説明

抵抗上昇判定装置

【課題】簡易な構成で、停電を伴うことなく、電線接続部の抵抗値が規定値よりも過大であることを判定する。
【解決手段】本発明にかかる抵抗上昇判定装置1は、第二の電線18の端部を第一の電線14と電気的に接続する電線接続部材(スリーブ12)の電気的抵抗が規定値以上であるか否かを判定する装置である。抵抗部材32と所定値以上の電流が流れたときに溶断するヒューズ部材(ヒューズ34)とを直列に接続した判定回路30を備え、判定回路30を電線接続部材(スリーブ12)に並列に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線の電気的接続部分の劣化や施工不備の有無を、送電の停止を伴うことなく簡易な構成にて、電気的接続部分の抵抗値に基づいて判定する抵抗上昇判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大電力を送電する架空送電線等において複数の電線を電気的に接続するに際し、圧縮接続スリーブや引き留めクランプ等の電線接続部材が用いられている。
例えば、圧縮接続スリーブを用いて2本の電線を接続する場合、筒状のスリーブの軸方向両端部から接続しようとする電線の各端部側を夫々挿入し、スリーブ内にて各電線端部を対向させて、外部からスリーブごと電線を圧縮して、電気的に接続する。
この接続部材部分は、雨水の浸入による腐食や酸化等により経年劣化して電気的抵抗値が上昇することが知られている。また、スリーブの軸心に対して電線の軸心が著しく偏った状態のまま接続する等の施工不備があった場合にも高い抵抗値を示すことが知られている。このように、何らかの理由で規定値よりも過大な抵抗値を示す場合、接続部材部分において異常な発熱等を生じ、熱による送電線の損傷又は切断といった大事故に繋がる虞がある。
このような事態を未然に防止するため、接続部材部分の抵抗を実際に測定し、その劣化状態を判定又は判断することが行われている。例えば、特許文献1には、接続部材部分の抵抗を正確かつ効率的に測定可能な抵抗測定装置の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−145346公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の抵抗測定装置においては、接続部材部分の抵抗値を直接測定するので、抵抗測定装置の設置作業や除去作業が必要である。また、抵抗値の測定には送電を一時的に停止する必要があるので、停電に伴う経済的損失が大きい。さらに、抵抗値が上昇したか否かを判定するためには、時間をおいて再度抵抗値を測定しなければならないといった問題がある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、停電を伴うことなく、電線接続部の抵抗値が規定値以上であることを判定可能な抵抗上昇判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電線の端部を他の電線と電気的に接続する電線接続部材の電気的抵抗が規定値以上であるか否かを判定する抵抗上昇判定装置であって、抵抗部材と、所定値以上の電流が流れたときに溶断するヒューズ部材とを直列に接続した判定回路を備え、該判定回路を前記電線接続部材に並列に接続した抵抗上昇判定装置を特徴とする。
請求項1の発明では、電線を流れる電流の一部を判定回路に分流する。電線接続部材と判定回路とは並列接続されているので、判定回路を流れる電流の大きさは電線接続部材と判定回路の抵抗の比によって定まる。つまり、電線接続部材の抵抗が上昇すると、判定回路を流れる電流が大きくなって、所定値以上となったときにヒューズ部材が溶断する。
【0006】
