせ阻止することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明シロアリ防徐および防藻剤を用いてSelenastrum capricornutumについて防藻試験を行った試験結果の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素およびアルカリ土類金属複酸化物の化学組成式aMO・bB(M:アルカリ土類金属、a/b:0.5〜3の数値)で表される物質より成ることを特徴とする抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤。
【請求項2】
ホウ素およびアルカリ土類金属複酸化物の化学組成式aMO・bB(M:アルカリ土類金属、a/b:0.5〜3の数値)で表される物質が、M=Ca、a=1、b=2のCaO・2Bで表される物質である請求項1記載の抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤。
【請求項3】
ホウ素およびアルカリ土類金属から構成される鉱石を、酸化、中性または還元雰囲気中で焼成することにより生成された物質より成ることを特徴とする抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤。
【請求項4】
ホウ素およびアルカリ土類金属から構成される鉱石が、コレマナイトであり、且つ該コレマナイトを350℃以上で空気または二酸化炭素雰囲気中で焼成することにより生成された物質である請求項3記載の抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤。
【請求項5】
ホウ素およびアルカリ土類塩、またはそれらを主成分とする物質を混合して加熱することにより生成された物質より成ることを特徴とする抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤。
【請求項6】
ホウ素塩とアルカリ土類塩を主成分とする物質が、ホウ酸と炭酸カルシウムであり、且つ前記ホウ酸と炭酸カルシウムを混合して、350℃以上で加熱することにより生成された物質である請求項5記載の抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防徐および防藻剤。
【請求項7】
珪砂を増量材として併用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の抗菌・抗カビ効果を有するシロアリ防除および防藻剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−160637(P2006−160637A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352160(P2004−352160)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年6月4日 無機マテリアル学会主催の「無機マテリアル学会 第108回学術講演会」において文書をもって発表
【出願人】(500101298)有限会社 アクアサイエンス (5)
【出願人】(593030428)
【Fターム(参考)】