説明

抗菌性コーティングされたパウダーフリー手袋

良好な抗菌性及びブロッキング防止特性を示すパウダーフリーエラストマー物品が、本発明において提供される。抗菌性妨害物質を実質的に含まないこのような物品の製造法、並びに抗菌効力を維持するための包装手段も、本発明において提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、概して手袋などのエラストマー物品に関し、特に、ブロッキング防止表面フィルムで保護された抗菌性ゲルコーティングを有する、医療従事者が使用するための手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]手袋、特に医療用手袋などの皮膚接触物品は、細菌及び/又はウイルスなどを含む微生物を含有する化学物質及び体液による使用者の汚染に対する防護壁として一般的に使用されている。したがって、これらの手袋及び他の皮膚接触物品は、使用中に汚染物質又は微生物に対して完全に不透過であるように製造される。しかし、医療用手袋は、通常、極めて薄く、天然又は合成ゴムなどの柔軟なエラストマー材料から製造されるものであり、使用中に穴が開き、又は破れて、微生物が手袋の裂け目を通過できるようになる恐れがある。
【0003】
[0003]この問題に対する1つの手法として、抗菌性コーティングが上記エラストマー物品に塗布されてきた。例えば、米国特許第4853978号(Stockum)は、カチオン性抗菌剤としてグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)又はポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩(PHMB)を含有する内部コーティングを有する天然ゴム製外科用手袋を開示している。架橋コーンスターチは、ブロッキング防止剤として内部コーティングに含まれており、CHG及びPHMBを定位置に付着させ、これらを発汗中に徐放できるようにするとも言われている。しかし、架橋コーンスターチの使用は、パウダーフリー医療環境に対する趨勢に適合しない。
【0004】
[0004]米国特許第5089205号(Huang)は、クロルヘキシジンジアセテートを含有する潤滑性内部層を有する天然ラテックス手袋を開示している。更に、パウダー状デンプンが、ブロッキング防止剤として開示されている。この特許は、クロルヘキシジンをアニオン性又は非イオン性界面活性剤によって改質して、上記手袋のアニオン性成分に適合するようにすることを教示しているが、アニオン性又は非イオン性界面活性剤(これは、等しい電荷を有するアニオン性及びカチオン性対応部の両方を有する)が、クロルヘキシジンカチオン性抗菌剤を中和することになるのが明らかなため、抗菌効力に対する界面活性剤の効果については、言及されていない。
【0005】
[0005]米国特許第5133090号(Modakら)は、クロルヘキシジンと、酸化亜鉛、ヒドロキシセルロース又はコーンスターチなどの潤滑剤との内部コーティングを有するラテックス手袋を開示している。コーンスターチは、界面活性剤によって改質し、クロルヘキシジンに対する吸着部位を遮断してしまうことを条件として使用することができる。コーンスターチを使用すると、パウダーフリー外科用手袋はやはり得られない。
【0006】
[0006]米国特許第5483697号(Fuchs)は、内部層と、抗菌剤を溶液の形態で含む中間層を密封する外部層とを有する二層ラテックス手袋を開示しており、この溶液は、ヒドロゲルと混合することもできる。ヒドロゲルは、内部層及び外部層に生じる孔を物理的に目詰まりさせ、又は塞ぐと言われている。ヒドロゲルの例には、コーンスターチ、及びセルロースの誘導体が挙げられる。抗菌剤の効力に対するヒドロゲルの効果には言及されていない。抗菌剤は、使用者の手に送達して、存在するあらゆる病原菌を殺滅するのではなく、むしろ手袋の外部面が破れた際、鋭利器具に存在するあらゆる微生物を防ぐ。明らかに、微生物の殺滅時間は、外側手袋の開裂が短い時間枠で生じるため、効果的な殺滅を実現するのに極めて重要な要素になる。
【0007】
[0007]米国特許第5570475号(Nileら)は、特定の繰返し単位のポリマーを含むポリマー着用層が配置された外科手術用手袋を開示している。このポリマー層は、好ましくは隆起領域を有する。いずれかの抗菌剤について、又はその効力に対するポリマー層の潜在的効果について、全く言われていない。
【0008】
[0008]米国特許第6391409号(Yehら)は、合成ゴム及びニトリルゴムからなる中間層を有するパウダーフリーニトリル被覆天然ゴム手袋を開示している。この中間層は、着用を補助し、手袋内部面の自己固着を防止すると言われている。いずれかの抗菌剤について、又はその効力に対する中間層の潜在的効果について、全く言及されていない。
【0009】
[0009]米国特許第6378137号(Hassanら)は、シリコーン処理外側面、並びにポリマー/コポリマー、高密度ポリエチレン粒子、及びワックスから形成されたブロッキング防止層に結合した内側面を有するパウダーフリーポリマー製医療用手袋を開示しており、このブロッキング防止層は、シリコーンエマルジョンの層によって被覆されている。いずれかの抗菌剤について、又はその効力に対するブロッキング防止層の潜在的効果について、全く言及されていない。
【0010】
[0010]米国特許第7032251号(Janssen)は、ポリアミンエピクロロヒドリン架橋剤によって架橋されたポリマーコーティングを含む着用層を有するエラストマー物品を開示している。このポリマーコーティングは、セルロース誘導体を含み得る。いずれかの抗菌剤について、又はその効力に対するポリマーコーティングの潜在的効果について、全く言及されていない。
【0011】
[0011]米国特許出願公開第2003/0204893号(Wangら)は、手袋の内面上に配置され、酸性抗菌物質、及びpH変化を抑制する緩衝剤を含む調製物を有するエラストマー手袋を開示している。この調製物は、セルロース誘導体を含めた増粘剤も含むことができる。調製物の粘着性若しくはブロッキング特性について、又は抗菌剤の効力に対する増粘剤の効果について、全く言及されていない。