請求項2に記載の発明は、電線の端部間を電気的に接続する電線接続部材の電気的抵抗が規定値以上であるか否かを判定する抵抗上昇判定装置であって、第一の抵抗部材と第二の抵抗部材とを導線を介して直列に接続した直列抵抗体と、所定値以上の電流が流れたときに溶断するヒューズ部材と、前記電線接続部材から延びる一方の電線に直列に接続された第三の抵抗部材と、を備え、前記直列抵抗体を、前記電線接続部材及び前記第三の抵抗部材と並列接続し、前記ヒューズ部材を、前記第一の抵抗部材と前記第二の抵抗部材との間の前記導線部分と、前記電線接続部材と前記第三の抵抗部材との間の電線部位との間に接続してブリッジ回路を構成した抵抗上昇判定装置を特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記第三の抵抗部材が前記電線自体である請求項2に記載の抵抗上昇判定装置を特徴とする
請求項2又は3の発明では、ブリッジ回路を構成しているので、電線接続部材と第二の抵抗部材の有する各抵抗値の積と、第三の抵抗部材と第一の抵抗部材の有する各抵抗値の積とが同じであれば、ヒューズ部材に電流が流れない。しかし、電線接続部材の抵抗値が上昇して上記積に差異が生じれば、ヒューズ部材に電流が流れる。電線接続部材の抵抗値の上昇に伴ってヒューズ部材に流れる電流が大きくなり、所定値以上となったときにヒューズ部材が溶断する。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記ヒューズ部材は、並列に配置された定格電流の異なる複数のヒューズ素子を備え、各前記ヒューズ素子が前記電線接続部材の抵抗値の上昇に応じて段階的に溶断するように構成した請求項1乃至3の何れか一項に記載の抵抗上昇判定装置を特徴とする。
請求項4の発明では、電線接続部材の抵抗値の上昇に応じてヒューズ部材が段階的に溶断するようにしたので、電線接続部材の経時における劣化の程度を判断することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電線接続部材の抵抗値の上昇に応じてヒューズ部材に流れる電流が大きくなるような回路を形成し、抵抗値が既定値以上となったときにヒューズが溶断するように構成したので、電線接続部材の抵抗値が上昇したことを判定するのに、送電を停止する必要がなく、抵抗値の判定に伴う経済的損失を最小限に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る抵抗上昇判定装置の使用状態を示した模式図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る抵抗上昇判定装置の電気的等価回路図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る抵抗上昇判定装置の変形使用例を示した模式図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る抵抗上昇判定装置の使用状態を示した模式図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る抵抗上昇判定装置の電気的等価回路図である。
【図6】本発明の第三の実施形態に係る抵抗上昇判定装置の電気的等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第一の実施形態〕
本発明の第一の実施形態について図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る抵抗上昇判定装置の使用状態を示した模式図である。図2は、本実施形態に係る抵抗上昇判定装置の電気的等価回路図である。本実施形態に係る抵抗上昇判定装置は、電線接続部材の抵抗が上昇したことを、これと並列に接続された判定回路内のヒューズが溶断するか否かに基づいて判定する点に特徴がある。なお、以下の説明において「接続」とは、電気的に接続されていることを意味する。
抵抗上昇判定装置1は、複数の電線を接続する電線接続部材の抵抗が規定値以上となったか否かを判定する装置である。
