説明

折りたたみ脚付き家具用ロック装置

【課題】 支持脚の折りたたみ操作とロック解除操作とが容易になるようにする。ロックレバーの周縁を断面水平にしてレバーと支杆の摩耗を小さくし、支杆の摺動時にガタを生じないようにし、しかもロック性を高めるとともに堅牢にし、かつ容易および安価に製造できるようにする。
【解決手段】 天板1との間に支杆頂部2が摺動する通過路3を有するレール4を断面コ字状に形成する。通過路3の両端に支杆頂部2の第1および第2係止部5、5´を形成する。レール4の外向端近傍に断面コ字状のレバー6を外嵌するとともに回動自在に取付ける。レバー6を常時は閉方向に付勢する。レバー6の両側板60、60の各内向端から支杆頂部2により排除される斜縁を凸弧状に形成する。凸弧部61、61に連続するとともに第1の係止部5に対応する位置に支杆頂部2の嵌入溝62、62を凹設する。レバー6の下面板63の外端を延出して押え片64を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は幼稚園、保育所、小学校等の子供用施設で用いられるテーブル等、特に天板を有する家具における折りたたみ可能な脚のロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から実公昭61−32507号実用新案公報で示されている家具用折りたたみ脚のロック装置が知られている。これは本願出願人のもので、製造および販売に及んだものである。
【0003】
この従来品は図7、8で示すように天板a裏面の端部に1対のコ字状脚11aを回動自在に取付け、ハンガー状の支杆20aの各先端をコ字状脚11aの中途に回動自在に取付け、前記コ字状脚11aの伏倒時には前記支杆の頂部2aを細長板4aの端に形成した第2の受部5a´で係止し、前記コ字状脚11aの起立時にはコ字状脚11aを天板1aの外端方向に回動する。
【0004】
このため支杆20aの頂部2aは前記細長板4a内で、しかも天板1aに接して天板1a端方向に摺動し、第1の受部5aに係止される。この第1の受部の直前には後述するように厚板状の1板の金属片から成るハンドル付きレバー6aが細長板4a内に位置し、このレバー6aの付勢力で支杆20aの頂部2aをロックし、コ字状脚11aの起立状態を維持する。
【0005】
具体的には厚板状(具体例、5mm)の1板の金属板片からなるレバー6aの一端に凸弧状の排除斜縁61aおよびこれに連なる凸弧状の係止斜縁61bとを有する山形状の係止片aを形成し、係止片aの後方にハンドル6aを一体的に形成し、しかもハンドル6aの端部を係止片aと同方向に膨出し、さらに水平軸bに係止片aの前方を回動自在に設け、コイルバネにより係止片aを常時は通過路内3aの上方まで突出し、しかもコイルバネにより各コ字状脚11aの起立時には係止斜縁61bを介して支杆20aの頂部2aを第1受部5a側に押し付けるとともにレバー6aの膨出端部cを天板1aに押圧し、ハンドル6aの引下げ時には係止片a全体を通過路3aから没するように形成する。
【0006】
前述の説明からわかるようにこの従来例はコ字状脚11aを伏倒する場合、図7の矢印で示すように片手でハンドル6aを引き下げ方向に回動するとともに他方の手でコ字状脚を天板の内方に向けて回動する。つまりハンドル6aを時計方向に回動しつつ、他方の手でコ字状脚11aも時計方向に回動させる必要があり、いずれの位置のロック装置もハンドル6aとコ字状脚11aとを同方向に回動させる必要がある。
【0007】
ちなみに伏倒状態のコ字状脚11aを起立させるにはコ字状脚11aを天板1aの外端方向に回動させるだけでよく、摺動してきた支杆20aの頂部2aがレバーの排除斜縁61aをバネ圧に抗して通過し、第1受部5aに係止され、前記支杆頂部2aの通過後にバネの復元力によりレバー6aが細長板4aの通過路3a内に復位し、支杆20aおよびコ字状脚11aの起立状態を維持する。
【0008】
【特許文献1】実公昭61−32507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第1に従来のように起立状態のコ字状脚11aを伏倒させる場合、ロック装置のハンドルレバー6aとコ字状脚11aとを同方向に回動するのは作業しずらい。このことは上記従来品と、ハンドルと天板を支持する脚(具体的にはコ字状脚)とが逆方向に回動する本願の試作品とを、守秘義務を課した若い女性(幼稚園等、子供用施設では若い女性が多いことを考慮したものである)30人に操作させたところ、全員から後者の方が作業しやすいとの回答を得たことから明きらかである。
