抵抗溶接方法及びその装置
【課題】3枚以上のワークが積層され、且つその最外に厚みが最も小さい最薄ワークが配置された積層体に対して抵抗溶接を施す際、前記最薄ワークと、該最薄ワークに隣接するワークとの間にナゲットを十分に成長させる。
【解決手段】抵抗溶接装置を構成する溶接ガン14は、溶接用電極としての下チップ32及び上チップ38と、加圧用部材としての加圧用ロッド46とを具備する。この中の上チップ38及び加圧用ロッド46は、溶接対象である積層体48を、該積層体48の最外に配置された金属板(最薄ワーク)54側から加圧力F1、F2でそれぞれ加圧し、一方、下チップ32は、前記積層体48を金属板50側から加圧力F3で加圧する。F1+F2は、F3と均衡するように制御される。この状態で、上チップ38から下チップ32への通電がなされる。
【解決手段】抵抗溶接装置を構成する溶接ガン14は、溶接用電極としての下チップ32及び上チップ38と、加圧用部材としての加圧用ロッド46とを具備する。この中の上チップ38及び加圧用ロッド46は、溶接対象である積層体48を、該積層体48の最外に配置された金属板(最薄ワーク)54側から加圧力F1、F2でそれぞれ加圧し、一方、下チップ32は、前記積層体48を金属板50側から加圧力F3で加圧する。F1+F2は、F3と均衡するように制御される。この状態で、上チップ38から下チップ32への通電がなされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の金属板同士を接合する手法として、これら金属板を積層して積層体を形成し、該積層体を1組の溶接用電極で挟持・加圧した後、該1組の溶接用電極間に通電を行い、前記金属板における接触面近傍の部位を溶融する抵抗溶接が従来から知られている。溶融した部位は、凝固によってナゲットと呼称される固相となる。場合によっては、3枚以上の金属板同士を抵抗溶接によって接合することもある。
【0003】
ここで、金属板は互いに同一厚みであるとは限らず、寧ろ、互いに相違することが大半である。すなわち、複数枚の金属板の中には、厚みが最も小さいワーク(以下、最薄ワークとも表記する)が含まれる。
【0004】
このような最薄ワークを積層体の最外に配置し、1組の溶接用電極の各々における積層体に対する加圧力を略均衡させて抵抗溶接を行った場合、この最薄ワークと、該最薄ワークに隣接する隣接ワークとの間のナゲットが十分に成長しないことがある。この理由は、例えば、3枚のワークを積層した場合、特許文献1に記載されるように、最薄ワークの端部が隣接ワークから離間する方向に撓むことに起因して該最薄ワークと隣接ワークとの接触抵抗が小さくなる結果、これら最薄ワークと隣接ワーク同士の間に十分なジュール熱が発生しなくなるためであると推察される。
【0005】
最薄ワーク近傍のナゲットを大きく成長させるべく、電流値を大きくすることによって最薄ワークのジュール熱を大きくすることが想起される。しかしながら、この場合、厚みが大きいワークに大電流が流れるようになり、このために該ワークが溶融して飛散する、いわゆるスパッタが惹起され易くなるという不具合を招く。
【0006】
又は、通電時間を長くすることが有効であるかのように考えられる。しかしながら、この場合においても、最薄ワークに十分なジュール熱を発生させることは容易ではない。また、溶接処理時間が長くなるので溶接効率が低下するという不具合を招いてしまう。
【0007】
そこで、本出願人は、特許文献1において、最薄ワークに当接する溶接用電極の加圧力を、残余の一方の溶接用電極に比して小さく設定することを提案している。このように各溶接用電極の積層体に対する加圧力を調整することにより、各ワーク同士の界面に発生するジュール熱を略均衡させることができる。従って、最薄ワークと隣接ワークとの間のナゲットを、他のワーク同士の間に形成されるナゲットと略同等の大きさに成長させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3894545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は特許文献1記載の技術に関連してなされたもので、積層体中の最外に配置された最薄ワークと該最薄ワークに隣接するワークとの間にナゲットを十分に成長させることが可能であり、しかも、スパッタが発生する懸念を払拭し得る抵抗溶接方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法であって、
前記積層体を第1溶接用電極及び第2溶接用電極で挟持するとともに、前記最薄ワークに対し、前記第1溶接用電極が当接した部位とは別の部位に加圧用部材を当接させ、前記加圧用部材によって前記最薄ワーク側から前記積層体を加圧する工程と、
前記第1溶接用電極及び前記加圧用部材による前記積層体に対する加圧力と、前記第2溶接用電極による前記積層体に対する加圧力とを均衡させた状態で、前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間に通電を行う工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
第1溶接用電極と加圧用部材との合計加圧力が第2溶接用電極の加圧力と均衡することから、第1溶接用電極の加圧力は、第2溶接用電極に比して小さくなる。従って、第1溶接用電極側と、該第1溶接用電極に略対向する第2溶接用電極との間では、加圧力は、第1溶接用電極側から第2溶接用電極に向かうにつれて作用範囲が広がるように分布する。このため、最薄ワークとそれに隣接するワークとの界面に作用する力は、残余のワーク同士の界面に作用する力に比して小さくなる。
【0012】
このような分布が生じる結果、最薄ワークとそれに隣接するワークとの接触面積が残余のワーク同士の接触面積に比して小さくなる。従って、最薄ワークとそれに隣接するワークとの界面の接触抵抗を大きくすることができ、これにより、ジュール熱に基づく発熱量を大きくすることができる。従って、該界面に生成するナゲットを大きく成長させることが可能となり、結局、最薄ワークとこれに隣接するワークとの接合強度を確保することができる。
【0013】
しかも、加圧用部材によって最薄ワークが押圧されるので、最薄ワークがこれに隣接するワークから離間することが抑制される。従って、軟化した溶融部が最薄ワークとこれに隣接するワークとの離間箇所からスパッタとして飛散することを防止することができる。
【0014】
なお、加圧用部材を、第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極で構成し、前記通電を行う際、第1溶接用電極から補助電極に向かう分岐電流、又は、補助電極から第1溶接用電極に向かう分岐電流のいずれかを生じさせるようにしてもよい。
【0015】
この場合、第1溶接用電極から補助電極に向かう電流、又はその逆方向に流れる電流が最薄ワークの内部を流れるので、該電流によって、最薄ワークとこれに隣接するワークとの界面が十分に加熱される。その結果、前記界面に十分な大きさのナゲットが成長するので、接合強度に一層優れた接合部が得られる。
【0016】
また、本発明は、3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行うための抵抗溶接装置であって、
前記最薄ワークに当接する第1溶接用電極と、
前記第1溶接用電極とともに前記積層体を挟持する第2溶接用電極と、
前記最薄ワークにおける前記第1溶接用電極が当接した部位とは別の部位に当接し、前記積層体を前記最薄ワーク側から加圧するための加圧用部材と、
を具備する溶接ガンを有し、
さらに、前記加圧用部材に対して前記積層体を加圧する加圧力を付与する加圧機構と、前記加圧機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1溶接用電極と前記第2溶接用電極との間に通電が行われる際、前記第1溶接用電極及び前記加圧用部材による前記積層体に対する加圧力と、前記第2溶接用電極による前記積層体に対する加圧力とを均衡させることを特徴とする。
【0017】
このような構成とすることにより、第1溶接用電極及び第2溶接用電極による積層体に対する加圧力を、第1溶接用電極(最薄ワーク)側から第2溶接用電極に向かって作用範囲が大きくなるように分布させることができる。その結果、最薄ワークとこれに隣接するワークとの界面の接触抵抗を大きくすることができ、該界面を十分に加熱して適切な大きさのナゲットを成長させることができる。これにより、最薄ワークとこれに隣接するワークとの接合強度を大きくすることができる。
【0018】
なお、溶接ガンをロボットで支持する場合、前記加圧機構は、溶接ガンに設けることが好ましい。この場合、積層体からの反力を溶接ガンで吸収することができるので、反力がロボットにまで及ぶことが回避される。従って、ロボットとして剛性の大きいものを採用する必要は特にない。換言すれば、ロボットとして小型のものを採用することが可能となるので、設備投資を低廉化することが可能となる。
【0019】
また、第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極で加圧用部材を構成し、前記通電を行う際、第1溶接用電極から補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接用電極に向かう分岐電流のいずれかを生じさせるようにしてもよい。上記したように、この場合、第1溶接用電極から補助電極に向かう電流、又はその逆方向に流れる電流によって、最薄ワークとこれに隣接するワークとの界面が十分に加熱されるので、前記界面に十分な大きさのナゲットを成長させ、接合強度に一層優れた接合部を得ることができるようになるからである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1溶接用電極と第2溶接用電極で積層体を挟持することに加え、前記積層体の最外に配置された最薄ワークを加圧用部材で加圧し、この状態で抵抗溶接を行うようにしている。このため、積層体に対する加圧力が、第1溶接用電極から第2溶接用電極に向かうにつれて作用範囲が大きくなるように分布する。
【0021】
このように加圧力が分布する結果、前記最薄ワークとこれに隣接するワークとの界面の接触面積が小さくなり、それに伴って該界面の接触抵抗が大きくなる。従って、該界面を十分に加熱し得るジュール熱が発生するようになるので、この界面に十分な大きさのナゲットを成長させることができる。これにより、最薄ワークとこれに隣接するワークとが十分な接合強度で接合する。
【0022】
