説明

折り畳み車両シート

【課題】単純な運動学的機構を備えた折り畳み車両シートを提供する。
【解決手段】本発明は、基部構造体20と、クッション支持部材36と、一側でクッション支持部材36へ枢着されると共に他側の前ヒンジ42で基部構造体20へ枢着された前支持アーム38と、上部ヒンジ点32で基部構造体20へ枢着されると共に下部ヒンジ点46でクッション支持部材36へ枢着されたキャリア部材44と、基部構造体20へ枢着された背もたれ48とを備え、キャリア部材44は前脇面60と後脇面62と背もたれ48に形成された突起56を有する規制領域58を有し、当該突起56は、規制領域58内へ延びており、通常使用状態では前脇面60と当接し、背もたれ48が第1の角度分前方へ傾くと後脇面62に接触し、背もたれ48がさらに前方へ倒れるとキャリア部材44と一緒に回動するものである折り畳み車両シートに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基部構造体と、クッション支持部材と、一側でクッション支持部材へ枢着されると共に他側の前ヒンジで基部構造体へ枢着された前支持アームと、基部構造体及びクッション支持部材へ枢着されたキャリア部材と、基部構造体へ枢着された背もたれとを備えた折り畳み車両シートに関する。
【0002】
基部構造体と、前支持アームと、クッション支持部材と、キャリア部材とが4節リンク機構(four-bar linkage)を形成する。前記4節リンク機構は、一の通常使用状態と他の折り畳み状態とを有する車両シートとなるように調整することができる。折り畳み状態においては、背もたれが、前方へ折り畳まれ、ほとんどx方向にあり、これに伴いクッション支持部材及びシートクッションが下方かつ若干後方へ移動されることになる。結果として、背もたれは、通常使用状態においてクッション支持部材及びシートクッションがあった位置になり代わり得る。
【背景技術】
【0003】
このようなタイプの折り畳み車両シートは、とりわけ自動車における第2又は第3列シートに適している。これらは、折り畳み収納式車両シートとも呼ばれる。背もたれの後側がしかるべく設定されるならば、車両の積荷作業床の一部になり得る。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0445528号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2433433号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、操作が簡単であり、構成し易く、手動又はモータ駆動の車両シートの現在の運動学的機構(kinematics)を含んだ状態で、デザインに関係なく手動及びモータ適応型設計の両方に利用可能であり、単純な運動学的機構を備えた折り畳み車両シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、基部構造体と、クッション支持部材と、一側で前記クッション支持部材へ枢着されると共に他側の前ヒンジで前記基部構造体へ枢着された前支持アームと、上部ヒンジ点で前記基部構造体へ枢着されると共に下部ヒンジ点で前記クッション支持部材へ枢着されたキャリア部材と、前記基部構造体さらに正確には前記上部ヒンジ点へ枢着された背もたれとを備え、前記キャリア部材は前脇面(front flank:前フランク)と後脇面(rear flank:後フランク)と前記背もたれに形成された突起とを有する規制領域を有し、当該突起は、前記規制領域内へ延びており、通常使用状態では前記前脇面と当接して前記背もたれを固定し、前記背もたれが第1の角度分前方へ傾くと前記後脇面に接触し、前記背もたれがさらに前方へ倒れると前記キャリア部材と一緒に回動するものである折り畳み車両シートにより解決される。
【0006】
