説明

抵抗体エレメント及びその製造方法

【課題】小径のものを容易に製造することができ、また材料に対する制約が少なく、種々の用途に応じて最適な材料で製作することができるようにする。
【解決手段】処理対象物が流通可能な筒状のケーシング1の内部に配設される抵抗体エレメント2に、抵抗体である複数の突片3a〜3pが、円形断面をなす筒状体4の内周面から中心部に向けて突出され、下流側に傾斜した状態で互いに接触しないように軸線方向に所定の間隔をおき、かつ周方向に順次所定角度ずつずらして設けられており、これらの突片が、筒状体の周壁を切り起こして形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物を攪拌・乱流化するための抵抗体エレメント及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流路中に静止した抵抗体によって攪拌混合を行う静止型混合器は、抵抗体の構造により乱流混合方式と層流混合方式とに大別される。このうち、乱流混合方式は層流混合方式に比較して混合能力の面で格段に優れている反面、抵抗体の構造が複雑になることから目詰まりを起こしやすいといった欠点を有している。
【0003】
そこで、本件出願人は、この乱流混合方式の問題を解決することを目的とした静止型混合器を先に提案した(特許文献1参照)。この静止型混合器は、単純な形状の1対の抵抗体を備えた抵抗体エレメントをケーシングの周方向に所定角度ずつずらしながら軸線方向に複数並べて配置することにより、乱流を効果的に発生させて高効率な攪拌混合を実現すると同時に目詰まりを大幅に抑制可能なものとなっている。
【0004】
また、本件出願人は、圧力損失及び脱着時の作業性に関する問題を解決することを目的とした抵抗体エレメントを先に提案した(特許文献2参照)。この抵抗体エレメントは、パイプの内周面に沿うように周方向に複数列んで配置された軸線方向の支柱を介して複数の抵抗体を相互に連結することにより、乱流発生能力を維持しつつ圧力損失を低減可能で、かつパイプに対する脱着作業の手間を減らすことが可能なものとなっている。
【0005】
この他、静止型混合器には、種々の形態のものが提案されている(特許文献3〜9参照)。
【特許文献1】特許第2923402号公報
【特許文献2】特許第3389068号公報
【特許文献3】実公昭51−36301号公報
【特許文献4】実開昭55−107273号公報
【特許文献5】実開昭57−55529号公報
【特許文献6】特開昭62−140631号公報
【特許文献7】特開平9−131521号公報
【特許文献8】特開2004−351414号公報
【特許文献9】特開2006−167718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、静止型混合器では、少量の流体を混合する場合、混合に必要な流速を維持するために内径を小さくする必要があり、小径で高効率な静止型混合器が要望される。また静止型混合器の材質は、例えば医療分野などで使い捨てのために低コストが要求される用途では安価な紙材などが好適である。また静止型混合器でオゾンガスと水とを混合して、各種の洗浄用途に用いるオゾン水を製造することができるが、微量の有害物質による汚染を問題とする精密洗浄、例えば医療用器具や半導体の洗浄では、フッ素樹脂、特に良好な物性を有するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が好適であり、このような種々の用途に応じて最適な材料で静止型混合器を製作することが望まれる。
【0007】
このような要望に対し、前記の特許文献1に開示された構成のものでは、筒状体の内壁面に溶接、ろう付け、あるいは接着剤等で抵抗体を固着する他、筒状体を2分割に縦割りすることで金型により製造することが可能になるが、固着による方法は、筒状体の内部での固着作業が必要なために小径化に限界があり、またPTFEのように接着が困難な材料では製造ができない不都合が生じる。他方、金型による方法は、小径化の面ではさほど問題がないものの、金型への注入が可能な材料を使用する必要があるため、材料面での制約が生じ、例えばPTFEのように溶融が困難な材料では製造ができない不都合が生じる。
