説明

折板屋根の屋根緑化設備

【課題】屋上緑化で実績のある薄層屋上緑化設備の植栽マットを簡便且つ十分な強度で施工可能な折板屋根の屋根緑化設備を提供する。
【解決手段】上面に上載荷重を受け止める略平坦な取付面を有し、折板屋根2の山部4の頂部にその長さ方向に沿って固定設置した複数本の根太フレーム10と、複数の根太フレーム10にわたって敷設固定した略平坦な網状部材20と、網状部材20上に設けた植栽マットとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根への施工に好適な折板屋根の屋根緑化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温暖化等に対する都市環境の改善を目的として、ビルやマンション等の屋上や家屋における屋根上スペースを有効活用して設置可能な屋上緑化設備が普及しつつある。
このような屋上緑化設備としては、屋上庭園タイプと薄層緑化タイプが実用化されており、特に薄層緑化タイプの薄層屋上緑化設備は、屋上庭園タイプの屋上緑化設備と比較して格段に軽量で、既設の建築物に対しても容易に適用できること、排水性を良好に維持できるとともに建築物の屋上表面の温度変化を抑制できるので、建築物の耐久性を向上できること、建築物の遮温性と保温性が高くなり光熱費を低減できること、などの優れた利点を有することから注目されている。
【0003】
前記薄層屋上緑化設備としては、建築物に防水シートを敷設し、その上に排水マットと遮根シートと植栽マットとを下側から順番に積層してなる薄層緑化積層体を設置したものが実用化されている。そして、植栽マットとして、耐乾性に優れたセダム類を中心とした植生を薄い培土に植え付けてマット状にしたものを用いることで、薄層緑化積層体に対する保水量を低く設定可能となし、薄層緑化積層体の重量を軽減するとともに、温度変化の低減と紫外線の遮断による建築物の耐久性の低下を防止できるように構成されている。
【0004】
一方、工場等の折板屋根上に施工可能な折板屋根緑化設備も種々提案されている。例えば、特許文献1には、折板屋根の谷部に植物植生材料をセットし、この植物植生材料に植物を植え付けた折板屋根緑化設備が記載されている。この公報には、植物植生材料として、例えばロックウール、セラミックウール等の鉱物繊維、あるいは、椰子殻、バーク、あるいは、カーシュレッダーダスト等のリサイクル材などを材料とし、これを所定の形状に成形して製作された、保水性を有するものが記載されている。
【0005】
また、特許文献1には、折板屋根上に非透水部材からなる断熱材を配置し、その上に植栽装置を設けた屋根緑化設備が記載されている。
【特許文献1】特開2000−166375号公報
【特許文献2】特開2002−95348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記薄層緑化設備に関しては、ある程度の実績を上げているが、折板屋根の屋根緑化設備に関しては、まだ十分な検討がなされていないのが実状である。
例えば前記特許文献1記載の屋根緑化設備では、構成部品点数が少なくて安価に施工可能であるが、折板屋根の谷部にその深さ方向の途中部まで培土をセットするので、降雨水の排水が円滑になされず、降雨水量が多くなると培土が降雨水とともに流失すること、培土が降雨水を含んで重くなったときにおける屋根強度を十分に確保できず、緑化面積を大きく設定できないこと、湿潤な培土が折板屋根に常時接触しているので、折板屋根が傷み易くなること、などの問題がある。
【0007】
また、前記特許文献2記載の屋根緑化設備では、非透水部材から断熱材上に植栽装置を配置させるので、湿潤な培土が折板屋根に直接的に接触することによる折板屋根の耐久性の低下を防止できるが、折板屋根の排水構造をそのまま利用できないので、排水構造が複雑になること、谷部に対応する位置に断熱材の曲げ強度を十分に確保することが困難で、植栽装置の施工のため作業者が断熱材に乗ったときや経年変化により、断熱材が谷部内に変形して元に戻らなくなること、などの問題がある。
【0008】
本発明の目的は、屋上緑化で実績のある薄層屋上緑化設備の植栽マットを簡便且つ十分な強度で施工可能な折板屋根の屋根緑化設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る折板屋根の屋根緑化設備は、上面に上載荷重を受け止める略平坦な取付面を有し、折板屋根の山部の頂部にその長さ方向に沿って固定設置した複数本の根太フレームと、前記複数本の根太フレームにわたって敷設固定した略平坦な網状部材と、前記網状部材上に設けた植栽層とを備えたものである。
【0010】
この屋根緑化設備においては、根太フレームを介在させて網状部材を折板屋根上に固定設置し、その上に植栽層を設けるので、屋根の勾配が比較的大きい場合でも、施工作業が煩雑になることを防止しつつ植栽層を安定的に折板屋根に設置できる。
【0011】
つまり、折板屋根から上方へ突き出した剣先ボルト等を利用して、網状部材を折板屋根に直接的に固定設置し、その上に植栽層を設けることも可能であるが、屋根の勾配が例えば1/50以上の急勾配になると、植栽層が網状部材とともに滑落することが考えられ、またこの滑落を防止するため剣先ボルト以外に新たな固定点を設けると、部品点数が増えるとともに、施工作業が煩雑になる。
【0012】
それに対して本発明では、根太フレームを折板屋根の山部の頂部に固定するので、根太フレームと折板屋根との接触面積を十分に確保して、折板屋根との摩擦抵抗によって滑落方向への荷重を受け止めることができ、剣先ボルトに作用する剪断荷重を軽減し、勾配が比較的大きな折板屋根に対しても固定点を増やすことなく根太フレームを確実に固定できる。しかも、根太フレームの略平坦な取付面に対して網状部材を固定設置するので、根太フレームの任意の位置において網状部材を固定することが可能となり、根太フレームに対する網状部材の取付強度も十分に確保できる。
【0013】
このように、少ない固定点で折板屋根に対する根太フレームの取付強度を十分に確保できるとともに、根太フレームに対する網状部材の取付強度を十分に確保できるので、屋根の勾配が比較的大きい場合でも、施工作業が煩雑になることを防止しつつ、植栽層を折板屋根に対して折板屋根固定用の剣先ボルトだけで確実に固定できることになる。また、ハゼで固定した折板屋根に適用する場合においても、剣先ボルトで固定した折板屋根と同様に、根太フレームと折板屋根との接触面積を十分に確保できるので、植栽層の下地材としての網状部材を折板屋根に対して強固に固定できることになる。
【0014】
また、網状部材として金属製のものを使用するなどして、折板屋根の谷部に対応する位置における網状部材の強度を十分に確保できるので、植栽層を施工するときなどにおける網状部材の変形や経年変化による網状部材の変形を確実に防止できる。こうして網状部材により折板屋根上に軽量且つ安定した略平坦な設置面を形成できるので、植栽層を安定的に施工できる。
【0015】