この車両シートについて、特許文献1にあるような通常の方法により、クッション支持部材は前支持アームを介して基部構造体へ接続される。後部においては、クッション支持部材はキャリア部材を介して基部構造体へ接続され、望ましくは、1つのキャリア部材が各シート側面に備えられる。これらのキャリア部材の一つのみが、2つの脇面と、このキャリア部材に備え付けられた突起とを伴って規制領域を構成すればよい。このように構成されたキャリア部材がシート両側面に備えられるのが好ましい。第1の角度範囲において、固定されない背もたれが、通常使用状態(背もたれは固定されていない)から自由に前方へ傾くことができ、前記第1の角度範囲に隣接する角度範囲において、背もたれがキャリア部材と一緒に回動する、言い換えれば、背もたれがキャリア部材を一緒に運ぶ、というように、背もたれはキャリア部材の2つの脇面と連携する。クッション支持部材の後方及び特に下方への移動は、キャリア部材を通じて規制される。クッション支持部材の下方(z方向の反対方向)への移動を顕著なものにするために、キャリア部材は、通常使用状態において、x方向の反対側から見て、例えば下部ヒンジ点から上部ヒンジ点へ向かって約15°の角度で上がれるように、配置される。これは、例えば、特許文献1又は特許文献2にある平行四辺形アーム11,13のような、周知の一般的な平行四辺形運動学的機構に対して明らかに明暗を有する。平行四辺形運動学的機構を伴う車両シートは、キャリア部材でなくて後支持アームを有しているという事実を除いて、同様に導入され、かつ望ましくは適用例と略同一の前支持アームを有する。前記後支持アームは、前支持アームに対して略平行に方向付けられていると共に、例えば90°,105°を上回る角度差を伴って、キャリア部材に比べて完全に異なる角度で傾けられている。結果として、その通常使用状態における適用例に従う車両シートのキャリア部材は、実質的には、クッション支持部材の延長部であり、クッション支持部材に対して横方向に向けられない。上部ヒンジ点は、常に下部ヒンジ点の上方へ位置し、各運動学的状態とは関係ない。一般的な平行四辺形運動学的機構の場合は、まさにこの逆である。
【0007】
本発明の車両シートは、クッション支持部材の折り畳み収納と背もたれの前方への折り畳みとを有効的に結合することを可能にする。背もたれを前方へ作動及び折り畳みすることにより、背もたれへ運動学的に接続されたクッション支持部材の動作が果たされる。運動学的な接続は、規制領域、すなわち後脇面に接触する背もたれの突起を介して構築される。この接触が一旦完了すると、さらに前方に折り畳まれるにつれて、背もたれが支持部材と一緒に動く。
【0008】
通常使用状態から始めると、車両シートは、以下の方法で、前方へ折り畳まれ、収納される。通常使用状態において、背もたれの突起は前脇面に当接する。当該当接はこの状態を固定する。記載されている4節リンク機構もその結果として固定される。対応する装置により当該固定が解放された場合には、背もたれが前方へ折り畳まれ得る。同時に、4節リンク機構はもはや固定されておらず、動くことができる。よって、第1の角度範囲の端に達すると前脇面から離れて後脇面に接触する停止制限を伴って、背もたれが第1の角度範囲の前方へ折り畳み可能になる。この状態から進んで、背もたれが対応する回動によりさらに前方へ回動すると、少なくとも1つのキャリア部材と連結する。キャリア部材は、x方向において、シートキャリアを後ろ側へ引く、すなわち、前支持アームの回動と合わせてキャリア部材を下げる移動を行うと共に、クッション部材を下方へ引く。背もたれは、実質的にはx方向へ向けられた水平状態になることが可能である。
【0009】
4節リンク機構が固定から解放され、かつ背もたれが若干前方へ折れるとすぐに(突起が前脇面から離れるとすぐにを意味する)、4節リンク機構は、十分に円滑に動くように構成されていれば、自動的に折り畳み可能となる。但し、4節リンク機構の構成は、突起が後脇面に接触して4節リンク機構が変形するまで保持されるように構成してもよい。
【0010】
この折り畳み車両シートは、前述の運動学的機構が、手動調整及び電気モータ駆動調整の両方に向いている点で特に優位性を有している。モータ駆動調整に関して、好ましい応用実施例において、突起は、望ましくはシート側面片側のみで、モータロッカーアームへ枢着された接続ロッドへ接続され、次に前記モータロッカーアームが回動するために電動モータへ接続されている。その結果として、背もたれにある突起又は4節リンク機構の動作が、この配置を通じて規制される。通常使用状態において、接続ロッドとモータロッカーアームとは、望ましくは伸長状態となるように配置される。結果として、例えば自動車シートが使用されている時に生じる負荷が電気モータの変速機に直接影響を与えることが防がれる。前述の配置は、即座に固定機能を実行し、同様に解放機能も実行する。
【0011】
手動実施において、前後両方の脇面と連携する分離停止装置が備えられる。通常使用状態では、突起が前脇面に当接する状態が保持される。折り畳み状態では、突起が後脇面に当接する状態が保持される。このような停止装置がシート側面片側のみに設けられるのが好ましいが、両側に備えられてもよい。
【0012】