【0008】
また、前記の特許文献2に開示された構成のものでは、支柱と抵抗体を相互に固着することで製造され、多数の部品の固着作業が必要なために小径化に限界があり、またPTFEのように接着による製造が困難な材料では製造ができない不都合が生じる。
【0009】
また、前記の特許文献3〜9に開示された構成のものでも、小径で高い効率を有し、また種々の用途に応じて最適な材料で製作することができるという要望を十分に満足させることはできない。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、小径のものを容易に製造することができ、また材料に関する制約が少なく、種々の用途に応じて最適な材料で製作することができるように構成された抵抗体エレメント及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明においては、請求項1に示すとおり、処理対象物が流通可能な筒状のケーシングの内部に配設される抵抗体エレメントにおいて、前記ケーシングの内部に挿入される筒状体と、この筒状体の内周面から中心部に向けて突出され、下流側に傾斜した状態で互いに接触しないように軸線方向に所定の間隔をおき、かつ周方向に順次所定角度ずつずらして複数設けられた抵抗体とを有し、この抵抗体が、前記筒状体の周壁を切り起こして形成された突片であるものとした。
【0012】
これによると、筒状体の周壁を切り起こして抵抗体となる突片が形成され、切断及び折り曲げの工程で製造することができるため、小径のものでも簡単に製造することができ、また材料に対する制約が少なく、多様の材料で製造することが可能になる。
【0013】
前記抵抗体エレメントにおいては、請求項2に示すとおり、一対の前記突片が、概ねハ字形状をなすように前記筒状体の互いに対向する内周面から突出され、かつその一方の突片が筒状体の中心線と交差するように他方より長尺に形成されており、この一対の突片が、周方向に順次所定角度ずつずらしながら軸線方向に複数組並べて設けられた構成とすることができる。
【0014】
これによると、多数の抵抗体を備えた長尺な抵抗体エレメントを容易に製作可能となるため、洗浄等のメンテナンス時などの脱着作業の手間を減らすことができる。
【0015】
前記抵抗体エレメントにおいては、請求項3に示すとおり、一対の前記突片が、概ねハ字形状をなすように前記筒状体の互いに対向する内周面から突出され、かつその一方の突片が筒状体の中心線と交差するように他方より長尺に形成されており、前記ケーシングの内部に周方向に順次所定角度ずつずらしながら軸線方向に複数並べて配設されるようにした構成とすることができる。
【0016】
これによると、口径別の抵抗体エレメントを予め用意しておけば、多様な長さの静止型混合器に容易に対応することができる。
【0017】
また、本発明においては、請求項4に示すとおり、処理対象物が流通可能な筒状のケーシングの内部に配設され、前記ケーシングの内部に挿入される筒状体と、この筒状体の内周面から中心部に向けて突出され、下流側に傾斜した状態で互いに接触しないように軸線方向に所定の間隔をおき、かつ周方向に順次所定角度ずつずらして複数設けられた抵抗体とを有する抵抗体エレメントの製造方法において、前記筒状体となる管材の周壁を切り起こして前記抵抗体となる突片を形成するものとした。
【0018】
これによると、筒状体となる管材の周壁を切り起こして抵抗体となる突片が形成され、管材に対する切断及び折り曲げの工程で製造することができるため、小径のものでも簡単に製造することができ、また材料に対する制約が少なく、多様の材料で製造することが可能になる。
【0019】
また、本発明においては、請求項5に示すとおり、処理対象物が流通可能な筒状のケーシングの内部に配設され、前記ケーシングの内部に挿入される筒状体と、この筒状体の内周面から中心部に向けて突出され、下流側に傾斜した状態で互いに接触しないように軸線方向に所定の間隔をおき、かつ周方向に順次所定角度ずつずらして複数設けられた抵抗体とを有する抵抗体エレメントの製造方法において、前記筒状体となる板材を切り起こして前記突片を形成し、前記板材を丸めて前記筒状体を形成するものとした。