しかも、このような網状部材を用いると、植栽層への降雨水をそのまま折板屋根の谷部へ排水でき、折板屋根の排水構造を活用して降雨水を排水できるので、構成を複雑にすることなく、排水性に優れた屋根緑化設備を実現できる。また、植栽層自体が折板屋根に直接的に接触しないので、折板屋根の腐蝕等を防止できるとともに、太陽光線による折板屋根の耐久性の低下を防止でき、折板屋根の耐用年数を向上できる。
【0016】
ここで、前記植栽層として網状部材上に植栽マットを敷設し、複数の植栽固定金具を介して植栽マットを網状部材に固定してもよい。この場合には、植栽層としての植栽マットを網状部材の任意の位置に設けた植栽固定金具で網状部材に固定でき、網状部材に対する植栽層の取付強度を十分に確保できるので、屋根緑化設備全体を折板屋根に対して強固に固定できることになる。また、前述のように網状部材により折板屋根上に軽量且つ安定した略平坦な設置面を形成できるので、屋上緑化で実績のある軽量且つ簡易な薄層緑化設備の植栽マットを網状部材の上側にそのまま施工することが可能となる。
【0017】
前記植栽マットとして網状部材上に設置される透水性を有する排水マットを下部に備えたものを用いてもよい。網状部材としては、例えば金属製のエキスパンドメタルを用いることになるが、谷部上での作業に耐え得る強度のエキスパンドメタルは、開口が比較的大きなものとなるので、その上に遮根シートや植栽基盤マットを直接設置すると、これらのシートやマットが網状部材の開口から突出して植栽マットが破損する。このため、例えば合成樹脂製の線材を圧縮成形してなる排水マットを植栽マットの下部に備えさせ、遮根シートや植栽基盤マットを受け止めるように構成して、遮根シートや植栽基盤マットの破損を防止することが好ましい。また、このような排水マットは、通気性にも優れているので、山部を乗り越える方向への空気の流動を確保するが可能となり、高温時の温度低減効果並びに低温時の保温効果を得ることが可能となる。
【0018】
前記植栽固定金具として、支柱と、支柱の下端部を網状部材に固定する固定手段と、支柱の上端部に配置したトップ板であって、植栽マットを網状部材側へ押し付けて、植栽マットを網状部材に固定するトップ板とを備えたものを用いてもよい。このような構成の植栽固定金具を用いると、網状部材の任意の位置に支柱を固定して、植栽マットを網状部材に固定できる。
【0019】
前記固定手段として、網状部材の開口から下側へ挿入可能な下側ベース板と、網状部材の上側に配置される上側ベース板とを備え、支柱を介して上下のベース板間に網状部材を挟持して支柱を網状部材に固定するものを用いてもよい。この場合には、網状部材を敷設した後、その上側から支柱を固定できるので、植栽固定金具を容易に施工することが可能となる。また、下側ベース板の長さを調整することで、網状部材の開口の任意の位置に支柱を固定できるので、植栽マットの側縁を容易に且つ確実に植栽固定金具で保持することが可能となる。
【0020】
前記植栽マットとして排水マットを備えたものを用い、前記植栽固定金具として、支柱の途中部に、排水マットを網状部材側へ押し付けて、排水マットを網状部材に固定する中間板を配置したものを用いてもよい。排水マットを備えた植栽マットを用いる場合には、排水マットの施工後、排水マット上に乗って遮根シートや植生基盤マット等を施工することになるが、折板屋根は勾配を有するので、施工作業の途中で排水マットがずれることが考えられる。本発明では、排水マットを網状部材に中間板で順次固定できるので、遮根シートや植生基盤マット等の施工作業の安全性を十分に確保することが可能となる。
【0021】
前記網状部材として開口が菱形状のものを用い、開口の長い方の対角線が折板屋根の山部の長手方向と略直交するように網状部材を施工してもよい。網状部材に乗った作業者の荷重を効果的に受け止めるため、例えばエキスパンドメタルのように網状部材として開口が菱形状のものを用いる場合には、開口の対角線の長い方が折板屋根の山部の長手方向と略直交するように網状部材を施工することが好ましい。また、このような菱形状の開口を有する網状部材を用いる場合において、例えば上下のベース板からなる固定手段で網状部材を挟持するときには、下側ベース板として長辺側の一端部から外周外端までの長さが、網状部材の開口の短い方の対角線の長さ以上で、長い方の対角線の長さ未満に設定した板状部材を用いると、開口内の任意の位置に支柱を固定できるので好ましい。
【0022】
前記折板屋根の上下両端部において、折板屋根の谷部の底部に開口を残した状態で谷部を閉鎖する閉鎖板を設けてもよい。このように構成すると、折板屋根の谷部内への過度の空気の流入を制限し、植栽マットの乾燥を防止して植生の成長を促進できるとともに、谷部内への風の吹き込みを制限して、植栽マットに下側から突き上げる力が作用することを抑制し、暴風時や強風時における植栽マットの剥離を効果的に防止できる。
【0023】
前記根太フレームとして、折板屋根固定用の剣先ボルト又はハゼに固定されるチャンネル材からなる固定フレームと、固定フレームに連なって配置されるチャンネル材からなる本体フレームと、固定フレームと本体フレームとを連結する連結部材とを有するものを用いてもよい。通常、折板屋根は剣先ボルトやハゼなどの固定点において建築物に固定されているが、剣先ボルトで固定された折板屋根においては、剣先ボルトの配設位置が建物によって異なるので、根太フレームは現場合わせで施工する必要がある。しかし、施工現場において剣先ボルトに対応させて根太フレームに取付孔等を形成することは、現場における負担が大きくなり作業性が低下する。本発明では、根太フレームを固定フレームと本体フレームと連結部材とに分割構成しているので、工場等において予め固定フレームに対して剣先ボルトの取付孔等の必要な加工を施しておき、現場では本体フレームを剣先ボルトのピッチに応じて切断し、連結部材を介して固定フレームと本体フレームとを連結するという簡単な作業で、根太フレームを折板屋根に組み付けることが可能となる。また、このように構成することで、固定フレームを取り替えるだけで、この根太フレームをハゼで固定された折板屋根に対してもそのまま適用できるので好ましい。
【0024】
前記植栽マットの上部に、透水性を有するベースマットと、ベースマット上に固定した繊維材からなる立体網状構造の培土保持部と備えた植栽基盤マットを設けてもよい。この場合には、植栽マットの施工後に植栽基盤マットの培土保持部に対して培土を吹き付けて保持させることができるので、予め植栽マットに培土を保持させたものを屋根上に持ち上げる場合と比較して、大型なクレーン等を用いることなく、植栽マットを屋根上に持ち上げて施工することが可能となる。
【0025】
前記根太フレームとして、折板屋根の勾配に適合する角度で軒側へ行くにしたがって嵩高となり、上面が略水平になるように折板屋根の山部の頂部に固定設置可能なものを用いてもよい。この場合には、網状部材を略水平に配置することが可能となり、網状部材上に前述した植生マットを敷設できることは云うまでもなく、網状部材上に排水マットや遮根シートを敷設して盛土を施し、地面等同様に花壇や低木の植栽を行うことが可能となる。