基部構造体は、異なる構成としてもよい。例えば車両のシャシの一部とするなどである。これは、折り畳み車両シートが、構造物として完全に事前組立できないことを意味する。自動車内に搭載されているときは、前支持アームは、基部構造体へ連結される必要があり、同様に、基部構造体に対する少なくとも1つのキャリア部材と、背もたれと、基部構造体との間にリンクが構築される必要がある。基部構造体は、車両シート自身の一部であることが好ましく、次に、車両内への車両シート取り付け中に自動車の下部構造へ接続されるのが好ましい。このために、シートの前後方向への調整を同時に可能とする水平方向調整装置(longitudinal adjusting devices)、又は各シート側面に備えられる1つの側面部材を伴う簡素な基部部材(例えば簡素な側面部材でもよい)のどちらかを提案する。
【0013】
別の有利な構成においては、下部ヒンジ点は、前支持アーム接合部及び上部ヒンジ点につながる関連線に近接する。望ましくは、下部ヒンジ点は、前記関連線より下方へ配置される。結果として、通常使用状態におけるキャリア部材の位置は、特徴的なものとなる。
【0014】
本発明のさらに有利な点及び特徴は、他の請求項と、図を参照した実施例のみを通して与えられる後述する本発明の各実施例の説明から明らかになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、操作が簡単であり、構成し易く、手動又はモータ駆動の車両シートの現在の運動学的機構を含んだ状態で、デザインに関係なく手動及びモータ適応型設計の両方に利用可能であり、単純な運動学的機構を備えた折り畳み車両シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明における車両シートの好ましい各実施例を説明する。
【0017】
図1及び図2に基づく第1実施例において、折り畳み車両シートは、左側面部材22及び右側面部材24と、同じくこれらに接続されたガイド部材26,28とからなる基部構造体20を備えている。ガイド部材26,28は、一対のものとして備えられ、ガイド溝30と上部ヒンジ点をなす孔32とをそれぞれ有している。シートレール及びフロアレールをそれぞれ備えた周知の水平方向調整装置が、2つの側面部材22,24の代わりに備えられてもよい。また一方、別の代替案において、側面部材22,24は、図1のみに示されている例えば自動車などのシャシ34に固着されてもよく、シャシ34のようなものから一体成形されてもよい。側面部材22,24は、図6のように、基部部材に相当する少なくとも1つのガイド部材とそれぞれ接続されてもよい。
【0018】
折り畳み車両シートは、周知の構成であるクッション支持部材36をさらに備える。クッション支持部材36は、フレームとスプリングを内蔵しており、最新のものであるため図示しないシートクッションを受け支えるためのものである。
【0019】
複数の前支持アーム38がさらに備えられ、これらは同一形状というよりはむしろ鏡面対称形状に造られる。前支持アーム38は、下端ヒンジ40で、基部構造体20、具体的に言うと側面部材22,24の一つ一つへ枢着される。さらに、前支持アーム38は、上端ヒンジ42でクッション支持部材36へ枢着される。上端ヒンジ42は、クッション支持部材36の前端から、クッション支持部材36の深さ(x軸方向における長さ)の約10〜30%の距離を隔てて設けられているのが分かる。
【0020】
左右のキャリア部材44がさらに備えられ、これらも同様に鏡面対称形状に造られる。各キャリア部材44は、上部ヒンジ点32で基部構造体20へ回動可能に連結される。シート両側にある2つの上部ヒンジ点32は、一直線上に配置される。下部ヒンジ点46で、各キャリア部材44は、クッション支持部材36へ回動可能に連結され、クッション支持部材36の後端から見た場合に、上端ヒンジ42,42の間隔にほぼ対応する間隔で位置合わせされる。
【0021】
どちらか一方のシート側面に関して、基部構造体20は、前支持アーム38と、クッション支持部材36と、キャリア部材44と共に4節リンク機構を形成する。前記4節リンク機構は、上部ヒンジ点32と、下端ヒンジ40と、上端ヒンジ42と、下部ヒンジ点46とによっても表現することができる。これらのヒンジは自由に動くことができ、4節リンク機構の固定については後述する。
【0022】