【0020】
これによると、筒状体となる板材を切り起こして抵抗体となる突片が形成され、同時に板材を丸めることで筒状体が形成され、板材に対する切断、折り曲げ、及び丸めの工程で製造することができるため、小径のものでも簡単に製造することができ、また材料に対する制約が少なく、多様の材料で製造することが可能になる。
【0021】
この場合、板材の互いに突き合わされる側縁部を溶接などにより相互に接合して筒状に形成するようにしても良いが、弾性を有する板材を丸めることにより発生する弾発力によりケーシングの内周面に密着させて固定することができる。
【0022】
なお、抵抗体エレメントの元になる管材や板材の材質は、突片を形成するための折り曲げ加工による塑性変形に耐え得るじん性を有する材質であれば良く、例えば医療用器具や半導体の洗浄に用いられるオゾン水を製造する用途に適したPTFEのように接着や金型による成型の困難な材料も可能であり、さらに金属材や合成樹脂材の他、紙材などの多様な材質が可能である。
【0023】
また、前記の抵抗体エレメントでは、抵抗体としての突片が、筒状体の内周面から中心部に向けて突出され、下流側に傾斜した状態で互いに接触しないように軸線方向に所定の間隔をおき、かつ周方向に順次所定角度ずつずらして複数設けられているため、内部に導入された流体はショートパスすることなくいずれかの突片に衝突し、この突片に衝突した流れは突片の周囲に多方向に分散され、突片の背面側で巻き込みによる渦流(伴流)が生じ、この突片による流通流体の衝突、分散並びに巻き込みが次々と繰り返されることで、強力な乱流が発生して流通流体が激しく撹拌される。
【0024】
このため、例えば気液混合用の静止型混合器の場合には、所要の圧力及び流速で液体と気体とを導入することで、内部に強力な乱流が発生して気液混合物が激しく攪拌されるため、気泡が細かく破砕されて微細気泡が高密度で生成し、高い気液接触効率を実現することができる。
【0025】
その上、突片を流れに逆らわないように下流側に傾斜した状態で筒状体の内周面から突出させた単純な構成であるため、繊維状あるいは粒子状の固形物が引っかかったり堆積したりするところがなく、このような固形物を含む流体に対しても目詰まりを起こすことなく攪拌処理を行うことが可能となる。
【0026】
特に、一対の突片が、概ねハ字形状をなすように筒状体の互いに対向する内周面から突出され、かつその一方の突片が筒状体の中心線と交差するように他方より長尺に形成され、この一対の突片が、周方向に順次所定角度ずつずらしながら軸線方向に複数組並べて設けられた構成や、一対の突片を備えた抵抗体エレメントが、周方向に順次所定角度ずつずらしながら軸線方向に複数並べてケーシングの内部に配設された構成では、筒状体の中心線と交差するように長尺に形成された突片が全体として螺旋状に配置され、その作用によって流通流体に筒状体の中心線を中心とした旋回流が発生する。このため、高い撹拌性能を得ることができる。
【0027】
なお、本発明による抵抗体エレメントは、液体や気体の他、粉体のように流動性を有する物質の処理に広く用いることができる。
【発明の効果】
【0028】
このように本発明によれば、筒状体の周壁を切り起こして抵抗体となる突片が形成され、切断及び折り曲げの工程で製造することができるため、小径のものでも簡単に製造することができ、また材料に対する制約が少なく、多様の材料で製造することが可能になり、従来製作の困難な小径で高い効率を有する静止型混合器を実現することができ、また種々の用途に応じて最適な材料で静止型混合器を製作することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明が適用された静止型混合器を示す断面図である。この静止型混合器は、円筒状のケーシング1の内部に抵抗体エレメント2を配設してなっており、抵抗体エレメント2には、抵抗体である複数の突片3a〜3pが、円形断面をなす筒状体4の内周面から中心部に向けて舌状に突出され、下流側に傾斜した状態で互いに接触しないように軸線方向に所定の間隔をおき、かつ周方向に順次所定角度ずつずらして設けられている。