換言すれば、最薄ワークとこれに隣接するワークとの間に十分な接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る抵抗溶接装置の要部拡大図である。
【図2】溶接対象である積層体を下チップ、上チップ及び加圧用ロッド(加圧用部材)で挟持した状態を示す縦断面模式図である。
【図3】積層体の最上に位置するワークと、その直下のワークとの間に適切な面圧の分布が形成された状態を示す模式的正面図とグラフである。
【図4】前記積層体を下チップ及び上チップのみで挟持した状態を示す縦断面模式図である。
【図5】図2から通電を開始し、上チップから下チップに向かう電流を流した状態を示す縦断面模式図である。
【図6】第1実施形態の変形例に係る抵抗溶接装置の要部拡大図である。
【図7】第1実施形態の別の変形例に係る抵抗溶接装置の要部拡大図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る抵抗溶接装置の要部拡大一部横断面斜視図である。
【図9】積層体を第1電極チップ、第2電極チップ及び補助電極の全てで挟持した状態を示す縦断面模式図である。
【図10】図9から通電を開始し、上チップから下チップに向かう電流を流した状態を示す縦断面模式図である。
【図11】図10から通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図12】補助電極のみを積層体から離間させる一方、上チップから下チップへの通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図13】図12に続いて上チップを積層体から離間させ、通電(抵抗溶接)を終了した状態を示す縦断面模式図である。
【図14】図10とは逆に、下チップ及び電流分岐電極から上チップに向かう電流を流した状態を示す縦断面模式図である。
【図15】積層体の最上に位置するワークと、その直下のワークとに、第1電極チップから電流分岐用電極に向かう電流が流れる状態を示す縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る抵抗溶接方法につき、これを実施する抵抗溶接装置との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る抵抗溶接装置の要部拡大図である。この抵抗溶接装置10は、アームを有するロボット(ともに図示せず)と、前記アームを構成する手首部12に支持された溶接ガン14とを有する。
【0026】
この場合、溶接ガン14は、ガン本体24の下方に配設された略C字形状の固定アーム30を具備する、いわゆるC型のものである。この固定アーム30の下方先端には、ガン本体24を臨むようにして、第2溶接用電極としての下チップ32が設けられ、該下チップ32は、ガン本体24に向かって延在している。
【0027】
ガン本体24には、ボールねじ機構(図示せず)が収容されている。このボールねじ機構のボールねじは、ガン本体24から突出し且つ前記下チップ32に向かって延在する連結ロッド34を上下方向(図1における矢印Y2方向又は矢印Y1方向)に変位させるためのものである。なお、前記ボールねじは、前記ボールねじ機構を構成する図示しないサーボモータの作用下に回転動作する。
【0028】
連結ロッド34の先端部には、ステー36を介して、第1溶接用電極としての上チップ38が前記下チップ32に対向するようにして設けられる。さらに、ステー36には橋架部材40を介して加圧手段としてのシリンダ機構42が支持されており、このシリンダ機構42を構成するシリンダチューブ44からは、加圧用部材としての加圧用ロッド46が上チップ38と平行に延在するようにして突出している。このことから諒解されるように、第1実施形態では、加圧手段(シリンダ機構42)及び加圧用部材(加圧用ロッド46)の双方が溶接ガン14に設けられている。
【0029】
溶接対象である積層体48につき若干説明すると、この場合、積層体48は、3枚の金属板50、52、54が下方からこの順序で積層されることによって構成される。この中の金属板50、52の厚みはD1(例えば、約1mm〜約2mm)に設定され、金属板54の厚みはD1に比して小寸法のD2(例えば、約0.5mm〜約0.7mm)に設定される。すなわち、金属板50、52の厚みは同一であり、金属板54はこれら金属板50、52に比して薄肉である。換言すれば、金属板54は最薄ワークである。
【0030】
金属板50、52は、例えば、いわゆるハイテン鋼であるJAC590、JAC780又はJAC980(いずれも日本鉄鋼連盟規格に規定される高性能高張力鋼板)からなり、最薄ワーク54は、例えば、いわゆる軟鋼であるJAC270(日本鉄鋼連盟規格に規定される高性能絞り加工用鋼板)からなる。金属板50、52は同一金属種であってもよいし、異種金属種であってもよい。
【0031】
又は、金属板50、52、54の全てが軟鋼である組み合わせであってもよいし、金属板50のみがハイテン鋼、金属板52、54が軟鋼である組み合わせであってもよい。
【0032】
金属板50、52、54の材質は、上記した鋼材に特に限定されるものではないことは勿論であり、抵抗溶接が可能なものであれば如何なる材質であってもよい。
【0033】
前記下チップ32及び前記上チップ38は、これら下チップ32及び上チップ38の間に溶接対象である積層体48を挟持し、且つ該積層体48に対して通電を行うものである。なお、下チップ32は電源56の負極に電気的に接続されており、一方、上チップ38は前記電源56の正極に電気的に接続されている。このため、第1実施形態では、上チップ38から下チップ32に向かって電流が流れる。
【0034】
後述するように、上チップ38と加圧用ロッド46の離間距離Z1は、最薄ワーク54と、その直下の金属板52との間に適切な面圧の分布が得られるように設定される。
【0035】
以上の構成において、前記ボールねじ機構を構成する前記サーボモータ、シリンダ機構42及び電源56は、制御手段としてのガンコントローラ58に電気的に接続されている。すなわち、これらサーボモータ、シリンダ機構42及び電源56の動作ないし付勢・滅勢は、ガンコントローラ58によって制御される。
【0036】
第1実施形態に係る抵抗溶接装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、第1実施形態に係る抵抗溶接方法との関係で説明する。
【0037】
積層体48に対して抵抗溶接を行う際、すなわち、金属板50、52同士を接合するとともに金属板52、54同士を接合する際には、先ず、前記ロボットが、下チップ32と上チップ38の間に積層体48が配置されるように前記手首部12、すなわち、溶接ガン14を移動させる。
【0038】
ガン本体24が所定の位置まで降下した後、ガンコントローラ58の作用下に前記ボールねじ機構を構成する前記サーボモータが付勢され、これに伴って前記ボールねじが回転動作を開始する。これにより、上チップ38及び加圧用ロッド46が積層体48に対してさらに接近するように、矢印Y1方向に向かって降下する。その結果、下チップ32と上チップ38の間に積層体48が挟持される。
【0039】
その一方で、ガンコントローラ58がシリンダ機構42を付勢する。これにより加圧用ロッド46が矢印Y1方向に向かってさらに突出し、該加圧用ロッド46が、下チップ32と上チップ38によって積層体48が挟持されるのと同時、又はその前後に金属板54に当接する。図2には、このときの模式的な縦断面図が示されている。
【0040】
ここで、上チップ38と加圧用ロッド46の離間距離Z1は、図3に示すように、最薄ワーク54と金属板52との間の界面に、上チップ38で押圧される箇所で面圧が最大となり、且つ加圧用ロッド46で押圧される箇所で、次に大きい面圧が得られるように設定される。換言すれば、前記界面には、上チップ38の加圧による面圧、及び加圧用ロッド46の加圧による面圧に比して面圧が小さくなる箇所が形成される。これにより、図2に示すような加圧力の分布が形成される。
【0041】
以下、この分布につき詳述する。
【0042】
ガンコントローラ58は、金属板54に対する上チップ38及び加圧用ロッド46の合計加圧力(F1+F2)が、金属板50に対する下チップ32の加圧力(F3)と均衡するように、前記ボールねじ機構のボールねじを回転動作させるサーボモータの回転付勢力、及びシリンダ機構42の推進力を制御する。この制御により、積層体48に対する矢印Y1方向に沿って作用する加圧力(F1+F2)と、矢印Y2方向に沿って作用する加圧力(F3)とが略同等となる。
【0043】
すなわち、このとき、F1<F3が成り立つ。従って、積層体48が下チップ32と上チップ38から受ける力は、図2に模式的に示すように、上チップ38から下チップ32に向かうにつれて作用範囲が広くなる(大きくなる)ように分布する。このため、金属板52、54の界面に作用する力は、金属板50、52の界面に作用する力に比して小さくなる。なお、離間距離Z1が過度に小さいために上チップ38の加圧による面圧、及び加圧用ロッド46の加圧による面圧に比して面圧が小さくなる箇所が形成されない場合、このような分布が形成され難くなる。
【0044】
図4は、加圧用ロッド46を用いずにF1=F3とした場合における積層体48が下チップ32と上チップ38から受ける力の分布を模式的に示したものである。図4から諒解されるように、この場合、力は、上チップ38から下チップ32にわたって均等である。換言すれば、金属板52、54の界面に作用する力と、金属板50、52の界面に作用する力とが等しくなる。
【0045】
図2及び図4には、金属板52、54の界面に作用する力の範囲を太実線で示している。図2及び図4を対比して諒解される通り、力が作用する範囲は、F1<F3であるときの方がF1=F3であるときに比して狭い。このことは、F1<F3であるときには、F1=F3であるときに比して金属板54が金属板52に対して押圧される範囲が狭いこと、換言すれば、接触面積が小さいことを意味する。
【0046】
ここで、このように上チップ38から下チップ32に至るまでの加圧力を分布させ、金属板52に対する金属板54の接触面積を小さくしたことに伴い、積層体48から上チップ38に向かう反力が生じる。第1実施形態では、この反力を加圧用ロッド46で受けている。
【0047】
上記したように、加圧用ロッド46を含むシリンダ機構42は、ガン本体24に収容されるボールねじ機構に連結された連結ロッド34に対し、橋架部材40を介して支持されている。このため、加圧用ロッド46で受けた前記反力は、結局、ガン本体24(溶接ガン14)に吸収される。
【0048】