【0012】
[0012]米国特許出願公開第2004/0115250号(Looら)は、グリセロール、及びアロエベラやカモミールなどの植物性抽出物を含む保湿フィルムを有するエラストマー手袋を開示している。このフィルムは、ブロッキング防止ワックスを含むこともできる。いずれかの抗菌剤について、又はその効力に対するワックスの潜在的効果について、全く言及されていない。
【0013】
[0013]米国特許出願公開第2005/0081278号(Williams)は、皮膚に接触する内側面に、フィルム形成用化合物及びオイル系皮膚軟化剤を含む乾燥ローションコーティングを有するエラストマー手袋を開示している。フィルム形成用化合物には、ポリウレタン、アクリロニトリル、ネオプレン、アクリル系ラテックス、スチレンブタジエンゴム及びポリイソプレンが挙げられる。抗菌剤は、コーティング中に存在し得るが、保存剤として作用するのに十分な量に限る。手袋内面のブロッキングを起こすことになるこのコーティングの粘着性、又はコーティング中の抗菌物質の効力について、言及されていない。
【0014】
[0014]米国特許出願公開第2005/0112180(Chou)は、抗菌剤を含む第1層、及び抗菌剤の浸透に抵抗するように構成された、手に接触する第2層を有するエラストマー手袋を開示している。第2層の内面は、1種又は複数の第2の抗菌剤、緩衝剤、保湿剤、無痛化剤及び増粘剤を含む調製物を備えることもできる。第2層の調製物の粘着性又はその抗菌効力について、言及されていない。
【0015】
[0015]米国特許出願公開第2006/0059604号(Laiら)及び米国特許第6709725(Laiら)は、フィルム形成用ポリマー又はコポリマー、ワックス、界面活性剤及び硬度調整剤を含む非粘着性水性ポリマーエマルジョンによって被覆されたラテックス手袋を開示している。いずれかの抗菌剤について、又はその効力に対するこのポリマーエマルジョンの潜在的効果について、全く言及されていない。
【0016】
[0016]米国特許出願公開第2006/0070167号(Engら)は、水溶性湿潤保湿剤、非水溶性閉じ込め型保湿剤、水溶性界面活性剤、及び水溶性潤滑剤を含む手に優しい乳化混合物の乾燥コーティングを有するゴム手袋を開示している。このコーティング混合物は、抗菌剤を含有することもできる。コーティングは、非水溶性閉じ込め型保湿剤の乾燥コーティング内での微細分散のため、本質的に非粘着性及び非ブロッキング性であると言われ、このコーティングは上記手袋の着用を改善すると言われている。抗菌剤の効力に対する乾燥コーティングの効果には、全く言及されていない。
【0017】
[0017]米国特許出願公開第2007/0104766号(Wangら)は、抗菌剤、親水性フィルム形成用ポリマー及び疎水性成分を含む表面コーティングを有するパウダーフリーエラストマー物品を開示している。不揮発性の水溶性抗菌剤は、親水性ポリマーと疎水性成分のブレンドを含む徐放用マトリックスに取り込まれている。徐放用マトリックス/ブレンドの要件には、抗菌剤との相容性、抗菌剤の貯留部の形成、コーティングフィルムの可撓性、及びマトリックス/ブレンドの水溶性が抗菌剤の水溶性より低いことが含まれる。親水性ポリマーは、セルロース系ポリマーを含む。親水性ポリマーは、抗菌剤に対する貯留部を提供すると考えられているが、疎水性成分は、その可塑化効果によってフィルムの可撓性を向上させると考えられている。コーティングフィルム中の親水性及び疎水性のバランスが、抗菌剤の放出を調節すると言われている。表面コーティングの粘着性について、言及されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
[0018]したがって、良好な抗菌性及びブロッキング防止特性を示す医療用手袋などのパウダーフリーエラストマー物品が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[0019]本発明は、良好な抗菌性及びブロッキング防止特性を示すパウダーフリーエラストマー物品を提供する。抗菌性組成物は、手袋の内面に被覆されるゲルであり、この内面が未被覆のままである場合は手袋がブロッキングすると思われ、このとき、手袋の内面が固着し合って手袋の容易な着用を妨げる。抗菌性ゲルコーティングを有する手袋の内面は、抗菌性ゲルを密封したセルロース系固体フィルムでカバーされ、手袋のブロッキングを防止する。抗菌性ゲルをカバーするセルロース系フィルムは、選択されたセルロース系封じ込めフィルムに特有の特性のため、皮膚から生じる水分により容易に溶解されることが可能である。丈夫で抗菌性妨害物質を実質的に含まないこのような物品の製造法も本発明において提供される。更に、この手袋の抗菌効力及びブロッキング防止効果を維持するための包装法が提供される。
【0020】
[0020]したがって、本発明の一態様は、
内面及び外面を有するエラストマー層、
エラストマー層の内面に塗布された抗菌性ゲルコーティング、並びに
抗菌性ゲルコーティング上に配置されたブロッキング防止フィルムコーティング
を備える、パウダーフリー抗菌性エラストマー物品を対象とする。
【0021】
[0021]一般に、抗菌性ゲルコーティングは、1種又は複数の水溶性抗菌剤を含有するコーティング用配合物を含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤(複数可)は、刺激物不活性化量の可溶性亜鉛塩の混合物を含む亜鉛ゲル配合物に含有される。亜鉛ゲル配合物中に存在する抗菌剤は、1つ又は複数の実施形態では、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩(PHMB)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、ファルネソール、及びオクトキシグリセリンを含むことができる。これらの組成物は、手袋の内部表面の乾燥状態においてさえゲル状であり、したがって、未被覆の場合は手袋がブロッキングし、着用性が不十分になると思われる。