【0031】
図2は、図1に示した抵抗体エレメント2を示す斜視図である。突片3a〜3pは、上流側から突片3a・3b、突片3c・3dといったように、隣り合う2つの突片が順次対をなし、概ねハ字形状をなすように筒状体4の互いに対向する内周面からそれぞれ突出され、互いに対向する角度位置、すなわち筒状体4の中心軸を中心にした対称位置に配置されている。
【0032】
これらの互いに対をなす突片3a〜3pのうち、上流側に位置する第1の突片3a・3c・3e・3g・3i・3k・3m・3oは、筒状体4の中心線と交差しないように短尺に形成されている。下流側に位置する第2の突片3b・3d・3f・3h・3j・3l・3n・3pは、筒状体4の中心線と交差するように長尺に形成されて、内側先端部が前後に重なり合うようになっている。
【0033】
突片3a〜3pは、筒状体4の周壁を切り起こす、すなわち筒状体4の周壁に突片3a〜3pの外形輪郭に対応する切れ目を形成して内側に折り曲げることで形成される。特にここでは、突片3a〜3pに対して下流側に位置する周壁部分を切り起こして突片3a〜3pが形成され、折り目を円弧状に設けることにより幅方向の断面形状が真直な平板状をなしている。なお、突片3a〜3pは、幅方向の断面形状が略円弧状をなし、流れに対向する前面側が凸となる形状に曲成された構成とすることも可能である。突片3a〜3pの筒状体4の軸線に対する傾斜角度は、用途に応じて適宜設定すれば良いが、例えば15度から70度の範囲で設定すると良い。
【0034】
突片3a〜3pは、先端側に向けて細くなった略扇形状に形成されている。なお、突片3a〜3pは、このような略扇形状の他、種々の形状が可能であり、例えば先端縁を略円弧状に形成して略U字形状の外形輪郭をなすものも可能である。
【0035】
図3は、図1に示した抵抗体エレメント2を上流側から見た正面図である。ハ字形状に互いに対をなす突片3a・3bに対して下流側の突片3c・3dは周方向に45度ずれた位置に配置されており、以下同様にして、互いに対をなす突片3e・3f、突片3g・3h、突片3i・3j、突片3k・3l、突片3m・3n、突片3o・3pが、周方向に45度ずつずらして配置され、最初の突片3a・3bに対してはそれぞれ、周方向に45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度といった角度位置となる。したがって、全体として見ると、突片3a〜3pのうちの互いに対をなすものがそれぞれ、所定のずらし角度に応じたリード角をもって螺旋を描くように配置される。
【0036】
このため、ケーシング1の内部に流体(処理対象物)が導入されると、最初の突片3a・3bに相対する流れはこれらの突片3a・3bに衝突して周囲に分散され、これらの突片3a・3bに相対しない流れもショートパスすることなく下流側の突片3c〜3pのいずれかに衝突して多方向に分散され、このような導入流体の衝突と分散とが順次繰り返されることで、ケーシング1内には強力な乱流が発生して流体が激しく攪拌される。
【0037】
さらに、螺旋状に配置された長尺な第2の突片3b・3d・3f・3h・3j・3l・3n・3pの作用で、内部を流通する流体に筒状体4の中心線を中心とした旋回流が発生し、抵抗体エレメント2が配設されていない下流側の配管内でも攪拌が継続され、高い撹拌性能を得ることができる。
【0038】
図4は、図1に示した抵抗体エレメント2の製作手順を示す斜視図である。まず、図4(A)に示すように、筒状体4となる管材41の周壁に、けがき針などを用いて突片3a〜3pの外形輪郭に対応する切断線42及び折曲線43を付ける。ついで、図4(B)に示すように、レーザ切断加工機などを用いて切断線42に沿って管材41の周壁に切れ目44を形成する。そして、図4(C)に示すように、切れ目44により画成された突片形成部分45を折曲線43に沿って内側に折り曲げ、これにより折り目46から内側に突出した突片3a〜3pが形成される。