従って、この場合、積層体48からの反力がロボットに作用することが回避される。このため、ロボットとして剛性が大きいものを採用する必要がない。換言すれば、ロボットとして小型のものを採用することができ、その結果、設備投資を低廉化することができる。
【0049】
次に、ガンコントローラ58は、電源56に通電開始の制御信号を発する。これにより、図2及び図4に示すように、上チップ38から下チップ32に向かう方向に電流iが流れ始める。上記したように、上チップ38、下チップ32の各々が電源56の正極、負極に接続されているからである。そして、電流iに基づくジュール熱により、金属板50、52の間、及び金属板52、54の間がそれぞれ加熱される。
【0050】
ここで、上記したように、図2に示される金属板54と金属板52との接触面積は、図4に示される金属板54と金属板52との接触面積に比して小さい。このため、金属板52、54の界面における接触抵抗及び電流密度は、図2に示される場合の方が図4に示される場合に比して、換言すれば、F1<F3であるときの方がF1=F3であるときに比して大きくなる。このため、F1<F3であるときには、F1=F3であるときに比してジュール熱の発生量、すなわち、発熱量が大きくなる。従って、F1<F3であるときには、図5に示すように、金属板50、52の界面に生成する加熱領域60と、金属板52、54の界面に生成する加熱領域62とが略同等の大きさに成長する。
【0051】
金属板50、52の界面、金属板52、54の界面は、これら加熱領域60、62によって加熱され、十分に温度上昇して溶融し始める。その結果、金属板50、52の間、金属板52、54の間にナゲット64、66がそれぞれ形成される。
【0052】
上記したように、金属板50、52の界面における加熱領域60と、金属板52、54の界面における加熱領域62とは互いに略同等の大きさである。従って、ナゲット64、66もまた、互いに略同等の大きさとなる。
【0053】
この間、金属板54は、加圧用ロッド46で金属板52側に押圧されている。この押圧により、低剛性の金属板54が通電(加熱)に伴って反ること、すなわち、金属板52から離間することが抑制される。このため、軟化した溶融部が金属板54と金属板52との離間箇所からスパッタとして飛散することを防止することができる。
【0054】
所定時間が経過してナゲット64、66が十分成長した後、通電を停止するとともに、上チップ38を金属板54から離間させる。又は、上チップ38を金属板54から離間させることで上チップ38と下チップ32を電気的に絶縁するようにしてもよい。
【0055】
なお、抵抗溶接の開始から終了するに至るまでの上記した動作は全て、ガンコントローラ58の制御作用下に営まれる。
【0056】
このようにして通電が停止されることに伴い、金属板50、52、54の発熱も終了する。時間の経過とともにナゲット64、66が冷却固化し、これにより金属板50、52同士、金属板52、54同士が互いに接合された接合品が得られるに至る。
【0057】
この接合品においては、金属板50、52同士の接合強度と同様に、金属板52、54同士の接合強度も優れる。上記したように金属板52、54の界面に十分なジュール熱が発生したことに伴って、金属板52、54の間のナゲット66が十分に成長しているからである。
【0058】
以上のように、第1実施形態によれば、スパッタが生成することを回避しつつ、金属板52、54の間に、金属板50、52の間のナゲット64と略同程度の大きさのナゲット66を成長させることができ、これにより、金属板52、54同士の接合強度が優れた成形品を得ることができる。
【0059】
第1実施形態では、加圧用ロッド46による加圧力F2を大きくするほど金属板52、54間のナゲット66を大きくすることができるが、その大きさは飽和する傾向にある。換言すれば、加圧力F2を過度に大きくしても、ナゲット66を一定の大きさ以上に成長させることは困難である。また、加圧力F2を過度に大きくすると、加圧力F1、F2の和で加圧力F3と均衡させる関係上、加圧力F1を過度に小さくする必要がある。このため、金属板50、52間のナゲット64が小さくなる。
【0060】
従って、上チップ38による加圧力F1と、加圧用ロッド46による加圧力F2との差は、ナゲット64、66を可及的に大きくし得るように設定することが好ましい。
【0061】
なお、図1に示す抵抗溶接装置10では、シリンダ機構42を連結ロッド34で支持するようにしているが、図6に示すように、ガン本体24で支持するようにしてもよいし、図7に示すように、固定アーム30で支持するようにしてもよい。
【0062】
また、いずれの場合においても、シリンダ機構42に代替し、スプリングコイル、サーボモータ等の各種の圧力付加手段を採用することができる。
【0063】
さらに、加圧用部材は上チップ38を囲繞するような円環形状であってもよいし、丸棒形状のものを複数個用いるようにしてもよい。
【0064】
加圧用部材は、補助電極であってもよい。以下、この場合を第2実施形態として説明する。なお、図1〜図7に示される構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図8は、第2実施形態に係る抵抗溶接装置の要部拡大一部横断面斜視図である。この抵抗溶接装置を構成する図示しない溶接ガンは、上記第1実施形態に係る抵抗溶接装置を構成する溶接ガンと同様に、図示しないロボットの手首部12に設けられ、下チップ32(第2溶接用電極)と、上チップ38(第1溶接用電極)とを具備し、さらに、上チップ38を囲繞するような円環形状に形成された補助電極68を有する。なお、第2実施形態においても上チップ38から下チップ32に向かって電流が流れるものとする。
【0066】
この場合、上チップ38を支持するガン本体24には、この補助電極68を積層体48に対して接近又は離間させるための変位機構、例えば、ボールねじ機構又はシリンダ機構等が設けられる。この変位機構により、補助電極68は、上チップ38とは別個に積層体48に対して接近又は離間することが可能である。なお、第2実施形態においても、変位機構は溶接ガン側に設けられる。
【0067】
第2実施形態では、電源56の正極に対して上チップ38が電気的に接続されるとともに、下チップ32及び補助電極68が前記電源56の負極に対して電気的に接続される。このことから諒解される通り、上チップ38と補助電極68はともに、積層体48を構成する金属板54に当接するものの、その極性は互いに逆である。
【0068】
上チップ38と補助電極68との離間距離Z2は、第1実施形態と同様に加圧力が分布するように、上チップ38による面圧、及び補助電極68による面圧に比して面圧が小さくなる箇所が形成される(図3参照)ように設定される。このため、上チップ38と補助電極68はある程度離間されるが、上チップ38と補助電極68との離間距離Z2が過度に大きい場合、上チップ38と補助電極68との間の抵抗が大きくなり、後述する分岐電流i2(図10参照)が流れることが困難となる。
【0069】
従って、離間距離Z2は、最薄ワーク54と金属板52との間に上記のような適切な面圧の分布が得られ、且つ上チップ38と補助電極68との間の抵抗が、分岐電流i2が適切な電流値で流れることが可能となる距離に設定される。
【0070】
以上の構成において、変位機構及び電源56は図示しないガンコントローラ58に電気的に接続される。
【0071】
第2実施形態に係る抵抗溶接装置の要部は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、第2実施形態に係る抵抗溶接方法との関係で説明する。
【0072】
積層体48に対して抵抗溶接を行う際には、第1実施形態と同様に、前記ロボットが、上チップ38と下チップ32の間に積層体48が配置されるように前記溶接ガンを移動させる。その後、上チップ38と下チップ32が相対的に接近し、その結果、互いの間に積層体48が挟持される。
【0073】
この挟持と同時、又はその前後に補助電極68を金属板54に当接させ、図9に模式的な縦断面図として示す状態とする。勿論、補助電極68を金属板54に当接させるための変位は、該補助電極68を変位させる前記変位機構の作用下に行われる。
【0074】
勿論、この場合においても、ガンコントローラ58は、補助電極68の金属板54に対する加圧力F2を、該加圧力F2と上チップ38による加圧力F1との合計(F1+F2)が下チップ32による加圧力F3と均衡するように設定する。
【0075】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、上チップ38による加圧力F1と、補助電極68による加圧力F2との差を、金属板50、52の間に形成されるナゲットと、金属板52、54との間に形成されるナゲットとを可及的に大きくし得るように設定することが好ましい。
【0076】
次に、通電を開始する。第2実施形態では、上チップ38、下チップ32の各々が電源56の正極、負極に接続されているため、図10に示すように、上チップ38から下チップ32に向かう電流i1が流れる。この電流i1に基づくジュール熱により、金属板50、52の間、及び金属板52、54の間がそれぞれ加熱され、加熱領域70、72が形成される。
【0077】
ここで、金属板54には補助電極68も当接しており、この補助電極68の極性は負である。従って、上チップ38からは、上記した電流i1と同時に、補助電極68に向かう分岐電流i2が出発する。補助電極68が円環形状であるため、分岐電流i2は放射状に流れる。
【0078】
このように、第2実施形態においては、金属板50、52には流れず金属板54にのみ流れる分岐電流i2が発生する。この結果、上チップ38及び下チップ32のみを使用する一般的な抵抗溶接に比して金属板54の内部を通過する電流値が大きくなる。
【0079】
従って、この場合、金属板54の内部に、前記加熱領域72とは別の加熱領域74が形成される。なお、分岐電流i2が放射状に流れるため、加熱領域74は金属板52、54の界面を放射状に加熱する。加熱領域74は、時間の経過とともに拡大し、図11に示すように、加熱領域72と一体化する。
【0080】
金属板52、54の界面には、このようにして一体化した加熱領域72、74の双方から熱が伝達される。しかも、この場合、第1実施形態と同様に、金属板52、54の界面の接触抵抗が金属板50、52の界面に比して大きくなる。このため、該界面が十分に温度上昇して溶融し始め、その結果、金属板52、54の間にナゲット76が形成される。
【0081】