【0026】
前記根太フレームとして同じ構成のものを用い、高さの不足する根太フレーム上に嵩上げ材を固定設置して、網状部材の取付面を略水平に配置してもよい。根太フレームの上面を略水平に構成するには、根太フレームの高さを折板屋根の勾配に応じて軒側へ行くにしたがって高くなるように設定することになるが、このような根太フレームは特注品となることから製作コストが高く、屋根の勾配に沿って複数の根太フレームを連設する場合には、高さの異なる複数種類の根太フレームを製作する必要がある。本発明では、複数の根太フレームとして同じ構成のものを採用するので、高価な根太フレームを複数種類製作する必要がなく、また嵩上げ材は複数種類製作する必要はあるが、安価に製作可能な汎用品を採用できるので、屋根緑化設備の製作コストを全体として低減できる。
【0027】
前記折板屋根の谷部を挟んで隣接配置される根太フレームを連結する連結部材を設けてもよい。この場合には、根太フレームの嵩高になることによる横倒れを防止できる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に係る折板屋根の屋根緑化設備によれば、折板屋根の山部の頂部に根太フレームを固定し、根太フレームの略平坦な取付面に網状部材を固定載置するので、植栽層の下地材としての網状部材を折板屋根に対して折板屋根固定用の剣先ボルトだけで確実に固定できることになる。また、ハゼで固定した折板屋根に適用する場合においても、剣先ボルトで固定した折板屋根と同様に、根太フレームと折板屋根との接触面積を十分に確保できるので、植栽層の下地材としての網状部材を折板屋根に対して強固に固定できることになる。しかも、既設の折板屋根にも施工でき、折板屋根に対する加工も不要なので容易に施工できる。
【0029】
また、植栽層への降雨水をそのまま折板屋根の谷部へ排水でき、折板屋根の排水構造を活用して降雨水を排水できるので、構成を複雑にすることなく、排水性に優れた屋根緑化設備を実現できる。また、植栽層自体が折板屋根に直接的に接触しないので、折板屋根の腐蝕等を防止できるとともに、太陽光線による折板屋根の耐久性の低下を防止でき、折板屋根の耐用年数を向上できる。
【0030】
ここで、前記植栽層として網状部材上に植栽マットを敷設し、複数の植栽固定金具を介して植栽マットを網状部材に固定すると、屋根緑化設備全体を折板屋根に対して折板屋根固定用の剣先ボルトだけで確実に固定できることになる。また、網状部材により折板屋根上に軽量且つ安定した略平坦な設置面を形成できるので、屋根緑化で実績のある軽量且つ簡易な薄層緑化設備の植栽マットを網状部材の上側にそのまま施工することが可能となる。
【0031】
前記植栽マットとして網状部材上に設置される透水性を有する排水マットを下部に備えたものを用いると、遮根シートや植栽基盤マットの破損を防止できるとともに、山部を乗り越える方向への空気の流動を確保して、高温時の温度低減効果並びに低温時の保温効果を得ることが可能となる。
【0032】
固定手段として、下側ベース板と上側ベース板とを備えたものを用いると、網状部材を敷設した後、その上側から支柱を固定できるので、植栽固定金具を容易に施工することが可能となる。また、下側ベース板の長さを調整することで、網状部材の開口の任意の位置に支柱を固定できるので、植栽マットの側縁を容易に且つ確実に植栽固定金具で保持することが可能となる。
【0033】
植栽マットとして排水マットを備えたものを用い、植栽固定金具として、支柱の途中部に、排水マットを網状部材側へ押し付けて、排水マットを網状部材に固定する中間板を配置したものを用いると、遮根シートや植生基盤マット等の施工作業の安全性を十分に確保することが可能となる。
【0034】
網状部材として開口が菱形状のものを用い、開口の長い方の対角線が折板屋根の山部の長手方向と略直交するように網状部材を施工すると、折板屋根の谷部に臨む位置に作業者が乗ったときの荷重を効果的に受け止めることが可能となる。また、このような菱形状の開口を有する網状部材を用いる場合において、例えば上下のベース板からなる固定手段で網状部材を挟持するときには、下側ベース板のサイズを適正に設定することで、開口内の任意の位置に支柱を固定できるので好ましい。
【0035】
折板屋根の上下両端部において、折板屋根の谷部の底部に開口を残した状態で谷部を閉鎖する閉鎖板を設けると、折板屋根の谷部内への過度の空気の流入を制限して、植栽マットの乾燥を防止して植生の成長を促進できるとともに、谷部内への風の吹き込みを制限して、植栽マットに下側から突き上げる力が作用することを抑制し、暴風時や強風時における植栽マットの剥離を効果的に防止できる。
【0036】
根太フレームとして、固定フレームと本体フレームと連結部材とを有するものを用いると、工場等において予め固定フレームに対して剣先ボルトの取付孔等の必要な加工を施しておき、現場では本体フレームを剣先ボルトのピッチに応じて切断し、連結部材を介して固定フレームと本体フレームとを連結するという簡単な作業で、根太フレームを折板屋根に組み付けることが可能となる。また、このように構成することで、固定フレームを取り替えるだけで、この根太フレームをハゼで固定された折板屋根に対してもそのまま適用できるので好ましい。
【0037】
植栽マットの上部に、透水性を有するベースマットと、ベースマット上に固定した繊維材からなる立体網状構造の培土保持部と備えた植栽基盤マットを設けると、植栽マットの施工後に植栽基盤マットの培土保持部に対して培土を吹き付けて保持させることができるので、予め植栽マットに培土を保持させたものを屋根上に持ち上げる場合と比較して、大型なクレーン等を用いることなく、植栽マットを屋根上に持ち上げて施工することが可能となる。
【0038】
前記根太フレームとして、折板屋根の勾配に適合する角度で軒側へ行くにしたがって嵩高となり、上面が略水平になるように折板屋根の山部の頂部に固定設置可能なものを用いると、網状部材を略水平に配置することが可能となり、網状部材上に前述した植生マットを敷設できることは云うまでもなく、網状部材上に排水マットや遮根シートを敷設して盛土を施して、草花や低木等の植生を地面等に植えることが可能となる。
【0039】
前記根太フレームとして同じ構成のものを用い、高さの不足する根太フレーム上に嵩上げ材を固定設置して、網状部材の取付面を略水平に配置すると、屋根緑化設備の製作コストを全体として低減できる。
【0040】