【0039】
このように構成された抵抗体エレメント2は、図1に示したように、ケーシング1内に挿入された状態で、ケーシング1の両端に設けられたフランジ11と固定リング12との間にパッキン13と共に介装されるストッパ14が筒状体4の両側の端面に当接することでケーシング1に固定される。なお、フランジ11と固定リング12とは図示しないボルトで連結される。
【0040】
図5は、図1に示した抵抗体エレメント2の変形例を示す断面図である。ここでは、突片3a〜3dの背面から筒状体4の外周面に至る範囲に補強部材51が固着されている。この補強部材51は、接着剤や溶接など、材質に適合した適宜な固着方法により固着される。これによれば、筒状体4の周壁を折り曲げただけの突片3a〜3dでは流体の圧力に対して剛性が不足する場合に、補強部材51が突片3a〜3dを背面から支持して、流体の圧力により突片3a〜3dが変形することを抑えることができる。
【0041】
図6は、本発明による静止型混合器の別の例を示す断面図である。この静止型混合器では、抵抗体エレメント61が、筒状体62の内部に抵抗体である第1・第2の一対の突片63a・63bを備えたものであり、複数の抵抗体エレメント61が、筒状体62の周方向に順次所定角度ずつずらしながら筒状体62の軸線方向に並べてケーシング1の内部に配設されている。
【0042】
図7は、図6に示した抵抗体エレメント61を示す斜視図である。第1・第2の一対の突片63a・63bは、概ねハ字形状をなすように筒状体62の互いに対向する内周面から下流側に傾斜した状態で舌状に突出されている。上流側に位置する第1の突片63aは、筒状体62の中心線と交差しないように短尺に形成され、下流側に位置する第2の突片63bは、筒状体62の中心線と交差するように長尺に形成されている。
【0043】
筒状体62の軸線方向の端部には凹凸が形成され、隣接するものに対して45度ずつずらして結合されるようになっている。
【0044】
このようにしてなる抵抗体エレメント61は、ケーシング1内に配設するにあたり、直前の抵抗体エレメント61に対して周方向に45度ずらして配置される。以下、後続の抵抗体エレメント61もそれぞれ、直前のものに対して45度ずつ同一方向にずらして配置され、最初の抵抗体エレメント61に対してはそれぞれ、周方向に45度、90度、135度、180度といった角度位置となる。したがって、全体として見ると、ハ字形状に対をなす突片63a・63bがそれぞれ、抵抗体エレメント61のずらし角度に応じたリード角をもって螺旋を描くように配置される。
【0045】
このため、前記の例と同様に、ケーシング1の内部に流体が導入されると、最初の抵抗体エレメント61の突片63a・63bに相対する流れはこれらの突片63a・63bに衝突して周囲に分散され、これらの突片63a・63bに相対しない流れもショートパスすることなく下流側の抵抗体エレメント61の突片63a・63bのいずれかに衝突して多方向に分散され、このような導入流体の衝突と分散とが順次繰り返されることで、ケーシング1内には強力な乱流が発生して流体が激しく攪拌される。
【0046】
図8は、図6に示した抵抗体エレメント61の製作手順を示す斜視図である。まず、図8(A)に示すように、筒状体62の元になる板材81に、プレス加工などにより側縁部に凹凸を形成する。また板材81に、けがき針などを用いて突片63a・63bの外形輪郭に対応する切断線82及び折曲線83を付ける。ついで、図8(B)に示すように、レーザ切断加工機などを用いて切断線82に沿って板材81に切れ目84を形成する。そして、図8(C)に示すように、切れ目84により画成された突片形成部分85を折曲線83に沿って内側に折り曲げ、同時に板材81を丸める。これにより図8(D)に示すように、折り目86から内側に突出した突片63a・63bが形成される。
【0047】
ここで、板材81の互いに突き合わされる側縁部87・88を溶接などにより相互に接合するようにしても良いが、板材81を丸めて形成された筒状体62の有する弾発力によりケーシング1の内周面に筒状体62を密着させて固定することができる。
