説明

抗CD38ヒト抗体及びその用途

【課題】本発明は、組換え抗原結合領域及びCD38に特異的なそのような抗原結合領域を含む抗体及び機能性断片を提供する。本発明は、前記の抗体をコードする核酸配列、該配列を含むベクター、薬学組成物及び使用のための指示書を含むキットも提供する。本発明は、CD38の新規な単離されたエピトープ及びその使用方法も提供する。
【解決手段】 CD38のエピトープに特異的な抗原結合領域を含む単離された抗体又は機能性抗体断片を提供するが、ヒトPBMC細胞をエフェクター細胞として用いた場合、及びエフェクター細胞の標的細胞に対する比が約30:1から約50:1の間である場合、配列番号:23及び24を有するキメラOKT10抗体よりも少なくとも2倍から5倍良好な効率で抗体−依存性細胞障害性(「ADCC」)により、上記抗体又はその機能性断片は、CD38+標的細胞(LP−1(DSMZ:ACC41)及びRPMI−8226(ATCC:CCL−155))の殺傷を媒介することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この出願は、2004年2月6日に出願された米国仮出願番号60/541,911、2004年2月6日に出願された米国仮出願番号60/547,584、2004年3月18日に出願された米国仮出願番号60/553,948及び2004年8月6日に出願された米国仮出願番号60/599,014に対する優先権を主張し、それらの内容の全体を引用により本明細書に編入する。
【0002】
CD38は、タイプIIの膜糖蛋白質であり、ADPリボシル−サイクラーゼ及びcADP−ヒドロラーゼのようなその酵素活性のために、エクトエンザイムのファミリーに属する。個体発生の間、CD38は、CD34+決定済み幹細胞(committed stem cells)及びリンパ細胞、赤血球細胞及び骨髄細胞の系列決定済み前駆細胞(lineage committed progenitors)の上に出現する。CD38発現は、リンパ系列においてのみT−及びmB−細胞の発生を通して存続すると理解される。
【0003】
CD38のアップ制御はリンパ球活性化、特に形質細胞経路を通したB−細胞分化のためのマーカーとして機能する。そのリガンドCD31を通して細胞内シグナリング又は細胞内伝達を導くCD38の(共同)受容体の機能は、仮定されており、第2メッセンジャー環状ADPrの細胞内制御因子としてのその役割も様々なシグナリングカスケードにおいて仮定されている。しかしながら、その生理学的重要性はまだ明らかにされておらず、マウスアナログのノックアウト又はヒトにおけるCD38自己抗体が有害であることが明確でないためである。
【0004】
造血系におけるその発現とは別に、研究者らは、B−又はT−急性リンパ芽球白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、非ホジキンリンパ腫(NHL)及び多発性骨髄腫(MM)を含む、B−,T−,及び骨髄/単球腫瘍由来の様々な細胞系におけるCD38のアップ制御に注目している。MMにおいては、例えば、強いCD38発現が全ての患者サンプルの大多数において立証されている。
【0005】
よって、悪性腫瘍細胞上のCD38の過剰発現は、免疫治療のための魅力ある治療標的を提供する。特に魅力があるのは、造血系のもっとも初期の多能性幹細胞がCD38−陰性であるという事実及びADCC又はCDCによる細胞傷害性作用の範囲が各標的の発現レベルとうまく相関するという事実である。
【0006】
抗−CD38治療の現在のアプローチは、2つの群:インビボアプローチとエクスビボアプローチに分けることができる。インビボアプローチにおいては、抗−CD38抗体を治療の必要のある被験者に投与し、CD38−過剰発現悪性腫瘍細胞の抗体媒介性枯渇を導く。枯渇は、抗体媒介ADCC及び/又はCDCによりエフェクター細胞によるか、又は細胞傷害性物質、例えばサポリンの標的細胞への輸送及び続く内部移行(internalization)のための標的化モイエティとして抗CD38−抗体を使用するかの何れかにより、達成することができる。エクスビボアプローチにおいては、細胞集団、例えば、CD38過剰発現悪性腫瘍細胞を含む骨髄細胞を、治療の必要のある個体から取り出し、そして抗−CD38抗体と接触させる。インビボアプローチに関して記載されたとおり、細胞傷害性物質、例えばサポリンにより破壊されるか、又は固定化された抗−CD38抗体と細胞集団を接触させて、即ちCD38過剰発現標的細胞を上記混合物から除去することにより、標的細胞を除去する。その後、枯渇された細胞集団を患者に再挿入する。
【0007】
CD38に関して特異的な抗体は、様々な特性に依存して、別のグループに分割することができる。CD38分子に対するいくつかの抗体の結合(有力にはアミノ酸220−300)は、標的細胞内での活性、例えばCa2+放出、サイトカイン放出、リン酸化事象及び各抗体特異性に基づいた成長刺激を誘導することができる(Konopleva et al.,1998;Ausiello et al.,2000)が、様々な公知の抗体とそれらの(非)作動特性との間に明確な相関は観察できなかった(Funaro et al.,1990)。
【0008】
公表された抗−CD38抗体の効果については、ほとんど知られてはいない。公知なことは、全ての公知の抗体がCD38のC末端部分に位置するエピトープ(アミノ酸残基220から300)を例外なく認識することである。一次蛋白質配列内の活性部位から離れたCD38のN末端部分中のエピトープに特異的な抗体は、これまでに知られていない。しかしながら、我々は、ヒトFc部分を含むキメラ構築物として分析されたときに、臨床試験においてOKT10が相対的に低い親和性及び効果を有することを発見した。さらに、OKT10はヒト投与に関しては不適当なマウス抗体である。ヒトの抗−CD38 scFv抗体断片が最近記載された(WO02/06347)。しかしながら、その抗体は選択的に発現されたCD38エピトープに特異的である。
【0009】
相応じて、抗−CD38抗体治療に関しての多大な潜在性の見地から、ADCC及び/又はCDCによるCD38過剰発現悪性腫瘍細胞の殺傷を媒介することにおいて高い親和性及び高い効果を伴うヒト−CD38抗体に関する強い要求がある。
【0010】
本発明は、完全にヒトにおいて高い有効性を有する抗−CD38抗体を提供することによるこれらの要求及びその他の要求を満たし、以下に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 02/06347
【特許文献2】米国特許第6,300,064号
【特許文献3】WO 01/05950
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Knappik et al.,J.Mol.Biol.(2000)296:57
【非特許文献2】Krebs et al.,Immunol.Methods.(2001)254:67
【非特許文献3】Virnekas,B.,Ge,L.,Pluckthum,A.,Schneider,K.C.,Wellnhofer,G.,and Moroney S.E.,1994;Nucl.Acids Res.22,5600
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、CD38−過剰発現細胞の殺傷を有効に媒介することのできるヒト及びヒト化抗体を提供することである。
本発明の目的は、ヒト投与に安全な抗体を提供することである。
【0014】
本発明の目的は、一つ又はそれより多い本発明の抗体を用いることによりCD38アップ制御に関連した疾患及び/又は症状を治療するための方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一つの側面において、上記発明は、CD38のエピトープに特異的な抗原結合領域を含む単離された抗体又は機能性抗体断片を提供するが、但し、ヒトPBMC細胞をエフェクター細胞として用いた場合、及びエフェクター細胞の標的細胞に対する比が約30:1から約50:1の間である場合、配列番号:23及び24を有するキメラOKT10抗体よりも少なくとも2倍から5倍良好な効率で抗体−依存性細胞障害性(「ADCC」)により(同じか又は実質上同じ条件下で)、上記抗体又はその機能性断片は、CD38+標的細胞(LP−1(DSMZ:ACC41)及びRPMI−8226(ATCC:CCL−155))の殺傷を媒介することができる。そのような抗体又はその機能性断片は、配列番号:5、6、7、又は8に示されるH−CDR3領域を含む抗原結合領域を含んでよい;抗原結合領域は、配列番号:5、6、7、又は8に示されるH−CDR2領域をさらに含んでよい;そして抗原結合領域は、配列番号:5、6、7、又は8に示されるH−CDR1領域も含んでよい。そのような本発明のCD38−特異的抗体は、配列番号:13、14、15、又は16に示されるL−CDR3領域を含む抗原結合領域を含んでよい; 抗体結合領域は、配列番号:13、14、15、又は16に示されるL−CDR1領域をさらに含んでよい;そして抗体結合領域は、配列番号:13、14、15、又は16に示されるL−CDR2領域も含んでよい。
【0016】
別の側面において、発明は、CD38のエピトープに特異的な抗原結合領域を含む単離された抗体又はその機能性断片を提供するが、当該抗体又はその機能性断片は、前の段落における条件と同じか又は実質上同じ条件下で、キメラOKT10抗体(配列番号:23及び24)よりも少なくとも2倍から5倍良好な効率で、CDCによりCD38をトランスフェクトされたCHO細胞の殺傷を媒介することができる。これらの基準を満たす抗体は、配列番号:5、6、又は7に示されるH−CDR3領域を含む抗原結合領域を含んでよい;抗原結合領域は、配列番号:5、6、又は7に示されるH−CDR2領域をさらに含んでよい;そして抗原結合領域は、配列番号:5、6、又は7に示されるH−CDR1領域も含んでよい。そのような本発明のCD38−特異的抗体は、配列番号:13、14、又は15に示されるL−CDR3領域を含む抗原結合領域を含んでよい; 抗体結合領域は、配列番号:13、14、又は15に示されるL−CDR1領域をさらに含んでよい;そして抗体結合領域は、配列番号:13、14、又は15に示されるL−CDR2領域も含んでよい。
【0017】
発明の抗体(及びそれらの機能性断片)は、CD38のエピトープに特異的な抗原結合領域を含んでよく、当該エピトープはCD38の43から215のアミノ酸残基の一つ又はそれより多くのアミノ酸残基を含み、配列番号:22に示されるとおりである。より特定すれば、上記抗原結合領域が結合するエピトープは、アミノ酸ストレッチ44−66、82−94、142−154、148−164、158−170、及び192−206のリストに由来する一つ又はそれより多いアミノ酸ストレッチ中に見いだされる一つ又はそれより多いアミノ酸残基を含んでよい。特定の抗体に関して、上記エピトープは直鎖状でよく、その他に関して、それはコンフォメーショナル(即ち、不連続)であってよい。これらの特性を一つ又はそれより多く有する抗体又はその機能性断片は、配列番号:5、6、7、又は8に示されるH−CDR3領域を含む抗原結合領域を含んでよい;抗原結合領域は、配列番号:5、6、7、又は8に示されるH−CDR2領域をさらに含んでよい;そして抗原結合領域は、配列番号:5、6、7、又は8に示されるH−CDR1領域も含んでよい。そのような本発明のCD38−特異的抗体は、配列番号:13、14、15、又は16に示されるL−CDR3領域を含む抗原結合領域を含んでよい; 抗体結合領域は、配列番号:13、14、15、又は16に示されるL−CDR1領域をさらに含んでよい;そして抗体結合領域は、配列番号:13、14、15、又は16に示されるL−CDR2領域も含んでよい。
【0018】
本明細書に開示された配列のペプチドバリアントも本発明により包含される。従って、発明は、重鎖アミノ酸配列を有する抗−CD38抗体を含み、配列番号:5、6、7、又は8に示されるCDR領域とCDR領域中の少なくとも60パーセントの配列同一性;及び/又は配列番号:5、6、7、又は8に示されるCDR領域とCDR領域中の少なくとも80パーセントの配列同一性を伴う。さらに含まれるのは、軽鎖アミノ酸配列を有する抗−CD38抗体であり、配列番号:13、14、15、又は16に示されるCDR領域とCDR領域中の少なくとも60パーセントの配列同一性;及び/又は配列番号:13、14、15、又は16に示されるCDR領域とCDR領域中の少なくとも80パーセントの配列同一性を伴う。
【0019】
発明の抗体はIgG(例えば、IgG)であってよく、抗体断片は例えばFab又はscFvであってよい。発明の抗体断片は、従って、本明細書に記載されるとおりの一つ又はそれより多い様式にて挙動する抗原結合領域であるか、又は、を含んでよい。
【0020】
発明は、単離された核酸配列にも関し、各々はCD38のエピトープに特異的なヒトの抗体又はその機能性断片の抗原結合領域をコードし得る。そのような核酸配列は、抗体の可変重鎖をコードし、そして配列番号:1、2、3、又は4からなる群から選択される配列又は配列番号:1、2、3、又は4の相補鎖に対してストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸配列を含んでよい。当該核酸配列は、単離された抗体又はその機能性断片の可変軽鎖をコードするかもしれず、そして配列番号:9、10、11、又は12からなる群から選択される配列又は配列番号:9、10、11、又は12の相補鎖に対してストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸配列を含んでよい。
