説明

抗IL−5抗体を投与するための方法

本発明は、一般に、IL−5および過剰な好酸球生産によって媒介される疾患の治療及び診断、より詳しくは、mAbs、Fabs、キメラおよびヒト化抗体に関する。より詳しくは、方法はそれを必要とするヒトの好酸球を低下させるために提供され、そして、その方法は前記ヒトに少なくとも一つの抗IL−5抗体から成る組成物を投与することを含み、そこにおいて、少なくとも一つの抗IL−5抗体は約1.03 ± 0.21 μg/mLの平均最大血漿濃度、約15.5 ± 2.7 μg/day/mLの曲線下面積の値、約16.2 ± 2.1 days から約 21.7 ± 2.8 daysの血清半減期を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、IL−5および過剰な好酸球生産によって媒介される疾患の治療の方法、および、これらの疾患の治療のために化合物を投与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
好酸球は、過敏性反応に伴うアレルギー性障害を肺組織に含んでいる多種多様な炎症性疾患状態の病因に関係した(Butterfield et al., In: Immunopharmacology of Eosinophils, H. Smith and R. Cook, Eds., p.151-192, Academic Press, London(1993))。顕著な例は喘息、すなわち、非特異的な気管支過敏症に導く気道の可逆的な閉塞によって特徴づけられる疾患である。この障害は、次に、気管支の粘膜のレベルでの慢性の炎症性反応、および、マクロファージ、リンパ球および好酸球による特徴的な浸潤の発生に依存する。好酸球は、疾患を代表する粘膜損傷を開始することにおいて中心的役割を果たすようである(Corrigan et al., Immunol. Today, 13:501-507(1992))。活性化された好酸球の増加した数は慢性喘息患者の血液、気管支の分泌物および肺実質において報告され、様々な肺機能試験により測定されるように、疾患の重症度は血液の好酸球数と相関する(Griffen et al., J. Aller. Clin. Immunol., 67:548-557(1991))。好酸球の増加した数は、しばしば脱顆粒反応の過程の中で、遅発型喘息反応を被っている患者の気管支肺胞洗浄(BAL)流体中にも回収され、好酸球数を減らすことは、通常、ステロイド治療の結果として、臨床症状における改善に関連している(Bousquet et al., N. Eng. J. Med., 323:1033-1039(1990))。
【0003】
インターロイキン5(IL−5)は、活発化されたCD4+Tリンパ球によって主に生じるホモ二量体糖タンパク質である。ヒトにおいて、IL−5は、主に好酸球の成長および分化を制御する役割を果たす。IL−5の上昇したレベルは、喘息患者の気管支肺胞洗浄中に検出される(Motojima et al., Allergy, 48:98(1993))。IL−5のために遺伝子導入されるマウスは、抗原性刺激の非存在下で末梢の血液および組織の著しい好酸球増加を示し(Dent et al., J. Exp. Med., 172:1425(1990))、抗ネズミIL−5モノクローナル抗体は、実験動物において、寄生虫感染およびアレルゲン曝露に関連した好酸球増加と同様に、マウスの血液および組織(Hitoshi et al., Int. Immunol., 3:135(1991))の好酸球増加を減らす効果を有することを示した(Coffman et al., Science, 245:308-310(1989), Sher et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 83:61-65(1990), Chand et al., Eur. J. Pharmacol., 211:121-123(1992))。
【0004】
副腎皮質ステロイドが喘息の好酸球数および他の炎症性の成分を抑制することに極めて有効であるにもかかわらず、重篤な喘息患者の、そして、より最近では、軽度から中度の喘息患者の両方における副作用について懸念がある。唯一の他の主要な抗炎症性薬物治療―クロモグリク酸(クロモリンナトリウムおよびネドクロミル)―は副腎皮質ステロイドよりかなり効果がなく、作用の正確なメカニズムはわかっていない。
【0005】
好酸球の主要な有用な機能は、寄生性蠕虫感染症(Klion AD, Nutman TB. J Allergy Clin Immunol 2004;113:307)およびおそらくいくつかのウイルスからの宿主の保護であると考えられる(Rothenberg ME, Hogan SP. Annu Rev Immunol 2006; 24:14774)。寄生虫の浸潤は循環系から感染部位まで好酸球の迅速な漸増を促し、ここで、それらは抗原の表示を含む様々なメカニズムによる免疫反応および炎症誘発性サイトカイン、ケモカイン、脂質媒体および細胞障害性顆粒タンパク質の分泌を開始及び促進する(Kariyawasam HH, Robinson DS. Semin Respir Crit Care Med 2006; 27: 11727 and Klion, et al.)。同種移植および腫瘍抗原は好酸球を活発化すること、及び、脱顆粒を起動させることもでき、そして、移植臓器の拒絶および悪性腫瘍に対する防御における好酸球の潜在的役割を示唆する(Munitz A, Levi-Schaffer F. Allergy 2004; 59: 26875)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
好酸球は多くの疾患症状と関連付けられる。好酸球からのサイトカインおよび他のエフェクター分子の不適当な分泌は、周辺組織に損傷および機能不全を引き起こす。好酸球浸潤および活性化から生じている末端器官の損傷は、アトピー性疾患および過好酸性症候群(HES)を含むいくつかの疾患状態に共通の病原性成分を表す。このように、それを必要とするヒトの好酸球を減らすのに、本発明の方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様において、方法はそれを必要とするヒトの好酸球を減らすために提供され、その方法は前記ヒトに少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる組成物を投与することを含み、そこにおいて、前記抗IL―5抗体は少なくとも約1.03±0.21μg/mLの前記抗IL−5抗体の平均最大血漿濃度を提供し、そして、前記抗IL−5抗体の曲線下面積の値は少なくとも約15.5±2.7μg/day/mLである。
【0008】
もう一つの態様では、方法は、それを必要とする前記ヒトに、前記抗体が重鎖および軽鎖からなる少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる組成物の有効量を投与するステップを含み、ヒトにおいて鼻ポリープ症を治療するために提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
I.定義