ここで、分岐電流i2の割合を大きくするほど加熱領域74を大きくすることが可能であるが、分岐電流i2の割合を過度に大きくした場合、電流i1の電流値が小さくなるので、加熱領域70、72が小さくなる。このため、ナゲット76の大きさが飽和する一方、ナゲット78が小さくなる傾向がある。従って、分岐電流i2の割合は、ナゲット78が十分に成長する程度の電流i1が流れるように設定することが好ましい。
【0082】
なお、電流i1と分岐電流i2の割合は、例えば、上記したように上チップ38と補助電極68との離間距離Z2(図8及び図9参照)を変更することで調節することが可能である。
【0083】
ナゲット76は、通電が継続される限り、時間の経過とともに成長する。従って、通電を所定の時間継続することにより、ナゲット76を十分に成長させることができる。
【0084】
この場合、金属板50、52に流れる電流i1の電流値は、一般的な抵抗溶接に比して小さい。このため、金属板52、54の間のナゲット76が大きく成長している間に金属板50、52の発熱量が過度に大きくなることが回避される。従って、スパッタが発生する懸念が払拭される。
【0085】
この間、電流i1によって金属板50、52の間にもナゲット78が形成される。分岐電流i2が継続して流れるようにすると、分岐電流i2を停止した場合に比して電流i1の全通電量が少なくなるので、加熱領域70、ひいてはナゲット78が若干小さくなる傾向がある。
【0086】
従って、ナゲット78をさらに成長させる場合には、図12に示すように、補助電極68のみを金属板54から離間させて上チップ38から下チップ32への通電を続行することが好ましい。補助電極68が最薄ワーク54から離間することに伴って電流i1の電流値が大きくなるので、通電終了までの電流i1の全通電量が多くなるからである。
【0087】
この場合、分岐電流i2が消失するため、金属板54には、上チップ38から下チップ32へ向かう電流i1のみが流れるようになる。その結果、加熱領域74(図11参照)が消失する。
【0088】
その一方で、金属板50、52においては、通常の抵抗溶接時と同様の状態が形成される。すなわち、厚みが大きい金属板50、52ではジュール熱による発熱量が増加し、その結果、加熱領域70が広がるとともにその温度が一層上昇する。金属板50、52の界面は、この温度上昇した加熱領域70に加熱され、これにより、該界面近傍の温度が十分に上昇して溶融し、ナゲット78の成長が促進される。
【0089】
以降は、ナゲット78が十分に成長するまで、例えば、図13に示すように、ナゲット76と一体化するまで通電を継続すればよい。通電継続時間に対するナゲット78の成長の度合いも、テストピース等を用いた抵抗溶接試験で予め確認しておけばよい。
【0090】
ここで、金属板50、52の界面は、金属板52、54同士の間にナゲット76を成長させる際に電流i1が通過することに伴って形成された加熱領域70によって予め加熱されている。このため、金属板50、52同士は、ナゲット78が成長する前になじみが向上している。従って、スパッタが発生し難い。
【0091】
以上のように、第2実施形態によれば、金属板52、54の間のナゲット76を成長させる際、金属板50、52の間のナゲット78を成長させる際の双方でスパッタが発生することを回避することができる。
【0092】
所定時間が経過してナゲット78が十分成長した後、通電を停止するとともに、図13に示すように、上チップ38を金属板54から離間させる。又は、上チップ38を金属板54から離間させることで上チップ38と下チップ32を電気的に絶縁するようにしてもよい。
【0093】
なお、抵抗溶接の開始から終了するに至るまでの上記した動作は全て、ガンコントローラ58の制御作用下に営まれる。
【0094】
このようにして通電が停止されることに伴い、金属板50、52の発熱も終了する。時間の経過とともにナゲット78が冷却固化し、これにより金属板50、52が互いに接合される。
【0095】
以上のようにして、積層体48を構成する金属板50、52同士、金属板52、54同士が接合され、製品としての接合品が得られるに至る。
【0096】
この接合品においては、金属板50、52同士の接合強度と同様に、金属板52、54同士の接合強度も優れる。上記したように金属板54に分岐電流i2が流されたことに伴って、金属板52、54の間のナゲット76が十分に成長しているからである。
【0097】
しかも、上記から諒解される通り、第2実施形態に係る抵抗溶接装置を構成するに際しては、補助電極68と、該補助電極68を変位させるための変位機構とを設ければよい。従って、補助電極68を設けることに伴って抵抗溶接装置の構成が複雑化することもない。
【0098】
なお、上記した第2実施形態においては、上チップ38に先んじて補助電極68を金属板54から離間させるようにしているが、補助電極68と上チップ38を金属板54から同時に離間させるようにしてもよい。
【0099】
さらに、図14に示すように、金属板50に当接した下チップ32から、金属板54に当接した上チップ38に向かう電流を流すようにしてもよい。この場合にも、金属板54に当接した補助電極68の極性を上チップ38と逆にする。すなわち、下チップ32及び補助電極68を電源56の正極に電気的に接続する一方、上チップ38を電源56の負極に電気的に接続する。これにより、下チップ32から上チップ38に向かう電流i1と、補助電極68から上チップ38に向かう分岐電流i2とが発生する。
【0100】
さらにまた、図15に示すように、分岐電流i2を、上チップ38が接触した最薄ワーク54のみならず、該最薄ワーク54の直下に位置する金属板52にも流れるようにしてもよい。
【0101】
そして、補助電極68を金属板54から離間することに代替し、補助電極68と電源56との間にスイッチを設け、このスイッチを切断(オフ)状態とすることによって、上チップ38から補助電極68に向かう電流のみ、又はその逆方向に流れる電流のみを停止するようにしてもよい。この場合において、加熱領域74を形成するためには、前記スイッチを接続(オン)状態とすることはいうまでもない。
【0102】
この場合、補助電極68を上チップ38とは別個に変位させるための変位機構を設ける必要は特にない。このため、装置構成及び動作制御が一層簡素になるという利点が得られる。
【0103】
いずれの場合においても、補助電極68は、上記した円環形状のものに特に限定されるものではない。例えば、上チップ38及び下チップ32と同様に長尺棒状のものであってもよい。この場合、補助電極は1本であっても複数本であってもよく、複数本を用いる場合は、これら複数本の補助電極68を金属板54に対して同時に当接又は離間させるようにしてもよい。
【0104】
加えて、第2実施形態に係る抵抗溶接装置の構成において、補助電極68と電源56とを電気的に絶縁すれば、第1実施形態に係る抵抗溶接方法を実施することができる。すなわち、第2実施形態に係る抵抗溶接装置の構成によれば、補助電極68に対して電流を流す・流さないを選択することにより、第2実施形態に係る抵抗溶接方法、又は第1実施形態に係る抵抗溶接方法のいずれを実施するかを選択することができる。
【0105】
さらに、上記した第1実施形態及び第2実施形態では、C型の溶接ガンを例示して説明したが、溶接ガンはいわゆるX型のものであってもよい。この場合、下チップ32及び上チップ38を、開閉自在な1組のチャック爪の各々に設け、該1組のチャック爪を開動作又は閉動作することによって、下チップ32と上チップ38とを互いに離間又は接近させればよい。
【0106】
また、4枚以上の金属板で積層体を構成するようにしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0107】
10…抵抗溶接装置 14…溶接ガン
24…ガン本体 30…固定アーム
32…下チップ 34…連結ロッド
38…上チップ 42…シリンダ機構
46…加圧用ロッド 48…積層体
50、52、54…金属板 56…電源
58…ガンコントローラ 60、62、70、72、74…加熱領域
64、66、76、78…ナゲット 68…補助電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の金属板同士を接合する手法として、これら金属板を積層して積層体を形成し、該積層体を1組の溶接用電極で挟持・加圧した後、該1組の溶接用電極間に通電を行い、前記金属板における接触面近傍の部位を溶融する抵抗溶接が従来から知られている。溶融した部位は、凝固によってナゲットと呼称される固相となる。場合によっては、3枚以上の金属板同士を抵抗溶接によって接合することもある。
【0003】
ここで、金属板は互いに同一厚みであるとは限らず、寧ろ、互いに相違することが大半である。すなわち、複数枚の金属板の中には、厚みが最も小さいワーク(以下、最薄ワークとも表記する)が含まれる。
【0004】
このような最薄ワークを積層体の最外に配置し、1組の溶接用電極の各々における積層体に対する加圧力を略均衡させて抵抗溶接を行った場合、この最薄ワークと、該最薄ワークに隣接する隣接ワークとの間のナゲットが十分に成長しないことがある。この理由は、例えば、3枚のワークを積層した場合、特許文献1に記載されるように、最薄ワークの端部が隣接ワークから離間する方向に撓むことに起因して該最薄ワークと隣接ワークとの接触抵抗が小さくなる結果、これら最薄ワークと隣接ワーク同士の間に十分なジュール熱が発生しなくなるためであると推察される。
【0005】
最薄ワーク近傍のナゲットを大きく成長させるべく、電流値を大きくすることによって最薄ワークのジュール熱を大きくすることが想起される。しかしながら、この場合、厚みが大きいワークに大電流が流れるようになり、このために該ワークが溶融して飛散する、いわゆるスパッタが惹起され易くなるという不具合を招く。
【0006】
又は、通電時間を長くすることが有効であるかのように考えられる。しかしながら、この場合においても、最薄ワークに十分なジュール熱を発生させることは容易ではない。また、溶接処理時間が長くなるので溶接効率が低下するという不具合を招いてしまう。
【0007】
そこで、本出願人は、特許文献1において、最薄ワークに当接する溶接用電極の加圧力を、残余の一方の溶接用電極に比して小さく設定することを提案している。このように各溶接用電極の積層体に対する加圧力を調整することにより、各ワーク同士の界面に発生するジュール熱を略均衡させることができる。従って、最薄ワークと隣接ワークとの間のナゲットを、他のワーク同士の間に形成されるナゲットと略同等の大きさに成長させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3894545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は特許文献1記載の技術に関連してなされたもので、積層体中の最外に配置された最薄ワークと該最薄ワークに隣接するワークとの間にナゲットを十分に成長させることが可能であり、しかも、スパッタが発生する懸念を払拭し得る抵抗溶接方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法であって、