【0021】
発明の核酸は、組換え生産に適している。即ち、発明は、発明の核酸配列を含むベクター及び宿主細胞にも関する。
発明の組成物は、治療用又は予防用の応用のために使用してよい。発明は、よって、発明の抗体(又は機能性断片)とそのための薬学上受容可能な担体又は賦形剤を含む薬学組成物を含む。関連する側面において、発明は、CD38又はCD38発現細胞の不所望の存在に関連した障害又は症状を治療するための方法を提供する。そのような方法は、本明細書にて記載されたか又は意図されたような、発明の抗体を含む薬学組成物を有効な量にてその必要のある被験者に投与する工程を含む。
【0022】
発明は、直鎖状又はコンフォメーショナルな形態の何れかのCD38の単離されたエピトープ、及び抗体又はその機能性断片の単離のためのそれらの用途に関し、抗体断片のその抗体は上記エピトープに特異的な抗原結合領域を含む。この点に関して、直鎖状エピトープはCD38のアミノ酸残基192−206を含んでよく、コンフォメーショナルエピトープはCD38のアミノ酸44−66、82−94、142−154、148−164、158−170、192−206及び202−224からなる群から選択される一つ又はそれより多いアミノ酸残基を含んでよい。CD38のエピトープは、例えば、抗体又はその機能性断片の単離のために使用することができ(それら抗体又は機能性断片の各々はそのようなエピトープに特異的な抗原結合領域を含む)、CD38の上記エピトープを抗体ライブラリーと接触させ、そして当該抗体(類)又はその機能性断片(類)を単離する工程を含む。
【0023】
別の態様において、発明はCD38の単離されたエピトープを提供し、CD38のアミノ酸44−66、82−94、142−154、148−164、158−170、192−206及び202−224からなる群から選択されるアミノ酸配列から本質的になる。本明細書にて使用されるとおり、そのようなエピトープは、付加的な特徴がエピトープの基本的且つ新規な特性に物質的に(materially)影響しないならば、直前のアミノ酸配列プラス付加的特徴の一つから「本質的になる(consists essentially of)」。
【0024】
また別の態様において、発明は、CD38のアミノ酸44−66、82−94、142−154、148−164、158−170、192−206及び202−224からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるCD38の単離されたエピトープを提供する。
【0025】
発明は、(i)アミノ酸44−66、82−94、142−154、148−164、158−170、192−206及び202−224のリストに由来する一つ又はそれより多いアミノ酸ストレッチを含むCD38の単離されたエピトープ;(ii)抗体ライブラリー;及び(iii)そのようなエピトープに特異的に結合するそのようなライブラリーの一つ又はそれより多いメンバーを単離するために抗体ライブラリーを使用するための指示書を含むキットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1a】図1aは、様々な新規抗体可変重鎖領域の核酸配列を提供する。
【図1b】図1bは、様々な新規抗体可変重鎖領域のアミノ酸配列を提供する。CDR領域HCDR1,HCDR2及びHCDR3を太字でN−からC−末端へ示す。
【図2a】図2aは、様々な新規抗体可変軽鎖領域の核酸配列を提供する。
【図2b】図2bは、様々な新規抗体可変軽鎖領域のアミノ酸配列を提供する。CDR領域LCDR1,LCDR2及びLCDR3を太字でN−からC−末端へ示す。
【図3】図3は、様々な、コンセンサスに基づいたHuCAL抗体マスター遺伝子配列の可変重鎖領域のアミノ酸配列を提供する。CDR領域HCDR1,HCDR2及びHCDR3を太字でN−からC−末端へ示す。
【図4】図4は、様々な、コンセンサスに基づいたHuCAL抗体マスター遺伝子配列の可変軽鎖領域のアミノ酸配列を提供する。CDR領域LCDR1,LCDR2及びLCDR3を太字でN−からC−末端へ示す。
【図5】図5は、CD38のアミノ酸配列を提供する(SWISS−PLOT一次アクセション番号P28907)。
【図6−1】図6は、キメラOKT10の重及び軽鎖のヌクレオチド配列を提供する。
【図6−2】図6は、キメラOKT10の重及び軽鎖のヌクレオチド配列を提供する。
【図7】図7は、本発明の代表的な抗体のエピトープの模式的外観を提供する。
【図8−1】図8は、pMORPH(登録商標)_h_IgG1_1(bp601−2100)(配列番号:32)のDNA配列を提供する。当該ベクターはpcDNA3.1+ベクター(インビトロジェン)に基づく。VH−スタッファー配列のアミノ酸配列を太字で示すが、VH−リーダー配列と定常領域の遺伝子の最後のリーディングフレームは非太字でプリントする。制限部位を配列の上に示す。配列決定プライマーのプライミング部位に下線を付す。
【図8−2】図8は、pMORPH(登録商標)_h_IgG1_1(bp601−2100)(配列番号:32)のDNA配列を提供する。当該ベクターはpcDNA3.1+ベクター(インビトロジェン)に基づく。VH−スタッファー配列のアミノ酸配列を太字で示すが、VH−リーダー配列と定常領域の遺伝子の最後のリーディングフレームは非太字でプリントする。制限部位を配列の上に示す。配列決定プライマーのプライミング部位に下線を付す。
【図8−3】図8は、pMORPH(登録商標)_h_IgG1_1(bp601−2100)(配列番号:32)のDNA配列を提供する。当該ベクターはpcDNA3.1+ベクター(インビトロジェン)に基づく。VH−スタッファー配列のアミノ酸配列を太字で示すが、VH−リーダー配列と定常領域の遺伝子の最後のリーディングフレームは非太字でプリントする。制限部位を配列の上に示す。配列決定プライマーのプライミング部位に下線を付す。
【図9−1】図9は、Igカッパ軽鎖発現ベクターpMORPH(登録商標)_h_Igκ_1(bp601−1400)(配列番号:33)のDNA配列を提供する。当該ベクターはpcDNA3.1+ベクター(インビトロジェン)に基づく。Vκ−スタッファー配列のアミノ酸配列を太字で示すが、Vκ−リーダー配列と定常領域の遺伝子の最後のリーディングフレームは非太字でプリントする。制限部位を配列の上に示す。配列決定プライマーのプライミング部位に下線を付す。
【図9−2】図9は、Igカッパ軽鎖発現ベクターpMORPH(登録商標)_h_Igκ_1(bp601−1400)(配列番号:33)のDNA配列を提供する。当該ベクターはpcDNA3.1+ベクター(インビトロジェン)に基づく。Vκ−スタッファー配列のアミノ酸配列を太字で示すが、Vκ−リーダー配列と定常領域の遺伝子の最後のリーディングフレームは非太字でプリントする。制限部位を配列の上に示す。配列決定プライマーのプライミング部位に下線を付す。
【図10−1】図10は、HuCAL Igラムダ軽鎖発現ベクターpMORPH(登録商標)_h_Igλ_1(bp601−1400)(配列番号:34)のDNA配列を提供する。Vλ−スタッファー配列のアミノ酸配列を太字で示すが、Vλ−リーダー配列と定常領域の遺伝子の最後のリーディングフレームは非太字でプリントする。制限部位を配列の上に示す。配列決定プライマーのプライミング部位に下線を付す。
【図10−2】図10は、HuCAL Igラムダ軽鎖発現ベクターpMORPH(登録商標)_h_Igλ_1(bp601−1400)(配列番号:34)のDNA配列を提供する。Vλ−スタッファー配列のアミノ酸配列を太字で示すが、Vλ−リーダー配列と定常領域の遺伝子の最後のリーディングフレームは非太字でプリントする。制限部位を配列の上に示す。配列決定プライマーのプライミング部位に下線を付す。
【図11】図11は、増殖アッセイの結果を示す:6人の別々の健康なドナーからのPBMCs(個々の点により示されるとおり)を、3日間、HuCAL(登録商標)抗体Mab#1(=MOR03077),Mab#2(=MOR03079)及びMab#3(=MOR03080)、参照抗体chOKT10,アゴニスト(ag.)対照IB4,無関係なHuCAL(登録商標)陰性対照IgG1(NC)及びIB4に関する適合したアイソタイプ対照のマウスIgG2a(Iso)の存在下で培養した。
【図12】図12は、IL−6放出アッセイの結果を提供する:4−8人の健康なドナーからのPBMCs(個々の点により示されるとおり)を、24時間、HuCAL(登録商標)抗体Mab#1(=MOR03077),Mab#2(=MOR03079)及びMab#3(=MOR03080)、参照抗体chOKT10,アゴニスト(ag.)対照IB4,無関係なHuCAL(登録商標)陰性対照(NC)及び培地のみ(培地)の存在下で培養した。相対光ユニット(RLU)におけるIL−6含有量を、培養上清から、化学発光に基づくELISAにより分析した。
【図13】図13は、CD34+/CD38−前駆細胞に対する細胞障害性についてのデータを提供する:自己CD34+/CD38−前駆細胞を有する健康なドナーからのPBMCsを、HuCAL(登録商標)Mab#1(=MOR03077),Mab#2(=MOR03079)及びMab#3(=MOR03080)、陽性対照(PC=chOKT10)及び無関係なHuCAL(登録商標)陰性対照と、4時間、それぞれインキュベートした後に、細胞懸濁液を馴化されたメチル−セルロース培地と混合して、2週間インキュベートした。赤血球バースト形成ユニット(BFU−E;パネルB)及び顆粒球/赤血球/マクロファージ/巨核球幹細胞(CFU−GEMM;パネルB)及び顆粒球/マクロファージ幹細胞(CFU−GM;パネルC)由来のコロニー形成ユニット(CFU)を計数し、そして培地対照(「なし」は培地)に対して標準化した。パネルAは、全ての前駆細胞に関してのCFUの全数(全CFUs)を表す。少なくとも10人の異なるPBMCドナーからの平均値を与える。エラーバーは平均値の標準誤差を表す。
【図14】図14は、異なる細胞系によるADCCについてのデータを提供する:[a:単一測定(RPMI8226を除く;4つの個別のアッセイからの平均);E.T−比:30:1][b:Namba et al.,1989][c:5μg/mlが抗体濃度に関して使用された(0.1μg/mlのラジを除く)][d:CD38−発現特異的殺傷[%]の刺激に関するレチノインアッセイの追加=[(実験殺傷(exp.killing)−中度の殺傷(medium killing))/(1−中度の殺傷(medium killing))]*100] PC:陽性対照(=chOKT10) MM:多発性骨髄腫 CLL:慢性B細胞白血病 ALL:急性リンパ芽球性白血病 AML:急性骨髄性白血病 DSMZ:Deutsch Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH ATCC:アメリカンタイプカルチャーコレクション ECACC:ヨーロピアンコレクションオブセルカルチャー MFI:平均蛍光強度。
【図15】図15は、MM−サンプルによるADCCについてのデータを提供する:a:2−4の個別の分析。
【図16】図16は、ヒト骨髄腫異種移植片(xenograft)のMOR03080による処置後の平均腫瘍容量の実験結果を提供する:群1:媒質;群2:2日目ごとにhIgG1 1mg/kg32−68日としてMOR03080;群3:2日目ごとにhIgG1 5mg/kg32−68日としてMOR03080;群4:2日目ごとにchIgG2a 5mg/kg32−68日としてMOR03080;群5:2日目ごとにhIgG1 1mg/kg14−36日としてMOR03080;群6:非処置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、CD38に特異的であるか又は高い親和性を有し、且つ被験者に対して治療上の利益を伝える(deliver)ことのできる新規抗体の発見に基づく。発明の抗体は、ヒトの抗体であるか又はヒト化された抗体であってよく、多くのコンテクストにおいて使用可能であって、本明細書においてより完全に記載される。
【0028】
「ヒト」抗体又は機能性ヒト抗体断片は、ここでは、キメラではなく(例えば「ヒト化」されていなく)そして非ヒト種由来ではない(全体又は一部)ものとして規定する。ヒト抗体又は機能性ヒト抗体断片はヒトに由来し得るか又は合成ヒト抗体であり得る。「合成ヒト抗体」は、本明細書においては、全体又は一部が、インシリコにて、公知のヒト抗体配列の分析に基づいた合成配列に由来する配列を有する抗体として規定される。ヒト抗体又はその断片のインシリコデザインは、例えば、ヒト抗体又は抗体断片配列のデータベースを分析し、そしてそこから得られたデータを利用してポリペプチド配列を工夫する(devising)ことにより達成することができる。ヒト抗体又は機能性抗体断片の別の例は、ヒト起源の抗体配列のライブラリーから単離された核酸によりコードされるものである(即ち、そのようなライブラリーはヒト天然源由来の抗体に基づく)。
【0029】