【0010】
第2に従来例の厚板状の鉄板からなるハンドルレバーを形成するには通常のプレス加工により抜くことが、時間的かつ経済的に効率がよい。脚の起立状態を維持するには具体的にハンドルレバーの肉厚は最低5mmが必要であり、これは通常のプレスにより1ケ当たり30秒で抜くことができる。
【0011】
しかし、図6(a)で示すように肉厚5mmの場合は周縁が水平に形成されず、距離L1、具体的には0.3mm差が出てしまい、いわゆる点接触となり、折りたたみ頻度の高い(例えば毎日、2〜3回折りたたみ作業をする保育園)施設では約2〜3年でレバー6aと支杆頂部2aともに摩耗し、コ字状脚11aの起立時には障害がないものの支杆20aの摺動時にガタを生ずる。
【0012】
なお、レーザ加工により形成すれば前記周縁を水平にすることが可能であるが1ケ当たり2分かかり、しかもプレスとは比較にならない程、高価につく。
【0013】
第3に従来例のコ字状脚11a起立時にはレバー6aと支杆頂部2aとが1ケ所で係止され、経年使用による耐久性の点で問題があると推測される。
【0014】
本発明は前記の欠点を解消し、しかも製造しやすく、指を挾むような危険性のないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1に本発明は天板との間に支杆頂部が摺動する通過路を有するレールを断面コ字状に形成し、前記通過路の両端に前記支杆頂部の第1および第2係止部を形成し、前記レールの外向端近傍に断面コ字状のレバーを外嵌するとともに回動自在に取付け、しかも前記レバーを常時は閉方向に付勢し、前記レバーの両側板の各内向端から前記支杆頂部により排除される斜縁を凸弧状に形成し、前記凸弧部に連続するとともに前記第1の係止部に対応する位置に前記支杆頂部の嵌入溝を凹設し、前記レバーの下面板の外端を延出して押え片を形成することを特徴とするものである。
【0016】
第2に本発明は第1の本発明において、レバーがレールに回動軸を介して回動自在に軸着され、前記回動軸に第1のコイルバネを巻装するとともに前記第1のコイルバネにより前記レバーが常時は閉方向に付勢されていることを特徴とするものである。
【0017】
第3に本発明は第1の本発明において、レールの両側板で、かつ内向端近傍に掛止軸が取付けられ、前記掛止軸に第2のコイルバネを巻装するとともに前記第2のコイルバネの一端を第2係止部の位置より延出するとともに山形に折り曲げることを特徴とするものである。
【0018】
第4に本発明は第1の本発明において、レールの両側板がレール下面板から直角に折り曲げられ、しかも前記両側板の両端を各々外向に折り曲げてネジ挿通孔を有する取付片が設けられたことを特徴とするものである。
【0019】
第5に本発明は第1の本発明において、レールの両端に第1および第2の防御片を設けたことを特徴とするものである。
【0020】
第6に本発明は第5の本発明において、第1の防御片が両側板から内向に折り曲げられ、第2の防御片が下面板から上向きに折り曲げられて形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
第1の本発明によれば、起立状態の支持脚を伏倒させる場合、図5で示すように片手でレバーの押え板を押し、他方の手で支持脚を折りたたみ方向に回動、つまりレバーと支持脚とを逆方向に回動させることができ、前記課題の欄で説明したように非常に容易に折りたたみ作業をすることができる。
【0022】
またレバーの凸弧部は図4で示すように間隔をおいた2ケ所になるので、従来例よりも1ケ当りの肉厚を薄板で形成することができ(図6(b)参照)、プレス加工により各凸弧部の周縁を水平に形成することができ(試作段階で確認済み)、いわゆる線接触となり、レバーおよび支杆頂部ともに摩耗しにくく、経年使用によっても支杆摺動時にガタを生じることがなく、しかもプレス加工が可能であるのでレバーを容易かつ安価に製造することができる。
【0023】
さらに断面コ字状のレールに断面コ字状のレバーを外嵌するので、間隔をおいた1対の2重板、合計4枚で支杆頂部を係止することになり、経年使用によっても耐久性は大きいものとなる。
【0024】
第2の本発明によれば、第1の本発明の効果に加え、コイルバネによりレバーが常時閉方向に付勢され、支持脚は確実に起立状態を保持することができる。
【0025】