【0022】
[0022]一般に、ブロッキング防止フィルムコーティングは、温度に対して逆溶解性を示すセルロース組成物を含む。すなわち、これらのセルロース組成物は、冷水には容易に溶解するが、二相構造を形成するより高い温度に曝露された場合、液晶ゲル網目状構造を形成する。形成されたゲルは、高温において極めて安定である。転移温度は、「下限臨界溶液温度」又はLCSTと呼ばれる。この挙動を示すセルロース化合物には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)が挙げられる。LCST温度は、溶液中の濃度及び組成物の分子量に依存する。分子量が大きくなるほど、ゲル形成の量が増大し、冷水への溶解度が減少する。溶解したLCST化合物を含有する溶液は、抗菌性ゲルコーティングを有する手袋の皮膚に接触する表面にスプレーされ、LCST温度を大幅に超える温度でタンブル乾燥される。最後の乾燥プロセス中、LCSTフィルムは、抗菌性ゲル手袋コーティングをカバーする固体フィルムとなり、ブロッキング防止特性をもたらす。形成された固体フィルムは、皮膚温度が下限臨界溶液温度LCST未満なので、皮膚から生じる水分によって容易に溶解又は崩壊するであろう。この溶解により、手袋コーティングが即座に放出される。フィルム強度は、リン酸ジカルシウム二水和物などの添加剤によって向上させ得る。一実施形態では、ブロッキング防止フィルムコーティングは、非水溶性閉じ込め型保湿剤を任意選択により含む。
【0023】
[0023]1つ又は複数の更なるエラストマー層を設けることもできる。更に、スリップコーティング(着用コーティングとも呼ばれる)など、1種又は複数の機能性コーティングをエラストマー層と抗菌性ゲルコーティングの間に設けてもよい。スリップ層は、例えばポリウレタン系又はアクリル系のポリマーコーティングを備えることができる。ワックス粒子を、着用性を更に容易にするためにポリマーコーティングに加えることもできる。微小粗さ凹凸表面は、スリップコーティングを実現する別の方法である。
【0024】
[0024]上記物品は、その抗菌活性並びに手袋のブロッキング防止挙動を輸送及び保管中に保持するように包装することができる。一実施形態では、この物品は、外側包装によって囲んだ内側ラップ中に包装される。折りたたみ後の内側ラップのサイズは、一般に、容易に密封できるように外側包装より小さい。この包装は、上記物品を収容する内側ラップに緩衝効果を付与するのに十分な体積の空気が存在するように、密封される。この緩衝空気層は、手袋の皮膚に接触する内面の抗菌性ゲルコーティングをカバーしている固体フィルムに過剰な圧力がかかるのを防止する。
【0025】
[0025]本発明の別の態様は、
内面及び外面を有するエラストマー層を用意するステップ、
1種又は複数の抗菌剤を含む抗菌性ゲルコーティングをエラストマー層の内面に塗布するステップ、並びに
抗菌性ゲルコーティングを乾燥させるステップ、並びに
ブロッキング防止フィルムコーティングを抗菌性ゲルコーティングに塗布するステップ
を含む、パウダーフリー抗菌性エラストマー物品を調製する方法を対象とする。
【0026】
[0026]詳細な実施形態では、得られた手袋が、50℃で8週間、又は40℃で6カ月間エージングした後でも抗菌活性の損失を示さないことが実現される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[0027]本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載の構造又はプロセスステップの詳細に制限されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実行又は実施できる。
【0028】
[0028]本発明は、良好な抗菌性及びブロッキング防止特性を示すパウダーフリーエラストマー物品を提供する。驚くべきことに、本出願人は、ブロッキング防止コーティングをエラストマー手袋上の抗菌性ゲルコーティングに塗布することにより、ブロッキングを防止するだけでなく、使用中に抗菌効力に対する妨害がなく、保管中に抗菌活性が維持されることを見出した。
【0029】
[0029]したがって、本発明の一態様は、
内面及び外面を有するエラストマー層、
エラストマー層の内面に塗布された抗菌性ゲルコーティング、並びに
抗菌性ゲルコーティングに塗布されたブロッキング防止フィルムコーティング
を備えるパウダーフリー抗菌性エラストマー物品を対象とする。
【0030】
[0030]上記手袋は、安定な抗菌効力を提供するが、それは、抗菌剤の効力が、加速エージング試験で示される通り、手袋がその貯蔵期限にわたって保管された後でも、全く又はほとんど悪化せず安定なままであること、すなわち手袋が、50℃で8週間及び40℃で6カ月間エージングした後に抗菌活性の損失を示さないことを意味する。更に、この手袋は、エージングした後にブロッキング防止挙動を示す。
【0031】
[0031]特定の実施形態では、ブロッキング防止フィルムコーティングは、セルロース系水溶性ポリマーを含み、乾燥させるステップは、ブロッキング防止フィルムコーティングをセルロース系水溶性ポリマーの下限臨界溶液温度を超える温度で乾燥させて、液体フィルムを形成するステップ、及びこの液体フィルムを更に乾燥させて、前記抗菌性ゲルコーティングをカバーする固体フィルムを形成するステップを含む。
【0032】
[0032]「パウダーフリー」とは、パウダー又は架橋デンプンをほとんど又は全く有していないエラストマー物品を意味する。ASTM D6124−01に準拠すると、上記手袋が有するパウダー又は「フィルターに保持されたあらゆる非水溶性残渣」は、物品1個当たり約2mg未満でなければならない。
【0033】
[0033]「内面」とは、着用者に接触する物品の表面を意味する。「外面」とは、外気に接触する表面を意味する。
【0034】
[0034]本エラストマー物品は、医療用物品など、人間の皮膚に接触することを意図するいずれの物品でもよく、手袋、コンドーム及び指サックなどが挙げられる。本物品を調製するのに使用されるラテックスは、水性エマルジョン又は溶媒系エマルジョン中に得ることができる。