「ヒト化された抗体」又は機能性ヒト化抗体断片は、本明細書においては、(i)非ヒト源に由来し(例えば異種免疫系を生むトランスジェニックマウス)、ヒト生殖細胞に基づくか、(ii)キメラであって、但し、可変領域が非ヒト起源に由来して、定常ドメインがヒト起源に由来するか、又は(iii)CDR−グラフト化されており、但し、可変ドメインのCDRsが非ヒト起源由来であって、可変ドメインの一つ又はそれより多いフレームワークがヒト起源であって、定常ドメイン(もしあるなら)がヒト起源であるものとして規定される。
【0030】
本明細書において使用されるとおり、抗体は、もしそのような抗体がそのような抗原と一つ又はそれより多い参照抗原の間を識別できるなら、結合特異性は絶対的ではないが相対的な特性であるから、抗原(ここではCD38)「に特異的に結合する」か、「に対して/関して特異的である」か、又は「を特異的に認識する」。そのもっとも一般的な形態において(そして規定されていない参照に言及する場合)、「特異的結合」は、例えば、以下の方法の一つに従い測定されるとおり、目的の抗原と関連のない抗原の間を識別する抗体の能力を意味する。そのような方法は、限定ではないが、ウエスタンブロット、ELISA−,RIA−ECL−IRMA−試験及びペプチドスキャンを含む。例えば、標準ELISAアッセイを実施することができる。スコアリングは標準発色の現像により実施してよい(例えば、ホースラディッシュパーオキシドと二次抗体及び過酸化水素とテトラメチルベンジジン)。特定のウエル中の反応が光学密度により、例えば450nmにおいてスコアされる。一般的なバックグラウンド(=陰性反応)は、0.1 ODであってよく;一般的な陽性反応は1 ODであってよい。これは、陽性/陰性の差異が10倍より大きくなり得ることを意味する。一般的には、結合特異性の測定を単一の参照抗原ではなく約3から5の非関連抗原、例えば、ミルク粉末、BSA、トランスフェリン等のセットを用いることにより実施する。
【0031】
しかしながら、「特異的に結合する」は、標的抗原と、一つ又はそれより多い密接に関連した抗原の間を識別できる抗体の能力を意味してよく、それは、例えばCD38とCD157の間の参照点(reference points)として使用される。さらに、「特異的結合」は、その標的抗原の別の部分、例えば、CD38の別のドメイン又は領域、例えばCD38のN末端又はC末端中のエピトープ間を識別するか又はCD38の一つ又はそれより多いキーとなるアミノ酸残基又はアミノ酸残基のストレッチの間を識別する、抗体の能力に関連づけてよい。
【0032】
また、本明細書において使用されるとおり、「イムノグロブリン」(Ig)は、ここでは、クラスIgG,IgM,IgE,IgA,又はIgD(又はそれらのあらゆるサブクラス)に属する蛋白質として規定され、そしてあらゆる慣用の公知の抗体及びそれらの機能性断片を含む。抗体/イムノグロブリンの「機能性断片」は、ここでは、抗原結合領域を保持した抗体/イムノグロブリンの断片(例えば、IgGの可変領域)として規定される。抗体の「抗原結合領域」は、抗体の一つ又はそれより多い高可変領域、即ち、CDR−1,−2及び/又は−3中に見いだされる;しかしながら、可変「フレームワーク」領域は、例えばCDRsに関して足場を提供することにより抗原結合において重要な役割を担うこともできる。好ましくは、「抗原結合領域」は、少なくともアミノ酸残基4から103の可変軽(VL)鎖及び5から109の可変重(VH)鎖を含み、より好ましくはアミノ酸残基3から107のVL及び4から111のVH3を含み、そして特に好ましくは完全なVL及びVH鎖(アミノ酸位置1から109のVL及び1から113のVH;WO97/08320に従うナバリング)を含む。本発明における使用のためのイムノグロブリンの好ましいクラスは、IgGである。発明の「機能性断片」は、F(ab’)断片、Fab断片及びscFvのドメインを含む。F(ab’)又はFabは、CH1とCドメインの間に生ずる分子間ジスルフィド相互作用を最少にするか又は完全に除去するために操作されてよい。
【0033】
発明の抗体は、インシリコにおいてデザインされて合成により創製された核酸によりコードされたアミノ酸配列に基づいた組換え抗体ライブラリーに由来してよい。抗体配列のインシリコデザインは、例えば、ヒトの配列のデータベースを分析して、それから得られるデータを利用してポリペプチド配列を工夫することにより、達成することができる。インシリコ創製配列をデザインして得るための方法は、例えば、Knappik et al.,J.Mol.Biol.(2000)296:57;Krebs et al.,Immunol.Methods.(2001)254:67及びKnappikらに発行された米国特許第6,300,064号に記載されており、それらの全体を引用により本明細書に編入する。
発明の抗体
この書類を通して、以下の代表的な発明の抗体を参照する:「抗体番号」又は「LACS」又は「MOR」3077,3079,3080及び3100。LAC3077は、配列番号:1(DNA)/配列番号:5(蛋白質)に相当する可変重鎖領域及び配列番号:9(DNA)/配列番号:13(蛋白質)に相当する可変軽鎖領域を有する抗体を表す。LAC3079は、配列番号:2(DNA)/配列番号:6(蛋白質)に相当する可変重鎖領域及び配列番号:10(DNA)/配列番号:14(蛋白質)に相当する可変軽鎖領域を有する抗体を表す。LAC3080は、配列番号:3(DNA)/配列番号:7(蛋白質)に相当する可変重鎖領域及び配列番号:11(DNA)/配列番号:15(蛋白質)に相当する可変軽鎖領域を有する抗体を表す。LAC3100は、配列番号:4(DNA)/配列番号:8(蛋白質)に相当する可変重鎖領域及び配列番号:12(DNA)/配列番号:16(蛋白質)に相当する可変軽鎖領域を有する抗体を表す。
【0034】
一つの側面において、発明は、CD38の一つ又はそれより多い領域に対して特異的に結合するか、又は、に関して高い親和性を有する抗原結合領域を有する抗体を提供するが、そのアミノ酸配列は配列番号:22に示される。親和性測定値が少なくとも100nM(Fab断片の一価親和性)であるなら、抗体は抗原に関して「高い親和性」を有するという。発明の抗体又は抗原結合領域は、好ましくは、CD38に対して約100nMよりも小さい、より好ましくは約60nMよりも小さい、そしてさらにより好ましくは約30nMよりも小さい親和性をもって結合できる。さらに好ましくは、約10nMよりも小さい、そしてより好ましくは約3nMよりも小さい親和性をもってCD38に結合する抗体である。例えば、発明の抗体のCD38に対する親和性は、約10.0nM又は2.4nMであってよい(Fab断片の一価親和性)。
【0035】
表1は、表面プラズモン共鳴(Biacore)及びFACSスキャッチャード分析により測定された、発明の代表的な抗体の親和性の要約である。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に関して、LACs3077,3079,3080及び3100を、固定化された組換えCD38上の表面プラズモン共鳴(Biacore)により、そしてCD38を発現するヒトRPMI8226細胞系を利用してフローサイトメトリー法により測定した。Biacoreの研究は、直接固定化された抗原(CD38−Fc融合蛋白質)上で実施した。LACs3077,3079,3080及び3100のFabフォーマットは、固定化されたCD38−Fc融合蛋白質上で約2.4から56nMの間の一価親和性を呈し、LAC3079がもっとも高い親和性を示し、Fabs3100,3080及び3077が続いた。
【0038】
IgG1フォーマットを細胞に基づく親和性測定(FACSスキャッチャード)のために用いた。表1の右のカラムは、このフォーマット中のLACSの結合強度を示す。LAC3080はもっとも強い結合を示し、LACS3079と3077よりもわずかに強い。
【0039】
発明の好ましい抗体の別の好ましい特徴は、CD38のN−末端領域内のエリアに対するそれらの特異性である。例えば、発明のLACs3077,3079,3080,及び3100は、CD38のN−末端領域に対して特異的に結合することができる。
【0040】
発明の抗体が結合するエピトープの種類は、直鎖状(即ち、アミノ酸の一つの連続するストレッチ)又はコンフォメーショナル(即ち、アミノ酸の複数のストレッチ)であってよい。特定の抗体のエピトープが直鎖状であるかコンフォメーショナルであるのかを決定するためには、熟練した研究者はCD38の異なるドメインをカバーするオーバーラップするペプチド(例えば、11のアミノ酸のオーバーラップを伴う13マーペプチド)への抗体の結合を分析することができる。この分析を用いて、発明者らは、LACS3077,3080及び3100がCD38のN−末端の不連続なエピトープを認識することを発見したが、LAC3079のエピトープは直鎖状として記載することができる(図7を参照)。本明細書における知見を組み合わせると、熟練した研究者は、上記エピトープに特異的な抗原結合領域を有する抗体を生産するためにCD38の一つ又はそれより多い単離されたエピトープを如何にして使用するのかを知ることになる(例えば、CD38のエピトープの合成ペプチド又はCD38のエピトープを発現する細胞を用いて)。
【0041】
発明の抗体は、ヒト、及び齧歯類種又は非ヒト霊長類であってよい少なくとも一つの他の種と、種交差反応性である。非ヒト霊長類は、アカゲザル(rhesus)、ヒヒ及び/又はカニクイザル(cynomolgus)であり得る。齧歯類種は、マウス、ラット及び/又はハムスターであり得る。少なくとも一つの齧歯類種と交差反応性である抗体は、例えば、同じ抗体を用いて複数の種においてインビボ研究を実施するために、公知の抗−CD38抗体を超えた多大な柔軟性及び利益を提供することができる。
【0042】
好ましくは、発明の抗体は、CD38に結合できるばかりか、CD38を発現する細胞の殺傷を媒介することもできる。より特定すれば、発明の抗体は、抗体−エフェクター機能により、CD38−陽性(例えば、悪性腫瘍)を枯渇させることによりその治療効果を媒介することができる。これらの機能は、抗体依存性細胞性細胞障害性(ADCC)及び補体依存性細胞障害性(CDC)を含む。
【0043】
表2は、ADCCとCDC両方における発明の代表的な抗体のEC50値の測定の要約を提供する。
【0044】
【表2】

【0045】
CD38発現は、しかしながら、骨髄(例えば、単球、顆粒球)及びリンパ球系(例えば、活性化されたB及びT細胞;血漿細胞)内の免疫細胞中に見いだされるのみならず、各前駆体細胞においても見いだされる。それらの細胞は悪性腫瘍細胞の抗体媒介性殺傷により影響されないことは重要であるから、本発明の抗体は前駆体細胞に対して障害性でないことが好ましい。
【0046】
環状ADP−リボースサイクラーゼ及びヒドロラーゼのようなその触媒活性に加えて、生物学上の関連性(relevance)のシグナルを変換する能力をCD38は示す(Hoshino et al.,1997;Ausiello et al.,2000)。それらの機能は、インビボにおいて、例えば受容体リガンド相互作用によるか、又はアゴニスト性の抗−CD38抗体との交差結合により導入することができ、例えば、カルシウム移動、リンパ球増殖及びサイトカインの放出を導く。好ましくは、本発明の抗体は、非アゴニスト性抗体である。
ペプチドバリアント
発明の抗体は、本明細書において提供される特定のペプチド配列に限定されない。むしろ、発明は、これらのポリペプチドのバリアントをも組み入れる。本開示及び慣用的に利用可能な技術並びに参考文献(reference)に関して、熟練した研究者は、本明細書において開示された抗体の機能性バリアントを用意し、試験し、そして利用することが可能になり、同時に、CD38+標的細胞の殺傷を媒介する能力を有するバリアントが本発明の範囲に入ることを認める。このコンテクストにおいて使用される「CD38+標的細胞を殺傷することを媒介する能力」は、発明の抗−CD38抗体に帰する機能的特性を意味する。CD38+標的細胞を殺傷することを媒介する能力は、即ち、ADCC及び/又はCDCにより、又は発明の抗体にコンジュゲートされたトキシン(toxin)構築物により、CD38+標的細胞の殺傷を媒介する能力を含む。
【0047】
バリアントは、例えば、本明細書において開示されるペプチド配列に関して、少なくとも一つの変更された相補性決定領域(CDR)(高感受性)及び/又はフレームワーク(FR)(可変)ドメイン/位置を有する抗体を含み得る。このコンセプトを良好に例示するため、抗体構造の簡単な記載が次に来る。
【0048】
抗体は2つのペプチド鎖からなり、各々が1つ(軽鎖)又は3つ(重鎖)の定常ドメイン及び可変領域(VL,VH)を含み、後者は各場合において4つのFR領域と3つの空間を満たすCDRsから構成される。抗原結合部位は、一つ又はそれより多いCDRsにより形成され、FR領域はCDRsに関する構造的フレームワークを提供し、よって、抗原結合において重要な役割を担う。CDR又はFR領域中の一つ又はそれより多いアミノ酸残基を変更することにより、熟練した研究者は変異したか又は多様化された抗体配列を生じさせることができ、例えば、新規又は改良された特性に関して、抗原に対してスクリーンすることができる。
【0049】
表3a(VH)及び3b(VL)は発明の特定の抗体のためのCDR及びFR領域を描写し、そして所定の位置での互いのアミノ酸及び対応するコンセンサス又は「マスター遺伝子」配列に関して比較する(米国特許第6,300,064号に記載されるとおり)。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