第3の本発明によれば、第1の本発明の効果に加え、極めて容易かつ安価な手段で、伏倒時の支杆を第2係止部とコイルバネの山型部で前後から係止することができ、支持脚の伏倒状態を確実に維持することができる。
【0026】
第4の発明によれば、第1の本発明の効果に加え、プレスによる折り曲げ加工で一体に取付片を容易かつ安価に製造することができる。
【0027】
第5の発明によれば、第1の本発明の効果に加え、使用現場での使用者が起倒作業中に本ロック装置の前後から指を挾んだり、異物が混入するおそれがなくなる。
【0028】
第6の発明によれば、第5の発明に加え、プレス加工により折り曲げ加工で一体に第1、第2の防御片を形成することができ、容易、迅速かつ安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1および2で示すロック装置はレール4とレバー6とからなり、いずれも肉厚1.5mm〜2.5mmの薄鋼板製である。
【0030】
レール4は図1、図2で示すように細長板よりなる下面板46の長手両縁を直角に折り曲げて断面コ字状に形成し、両側板40、40の各両端近傍を外向きかつ直角に折り曲げて取付片41、41、42、42を形成し、各取付片41、42にネジ挿通孔43、43・・・・を穿設する。
【0031】
下面板46の内向端を上向きかつ直角に折り曲げて第2の防御片45を形成し、両側板40、40の各外向端を内向きかつ直角に折り曲げて第1の防御片44、44を形成する。
【0032】
両側板40、40の各内方にピン91を取付け、各ピン91に第2のコイルバネ9を巻装し、コイルバネ9の一端を第2の防御片45に当接するとともに他端を凸弧状にして山型部90を形成し、常時は山型部90の頂部が後述する通過路3内に突出し、裾部93が両側板40、40の上端より下方に位置するように付勢する。
【0033】
各側板40の両端近傍に略半円状の第1係止部5、第2係止部5´をそれぞれ凹設し、各第1係止部5のさらに外方に挿通孔47を穿設する。
【0034】
レバー6の下面板63の長手両端を上向きかつ直角に折り曲げて両側板60を形成する。また下面板63の外端を略水平に延出してドーナツ型の押え片64を形成し、この押え板64をプラスチック64´で被蔽する。
【0035】
図1、3で示すように各側板60の全体を略山型に形成し、上縁部60aの各内向端から後述する支杆頂部2により排除されていく斜縁を凸弧状にして凸弧部61を形成する。前記凸部61の頂上から下向きに連続するとともに第1の係止部5に対応する位置に略半円状の嵌入溝62を凹設する。
【0036】
各嵌入溝62の上端部から水平状の頂上を連設するとともに押え片64の付け根近傍に向けて下り斜辺65を形成する。
【0037】
各下り斜辺65の近傍に回動軸7用の挿通孔を穿設する。
【0038】
断面コ字状のレール4の後方に断面コ字状のレバー6を外嵌し、回動軸7を各挿通孔に挿通して両側板60、40に掛渡し、各軸端7´を各側板40に軸着し、レバー6を回動軸7を中心に回動可能にする。
【0039】
回動軸7に第1のコイルバネ8を巻装し、コイルバネ8の端方を第1の防御片側に延出し、他端を下面板46に当接してレバー6を常時は閉方向に付勢する。
【0040】
次に前記ロック装置の天板1への取り付け法を説明すれば、鋼丸棒をハンガー状にして支杆20を形成し、しかも支杆頂部2を図4仮想線で示すように平面視コ字状にして両側板40、40上に置き、各ネジ挿通孔43に図5で示す木ネジ43aを挿通するとともにテーブルの天板1に螺着する。
【0041】
一方、天板1裏面の両端近傍に、略コ字状に形成したキャップ付きの支持脚11、11を軸受12若しくは図示を省略した蝶番により回動自在に取り付ける。そして支杆20両端21、21を支持脚11、11に回動自在に軸着する。
【0042】
次に一実施の形態としての本テーブル脚の使用法および作用を説明すれば、図5で示す伏倒の支持脚11を片手で握り、反時計方向に回動すると支杆頂部2が天板1の裏面に沿って摺動を開始し、図3で示す第2のコイルバネ9のバネ圧に抗して山型部90を仮想状態位置にして乗り越える。この後、第2のコイルバネ9はその復元力により山型部90を実線位置に復位させる。さらに支杆頂部2は天板1裏面と両側板40、40間に形成された通過路3を摺動し続けた後、図1・3で示すように凸弧部61のバネ圧に抗して凸弧部61を仮想線で示すように通過路3外に排除し、凸弧部61の頂上に達する。
【0043】
この凸弧部61の頂上を過ぎると第1のコイルバネ8の復元力によりレバー6は実線位置に復位し、支杆頂部2は嵌入溝62に外嵌され、図5で示す支持脚11が起立する。