本明細書で用いられるとき、「抗IL−5抗体」は、任意の種からのサイトカインIL−5に結合する任意の抗体、抗体断片または単鎖抗体のことを指す。抗IL−5抗体は、ネズミの、キメラの、ヒト化された、または完全なヒトのでもよい。抗体は、中和していてもよい。抗IL−5抗体のいくつかの例は、米国特許番号5,683,892, 5,693,323, 5,783,184, 5,851,525, 6,129,913, 5,096,071, 6,056,957 及び 6,451,982に記載されており、本願明細書において、それらの全部の参照によって組み込まれる。加えて、ヒト化された抗IL−5抗体は、さまざまな参考文献に記載されていて、レリズマブ(SCH55700)及びメポリズマブ(SB240563)を含む(Greenfeder, et al., Respiratory Research, 2(2):71-79(2001))。メポリズマブ(SB240563)は、ヒト・インターロイキン−5(IL−5)に特異的な完全にヒト化されたモノクローナル抗体(IgG,kappa, mAb)である。
【0010】
「改変された抗体」とは、選択された宿主細胞における発現によって得られることができる、改変された免疫グロブリン・コード領域によってコード化されるタンパク質をいう。このような改変された抗体は、免疫グロブリン定常領域(例えば、Fv、FabまたはF(ab)2など)の全部または一部を欠失している、設計された抗体(例えば、キメラであるかヒト化された抗体)または抗体断片である。
【0011】
「改変された免疫グロブリン・コード領域」とは、本発明の改変された抗体をコード化している核酸配列をいう。改変された抗体がCDRを融合するかヒト化された抗体であるときに、非ヒトの免疫グロブリンから相補性決定領域(CDR)をコード化する配列はヒト可変フレームワーク配列からなる第1の免疫グロブリン・パートナーに挿入される。選択的に、第1の免疫グロブリン・パートナーは、第2の免疫グロブリン・パートナーに有効に連結される。
【0012】
「第1の免疫グロブリン・パートナー」とは、または自然の(または自然に生じる)CDRをコード化している領域がドナー抗体のCDRをコード化している領域に置き換えられる、ヒトのフレームワークまたはヒト免疫グロブリン可変領域をコード化している核酸配列をいう。ヒト可変領域は、免疫グロブリン重鎖、軽鎖(または両方のチェーン)、類似体またはその機能的な断片でありえる。抗体(免疫グロブリン)の可変領域内に位置する、このようなCDR領域は、従来技術において周知の方法により決定されることができる。例えば、Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health(1987))は、CDRの位置を決めるためのルールを開示する。加えて、CDR領域/構造を特定するために有用なコンピュータープログラムも知られている。
【0013】
「中和すること」とは、その特異的なレセプタ−へのヒトIL−5の結合を阻害することによって、または、そのレセプタによるIL−5の信号を阻害することによって、IL−5活性を阻害する抗体が結合を生じることをいう。B13細胞生物検定(IL−5中和分析、実施例2C参照)において測定されるIL−5活性を阻害することにおいて、90%有効、好ましくは、95%有効、最も好ましくは100%有効である場合に、mAbは中和する。
【0014】
「高い親和性」という用語は、光学バイオセンサ−分析によって決定されるヒトIL−5の3.5x10−11 M以下のKdによって特徴づけられる結合親和性を有する抗体をいう。
【0015】
「ヒトIL−5への結合特異性」によって、ネズミでないヒトIL−5に対する高い親和性を意味する。
【0016】
「第2の免疫グロブリン・パートナー」とは、第1の免疫グロブリン・パートナーがフレームで、または、任意の従来のリンカー配列の方法によって融合された(すなわち、有効に連結された)タンパク質またはペプチドをコード化している他のヌクレオチド配列をいう。好ましくは、それは、免疫グロブリン遺伝子である。第2の免疫グロブリン・パートナーは、同じ(すなわち、同種性の−第1および第2の改変された抗体は、同じ供給源に由来する)または関心のある追加の(すなわち、異種性の)抗体の全ての定常領域をコード化している核酸配列を含むことができる。それは、免疫グロブリン重鎖または軽鎖(または単一のポリペプチドの一部としての両方の鎖)でもよい。第2の免疫グロブリン・パートナーは、特定の免疫グロブリン・クラスまたはアイソタイプに限定されない。加えて、第2の免疫グロブリン・パートナーは、例えば、FabまたはF(ab)(すなわち、適切なヒト定常領域またはフレームワーク領域の別々の部分)において見られるような免疫グロブリン定常領域の一部からなることができる。このような第2の免疫グロブリン・パートナーは、例えば、ファージ表示ライブラリの一部として宿主細胞の外面に露出する統合された膜タンパク質をコード化している配列、または、分析または診断の検出のためのタンパク質(例えば、セイヨウワサビのペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、など)をコード化する配列からなることもできる。
【0017】
Fv、Fc、Fd、FabまたはF(ab)という用語は、それらの標準的な意味で用いられる(例えば、Harlow et al., Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)参照)。
【0018】
本明細書で用いられるとき、「設計された抗体」は一種の改変された抗体、すなわち、完全長の合成抗体(例えば、抗体断片と対立する、キメラまたはヒト化された抗体)をいい、そこで、選択されたアクセプター抗体の軽鎖または重鎖可変ドメインの一部は、選択されたエピトープに特異性を有する一つ以上のドナー抗体から、類似した部分と置き換えられる。例えば、このような分子は、改変されていない軽鎖(またはキメラ軽鎖)に関連したヒト化された重鎖によって特徴づけられる抗体を含むことができ、逆もまた同じである。設計された抗体は、ドナー抗体の結合特異性を保持するために、アクセプター抗体の軽鎖および/または重鎖可変ドメイン・フレームワーク領域をコード化している核酸配列の改変によって、特徴づけられることもできる。これらの抗体は、本願明細書において記載されているドナー抗体からのCDRを有するアクセプター抗体からの一つ以上(好ましくは全て)のCDRの置換体からなることができる。
【0019】
「キメラ抗体」とは、アクセプター抗体から誘導された軽鎖または重鎖の定常領域に関連して、ドナー抗体から誘導される自然に発生する可変領域(軽鎖および重鎖)を含む一種の設計された抗体をいう。
【0020】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト・ドナー免疫グロブリンから誘導されるCDR、1つの(またはさらに多くの)ヒト免疫グロブリンから誘導されている分子の残留する免疫グロブリンから誘導された部分、を有する一種の設計された抗体をいう。加えて、フレームワーク・サポート残基は、結合親和性を保存するために改変されてもよい(例えばQueen et al., Proc. Natl Acad Sci USA, 86:10029-10032(1989), Hodgson et al., Bio/Technology, 9:421(1991)参照。)
【0021】