【0035】
[0035]エラストマー層中に使用するのに適したエラストマーには、パラゴムノキ(Hevea)及びグアユールゴム(Guayule)ラテックスなどの天然ゴムラテックス、並びにポリクロロプレン、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン、ポリイソプレン、ポリウレタン、及びスチレン−ブタジエンなどの合成ラテックスが挙げられる。天然及び合成ラテックスのブレンドも使用され得る。
【0036】
[0036]エラストマー層は、着用特性を高めるため、微小粗さを有する凹凸内部面を備えることができる。エラストマー層は、単独で設けることもできるし、凹凸内部面、グリップ特性を高めるための凹凸外部面と組み合わせて設けることもできる。このような凹凸エラストマー表面を形成する方法は、米国特許出願公開第2005/0035493号(Flather)、第2007/0118967号(Flather)、及び第2006/0150300号(Hassan)において提供されており、これらの各々の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0037】
[0037]エラストマー層の内面に塗布される抗菌性コーティングは、細菌、ウイルス、真菌、及びカビなどを含めた微生物を殺滅し、又はその増殖を阻害するいずれのコーティングでもよい。一般に、抗菌性ゲルコーティングは、1種又は複数の可溶性抗菌剤を含有するコーティング配合物を含む。適切な抗菌剤には、クロルヘキシジン塩(例えばグルコン酸塩CHG)やポリヘキサメチルビグアナイド(PHMB)などのビグアナイド、塩化ベンザルコニウム(BZK)や塩化ベンゼトニウム(BZT)などの四級アンモニウム塩、トリクロサンなどの塩素化フェノール、ファルネソールなどの精油、フェノキシエタノール、オクトキシグリセリン、ヨウ素化合物、銀塩、及び抗真菌剤などが挙げられる。他の抗菌剤は、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics (McGraw−Hill,2005)などの参考文献に見出すことができ、この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0038】
[0038]いくつかの特定の実施形態では、抗菌剤(複数可)は、刺激物不活性化量の水溶性亜鉛塩(グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛及び乳酸亜鉛など)、パンテノール、及びゲル化剤(ポリクオタニウム10など)の混合物を含む亜鉛ゲル配合物に含有される。各亜鉛塩の濃度は、一般に約0.2〜7%w/wの間である。亜鉛ゲル配合物中に存在する抗菌剤は、CHG、PHMB、BZT、ファルネソール及びオクトキシグリセリンを含むのが好ましい。界面活性剤、乳化剤、安定剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、及びシリコーンポリマーなどの他の成分が存在してもよい。本発明に使用するための特定の亜鉛ゲル/抗菌性配合物は、Modakらの米国特許第6846846号、第6037386号、第5965610号及び第5708023号、米国特許出願公開第2007/0020342号、第2005/0281762号、第2005/0238602号、第2005/0048138号、第2005/0019431号、第2004/0247685号、第2004/0219227号及び第2004/0102429、並びにInfect.Control Hosp.Epidemiol.28:191−197(2007)、Int.J.Environ.Health 209:477−487(2006)及びDermatitis 16:22−27(2005)に見出すことができ、これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0039】
[0039]抗菌性コーティングは一般に、水溶液から形成され、水は処理中に実質的に取り除かれる。詳細な一実施形態では、この水溶液は、重量%にて、0.01〜1%の範囲の量のポリクオタニウム10、0.01〜3%の範囲の量の乳酸亜鉛、0.01%〜3%の範囲の量の酢酸亜鉛、0.01〜3%の範囲の量のグルコン酸亜鉛、1〜5%の範囲の量のグルコン酸クロルヘキシジン、0.01〜3%の範囲の量のフェノキシエタノール、0.01〜1%の範囲の量の塩化ベンゼトニウム、0.1〜5%の範囲の量のテリック(Teric)N100(エチレンオキシド単位100個が縮合したノニルフェノール)、0.1〜5%の範囲の量のオクトキシグリセリン、0.1〜2%の範囲の量のd−パンテノール、0.1〜3%の範囲の量の溶解剤、0.1〜2%の範囲の量のファルネソール、0.1〜3%の範囲の量のアミノ官能性シロキサン、及び70〜90%の範囲の量の水を含む。
【0040】
[0040]1つ又は複数の実施形態では、抗菌剤は、封入された形態で提供され、又はカプセル若しくはコーティングによって囲まれていてもよい。カプセル又はコーティングを物質の周囲に形成するための様々な封入プロセスが開発されてきており、物理的方法及び/又は化学的方法によって成分を封入する方法が含まれる。水溶性成分を非水溶性カプセル又は疎水性シェルを使用して封入する方法も、当技術分野では知られている。例えば、米国特許第6890653号には、水溶性有機物質を含むカプセルコア、並びにポリウレタン及び/又はポリ尿素のカプセルコーティングを疎水性溶媒中に有するマイクロカプセル分散液が記載されている。米国特許第5827531号には、親水性液体と疎水性液体との交互層を含み、可撓性で疎水性の外部半透膜によって囲まれた多層マイクロカプセルを形成する方法が記載されている。米国特許第5827531号に記載された方法の1つ又は複数は、低せん断混合及び液液拡散のプロセスに依拠している。別法が米国特許第4102806号に記載されており、これには、水溶性又は非水溶性でもよいコア材料を、有機溶媒中において油性材料又は「油脂」によって封入することが記載されている。米国特許出願公開第2004/0048771は、非水溶性尿素−ホルムアルデヒドポリマーから作製される封入壁で成分を封入するための界面重合法を開示している。米国特許第6890653号、第5827531号、及び第4102806号並びに米国特許出願公開第2004/0048771号の開示内容は、それらの全体が参照により組み込まれている。