前記折板屋根の谷部を挟んで隣接配置される根太フレームを連結する連結部材を設けると、根太フレームの嵩高になることによる横倒れを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜図5、図10に示すように、屋根緑化設備1は、建築物の折板屋根2上に設置されるもので、上面に上載荷重を受け止める略平坦な取付面10aを有し、折板屋根2の山部4の頂部にその長さ方向に沿って固定設置した複数本の根太フレーム10と、複数の根太フレーム10にわたって敷設固定した略平坦な網状部材20と、植栽層として網状部材20上に敷設した植栽マット30と、植栽マット30を網状部材20に固定する複数の植栽固定金具40とを備えている。また、網状部材20は折板屋根2の外縁近くまで形成され、屋根緑化設備1の外縁部には仕切材50が設けられ、折板屋根2の外縁部には見切り材60が設けられ、仕切材50と見切り材60間には網状部材20により作業通路5が形成され、折板屋根2の谷部6の上下両端には排水用の開口を残した状態で折板屋根2の谷部6を閉鎖して、植栽マット30の下側の谷部6内への空気の流入を制限する閉鎖板70を設けられている。但し、作業通路5は任意のレイアウトで形成することが可能であり、屋根緑化設備1を折板屋根2の外縁まで配置させる部位では、仕切材50を省略して見切り材60を屋根緑化設備1の外縁に配置させてもよい。
【0042】
(折板屋根)
折板屋根2は、図1、図2、図5、図7に示すように、周知の構成のもので、棟側から軒先側へ延びる断面台形状の山部4を左右方向に一定間隔おきに形成し、隣接する山部4間に排水通路を構成する谷部6を形成したものである。折板屋根2を建築物の母屋7に固定するため、母屋7上には折板屋根2の断面形状に沿うように帯板を折曲してなる支持フレーム7aが固定され、支持フレーム7aの上端部には剣先ボルト8が上方へ突出状に固定されている。そして、折板屋根2を母屋7に固定する際には、折板屋根2を建築物の所定位置に設置して、剣先ボルト8を折板屋根2に刺し通し、剣先ボルト8の端部にナット9を締結することで母屋7に固定することになる。尚、折板屋根2としては、例えば断面波形状などの任意の断面形状のものを採用することが可能である。
【0043】
(根太フレーム)
根太フレーム10は、図1〜図5に示すように、折板屋根2に固定されるチャンネル材からなる固定フレーム11と、固定フレーム11に連なって配置されるチャンネル材からなる本体フレーム12と、固定フレーム11と本体フレーム12との内側に配置され、両者を連結するチャンネル材からなる連結部材13とを有するもので、折板屋根2の1個置きの山部4の頂部に剣先ボルト8を利用して固定設置されている。尚、根太フレーム10は、ナット9を外すことなく剣先ボルト8に固定されている。
【0044】
固定フレーム11及び本体フレーム12は、左右の側壁部10bとそれを連結する上壁部10cとを備えた略コ字状の同一断面サイズのチャンネル材でそれぞれ構成され、両フレーム11,12の左右の側壁部10bの下端部には内側へ折り返した載置部10dがそれぞれ形成され、両フレーム11,12はこの載置部10dを折板屋根2の山部4の頂部付近に載置して、上壁部10cを折板屋根2の山部4の頂面から一定高さ浮かした状態で折板屋根2に設置されている。尚、両フレーム11,12は、任意の素材で構成できるが、ネジ孔を形成することなく直接的にビス止め可能な、アルミニウム合金などの比較的軟質な軽量金属で構成することが、施工作業を簡略にできるので好ましい。
【0045】
固定フレーム11の途中部には剣先ボルト8が挿通可能な、屋根の傾斜方向に細長い取付孔14が形成されて、固定フレーム11の取付位置を屋根の傾斜方向に調整できるように構成されている。固定フレーム11の長さは、固定フレーム11に対して剣先ボルト8及び連結部材13を固定可能な長さであれば任意の長さに設定でき、例えば長さ150〜250mmのものを採用できる。本体フレーム12の長さは、取扱性や輸送性を阻害しない範囲内で極力長尺に設定され、例えば長さ1500〜2500mmのものを好適に採用できる。
【0046】
そして、根太フレーム10を折板屋根2に固定する際には、剣先ボルト8が固定フレーム11の取付孔14に挿通するように固定フレーム11を折板屋根2の山部4の頂部に設置した状態で、剣先ボルト8に座板15を装着してからナット16を締結し、固定フレーム11と本体フレーム12とにわたってその内側に連結部材13を装着し、本体フレーム12の一端部を固定フレーム11の端部に突き合わせた状態で、両フレーム11,12を連結部材13にビス17で固定することで、載置部10dを山部4の頂部付近に圧接させた状態で折板屋根2に固定設置されている。但し、予め固定フレーム11に対して連結部材13を固定し、これを折板屋根2に固定してから、連結部材13に固定フレーム11を固定してもよい。また、剣先ボルト8の配設位置は建築物によって異なることから、必要に応じて本体フレーム12を現場合わせで切断して、隣接する剣先ボルト8間の距離に応じて、根太フレーム10の長さを調整することになる。
【0047】
この根太フレーム10においては、固定フレーム11と本体フレーム12と連結部材13に分割構成するので、部品点数は増えるが、本体フレーム12を切断するという現場合わせの簡単な作業で、根太フレーム10の長さを容易に調整できるので、施工作業の作業性を向上できる。
【0048】
但し、固定フレーム11を省略し、連結部材13で本体フレーム12同士を直接的に連結するとともに、本体フレーム12に対して現場合わせで取付孔14を形成することも可能である。尚、固定フレーム11及び本体フレーム12としては、上面に略平坦な取付面10aを有し、折板屋根2の山部4の頂部に面積に接触させて安定的に設置できるものであれば、任意の断面形状のものを採用することが可能で、例えば略ロ字状の閉断面形状の部材を用いてもよい。また、根太フレーム10は各山部4の頂部に設けてもよいし、折板屋根2に対する取付強度を十分に確保できる場合には、複数個置きの山部4の頂部に設けてもよい。更に、本体フレーム12の内側に本体フレーム12と折板屋根2の頂部間の空間に適合する厚さのリブ状部材や板状部材からなるスペーサ部材(図示略)を一定間隔おきに設けてもよい。この場合には、本体フレーム12に作用する下方への荷重をスペーサ部材を介して折板屋根2で受け止めることができるので、本体フレーム12として板厚の薄い軽量且つ安価なものを採用しつつ、作業者等の荷重により本体フレーム12が撓んだり変形したりするという不具合を防止できる。
【0049】
(網状部材)
網状部材20としては、金属線材を編成又は織成してなるものや、エキスパンドメタルを好適に利用できる。網状部材20の開口21の形状は、正方形や長方形、菱形や亀甲形など、任意の形状に設定できるが、後述する植栽固定金具40を用いる場合には、開口21が菱形の網状部材20を用いることが好ましい。
【0050】
この網状部材20は、図1、図2、図6に示すように、隣接する複数の根太フレーム10にわたって取付面10a上に棟から軒先にわたって敷設され、根太フレーム10の上側において網状部材20上に長さ方向に適当間隔おきに固定板22をセットし、この固定板22をビス23で根太フレーム10に固定することで、固定板22と根太フレーム10間に網状部材20を挟持して、根太フレーム10に固定されている。但し、折板屋根2の一部に屋根緑化設備1を設ける場合には、屋根緑化設備1を施工する領域に根太フレーム10及び網状部材20を設けてもよい。