用語「ドナー抗体」は、改変された免疫グロブリン・コード領域および結果として生じる発現された改変抗体に、ドナー抗体に特徴的な抗原性特異性および中和活性を提供するように、第1の免疫グロブリン・パートナーにその可変領域、CDRまたは他の機能的な断片またはそれらの類似体の核酸配列を与える抗体(モノクローナルな、または、組み換えの)をいう。本発明における使用に適している1つのドナー抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)Rockville, MD, USAに、アクセッション番号HB11783として寄託された、2B6として指定される、非ヒト(すなわち、ネズミの)モノクローナル抗体である。抗体2B6は、高親和性であり、ヒトIL−5に特異的であり(すなわち、ネズミIL−5を認識しない)、アイソタイプIgG1の抗体を中和し、適切なネズミIgG定常領域に、それぞれ配列番号2及び16の可変的な軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列、それぞれ配列番号1及び15の可変的な重鎖のDNAおよびアミノ酸配列を有しているとして定義される。
【0022】
「アクセプター抗体」という用語は、第1の免疫グロブリン・パートナーにその重鎖および/または軽鎖フレームワーク領域および/またはその重鎖および/または軽鎖定常領域をコード化している核酸配列の全て(または部分、しかし、好ましくは全て)を与える、ドナー抗体に異種性である抗体(モノクローナルな、または、組み換えの)をいう。好ましくは、ヒト抗体は、アクセプター抗体である。
【0023】
「CDR」は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の過剰に可変的な領域である抗体の相補性を決定する領域のアミノ酸配列として定義される。例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health(1987)、参照。3つの重鎖および3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)が、免疫グロブリンの可変的な部分にある。従って、「CDR」は、本明細書で用いられるとき、全ての3つの重鎖CDRまたは全ての3つの軽鎖CDR(または、適切であれば、全ての重鎖及び全ての軽鎖CDRの両方)をいう。
【0024】
CDRは、大多数の接触残基を抗原またはエピトープに対する抗体の結合に提供する。本発明における関心のCDRは、ドナー抗体の可変重鎖および軽鎖配列に由来して、自然に生じるCDRの類似物を含み、そして、その類似体も、それらが由来するドナー抗体と同じ抗原結合特異性および/または中和能力を共有するかまたは保持する。
【0025】
「抗原を結合している特異性を共有すること、または、能力を中和すること」は、例えば、mAb 2B6(米国特許番号5,683,892、5,693,323、5,783,184、5,851,525および6,129,913を参照)が抗原親和性の特定のレベルによって特徴づけられることができるにもかかわらず、適切な構造環境の2B6の核酸配列によってコード化されるCDRが、より低いか、または、より高い親和性を有することができることを意味する。それにもかかわらず、このような環境の2B6のCDRが、2B6と同じエピトープを認識することが期待される。典型的な2B6の重鎖CDRには、配列番号7、配列番号8、配列番号9が含まれ、典型的な2B6の軽鎖CDRには、配列番号10、配列番号11、配列番号12が含まれる。
【0026】
「機能的な断片」は、その断片が由来する抗体と同じ抗原結合特異性および/または中和能力を保持する部分的な重鎖または軽鎖の可変配列(例えば、免疫グロブリン可変領域のアミノのまたはカルボキシ末端の軽微な削除)である。
【0027】
「類似体」は少なくとも一つのアミノ酸によって変更されるアミノ酸配列であり、前記変更は化学的であるかまたは2、3のアミノ酸(すなわち、10以下)の置換または配置転換であり、その変更は、変更されていない配列の生物学的特徴(例えば、抗原特異性および高い親和性)をそのアミノ酸配列に保持することを許す。例えば、置換により(サイレントな)突然変異は構築されることができ、そのとき、特定のエンドヌクレアーゼ制限部位はCDRをコード化している領域の中、または、その周辺で形成される。
【0028】
類似体は、対立遺伝子の変異としても生じる。「対立遺伝子の変異または変更」は、本発明のアミノ酸またはペプチド配列をコード化している核酸配列の改変である。このような変異または変更は、遺伝コードの変質に起因することができるかまたは所望の特徴を提供するために、故意に設計されることができる。これらの変異または変更は、任意のコード化されたアミノ酸配列の改変という結果になる場合があるかまたはならない場合がある。
【0029】
用語「エフェクター物質」は非タンパクのキャリア分子を指し、改変された抗体、および/または、ドナー抗体またはドナー抗体の他の断片の天然または合成の軽鎖または重鎖は、従来の手段によって結合されることができる。このような非タンパク質キャリアは診断分野にて用いられる通常のキャリア、例えば、ポリスチレンまたは他のプラスチックビーズ、例えばBIAcore[Pharmacia]系において用いられるポリサッカライド、または医薬分野にて有用で、ヒトおよび動物への投与が安全な他の非タンパク質物質を包含することができる。他のエフェクター物質は、重金属原子をキレート化するための長期性または放射性アイソトープを含む。このようなエフェクター物質、例えばポリエチレングリコールは、改変された抗体の半減期を増加させることについても有用であるかもしれない。
【0030】
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合または変更されたペプチド結合(すなわち、ペプチド同配体)によって互いに結合される2つ以上のアミノ酸からなる任意のペプチドまたはタンパク質をいう。「ポリペプチド」は、ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマと称される短い鎖、および一般的にタンパク質と称されるより長い鎖の両方を意味する。ポリペプチドは、20の遺伝子コードのアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。「ポリペプチド」は、自然なプロセス(例えば翻訳後処理)によって、または、公知技術である化学的修飾技術によって修正されるアミノ酸配列を含む。このような変更は、膨大な研究論文と同様に、基本テキスト、および、より詳細な専攻論文においてよく記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシ末端を包含するポリペプチドのどこでも生じ得る。変更の同じタイプが所与のポリペプチドのいくつかのサイトで同じまたは異なる程度に存在してもよいことはいうまでもない。また、所与のポリペプチドは、多くの種類の変更を含むことができる。ポリペプチドはユビキチン結合の結果として、分岐することができ、分岐の有無にかかわらず、それらは環状でもよい。環状、分岐および分岐した環状ポリペプチドは翻訳後の天然プロセスにより生じたものであってもよく、または合成法により製造されたものであってもよい。