説明

抗菌剤組成物及び殺菌方法

【課題】優れた安全性と広範な微生物に対する効果的な抗菌性を備えた、幅広い用途に使用可能な抗菌剤及び抗菌剤組成物を提供すること。
【解決手段】多価アルコール系抗菌剤と銀系抗菌剤を含有する抗菌剤組成物、好ましくは多価アルコール系抗菌剤と銀系抗菌剤を含有する溶液である抗菌剤組成物、さらに好ましくは多価アルコール系抗菌剤がグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルカンジグリコール、3−チオアルキル−1,2−プロパンジオール、3−アミノアルキル−1,2−プロパンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種である抗菌剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範な微生物に対して優れた抗菌性を有する、食品、化粧品、医薬品、製造工場の製造工程での殺菌剤や、サニテーション用の殺菌消毒薬などの幅広い用途に有用である新規な抗菌剤組成物及び殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に食品、化粧品、医薬品などの製品工程では、微生物の混入による品質の劣化を防ぐ目的で、殺菌剤が使用されている。食品・製品の殺菌剤としては食品添加物としてその使用が許可されているものしか使用できない。しかし、これらの殺菌剤は一般に効力が低いため、食品、化粧品、医薬品の製造工程用の殺菌剤としては効力が不十分である。このため、施設環境、包装・容器・設備、空間環境および作業者の殺菌としては、アルコール、次亜塩素酸ナトリウム、ヨードホール、四級アンモニウム塩、アルキルジアミノエチルグリシル塩酸塩、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩が用いられる。これらの殺菌剤は比較的安全であるとされているが、実用上では安全性の確保、排水低負荷、環境汚染の排除に配慮する必要がある。また、食品の洗浄の目的には次亜塩素酸ナトリウムが使用されるが、これは有機物が存在すると速やかに効果を消失することが問題である。
【0003】
安全面において改良が加えられた抗菌剤としては、脂肪酸モノグリセリドを有効成分としたものが知られており、食品の日持向上剤や食品製造環境の抗菌剤として使用されている。特に炭素数が8〜12の脂肪酸モノグリセリドは食品分野で日持ち向上剤として幅広く使用されている(特許文献1〜3)。しかしながら、脂肪酸モノグリセリドはエステル結合の構造を有するため、微生物に対する十分な抗菌性を有していない。
【0004】
またグリセリンとアルキル基を微生物分解を受け難い結合とすることによって抗菌活性を高める取り組みがなされていて、アルキルチオ−1,2−プロパンジオール、アルキルアミノ−1、2−プロパンジオール、1,2−アルカンジオール等が報告されている(特許文献4)。しかし、これらのジオール化合物は総じてグラム陰性細菌に対しては抗菌活性が低いとの課題を有している。
【0005】
これらの多価アルコール系抗菌剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、グルコン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、オルトリン酸、ピロリン酸、ヘキサメタリン酸およびこれらの無機アルカリ塩等のキレート剤の併用を挙げることができる。好ましくは、エチレンジアミンテトラ酢酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸等のキレート剤を併用することで抗菌作用が相乗的に高まり、且つ抗菌スペクトルも広がるため、グラム陰性菌に対しても抗菌効果を発揮することが報告されている。しかし、キレート剤を添加した場合でも、多価アルコール系の抗菌剤の殺菌活性は食品、化粧品、医薬品の製造工程に使用するに不十分である。
【0006】
この多価アルコール系抗菌剤とキレート剤を併用した場合の抗菌効果は、高浸透圧下に作用されることによって、また弱酸性および低浸透圧下に作用させることによって飛躍的に向上することが知られている(特許文献5および6)。この方法によって調製される抗菌剤組成物はグラム陰性細菌やグラム陽性細菌に対しては比較的強い殺菌力を有するが、酵母や糸状菌のような真菌類に対しては弱い殺菌力しか示さない。
【0007】
銀系抗菌剤として、カルボキシル基、アミノ基、イミダゾール基などを有する水溶性銀錯体が知られている(特許文献7および8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−207179号公報
【特許文献2】特開平4−21608号公報
【特許文献3】特開平3−67573号公報
【特許文献4】特開平7−126243号公報
【特許文献5】特開2009−161518号公報
【特許文献6】特願2009−276547号公報
【特許文献7】特開2000−256365号公報
【特許文献8】特願2001−335405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような状況の下、本発明の解決しようとする課題は、優れた安全性と広範な微生物に対する効果的な殺菌性を備えた、幅広い用途に使用可能な抗菌剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、多価アルコール系抗菌剤と銀系抗菌剤を併用することによって抗菌スペクトルが著しく広くなり、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、酵母類および糸状菌に対して強い抗菌作用を示すことを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成したものであり、以下の態様の殺菌方法及び抗菌剤組成物を提供する。