【0051】
(植栽マット)
植栽マット30は、図3、図10に示すように、排水マット31と遮根シート32と植栽基盤マット33とを下側から順番に積層してなるものである。
排水マット31は、繊維材を立体網状構造のマット状に成形した透水性を有する部材で、その圧縮強度は、作業者が上に乗っても座屈しない程度、例えば40kN/m2以上に設定されている。排水マットの厚さは、任意に設定可能であるが、取扱性を考慮して20〜50mmに設定することが好ましい。また方形状に成形したものや、長尺な帯状に成形したものを好適に採用できる。排水マット31として、耐環境性に優れたものであれば任意に設定でき、例えばポリエチレンやポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂繊維、天然繊維や金属細線を好適に利用できる。特に、ポリプロピレンからなる合成樹脂繊維は、耐酸性、耐アルカリ性、耐微生物性などに優れた特性を有するので好適である。
【0052】
遮根シート32は、植栽基盤マット33からの水は通すが植生の根の通過を阻止するもので、合成樹脂繊維や天然繊維からなる透水性に優れた織布や不織布に根が嫌う薬剤を含浸させたものである。この遮根シート32としては任意の厚さのものを採用できるが、植栽マット30の厚さをできるだけ薄肉軽量に構成するため、植生の根の通過を阻止できる範囲で極力薄肉に構成することが好ましく、例えば厚さ2mm以下に設定することになる。遮根シート32としては、例えば幅1.0〜2.0mの汎用サイズのものを使用し、隣接する遮根シート32に関してはその側縁を例えば30cm重ねて施工することになる。
【0053】
植栽基盤マット33は、周知の構成のもので、透水性を有するベースマット34と、ベースマット34上に固定した繊維材からなる立体網状構造の培土保持部35とを備えたもので、ベースマット34は、ポリエチレンやポリプロピレンなどからなる厚さ1.5〜10mmのマットで構成され、培土保持部35は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの繊維材で構成されている。
【0054】
このような植栽基盤マット33は、400〜2000g/m2と軽量なので、例えば幅1〜2mの植栽基盤マット33をロール状に巻いたものを屋根上への移載し、屋根上への施工後に、培土保持部35に対して培土を散布保持させてから植生の苗を植え付けて施工できる。このため、予め植生を植え付けた植栽マット30と比較して、輸送性や屋根上への移載性や施工性に優れたものとなる。但し、植生が生育して根で培土が保持されるまでの間、植生の苗や培土が流失しないようにするため、培土に糊状の液体を散布して、培土の表面を適度に固めてもよい。また、植栽基盤マット33は、植生が生育可能なものであれば、他の周知の構成のものを採用してもよい。
【0055】
植生としては、アルブム、タイトゴメ、リフレクサム、マルバマンネン、メキシコマンネンなどのベンケイソウ科に属するセダム類や芝生などのように、比較的乾燥に強い植生が好適である。
【0056】
但し、植栽マット30に代えて、網状部材20上に排水マット31と遮根シート32とを順次敷設した後、その上に盛土を施した植栽層を設け、盛土に対して草花や低木などの各種植生を植えるように構成することも可能である。特に、後述するように、網状部材20を折板屋根上に略水平面を配置させる場合には、勾配による盛土の流失もほとんどないので、このような構成を好適に採用できる。
【0057】
(仕切材)
次に、植栽マット30の外縁を保持する仕切材50について説明する。
仕切材50は、図1、図2に示すように、ステンレス板や鉄板やアルミ板などの金属製の一定長さの帯板をその幅方向の途中部において約90°折曲して断面略L字状に形成したもので、植栽マット30の外縁に当接される仕切部51と、仕切部51の下端から網状部材20に沿って延びる固定部52とを備え、固定部52を外側へ向けて仕切部51を植栽マット30の外縁に当接させ、固定部52を根太フレーム10にビス53にて固定することで、折板屋根2に固定されている。この仕切材50は、植栽マット30の外縁全長にわたって設けてもよいが、植栽マット30の外縁に適当間隔おきに設けてもよい。
【0058】
(見切り材)
次に、折板屋根2の外縁部を覆う見切り材60について説明する。
見切り材60は、図1、図2、図7、図8に示すように、ステンレス板や鉄板やアルミ板などの金属製の一定長さの帯板をその幅方向の途中部において約90°折曲して断面略L字状に形成したもので、折板屋根2に対する固定部61と、固定部61の一側から上方へ延びる見切り部62とを備え、固定部61を折板屋根2の内側へ向けて見切り部62を折板屋根2の外縁に沿って配置させ、固定部61を根太フレーム10にビス62bで固定することにより、折板屋根2の外縁に沿って連続的に配置されている。
【0059】
見切り部62の上端部には折返部62aが形成され、見切り材60の強度アップと、見切り材60を取り扱う際における安全性を向上するように構成されている。見切り材60としては例えば長さ2mのものが採用され、これを断面略L字状の直列連結部材63及びコーナ連結部材64を用いて連結して、折板屋根2の外縁に沿って連続的も設けることになる。具体的には、見切り材60を直列状に連結する場合には、ステンレス板や鉄板やアルミ板などの金属製の一定長さの帯板をその幅方向の途中部において約90°折曲して断面略L字状に形成した直列連結部材63を用い、この直列連結部材63の上端部を見切り材60の折返部62a内に挿入した状態で、直列連結部材63を隣接する見切り材60の内側に沿って配置させ、直列連結部材63を仕切部51にボルト65及びナット66やリベットなどの固定具を用いて連結することになる。また、見切り材60をL字状に連結する場合には、ステンレス板や鉄板などの金属製の一定長さの帯板をその幅方向の途中部において約90°折曲して断面略L字状に形成し、更に長さ方向の途中部で平面視L字状に折曲させたコーナ連結部材64を用い、このコーナ連結部材64の上端部を見切り材60の折返部62a内に挿入した状態で、コーナ連結部材64を隣接する見切り材60の内側に配置させ、コーナ連結部材64を仕切部51にボルト67及びナット68やリベットなどの固定具を用いて連結することになる。
【0060】
但し、前記仕切材50を省略して、この見切り材60で植栽マット30の外縁を押さえるように構成してもよい。また、見切り材60自体は、屋根の外観を高めるためのものなので、仕切材50が内側にある場合には省略することも可能である。
【0061】
(閉鎖板)
図1、図2に示すように、折板屋根2の上下両端部には、谷部6の底面側を開口させた状態で谷部6を閉鎖する閉鎖板70が設けられている。この閉鎖板70は、ステンレス板や鉄板やアルミ板などの金属板、或いは合成樹脂成形体で構成され、谷部6を閉鎖する台形状の閉鎖部71と、隣接する複数の閉鎖部71を連結する連結部72とを備え、連結部72を根太フレーム10上に固定することで取付けられている。