変更は、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導剤の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性交差結合の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ―カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、転移RNAによって媒介されるアミノ酸のタンパク質への付加(例えばアルギニン化)、および、ユビキチン結合を含む。例えば、PROTEINS-STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993 and Wold, F., Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs. 1-12 in POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, 1983; Seifter, et al., “Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors”, Meth. Enzymol.(1990) 182:626-646及びRattan, et al., “Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging”, Ann NY Acad Sci(1992)663:48-62、参照。
【0031】
用語としての「変異体」は、本願明細書において使われるとき、それぞれ基準のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと異なるが、基本的特性を保持するポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。ポリヌクレオチドの典型的変異体は、ヌクレオチド配列において、もう一方の基準のポリヌクレオチドとは異なる。変異体のヌクレオチド配列の変化は、基準のポリヌクレオチドによってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列を変えてもよいし、または変えなくてもよい。ヌクレオチド変化は、後述するように、基準の配列によってコード化されるポリペプチドのアミノ酸の置換、付加、削除、融合および切断という結果になる場合があってもよい。典型的なポリペプチドの変異体は、別の基準のポリペプチドとはアミノ酸配列が異なってもよい。通常、基準のポリペプチドと変異体の配列は全体的にきわめて類似し、また、多くの領域において同一であるように、違いは限定される。変異体および基準のポリペプチドは、アミノ酸配列において、任意の組合せにおける一つ以上の置換、付加、削除によって異なってもよい。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコード化されるものでもよく、または、そうでなくてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は、例えば、対立遺伝子の変異体のように、自然に発生していてもよく、または、自然に発生することは公知でない変異体でもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの非自然的に生じる変異体は、突然変異誘発技術によって、または、直接合成によって製造されてもよい。
【0032】
本明細書で用いられるとき、「還元する」または「還元する」好酸球とは、少なくとも一つの抗IL−5抗体の投与後の患者の血液中において観察される好酸球の量の減少をいう。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「併合投与」または「併合投与すること」とは、同じ患者に対する2つ以上の化合物の投与をいう。このような化合物の併合投与は、同時、または、ほぼ同時(例えば、同じ時間の範囲内)、または、各化合物の投薬計画に応じて、互いに、数時間、数日、数週または数月以内であってもよい。例えば、第2の化合物が毎日、併合投与される間に、第1の化合物は1週間に1回投与されてもよい。他の例として、1つの化合物が毎日投与され、他の化合物が3ヵ月毎に1回投与される場合、化合物は併合投与されてもよい。
【0034】
本明細書で用いられるとき、「最大血漿濃度」または「Cmax」は、物質の哺乳類への投与の後、哺乳類の血漿中の物質(例えば、少なくとも一つの抗IL−5抗体)の最高に観察された濃度を意味する。
【0035】
本明細書で用いられるとき、「Area Under Curve」または「AUC」は、時間に対する血漿中の物質の濃度のプロット線の曲線下面積である。AUCは、時間間隔の間の瞬間的な濃度の積分の計測であり、mass*time/volumeの単位を有する。AUCは、台形差分法(例えば、線形、線形ログ)によって、通常、算出される。AUCは、通常、時間間隔0から無限の間に与えられ、そして、他の時間間隔が示される(例えば、t1およびt2が間隔の出発および終了であるときのAUC(t1,t2))。従って、本明細書で用いられる「AUC0−24」は24時間にわたるAUCを指し、そして、AUC(0-inf)は無限の時間にわたるAUCを指す。
【0036】
本明細書で用いられるとき、「Tmax」とは、その物質の哺乳類への投与の後、哺乳類の血漿中の物質の最大濃度に達するまでに観察された時間をいう。
【0037】
本明細書で用いられるとき、「血清または血漿半減期」とは、新陳代謝されるかまたは通常の生物学的プロセスによって哺乳類の血清または血漿から除去されて、哺乳類に投与される物質の半分の量になるために必要とされる時間を意味する。
【0038】
本明細書で用いられるとき、「過剰な好酸球産生に伴う障害」は、異常な症状が好酸球の産生により現れることができる任意の障害または疾患を意味する。過剰な好酸球産生に伴う障害としては、これらに限定されないが、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、非アレルギ鼻炎、喘息、重度の喘息、慢性好酸性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、腹腔疾患、チャーグ・シュトラウス症候群(多発動脈炎プラス・アトピー)、好酸性筋肉痛症候群、過好酸性症候群、偶発性血管性浮腫を含む浮腫の反応、蠕虫感染症(ここで、好酸球が保護的な役割を有することができる)、オンコセルカ皮膚炎、好中球に関連する胃腸疾患を包含し、そして、これらに限定されないが、好酸性食道炎、好酸性胃炎、好酸性胃腸炎、好酸性腸炎および好酸性大腸炎、鼻マイクロ・ポリープ症およびポリープ症、アスピリン不耐性、喘息および閉塞性睡眠時無呼吸が含まれる。好酸球に由来する分泌製品は、腫瘍の脈管形成および結合組織形成の促進および条件、例えば、慢性喘息、クローン病、硬皮症および心内膜心筋線維症に示す線維症反応とも関係していた。(Munitz A, Levi-Schaffer F. Allergy 2004; 59: 26875, Adamko et al. Allergy 2005; 60: 1322, Oldhoff, et al. Allergy 2005; 60: 6936).