項1 多価アルコール系抗菌剤と銀系抗菌剤を含有する抗菌剤組成物。
項2. 多価アルコール系抗菌剤と銀系抗菌剤を含有する溶液であることを特徴とする項1の抗菌剤組成物。
項3. 多価アルコール系抗菌剤がグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルカンジグリコール、3−チオアルキル−1,2−プロパンジオール、3−アミノアルキル−1,2−プロパンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする項1または2に記載の抗菌剤組成物。
項4. 銀系抗菌剤が水溶性銀錯体であることを特徴とする項1の抗菌剤組成物。
項5. 水溶性銀錯体がヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、アスパラギン酸銀錯体、ピロリドンカルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体またはイミダゾール銀錯体であることを特徴とする項4の抗菌剤組成物。
項6. 項1〜5のいずれかに記載の抗菌剤組成物を微生物に作用させることを特徴とする、殺菌方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗菌剤は、安全性に優れ、広範な微生物に対して抗菌活性を有するため、食品、化粧品及び医薬品の製造工程の殺菌剤、設備環境や施設環境の殺菌に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において多価アルコール系抗菌剤と銀系抗菌剤を共に作用させることによって著しく抗菌作用が高まり、且つ抗菌スペクトルも広がるため、真菌類に対しても抗菌効果を発揮する。本発明の好ましい実施形態において使用される抗菌剤溶液のpHは特に限定されず、弱酸性から弱アルカリ性の広いpH領域で効力を発揮する。
【0013】
使用される多価アルコール系の抗菌剤は、炭素数4〜16、好ましくは炭素数6〜12の直鎖又は分岐を有する脂肪族炭化水素基を有する。ここで、前記脂肪族炭化水素基とは、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を示す。本発明の多価アルコール系抗菌剤の含有量は、その使用用途及び形態等に合わせて適宜調整されるため、特に限定されないが、液体中で使用する場合は、最少有効濃度として0.001重量%以上、好ましくは0.003〜0.5重量%、より好ましくは0.005〜0.3重量%、特に好ましくは0.01〜0.1重量%含有することが好ましい。抗菌剤組成物の濃度が0.001重量%未満では、生育阻害効果が得られない。抗菌剤組成物の濃度が0.5重量%を超えても、濃度に比例したより高い静菌効果を得ることができない。
【0014】
液体で使用される抗菌剤組成物中の銀系抗菌剤の濃度は0.0001〜0.05重量%、好ましくは0.0005〜0.025重量%、より好ましくは0.0015〜0.012重量%である。
【0015】
固形の抗菌剤組成物の多価アルコール系抗菌剤の割合は、0.005〜95重量%、好ましくは0.01〜70重量%、より好ましくは0.05〜40重量%である。
【0016】
固形の抗菌剤組成物の銀系抗菌剤の割合は、0.0025〜5.0重量%、好ましくは0.0035〜0.7重量%、より好ましくは0.015〜0.1重量%である。
【0017】
抗菌剤組成物中の多価アルコール系抗菌剤100重量部に対し銀系抗菌剤は、0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜20重量部である。
【0018】
多価アルコール系抗菌剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルカンジグリコール、3−チオアルキル−1,2−プロパンジオール、3−アミノアルキル−1,2−プロパンジオール等の多価アルコール系抗菌剤のように細胞膜に作用する抗菌剤が挙げられ、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましく、グリセリン脂肪酸エステルが最も好ましい。
【0019】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、炭素数が4〜16の飽和、不飽和または分岐の脂肪族炭化水素基の脂肪酸とグリセリンとのエステルが好ましく、具体的にはカプリン酸モノグリセリンエステル(モノカプリン)、カプリル酸モノグリセリンエステル(モノカプリリン)、ラウリン酸モノグリセリンエステル(モノラウリン)、ミリスチン酸モノグリセリンエステル(モノミリスチン)が挙げられ、モノカプリン、モノラウリンが好ましく、モノカプリンが特に好ましい。
【0020】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、炭素数が4〜16の飽和、不飽和または分岐の脂肪族炭化水素基の脂肪酸と、重合数が2〜10のポリグリセリンとのエステルが好ましく、具体例としては、デカグリセリンモノカプリン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンジラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、ペンタグリセリンモノカプリン酸エステル、ペンタグリセリンモノラウリン酸エステル、テトラグリセリンモノカプリン酸エステルが挙げられる。
蔗糖脂肪酸エステルとしては、例えば、蔗糖モノカプリレート、蔗糖モノラウレート等の蔗糖と炭素数4〜16の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