このような閉鎖板70を設けると、谷部6内への風の流入を抑制し、植栽マット30が乾燥することを防止して植生の成長を促進できるとともに、暴風時や強風時における谷部6への風の流入を阻止して、植栽マット30に下側から突き上げる力が作用することを抑制し、強風による植栽マット30の剥離を効果的に防止できる。
【0062】
(植栽固定金具)
次に、植栽マット30を建築物に固定するための植栽固定金具40について説明する。
植栽固定金具40は、図9〜図12に示すように、網状部材20の開口21から網状部材20の下側へ挿入可能な下側ベース板41と、網状部材20の上側に配置した上側ベース板42と、ボルト部材からなる支柱43と、上側ベース板42の上側において支柱43に螺合させた第1ナット部材44と、支柱43の途中部に上下移動自在に装着した中間板45と、中間板45の上側において支柱43に螺合させた第2ナット部材46と、支柱43の上端部に上下移動自在に装着したトップ板47と、支柱43の端部に螺合させた袋ナット48とを備えている。尚、ベース板41、42が固定手段に相当するが、この固定手段としては、網状部材20をクランプするタイプや網状部材20に引っ掛け可能なフック等を備えたものなど、網状部材20の上側から網状部材20に対して取付可能なものであれば、任意の構成のものを採用できる。
【0063】
この植栽固定金具40は、下側ベース板41と上側ベース板42間に網状部材20を挟持することで網状部材20に固定されている。また、この植栽固定金具40では、上側ベース板42と中間板45間において隣接する排水マット31の側縁を設定間隔おきに挟持することで、排水マット31を建築物に固定保持するとともに隣接する排水マット31を連結し、中間板45とトップ板47間において遮根シート32を挟持するとともに、隣接する植栽基盤マット33の側縁を挟持することで、遮根シート32と植栽基盤マット33を建築物に固定保持するとともに、隣接する植栽基盤マット33を連結することになる。但し、複数枚の排水マット31を1つの植栽基盤マット33の下側に左右に隣接配置させる場合には、植栽固定金具40の支柱43に代えて短尺な支柱を用いるとともにトップ板47を省略し、上側ベース板42と中間板45とで排水マット31のみを挟持するように構成してもよい。
【0064】
上側ベース板42と下側ベース板41と中間板45とトップ板47は、平坦なステンレス鋼板や鉄板などの金属板をプレス成形して製作したものある。但し、合成樹脂材料で構成することも可能である。
上側ベース板42は、支柱43を網状部材20の開口21の任意の位置へ移動させても該開口21から脱落しないサイズであれば、一辺の長さが開口21を構成する網状部材20の一辺の長さLよりも大きな正方形状や、開口21を構成する一辺の長さLよりも大きな直径の円形等、任意の形状及びサイズのものを採用できる。
【0065】
下側ベース板41は、支柱43を装着した状態で網状部材20の下側へ挿入可能で且つ網状部材20の下側に水平に配置させた状態で、網状部材20の開口21内の任意の位置に支柱43を移動させても、網状部材20の上方への移動が規制されるようなサイズ及び形状に設定されている。具体的には、図12に示すように、下側ベース板41の長辺側の一端部から支柱43の反対側の周縁までの長さL1が、網状部材20の開口21の短い方の対角線の長さL2以上で、長い方の対角線の長さL3未満に設定した長方形の板状部材で構成されている。
このような下側ベース板41及び上側ベース板42を用いると、下側ベース板41を網状部材20の下側に挿入した状態で、網状部材20の開口21の任意の位置へ支柱43を移動させても、下側ベース板41と上側ベース板42間に網状部材20を挟持できるので、網状部材20に対する植栽固定金具40の施工が容易になる。
【0066】
中間板45の中央部には支柱43が挿通する挿通孔45aが形成され、中間板45の四隅には排水マット31に差し込まれる第1係合爪45bが中間板45の四隅を下方へ折曲させて形成され、中間板45の四隅の近傍部には第2係合爪45cが切り起こしにより形成され、中間板45は第1係合爪45b及び第2係合爪45cを排水マット31に突き刺して排水マット31に係合されている。第1係合爪45bはその基部の両端部を切り欠いて矢印状に形成され、排水マット31に突き刺した状態で第1係合爪45bが抜け難くなるように構成されている。但し、この中間板45は省略してもよい。
【0067】
トップ板47は、隣接する4枚の植栽基盤マット33を押さえつつ、植栽の生育を阻害しないようにその面積を極力小さくするため、略十文字状に形成されている。トップ板47の中央部には支柱43が挿通する挿通孔47aが形成され、トップ板47の4つの腕部47bには下方へ延びて植栽基盤マット33に差し込まれる係合爪47cが切り起こしにより形成され、トップ板47は係合爪47cを植栽基盤マット33に突き刺して植栽基盤マット33に係合されている。
【0068】
尚、網状部材20、仕切材50、見切り材60、植栽固定金具40を構成する部材、閉鎖板70としては、耐食性に優れた素材で構成することが好ましいが、鉄のように錆びやすい素材で構成する場合には、成形後にメッキ等の防錆処理を施すことになる。
【0069】
この屋根緑化設備1では、植栽マット30を網状部材20の任意の位置に設けた植栽固定金具40で網状部材20に固定できるので、網状部材20に対する植栽マット30の取付強度を十分に確保でき、しかも網状部材20を根太フレーム10の略平坦な取付面10aに対して固定設置するので、根太フレーム10の任意の位置において網状部材20を固定することが可能となり、根太フレーム10に対する網状部材20の取付強度を十分に確保できる。また、植栽マット30の重量が作用した状態で、根太フレーム10の載置部10dが山部4の頂部付近に圧接され、載置部10dと折板屋根2との摩擦抵抗により、根太フレーム10の滑落方向への荷重が効果的に受け止められるので、剣先ボルト8に作用する剪断荷重を軽減して、勾配が比較的大きな折板屋根2に対しても、固定点を増やすことなく屋根緑化設備1を根太フレーム10を介して折板屋根2上に安定的に固定設置することが可能となる。
【0070】
次に、ハゼ84を有する折板屋根80に対して根太フレーム90を固定する場合の固定構造について説明する。尚、その他の構成は前記実施例の屋根緑化設備1と同じ構成であるので、同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
図13、図14に示すように、折板屋根80の山部81の幅方向の途中部には、上方へ突出する幅狭なクビレ部82と、クビレ部82の上端部に形成した円柱部83とからなるハゼ84が山部81に沿って連続的に形成され、この折板屋根80は、剣先ボルト8に代えてハゼ84を介して母屋に固定されている。
【0071】
