説明

抗菌性化粧用塗布具

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はゴムラテックススポンジよりなる抗菌性化粧用塗布具に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、抗菌性ゴムラテックススポンジとしては、特公昭62−25691号公報に示されているように、ピリチオン金属塩系抗菌剤またはチアベンダゾール系抗菌剤をゴムラテックス原料配合時に混合したものがある。
【0003】抗菌剤は効果の大きいもの程薬害の心配があり、その選定に当たっては薬害と抗菌効果のバランスを考慮して使用量を定めている。しかし、化粧用具のように肌に直接使用するものでは皮膚刺激試験、経口毒性試験、その他毒性試験により安全性の確かなもので使用実績のあるものを許容濃度の範囲で使用している。従って、実際に使用可能な抗菌剤は限られたものとなっており、このよう抗菌剤としてジンクピリチオンやチアベンダゾールが知られている。
【0004】しかし、水に難溶性のジンクピリチオンやチアベンダゾールをゴムラテックススポンジに混合しても、このような製品では洗浄によって抗菌剤が容易に脱落し、効果がなくなるという欠陥がある。肌に害を与えない範囲で抗菌剤の含有量を最高としても、もみ洗いで抗菌剤の含有量はゼロになり、洗浄した後は黴や細菌が増殖する状態になっている。
【0005】化粧用塗布具は衛生清潔をモットーとすることから、使用後の洗浄は欠くことができないので耐洗浄性がないことは致命的な欠点であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】最近では、洗浄後に黴や細菌の増殖することのないよう、衛生清潔面から耐洗浄性のある抗菌性のゴムラテックススポンジパがを強く望まれるようになっている。
【0007】
【発明の目的】本発明は、上記ニーズに対応してゴムラテックススポンジよりなる化粧用塗布具において、従来の念願であった耐洗浄性の優れた抗菌性のゴムラテックススポンジからなる化粧用塗布具を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明においては、上記の目的をピリチオン金属塩系抗菌剤、チアベンダゾール系抗菌剤の1つまたは複数がシリカによってコーティングされており更にラテックスによってコーティングされてなる微細粉粒体を0.05重量%〜5.0重量%含有するゴムラテックススポンジよりなることを特徴とする抗菌性化粧用塗布具により達成する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、抗菌剤としては安全性の点で化粧用塗布具に使用実績のあるピリチオン金属塩系やチアベンダゾール系を用いて、耐洗浄性向上の課題を解決するものである。
【0010】ゴムラテックススポンジには、ピリチオン金属塩系抗菌剤やチアベンダゾール系抗菌剤を固着することができないので、特公昭62−25691号公報に示されているような従来の抗菌性ゴムラテックススポンジでは抗菌効果は洗浄までの一時的なものであり、洗浄後には黴や細菌が増殖することになっていた。
【0011】また、ピリチオン金属塩として水に難溶性のジンクピリチオンを用いても、チアベンダゾールとして水に難溶性の2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールを用いても、ゴムラテックスの加硫時には強度のアルカリ性であるので、混合された該抗菌剤は水溶性となり、製品における耐洗浄性が得られないものと思われる。
【0012】これに対して、本発明では、ピリチオン金属系やチアベンダゾール系を、ゴムラテックススポンジに固着し且つ徐放効果を発揮させるために、抗菌剤に加硫時のアルカリの影響を受けないようにコーティングを施した微細粉粒体としてゴムラテックススポンジに配合することにより、従来の耐洗浄性の課題を解決した。本発明で使用される抗菌剤としては、ピリチオン金属塩系およびチアベンダゾール系があり、ピリチオン金属塩としてナトリウム、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル、カリウム、リチウムなどの金属塩があるが、それらの中でも水に難溶性で着色のないビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛(いわゆるジンクピリチオンで以下ZPTという)が最も好ましい。チアベンダゾール系では2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール(以下TBZという)が好ましい。