【0041】
[0041]非水溶性成分を封入するための他の方法も当技術分野では知られている。例えば、米国特許第3516941号には、反応器中の水溶性ポリマーの溶液に、封入しようとする非水溶性成分の水溶液を供給することが記載されている。次に、構成物質に高せん断力の撹拌を施すことにより、成分とポリマーを混合し、成分を非常に小さなビーズ状カプセルに分解する。化学触媒をこの混合物に加えることにより、上記ポリマーが、封入される成分の各ビーズを囲んで、シェルを形成する。米国特許第4328119号は、疎水性コア材料を、アニオン修飾アミノアルデヒド樹脂をコア材料上に堆積することによって封入することを開示している。米国特許第3516941及び米国特許第4328119号の開示内容は、それらの全体が参照により組み込まれている。
【0042】
[0042]抗菌性ゲルコーティングに塗布されるブロッキング防止コーティングは、抗菌性ゲルコーティングに通常付随する粘着性を防止又は抑制するいずれのコーティングでもよい。更に、上記コーティングの特質は、エラストマー材料上に存在するにも関わらず、保管中に剥離又はひび割れをしないほど十分に可撓性であることである。本物品が手袋である場合、ブロッキング防止コーティングは、手袋の内部のブロッキング(固着)を防止する。本発明の特定の実施形態では、ブロッキング防止コーティングは、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びメチルセルロース(MC)などを含めた1種又は複数の水溶性セルロース系ポリマーからなる。ブロッキングコーティングは、ポリビニルピロリジノン(PVP)など、他のフィルム形成水溶性ポリマーを更に含むこともできる。詳細な一実施形態では、ブロッキング防止コーティングの水溶液は、重量%にて、1〜10%のHPC及び1〜5%のアミノ官能性シロキサン、又は0.1〜5%のHPMCを含む。
【0043】
[0043]好ましいセルロース組成物は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びメチルセルロース(MC)であり、その理由は、これらが逆溶解性現象を示し、該化合物は、下限臨界溶液温度LCST未満の温度において水に容易に溶解し、LCSTを超える温度において液晶ゲル網目状構造を形成するからである。ゲル安定性は、温度が上昇するときにのみ増大する。結果として、LCSTゲル保護フィルムと共に抗菌性ゲルを乾燥させると、徐々に強固になるゲルが生じ、このゲルが硬化して固体保護フィルムになる。HPCのLCSTは40〜44℃である。HPMCのLCSTは、WO/1998/029501に詳述されたメチル化の程度により、この40〜44℃の範囲から低下させ得る。ブロッキング防止コーティングは、アミノ官能性シロキサン、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、エルカ酸オレイル、又はこれらの組合せを、これらに限定されるわけではないが含むことができ、非水溶性閉じ込め型保湿剤を任意選択により更に含むことができる。更に、コーティングの種類は、コーティングが抗菌剤(複数可)の活性を実質的に阻害しないという要件にのみ制限され、この要件は、当業者なら通常どおりに決定できる。
【0044】
[0044]ヒドロキシプロピルセルロースHPCは、繰返しグルコース単位中のヒドロキシル基の一部がヒドロキシプロピル化され、−OCHCH(OH)CH基が形成されたセルロースのエーテルである。グルコース単位当たりの置換ヒドロキシル基の平均数は、置換度(DS)と呼ばれる。完全な置換で、DSが3になろう。
【化1】

【0045】
[0045]付加されたヒドロキシプロピル基は、ヒドロキシル基を含有するので、HPCの調製中にエーテル化することもできる。エーテル化を行った場合、グルコース環1個当たりのヒドロキシプロピル基のモル数である置換モル数(MS)は、3よりも大きくなり得る。セルロースは非常に結晶性であるので、HPCは、水に対する良好な溶解性を得るためには、約4のMSを有していなければならない。HPCは、疎水性基と親水性基の組合せを有するので、45℃において下限臨界溶液温度(LCST)を有する。LCST未満の温度において、HPCは水に容易に溶解し、LCSTを超えると、HPCは溶解しない。HPCは、水中におけるその濃度に応じて、液晶及び多数の中間相を形成する。このような中間相には、等方相、異方性相、ネマチック相及びコレステリック相が含まれる。
【0046】
[0046]ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、固体であり、薄いオフホワイトからベージュ色のパウダーの外観をしており、顆粒に形成することができる。この化合物は、水に溶解した際にコロイドを形成し、熱ゲル化特性を示す。すなわち、この溶液は、臨界温度まで加熱されると凝結し、非流動性ではあるが半可撓性の塊になる。通常、この臨界(凝結)温度は、HPMC溶液の濃度とHPMC分子中のメトキシ基の濃度の両方に逆相関する(順にメトキシ基の濃度は、メトキシ基の置換度とモル置換の両方に依存する)。
【化2】

【0047】
[0047]すなわち、メトキシ基の濃度が高いほど、臨界温度が低くなる。しかし、得られた塊の不撓性/粘度は、メトキシ基の濃度に正比例する(濃度が高いほど、得られた塊の粘性が増大し、又は可撓性が減少する)。
【0048】
[0048]メチルセルロース(MC)は、セルロースに由来する化学化合物である。メチルセルロースは、純粋な形態においては親水性白色粉末であり、(熱水には溶解しないが)冷水に溶解して、透明な粘性溶液又はゲルを形成する。