根太フレーム90は、本体フレーム12と、上下の本体フレーム12を連結する連結部材91と、連結部材91を折板屋根80に固定する1対の固定部材92とを備え、両固定部材92にハゼ84のクビレ部82に沿って延びる当接部93と、円柱部83に沿って延びる円弧状の受け部94とをそれぞれ形成し、当接部93及び受け部94がクビレ部82及び円柱部83にそれぞれ圧接されるように左右の固定部材92を連結部材91に固定することで、左右の固定部材92でハゼ84を挟持して、連結部材91及び固定部材92を折板屋根80に固定できるように構成したものである。
【0072】
連結部材91は、平坦なステンレス鋼板や鉄板などの金属板をプレス成形して製作した略C形断面の部材で、連結部材91の途中部には固定部材92が固定され、連結部材91の両端部には本体フレーム12がその端部を固定部材92に略隙間なく連続的に当接させて外嵌され、本体フレーム12はビス部材17で連結部材91に固定されている。
【0073】
固定部材92は、ハゼ84側に配置される縦壁部92aと、ハゼ84から離間して配置される縦壁部92bと、両縦壁部92aの下端部を連結する底壁部92cとを有し、平坦なステンレス鋼板や鉄板などの金属板をプレス成形して製作した断面略コ字状の部材で、開口を上側へ向けてハゼ84の両側の折板屋根80の山部81上に配置されている。ハゼ84側の縦壁部92aにはクビレ部82に沿って延びる当接部93と、円柱部83に沿って延びる円弧状の受け部94とが形成され、左右の固定部材92はハゼ84を挟んで対面状に配置され、ハゼ84から離間した縦壁部92bを連結部材91の縦壁部91aの外側に配置させて側方よりネジ95で固定することで、当接部93と受け部94とがハゼ84のクビレ部82及び円柱部83にそれぞれ圧接されて、両固定部材92でハゼ84が挟持され、連結部材91及び固定部材92がハゼ84に固定されるように構成されている。
【0074】
連結部材91の下端部には固定部材92の底壁部92c上に沿ってハゼ84側へ延びる折曲規制部91bが形成され、連結部材91を上方へ突き上げる方向の力が作用したときに、折曲規制部91bが固定部材92の底壁部92cに当接することで、ハゼ84を中心として連結部材91の幅方向の途中部が湾曲することを防止して、固定部材92が連結部材91とともにハゼ84を中心として回動することを防止して、ハゼ84の円柱部83から受け部94が脱落することを防止できるように構成されている。
このような固定部材92と連結部材91とからなる固定構造は、折板屋根80に対する屋根緑化設備の固定構造に限らず、エアコンや太陽熱温水器や太陽電池パネルなどを折板屋根80に固定するときにおいても使用できる。
【0075】
尚、前記実施例では本体フレーム12の下端の載置部10dを折板屋根2、80の山部4、81の頂部付近の斜面に載置させたが、山部4、81の上面に載置させてもよい。特に、ハゼ84を有する折板屋根80においては、その上面が比較的幅広に構成されるので、本体フレーム12に代えて、図16に示すように、下端部に内側へ折曲させてなる1対の載置部10eを形成した本体フレーム12Aを設け、この載置部10eを折板屋根80の山部81の上面81aに載置して、根太フレーム10Aを折板屋根80にセットしてもよい。
【0076】
次に、折板屋根2上に網状部材20を略水平に施工する場合の下地構造100について説明する。尚、前記実施例と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
図17、図18に示すように、この下地構造100の根太フレーム10Bは、前記実施例における本体フレーム12に代えて、折板屋根2の勾配に適合する角度で軒側へ行くにしたがって嵩高となり、上面が略水平になるように折板屋根2の山部4の頂部に固定設置可能な本体フレーム12Bを備えている。折板屋根2の山部4の頂部に対する本体フレーム12Bの固定は、図示していないが、基本的には前記実施例と同様に剣先ボルト8やハゼ84を活用してなされている。
【0077】
根太フレーム10Bの最上段の本体フレーム12Bよりも下側の本体フレーム12B上には、上面が最上段の本体フレーム12Bの上面と面一になるように嵩上げ材101が固定設置され、網状部材20は、最上段の根太フレーム10Bの上面と嵩上げ材101の上面とにわたって前記実施例と同様に敷設固定されている。折板屋根2の谷部6を挟んでその両側に配置される本体フレーム12B又は嵩上げ材101は連結部材102を介して連結され、本体フレーム12Bや嵩上げ材101が横倒れしないように構成されている。
【0078】
本体フレーム12Bは、側壁部10bの高さを折板屋根2の勾配に適合する角度で軒側へ行くにしたがって嵩高となるように構成した以外は、前記実施例における本体フレーム12と同様に構成されている。但し、本体フレーム12Bと嵩上げ材101とを一体部材で構成することも可能である。
【0079】
嵩上げ材101はロ字状断面やC型断面形状の汎用部材で構成され、軒側へ配置させるものほど嵩高なものを使用することで、本体フレーム12Bの上面高さと複数の嵩上げ材101の上面高さが同高になるように構成されている。但し、嵩上げ材101を省略し、本体フレーム12Bの上面に沿って段階的に段落ちするように網状部材20を配置させることも可能である。
【0080】
根太フレーム10Bに対する嵩上げ材101の連結は、本体フレーム12Bと嵩上げ材101とをボルト等で直接的に連結して行ってもよいし、本体フレーム12Bの側面と嵩上げ材101の側面とにわたって固定板を配置させ、この固定板を本体フレーム12Bと嵩上げ材101とに固定して両者を連結してもよい。また、連結部材102の端部にフランジ部を形成し、このフランジ部を根太フレーム10Bと嵩上げ材101とにわたって連結することで、根太フレーム10Bと嵩上げ材101とを連結してもよい。
【0081】
このような下地構造100の上側に、前述した植生マット30を配置したり、排水マット31と遮根シート32を配置して盛土を施して植生を植えたりして、屋根緑化設備を構成することになる。そして、このような屋上緑化設備では、網状部材20を略水平に配置できるので、培土や盛土の流失を防止して地面に植生を植える場合と略同様に植生を植えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】植栽マットを省略した状態での折板屋根の屋根緑化設備の要部の斜視図
【図2】同屋根緑化設備の分解斜視図
【図3】植栽マットを敷設した状態での図1のIII−III線断面図
【図4】植栽マットを省略した状態での固定フレーム付近の平面図
【図5】図4のV−V線断面図
【図6】図1のVI−VI線における分解状態での断面図
【図7】見切り材の要部の分解斜視図
【図8】見切り材の連結部分の縦断面図
【図9】植栽固定金具の分解斜視図
【図10】屋根緑化設備に組み付けた状態での植栽固定金具の縦断面図
【図11】植栽固定金具の縦断面図
【図12】図10のXII−XII線断面図
【図13】ハゼを形成した折板屋根に対する根太フレームの固定部分の分解斜視図
【図14】同根太フレームを折板屋根に組み付けた状態での図13のXIV−XIV線断面図