【0044】
次に起立している支持脚11の折りたたみ法および作用を説明すれば、片手の指1本で図5で示す押え片64を押す。これによりレバー6は図3で示すように回動軸7を中心に反時計方向に回動し、嵌入溝62が支杆頂部2から外れてロックを解除する。
【0045】
この押え片64を押す操作と同時に支持脚11を他方の手で握り図5の時計方向に回動すれば、支杆頂部2は通過路3内を内方に向かって摺動し、しかもレバー6は第1のコイルバネ8の復元力により実線位置に復位する。
【0046】
その後、支持脚11を押し倒し続ければ、通過路3内に突出している山型部90を通過路3外に排除し、第2係止部5´に係止され、また山型部90はバネ圧により通過路3内に復位し、支持脚11は完全に折りたたまれるとともに山型部90により支杆頂部2は外方に向かって自然に動き出すことがない。
【0047】
起立している支持脚11の下りたたみ方向とレバー6の回動方向が逆になっているため作業がしやすいことは既述のとおりであり、その他の効果も前記効果の欄に記載したとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のロック装置を下方から見た斜視図である。
【図2】同上の上方から見た斜視図である。
【図3】同上の一部切り欠き側面図である。
【図4】A−A断面図である。
【図5】本発明をテーブルに取付けた状態の斜視図である。
【図6】本発明例と従来例とのレバーの板厚差による対比模式図である。
【図7】従来例の一部を示す斜視図である。
【図8】従来例の作用を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 天板
2 支杆頂部
3 通過路
4 レール
5 第1係止部
5´ 第2係止部
6 レバー
7 回動軸
8 第1のコイルバネ
9 第2のコイルバネ
40 側板
41 取付片
42 取付片
43 ネジ挿通孔
44 第1の防御片
45 第2の防御片
46 下面板
60 側板
61 凸弧部
62 嵌入溝
63 下面板
64 押え片
90 山型部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板との間に支杆頂部が摺動する通過路を有するレールを断面コ字状に形成し、前記通過路の両端に前記支杆頂部の第1および第2係止部を形成し、前記レールの外向端近傍に断面コ字状のレバーを外嵌するとともに回動自在に取付け、しかも前記レバーを常時は閉方向に付勢し、前記レバーの両側板の各内向端から前記支杆頂部により排除される斜縁を凸弧状に形成し、前記凸弧部に連続するとともに前記第1の係止部に対応する位置に前記支杆頂部の嵌入溝を凹設し、前記レバーの下面板の外端を延出して押え片を形成することを特徴とする折りたたみ脚付き家具用ロック装置。
【請求項2】
レバーがレールに回動軸を介して回動自在に軸着され、前記回動軸に第1のコイルバネを巻装するとともに前記第1のコイルバネにより前記レバーが常時は閉方向に付勢されていることを特徴とする請求項1の折りたたみ脚付き家具用ロック装置。
【請求項3】
レールの両側板で、かつ内向端近傍に掛止軸が取付けられ、前記掛止軸に第2のコイルバネを巻装するとともに前記第2のコイルバネの一端を第2係止部の位置より延出するとともに山形に折り曲げることを特徴とする請求項1の折りたたみ脚付き家具用ロック装置。
【請求項4】
レールの両側板がレール下面板から直角に折り曲げられ、しかも前記両側板の両端を各々外向に折り曲げてネジ挿通孔を有する取付片が設けられたことを特徴とする請求項1の折りたたみ脚付き家具用ロック装置。
【請求項5】
レールの両端に第1および第2の防御片を設けたことを特徴とする請求項1の折りたたみ脚付き家具用ロック装置。
【請求項6】
第1の防御片が両側板から内向に折り曲げられ、第2の防御片が下面板から上向きに折り曲げられて形成されたことを特徴とする請求項5の折りたたみ脚付き家具用ロック装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−275215(P2007−275215A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103951(P2006−103951)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(591060625)マスセット株式会社 (16)
【Fターム(参考)】