【0013】本発明の抗菌剤はシリカによってコーティングされており、更にラテックスポリマーによりコーティングされている微細粉粒体としている。コーティングの比率として、例えば、抗菌剤:シリカコーティング:ラテックスコーティングを1:1:1の重量比とした場合には、抗菌剤含量は1/3となる。
【0014】この微細粉粒体をゴムラテックススポンジに0.05重量%〜5.0重量%含有させることにより、洗浄による脱落防止の課題を解決した。
【0015】コーティングされた微細粉粒体のゴムラテックススポンジに混合する量は0.05重量%未満では抗菌効果が不足であり、5.0重量%を越えると安全許容範囲を上回ることになり安全性の点で好ましくない。抗菌剤をシリカによってコーティングをするには、抗菌剤とシリカゾルとを混合してスプレー乾燥を行うことが効率的であり、径が10μ以下の球状にコーティングされた微細粉粒体とすることができる。
【0016】シリカゾルとしては無水珪酸20〜30%のコロイダルシリカであるスノーテックス(日産化学工業株式会社製品)を用いることができる。
【0017】次いで、ラテックスによりコーティングを行うには、前記シリカコーティング微細粉粒体をラテックス液に混合してスプレー乾燥を行えばよい。
【0018】コーティングに用いるラテックスとしては天然ラバー、ニトリル・ブタジエン・ラバー(NBR)、ポリウレタン、スチレン・ブタジエン・ラバ−(SBR)、その他のポリマーも使用できる。
【0019】本体に使用するゴムラテックススポンジとしては天然ラバー、ニトリル・ブタジエン・ラバー(NBR)、スチレン・ブタジエン・ラバ−(SBR)、その他のポリマーを使用できる。
【0020】なお、ゴムラテックススポンジがNBRラテックススポンジの場合には、コーティングに用いるラテックスとしてNBRラテックスを使用することが好ましい。
【0021】抗菌剤とシリカとラテックスポリマ−の配合比率は任意にすることができるが、1:1:1乃至1:2:1が好ましい。
【0022】なお、抗菌剤を直接前記ラテックスに混合してスプレー乾燥を行っても、加硫時のアルカリに耐えるコーティングはできない。また、抗菌剤をシリカによりコーティングするのみではアルカリに耐えるものは得られない。
【0023】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0024】実施例1 ニポールLX531B〔日本ゼオン(株)〕 100重量部 イオウ 〔細井化学工業(株)〕 1.3重量部 アクセルMZ 〔川口化学(株)〕 1.5重量部 アンテージW−300〔川口化学(株)〕 1.5重量部 トリメンベース 〔ユニロイヤル(株)〕 1.0重量部 酸化亜鉛 〔白水化学(株)〕 3.0重量部 ケイフッ化ソーダ 〔三井東圧化学(株)〕 3.0重量部を均一に混合してラテックス組成物を作った。
【0025】この組成物にZPT20重量%、シリカ40重量%およびNBR40重量%を含有する抗菌微細粒子2重量部を添加して均一な配合液を作った。
【0026】この配合液に、空気を混入して発泡倍率5倍に発泡し、ミキサーを用いて攪拌した後、直径55mmのアルミ製筒状体に注入した。次いで、120℃で25分間加熱することにより棒状の発泡体を得た。
【0027】この発泡体を洗浄、乾燥した後、厚さ8mmにカットし、縁部を研磨して化粧用スポンジパフを得た。このパフのZPT含有量は高速液体クロマトグラフ法で測定したところ、0.35g/100gであった。
【0028】次いで、このパフを中性洗剤0.2%水溶液に40℃×20分浸漬したのち、100回手揉みした。この操作を10回繰り返した後のZPT含有量は0.23g/100gであった。すなわち、洗濯10回後に約70%の抗菌剤が残存していた。
【0029】比較例実施例1と同一配合処方のラテックス組成物にZPT微粉末0.4重量部を添加して均一な配合液を作った。この配合液に、実施例1と同様に空気を混入して発泡倍率5倍に発泡し、ミキサーを用いて攪拌した後、直径55mmのアルミ製筒状体に注入した。次いで、120℃で25分間加熱することにより棒状の発泡体を得た。
【0030】この発泡体を洗浄、乾燥した後、厚さ8mmにカットし、縁部を研磨して化粧用スポンジパフを得た。このパフのZPT含有量は高速液体クロマトグラフ法で測定したところ0.31g/100gであった。