【0021】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0022】
アルカンジグリコールとしては、例えば、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール等アルキレン部分が炭素数6〜16のアルキレンであるアルキレングリコールを挙げることができ、好ましくは、デカメチレングリコール等を挙げることができる。
【0023】
オクタメチレングリコールとしては、1,2−オクタンジオール、1,3−オクタンジオール等を挙げることができ、好ましくは、1,2−オクタンジオール等を挙げることができる。
【0024】
デカメチレングリコールとしては、1,2−デカンジオール、1,3−デカンジオール、等を挙げることができ、好ましくは、1,2−デカンジオール等を挙げることができる。
【0025】
ドデカメチレングリコールとしては、1,2−ドデカンジオール、1,3−ドデカンジオール、等を挙げることができ、好ましくは、1,2−ドデカンジオール等を挙げることができる。
【0026】
3−チオアルキル−1,2−プロパンジオールとしては、例えば、チオグリセリンモノオクチルエーテル、チオグリセリンモノデシルエーテル、チオグリセリンモノドデシルエーテル、チオグリセリンモノヘプチルエーテル等のチオアルキル部分が炭素数4〜12のチオアルキルである3−チオアルキル−1,2−プロパンジオールを挙げることができ、好ましくは、チオグリセリンモノヘプチルエーテルを挙げることができる。
【0027】
3−アミノアルキル−1,2−プロパンジオールとしては、例えば、3−アミノドデシル−1,2−プロパンジオール、3−アミノデシル−1,2−プロパンジオール、3−アミノテトラデシル−1,2−プロパンジオール等のアミノアルキル部分が炭素数6〜16のアミノアルキルである3−アミノアルキル−1,2−プロパンジオールが挙げられる。
【0028】
銀系抗菌剤は、銀と有機配位子との錯体が挙げられ、有機配位子は、アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、オキソテトラヒドロフランカルボン酸、イミダゾールなどの銀系抗菌剤の抗菌有効濃度の水溶液が調製可能な水溶性銀錯体が好ましい。好ましい銀系抗菌剤としては、ヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、2−ピロリドン−5−カルボン酸銀錯体、5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸銀錯体またはイミダゾール銀錯体が挙げられる。
【0029】
また、本発明における抗菌剤組成物にはキレート剤を添加することができる。本発明の抗菌剤と併用することができるキレート剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、アスコルビン酸、グルコン酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、エデト酸等を挙げることができる。好ましくは、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、コハク酸、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムである。添加するキレート剤の濃度は使用される状態によって異なるので特に限定されないが、一般に0.1mM以上、好ましくは1mM以上である。
【0030】
本発明の抗菌剤の使用用途及び態様は、微生物に対する抗菌作用を目的とするものであれば特に限定されないが、例えば食品、化粧料・医薬品・食品の製造工程、医療用洗浄料、食器用殺菌洗浄料、口腔用洗浄料、手指用殺菌洗浄剤に配合して使用することが挙げられる。
【0031】
上記のような使用目的に応じて、本発明の抗菌剤は、抗菌力を向上させるために他の安全性が高い抗菌物質、例えばアルコルビン酸、グリシン、ポリリジン、キトサン、ナイシン、グレープ種子抽出物、ユーカリ抽出物等を添加することができる。また、その抗菌作用を損ねない範囲内で他の添加剤と適宜組合せて使用することができる。好ましい実施形態において、本発明の抗菌剤は、例えば、界面活性剤、着色料、香料、等を更に配合した手指用殺菌洗浄剤および口腔用洗浄剤、界面活性剤、消泡剤、染料、香料等を更に配合した医療器具類の浄料や食品・化粧品・医薬品の製造工程用抗菌洗浄料とすることができる。
【0032】
上記以外にも、抗菌剤の分野において一般的に使用されている添加剤が、本発明の抗菌剤の抗菌作用を損ねない範囲内で、特に制限なく本発明の抗菌剤と併用することができ、例えば、溶剤等を挙げることができる。
【0033】
上記のような添加剤と併用することで、本発明の抗菌剤は溶液、クリーム、ペースト、ゲル、ジェル、固形物、粉末等の各種形態の抗菌剤組成物として使用することができる。
【0034】
殺菌ないし静菌の対象となる微生物としては、細菌(腸炎ビブリオ、サルモネラ、病原性大腸菌、カンピロバクター、ウェルシュ菌、赤痢菌、コレラ菌、エルシニア、リステリア、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ボツリヌス菌などのグラム陰性菌、グラム陽性菌など)、真菌(酵母、糸状菌など、例えばコウジカビ、白癬菌、カンジダ、クリプトコックス、アスペルギルス)などが挙げられる。
【0035】
以下に、本発明の抗菌剤と併用することができる添加剤のより具体的な例を列挙する。
【0036】