【0048】
図9は、本発明による抵抗体エレメントの別の例を示す断面図である。この抵抗体エレメント91は、前記図7の例と同様に、筒状体92の元になる板材を丸めて形成されるが、前記の例とは異なり、互いに対をなす突片93a・93b、突片93c・93d、突片93e・93fが複数組設けられており、これらは、前記図2の例と同様に、周方向に45度ずつずらして配置されている。
【0049】
この構成では、板材を丸めて筒状体92を形成することから、突片93a〜93fの配置数が制限されるが、前記図6の例と同様に、複数の抵抗体エレメント91を軸線方向に並べてケーシング1の内部に配設することで所要の攪拌能力を得ることができる。
【0050】
図10は、本発明による抵抗体エレメントの別の例を示す断面図である。この抵抗体エレメント101は、前記図2の例と同様に、抵抗体である複数の突片103a〜103jが、円形断面をなす筒状体102の内周面から突出されているが、ここでは、前記の例とは逆に、突片103a〜103jに対して上流側に位置する筒状体102の周壁部分に切れ目を入れて、この切れ目により画成される突片形成部を下流側に傾斜した所定の角度まで折り曲げることで突片103a〜103jが形成される。
【0051】
この構成では、突片103a〜103jが、幅方向の断面形状が略円弧状をなし、かつ流れに対向する前面側が凹となる形状に曲成される。このようにすると、突片103a〜103jに衝突した流れを次の突片103a〜103jの前面中心部に案内して突片103a〜103jへの衝突効果を高めることができ、さらに突片103a〜103jの周辺に分散した流れによって突片103a〜103jの背面側に発生する渦流を増して流れの乱流化を促進し、攪拌効率をより一層高めることができる。
【0052】
図11は、本発明による抵抗体エレメントの別の例を示す断面図である。この抵抗体エレメント111は、前記の各例とは異なり、筒状体112が4角形の断面形状をなし、4つの側壁112a〜112dのうちの互いに対向する一対の側壁112a・112b及び側壁112c・112dから、互いに対をなす突片113a・113b、突片113c・113d、突片113e・113f、突片113g・113hがそれぞれ概ねハ字形状をなすように突出されている。
【0053】
この構成は、粉体を混合する用途に適しており、内部に導入された粉体(処理対象物)に突片113a〜113hの作用で対流及び剪断が生じて、詰まりを起こすことなく粉体が効率良く攪拌混合される。また、粉体を輸送する用途にも適しており、ホッパ出口部などで生じるブリッジ(架橋)による詰まりを抑制することができる。
【0054】
なお、本発明による筒状体の断面形状はこの例に限定されるものではなく、種々の多角形が可能であり、前記の例と同様に、一対の突片が概ねハ字形状をなすように筒状体の互いに対向する内周面から突出させた構成の場合には、4角形の他に、例えば6角形や8角形などの偶数角の多角形が可能であり、このような突片の配置態様に限定しなければ、例えば3角形などの奇数角の多角形も可能である。
【0055】
また、本発明による抵抗体エレメントは、処理対象物を混合する用途のみの静止型混合器に適用する他、熱交換器の伝熱管の内部に配設することも可能であり、この場合、乱流による攪拌効果により伝熱管内を流通する流体の温度分布を均一化し、熱交換器の性能を向上させると共に高粘性の流体の熱交換器への利用が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明にかかる抵抗体エレメント及びその製造方法は、小径のものを容易に製造することができ、また材料に関する制約が少なく、種々の用途に応じて最適な材料で製作することができる効果を有し、少量の処理対象物を混合する用途、使い捨てのために低コストが要求される用途、製造方法が制約される材料で形成する必要がある用途で用いられる静止型混合器などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明が適用された静止型混合器を示す断面図である。
【図2】図1に示した抵抗体エレメントを示す斜視図である。