【化3】

【0049】
[0049]化学的には、メチルセルロースは、セルロースのメチルエーテルであり、セルロースのヒドロキシル基−OHの一部の水素原子をメチル基−CH3で置換し、−OCH3基を形成することにより生じる。異なる種類のメチルセルロースが、置換されたヒドロキシル基の数に応じて調製され得る。セルロースは、多数の結合したグルコース分子からなるポリマーであり、これらの各々には、3個のヒドロキシル基が露出している。所与の形態のメチルセルロースの置換度(DS)は、グルコース1個当たりの置換ヒドロキシル基の平均数として規定される。したがって、DSの理論上の上限は3.0であるが、より一般的な値は1.3〜2.6である。異なるメチルセルロース調製物は、ポリマー主鎖の平均長も異なり得る。メチルセルロースは冷水に溶解する。DS値が高くなるほど、極性ヒドロキシル基がマスキングされるので、溶解度は低下する。この化学物質は、熱水に溶解せず、メチルセルロースの飽和溶液を加熱すると、メチルセルロースが析出するため、該溶液が固体になるという逆説的な効果を有する。固体になる温度はDS値に依存しており、DS値が高いほど、析出温度が低下する。
【0050】
[0050]いかなる特定の理論にも拘束されることはないが、抗菌性ゲルコーティング中の抗菌剤は、ブロッキング防止コーティングの水和及び/又は摩擦作用時に、本物品の内面から使用者の皮膚に移動し、これにより、微生物に対する抗菌保護を使用者に提供すると考えられている。本物品を取り外した後には、上記コーティングにより、柔軟で滑らかな感触が使用者の皮膚に提供され得る。
【0051】
[0051]エラストマー物品は、界面活性剤、湿潤剤、抗酸化剤、帯電防止剤、消泡剤、ウェッブ防止剤、pH調整剤、粘度調整剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填材、加硫剤、活性化剤、架橋剤、及び促進剤などを含めた、ラテックス配合の従来の添加剤及び改質剤を含むこともできる。
【0052】
[0052]本エラストマー物品は、その抗菌活性を輸送及び保管中に保てるように包装できる。好ましい実施形態では、本物品は、外側包装によって囲んだ内側ラップ中に包装される。これらの包装用品は、当技術分野で周知の紙、ワックス被覆した紙、ポリマー被覆した紙又はシート状ポリマーフィルムから作製できる。折りたたみ後の内側ラップのサイズは、一般に、容易に密閉できるように外側包装より小さい。この包装は、本物品を収容する内側ラップに緩衝効果を付与するのに十分な体積の空気などのガスが存在するように、密閉される(いわゆる「パフィーパック(puffy pack)」)。このようにして、本物品を収容している内側ラップは、外側包装を保持及び振動させた際に、自由に移動できる。
【0053】
[0053]パウダーフリー抗菌性エラストマー物品は、
内面及び外面を有するエラストマー層を用意するステップ、
抗菌性ゲルコーティングを上記物品の皮膚に接触する表面に塗布するステップ、
抗菌性ゲルコーティングを乾燥させるステップ、
ブロッキング防止コーティングを抗菌性ゲルコーティングに塗布するステップ、
液晶ゲルを形成するのに十分な温度において乾燥させ、このゲルを乾燥させて連続固体フィルムを形成するステップ
を含む方法によって調製できる。
【0054】
[0054]上述したように、スリップコーティングなどの1つ又は複数の更なる層又はコーティングを、エラストマー層と抗菌性ゲルコーティングの間に塗布してもよい。
【0055】
[0055]エラストマー物品が手袋である場合、ラテックス手袋の大量生産用オンラインプロセスを含めた従来の浸漬法を使用できる。一般に、これらの方法は、例えば、予熱した浸漬型を水性凝固剤中に浸漬するステップ、浸漬型上の凝固剤を乾燥させるステップ、浸漬型を天然及び/又は合成エラストマーを備えるラテックス溶液中に浸漬するステップ、及びゲル化ラテックスを熱水中に浸出するステップにより、手袋の層を形成するものである。これらのステップを繰り返して、本手袋のエラストマー層を積層することができる。所望であれば、ポリウレタンなどの第2のポリマーコーティングを、本手袋の皮膚が接触する表面に塗布してもよい。次に、本手袋は硬化する。次に、本手袋の外側面は、粘着性を低減するため、任意選択により、塩素化などによって化学処理される。塩素化された場合、次に、本手袋は洗浄される。
【0056】
[0056]次に、抗菌性コーティング及びブロッキングコーティングを、硬化したエラストマー手袋に塗布することができる。特定の実施形態では、本エラストマー手袋は、抗菌性ゲルコーティングの塗布の前にオフラインで洗浄される。これにより、抗菌性妨害物質が低減される。次に、本手袋は、例えば、スプレー、転がし塗り又は浸漬によって抗菌性コーティング及びブロッキングコーティングを塗布する前に、任意選択により、送風機又は乾燥機によって乾燥される。次に、抗菌性ゲルコーティングを、1個又は複数のノズルによってスプレーし、乾燥機中で乾燥させることにより、本手袋表面に被覆することができる。ブロッキング組成物を、抗菌性コーティングを有する乾燥した手袋にスプレーして、セルロース組成物のLCST温度を超える温度で乾燥させ、液晶フィルムの形成を促進して、このフィルムを乾燥させ、抗菌性ゲルコーティングをカバーする連続固体フィルムを形成して、本手袋の内面のブロッキングを防止する。次に、完成品の手袋は、抗菌性ゲルコーティングが手袋の内部側に位置するように反転され、ペアにして包装され、ガンマ線で滅菌されてから、室温まで冷却される。
【0057】