図1に示す送電線路10は、例えば架空送電線等の大電力を送電する線路であり、圧縮接続スリーブ12(電線接続部材、以下単に「スリーブ」という。)にて2本の電線14(第一の電線16、第二の電線18)を接続した電気的接続部分を有している。スリーブ12は、第一の電線16と第二の電線18の端部間を接続する部材である。直線的な筒状のスリーブ12の両端部から第一の電線16と第二の電線18の端部側を夫々挿入し、スリーブ12の中間部にて各端部を対向させ、圧縮工具にてスリーブ12ごと第一の電線16と第二の電線18を圧縮して接続している。
【0012】
抵抗上昇判定装置1は、抵抗部材32と定格電流(所定値)以上の電流が流れたときに溶断するヒューズ34(ヒューズ部材)とが直列に接続された判定回路30と、判定回路30の両端部を送電線路10と接続するクランプ36とを備えている。なお、抵抗部材32とヒューズ34とクランプ36とは、夫々導線38にて接続されている。
2つのクランプ36a、36bは、スリーブ12の軸方向端部近傍に夫々接続されている。
【0013】
抵抗上昇判定装置1の動作原理を図2に基づいて説明する。
スリーブ12の抵抗値Rs、抵抗部材32の抵抗値Rh、送電線路10を流れる電流i、スリーブ12を流れる電流is、判定回路30を流れる電流ih、ヒューズ34の定格電流ftであるとする。なお、説明の便宜上、抵抗値Rh、電流i、定格電流ftは一定であるとし、ヒューズ34の抵抗は考えないものとする。
送電線路10と判定回路30とは並列接続されているので、i=is+ihを具備する。また、電流ihは、以下の式で与えられる。
ih={Rs/(Rs+Rh)}×i
スリーブ12の当初抵抗値をRs0とすると、電流iは送電線路10と判定回路30との間で分流され、スリーブ12側に電流is0、判定回路30側に電流ih0が流れる。スリーブ12が正常な状態においては、ヒューズ34には定格電流ftを超えない電流が流れる。
スリーブ12の抵抗が上昇して、規定値以上となる抵抗値Rs1になったとすると、電流iの分流割合が変化し、スリーブ12側には電流is1(<is0)、判定回路30側には電流ih1(>ih0)が流れる。その結果、電流ih1が定格電流ft以上となった場合には、ヒューズ34が溶断する。ヒューズ34が溶断したか否かを確認することにより、スリーブ12の抵抗値がある既定値よりも上昇したか否かを判定することができる。尚、電流ih1の値は、抵抗値Rs1が定まれば、一義的に決定される。
【0014】
以上を踏まえて、抵抗上昇判定装置1について詳細に説明する。
電線接続部材には、図1に示す直線的なスリーブ12のみならず、送電線路10から電線を分岐させるL型スリーブ(図3参照)や、引き留めクランプ等を挙げることができる。いずれも、施工不備や経年劣化により抵抗値が上昇するので、これらの電線接続部材に対して本実施形態に係る抵抗上昇判定装置1を適用することにより、電線接続部材の抵抗の上昇を判定することができる。
図3は、本実施形態に係る抵抗上昇判定装置の変形使用例を示した模式図である。L型スリーブにて分岐された送電線路部分に抵抗上昇判定装置を設置した例を示している。図示するように、抵抗上昇判定装置2においては、クランプ36aをL型スリーブ20の一端部近傍の第一の電線16上に接続し、クランプ36bをL型スリーブ20の他端部近傍の第二の電線18上に接続することにより、L型スリーブ20の抵抗を判定することができる。
【0015】
また、クランプ36をスリーブ20上に接続しても構わない。少なくとも、抵抗の上昇を判定したい箇所に対して判定回路30を並列に接続する。なお、送電線路10と判定回路30とを電気的に接続することが可能であれば、クランプ36以外の部材を用いてもよい。
抵抗部材32には、固定抵抗器や可変抵抗器、あるいは抵抗線等を用いることができる。また、抵抗とヒューズが一体となった抵抗付ヒューズを用いてもよい。抵抗線を用いた場合は、導線38と抵抗部材32とを一体化することができるので、設置、及び抵抗値Rhの計算が容易である。
【0016】