最後に、主要部50と、その上に配置された2つの背もたれアーム52とを有する背もたれ48が備えられる。背もたれアーム52は、シート両側面に備え付けられる。背もたれ48は、背もたれアーム52を介して上部ヒンジ点32へ回動可能に連結される。当該目的のために、上部ヒンジ点32に対応する開口部54が背もたれアーム52に設けられる。ヒンジ自身は、図から分かるように、リベット又はピンにより実現される。背もたれアーム52に関して、背もたれ48は、ガイド部材26,28の2つのガイド溝30内で誘導される1つの突起56又はボルトを両側に有する。従って、背もたれ48の最大回動角度が与えられる。突起56は、各キャリア部材44に形成された規制領域58と連携する。但し、一つのシート側面、すなわち一つのキャリア部材44にだけ規制領域58を備えれば十分である。この規制領域58は、前脇面60及び後脇面62により規定される。突起56は、両脇面60,62と接することが可能である。第1実施例において説明されたところによる通常使用状態において、突起56は、前脇面60に当接すると共に、固定装置により保持される。当該固定装置の機能は、第1実施例においてはモータ駆動により実行される。前記モータ駆動は、各突起56のうち1つへ強固に接続された接続ロッド64を備える。接続ロッド64は、電気モータ68のロッカーアーム66へ回動可能に連結され、次にロッカーアーム66が電気モータ68へ回動不可の状態で連結される。前記電気モータ68は、基部構造体20上に固定される。図4と同様に、図1及び図2に示した通常使用状態において、モータロッカーアーム66及び接続ロッド64は、伸長状態にある。背もたれ48に荷重が掛かると、突起56が接続ロッド64に力を作用させ、その結果、トルクが発生せずに電気モータ68のドライブシャフトに直接荷重が掛かる。図3及び図5も、通常使用状態におけるシートを示すが、ここに示されたシートは手動実施のためのものである。
【0023】
電気モータ68が作動すると、突起56が前脇面60から離れて後脇面62方向へ移動する。突起56が後脇面62に到達すると、車両シートが折り畳まれる。このとき、図6に示すものと同様の構造となる。
【0024】
図3に示す第2実施例において、以下に説明する例外を除いて、同じ部品は第1実施例におけるものと同様である。つまり、手動停止装置がモータ駆動の代わりに備えられる。手動停止装置は、シート両側面に、手動停止装置は前カム70及び後カム72を有する。前記カム70,72は、対向部分において一種の歯又はヒンジ結合などを有して枢着され、それらは2つの噛み合う歯車のように動く。前記カム70,72は、回動中心74をそれぞれ有する。前記カム70,72は、相互に離れる方向における端部に、停止部材76を備える。一の停止脇面で、前記カム70,72(停止部材76)は、各停止状態では突起56に当接する。図3には示されていないが、図6においては停止状態が示されており、当該停止状態は、後カム72、即ち前記停止部材76と関連する停止側面とによりもたらされる。突起56は、この後カム72と後脇面62との間に固定される。停止側面は、ゼロクリアランス固定(密着固定)のための対応する面取り部を有する。図示されたスプリングは、連動可能な2つのカム70,72の配置を図3及び図6に示した停止位置へ変位させる。図6に示す解放機構により停止位置から解放可能である。このために、解放レバー78は、2つのカム70,72のうち一つにボーデンケーブル80経由で接続された状態で、背もたれに配置される。解放レバー78を作動させることにより、自動車シートを調整可能とするために、2つのカム70,72が停止位置から解放されるべく回動する。
【0025】
基本機能について、2つの図4及び図5を参照しながら説明する。図4及び図5に示す実施例においては、自動車シートは、非常に概略的に図示されているが、通常の利用状態になっている。また、これらから動作シーケンス(動作の順序)も分かる。当該2つの図は、通常使用状態において前支持アーム38が、z軸方向に対して約20〜30°分、若干後方へ傾斜することを示す。前支持アーム38は、各背もたれアーム52の1つのみが示された背もたれ48に対して略平行となる方向に向けられる。前支持アーム38の2つのヒンジ40,42間の距離は、キャリア部材44のヒンジ点32,46間の距離におおよそ一致する。しかし、前支持アーム38の前記ヒンジ40,42間の距離が、キャリア部材44のヒンジ点32,46間の距離から最大20%異なるのが好ましい。キャリア部材44は、前支持アーム38に対して約50°の角度で傾けられている。すなわち、車両シートの通常使用状態で、前支持アーム38の2つのヒンジ40,42を結んだ関連線が、キャリア部材44の2つのヒンジ点32,46を通る直線に対して45°より大きい角度で傾斜するよう構成するのが好ましい。上述の4節リンク機構のヒンジ点は、前支持アーム38の下端ヒンジ40,下部ヒンジ点46,及び上部ヒンジ点32が略直線状に並ぶように配置される。より正確に言うと、下部ヒンジ点46は、下端ヒンジ40と上部ヒンジ点32とを結んだ関連線の若干下方に位置する。前支持アーム38及びクッション支持部材36は、上端ヒンジ42部分において相互に対して略直角に配置される。