【0039】
本発明の方法によって誘発される治療的な反応は、ヒトIL−5に対する抗IL−5抗体上の結合によって生じ、その後、好酸球刺激を防いでいる。従って、本発明の方法はアレルギーおよび/またはアトピー反応、または、好酸球増加と関連した反応を経験している人にたいへん望ましい。
【0040】
本発明の一つの態様において、方法はそれを必要とするヒトの好酸球を減らすために提供され、その方法は前記ヒトに少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる組成物を投与することを含み、少なくとも一つの抗IL−5抗体が約1.03±0.21μg/mLの平均最大血漿濃度の前記抗IL−5抗体を提供し、曲線下面積の値が少なくとも約15.5±2.7μg/day/mLである。最大血漿濃度は、約12.1±2.4μg/mLから約278±29μg/mLの範囲であってもよい。AUCは、約207±34μg/日/mLから約4361±168μg/日/mLの範囲であってもよい。さらに、前記少なくとも一つの抗IL−5抗体は、16.2±2.1日から約21.7±2.8日の血清半減期を有する。
【0041】
別の態様においては、少なくとも一つの抗IL−5抗体は、ヒトIL−5に対するものである。別の態様においては、少なくとも一つの抗IL抗体は中和している。本発明の抗IL−5抗体は、ヒト化された、完全にヒト、ネズミまたはその任意の抗−IL−抗体の断片でもよい。別の態様においては、少なくとも一つの抗IL−5抗体は、配列番号19の重鎖からなり、また、少なくとも一つの抗IL−5抗体は、配列番号21の軽鎖からなる。
【0042】
本発明の別の態様では、ヒトは、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、喘息、重度の喘息、慢性好酸性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、腹腔疾患、チャーグ・シュトラウス症候群、好酸性筋肉痛症候群、過好酸性症候群、偶発性血管性浮腫を含む浮腫、蠕虫感染症、オンコセルカ皮膚炎、好酸性食道炎、好酸性胃炎、好酸性胃腸炎、好酸性腸炎、好酸性大腸炎、鼻マイクロ・ポリープ症、鼻ポリープ症、アスピリン不耐性喘息、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性喘息、クローン病、硬皮症および心内膜心筋線維症からなるグループから選択される過剰な好酸球産生に伴う障害を患っている。
【0043】
本発明の別の態様において、少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる組成物は皮下に投与され、それは250mgの投与量であることができる。皮下投与量は、ヒトに対して1〜3回またはそれ以上、投与されることができる。皮下注入からの前記少なくとも一つの抗IL−5抗体の平均血漿濃度は、約34.1±12.1μg/mLから約38.2±9.1μg/mLであることができる。
【0044】
本発明の別の態様では、抗IL−5抗体からなる前記組成物が筋肉内に投与される方法が提供される。少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる組成物の筋内注入は、250mgの投与量で投与されることができる。筋内注射からの前記少なくとも一つの抗IL−5抗体の平均血漿濃度は約46.9±10.6μg/mLであり、また、前記少なくとも一つの抗IL−5抗体のAUCは約1395±348μg/日/mLでもよい。
【0045】
本発明の更に別の態様において、前記少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物が静注で投与される方法が提供される。静注で投与される抗IL−5抗体は750mgの投与量に250mgの投与量で投与されることができる。そして、それは20−60分または約30分のコースにより投与されることができる。静注で投与される前記少なくとも一つの抗IL−5抗体の平均血漿濃度は、約109±17.0μg/mLであり、また、前記少なくとも一つの抗IL−5抗体のAUCは約1557±250μg/日/mLでもよい。
【0046】
本発明も方法は、それを必要とするヒトの好酸球を減らすための方法を提供し、それは、第1の抗IL−5抗体および第2の抗IL−5抗体からなる組成物を投与することからなる。少なくとも一つの抗IL−5抗体がステロイドとともに併合投与される方法も、本願明細書において提供される。
【0047】
また、それを必要とする前記ヒトに、重鎖および軽鎖からなる少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる組成物の有効量を投与するステップからなる鼻ポリープ症をヒトに治療する方法が本願明細書において提供される。いくつかの態様において、抗体は、配列番号19からなる重鎖および/または配列番号21からなる軽鎖からなる。別の態様においては、鼻ポリープ症は、重症性である。
【0048】
一つの態様において、前記ヒトの少なくとも一つの鼻ポリープのサイズは、少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物の少なくとも一回の投与後に低下する。前記少なくとも一つの鼻ポリープのサイズは、少なくとも2ヵ月間、低下し続ける。少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物の投与は、前記ヒトの鼻ポリープ症の手術の必要性を低下または消失させることができる。
【0049】
別の態様においては、鼻ポリープをもつヒトは、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、喘息、重度の喘息、慢性好酸性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、腹腔疾患、チャーグ・シュトラウス症候群、好酸性筋肉痛症候群、過好酸性症候群、偶発性血管性浮腫を含む浮腫、蠕虫感染症、オンコセルカ皮膚炎、好酸性食道炎、好酸性胃炎、好酸性胃腸炎、好酸性腸炎、好酸性大腸炎、鼻マイクロ・ポリープ症、アスピリン不耐性喘息、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性喘息、クローン病、硬皮症および心内膜心筋線維症からなるグループから選択される過剰な好酸球産生に伴う障害を患っている。少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる組成物は、第1の抗IL−5抗体と第2の抗IL−5抗体とを含んでいる。少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる組成物は、ステロイドによって併合投与されることができる。少なくとも一つの抗IL−5抗体は、約30分にわたる750mgとして静注で投与されることができる。
【0050】
当業者は、本願明細書において記載されている薬物動態学的および(これに限定されないが、例えば、Cmax、AUC、Tmax、血清半減期)薬力学的(これに限定されないが、例えば、好酸球レベル)パラメータを測定し算出するさまざまな方法を理解するであろう。さらにまた、当業者は、統計比較(これに限定されないが、例えば、ベースラインから治療後への変化の比較および/または治療群間の比較)を行うためのさまざまな方法、および/または、本願明細書において記載されている薬物動態学的および薬力学的パラメータの分析を理解するであろう。