【図3】図1に示した抵抗体エレメントを上流側から見た正面図である。
【図4】図1に示した抵抗体エレメントの製作手順を示す斜視図である。
【図5】図1に示した抵抗体エレメントの変形例を示す断面図である。
【図6】本発明による静止型混合器の別の例を示す断面図である。
【図7】図6に示した抵抗体エレメントを示す斜視図である。
【図8】図6に示した抵抗体エレメントの製作手順を示す斜視図である。
【図9】本発明による抵抗体エレメントの別の例を示す断面図である。
【図10】本発明による抵抗体エレメントの別の例を示す断面図である。
【図11】本発明による抵抗体エレメントの別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ケーシング
2 抵抗体エレメント
3a〜3p 突片(抵抗体)
4 筒状体
41 管材
42 切断線
43 折曲線
44 切れ目
45 突片形成部分
46 折り目
51 補強部材
61 抵抗体エレメント
62 筒状体
63a・63b 突片(抵抗体)
81 板材
82 切断線
83 折曲線
84 切れ目
85 突片形成部分
86 折り目
91 抵抗体エレメント
92 筒状体
93a〜93f 突片(抵抗体)
101 抵抗体エレメント
102 筒状体
103a〜103j 突片(抵抗体)
111 抵抗体エレメント
112 筒状体
113a〜113h 突片(抵抗体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物が流通可能な筒状のケーシングの内部に配設される抵抗体エレメントであって、
前記ケーシングの内部に挿入される筒状体と、
この筒状体の内周面から中心部に向けて突出され、下流側に傾斜した状態で互いに接触しないように軸線方向に所定の間隔をおき、かつ周方向に順次所定角度ずつずらして複数設けられた抵抗体とを有し、
この抵抗体が、前記筒状体の周壁を切り起こして形成された突片であることを特徴とする抵抗体エレメント。
【請求項2】
一対の前記突片が、概ねハ字形状をなすように前記筒状体の互いに対向する内周面から突出され、かつその一方の突片が筒状体の中心線と交差するように他方より長尺に形成されており、
この一対の突片が、周方向に順次所定角度ずつずらしながら軸線方向に複数組並べて設けられたことを特徴とする請求項1に記載の抵抗体エレメント。
【請求項3】
一対の前記突片が、概ねハ字形状をなすように前記筒状体の互いに対向する内周面から突出され、かつその一方の突片が筒状体の中心線と交差するように他方より長尺に形成されており、
前記ケーシングの内部に周方向に順次所定角度ずつずらしながら軸線方向に複数並べて配設されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の抵抗体エレメント。
【請求項4】
処理対象物が流通可能な筒状のケーシングの内部に配設され、
前記ケーシングの内部に挿入される筒状体と、
この筒状体の内周面から中心部に向けて突出され、下流側に傾斜した状態で互いに接触しないように軸線方向に所定の間隔をおき、かつ周方向に順次所定角度ずつずらして複数設けられた抵抗体とを有する抵抗体エレメントの製造方法であって、
前記筒状体となる管材の周壁を切り起こして前記抵抗体となる突片を形成することを特徴とする抵抗体エレメントの製造方法。
【請求項5】
処理対象物が流通可能な筒状のケーシングの内部に配設され、
前記ケーシングの内部に挿入される筒状体と、
この筒状体の内周面から中心部に向けて突出され、下流側に傾斜した状態で互いに接触しないように軸線方向に所定の間隔をおき、かつ周方向に順次所定角度ずつずらして複数設けられた抵抗体とを有する抵抗体エレメントの製造方法であって、
前記筒状体となる板材を切り起こして前記突片を形成し、前記板材を丸めて前記筒状体を形成することを特徴とする抵抗体エレメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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