熟練した研究者は、表3a及び3b中のデータを本発明の範囲内のペプチドバリアントをデザインするために使用することができる。一つ又はそれより多いCDR領域内のアミノ酸を変化させることによりバリアントを構築することが好ましい;バリアントは一つ又はそれより多くの変更されたフレームワーク領域も有するかもしれない。新規な抗体の互いの比較に関しては、変化させることのできる候補残基は、例えば、LACs3080及び3077の可変軽鎖の残基4又は37及び例えば可変重鎖の残基13又は43を含むが、これらが互いに向かい合った変化(variance)の位置だからである。変更はフレームワーク領域内で起こしてもよい。例えば、ペプチドFRドメインは、生殖系の配列に比較して残基中に偏差が存在するように変更されるかもしれない。
【0053】
対応するコンセンサス又は「マスター遺伝子」配列に対する新規抗体の比較に関して、変化させることのできる候補残基は、例えば、VLλ3に比べてLAC3080の可変軽鎖の残基27、50又は90を含み、そしてVH3と比べてLAC3080の可変重鎖の残基33、52又は97を含む。代わるものとして、熟練した研究者は、本明細書において開示されたアミノ酸配列をそのような抗体の同じクラスの公知配列に対して比較することにより同じ分析を行うことができ、例えば、Knappik et al.,2000及びKnappikらに対して発行された米国特許第6,300,064号に記載された手法を用いる。
【0054】
さらに、LAC中の一つ又はそれより多いアミノ酸残基、好ましくは一つ又はそれより多いCDRs中のアミノ酸残基を多様化させることにより、そして改善された特性を有するバリアントに関して抗体バリアントの結果的なコレクションをスクリーニングすることにより、最適化のための開始点として一つのLACを用いてバリアントを得てよい。特に好ましいのは、VLのCDR−3、VHのCDR−3,VLのCDR−1及び/又はVHのCDR−2中の一つ又はそれより多いアミノ酸残基の多様化である。多様化は、トリヌクレオチド(TRIM)技術を用いることによりDNA分子のコレクションを合成することにより行うことができる(Virnekas,B.,Ge,L.,Pluckthum,A.,Schneider,K.C.,Wellnhofer,G.,and Moroney S.E.(1994)Trinucleotide phosphoramidites:ideal reagents for the synthesis of mixed oligonucleotides for random mutagenesis.Nucl.Acids Res.22,5600)。
保存的アミノ酸バリアント
ポリペプチドバリアントは、本明細書に記載されている抗体ペプチド配列の全体分子構造を保存するように作成してよい。個々のアミノ酸の特性を仮定すれば、いくつかの合理的な置換が熟練した研究者には認識される。アミノ酸置換、即ち、「保存された置換」は、例えば、含まれる残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質における類似性を基にして作成してよい。
【0055】
例えば、(a)非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンを含む;(b)極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンを含む;(c)陽性荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを含む;(d)陰性荷電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。置換は一般にグループ(a)−(d)内でなされてよい。さらに、グリシンとプロリンはαヘリックスを破壊するそれらの能力に基づいて互いに置換されてよい。同様に、特定のアミノ酸、例えば、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン及びリジンは、より一般的にαヘリックス内に見いだされるが、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン及びスレオニンは、より一般的にはβプリーツ(pleated)シート内に見いだされる。グリシン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、及びプロリンは一般的にターンの中に見いだされる。いくつかの好ましい置換は、以下の群の間で行ってよい:(i)SとT;(ii)PとG;(iii)A,V,LとI。公知の遺伝コード、及び組換え並びに合成DNA技術を仮定すれば、熟練した研究者は、保存されたアミノ酸バリアントをコードするDNAsを容易に構築することができる。一つの特定の例において、配列番号:5、6、7及び/又は8の中のアミノ酸位置3はQからEに変更することができる。
【0056】
本明細書にて使用される2つのポリペプチド配列間の「配列同一性」は、配列間で同一のアミノ酸のパーセンテージを示す。「配列類似性」は、同一であるか又は保存的アミノ酸置換を示すアミノ酸のパーセンテージを示す。発明の好ましいポリペプチド配列は、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%又は80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、そしてもっとも好ましくは少なくとも95%のCDR領域中の配列同一性を有する。好ましい抗体も、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、そしてもっとも好ましくは少なくとも95%のCDR領域中の配列同一性を有する。
発明のDNA分子
本発明は、発明の抗体をコードするDNA分子にも関する。これらの配列は、限定ではないが、図1a及び2aに記載されたそれらDNA分子を含む。
【0057】
発明のDNA分子は、本明細書にて開示された配列に限定されないが、それらのバリアントも含む。発明の範囲内のDNAバリアントは、ハイブリダイゼーションにおけるそれらの物理的特性に関連して記載してよい。熟練した研究者は、DNAがその相補体を同定するのに使用できることを認識するが、何故ならばDNAが二重鎖であって、その均等物又は類似体を核酸ハイブリダイゼーション技術を用いて同定することができる。ハイブリダイゼーションは100%相補性を下回っても起こり得ることも認識されるべきである。しかしながら、条件の適切な選択により、ハイブリダイゼーション技術を用いることにより、特定のプラズモンに対するそれらの構造上の関連性に基づいてDNA配列間で区別することができる。そのような条件に関するガイダンスに関しては、Sambrook et al.,1989(Sambrook,J.,Frisch,E.F.and Maniatis,T.(1989)Molecular Cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,USA)及びAusubel et al.,1995(Ausubel,F.M.,Brent,R.,Kingston,R.E.,Moore,D.D.,Sedman,J.G.,Smith,J.A.,&Struhl,K.eds(1995).Current Protocols in Molecular Biology.New York:John Wiley and Sons)を参照されたい。
【0058】
2つのポリペプチド配列の間の構造類似性は、2つの配列が互いにハイブリダイズする条件下の「ストリンジェンシー」の函数として表現することができる。本明細書にて使用される用語「ストリンジェンシー」は、条件がハイブリダイゼーションを嫌う(disfavor)範囲を意味する。ストリンジェント条件はハイブリダイゼーションを強く嫌い、そしてもっとも構造上関連したそのような条件下で互いにハイブリダイズする。反対に、非ストリンジェント条件は、より低い程度の構造関連性を表す分子のハイブリダイゼーションを好む。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、よって、2つの核酸配列の構造的関係に直接相関する。以下の関係はハイブリダイゼーションと関連性を相関させるのに有用である(Tは核酸二重鎖の融解温度である):
a.T=69.3+0.41(G+C)%
b.ミスマッチ塩基対の数の1%ごとの増加により二重鎖DNAのTは1℃低下する。
【0059】
c.(Tμ2−(Tμl=18.5log10μ2/μl(式中、μl及びμ2は2つの溶液のイオン強度である)。
ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは多数の係数(factors)の函数であり、全DNA濃度、イオン強度、温度、プローブサイズ、及び水素結合を破壊する薬剤の存在を含む。ハイブリダイゼーションを促進させる係数は、高DNA濃度、高いイオン強度、低温、長いプローブサイズ及び水素結合を破壊する薬剤の不在を含む。ハイブリダイゼーションは、一般に、2つの相:「結合」相と「洗浄」相において実施される。
【0060】
第1に、結合相においては、プローブをハイブリダイゼーションに適した条件下で標的に結合させる。ストリンジェンシーは温度を変更することによりこの段階において通常は制御される。高いストリンジェンシーに関しては、短い(<20nt)オリゴヌクレオチドプローブを用いる場合以外は、温度は通常65℃と70℃の間である。代表的なハイブリダイゼーション溶液は、6XSSC,0.5%のSDS,5Xデンハルト溶液及び100μgの非特異的キャリアーDNAを含む。Ausubel et al.,セクション2.9、補遺27(1994)を参照されたい。もちろん、多くの違い、さらに機能的な均等物、バッファー条件が知られている。関連性の程度が低いなら、低温を選択してよい。低ストリンジェンシー結合温度は約25℃と40℃の間である。中間のストリンジェンシーは少なくとも約40℃から約65℃までである。高いストリンジェンシーは少なくとも約65℃である。
【0061】
第2に、過剰なプローブを洗浄により除去する。この段階においては、よりストリンジェントな条件を通常は適用する。よって、この「洗浄」段階がハイブリダイゼーションにより関連性を決定するのに最も重要である。洗浄溶液は、一般には低塩濃度を含む。一つの例示的な中間ストリンジェンシー溶液は、2XSSCと0.1%のSDSを含む。高ストリンジェンシー洗浄溶液は、約0.2X未満のSSCの均等物(イオン強度において)を含み、好ましいストリンジェント溶液は約0.1XのSSCを含む。様々なストリンジェンシーに関連した温度は、「結合」に関して論じられるものと同じである。洗浄溶液は、一般に、洗浄の間に何回も交換される。例えば、一般的な高ストリンジェンシー洗浄条件は、55℃において30分間2回の洗浄及び60℃において15分間3回の洗浄を含む。
【0062】
従って、本発明は、高いストリンジェンシー結合及び洗浄の条件下で図1a及び2aに記載された分子にハイブリダイズする核酸分子を含むが、そのような核酸分子は、本明細書にて記載された特性を有する抗体又はその機能性断片をコードする。好ましい分子(mRNAパースペクティブから)は、本明細書にて記載されたDNA分子の一つと少なくとも75%又は80%(好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、そしてもっとも好ましくは少なくとも95%)の相同性又は配列同一性を有するものである。発明のバリアントの一つの特定の例においては、配列番号:1、2、3及び/又は4中の核酸位置7がCからGに置換されることにより、コドンをCAAからGAAに変化させることができる。
機能上均等なバリアント
発明の範囲内のDNAバリアントのまた別のクラスは、それらがコードする生成物に関して記載されてよい(図1b及び2bに掲載されるペプチドを参照)。これらの機能上均等な遺伝子は、遺伝コードの縮重により図1b及び2bに見いだされるのと同じペプチド配列をコードするという事実により特徴付けされる。配列番号:1及び31は機能上均等なバリアントの例であり、同じポリペプチド、即ち配列番号:5をコードしながら、それらの核酸配列は異なる。
【0063】
本明細書において提供されるDNA分子のバリアントは、いくつかの異なる様式にて構築することができる。例えば、それらは完全に合成のDNAとして構築してよい。20から約150ヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドを効率よく合成する方法は、広く利用可能である。Ausubel et al.,セクション2.11、補遺21(1993)を参照。Khorana et al.,J.Mol.Biol.72:209−217(1971)により最初に報告された様式にてオーバーラップするオリゴヌクレオチドを合成し、そして集合させてよい;Ausubel et al.,前出、セクション8.2も参照。合成DNAは、好ましくは、適切なベクターへのクローン化を促進させるために遺伝子の5’及び3’末端にて操作された便利な制限部位と共にデザインされる。
【0064】