【0051】
実施例
以下の実施例は、本発明のさまざまな態様を例示する。これらの実施例は、添付の請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定しない。
【0052】
実施例1−健常なボランティアにおける抗IL−5抗体の薬物動態
正常なボランティアにおける薬物動態は、以下の皮下(sc)、筋肉内(im)および静脈内(iv)投与によって評価された。この研究の目的は、iv投与量と比較して3つの異なるscサイトおよびimサイトからメポリズマブ(本願明細書において記載されているヒト化、抗-IL−5抗体)の一回の250mgの投与量の生物学的利用能を評価すること、および、健常なボランティアにおけるメポリズマブの安全性および許容度、および、好酸球数に関する効果の予備的な評価を行うことであった。これは、公開の、一回の投与量の、平行群調査であった。ヒト被験者は、表1に示されるように、メポリズマブの投与量を受けるために割り当てられた。
【0053】
【表1】

【0054】
各ヒト被験者は、試験薬物(メポリズマブ)の1つの投与量を受けて、メポリズマブおよび好酸球数の分析のために、間隔をおいて血液サンプルが採取される12週間が続いた。
【0055】
60の健常な被験者、18〜55歳、23人の男性および37人の女性は、グループ当たり12の評価可能な被験者を達成するために集められた。1つの性の少なくとも4人が、各投与量グループに集められた。各250mgのsc投与量は、メポリズマブの2×125mg(2×1ml)の注射として投与され、im投与量は、1×250mg(1×2ml)の注射として投与され、iv投与量はほぼ30分にわたる注入として投与された。
【0056】
連続血液サンプルは、投与前、および、名目上、メポリズマブの投与後、12週まで収集された。血漿サンプルは、免疫測定法を用いて、メポリズマブについて分析された(10%のヒト血漿の0.1mLの等分に対して、計量の下限[LLQ]0.05μg/mL)。ノン-コンパートメントの薬物動態学的分析は、メポリズマブのパラメータAUC(0-inf)、Cmax、TmaxおよびT1/2を導き出すために用いられた。
【0057】
30分のiv注入の後、メポリズマブ血漿濃度は、見かけ上、双指数関数的に減少した。30分の注入の始まりに比較して、Tmaxは、0.5から4時間を範囲とした。
【0058】
3つの異なるサイトにおける大量瞬時投与sc注入および大量瞬時投与im注入の投与後、平均メポリズマブ血漿濃度-時間プロフィールは、形において同様だった。しかしながら、全体として、平均血漿濃度は、im投与後、より高かった。Tmax値が2と14日の間で変動するとともに、メポリズマブは、ゆっくり吸収された。表2は、メポリズマブのPKパラメータを要約する。
【0059】
【表2】

【0060】
実施例2−軽度から中度のアトピー性喘息患者
多施設による、二重盲検の、無作為化された、プラセボ対照研究は、軽度のアトピー性喘息をもつ男性(18〜46歳)において実施された(70%以上で予測される1秒努力呼気肺活量[FEV]であり、β2―作用薬に関して)。この研究において使用する開始量(0.05mg/kg)は、2投与量毒性試験において、カニクイザルに投与される最も低い投与量(0.05、0.5、5または50mg/kg IV、n=2/性別/群)であり、他の投与量は、基準になる好酸球数の85%以上の減少が観察された同じ毒性研究において最も低い投与量(すなわち、5mg/kg)に基づいた。薬物動態学的パラメータは、メポリズマブ0.05mg/kg(n=4)、0.5mg/kg(n=5)、2.5mg/kg(n=8)または10mg/kg(n=8)の単一の、30分の静注の後、評価された(表3)。血漿メポリズマブ濃度は、注入後、双指数関数的に減少し、Cmax(平均±SD)は、0.05mg/kgの投与量レベルで1.03±0.21μg/mLから、10mg/kgの投与量レベルで215±28μg/mLの範囲にあり、Tmaxは、0.5〜3時間で発生した。定常状態の血漿クリアランスおよび分布容積は投与量範囲全体にわたって同様であり、線形の薬物動態を示した。患者間の変動が、血漿濃度−時間曲線(AUC)またはCmaxの下の領域にほとんどなかった(変動係数は、通常、20%より小さかった)。平均(±SD)終末半減期は、投与量全体にわたって比較的一定であり、10mg/kgで19.0±2.5日から、0.5mg/kgで20.0±1.9日の範囲にあり、メポリズマブは、大多数の被験者において投与後16週間まで、血漿において定量可能だった。(表3)薬力学に関して、メポリズマブは周辺好酸球の持続的な投与量に依存する減少と関係し、それはすべての投与量で明らかであり、10mg/kgの投与量における患者の16週での最終的なフォローアップ視察まで維持された。
【0061】
【表3】

【0062】
類似の薬物動態は、メポリズマブ0.5mg/kg(n=4)、2.5mg/kg(n=4)または10mg/kg(n=4)の単一のIV注入を受けた、軽度の喘息をもつ男性(18〜43歳)の更なる二重盲検の、無作為化された、プラセボ対照研究について報告された(FEV1>64%に予測され、4001000μg/日で吸入された副腎皮質ステロイドの存在下または非存在下のβ2―作用薬において)。基準線と関連する周縁好酸球数の持続および投与量に依存する減少は、メポリズマブによって治療される大部分の患者において観察された(~85%の最大の減少が測定された)。好酸球抑制の持続は投与量の増加と共に増加し、好酸球数の最大の減少がCmaxのほぼ3〜4日後に発生した。
【0063】
複数の投薬後のメポリズマブの薬物動態は、多施設による、二重盲検の、無作為化されたプラセボ対照の平行群調査の一部として、喘息患者においても評価された。メポリズマブ250mg(n=120)または750mg(n=116)またはプラセボ(n=126)の3つの静注は、18〜55歳で、持続性の軽度の喘息を有する患者に1ヵ月の間隔で投与された(FEV5080%で予測され、吸入されたベクロメタゾン2プロピオン酸塩<1000μg/日または等価物によって管理されて)。投与量に比例し、時間に依存しない薬物動態は、この集団における繰り返し投薬により観察された。加えて、両方のメポリズマブ投与量は、基準線からほぼ80%で血液好酸球を低下させた(プラセボに対して、p<0.001)。この減少は、第1の注入の1週後に明瞭であり、最後の注入の後、12週間、維持された(20週まで)。誘導された痰は、37人の患者のサブグループにおいて調べられた。これは、痰好酸球数もメポリズマブ250mgおよび750mgによって減少することを示し、それは、第1の注入の4週間後に始まって、20週で最終的なフォローアップ観察まで続く。基準線から12週への減少は、メポリズマブ750mgにとって統計的に有意だった(p=0.013)。循環している、又は、痰の好酸球レベルのいずれも、プラセボ群において著しい変化はなかった。面白いことに、血液の好酸球の数の大きな減少は、気管支の粘膜または骨髄好酸球の平行した減少を伴わなかった。血液の減少が基準線からほぼ80%である間、気管支の粘膜の減少は基準線からほぼ50%であった。気道好酸球がIL−5にあまり依存しないか、または、気管支の粘膜の好酸球の減少は処理のより長い期間を必要とするかもしれないことが考えられる。