【0026】
キャリア部材44は、縦線上にある上部ヒンジ点32と、横線上の下部ヒンジ点46とを有する概ねL字形である。上部ヒンジ点32及び2つの脇面60,62は、略等辺となる二等辺三角形の頂点上にある。
【0027】
図4においてそのピニオンギアにより認識される電気モータ68の動作に関して、モータロッカーアーム66のヒンジは、鎖曲線82上を動くと共に、モータシャフト周りに180°より若干大きい動作を行う。この動作が完了すると、モータロッカーアーム66及び接続ロッド64は、もはや伸長状態にはなく、実質的に幾分重なり合う。このとき、突起56は後脇面62に接触する。前記突起56は、上部ヒンジ点32周りの円弧上にある破線で示された経路84を移動している。最終位置は、初期位置に対して約110°回動される。その約50°が2つの脇面60,62間の間隔に相当する。当該間隔は50°±10°の回動角に相当する程度に構成するのが好ましい。今言及した部分は、最初の角度部分である。60°の残差によると、キャリア部材44は、上部ヒンジ点32周りの曲線86に沿って、上部ヒンジ点32周りに回動される。同図から、下部ヒンジ点46は、z軸方向において上部ヒンジ点32の略下方にあることが分かる。下部ヒンジ点46は前支持アーム38のヒンジ距離におおよそ一致する距離を移動している。前述の最終位置によって、クッション支持部材36が、x方向の反対に大幅に移動されると共に、z方向の反対に若干移動される。完全に折り畳まれた状態における最終的な位置が、図4から分かる。実質的にx方向の反対側から見た場合には、上端ヒンジ42は下端ヒンジ40の後方付近にある。完全に折り畳まれた状態においては、下端ヒンジ40,上端ヒンジ42,及び下部ヒンジ点46は、ほとんど直線状にある。上端ヒンジ42は、下端ヒンジ40周りの基本線88に沿って、約70°の回動角度で回動する。
【0028】
以上図4について説明された事情は、図5についても当てはまる。停止装置に関して図5について説明する。2つのカム70,72は、回動中心74を中心軸として基部構造体20へ枢着される。これらは、例えばガイド部材26,28などに配置されてもよい。図5に示すような通常使用状態において、前カム70の1つの停止側面は、突起56に当接し、突起56を前脇面60に接触させる。その結果として背もたれは固定される。同時に、前述の4節リンク機構も固定される。当該固定化が、前述の解放レバー78を作動させることにより解放されると、図6に基づいて既に説明された前記他の固定状態に至る。基本的には、この停止位置も図5から分かる。
【0029】
図6については既に説明されている。解放レバー78は、いつでも使用可能なように、背もたれ48の後側に配置される。同図から背もたれが略水平であることが分かる。図示しない積荷作業床と同一平面にすることができる。
【0030】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施例における折り畳みシートの通常使用状態を示す組立透視図である。
【図2】図1の左部分に示した構成部品を示す図1と若干異なる透視図である。
【図3】第2実施例における手動による折り畳みシートの通常使用状態を示す組立透視図である。
【図4】第1実施例におけるモータ駆動調整による折り畳みシートの折り畳み手順を示す概略側面図である。
【図5】第2実施例における手動調整による折り畳みシートの折り畳み手順を示す概略側面図である。
【図6】第2実施例における手動調整による折り畳みシートの完全な折り畳み状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
20 基部構造体
22 左側面部材
24 右側面部材
26,28 ガイド部材
30 ガイド溝
32 孔(上部ヒンジ点)
34 シャシ
36 クッション支持部材
38 前支持アーム
40 下端ヒンジ
42 上端ヒンジ
44 キャリア部材
46 下部ヒンジ点
48 背もたれ
50 主要部
52 背もたれアーム
54 開口部
56 突起