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0037】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE−ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE−ラウリル硫酸ナトリウム等)、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム等)、リン酸エステル塩(例えば、POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE−ステアリルエーテルリン酸等)、スルホコハク酸塩(例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等)、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等)、N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等)、硫酸化油(例えば、ロート油等)、POE−アルキルエーテルカルボン酸、POE−アルキルアリルエーテルカルボン酸、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0038】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等)、アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POE−アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミノアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0039】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(例えば、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)が挙げられる。
【0040】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等)、グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POE−ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビタンモノオレエート、POE−ソルビタンモノステアレート、POE−ソルビタンテトラオレエート等)、POE−ソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビットモノラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビットモノステアレート等)、POE−グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE−グリセリンモノステアレート、POE−グリセリントリイソステアレート等)、POE−脂肪酸エステル類(例えば、POE−ジステアレート、POE−モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等)、POE−アルキルエーテル類(例えば、POE−ラウリルエーテル、POE−オレイルエーテル、POE−ステアリルエーテル等)、プルロニック類、POE・POP−アルキルエーテル類(例えば、POE・POP−セチルエーテル、POE・POP−モノブチルエーテル、POE・POP−グリセリンエーテル等)、テトロニック類、POE−ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE−ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油モノイソステアレート等)、アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等)、POE−プロピレングリコール脂肪酸エステル、POE−アルキルアミン、POE−脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0041】
溶剤としては、炭化水素系溶剤、高級アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、バチルアルコール、イソステアリルアルコール等)、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等)、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0042】
増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、ポリアクリル酸ナトリウム、グアーガム、タマリントガム、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ラポナイト等が挙げられる。
【0043】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。
【0044】
着色料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、チタン酸鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、コバルトバイオレット、チタン酸コバルト、群青、パール顔料、金属粉末顔料、有機顔料、クロロフィル、β−カロチン等が挙げられる。
【0045】
香料としては、ジャコウ、ライム、ビャクダン、ハッカ、バニリン、シトロネラール、オイゲノール、リナロール、クマリン、ケイ皮酸エチル等が挙げられる。