示されるとおり、バリアントを生成する方法は、本明細書に開示されたDNAsの一つにより出発して、次に、部位特異的変異導入を実施することである。Ausubel et al.,前出、8章、補遺37(1997)を参照。一般的な方法においては、標的DNAを一本鎖DNAバクテリオファージ媒体にクローン化する。一本鎖DNAを単離して所望のヌクレオチド変化を含むオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせる。相補鎖を合成し、そして二本鎖ファージを宿主に導入する。結果の子孫のいくつかは所望の変異体を含み、DNA配列決定により確認することができる。さらに、子孫ファージが所望の変異体になる確率を増加させる様々な方法が利用可能である。これらの方法は業界においてよく知られており、そのような変異体を生成するためのキットが市販されている。
組換えDNA構築物及び発現
本発明は、さらに、本発明のヌクレオチド配列を一つ又はそれより多く含む組換えDNA構築物を提供する。本発明の組換え構築物は、発明の抗体をコードするDNA分子が挿入されたベクター、例えばプラスミド又はウイルスベクターを伴って使用される。
【0065】
コードされた遺伝子は、Sambrook et al.,1989,及びAusubel et al.,1989に記載された技術により生産してよい。あるいは、DNA配列を、例えば合成機を用いて化学合成してよい。例えば、OLIGONUCLEOTIDE SYNTHESIS(1984,Gait,編纂、IRL Press,オックスフォード)に記載された技術を参照されたく、その全体を引用により本明細書に編入する。発明の組換え構築物は、RNA及び/又はコードされたDNA(s)の蛋白質産物を発現することができる発現ベクターと共に構成される。当該ベクターは、さらに、オープンリーディングフレーム(ORF)に作動可能に連結されたプロモーターを含む制御配列を含んでよい。特定の開始シグナル及び細菌分泌シグナルも、挿入された標的遺伝子コーディング配列の効率よい翻訳に必要かもしれない。
【0066】
本発明は、さらに、本発明のDNAを少なくとも一つ含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、発現ベクターが利用可能な如何なる細胞でも実質上はあり得る。例えば、それは高等真核宿主細胞、例えば哺乳類細胞、下等真核宿主細胞、例えば酵母細胞であってよいが、好ましくは、原核細胞、例えば細菌細胞である。組換え構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE,デキストラン媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション又はファージ感染により行うことができる。
細菌発現
適切な翻訳開始及び終結のシグナルと共に所望の蛋白質をコードする構造DNA配列を、機能性プロモーターにより作動可能なリーディングフェーズにて挿入することにより、細菌のための有用な発現ベクターが構築される。当該ベクターは、ベクターの保守を保証し、そして所望なら宿主内で増幅を提供するために、一つ又はそれより多い表現型選択可能マーカー及び複製のオリジンを含むことになる。形質転換のための適切な原核宿主は、エシェリヒアコリ、バチルスサチリス、サルモネラティフィミリウム及びシュードモナス属、ストレプトミセス属及びスタフィロコッカス属の様々な種を含む。
【0067】
細菌のベクターは、例えば、バクテリオファージ−、プラスミド−、又はファージミド−に基づく。これらのベクターは、よく知られたクローニングベクターpBR322(ATCC 27017)の要素を一般的に含む市販のプラスミドに由来する、選択可能マーカー及び細菌複製オリジンを含み得る。適切な宿主株の形質転換及び適切な細胞密度への宿主株の成長の後は、選択されたプロモーターを適切な手段(例えば、温度シフト又は化学誘導)により脱抑圧/誘導し、そして細胞を追加の期間培養する。細胞は一般的に遠心分離により回収し、物理的又は化学的手段により破壊し、そして結果の粗抽出物をさらなる精製のために維持する。
【0068】
細菌システムにおいては、蛋白質が発現されるために意図された用途に依存して、多数の発現ベクターを有利に選択してよい。例えば、そのような蛋白質を大量に生産する場合、抗体の生成又はペプチドライブラリーのスクリーンのためには、例えば、容易に精製される高レベルの融合蛋白質生成物の発現を指示するベクターが望まれるかもしれない。
治療方法
治療方法は、発明により意図された抗体の治療上有効な量を治療の必要のある被験者に投与することを含む。「治療上有効な」量は、単一用量にて又は複数用量養生法に従い、単独で又は他の薬剤と共に被験者の処置エリアにおいてCD38陽性細胞を枯渇させ、有害な症状(adverse condition)の緩和を導くのに十分な量であるが、毒物学上寛容の、抗体の量として規定される。被験者は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス、サル又は他の低い目(order)の霊長類)であってよい。
【0069】
発明の抗体は公知の医薬と同時投与されてよく、いくつかの例において、抗体はそれ自身修飾されてよい。例えば、抗体はイムノトキシン又はラジオアイソトープとコンジュゲートされることにより、効能をさらに潜在的に増加させることができる。
【0070】
発明の抗体は、CD38が不所望に発現されるか又は見いだされる様々な状況において治療用又は診断用のツールとして使用することができる。発明の抗体による処置に特に適した障害及び症状は、多発性骨髄腫(MM)、及び他の血液疾患、例えば、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、及び急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。発明の抗体は、慢性関節リウマチ(RA)又は全身性エリテマトーデス(SLE)のような炎症性疾患を治療するのにも使用されてよい。
【0071】
前記の障害の何れかを治療するためには、本発明による使用のための薬学組成物を、一つ又はそれより多い生理学上受容可能な担体又は賦形剤を用いて慣用の様式にて製剤化してよい。発明の抗体は、如何なる適切な手段によっても投与することができ、処置される障害の種類により変化し得る。可能な投与経路は、非経口(例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下)、肺内及び鼻内、及び局所性免疫抑圧性処置のために所望であれば、外傷内(intraleisonal)投与を含む。さらに、発明の抗体は、パルスインフュージョンにより、例えば、低下させた用量の抗体と共に投与されてよい。投与される量は、臨床上の兆候、個体の体重、他の薬剤を投与されているか等の様々な因子に依存することになる。当業者は、障害又は処置される症状に依存して投与経路が変更になることを認識する。
【0072】
この発明による新規なペプチドの治療上有効な量を決定することは、特定の患者の特徴、投与の経路、及び処置される障害の性質に大きく依存する。一般的なガイダンスは、例えば、インターナショナルコンファレンスオンハーモナイゼーションの刊行物及びREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE,27章及び28章、pp.484−528(18版、Alfonso R.Gennaro,編纂、Easton,Pa.:Mack Pub.Co.,1990)において見いだすことができる。より特定すれば、治療上有効な量を決定することは、医薬の毒性及び有効性のような因子に依存することになる。毒性は当業界でよく知られ、そして前記文献に見いだされる方法を用いて決定してよい。有効性は以下の実施例に記載された方法と共に同じガイダンスを利用して決定してよい。
診断方法
CD38は特定の悪性腫瘍において造血細胞上に高度に発現される;即ち、発明の抗CD38抗体は、患者の中の悪性腫瘍の可能性のある蓄積の部位をイメージ化するか又は可視化するために用いられる。この点に関して、抗体は、ラジオアイソトープ、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジン等)蛍光標識、常磁性体原子等の使用を通して検出可能に標識され得る。そのような標識を達成するための手法は、当業界で知られている。診断イメージ化における抗体の臨床応用は、Grossman,H.B.Urol.Clin.North Amer.13:465−474(1986)、Unger,E.C.et al.,Invest.Radiol.20:693−700(1985)、及びKhaw,B.A.et al.,Science 209:295−297(1980)に総説される。
【0073】
そのような検出可能な標識された抗体の位置の検出は、例えば、腫瘍の発生の部位の指標かもしれない。一つの態様において、この試験は、組織又は血液のサンプルを取り出し、そしてそのようなサンプルを検出可能に標識された抗体の存在下でインキュベートすることにより実施される。好ましい態様において、この技術は、非侵入様式にて、磁気イメージ化、フルオログラフィー、等の使用により実施される。そのような診断試験は、CD38陽性細胞が関連性指標である疾患の治療の成功を監視することにおいて使用してよい。発明は、エクスビボセッティングにおける診断に関して本明細書において前に記載されたとおりに、抗CD38抗体の使用も意図する。
治療用及び診断用組成物
本発明の抗体は、薬学上有用な組成物を製造するための公知の方法に従い製造することができ、その際、発明の抗体(そのあらゆる機能性断片を含む)は薬学上受容可能な担体媒質との混合物中に混合される。適切な媒質及びそれらの製剤は、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE,27章及び28章、pp.484−528(18版、Alfonso R.Gennaro,編纂、Easton,Pa.:Mack Pub.Co.,1990)に記載される。有効な投与に適した薬学上受容可能な組成物を形成させるためには、そのような組成物が適切な量の担体媒質と共に本発明の抗体の一つ又はそれより多くを有効な量にて含むことになる。
【0074】
調製物は、活性な化合物の制御された放出を提供するように製剤化されるのが適当である。制御された放出は、抗CD38抗体を複合体形成するか又は吸収するようなポリマーの使用を通して達成してよい。制御された送達は、適切なマクロ分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレンビニル−アセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はプロタミンスルフェート)及びマクロ分子の濃度並びに放出を制御するための取り込み方法を選択することにより行ってよい。制御された放出調製物による作用の期間を制御するための別の可能な方法は、抗CD38抗体をポリマー材料、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)又はエチレンビニルアセテートコポリマーの粒子に取り込むことである。あるいは、これらの薬剤をポリマー粒子に取り込む代わりに、コアセルベーション技術によるか又はインターフェイシャルポリメリゼーション、例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルケタクリレート)マイクロカプセル、各々、又はコロイド薬剤送達システム、例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル又はマクロエマルジョン中にて製造されたマイクロカプセル中にこれらの材料を封入することが可能である。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)に開示されている。
【0075】
上記化合物は、例えば、注射、例えば巨丸注射又は連続注入(infusion)により非経口投与のために製剤化してよい。注射のための製剤化は、ユニット用量形態、例えば、アンプル中、又は複数用量コンテナにおいて、付加された保存剤と共に提供してよい。上記組成物は、懸濁液、溶液又はエマルジョンのような形態にて油性又は水性媒質中に取り込まれてよく、そして製剤化試薬、例えば、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤を含んでよい。あるいは、活性成分は、適切な媒質、例えば滅菌発熱物質不含水による使用前の構成化(constitution)のために粉末形態であってよい。
【0076】
上記組成物は、所望ならば、パック又はディスペンサー装置にて提供してよく、活性成分を含む一つ又はそれより多いユニット用量形態を含んでよい。パックは、例えば、金属又はプラスチックのフォイル、例えばブリスターパックを含んでよい。パック又はディスペンサー装置は、投与のための指示書を付随してよい。
【0077】
発明は、さらに、以下の実施例を参照して理解されるが、例示のためであって、即ち発明を限定するためではない。
【実施例】
【0078】
細胞系
以下の細胞系は、ヨーロピアンコレクションオブセルカルチャー(ECACC)、ジャーマンコレクションオブマイクロオーガニズムズ(DSMZ)又はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から得た:CD38マウスIgGモノクローナル抗体OKT10を産生するハイブリドーマ細胞系(ECACC,#87021903)、ジャーカット細胞(DSMZ,ACC282)、LP−1(DSMZ,ACC41),RPMI8226(ATCC,CCL−155),HEK293(ATCC,CRL−1573),CHOK1(ATCC,CRL−61)及びラジ(Raji)(ATCC,CCL−86)。