[0057]封入した抗菌剤を利用する実施形態では、封入された成分を表面に付着又は接着する当技術分野でやはり既知の様々な方法を、本明細書に記載されたプロセスに組み込むことができる。封入された成分を表面に付着又は接着する方法は、当技術分野では既知である。例えば、米国特許第5138719号には、マイクロカプセルを含有するラテックスの溶液を形成し、この溶液中に手袋を含浸することにより、該ラテックスの層を手袋の表面に塗布した後、形成された層を加硫又は硬化させることが記載されている。1つ又は複数の実施形態では、封入した抗菌剤は、手袋の表面に結合し得る。米国特許第4898633号には、基材の表面を、マイクロカプセルが分散された結合剤樹脂によって被覆することが記載されている。米国特許出願公開第2005/0066414号は、ポリマー、例えば、ポリウレタンを使用して、封入した抗菌剤を表面に結合することを開示している。米国特許第5138719号、米国特許第4898633号及び米国特許出願公開第2005/0066414号は、それらの全体が参照により組み込まれている。
【実施例】
【0058】
[0058]次に、本発明の方法による特定の実施形態を、下記の実施例に記載する。実施例は例示に過ぎず、残りの開示内容にいかなる制限を加えることも意図してはいない。
【0059】
実施例1
【0060】
手袋の抗菌効力
[0059]ポリウレタンのコーティングを含有する天然ゴムラテックス手袋を、前述した従来の浸漬法により、ラテックスの水性エマルジョンから調製した。この手袋を浸漬型から剥離して、30〜95℃で1時間水中において洗浄し、乾燥させた。次に、手袋を反転させ、2回目の洗浄を30〜95℃で1時間水中において行い、上述したように乾燥させた。次に、手袋を抗菌性ゲルで被覆し、回転式乾燥機内で乾燥させた後、ブロッキング防止コーティングを施した。ブロッキング防止コーティングを、セルロース組成物のLCST温度を超える温度で乾燥させて、液晶フィルムの形成を促進し、該フィルムを乾燥させて、抗菌性ゲルコーティングをカバーする固体連続フィルムにする。抗菌性ゲルコーティングの組成は、表1に示されており、ブロッキング防止コーティングの組成は、表2に示されている。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
[0060]得られた完成品手袋は、手袋1個当たりのパウダー量が2mg未満だった。上述したようにパフィーパックで包装して、ガンマ線を用いて滅菌した後、本手袋は、乾燥した手に対する着用性、濡れた/湿った手に対する着用性、手袋を二重にした際の装着性、ブロッキング防止性及び非光沢性に優れており、エージング前後の引張り強さ及び伸長特性が損なわれていなかった。対照的に、過剰な空気が絞り出された外側包装(「対照包装(control pack)」)によって囲んだ内側ラップ中に包装された手袋は、甚だしいブロッキング及び光沢特性を示した。
【0064】
[0061]未エージングの手袋、50℃で8週間エージングした手袋、及び40℃で6カ月間エージングした手袋を試料として、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する抗菌活性を試験した。手袋の指サックを切断して、既知濃度の黄色ブドウ球菌微生物で満たした。指定した殺滅時間間隔の後、指サック内の液体の一部を採取し、活性媒体中で培養して微生物含有量を評価した。抗菌性コーティングを有していない対照手袋も、同時に試験した。結果は、以下の表3に、2分間の曝露時間後の黄色ブドウ球菌の対数減少値で示されている。本組成物は、微生物の正味対数減少値が、対照手袋の対数減少値を引いた後に、3を超える。
【0065】
【表3】

【0066】
[0062]表3に示されているように、本手袋は、加速エージング時に抗菌効力の低下を示さなかった。
【0067】
[0063]本明細書において本発明を特定の実施形態に言及しながら記載したが、これらの実施形態は本発明の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。様々な改変及び変形が、本発明の方法及び装置に対して、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実施され得ることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付した特許請求の範囲及びその等価物の範囲内にある改変及び変形を含むことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面及び外面を有するエラストマー層、
エラストマー層の内面上に配置された1種又は複数の抗菌剤を含む抗菌性ゲルコーティング、並びに
抗菌性ゲルコーティング上に配置されたブロッキング防止フィルムコーティング
を備える、パウダーフリー抗菌性手袋。
【請求項2】
エラストマー層が、天然ラテックス、合成ラテックス、並びに天然及び合成ラテックスのブレンドからなる群より選択される硬化ラテックスを含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項3】
合成ラテックスが、ポリクロロプレン、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン、ポリイソプレン、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項2に記載の手袋。
【請求項4】
抗菌性ゲルコーティングが、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩(PHMB)、塩化ベンザルコニウム(BZK)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、トリクロサン、ファルネソール、フェノキシエタノール、オクトキシグリセリン、ヨウ素化合物、銀塩、抗真菌剤、抗ウイルス剤、及びこれらの組合せからなる群より選択される1種又は複数の抗菌剤を含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項5】
1種又は複数の抗菌剤が封入されている、請求項1に記載の手袋。
【請求項6】
1種又は複数の抗菌剤が疎水性シェルを有するマイクロカプセル内に含有されている、請求項5に記載の手袋。
【請求項7】
抗菌性ゲルコーティングが亜鉛ゲル配合物を含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項8】