前記積層体を第1溶接用電極及び第2溶接用電極で挟持するとともに、前記最薄ワークに対し、前記第1溶接用電極が当接した部位とは別の部位に加圧用部材を当接させ、前記加圧用部材によって前記最薄ワーク側から前記積層体を加圧する工程と、
前記第1溶接用電極及び前記加圧用部材による前記積層体に対する加圧力と、前記第2溶接用電極による前記積層体に対する加圧力とを均衡させた状態で、前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間に通電を行う工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
第1溶接用電極と加圧用部材との合計加圧力が第2溶接用電極の加圧力と均衡することから、第1溶接用電極の加圧力は、第2溶接用電極に比して小さくなる。従って、第1溶接用電極側と、該第1溶接用電極に略対向する第2溶接用電極との間では、加圧力は、第1溶接用電極側から第2溶接用電極に向かうにつれて作用範囲が広がるように分布する。このため、最薄ワークとそれに隣接するワークとの界面に作用する力は、残余のワーク同士の界面に作用する力に比して小さくなる。
【0012】
このような分布が生じる結果、最薄ワークとそれに隣接するワークとの接触面積が残余のワーク同士の接触面積に比して小さくなる。従って、最薄ワークとそれに隣接するワークとの界面の接触抵抗を大きくすることができ、これにより、ジュール熱に基づく発熱量を大きくすることができる。従って、該界面に生成するナゲットを大きく成長させることが可能となり、結局、最薄ワークとこれに隣接するワークとの接合強度を確保することができる。
【0013】
しかも、加圧用部材によって最薄ワークが押圧されるので、最薄ワークがこれに隣接するワークから離間することが抑制される。従って、軟化した溶融部が最薄ワークとこれに隣接するワークとの離間箇所からスパッタとして飛散することを防止することができる。
【0014】
なお、加圧用部材を、第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極で構成し、前記通電を行う際、第1溶接用電極から補助電極に向かう分岐電流、又は、補助電極から第1溶接用電極に向かう分岐電流のいずれかを生じさせるようにしてもよい。
【0015】
この場合、第1溶接用電極から補助電極に向かう電流、又はその逆方向に流れる電流が最薄ワークの内部を流れるので、該電流によって、最薄ワークとこれに隣接するワークとの界面が十分に加熱される。その結果、前記界面に十分な大きさのナゲットが成長するので、接合強度に一層優れた接合部が得られる。
【0016】
また、本発明は、3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行うための抵抗溶接装置であって、
前記最薄ワークに当接する第1溶接用電極と、
前記第1溶接用電極とともに前記積層体を挟持する第2溶接用電極と、
前記最薄ワークにおける前記第1溶接用電極が当接した部位とは別の部位に当接し、前記積層体を前記最薄ワーク側から加圧するための加圧用部材と、
を具備する溶接ガンを有し、
さらに、前記加圧用部材に対して前記積層体を加圧する加圧力を付与する加圧機構と、前記加圧機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1溶接用電極と前記第2溶接用電極との間に通電が行われる際、前記第1溶接用電極及び前記加圧用部材による前記積層体に対する加圧力と、前記第2溶接用電極による前記積層体に対する加圧力とを均衡させることを特徴とする。
【0017】
このような構成とすることにより、第1溶接用電極及び第2溶接用電極による積層体に対する加圧力を、第1溶接用電極(最薄ワーク)側から第2溶接用電極に向かって作用範囲が大きくなるように分布させることができる。その結果、最薄ワークとこれに隣接するワークとの界面の接触抵抗を大きくすることができ、該界面を十分に加熱して適切な大きさのナゲットを成長させることができる。これにより、最薄ワークとこれに隣接するワークとの接合強度を大きくすることができる。
【0018】
なお、溶接ガンをロボットで支持する場合、前記加圧機構は、溶接ガンに設けることが好ましい。この場合、積層体からの反力を溶接ガンで吸収することができるので、反力がロボットにまで及ぶことが回避される。従って、ロボットとして剛性の大きいものを採用する必要は特にない。換言すれば、ロボットとして小型のものを採用することが可能となるので、設備投資を低廉化することが可能となる。
【0019】
また、第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極で加圧用部材を構成し、前記通電を行う際、第1溶接用電極から補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接用電極に向かう分岐電流のいずれかを生じさせるようにしてもよい。上記したように、この場合、第1溶接用電極から補助電極に向かう電流、又はその逆方向に流れる電流によって、最薄ワークとこれに隣接するワークとの界面が十分に加熱されるので、前記界面に十分な大きさのナゲットを成長させ、接合強度に一層優れた接合部を得ることができるようになるからである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1溶接用電極と第2溶接用電極で積層体を挟持することに加え、前記積層体の最外に配置された最薄ワークを加圧用部材で加圧し、この状態で抵抗溶接を行うようにしている。このため、積層体に対する加圧力が、第1溶接用電極から第2溶接用電極に向かうにつれて作用範囲が大きくなるように分布する。
【0021】
このように加圧力が分布する結果、前記最薄ワークとこれに隣接するワークとの界面の接触面積が小さくなり、それに伴って該界面の接触抵抗が大きくなる。従って、該界面を十分に加熱し得るジュール熱が発生するようになるので、この界面に十分な大きさのナゲットを成長させることができる。これにより、最薄ワークとこれに隣接するワークとが十分な接合強度で接合する。
【0022】
換言すれば、最薄ワークとこれに隣接するワークとの間に十分な接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る抵抗溶接装置の要部拡大図である。
【図2】溶接対象である積層体を下チップ、上チップ及び加圧用ロッド(加圧用部材)で挟持した状態を示す縦断面模式図である。
【図3】積層体の最上に位置するワークと、その直下のワークとの間に適切な面圧の分布が形成された状態を示す模式的正面図とグラフである。
【図4】前記積層体を下チップ及び上チップのみで挟持した状態を示す縦断面模式図である。
【図5】図2から通電を開始し、上チップから下チップに向かう電流を流した状態を示す縦断面模式図である。
【図6】第1実施形態の変形例に係る抵抗溶接装置の要部拡大図である。
【図7】第1実施形態の別の変形例に係る抵抗溶接装置の要部拡大図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る抵抗溶接装置の要部拡大一部横断面斜視図である。
【図9】積層体を第1電極チップ、第2電極チップ及び補助電極の全てで挟持した状態を示す縦断面模式図である。
【図10】図9から通電を開始し、上チップから下チップに向かう電流を流した状態を示す縦断面模式図である。
【図11】図10から通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図12】補助電極のみを積層体から離間させる一方、上チップから下チップへの通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図13】図12に続いて上チップを積層体から離間させ、通電(抵抗溶接)を終了した状態を示す縦断面模式図である。
【図14】図10とは逆に、下チップ及び電流分岐電極から上チップに向かう電流を流した状態を示す縦断面模式図である。
【図15】積層体の最上に位置するワークと、その直下のワークとに、第1電極チップから電流分岐用電極に向かう電流が流れる状態を示す縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る抵抗溶接方法につき、これを実施する抵抗溶接装置との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る抵抗溶接装置の要部拡大図である。この抵抗溶接装置10は、アームを有するロボット(ともに図示せず)と、前記アームを構成する手首部12に支持された溶接ガン14とを有する。
【0026】
この場合、溶接ガン14は、ガン本体24の下方に配設された略C字形状の固定アーム30を具備する、いわゆるC型のものである。この固定アーム30の下方先端には、ガン本体24を臨むようにして、第2溶接用電極としての下チップ32が設けられ、該下チップ32は、ガン本体24に向かって延在している。
【0027】
ガン本体24には、ボールねじ機構(図示せず)が収容されている。このボールねじ機構のボールねじは、ガン本体24から突出し且つ前記下チップ32に向かって延在する連結ロッド34を上下方向(図1における矢印Y2方向又は矢印Y1方向)に変位させるためのものである。なお、前記ボールねじは、前記ボールねじ機構を構成する図示しないサーボモータの作用下に回転動作する。
【0028】
連結ロッド34の先端部には、ステー36を介して、第1溶接用電極としての上チップ38が前記下チップ32に対向するようにして設けられる。さらに、ステー36には橋架部材40を介して加圧手段としてのシリンダ機構42が支持されており、このシリンダ機構42を構成するシリンダチューブ44からは、加圧用部材としての加圧用ロッド46が上チップ38と平行に延在するようにして突出している。このことから諒解されるように、第1実施形態では、加圧手段(シリンダ機構42)及び加圧用部材(加圧用ロッド46)の双方が溶接ガン14に設けられている。
【0029】