58 規制領域
60 前脇面
62 後脇面
64 接続ロッド
66 モータロッカーアーム
68 電気モータ
70 前カム
72 後カム
74 回動中心
76 停止部材
78 解放レバー
80 ボーデンケーブル
82,88 曲線
84 経路
86 曲線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部構造体(20)と、クッション支持部材(36)と、一側の下端ヒンジ(40)で前記クッション支持部材(36)へ枢着されると共に他側の上端ヒンジ(42)で前記基部構造体(20)へ枢着された前支持アーム(38)と、上部ヒンジ点(32)で前記基部構造体(20)へ枢着されると共に下部ヒンジ点(46)で前記クッション支持部材(36)へ枢着されたキャリア部材(44)と、前記基部構造体(20)へ枢着された背もたれ(48)とを備え、前記キャリア部材(44)は前脇面(60)と後脇面(62)と前記背もたれ(48)に形成された突起(56)を有する規制領域(58)を有し、当該突起(56)は、前記規制領域(58)内へ延びており、通常使用状態では前記前脇面(60)と当接し、前記背もたれ(48)が第1の角度分前方へ傾くと前記後脇面(62)に接触し、前記背もたれ(48)がさらに前方へ倒れると前記キャリア部材(44)と一緒に回動するものである折り畳み車両シート。
【請求項2】
前記基部構造体(20)が車両のシャシ(34)の一部、又は前記基部構造体(20)がシートレール及びフロアレールを備えた水平方向調整装置からなる、又は前記基部構造体(20)が少なくとも1つの基部部材からなることを特徴とする請求項1記載の折り畳み車両シート。
【請求項3】
前記前支持アーム(38)の前記ヒンジ(40,42)間の距離が、前記キャリア部材44の前記ヒンジ点(32,46)間の距離から最大20%異なることを特徴とする請求項1記載の折り畳み車両シート。
【請求項4】
前記前脇面(60)及び前記後脇面(62)が50°±10°の回動角に相当する間隔をあけて設けられることを特徴とする請求項1記載の折り畳み車両シート。
【請求項5】
車両シートの通常使用状態では、前記下部ヒンジ点(46)は、前記前支持アーム(38)の前記下端ヒンジ(40)と前記上部ヒンジ点32とを結んだ関連線に近接して位置するものであることを特徴とする請求項1記載の折り畳み車両シート。
【請求項6】
前記前脇面(60)及び前記後脇面(62)と連携し、通常使用状態及び完全な折り畳み状態における車両シートを固定する停止装置を備えることを特徴とする請求項1記載の折り畳み車両シート。
【請求項7】
前記停止装置は、前記突起(56)と連携する停止側面を有する連動する2つのカム(70,72)からなるものであり、カム(70,72)を連動させる解放レバー(78)を備えることを特徴とする請求項6記載の折り畳み車両シート。
【請求項8】
前記突起(56)が接続ロッド(64)に接続され、前記接続ロッド(64)がモータロッカーアーム(66)へ枢着され、前記モータロッカーアーム(66)が回動するために電気モータ(68)へ接続されたことを特徴とする請求項1記載の折り畳み車両シート。
【請求項9】
車両シートの通常使用状態で、前記前支持アーム(38)の前記2つのヒンジ(40,42)を結んだ関連線が、前記キャリア部材(44)の前記2つのヒンジ点(32,46)を通る直線に対して45°より大きい角度で傾斜するよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の折り畳み車両シート。
【請求項10】
前記基部構造体(20)は、少なくとも1つのガイド部材(26,28)と、前記上部ヒンジ点(32)用の孔とを備えたものであることを特徴とする請求項1記載の折り畳み車両シート。
【請求項11】
前記前支持アーム(38)は、通常使用状態で、z軸に対して0〜30°の間の角度で傾斜するものであることを特徴とする請求項1記載の折り畳み車両シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−55596(P2007−55596A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225840(P2006−225840)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(501330444)ツェー・ロブ・ハマーシュタイン・ゲーエムベーハー・ウント・ツェーオー・カーゲー (2)
【Fターム(参考)】