ヒューズ34の定格電流は、スリーブ12が劣化したときに許容できる抵抗値(既定値)、及びそのときに判定回路30に流れる電流ihの大きさに基づいて決定する。電流ihは、抵抗値Rhを大きくすれば小さくなり、抵抗値Rhを小さくすれば大きくなる。従って、抵抗部材32の抵抗値を十分に大きく設定することにより、ヒューズ34の定格電流を小さくすることができ、低価格な市販のヒューズを使用することができる。なお、電流iは実際には様々な要因により変動するので、平常時における電流の最大値を考慮してヒューズの定格電流を決定する。また、上記原理説明においては、ヒューズ34の抵抗を無視して説明したが、実際にはヒューズ34の抵抗を含む判定回路30全体の抵抗値を考慮して決定する。
また、溶断したときに目視可能な構成を有するヒューズを用いることにより、スリーブ12の抵抗の上昇判定が容易となる。さらに、溶断したときに表面に斜線等の所定の模様が出現するものや、LEDが発光するもの等、遠方から視認容易な構成とすれば、ヘリコプターによる巡視や双眼鏡等を用いた監視によりスリーブ12抵抗の上昇を確認することができる。また、ヒューズ34が溶断した場合には、ヒューズ34のみを交換することにより、判定回路30を再利用することができる。
【0017】
以下、抵抗上昇判定装置1について、具体的な数値例を示す。
電線14として、アルミ覆鋼心アルミより線(ACSR/AC120[mm^2])、電気抵抗0.216[Ω/km]を用い、抵抗部材32として、アルミ覆鋼線(AC)径3.8mm、電気抵抗6.61[Ω/km]、を用いると仮定する。仮に、スリーブ12の当初電気抵抗が電線の50%であるとすると、スリーブ12の当初電気抵抗は0.108[Ω/km]である。
ここで、スリーブ12の長さを0.5[m]、抵抗部材32の長さを0.7[m]とすると、
スリーブ12の当初抵抗値 Rs0=5.4×10^(−5)[Ω]
抵抗部材32の抵抗値 Rh=4.63×10^(−3)[Ω]
電線14に流れる電流の最大値がi=500[A]であるとき、
ih0={Rs0/(Rs0+Rh)}×i=5.8[A]
スリーブ12の抵抗値Rs1が当初抵抗値Rs0の2倍になったとき(Rs1=2Rs0)、判定回路30に流れる電流ih1は、
ih1={2Rs0/(2Rs0+Rh)}×i=11.4[A]
従って、この具体例において、スリーブ12の抵抗値Rs1が当初抵抗値Rs0の2倍になったことを判定したいのであれば、定格電流10[A]程度のヒューズ34を用いれば足りる。
【0018】
以上のように、本実施形態によれば、スリーブの抵抗値の上昇に応じて判定回路に流れる電流が大きくなり、所定値以上となったときに最終的にヒューズを溶断するので、送電を停止することなく簡易な構成にてスリーブ抵抗の上昇を判定することができる。また、スリーブ抵抗に対して十分大きな抵抗値を有する抵抗部材を使用することにより、大電流の流れる送電線路に抵抗上昇判定装置を設置する場合であっても、定格電流の低いヒューズを用いることができ、経済的である。また、ヒューズが溶断しても送電が停止しないので、抵抗値の判定に伴う経済的損失を最小限に止めることができる。
【0019】
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態について図4及び図5に基づいて説明する。図4は、本実施形態に係る抵抗上昇判定装置の使用状態を示した模式図である。図5は、本実施形態に係る抵抗上昇判定装置の電気的等価回路図である。本実施形態に係る抵抗上昇判定装置は、送電線路と判定回路との間にブリッジ回路を構成した点に特徴がある。以下、第一の実施形態と同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0020】
抵抗上昇判定装置3は、第一の抵抗部材52と第二の抵抗部材54とを直列に接続した直列抵抗体55と、所定値以上の電流(定格電流以上の電流)が流れたときに溶断するヒューズ56(ヒューズ部材)と、スリーブ12から延びる第二の電線18(一方の電線)に直列に接続された第三の抵抗部材58と、を備えている。そして、直列抵抗体55を、スリーブ12及び第三の抵抗部材58と並列接続し、ヒューズ56を、第一の抵抗部材52と第二の抵抗部材54との間の導線38部分と、スリーブ12と第三の抵抗部材58との間の電線部位(電線22)との間に接続してブリッジ回路を構成している。