亜鉛ゲル配合物が1種又は複数の水溶性亜鉛塩、パンテノール、及びゲル化剤を含む、請求項7に記載の手袋。
【請求項9】
ブロッキング防止フィルムコーティングが、セルロース系水溶性ポリマー、及び任意選択により非水溶性閉じ込め型保湿剤を含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項10】
ブロッキング防止フィルムコーティングのセルロース系水溶性ポリマーが、ヒドロキシルプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項9に記載の手袋。
【請求項11】
水溶性ポリマーが、40℃を超える下限臨界溶液温度を有し、皮膚から生じる水分によるブロッキング防止フィルムコーティングの溶解を可能にする、請求項9に記載の手袋。
【請求項12】
非水溶性閉じ込め型保湿剤が、アミノ官能性シロキサン、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、エルカ酸オレイル、又はこれらの組合せである、請求項9に記載の手袋。
【請求項13】
2mg未満のパウダーを有する、請求項1に記載の手袋。
【請求項14】
ブロッキング防止フィルムコーティングが水分との接触時に溶解する、請求項1に記載の手袋。
【請求項15】
ブロッキング防止フィルムコーティングの溶解後、抗菌性ゲルコーティングからの抗菌剤が手袋から放出される、請求項1に記載の手袋。
【請求項16】
抗菌性ゲルコーティングが、2分間の曝露後に細菌増殖の少なくとも3logの減少を示す、請求項1に記載の手袋。
【請求項17】
抗菌性ゲルコーティングが、50℃で8週間及び40℃で6カ月間エージングした後に、抗菌活性の損失を実質的に示さない、請求項1に記載の手袋。
【請求項18】
外側包装により囲んだ内側ラップ中に包装された請求項1に記載のパウダーフリー抗菌性手袋を含む、包装されたパウダーフリー抗菌性物品であって、外側包装が、内側ラップが外側包装内を自由に移動することを可能にするのに十分な量のガスを含有する、物品。
【請求項19】
内面及び外面を有するエラストマー層、
エラストマー層の内面上に配置された1種又は複数の抗菌剤を含む抗菌性ゲルコーティング、並びに
抗菌性ゲルコーティング上に配置されたブロッキング防止フィルムコーティング
を備える、パウダーフリー抗菌性エラストマー物品。
【請求項20】
エラストマー層が、天然ゴムの硬化ラテックスを含み、抗菌性ゲルコーティングが、ポリクオタニウム10、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム(BZT)、オクトキシグリセリン、ファルネソール、及びパンテノールを含み、ブロッキング防止フィルムコーティングが、ヒドロキシルプロピルセルロースを含む、手袋の形態の請求項19に記載の物品。
【請求項21】
内面及び外面を有するエラストマー層を用意するステップ、
1種又は複数の抗菌剤を含む抗菌性ゲルコーティングをエラストマー層の内面に塗布するステップ、
抗菌性ゲルコーティングを乾燥させるステップ、
ブロッキング防止フィルムコーティングを抗菌性ゲルコーティングに塗布するステップ、並びに
ブロッキング防止フィルムコーティングを乾燥させるステップ
を含む、パウダーフリー抗菌性手袋を調製する方法。
【請求項22】
ブロッキング防止フィルムコーティングが、セルロース系水溶性ポリマーを含み、乾燥させるステップが、
ブロッキング防止フィルムコーティングをセルロース系水溶性ポリマーの下限臨界溶液温度を超える温度において乾燥させ、液体フィルムを形成するステップ、及び
液体フィルムを更に乾燥させ、前記抗菌性ゲルコーティングをカバーする固体フィルムを形成するステップ
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
エラストマー層と抗菌性ゲルコーティングの間に、更なるエラストマー層を形成するステップ、若しくは更なるコーティングを塗布するステップ、又は両ステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
抗菌性ゲルコーティングを塗布するステップの前に、手袋を水洗するステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
抗菌性ゲルコーティングが、ポリクオタニウム10、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム(BZT)、オクトキシグリセリン、ファルネソール、及びパンテノールを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
外側包装により囲んだ内側ラップ中にパウダーフリー抗菌性手袋を包装するステップを更に含む、請求項21に記載の方法であって、外側包装が、内側ラップが外側包装内を自由に移動することを可能にするのに十分な量のガスを含有する方法。
【請求項27】
内面及び外面を有するエラストマー層を用意するステップが、予熱した浸漬型をパウダーフリー凝固剤組成物中に浸漬するステップ、浸漬型上の凝固剤組成物を乾燥させるステップ、浸漬型を天然及び/又は合成エラストマーを含むラテックス溶液中に浸漬するステップ、並びに浸漬型上のゲル化ラテックスを熱水中で浸出するステップを含む、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2012−520398(P2012−520398A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554138(P2011−554138)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/026783
【国際公開番号】WO2010/104924
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(312001041)アンセル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】