【0064】
時間に依存しない薬物動態は、メポリズマブの反復SC投与後、二重盲検の、プラセボ対照の、平行群調査においても観察された。軽度の喘息をもつ男性と女性(19〜50歳)は、メポリズマブ250mg(n=8)またはプラセボ(n=8)の3つのSC投与量を受けた。最初の2回の投与量は6週間隔で与えられ、3回目の投与量は2週間隔で与えられた。
【0065】
メポリズマブは、単一のiv投与量を受けているヒト被験者の大多数において、投与後16週間までの間、定量可能であった。2人の被験者は、これらの被験者において観察されるCmax値の1%未満であった時刻ゼロで、定量可能な濃度を有した。これらの定量可能な投与前の濃度は、AUC(0-inf)の計算のためにゼロにセットされた。
【0066】
他の一人の被験者は、2.5mg/kgの代わりにほぼ0.0877mg/kgの投与量を受けた。この被験者からのAUC、CmaxおよびTmaxデータは除外され、この被験者のCLおよびVss値は0.0877mg/kgの実際の投与量を用いて算出された。
【0067】
コンパートメント解析のために、まばらなサンプリングおよび定量不可能な濃度のためデータ・ポイントの数が限定された0.05mg/kgの投与量を除いては、2コンパートメントモデルは、濃度−時間プロフィールに適合するようであった。適合度は、一般に低い標準誤差によって明示された(パーセント変動係数[CV%]<35%)。コンパートメント解析によって生じるAUC(0-inf)、CLおよびVssデータは、通常、非コンパートメント解析からのデータとも、ほぼ一致した。血漿濃度−時間曲線の下の大部分の領域(一般に>90%)は、終末の局面と関係していた。最初および終末の局面の半減期の値は、それぞれ、約2および20日であった。
【0068】
実施例3−軽度のヒト喘息患者の単一の静注の比較
軽度の喘息をもつ男性に対する単一の30分のiv注入として0.5〜10mg/kgの投与量の投与後、メポリズマブは、投与量に比例したPKおよび約20日の長い消失半減期を示した(表4)。血漿クリアランスおよび定常状態の分布容積は、研究された投与量範囲にわたって比較的一定だった(表4)。メポリズマブのPKパラメータの患者間の変動性は低かった(20%以下のCV%値)。
【0069】
【表4】

【0070】
実施例4−軽度の喘息患者の皮下投与量
250mgの3つのsc投与量は、以下の療法を用いている軽度の喘息患者に投与された。第1および第2の投与量は、2週により隔てられた第2および第3の投与量とともに、6週により隔てられた。データは、メポリズマブが患者の他のグループに投与されるiv注入と比較して、外側腹壁へのsc注入の後、約50%の生物学的利用能を有することを示す。予想されるように、メポリズマブの長い終末の半減期(20日)と関連する3つの投与量の間の短い時間間隔(6および2週)に基づいて、第1の投与後と比較して、第3の投与後については、平均AUCおよびCmaxは、それぞれ、約65%および80%、より高かった。薬は、Tmax値が約2と14日の間で変動しながらゆっくり吸収された。メポリズマブの平均PKパラメータは、表5にまとめられる。
【0071】
【表5】

【0072】
第1の投与量の投与後の個々の濃度−時間のプロフィールは、一次の吸収を有する1コンパートメントモデルに適合した。平均パラメータ値は、この研究において使用される投薬療法の投与後、濃度-時間のプロフィールをシミュレーションするために用いられた。第3の投与後の予測された平均濃度は、観察された濃度の範囲の中に含まれ、時間に依存しない薬物動態を示唆する。
【0073】
実施例5
250mgまたは750mgのiv注入の3月毎の投与後、メポリズマブの血漿濃度は、すべての研究視察において、一般に定量可能であった。これらの予備データに基づいて、各視察のメポリズマブの平均血漿濃度は、250から750mgの間にほぼ投与量に比例した様式で増加した(表6)。各視察の実際の濃度の平均値は、以前の一回の投与量データ(表6)から測定される2―コンンパートメントiv注入モデルおよび薬物動態学的パラメータを使用してシミュレーションされた、予測された複数投与量-濃度データと類似していた。このように、メポリズマブは、投与量に比例し、時間に依存しない薬物動態を示す。
【0074】
【表6】

【0075】
実施例5−ヒト過好酸性症候群患者
750mgのiv注入の9月毎の投与(0〜32週)後、1人の患者のための1つの視察を除き、メポリズマブの血漿濃度は、採血された血液サンプルを有するすべてのヒト患者のすべての研究視察(投与後1日から)において定量可能であった。予備データに基づいて、平均濃度値は、約30分にわたるIV注入によって750mgのメポリズマブに続く、上記された以前の実施例の濃度と類似していた(表7)。各視察の実際の濃度の平均値は、2―コンパートメントiv注入モデルおよび以前の一回投与量データ(表7)から測定される薬物動態学的パラメータを用いてシミュレーションされた、予測された複数投与量-濃度データと類似していた。このように、HES患者におけるメポリズマブの薬物動態は、以前に見られた薬物動態と類似している。
【0076】
【表7】

【0077】
実施例6−薬物動態学的/薬力学的な関係
0.5〜10mg/kgのivメポリズマブの投与後、基準線と比較して周縁好酸球数の持続的および投与量に依存する減少は、メポリズマブを受けた大多数の患者において観察された。細胞数の抑制の持続は、投与量の増加と共に増加した。細胞数の最大限の低下は、最大血漿濃度が達成された約3〜4日後に生じた。%基準線の好酸球数とメポリズマブの血漿濃度の関係は、合成(製造)率定数の抑制を有する間接的な薬理的反応モデルを用いて適切に記載されていた。メポリズマブの投与後の好酸球数の測定された最大の減少は基準線から約85%であり、好酸球数に対する最大半減効果(IC50)という結果をもたらす薬の濃度は約0.4°μg/mLであった。
【0078】
実施例7−鼻ポリープをもつヒト患者
合理性:鼻ポリープの90%は、顕著な好酸球増加によって特徴付けられる。IL−5は好酸球の分化および生存性の鍵であり、その拮抗作用は鼻ポリープをもつ患者に対する潜在的な新規な治療方法である。
【0079】
方法:重症の鼻ポリープ症(ランク3〜4)を有する30人の被験者は、750mgのメポリズマブ、ヒト化抗インターロイキン―5モノクローナル抗体(n=20)またはプラセボ(n=10)のいずれの2つの一回IV注射(28日間隔で)も受けるために、二重盲検方法で無作為化された。鼻ポリープ・スコア、および、比較の鼻ポリープ・スコアの変化は、最後の投与後、1および2月(週8および12)において、基準線(週0)に比較して評価される。これらの内視鏡による評価の1ポイントの減少は、臨床的に重要であるとみなされる。
【0080】