【0046】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0047】
本発明の抗菌剤は、以上に列記した添加剤の1種以上と適宜併用することで、各目的により適した抗菌剤とすることができる。
【実施例】
【0048】
実施例1〜5及び比較例1〜4
10mMクエン酸緩衝液(pH4)およびモノカプリン250mg/Lを含有する10mMクエン酸緩衝液を調製し、これらにヒスチジン銀錯体を0〜120mg/Lとなるように添加した。これらの溶液20mlにCandida albicansJCM1542株の培養液を菌数が105〜106/mlとなるように添加した。経時的に液1mlを採取し、2倍濃度のSCDLPブイヨン1mlと混合した。混合液0.1mlをSCD寒天培地に植菌して25℃にて培養し、10分後に寒天培地上に形成したコロニーから生菌数を測定した。
【0049】
表1に示すように、モノカプリンとヒスチジン銀錯体のカンジダ・アルビカンスに対する抗菌力は、両者を併用することによって著しく高まった。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例6〜8及び比較例5〜7
10mM EDTA溶液(pH7)およびモノカプリン250mg/Lを含有する10mM EDTA溶液を調製し、これらにヒスチジン銀錯体を0〜60mg/Lとなるように添加した。これらの溶液20mlに黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureusJCM20624株)の培養液を菌数が105〜106/mlとなるように添加した。10分後に液1mlを採取し、2倍濃度のSCDLPブイヨン1mlと混合した。混合液0.1mlをSCD寒天培地に植菌して25℃にて培養し、寒天培地上に形成したコロニーから生菌数を測定した。
【0052】
表2に示すように、モノカプリンとヒスチジン銀錯体の黄色ぶどう球菌に対する抗菌力は、両者を併用することによって著しく高まった。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例9〜12及び比較例8
10mMクエン酸緩衝液(pH4)およびモノカプリン250mg/Lを含有する10mMクエン酸緩衝液を調製し、これらにヒスチジン銀錯体を0〜120mg/Lとなるように添加した。これらの溶液20mlに黒こうじ黴(Aspergillus niger JCM16264)の培養液を胞子が103〜104/mlとなるように添加した。2時間後および24時間後に液1mlを採取し、2倍濃度のSCDLPブイヨン1mlと混合した。混合液0.1mlをSCD寒天培地に植菌して25℃にて培養し、寒天培地上に形成したコロニーから生菌数を測定した。
【0055】
表3に示すように、モノカプリンとヒスチジン銀錯体の黒こうじ黴に対する抗菌力は、両者を併用することによって著しく高まった。
【0056】
【表3】

【0057】
実施例13〜15及び比較例9
イオン交換水90mlにモノカプリン2.5gを溶解し、水酸化ナトリウムでpHを7に調整した後、総量を100mlとした。この液にヒスチジン銀錯体を0〜60mg/Lとなるように添加した。これらの溶液20mlに黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureusJCM20624株)の培養液を菌数が105〜106/mlとなるように添加した。10分後に液1mlを採取し、2倍濃度のSCDLPブイヨン1mlと混合した。混合液0.1mlをSCD寒天培地に植菌して25℃にて培養し、寒天培地上に形成したコロニーから生菌数を測定した。
【0058】
表4に示すように、モノカプリンとヒスチジン銀錯体の黄色ぶどう球菌に対する抗菌力は、両者を併用することによって著しく高まった。
【0059】
【表4】

【0060】
以上、表1〜表4に示した実施例および比較例の結果より、多価アルコール系抗菌剤と銀系抗菌剤の抗菌効果は、両者を併用することによって著しく高まることがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール系抗菌剤と銀系抗菌剤を含有する抗菌剤組成物。
【請求項2】
多価アルコール系抗菌剤と銀系抗菌剤を含有する溶液であることを特徴とする請求項1の抗菌剤組成物。
【請求項3】
多価アルコール系抗菌剤がグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルカンジグリコール、3−チオアルキル−1,2−プロパンジオール、3−アミノアルキル−1,2−プロパンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌剤組成物。
【請求項4】
銀系抗菌剤が水溶性銀錯体であることを特徴とする請求項1の抗菌剤組成物。
【請求項5】
水溶性銀錯体がヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、アスパラギン酸銀錯体、ピロリドンカルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体またはイミダゾール銀錯体であることを特徴とする請求項4の抗菌剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌剤組成物を微生物に作用させることを特徴とする、殺菌方法。

【公開番号】特開2012−56854(P2012−56854A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198479(P2010−198479)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000135265)株式会社ネオス (95)
【Fターム(参考)】