判定回路50は、第一の抵抗部材52と第二の抵抗部材54とが直列に接続された直列抵抗体55と、第一の抵抗部材52と第二の抵抗部材54との間の導線38部分に第一の端部を接続されたヒューズ56とを備えたT形の回路である。送電線路10と接続される判定回路50の各部分には、夫々判定回路50と送電線路10とを接続するクランプ36を有している。また、クランプ36、第一の抵抗部材52、第二の抵抗部材54、ヒューズ56は、夫々導線38にて接続されている。
3つのクランプ36のうち2つのクランプ36a、36bは、スリーブ12の軸方向端部近傍における電線14の部位に夫々接続されている。またクランプ36cはクランプ36bとの間で第三の抵抗58を挟むように接続されている。
【0021】
抵抗上昇判定装置3の動作原理を図5に基づいて説明する。
スリーブ12の抵抗値Rs、第一の抵抗部材52の抵抗値R1、第二の抵抗部材54の抵抗値R2、第三の抵抗部材58の抵抗値R3、送電線路10を流れる電流i、スリーブ12を流れる電流is、第一の抵抗部材52を流れる電流ih、ヒューズ56を流れる電流if、ヒューズ56の定格電流ftであるとする。なお、説明の便宜上、抵抗値R1、抵抗値R2、抵抗値R3、電流i、定格電流ftは一定であると仮定する。
当初、抵抗上昇判定装置3においては、ブリッジ回路の平衡条件を具備するように、送電線路10側と判定回路50側とがヒューズ56にてブリッジ接続されている。従って、スリーブ12の当初抵抗値Rs0に対して、
Rs0×R2=R3×R1
を満たし、電流if=0である。
スリーブ12の抵抗値が上昇してRs1になった場合には、
Rs1×R2≠R3×R1
となって平衡条件を満たさなくなり、電流if≠0となる。スリーブ12の抵抗値の上昇とともに電流ifは増大し、スリーブ12の抵抗値が規定値以上となり、if≧ftとなったときに、ヒューズ56が溶断する。
【0022】
抵抗上昇判定装置3においては、第三の抵抗部材58を第二の電線18に配置しているが、電線自体が有する電気抵抗を利用してもよい。すなわち、第三の抵抗部材58を配置せず、第二の電線18の一部分(図中、クランプ36aとクランプ36cに挟まれた電線部分)の電気抵抗を利用してもよい。
ヒューズ34の定格電流は、電流iの平常送電状態における最大値、スリーブ12が劣化したときに許容できる抵抗値(既定値)、及びスリーブ12が劣化したときにヒューズ内を流れる電流ifを考慮して決定する。
【0023】
以上のように本実施形態によれば、スリーブの抵抗が上昇したときにヒューズ内を流れる電流が増大してヒューズを溶断するので、送電を停止することなく簡易な構成にてスリーブ抵抗の上昇を判定することができる。本実施形態においても、定格電流の低いヒューズを用いることができ、経済的である。また、ブリッジの平衡条件を満たしている限りヒューズ内には電流が流れないので、電流iの異常な変動によってヒューズが溶断することを防止できる。また、ヒューズが溶断しても送電が停止しないので、判定の際には送電停止に伴う経済的損失を生じない。
【0024】
〔第三の実施形態〕
本発明の第三の実施形態について図6に基づいて説明する。図6は、本実施形態に係る抵抗上昇判定装置の電気的等価回路図である。本実施形態に係る抵抗上昇判定装置は、ヒューズ部材に複数のヒューズ素子を備え、電線接続部材の抵抗値の上昇に応じて段階的に各ヒューズ素子が溶断するようにした点に特徴がある。以下、第一の実施形態と同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
抵抗上昇判定装置4は、第一の実施形態における判定回路30のヒューズ部分を変形した実施形態である。判定回路60においては、抵抗部材32と、並列に接続された定格電流の異なる2つのヒューズ素子(第一のヒューズ62と第二のヒューズ64)が直列に接続されて、ヒューズ部材65を構成している。
【0025】
以下、抵抗上昇判定装置4の動作原理を説明する。第一のヒューズ62の定格電流をft1、第二のヒューズ64の定格電流をft2としたとき、ft1<ft2であるとする。また、説明の便宜上、第一のヒューズ62と第二のヒューズ64の抵抗値は夫々0であるとするが、実際にはヒューズの抵抗も考慮する必要がある。