結果:基準線値の違いは、メポリズマブとプラセボの間に観察されなかった。重要な減少は、週8(60%対10%、p=0.011)および週12(65%対20%、p=0.025)にメポリズマブ対プラセボを有する鼻ポリープ・スコアにおいて観察された。メポリズマブ上の65%の被験者は、週8までのプラセボ上における10%およびメポリズマブにおける70%、対、週12のプラセボにおける20%を比較して、「非常によりよく」または「よりよく」比較の鼻ポリープ・スコアの改善を示した。メポリズマブにおける被験者の50%以上は、週8までに3人の独立した観察者によってCTスキャンの盲目評価における改善を示した。手術の要求も、週12までに、メポリズマブの群の手術を要請している15%の被験者、対、プラセボの群の50%により、メポリズマブの群において低下した。個々の反応および反応の大きさは、解析される終了点全体にわたって維持される。
【0081】
結論:メポリズマブの750mgのivの2つの投与量は、最初の投与後少なくとも2月の間の大きさおよび体積を低下させる。IL−5拮抗作用は、重症のポリープ症を有する被験者の潜在的な新しい治療の選択肢である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とするヒトの好酸球を低下させる方法であって、前記ヒトに少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる組成物を投与することを含み、ここで前記抗IL−5抗体が、少なくとも約1.03の±0.21μg/mLの前記抗IL−5抗体の平均最大血漿濃度を提供し、前記抗IL−5抗体の曲線下面積の値が15.5の±2.7μg/日/mLである方法。
【請求項2】
前記平均最大血漿濃度が、約12.1±2.4μg/mLから約278±29μg/mLの範囲である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記AUCが約207±34μg/日/mLから約4361±168μg/日/mLの範囲である、請求項3の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体がヒトIL−5に対するものである、請求項1の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つの抗IL抗体が中和している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体がヒト化されている、請求項1の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体が配列番号19からなる重鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体が配列番号21からなる軽鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体が配列番号19からなる重鎖、及び、配列番号21からなる軽鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ヒトが、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、喘息、重度の喘息、慢性好酸性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、腹腔疾患、チャーグ・シュトラウス症候群、好酸性筋肉痛症候群、過好酸性症候群、偶発性血管性浮腫を含む浮腫性反応、蠕虫感染症、オンコセルカ皮膚炎、好酸性食道炎、好酸性胃炎、好酸性胃腸炎、好酸性腸炎、好酸性大腸炎、鼻マイクロ・ポリープ症、鼻ポリープ症、アスピリン不耐性喘息、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性喘息、クローン病、硬皮症および心内膜心筋線維症からなる群から選択される過剰な好酸球産生に伴う障害を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物が皮下に投与される、請求項1の方法。
【請求項12】
少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物が250mgの投与量で投与される、請求項11の方法
【請求項13】
前記皮下投与量が1〜3回、投与されるものである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体の平均血漿濃度が約34.1±12.1μg/mLから約38.2±9.1μg/mLである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体のAUCが約1110±372μg/日/mLから約1196±254μg/日/mLである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
抗IL−5抗体からなる前記組成物が筋肉内に投与される、請求項1の方法。
【請求項17】
少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物が250mgの投与量で投与される、請求項16の方法
【請求項18】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体の平均血漿濃度が約46.9±10.6μg/mLであり、前記少なくとも一つの抗IL−5抗体のAUCが約1395±348μg/日/mLである、請求項17の方法。
【請求項19】
抗IL−5抗体からなる前記組成物が静注で投与される、請求項1の方法。
【請求項20】
少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物が250mgの投与量で投与される、請求項19の方法
【請求項21】
少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物が750mgの投与量で投与される、請求項19の方法
【請求項22】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体が約30分の注入により投与される、請求項19の方法。
【請求項23】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体の平均血漿濃度が約109±17.0μg/mLであり、前記少なくとも一つの抗IL−5抗体のAUCが約1557±250μg/日/mLである、請求項19の方法。
【請求項24】
前記少なくとも一つの抗IL−5抗体が16.2±2.1日〜21.7±2.8日の血清半減期を有する、請求項1の方法。
【請求項25】
少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物が第1の抗IL−5抗体および第2の抗IL−5抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも一つの抗IL−5抗体からなる前記組成物がステロイドによって併用投与される、請求項1の方法。

【公表番号】特表2010−526087(P2010−526087A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506602(P2010−506602)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/062015
【国際公開番号】WO2008/134721
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】