溶接対象である積層体48につき若干説明すると、この場合、積層体48は、3枚の金属板50、52、54が下方からこの順序で積層されることによって構成される。この中の金属板50、52の厚みはD1(例えば、約1mm〜約2mm)に設定され、金属板54の厚みはD1に比して小寸法のD2(例えば、約0.5mm〜約0.7mm)に設定される。すなわち、金属板50、52の厚みは同一であり、金属板54はこれら金属板50、52に比して薄肉である。換言すれば、金属板54は最薄ワークである。
【0030】
金属板50、52は、例えば、いわゆるハイテン鋼であるJAC590、JAC780又はJAC980(いずれも日本鉄鋼連盟規格に規定される高性能高張力鋼板)からなり、最薄ワーク54は、例えば、いわゆる軟鋼であるJAC270(日本鉄鋼連盟規格に規定される高性能絞り加工用鋼板)からなる。金属板50、52は同一金属種であってもよいし、異種金属種であってもよい。
【0031】
又は、金属板50、52、54の全てが軟鋼である組み合わせであってもよいし、金属板50のみがハイテン鋼、金属板52、54が軟鋼である組み合わせであってもよい。
【0032】
金属板50、52、54の材質は、上記した鋼材に特に限定されるものではないことは勿論であり、抵抗溶接が可能なものであれば如何なる材質であってもよい。
【0033】
前記下チップ32及び前記上チップ38は、これら下チップ32及び上チップ38の間に溶接対象である積層体48を挟持し、且つ該積層体48に対して通電を行うものである。なお、下チップ32は電源56の負極に電気的に接続されており、一方、上チップ38は前記電源56の正極に電気的に接続されている。このため、第1実施形態では、上チップ38から下チップ32に向かって電流が流れる。
【0034】
後述するように、上チップ38と加圧用ロッド46の離間距離Z1は、最薄ワーク54と、その直下の金属板52との間に適切な面圧の分布が得られるように設定される。
【0035】
以上の構成において、前記ボールねじ機構を構成する前記サーボモータ、シリンダ機構42及び電源56は、制御手段としてのガンコントローラ58に電気的に接続されている。すなわち、これらサーボモータ、シリンダ機構42及び電源56の動作ないし付勢・滅勢は、ガンコントローラ58によって制御される。
【0036】
第1実施形態に係る抵抗溶接装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、第1実施形態に係る抵抗溶接方法との関係で説明する。
【0037】
積層体48に対して抵抗溶接を行う際、すなわち、金属板50、52同士を接合するとともに金属板52、54同士を接合する際には、先ず、前記ロボットが、下チップ32と上チップ38の間に積層体48が配置されるように前記手首部12、すなわち、溶接ガン14を移動させる。
【0038】
ガン本体24が所定の位置まで降下した後、ガンコントローラ58の作用下に前記ボールねじ機構を構成する前記サーボモータが付勢され、これに伴って前記ボールねじが回転動作を開始する。これにより、上チップ38及び加圧用ロッド46が積層体48に対してさらに接近するように、矢印Y1方向に向かって降下する。その結果、下チップ32と上チップ38の間に積層体48が挟持される。
【0039】
その一方で、ガンコントローラ58がシリンダ機構42を付勢する。これにより加圧用ロッド46が矢印Y1方向に向かってさらに突出し、該加圧用ロッド46が、下チップ32と上チップ38によって積層体48が挟持されるのと同時、又はその前後に金属板54に当接する。図2には、このときの模式的な縦断面図が示されている。
【0040】
ここで、上チップ38と加圧用ロッド46の離間距離Z1は、図3に示すように、最薄ワーク54と金属板52との間の界面に、上チップ38で押圧される箇所で面圧が最大となり、且つ加圧用ロッド46で押圧される箇所で、次に大きい面圧が得られるように設定される。換言すれば、前記界面には、上チップ38の加圧による面圧、及び加圧用ロッド46の加圧による面圧に比して面圧が小さくなる箇所が形成される。これにより、図2に示すような加圧力の分布が形成される。
【0041】
以下、この分布につき詳述する。
【0042】
ガンコントローラ58は、金属板54に対する上チップ38及び加圧用ロッド46の合計加圧力(F1+F2)が、金属板50に対する下チップ32の加圧力(F3)と均衡するように、前記ボールねじ機構のボールねじを回転動作させるサーボモータの回転付勢力、及びシリンダ機構42の推進力を制御する。この制御により、積層体48に対する矢印Y1方向に沿って作用する加圧力(F1+F2)と、矢印Y2方向に沿って作用する加圧力(F3)とが略同等となる。
【0043】
すなわち、このとき、F1<F3が成り立つ。従って、積層体48が下チップ32と上チップ38から受ける力は、図2に模式的に示すように、上チップ38から下チップ32に向かうにつれて作用範囲が広くなる(大きくなる)ように分布する。このため、金属板52、54の界面に作用する力は、金属板50、52の界面に作用する力に比して小さくなる。なお、離間距離Z1が過度に小さいために上チップ38の加圧による面圧、及び加圧用ロッド46の加圧による面圧に比して面圧が小さくなる箇所が形成されない場合、このような分布が形成され難くなる。
【0044】
図4は、加圧用ロッド46を用いずにF1=F3とした場合における積層体48が下チップ32と上チップ38から受ける力の分布を模式的に示したものである。図4から諒解されるように、この場合、力は、上チップ38から下チップ32にわたって均等である。換言すれば、金属板52、54の界面に作用する力と、金属板50、52の界面に作用する力とが等しくなる。
【0045】
図2及び図4には、金属板52、54の界面に作用する力の範囲を太実線で示している。図2及び図4を対比して諒解される通り、力が作用する範囲は、F1<F3であるときの方がF1=F3であるときに比して狭い。このことは、F1<F3であるときには、F1=F3であるときに比して金属板54が金属板52に対して押圧される範囲が狭いこと、換言すれば、接触面積が小さいことを意味する。
【0046】
ここで、このように上チップ38から下チップ32に至るまでの加圧力を分布させ、金属板52に対する金属板54の接触面積を小さくしたことに伴い、積層体48から上チップ38に向かう反力が生じる。第1実施形態では、この反力を加圧用ロッド46で受けている。
【0047】
上記したように、加圧用ロッド46を含むシリンダ機構42は、ガン本体24に収容されるボールねじ機構に連結された連結ロッド34に対し、橋架部材40を介して支持されている。このため、加圧用ロッド46で受けた前記反力は、結局、ガン本体24(溶接ガン14)に吸収される。
【0048】
従って、この場合、積層体48からの反力がロボットに作用することが回避される。このため、ロボットとして剛性が大きいものを採用する必要がない。換言すれば、ロボットとして小型のものを採用することができ、その結果、設備投資を低廉化することができる。
【0049】
次に、ガンコントローラ58は、電源56に通電開始の制御信号を発する。これにより、図2及び図4に示すように、上チップ38から下チップ32に向かう方向に電流iが流れ始める。上記したように、上チップ38、下チップ32の各々が電源56の正極、負極に接続されているからである。そして、電流iに基づくジュール熱により、金属板50、52の間、及び金属板52、54の間がそれぞれ加熱される。
【0050】
ここで、上記したように、図2に示される金属板54と金属板52との接触面積は、図4に示される金属板54と金属板52との接触面積に比して小さい。このため、金属板52、54の界面における接触抵抗及び電流密度は、図2に示される場合の方が図4に示される場合に比して、換言すれば、F1<F3であるときの方がF1=F3であるときに比して大きくなる。このため、F1<F3であるときには、F1=F3であるときに比してジュール熱の発生量、すなわち、発熱量が大きくなる。従って、F1<F3であるときには、図5に示すように、金属板50、52の界面に生成する加熱領域60と、金属板52、54の界面に生成する加熱領域62とが略同等の大きさに成長する。
【0051】
金属板50、52の界面、金属板52、54の界面は、これら加熱領域60、62によって加熱され、十分に温度上昇して溶融し始める。その結果、金属板50、52の間、金属板52、54の間にナゲット64、66がそれぞれ形成される。
【0052】
上記したように、金属板50、52の界面における加熱領域60と、金属板52、54の界面における加熱領域62とは互いに略同等の大きさである。従って、ナゲット64、66もまた、互いに略同等の大きさとなる。
【0053】
この間、金属板54は、加圧用ロッド46で金属板52側に押圧されている。この押圧により、低剛性の金属板54が通電(加熱)に伴って反ること、すなわち、金属板52から離間することが抑制される。このため、軟化した溶融部が金属板54と金属板52との離間箇所からスパッタとして飛散することを防止することができる。
【0054】
所定時間が経過してナゲット64、66が十分成長した後、通電を停止するとともに、上チップ38を金属板54から離間させる。又は、上チップ38を金属板54から離間させることで上チップ38と下チップ32を電気的に絶縁するようにしてもよい。
【0055】
なお、抵抗溶接の開始から終了するに至るまでの上記した動作は全て、ガンコントローラ58の制御作用下に営まれる。
【0056】
このようにして通電が停止されることに伴い、金属板50、52、54の発熱も終了する。時間の経過とともにナゲット64、66が冷却固化し、これにより金属板50、52同士、金属板52、54同士が互いに接合された接合品が得られるに至る。
【0057】
この接合品においては、金属板50、52同士の接合強度と同様に、金属板52、54同士の接合強度も優れる。上記したように金属板52、54の界面に十分なジュール熱が発生したことに伴って、金属板52、54の間のナゲット66が十分に成長しているからである。
【0058】
以上のように、第1実施形態によれば、スパッタが生成することを回避しつつ、金属板52、54の間に、金属板50、52の間のナゲット64と略同程度の大きさのナゲット66を成長させることができ、これにより、金属板52、54同士の接合強度が優れた成形品を得ることができる。
【0059】
第1実施形態では、加圧用ロッド46による加圧力F2を大きくするほど金属板52、54間のナゲット66を大きくすることができるが、その大きさは飽和する傾向にある。換言すれば、加圧力F2を過度に大きくしても、ナゲット66を一定の大きさ以上に成長させることは困難である。また、加圧力F2を過度に大きくすると、加圧力F1、F2の和で加圧力F3と均衡させる関係上、加圧力F1を過度に小さくする必要がある。このため、金属板50、52間のナゲット64が小さくなる。