【図15】同根太フレームを折板屋根に組み付けた状態での図13のXV−XV線断面図
【図16】他の構成の根太フレーム及びそれを組み付けた折板屋根の縦断面図
【図17】他の構成の屋根緑化設備の下地構造の縦断面図
【図18】図17のXVIII−XVIII線断面図
【符号の説明】
【0083】
1 屋根緑化設備 2 折板屋根
4 山部 5 作業通路
6 谷部 7 母屋
7a 支持フレーム 8 剣先ボルト
9 ナット
10 根太フレーム 10a 取付面
10b 側壁部 10c 上壁部
10d 載置部
11 固定フレーム 12 本体フレーム
13 連結部材 14 取付孔
15 座板 16 ナット
17 ビス
20 網状部材 21 開口
22 固定板 23 ビス
30 植栽マット 31 排水マット
32 遮根シート 33 植栽基盤マット
34 ベースマット 35 培土保持部
40 植栽固定金具 41 下側ベース板
42 上側ベース板 43 支柱
44 第1ナット部材 45 中間板
45a 挿通孔 45b 第1係合爪
45c 第2係合爪 46 第2ナット部材
47 トップ板 47a 挿通孔
47b 腕部 47c 係合爪
48 袋ナット
50 仕切材 51 仕切部
52 固定部 53 ビス
60 見切り材 61 固定部
62 見切り部 62a 折返部
62b ビス
63 直列連結部材 64 コーナ連結部材
65 ボルト 66 ナット
67 ボルト 68 ナット
70 閉鎖板 71 閉鎖部
72 連結部 80 折板屋根
81 山部 82 クビレ部
83 円柱部 84 ハゼ
90 根太フレーム 91 連結部材
91a 縦壁部 91b 折曲規制部
92 固定部材 92a 縦壁部
92b 縦壁部 92c 底壁部
93 当接部 94 受け部
95 ネジ
10A 根太フレーム 10e 載置部
12A 本体フレーム 81a 上面
10B 根太フレーム 12B 本体フレーム
100 下地構造 101 嵩上げ材
102 連結部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に上載荷重を受け止める略平坦な取付面を有し、折板屋根の山部の頂部にその長さ方向に沿って固定設置した複数本の根太フレームと、
前記複数本の根太フレームにわたって敷設固定した略平坦な網状部材と、
前記網状部材上に設けた植栽層と、
を備えた折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項2】
前記植栽層として網状部材上に植栽マットを敷設し、複数の植栽固定金具を介して植栽マットを網状部材に固定した請求項1記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項3】
前記植栽マットとして網状部材上に設置される透水性を有する排水マットを下部に備えたものを用いた請求項2記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項4】
前記植栽固定金具として、支柱と、支柱の下端部を網状部材に固定する固定手段と、支柱の上端部に配置したトップ板であって、植栽マットを網状部材側へ押し付けて、植栽マットを網状部材に固定するトップ板とを備えたものを用いた請求項2又は3記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項5】
前記固定手段として、網状部材の開口から下側へ挿入可能な下側ベース板と、網状部材の上側に配置される上側ベース板とを備え、支柱を介して上下のベース板間に網状部材を挟持して支柱を網状部材に固定するものを用いた請求項4記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項6】
前記植栽マットとして排水マットを備えたものを用い、前記植栽固定金具として、支柱の途中部に、排水マットを網状部材側へ押し付けて、排水マットを網状部材に固定する中間板を配置したものを用いた請求項4又は5記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項7】
前記網状部材として開口が菱形状のものを用い、開口の対角線の長い方が折板屋根の山部の長手方向と略直交するように網状部材を施工した請求項1〜6のいずれか1項記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項8】
前記折板屋根の上下両端部において、折板屋根の谷部の底部に開口を残した状態で谷部を閉鎖する閉鎖板を設けた請求項1〜7のいずれか1項記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項9】
前記根太フレームとして、折板屋根固定用の剣先ボルト又はハゼに固定されるチャンネル材からなる固定フレームと、固定フレームに連なって配置されるチャンネル材からなる本体フレームと、固定フレームと本体フレームとを連結する連結部材とを有するものを用いた請求項1〜8のいずれか1項記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項10】
前記植栽マットの上部に、透水性を有するベースマットと、ベースマット上に固定した繊維材からなる立体網状構造の培土保持部と備えた植栽基盤マットを設けた請求項1〜9のいずれか1項記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項11】
前記根太フレームとして、折板屋根の勾配に適合する角度で軒側へ行くにしたがって嵩高となり、上面が略水平になるように折板屋根の山部の頂部に固定設置可能なものを用いた請求項1〜10のいずれか1項記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項12】
前記根太フレームとして同じ構成のものを用い、高さの不足する根太フレーム上に嵩上げ材を固定設置して、網状部材の取付面を略水平に配置した請求項11記載の折板屋根の屋根緑化設備。
【請求項13】
前記折板屋根の谷部を挟んで隣接配置される根太フレームを連結する連結部材を設けた請求項11又は12記載の折板屋根の屋根緑化設備。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2007−181467(P2007−181467A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38240(P2007−38240)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【分割の表示】特願2003−35090(P2003−35090)の分割
【原出願日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【出願人】(302003233)株式会社都市基盤コンサルタント (2)
【出願人】(302003222)有限会社ケイエスディー (2)
【Fターム(参考)】