(1)スリーブ12の抵抗値Rs=Rs0(当初抵抗)のとき
判定回路60には電流ih0が流れ、第一のヒューズ62と第二のヒューズ64には、夫々電流ih0/2が流れる。
このとき、ih0/2<ft1<ft2を満たし、第一のヒューズ62と第二のヒューズ64は溶断しない。
(2)スリーブ12の抵抗値Rs=Rs1(>Rs0)のとき
抵抗値Rs1が第一の規定値以上であるが、第二の規定値を超えない場合である。
判定回路60には電流ih1が流れ、第一のヒューズ62と第二のヒューズ64には、夫々電流ih1/2が流れる。
このとき、ft1≦ih1/2を満たし、第一のヒューズ62が溶断する。また、第一のヒューズ62が溶断したことにより、第二のヒューズ64に電流ih1が流れることとなるが、ih1<ft2を満たし、第二のヒューズ64は溶断しない。
(3)スリーブ12の抵抗値Rs=Rs2(>Rs1)のとき
抵抗値Rs2が第二の規定値以上となった場合である。
判定回路60には電流ih2が流れ、第二のヒューズ64に電流ih2が流れる。
ft2≦ih2を満たし、第二のヒューズ64が溶断する。
【0026】
以上のように、本実施形態によれば、ヒューズ部材として定格電流の異なる複数のヒューズを並列に配置するとともに、電線接続部材の抵抗の上昇に応じて各ヒューズが段階的に溶断するようにしたので、電線接続部材の抵抗の上昇を段階的に把握することができる。
なお、本実施形態を第二の実施形態に適用して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1、2、3、4…抵抗上昇判定装置、10…送電線路、12…スリーブ(圧縮接続スリーブ)、14…電線、16…第一の電線、18…第二の電線、20…L型スリーブ、22…電線、24…30…判定回路、32…抵抗部材、34…ヒューズ、36、36a、36b、6c…クランプ、38…導線、50…判定回路、52…第一の抵抗部材、54…第二の抵抗部材、55…直列抵抗体、56…ヒューズ、58…第三の抵抗部材、60…判定回路、62…第一のヒューズ、64…第二のヒューズ、65…ヒューズ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部を他の電線と電気的に接続する電線接続部材の電気的抵抗が規定値以上であるか否かを判定する抵抗上昇判定装置であって、
抵抗部材と、所定値以上の電流が流れたときに溶断するヒューズ部材とを直列に接続した判定回路を備え、該判定回路を前記電線接続部材に並列に接続したことを特徴とする抵抗上昇判定装置。
【請求項2】
電線の端部間を電気的に接続する電線接続部材の電気的抵抗が規定値以上であるか否かを判定する抵抗上昇判定装置であって、
第一の抵抗部材と第二の抵抗部材とを導線を介して直列に接続した直列抵抗体と、所定値以上の電流が流れたときに溶断するヒューズ部材と、前記電線接続部材から延びる一方の電線に直列に接続された第三の抵抗部材と、を備え、
前記直列抵抗体を、前記電線接続部材及び前記第三の抵抗部材と並列接続し、前記ヒューズ部材を、前記第一の抵抗部材と前記第二の抵抗部材との間の前記導線部分と、前記電線接続部材と前記第三の抵抗部材との間の電線部位との間に接続してブリッジ回路を構成したことを特徴とする抵抗上昇判定装置。
【請求項3】
前記第三の抵抗部材が前記電線自体であることを特徴とする請求項2に記載の抵抗上昇判定装置。
【請求項4】
前記ヒューズ部材は、並列に配置された定格電流の異なる複数のヒューズ素子を備え、各前記ヒューズ素子が前記電線接続部材の抵抗値の上昇に応じて段階的に溶断するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の抵抗上昇判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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