【0060】
従って、上チップ38による加圧力F1と、加圧用ロッド46による加圧力F2との差は、ナゲット64、66を可及的に大きくし得るように設定することが好ましい。
【0061】
なお、図1に示す抵抗溶接装置10では、シリンダ機構42を連結ロッド34で支持するようにしているが、図6に示すように、ガン本体24で支持するようにしてもよいし、図7に示すように、固定アーム30で支持するようにしてもよい。
【0062】
また、いずれの場合においても、シリンダ機構42に代替し、スプリングコイル、サーボモータ等の各種の圧力付加手段を採用することができる。
【0063】
さらに、加圧用部材は上チップ38を囲繞するような円環形状であってもよいし、丸棒形状のものを複数個用いるようにしてもよい。
【0064】
加圧用部材は、補助電極であってもよい。以下、この場合を第2実施形態として説明する。なお、図1〜図7に示される構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図8は、第2実施形態に係る抵抗溶接装置の要部拡大一部横断面斜視図である。この抵抗溶接装置を構成する図示しない溶接ガンは、上記第1実施形態に係る抵抗溶接装置を構成する溶接ガンと同様に、図示しないロボットの手首部12に設けられ、下チップ32(第2溶接用電極)と、上チップ38(第1溶接用電極)とを具備し、さらに、上チップ38を囲繞するような円環形状に形成された補助電極68を有する。なお、第2実施形態においても上チップ38から下チップ32に向かって電流が流れるものとする。
【0066】
この場合、上チップ38を支持するガン本体24には、この補助電極68を積層体48に対して接近又は離間させるための変位機構、例えば、ボールねじ機構又はシリンダ機構等が設けられる。この変位機構により、補助電極68は、上チップ38とは別個に積層体48に対して接近又は離間することが可能である。なお、第2実施形態においても、変位機構は溶接ガン側に設けられる。
【0067】
第2実施形態では、電源56の正極に対して上チップ38が電気的に接続されるとともに、下チップ32及び補助電極68が前記電源56の負極に対して電気的に接続される。このことから諒解される通り、上チップ38と補助電極68はともに、積層体48を構成する金属板54に当接するものの、その極性は互いに逆である。
【0068】
上チップ38と補助電極68との離間距離Z2は、第1実施形態と同様に加圧力が分布するように、上チップ38による面圧、及び補助電極68による面圧に比して面圧が小さくなる箇所が形成される(図3参照)ように設定される。このため、上チップ38と補助電極68はある程度離間されるが、上チップ38と補助電極68との離間距離Z2が過度に大きい場合、上チップ38と補助電極68との間の抵抗が大きくなり、後述する分岐電流i2(図10参照)が流れることが困難となる。
【0069】
従って、離間距離Z2は、最薄ワーク54と金属板52との間に上記のような適切な面圧の分布が得られ、且つ上チップ38と補助電極68との間の抵抗が、分岐電流i2が適切な電流値で流れることが可能となる距離に設定される。
【0070】
以上の構成において、変位機構及び電源56は図示しないガンコントローラ58に電気的に接続される。
【0071】
第2実施形態に係る抵抗溶接装置の要部は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、第2実施形態に係る抵抗溶接方法との関係で説明する。
【0072】
積層体48に対して抵抗溶接を行う際には、第1実施形態と同様に、前記ロボットが、上チップ38と下チップ32の間に積層体48が配置されるように前記溶接ガンを移動させる。その後、上チップ38と下チップ32が相対的に接近し、その結果、互いの間に積層体48が挟持される。
【0073】
この挟持と同時、又はその前後に補助電極68を金属板54に当接させ、図9に模式的な縦断面図として示す状態とする。勿論、補助電極68を金属板54に当接させるための変位は、該補助電極68を変位させる前記変位機構の作用下に行われる。
【0074】
勿論、この場合においても、ガンコントローラ58は、補助電極68の金属板54に対する加圧力F2を、該加圧力F2と上チップ38による加圧力F1との合計(F1+F2)が下チップ32による加圧力F3と均衡するように設定する。
【0075】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、上チップ38による加圧力F1と、補助電極68による加圧力F2との差を、金属板50、52の間に形成されるナゲットと、金属板52、54との間に形成されるナゲットとを可及的に大きくし得るように設定することが好ましい。
【0076】
次に、通電を開始する。第2実施形態では、上チップ38、下チップ32の各々が電源56の正極、負極に接続されているため、図10に示すように、上チップ38から下チップ32に向かう電流i1が流れる。この電流i1に基づくジュール熱により、金属板50、52の間、及び金属板52、54の間がそれぞれ加熱され、加熱領域70、72が形成される。
【0077】
ここで、金属板54には補助電極68も当接しており、この補助電極68の極性は負である。従って、上チップ38からは、上記した電流i1と同時に、補助電極68に向かう分岐電流i2が出発する。補助電極68が円環形状であるため、分岐電流i2は放射状に流れる。
【0078】
このように、第2実施形態においては、金属板50、52には流れず金属板54にのみ流れる分岐電流i2が発生する。この結果、上チップ38及び下チップ32のみを使用する一般的な抵抗溶接に比して金属板54の内部を通過する電流値が大きくなる。
【0079】
従って、この場合、金属板54の内部に、前記加熱領域72とは別の加熱領域74が形成される。なお、分岐電流i2が放射状に流れるため、加熱領域74は金属板52、54の界面を放射状に加熱する。加熱領域74は、時間の経過とともに拡大し、図11に示すように、加熱領域72と一体化する。
【0080】
金属板52、54の界面には、このようにして一体化した加熱領域72、74の双方から熱が伝達される。しかも、この場合、第1実施形態と同様に、金属板52、54の界面の接触抵抗が金属板50、52の界面に比して大きくなる。このため、該界面が十分に温度上昇して溶融し始め、その結果、金属板52、54の間にナゲット76が形成される。
【0081】
ここで、分岐電流i2の割合を大きくするほど加熱領域74を大きくすることが可能であるが、分岐電流i2の割合を過度に大きくした場合、電流i1の電流値が小さくなるので、加熱領域70、72が小さくなる。このため、ナゲット76の大きさが飽和する一方、ナゲット78が小さくなる傾向がある。従って、分岐電流i2の割合は、ナゲット78が十分に成長する程度の電流i1が流れるように設定することが好ましい。
【0082】
なお、電流i1と分岐電流i2の割合は、例えば、上記したように上チップ38と補助電極68との離間距離Z2(図8及び図9参照)を変更することで調節することが可能である。
【0083】
ナゲット76は、通電が継続される限り、時間の経過とともに成長する。従って、通電を所定の時間継続することにより、ナゲット76を十分に成長させることができる。
【0084】
この場合、金属板50、52に流れる電流i1の電流値は、一般的な抵抗溶接に比して小さい。このため、金属板52、54の間のナゲット76が大きく成長している間に金属板50、52の発熱量が過度に大きくなることが回避される。従って、スパッタが発生する懸念が払拭される。
【0085】
この間、電流i1によって金属板50、52の間にもナゲット78が形成される。分岐電流i2が継続して流れるようにすると、分岐電流i2を停止した場合に比して電流i1の全通電量が少なくなるので、加熱領域70、ひいてはナゲット78が若干小さくなる傾向がある。
【0086】
従って、ナゲット78をさらに成長させる場合には、図12に示すように、補助電極68のみを金属板54から離間させて上チップ38から下チップ32への通電を続行することが好ましい。補助電極68が最薄ワーク54から離間することに伴って電流i1の電流値が大きくなるので、通電終了までの電流i1の全通電量が多くなるからである。
【0087】
この場合、分岐電流i2が消失するため、金属板54には、上チップ38から下チップ32へ向かう電流i1のみが流れるようになる。その結果、加熱領域74(図11参照)が消失する。
【0088】
その一方で、金属板50、52においては、通常の抵抗溶接時と同様の状態が形成される。すなわち、厚みが大きい金属板50、52ではジュール熱による発熱量が増加し、その結果、加熱領域70が広がるとともにその温度が一層上昇する。金属板50、52の界面は、この温度上昇した加熱領域70に加熱され、これにより、該界面近傍の温度が十分に上昇して溶融し、ナゲット78の成長が促進される。
【0089】
以降は、ナゲット78が十分に成長するまで、例えば、図13に示すように、ナゲット76と一体化するまで通電を継続すればよい。通電継続時間に対するナゲット78の成長の度合いも、テストピース等を用いた抵抗溶接試験で予め確認しておけばよい。
【0090】
ここで、金属板50、52の界面は、金属板52、54同士の間にナゲット76を成長させる際に電流i1が通過することに伴って形成された加熱領域70によって予め加熱されている。このため、金属板50、52同士は、ナゲット78が成長する前になじみが向上している。従って、スパッタが発生し難い。
【0091】
以上のように、第2実施形態によれば、金属板52、54の間のナゲット76を成長させる際、金属板50、52の間のナゲット78を成長させる際の双方でスパッタが発生することを回避することができる。
【0092】
所定時間が経過してナゲット78が十分成長した後、通電を停止するとともに、図13に示すように、上チップ38を金属板54から離間させる。又は、上チップ38を金属板54から離間させることで上チップ38と下チップ32を電気的に絶縁するようにしてもよい。
【0093】
なお、抵抗溶接の開始から終了するに至るまでの上記した動作は全て、ガンコントローラ58の制御作用下に営まれる。
【0094】
このようにして通電が停止されることに伴い、金属板50、52の発熱も終了する。時間の経過とともにナゲット78が冷却固化し、これにより金属板50、52が互いに接合される。
【0095】
以上のようにして、積層体48を構成する金属板50、52同士、金属板52、54同士が接合され、製品としての接合品が得られるに至る。
【0096】