【0031】次いで、このパフを中性洗剤0.2%水溶液に40℃×20分浸漬したのち、100回手揉みした。この操作を10回繰り返した後のZPT含有量は0.04g/100gであった。すなわち、洗濯10回後には抗菌剤がほとんと脱落していた。
【0032】実施例2実施例1と同一配合処方のラテックス組成物に、ZPT33.3重量%、シリカ33.3重量%およびNBR33.3重量%を含有する抗菌微細粒子2重量部を添加して均一な配合液を作った。
【0033】この配合液に、実施例1と同様に空気を混入して発泡倍率5倍に発泡し、ミキサーを用いて攪拌した後、直径55mmのアルミ製筒状体に注入した。次いで、120℃で25分間加熱することにより棒状の発泡体を得た。
【0034】この発泡体を洗浄、乾燥した後、厚さ8mmにカットし、縁部を研磨して化粧用スポンジパフを得た。このパフのZPT含有量は高速液体クロマトグラフ法で測定したところ0.51g/100gであった。
【0035】次いで、このパフを中性洗剤0.2%水溶液に40℃×20分浸漬したのち、100回手揉みした。この操作を10回繰り返した後のZPT含有量は0.40g/100gであった。すなわち、洗濯10回後に約80%の抗菌剤が残存していた。
【0036】また、実施例1、2および比較例で得た化粧用スポンジパフについて抗菌試験を行った結果を次に示す。
イ)抗菌力試験方法SEKの抗菌防臭加工製品の加工効果評価試験の菌数測定方法およびシェークフラスコ法に、また、かび抵抗性はJIS Z2911に基づいて試験した。
ロ)試験結果の評価方法(1)細菌抵抗性評価 表示〔24時間培養後の生菌数が植菌敷と比較して〕
10以上減少している。 ◎10以下減少している。 ○同等である。 △増加している。 ×(2)かび抵抗性評価 表示接種部分に菌糸が認められない。 ◎菌糸の発育は1/3以下である。 ○菌糸の発育は1/3を越える。 △菌糸の発育は前面に及ぶ。 ×ハ)試験結果 試料 細 菌 抵 抗 性 かび抵抗性 緑膿菌 黄色ブドウ状球菌実施例1(未洗濯) ◎ ◎ ◎実施例1洗濯10回後 ○ ◎ ◎実施例2(未洗濯) ◎ ◎ ◎実施例2洗濯10回後 ◎ ◎ ◎比較例(未洗濯) ◎ ◎ ◎比較例洗濯10回後 × × ×〜△
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、ピリチオン金属塩系抗菌剤、チアベンダゾール系抗菌剤の1つまたは複数をシリカによってコーティングし、更にラテックスによってコーティングしたので、化粧用具本体のゴムラテックスの加硫時に抗菌剤がアルカリにより化学変化することがない。
【0038】また、本発明の抗菌微細粒子は表面がNBR等のラテックスでコーティングされているので化粧用具本体のゴムラテックスとの馴染みがよく、もみ洗いにより洗浄しても容易に脱落しない。従って、本発明の化粧用塗布具は抗菌剤の効果が永続し、使用者の肌にも害を与えない。
【0039】化粧用塗布具は衛生清潔をモットーとすることから、使用後の洗浄は欠くことができないが、本発明によれば、従来から念願であった耐洗浄性の優れた抗菌性を有する化粧用塗布具が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ピリチオン金属塩系抗菌剤、チアベンダゾール系抗菌剤の1つまたは複数がシリカによってコーティングされており更にラテックスによってコーティングされてなる微細粉粒体を0.05重量%〜5.0重量%含有するゴムラテックススポンジよりなることを特徴とする抗菌性化粧用塗布具。

【特許番号】特許第3051064号(P3051064)
【登録日】平成12年3月31日(2000.3.31)
【発行日】平成12年6月12日(2000.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−262474
【出願日】平成8年9月11日(1996.9.11)
【公開番号】特開平10−85034
【公開日】平成10年4月7日(1998.4.7)
【審査請求日】平成10年5月26日(1998.5.26)
【出願人】(000212005)
【出願人】(595118010)
【参考文献】
【文献】特開 平6−62921(JP,A)
【文献】特開 平6−46922(JP,A)
【文献】特開 平5−23212(JP,A)
【文献】特開 昭60−132504(JP,A)
【文献】実開 平6−21513(JP,U)