細胞及び培養条件
全ての細胞は37℃及び5%COにて湿潤発酵機中で標準化された条件下で培養した。細胞系LP−1,RPMI8226,ジャーカット及びラジは、10%FCS(PANバイオテックGmbH,#P30−3302),50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン(ギブコ、#15140−122)及び2mMグルタミン(ギブコ、#25030−024)を付加されたRPMI1640(パンバイオテックGmbH,#P04−16500)内で培養したが、ジャーカット並びラジ細胞の場合にはさらに10mM Hepes(パンバイオテックGmbH,#P05−01100)及び1mMピルビン酸ナトリウム(パンバイオテックGmbH,#P04−43100)を加えた。
【0079】
CHO−K1及びHEK293は、2mMグルタミン及び10%FCSを付加されたDMEM(ギブコ、#10938−025)内で生育させた。安定なCD38 CHO−K1トランスフェクト体を、G418(PAA GmbH,P11−012)の存在下で維持し、HEK293に関しては、1mMピルビン酸ナトリウムの付加が必須であった。HEK293の一過性トランスフェクションの後に、10%のFCSをウルトラ低IgG FCS(インビトロジェン、#16250−078)で置き換えた。細胞系OKT−10をIDMEM(ギブコ、#31980−022)中で培養したが、2mMグルタミン及び20%FCSを付加した。
末梢血からの単一細胞懸濁液の調製
全血サンプルをインフォームドコンセントの後に採取した。末梢血単核球細胞(PBMC)をHistopaque(登録商標)−1077(シグマ)により製造者の指示書に従い健康なドナーから単離した。ACK溶解バッファー(0.15M NHCl,10mM KHCO,0.1M EDTA)中での5分間の室温におけるインキュベーションによるか又は市販の誘導体中で(バイオサイエンス、#00−4333)、赤血球細胞をこれらの細胞懸濁液から枯渇させた。細胞を2回PBSにより洗浄し、そして次にフローサイトメトリー又はADCCにより処理した(以下を参照)。
フローサイトメトリー(「FACS」)
全染色を丸底96ウエル培養プレート(Nalge Nunc)中でウエルあたり2x10細胞にて実施した。細胞を、Fab及びIgG抗体と共に、示された濃度にて50μlのFACSバッファー(PBS,3% FCS,0.02% NaN)中で40分間4℃においてインキュベートした。細胞を2回洗浄し、次に、1:200にてFACSバッファー中で希釈されたR−フィコエリスリン(PE)をコンジュゲートされたヤギ−抗−ヒト又はヤギ−抗−マウスIgG(H+L)F(ab’)(ジャクソンイムノリサーチ)と30分間4℃においてインキュベートした。細胞を再び洗浄し、0.3mlのFACSバッファーに懸濁し、そして次にフローサイトメトリーによりFACSCalibur(ベクトンディッキンソン、サンディエゴ、CA)中で分析した。
【0080】
FACSに基づくスキャッチャード分析RPMI8226細胞を12の異なる希釈(1:2)にて染色し、12.5μg/ml(IgG)最終濃度から出発した。少なくとも2つの独立の測定値を、各濃度及びChamow et al(1994)に従い中央値蛍光強度から推定された(extrapolated)Kd値に関して使用した。
表面プラズモン共鳴
キネティクス定数kon及びkoffを、共有結合により固定化されたCD38−Fc融合蛋白質への各Fab結合の連続希釈により、BIAcore 3000装置(バイアコア、ウプサラ、スエーデン)を用いて測定した。共有結合による抗原の固定化に関しては、標準EDC−NHSアミンカップリング化学を用いた。CD38 Fc−融合蛋白質CM5の直接カップリングに関しては、センサーチップ(バイアコア)を約600〜700 RUと、10mM 酢酸バッファー、pH4.5中でコートした。レファレンスのフローセルに関しては、各々の量のHSA(ヒト血清アルブミン)を用いた。キネティクスの測定は、PBS(136mM NaCl,2.7mM KCl,10mM NaPO,1.76mM KHPO pH7.4)中で、20μl/分の流速にて、1.5−500nMのFab濃度範囲にて行った。各濃度の注射時間は、1分、続く解離フェーズの2分間であった。戻す(regeneration)のに、5μlの10mM HClを用いた。全てのセンソグラム(sensograms)をBIA評価ソフトウエア3.1(バイアコア)を用いて局所的に適合させた。
実施例1:HuCALライブラリーからの抗体産生
CD38に対する治療用抗体の産生のために、MorphoSysHuCAL GOLDファージディスプレイライブラリーによる選択を実施した。HuCAL GOLD(登録商標)はHuCAL(登録商標)コンセプト(Knappik et al.,2000;Krebs et al.,2001)に基くFabライブラリーであり、全部で6つのCDRsを誘導し、そしてFab断片をファージ表面に結合させるためにCysDisplay(登録商標)技術を用いる(Lohning,2001)。
A.ファージミッドレスキュー、ファージ増幅及び精製
HuCAL GGOLD(登録商標)ファージミッドライブラリーを、34μg/mlクロラムフェニコール及び1%グルコースを含む2xTY培地(2xTY−GG)の中で増幅した。0.5のOD600におけるヘルパーファージ感染(VCSM13)の後に(37℃において30分間撹拌なし;37℃において30分間250rpmにて撹拌)、細胞をスピンダウンし(4120g;5分間;4℃)、2xTY/34μg/mlクロラムフェニコール/50μg/mlカナマイシン中に懸濁し、そして一晩22℃において生育させた。ファージを上清からPEG沈殿させ、PBS/20%グリセロール中に懸濁し、そして−80℃に保存した。2回のパンニング(panning)の間にファージ増幅を実施したが、以下のとおりであった:中期フェーズのTG1細胞に溶出されたファージを感染させ、そして1%のグルコース及び34μg/mlのクロラムフェニコールを付加されたLB−寒天(LB−CG)上にプレートした。37℃における一晩インキュベーションの後に、上記のとおりにして、コロニーをかき集め(scraped off)、0.5のOD600に調節し、そしてヘルパーファージを添加した。
B.HuCAL GOLD(登録商標)によるパンニング
選択のため、HuCAL GOLD(登録商標)抗体−ファージを、異なるVHマスター遺伝子に対応する3つのプールに分割した(プール1:VH1/5λκ、プール2:VH3 λκ、プール:VH2/4/6 λκ)。これらのプールを、個別に、CD38―発現CHO−K1細胞上の全細胞パンニング3ラウンドに供し、次に、無関係な抗体−ファージの消耗のためにCD38−陰性CHO−K1細胞上でpH−溶出及び後吸着工程を行った。最後に、残った抗体ファージを用いてエシェリヒアコリTG1細胞に感染させた。遠心分離の後に、細菌の沈殿物を2xTY培地に懸濁し、寒天プレートにプレートし、そして一晩30℃においてインキュベートした。選択されたクローンを次にプレートからスクラップし、ファージをレスキューして増幅した。第2及びだ3ラウンドの選択は最初のラウンドのように実施した。
【0081】
選択されたHuCAL GOLD(登録商標)ファージの挿入物をコードするFabを発現ベクターpMORPH(登録商標)x9_Fab_FS(Rauchenberger et al.,2003)にサブクローン化することにより、可溶性Fabの迅速な発現を促進させた。選択されたクローンのDNAをXbaIとEcoRIにより消化し、それによりFabコード挿入物(ompA−VLCL及びphoA−Fd)を切り出し、そしてXbaI/EcoRI切断ベクターpMORPH(登録商標)x9_Fab_FSにクローン化した。このベクター中で発現したFabは2つのC−末端タグ(FLAGSTM及びtrep−tag(登録商標)II)を消耗及び精製のために含む。
実施例2:生物学上のアッセイ
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)及び補体−依存性細胞傷害性を、フローサイトメトリー分析に基く公表されたプロトコルに従い(Naundorf et al.,2002)、以下のとおりに測定した:
ADCC:
ADCC測定のために、標的細胞(T)を2.0E+細胞/mlに調節し、そしてRPIM1640培地(Pan biotech GmbH)中の100ng/mlのカルセインAM(Molecular Probes,C−3099)により2分間室温において標識した。残りのカルセインをRPIM1640培地中の3回の洗浄工程により除去した。平行してPBMCを(ナチュラルキラー)エフェクター細胞(E)の源として調製し、1.0E+0.7に調節し、そしてアッセイ条件に依存して50:1又はそれ未満のE:T比を生じるように、標識された標的細胞と混合した。細胞を1回洗浄し、そして細胞混合物を異なる希釈にて各抗体を含む200μlのRPIM1640培地に懸濁した。プレートを4時間標準化条件下で37℃及び5%COにおいて湿潤発酵機中でインキュベートした。FACS分析に先立ち、細胞をヨウ化プロピジウム(PI)で標識し、そしてフローサイトメトリー(ベクトンディッキンソン)により分析した。50.000から150.000の間の事象が各アッセイに関して計数された。以下の式は殺傷活性[%]を生じさせる:
【0082】
【数1】

【0083】
式中、ED=事象で死んだ細胞(カルセイン+PI染色された細胞)、そして
EL=事象で生存する細胞(カルセイン染色された細胞)。
CDC:
CDC測定に関して、5.0E+04 CD38 CHO−K1トランスフェクト体を、マイクロタイタープレート(Nunc)に、1:4希釈のヒト血清(Sigma,#S−1764)と各抗体と共に加えた。全ての試薬及び細胞は、10%FCSを付加されたRPIM1640培地(Pan biotech GmbH)中で希釈した。反応混合物を2時間標準化条件下で37℃及び5%COにおいて湿潤発酵機中でインキュベートした。陰性対照が熱不活性化相補体又は抗体なしのCD38−トランスフェクト体のいずれかとして機能した。細胞をPIにより標識して、FACS−分析に供した。
【0084】
全部で500の事象を計数し、そして異なる抗体濃度における死んだ細胞の数をEC50値の測定値として使用した。以下の等式は殺傷活性[%]を生じさせる:
【0085】
【数2】

【0086】
式中、ED=事象で死んだ細胞(PI染色された細胞)、そして
EL=事象で生存する細胞(未染色)。
全部で12の異なる抗体−希釈(1:2)の3通りの細胞傷害性の値をADCCにおいて用い、そして各抗体に関するCDCにおいて2通りに用いることにより、標準分析ソフトウエア(PRISM(登録商標),Graph Pad Software)によりEC−50値を得た。
実施例3:安定なCD38トランスフェクト体及びCD38 Fc−融合蛋白質の生成
パンニング及びスクリーニングするためのCD38蛋白質を生成するために、2つの異なる発現システムを確立した。第1の戦略はCD38−Fc−融合蛋白質の生成を含んだが、HEK293細胞の一過性トランスフェクションの後に上清から精製された。第2の戦略は、全細胞パンニングにより抗体−ファージの選択の為に使用される高CD38表面発現のための安定なCHO−K1−細胞系の精製を含んだ。
【0087】
初期工程として、ジャーカット細胞(DSMZ ACC282)をcDNAの生成のために使用し、次に、CD38の最初の7コドン及び最後の9コドンにそれぞれ相補のプライマーを用いて全CD38コード配列の増幅を行った(プライマーMTE001 & MTE002rev;表4)。CD38挿入物の配列分析は、Nataら(1997)により記載されたチロシンの代わりのグルタミンを明らかにした49位を除いて、Jacksonら(1990)による公表アミノ酸配列を確認した。制限エンドヌクレアーゼ部位の導入及び発現ベクターpcDNA3.1(Stratagene)へのクローン化のために、精製されたPCR産物が完全遺伝子(プライマーMTE006 & MTE007rev,表4)又はその一部(プライマーMTE004 & MTE005rev,表4)の再増幅のための鋳型として機能した。後者の場合、細胞外ドメインをコードする断片(aa45から300)を増幅して、ヒトVカッパリーダー配列とヒトFc−ガンマ1配列の間に印フレームにてクローン化した。このベクターは可溶性CD38−Fc融合蛋白質の生成のための発現ベクターとして機能した。リーダー配列を含まない別のpcDNA3.1−誘導体をCD38完全長遺伝子の挿入のために使用した。この場合、Fc−コーディング領域の前の停止コドン及び失われたリーダー配列はCD38表面発現を生じさせた。HEK293細胞を一時的にFc融合蛋白質ベクターでトランスフェクトさせることにより、可溶性CD38 Fc−融合蛋白質を生成させ、そして完全長誘導体の場合、CHO−K1−細胞をトランスフェクトすることにより安定なCD38−発現細胞系を生じさせた。
【0088】
【表5】

【0089】
実施例4:Hucal(登録商標)IgG1のクローン化、発現及び精製:
完全長のIgGを発現させるため、重鎖(VH)及び軽鎖(LH)の可変ドメイン断片を、Fab発現ベクターから、適切なpMORPH(登録商標)_hIgベクターのサブクローン化した(図8及び10を参照)。制限エンドヌクレアーゼ対BlpI/MfeI(挿入物−調製)及びBlpI/EcoRI(ベクター−調製)をVHドメイン断片のpMORPH(登録商標)_hIgG1ベクターへのサブクローン化のために用いた。対の酵素EcoRI/HpaI(ラムダ0−挿入物)及びEcoRI/BsiWI(カッパ−挿入物)をVLドメイン断片の各pMORPH(登録商標)_hIκ_1ベクター又はpMORPH(登録商標)_hIgλ_1ベクターへのサブクローン化のために用いた。結果のIgG構築物をHEK293細胞(ATCC CRL−1573)中で、一過性トランスフェクションにより、標準リン酸カルシウム−DNA共沈殿技術を用いて発現させた。IgGsは、細胞培養物上清から親和性クロマトグラフィーによりプロテインAセファロースカラムにより精製した。さらに下流のプロセスは、精製されたIgGのゲル濾過及び滅菌濾過によるバッファー交換を含んだ。質的コントロールは、還元SDS−PAGEによれば>90%の精製度、及び分析用サイズ排除クロマトグラフィーにより測定されたところによれば>90%モノマーIgGを明らかにした。材料のエンドトキシン含有量はキネティクLALに基くアッセイ(Cambrex European Endotoxin Testing Service,Bergium)により測定した。
実施例5:キメラOKT10(chOKT10;配列番号:23及び24)の生成及び生産
hOKT10の構築のため、マウスVH及びVL領域を、PCRにより、マウスOKT10ハイブリドーマ細胞系(ECACC #87021903)から調製されたcDNAを用いて増幅した。プライマーのセットを公表されたとおりに用いた(Dattamajumdar et al.,1996;Zhou et al.,1994)。PCR産物を、Topo−クローニング(インビトロジェン;pCRII−ベクター)及び配列分析に供される単一コロニー(M13リバースプライマー)のために使用し、2つの異なるカッパ軽鎖配列と一つの重鎖配列を明らかにした。配列アラインメント(EMBL−ヌクレオチド配列データベース)及び文献(Krebber et al,1997)に従い、カッパ配列の一つは主要細胞融合パートナーX63Ag8.653の固有のレパートリーに属し、よって、OKT10抗体には属さない。よって、新規のカッパ配列と単一VH−断片のみがさらなるクローン化に使用された。重鎖(配列番号:23)及び重鎖(配列番号:24)の配列を表6に提供する。HEK293細胞を一時的にトランスフェクトし、そして上清をFACSにおいて、CD38過剰発現ラジ細胞系(ATCC)に結合したキメラOKT10抗体に関して分析した。
実施例6:エピトープマッピング
1.材料と方法
抗体:
以下の抗−CD38IgGsをエピトープマッピングに送った(sent):
【0090】
【表6】

【0091】
CD38−配列:
アミノ酸(aa)配列(44−130位)は、SWISS−PROT主要アクセション番号P28907にて公表された配列からのヒトCD38に基く。49位において、aaQ(Tの代わり)をペプチドデザインのために使用した。
PepSpot−分析:
抗原ペプチドをセルロース膜上で段階様式にて規程された配置にて(ペプチドアレイ)合成し、そしてセルロース膜に共有結合させた。結合アッセイは、ペプチドアレイ上で直接行った。通常、抗原ペプチドアレイは数時間ブロッキングバッファーインキュベートされることにより、抗体の非特異的結合を減じさせる。ブロッキングバッファー中での一次(抗原ペプチド−結合)抗体とのインキュベーションが起こり、次に、ペルオキシダーゼ(POD)−標識された二次抗体とのインキュベーションが続き、一次抗体を選択的に結合させる。抗原ペプチドアレイと二次抗体とのインキュベーションの直後の短いT(Tween)−TBSバッファー洗浄に続き、第1化学発光実験を行うことにより、どの抗原ペプチドが一次抗体と結合するのかについての最初の概要を得る。いくつかのバッファー洗浄工程の結果として、偽陽性結合が減る(セルロース膜自体への非特異的抗体結合)。これらの洗浄工程の後に、最終化学発光分析を実施する。各ペプチドに関して単一の測定として単一の強度を示すイメージングシステム(Boehringer Light units,BLU)を用いてデータを分析した。二次抗体(抗−ヒトIgG)の非特異的結合を評価するため、これらの抗体をペプチドアレイと共に第1工程のように一次抗体の不在下でインキュベートした。一次抗体が当該ペプチドに対して何の結合も示さないなら、PODにより直接標識することができ、システムの感度を増加させる(MOR3077に関して実施されたとおり)。この場合、遊離アミノ基を通した慣用のカップリング化学を実施する。当該抗原を13マーペプチド(11ペプチドが重複)によりスキャンした。これは、123ペプチドのアレイをもたらした。結合アッセイはアレイ上で直接実施した。ペプチドが結合した抗体MOR03077,MOR03079,MOR03080,MOR03100及びキメラOKT10がペルオキシダーゼ標識二次抗体(ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、ガンマ鎖特異的、親和性単離抗体;Sigma−Aldlich,A6029)を用いて検出された。マッピングはイメージングシステムと組み合わせて化学発光基質と共に実施した。さらに、MOR03077の直接POD−標識を実施することにより、システムの感度を増加させた。
2.要約と結論:
5つの抗体全てがPepSpot分析において異なるプロフィールを示した。模式的要約を図7に示すが、CD38のaa配列が認識される相違を示す。MOR03079及びキメラOKT10のエピトープは明らかに直鎖状であると考えることができる。MOR03079のエピトープはCD38の192−206(VSRRFAEAACDVVHV)内に仮定され、OKT10のエピトープはaa284から298(FLQCVKNPEDSSCTS)の間が有力であると認識される。後者の結果は、親のマウスOKT10に関して公表されたデータを確証し(Hoshino et al.,1997)、そのエピトープをaa280−298の間に仮定する。しかし、より正確なエピトープの規程及びキーとなる(key)アミノ酸(主要抗原−抗体相互作用部位)の決定には、ペプチドVSRRFAEAACDVVHV及びFLQCVKNPEDSSCTSの短縮化及び両者のアラニンスキャンを考えるべきである。
【0092】
MOR03080とMOR03100のエピトープは不連続であると明らかに認識できるが、何故ならば蛋白質部位の異なる部位をカバーするいくつかのペプチドが認識されたからであった。それらのペプチドは、MOR03080に関してaa82−94を含み、そしてMOR03100に関してaa82−94,142−154,158−170,188−200及び280−296を含む。しかしながら、両ペプチドの間でのいくつかの重複が仮定され得るが、何故ならばaa位82−94(CQSVWDAFKGAFI;ペプチド#20)と158−170(TWCGEFNTSKINY;ペプチド#58)内に位置する2つの異なる部位が両抗体により認識されるからである。
【0093】
MOR03077のエピトープは後者2つの明らかに異なると考えることができ、そして複数セグメント化された不連続なエピトープとして記載され得る。当該エピトープはaa44−66,110−122,148−164,186−200及び202−224を含む。
実施例7:IL−6放出/増殖アッセイ
1.材料と方法
増殖及びIL−6放出アッセイをAusielloら(2000)に従い以下の修飾を加えて実施した:別の健康なドナー(インフォームドコンセントを得た後)からのPBMCsを密度勾配遠心分離によりHistopaque細胞分離システムを用いて供給者(Sigma)の指示書に従い精製し、そして標準条件下で10%FCS及びグルタミン(「完全RPMI1640」)を追加されたRPMI1640培地中で培養した(5%CO2,37℃)。両アッセイに関して、以下の抗体を用いた:HuCal(登録商標)抗−CD38 IgG1s Mabs MOR03077,MOR03079及びMOR03080,アゴニスト性マウスIgG2aモノクローナル抗体(IB4;Malavasi et al.,1984)、非関連性HuCAL(登録商標)IgG1抗体;適合したアイソタイプ対照(マウスIgG2a:抗−トリニトロフェノール、ハプテン特異的抗体;カタログ番号#555571,クローンG155−178;ベクトンディッキンソン)又は培地対照。IL−6放出アッセイに関しては、0.5ml完全RPIM1640培地中の1.0 E+06 PBMCsを24時間15ml培養チューブ(Falcon)中で20μg/mlの抗体の存在下でインキュベートした。細胞培養上清を回収し、そしてIL−6放出に関してQuantikineキットを用いて製造者のプロトコルに従い(R&Dシステムズ)分析した。増殖アッセイに関しては、2.0E+05 PBMCsを3日間96−ウエル平底プレート(Nunc)中で20μg/mlの抗体の存在下でインキュベートした。各アッセイを2通り実施した。4日後に、BrdUを各ウエルに加え、そして細胞の固定化及び供給者(Roche)のプロトコルに従ったDNA変性の前に細胞をさらに24時間37℃においてインキュベートした。BrdUの取り込みを抗−BrdUペルオキシダーゼ共役抗体により化学発光に基づくセッティングにおいて測定した。
2.要約と結論:
増殖アッセイ:
環状ADP−リボースサイクラーゼ及びヒドロラーゼとしてのその触媒活性に加えて、CD38は生物学上の関連性のシグナルをトランスデュースする能力を発揮する(Hoshino et al.,1997;Ausiello et al.,2000)。それらの機能はインビボにおいて、例えば受容体−リガンド相互作用によるか又は抗−CD38抗体との架橋結合により誘導することができる。それらのシグナリング事象は、例えばカルシウムの移動、リンパ球の増殖及びサイトカインの放出を導く。しかしながら、このシグナリングは、抗原性エピトープに依存するのみではなく、ドナーによって変化するかもしれない(Ausiello et al.,2000)。免疫治療の見地から、非アゴニスト抗体がアゴニスト性抗体よりも好ましい。よって、HuCAL(登録商標)抗−CD38抗体(Mabs MOR03077;MOR03079,MOR03080)を、増殖アッセイ及びIL−6−(重要なMM成長因子)放出アッセイにおいて参照抗体chOKT10及びアゴニスト性抗−CD38モノクローナル抗体IB4との比較においてさらに特性決定した。
【0094】
図11及び12において示されるとおり、HuCAL抗−CD38抗体Mab#1,2及び3並びに参照抗体chOKT10及び相当する陰性対照は、アゴニスト性抗体IB4に比較して全くか又はほんの僅かな増殖誘導を示さず、そしてIL−6放出は示さなかった。
実施例8:増殖性アッセイ
1.材料と方法:
PBMCsを有する自己由来CD34+/CD38+前駆体細胞を健康な個体(インフォームドコンセントを得た後で)から密度勾配遠心分離によりHisopaque細胞分離システムを用いて供給者(Sigma)の指示書に従い単離し、そして別のHuCAL(登録商標)IgG抗−CD38抗体(Mabs MOR03077;MOR03079,MOR03080)及び陽性対照(PC)chOKT10と10μg/mlにてインキュベートした。中度(medium)及び非関連のHuCAL(登録商標)はバックグラウンド対照として機能した。各ADCC−アッセイは4.0E+05 PBMCsからなったが、10%のFCSを追加されたRPIM1640培地中で4時間37℃においてインキュベートした。増殖(clonogenic)アッセイに関しては、2.50mlの「完全」メチルセルロース(CellSystems)をADCCアッセイからの2.5 E+0.5細胞で接種し、そして少なくとも14日間、制御された環境(37℃;5% CO2)においてコロニー発生のためにインキュベートした。コロニーを2人の別々の操作者により分析し、そしてBFU−E +(赤血球バースト形成及び顆粒球/赤血球/マクロファージ/巨核球幹細胞)とCFU−GM(顆粒球/マクロファージ幹細胞)にグループ分けした。
2.要約と結論
CD38発現は骨髄(例えば、単球及び顆粒球)及びリンパ球系列(例えば、活性化されたB及びT細胞;血漿細胞)のみならず、各前駆体細胞(CD34+/CD38+)においても見いだされるから、それらの細胞が抗体媒介性の殺傷により影響されないことが重要である。よって、CD34+/CD38+前駆細胞(progenitors)に対するそれらの作用を分析するために、増殖アッセイを適用した。
【0095】
健康なドナーからのPBMCsをHuCAL(登録商標)抗−CD38抗体(Mab#1,Mab#2及びMab#3)又はいくつかの対照(非関連HuCAL(登録商標)抗体、中度及び参照抗体chKTO10を陽性対照として)と共に、標準ADCC−プロトコルに従いインキュベートし、次に、コロニー発生のために、条件付けされたメチルセルロースとのさらなるインキュベーションを行った。図13に示されるとおり、コロニー形成ユニットの顕著な低下は、非関連抗体及び参照抗体との比較において、全てのHuCAL(登録商標)抗−CD38抗体に関して示されなかった。
実施例9:異なる細胞系及び一次多発性骨髄腫細胞によるアッセイ
1.材料と方法:
MM−患者サンプルの単離とADCC:骨髄吸引物を多発性骨髄腫間者から得た(インフォームドコンセントを得た後で)。悪性腫瘍標準プロトコルにより抗−CD38磁気ビーズ(Milteny Biotec)を用いて密度勾配遠心分離(Sigma)の後で精製した。ADCCアッセイを前で記載されたとおりに実施した。
2.要約と結論:
別の悪性腫瘍由来のいくつかの細胞系をADCCにおいて使用することにより、異なる起源及びCD38発現レベルを含む広い範囲の細胞系に対するHuCAL(登録商標)抗−CD38抗体の細胞傷害性効果を示した。図14に示されるとおり、全ての細胞がADCCにおいて一定抗体濃度にて(5μg/ml)及び30:1のE:T比にて死んだ。ADCCによる細胞傷害性は患者からのいくつかの多発性骨髄腫サンプルに関しても示された。全てのHuCAL(登録商標)抗−CD38抗体はMM−細胞依存性殺傷を示し、そしてEC50値は0.006から0.249nMの間で変動した(図15)。
実施例10:FACS及び免疫組織化学(IHC)による交差反応性分析
1.材料と方法
扁桃腺(tonsils)を用いたIHC:IHC HuCAL(登録商標)抗−CD38Mabs及び非関連陰性対照抗体を二価dHLX−フォーマット(Pluckthum & Pack,1997)に変換した。カニクイザル、アカゲザル及びヒト(the Institute of Pathology of the University of Graz/Austriaの記録室から回収された)由来のリンパ節からの5μmの冷凍切片をLeica CM3050クリオスタットから切り出した。切片は30分から1時間空気乾燥し、そして氷冷メタノール中で10分かけて固定し、そしてPBSにより洗浄した。dHLX−フォーマットの検出のため、マウス抗−His抗体(Dianova)とEnvision Kit(DAKO)を組み合わせて使用した。抗−CD38マウス抗体(例えば、参照マウスモノクローナルOKT10)の検出に関しては、Envisionキットのみを用いた。
【0096】
リンパ球のFACS分析:EDTA−処理された血液サンプルを健康なヒト(インフォームドコンセントを得た後で)、アカゲザル及びカニクイザルから得て、供給者(Sigma)の指示書に従いHistopaque細胞分離システムを用いた密度勾配遠心分離に供した。FACS分析に関しては、中期(interphase)からの細胞を一次抗体(HuCAL(登録商標)抗−CD38及びマウスIgG2又はFab−フォーマットとしての陰性対照Mabs、陽性対照マウス抗体OKT10及び適合したアイソタイプ対照)と共にインキュベートし、次に、抗−M2Flag(Sigma;Fab−フォーマットのためのみ)及びフィコエリスリン(PE)−標識された抗マウスコンジュゲート(Jackson Research)とインキュベートした。FACS分析は、ゲート化されたリンパ球の集団上で実施した。
2.要約と結論
HuCAL(登録商標)抗−CD38を種間CD38交差反応性に関して分析した。全ての抗−CD38MabsはFACS及びIHCにおいてリンパ球上でヒトCD38を検出することができたが、MOR03080と陽性対照OKT10のみはカニクイザルとアカゲザルのCD38に対して追加の反応性を示した(表5:交差反応性分析を参照)。
【0097】
【表7】

【0098】
実施例11:マウス中のヒト骨髄腫異種移植片(RPMI8226細胞系を用いる)のMOR03080による処理
1.皮下マウスモデルの確率:
ヒト骨髄腫由来の腫瘍細胞系RPMI8226のメスC.B−17−SCIDマウス中での皮下マウスモデルをAurigon Life Science GmbH(Tutzing,ドイツ)により以下のとおりに確立した:−1,0,及び1日目、抗−アシアロGM1ポリクローナル抗体(ASGM)(WAKO−ケミカルズ)は、SCIDマウス中で異種反応性NK−細胞を消耗するが、静脈内適用することにより、C.B−17−SCIDマウス内のあらゆる残りの特異的免疫反応性を不活性化した。0日目、50μlのPBS中の5x10又は1x10のRPMI8226腫瘍細胞を皮下にて、ASGM(上で示すとおり)処理されたか又は未処理のマウスの右脇腹へ接種した(各群5匹のマウスからなる)。腫瘍発生は、4つ全ての接種群において類似であり、抗アシアロGM1抗体のあるなしの処理に拘わらず、また異なる細胞数の接種によっても顕著な差異は見いだせなかった。腫瘍は数日間でゆっくりと成長し、不活発の傾向とサイズの変動を伴った。調査の全期間にわたり2つの腫瘍のサイズが変動し、そして一つの腫瘍が完全に注目されて、321mmのピークの容積からすっかり消失した。この腫瘍モデルを用いた処理の研究は、群あたりの腫瘍を接種された動物の数を多く含むべきである。
2.MOR03080による処理:
2.1研究対象
この研究は、Aurigon Life Science GmbH(Tutzing,ドイツ)により実施されることにより、媒質処理(PBS)に比較しての腹膜内適用された抗体(HuCAL(登録商標)抗−CD38)の抗腫瘍効果を比較した。ヒト抗体hMOR03080(アイソタイプIgG1)を、異なる量及び処理スケジュールにて試験した。さらに、キメラ抗体chMOR03080(アイソタイプIgG2:キメラ抗体OKT10に関して実施例5において記載されたのと類似の様式にてMOR03080の様々な領域とマウス定常領域を含むキメラ抗体(マウスVH/VL及びヒト定常領域))を試験した。RPMI8226癌細胞系をモデルとして選択し、そして上記のとおりにしてメスのSCIDマウスに皮下接種した。研究の最終点は、体重(b.w.)、腫瘍容積及び臨床上の兆候であった。
2.2抗体と媒質
抗体は2.13mg/ml(MOR03080 hIgG1)及び1.73mg/ml(MOR03080 chIgG2a)の濃度にて、Aurigonに容易に使用されるように提供され、そして適用までは−80℃に保存した。上記抗体を解凍し、そしてPBSで希釈することにより、各最終濃度にした。媒質(PBS)はAurigonに容易に使用されるように提供され、そして適用までは4℃に保存した。
2.3動物の仕様
種:マウス
株:Fox chase C.B−17−scid(C.B−Igh−1b/IcrTac)
数と性別:75匹のメス
供給者:Taconic M&B,Bomholtvej 10,DK−8680 Ry
健康状態:SPF
注文された体重:約18g
順化:9日
2.4腫瘍細胞系
腫瘍細胞(RPMI8226細胞系)を成長させ、そしてAurigon Life Science GmbHに輸送し、新たな周期で細胞を分裂させて生育させた。Aurigonは接種の日に注射のための細胞を用意した。細胞増殖のために使用された培養培地は、5% FACS,2mM L−グルタミン及びPenStepを付加されたRPMI1640であった。細胞は予測不可能な生育速度及び挙動を示さなかった。
【0099】
接種のため、腫瘍細胞をPBSに懸濁して、1x10細胞/50μlPBSの最終濃度に調節した。腫瘍細胞懸濁液を注射前に完全に混合した。
2.5実験手法
0日目、1x10のRPMI8226腫瘍細胞を75匹のSCIDマウスの右背面脇腹(right dorsal flank)に皮下接種した。第1の群は、14日から36日の間2日目ごとに、1mg/kg b.w.hIgG1−MOR03080で処理した。他の全部で60匹の動物から、31日目に各群の10匹の動物を4群にした(built)(約92mmの腫瘍容積)。群1−4を同等の平均腫瘍サイズ及び標準偏差にて作成した(built)。予め処理された群5(全てであるがしかし3匹のマウスは10mm未満の腫瘍容積を示し、1匹は約22mm,1匹は約44mmそして1匹は約119mm)に比較して相対的に小さな腫瘍容積を示す(約50mmの腫瘍容積)追加の群の5匹の動物(群6)が選択された。群1から4は、32日目から48日目は、2日目ごとに、PBS(媒質;群1)、1mg/kgのb.w.hIgG1−MOR03080(群2)又は5mg/kgのb.w.hIgG1−MOR03080(群3)、又は5mg/kgのb.w.hIgG2a−MOR03080(群4)のいずれかで処理した。群6は何の処理も受けなかった(表6参照)。腫瘍容積、体重及び臨床兆候は、週に2回、研究の最後まで測定した。
【0100】
【表8】

【0101】
2.6結果
臨床観察及び死亡率
特別な腫瘍又は物質に関連する臨床上の発見又は死亡率は観察されなかった。群3(hIgG1 5mg/kg)においては、4匹の動物が血液サンプリングの間に死んだ(1匹が3日目、1匹が34日目;2匹が52日目)。群4(muIgG2a 1mg/kg)においては、1匹の動物が血液サンプリングの間に死んだ(34日目)。研究の間に死んだ全ての他の動物は、腫瘍サイズのために安楽死させた。
体重発育(body weight development)
薬剤に関連した体重発達の干渉は、群1(媒質)に比較して、観察されなかった。体重は、群3(hIgG1 5mg/kg)及び群4(muIgG2a 5mg/kg)において血液サンプリングにより顕著に影響された。そのような妨害にも拘わらず、全ての群の平均体重増加は続いた。
腫瘍発生(図16を参照)
群1(媒質)においては、腫瘍成長が予測された速度で遅い進行により見いだされた。この細胞系が顕著な標準偏差を有するので、最大又は最小腫瘍に関する値はさらなる統計分析から除外された。群1の動物の腫瘍の成長は、群6(未処理)の腫瘍成長に匹敵したが、この群は31日目に低平均腫瘍容積から開始した。処理は、よって、腫瘍成長速度に対して僅かな影響を有すると考えられる。群1においては、2匹のマウスを腫瘍サイズのために83日目に安楽死させなければならなかったし、さらにもう1匹も87日目にそうしたため、腫瘍容積の平均値は80日目以後は、もはや表示されない。群6においては、1匹のマウスを80日目に、そして2匹のマウスを83日目に、腫瘍サイズのために安楽死させなければならず、そのため、腫瘍容積の平均値は76日目以後は、もはや平均値を表しているとは言えない。
【0102】
1mg/kgのb.w.のhIgG1で処理された群2においては、1匹の動物がさらなる分析から除外されたが、何故ならば、腫瘍が筋肉組織中で成長し、そしてこれがいつも腫瘍の生育速度を増強するからである。対照群1(媒質)に比較して、平均腫瘍サイズは45日に始まり研究の最後まで顕著に異なり始めた。増強された腫瘍の生育は処理の終了の後に(68日)観察されなかった。
【0103】
群3(5mg/kg b.w.hIgG1)の動物は、群1(媒質)との比較において腫瘍サイズの顕著な減少を明らかにしたことから、38日から83日までに統計学上の有意性を得た。平均腫瘍容積は、処理の最後の後の約2週間再度大きく成長し始めた。10の腫瘍のうちの1つは45日目に消失し、そして処理の最後の後の19日まで再度生育しなかった。
【0104】
92mmの腫瘍容積にて開始した全ての処理群の最良のパフォーマンスは、群4(5mg/kg b.w.muIgG2a)において得られたが、平均腫瘍容積は明らかな退行(regression)を示し、そして腫瘍は観察期間の最後までに4匹の動物において消失した。群1(媒質)の平均腫瘍容積に対する差異は、38日に始まり研究の最後まで顕著に高かった。
【0105】
14日目と36日目の間の1mg/kg b.w.hIgG1による初期の処理(群5)は、初期の効果並びに腫瘍発生に対する長く継続する効果を明らかにした。1匹の動物は腫瘍の筋肉組織への成長のためにさらなる分析から除外された。31日目、5匹の動物のみが接種の部位において残りの接種された動物に比較して、測定可能な腫瘍を有し、60匹のうちの2匹のみが腫瘍接種に応答しなかった。腫瘍の進行は約31日遅延した(対照群1の52日と群5の83との比較)。約50%の動物が研究の最後において接種の部位にて腫瘍を示さなかった。
2.7結論
特別な腫瘍又は物質に関連する臨床上の発見又は死亡率は、群1(媒質)との比較の上で観察されなかった。
【0106】
薬剤に関連した体重発達の干渉は、観察されなかった。
ROMI8226腫瘍細胞の処理後の腫瘍成長は効率の順に減少した:hIgG1 1mg/kg,14−36日は2日目ごと(群5)>muIgG2a 5mg/kg32−68日は2日目ごと(群4)>hIgG1 5mg/kg 32−68日は2日目ごと(群3)>hIgG1 1mg/kg 32−68日は2日目ごと(群2)。群2から4においては、平均腫瘍容積が、処理の終了後に程度の差はあれ再び増加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD38のアミノ酸44−66、82−94、142−154、148−164、158−170、192−206及び202−224からなる群から選択されるアミノ酸配列から本質的になる、CD38の単離されたエピトープ。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−116856(P2012−116856A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22417(P2012−22417)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2006−551957(P2006−551957)の分割
【原出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(594029230)モルフォシス・アクチェンゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】MORPHOSYS AG
【Fターム(参考)】