この接合品においては、金属板50、52同士の接合強度と同様に、金属板52、54同士の接合強度も優れる。上記したように金属板54に分岐電流i2が流されたことに伴って、金属板52、54の間のナゲット76が十分に成長しているからである。
【0097】
しかも、上記から諒解される通り、第2実施形態に係る抵抗溶接装置を構成するに際しては、補助電極68と、該補助電極68を変位させるための変位機構とを設ければよい。従って、補助電極68を設けることに伴って抵抗溶接装置の構成が複雑化することもない。
【0098】
なお、上記した第2実施形態においては、上チップ38に先んじて補助電極68を金属板54から離間させるようにしているが、補助電極68と上チップ38を金属板54から同時に離間させるようにしてもよい。
【0099】
さらに、図14に示すように、金属板50に当接した下チップ32から、金属板54に当接した上チップ38に向かう電流を流すようにしてもよい。この場合にも、金属板54に当接した補助電極68の極性を上チップ38と逆にする。すなわち、下チップ32及び補助電極68を電源56の正極に電気的に接続する一方、上チップ38を電源56の負極に電気的に接続する。これにより、下チップ32から上チップ38に向かう電流i1と、補助電極68から上チップ38に向かう分岐電流i2とが発生する。
【0100】
さらにまた、図15に示すように、分岐電流i2を、上チップ38が接触した最薄ワーク54のみならず、該最薄ワーク54の直下に位置する金属板52にも流れるようにしてもよい。
【0101】
そして、補助電極68を金属板54から離間することに代替し、補助電極68と電源56との間にスイッチを設け、このスイッチを切断(オフ)状態とすることによって、上チップ38から補助電極68に向かう電流のみ、又はその逆方向に流れる電流のみを停止するようにしてもよい。この場合において、加熱領域74を形成するためには、前記スイッチを接続(オン)状態とすることはいうまでもない。
【0102】
この場合、補助電極68を上チップ38とは別個に変位させるための変位機構を設ける必要は特にない。このため、装置構成及び動作制御が一層簡素になるという利点が得られる。
【0103】
いずれの場合においても、補助電極68は、上記した円環形状のものに特に限定されるものではない。例えば、上チップ38及び下チップ32と同様に長尺棒状のものであってもよい。この場合、補助電極は1本であっても複数本であってもよく、複数本を用いる場合は、これら複数本の補助電極68を金属板54に対して同時に当接又は離間させるようにしてもよい。
【0104】
加えて、第2実施形態に係る抵抗溶接装置の構成において、補助電極68と電源56とを電気的に絶縁すれば、第1実施形態に係る抵抗溶接方法を実施することができる。すなわち、第2実施形態に係る抵抗溶接装置の構成によれば、補助電極68に対して電流を流す・流さないを選択することにより、第2実施形態に係る抵抗溶接方法、又は第1実施形態に係る抵抗溶接方法のいずれを実施するかを選択することができる。
【0105】
さらに、上記した第1実施形態及び第2実施形態では、C型の溶接ガンを例示して説明したが、溶接ガンはいわゆるX型のものであってもよい。この場合、下チップ32及び上チップ38を、開閉自在な1組のチャック爪の各々に設け、該1組のチャック爪を開動作又は閉動作することによって、下チップ32と上チップ38とを互いに離間又は接近させればよい。
【0106】
また、4枚以上の金属板で積層体を構成するようにしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0107】
10…抵抗溶接装置 14…溶接ガン
24…ガン本体 30…固定アーム
32…下チップ 34…連結ロッド
38…上チップ 42…シリンダ機構
46…加圧用ロッド 48…積層体
50、52、54…金属板 56…電源
58…ガンコントローラ 60、62、70、72、74…加熱領域
64、66、76、78…ナゲット 68…補助電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法であって、
前記積層体を第1溶接用電極及び第2溶接用電極で挟持するとともに、前記最薄ワークに対し、前記第1溶接用電極が当接した部位とは別の部位に加圧用部材を当接させ、前記加圧用部材によって前記最薄ワーク側から前記積層体を加圧する工程と、
前記第1溶接用電極及び前記加圧用部材による前記積層体に対する加圧力と、前記第2溶接用電極による前記積層体に対する加圧力とを均衡させた状態で、前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間に通電を行う工程と、
を有することを特徴とする抵抗溶接方法。
【請求項2】
請求項1記載の抵抗溶接方法において、前記加圧用部材を、前記第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極で構成し、前記通電を行う際、前記第1溶接用電極から前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接用電極に向かう分岐電流のいずれかを生じさせることを特徴とする抵抗溶接方法。
【請求項3】
3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行うための抵抗溶接装置であって、
前記最薄ワークに当接する第1溶接用電極と、
前記第1溶接用電極とともに前記積層体を挟持する第2溶接用電極と、
前記最薄ワークにおける前記第1溶接用電極が当接した部位とは別の部位に当接し、前記積層体を前記最薄ワーク側から加圧するための加圧用部材と、
を具備する溶接ガンを有し、
さらに、前記加圧用部材に対して前記積層体を加圧する加圧力を付与する加圧機構と、前記加圧機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1溶接用電極と前記第2溶接用電極との間に通電が行われる際、前記第1溶接用電極及び前記加圧用部材による前記積層体に対する加圧力と、前記第2溶接用電極による前記積層体に対する加圧力とを均衡させることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項4】
請求項3記載の抵抗溶接装置において、前記溶接ガンを支持するロボットをさらに有し、且つ前記加圧機構が前記溶接ガンに設けられることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の抵抗溶接装置において、前記加圧用部材が、前記第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極であり、前記通電を行う際、前記第1溶接用電極から前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接用電極に向かう分岐電流のいずれかを生じさせることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項1】
3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法であって、
前記積層体を第1溶接用電極及び第2溶接用電極で挟持するとともに、前記最薄ワークに対し、前記第1溶接用電極が当接した部位とは別の部位に加圧用部材を当接させ、前記加圧用部材によって前記最薄ワーク側から前記積層体を加圧する工程と、
前記第1溶接用電極及び前記加圧用部材による前記積層体に対する加圧力と、前記第2溶接用電極による前記積層体に対する加圧力とを均衡させた状態で、前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間に通電を行う工程と、
を有することを特徴とする抵抗溶接方法。
【請求項2】
請求項1記載の抵抗溶接方法において、前記加圧用部材を、前記第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極で構成し、前記通電を行う際、前記第1溶接用電極から前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接用電極に向かう分岐電流のいずれかを生じさせることを特徴とする抵抗溶接方法。
【請求項3】
3枚以上のワークを積層するとともに、前記ワーク中、厚みが最小である最薄ワークを最外に配置して形成した積層体に対して抵抗溶接を行うための抵抗溶接装置であって、
前記最薄ワークに当接する第1溶接用電極と、
前記第1溶接用電極とともに前記積層体を挟持する第2溶接用電極と、
前記最薄ワークにおける前記第1溶接用電極が当接した部位とは別の部位に当接し、前記積層体を前記最薄ワーク側から加圧するための加圧用部材と、
を具備する溶接ガンを有し、
さらに、前記加圧用部材に対して前記積層体を加圧する加圧力を付与する加圧機構と、前記加圧機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1溶接用電極と前記第2溶接用電極との間に通電が行われる際、前記第1溶接用電極及び前記加圧用部材による前記積層体に対する加圧力と、前記第2溶接用電極による前記積層体に対する加圧力とを均衡させることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項4】
請求項3記載の抵抗溶接装置において、前記溶接ガンを支持するロボットをさらに有し、且つ前記加圧機構が前記溶接ガンに設けられることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の抵抗溶接装置において、前記加圧用部材が、前記第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極であり、前記通電を行う際、前記第1溶接用電極から前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接用電極に向かう分岐電流のいずれかを生じさせることを特徴とする抵抗溶接装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−11259(P2011−11259A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100860(P2010−100860)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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