説明

押え接続型コネクタ

【課題】薄型化が可能でありながら、バネ圧力の設定が容易に行え、安定した接触圧力が得られつつ、振込機を通して整列が可能な圧接挟持型コネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁体に複数の貫通孔を形成して、この貫通孔内に、上下に接点部を有するコンタクトを備えた押え接続型コネクタにおいて、コンタクトは、係止部と係止部からそれぞれ上下方向に延在させた一対の接点部を備え、絶縁体はシート状の絶縁体を少なくとも二枚以上重ね合わせて形成し、コンタクトの係止部をこのシート状の絶縁体間で挟持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LGA(Land Grid Array)タイプの電子部品とプリント基板とを、あるいはプリント基板同士等を合わせるようにして接続する際に、それらの間に押圧挟持されることで互いの電極間の導通を行う押え接続型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LGAタイプの電子部品としてLSI(Large Scale Integration)やIC(Integreted Circuit)と、プリント基板などを電極端子を互いに接続するためのコネクタとして、図6、図7に示すものがある。
図6に示すタイプでは、図6(イ)に示すようにコネクタ110を電子部品101、102間に挟み、電子部品101、102を互いに近づけるように両部品の複数の電極101a、102aを図6(ロ)に示すように、それぞれコネクタ110の接点部132a、132bに押圧接触させる。
そして、導体であるコンタクト130を介して両部品間を電気的に接続する。
コネクタ110は、略C型形状のコンタクト130がバネ先端部に設けられた凸部120aにて保持され、接点部132a、132bが上下に弾性変形する構造となっている。
しかし、このようなリングバネタイプのコンタクトを用いる構造では、このコンタクトを収納可能な厚い絶縁体が必要であり、コネクタの薄型化が困難であった。
また、図7に示すタイプでは、図7(ロ)にコンタクト140を貫通孔150へ挿し込む状態を示すように、コンタクト140に鍔部141を設け、貫通孔150内に鍔部141を挟持する溝部151を設けている。
そして、鍔部141をこの溝部151に圧入することで、図7(イ)にコンタクトを装着した状態の溝部付近の縦断面図を示すように、溝部151の壁面により鍔部151を圧入挟持してコンタクト140の位置決めと固定を行っている。
しかし、鍔部を絶縁体厚み方向に設けた溝部で挟持する構造であることから、この溝部を形成可能な厚い絶縁体が必要であり、構造上コネクタの薄型化が困難であった。
一方、図6に示すタイプでは、コンタクト130は、凸部120aによって貫通孔121内に保持しているため、図6(ロ)に示すように、接続時にバネ先端部132c、132dがこの凸部120aに干渉してしまう。
このことから、バネの弾性変形のストローク範囲内でバネ圧力は一定とならず、接点部の接触圧力の安定化が難しいという問題があった。
また、図7のタイプでは鍔部141の圧入挟持によるコンタクト140の固定構造であるため、圧入位置が安定せず絶縁体120の厚み方向の位置が不安定となり、接点部142a、142bの接触圧力を安定化させるのが難しいという問題があった。
特開平5−226043号公報にはΩ形状の接触体を用いて電気的回路部材間を導通させる技術を開示するが、絶縁体(ハウジング)にΩ形状の接触体を収納するための厚みが必要であり薄型化が困難な構造であった。
【0003】
【特許文献1】特開平5−226043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記技術的課題に鑑みて、薄型化が可能であり、安定した接続圧力が得られる、押え接続型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的要旨は、絶縁体に複数の貫通孔を形成して、この貫通孔内に、上下に接点部を有するコンタクトを備えた押え接続型コネクタにおいて、コンタクトは、係止部と係止部からそれぞれ上下方向に延在させた一対の接点部を備え、絶縁体はシート状の絶縁体を少なくとも二枚以上重ね合わせて形成し、コンタクトの係止部をこのシート状の絶縁体間で挟持した点である。
【0006】
この押え接続型コネクタ(以下コネクタと略す)は、積み重ねるように接続する接続対象の電子部品と電子部品との間、例えばLSIやICとプリント基板、プリント基板とプリント基板との間に配置して、押圧挟持される。
この種のコネクタとして、例えばLGAソケットがある。
電子部品間にコネクタが押圧挟持されるに際し、電子部品の対向する電極同士は、導体であるコンタクトの接点部を対向して押圧変形させつつ互いに導通する。
ここで、コンタクトは、一枚のバネ材に切れ目を入れ、切れ目を入れた一方を上方に曲げ、他方を下方に曲げて一対の接点部とするのがよい。
つまり、略リング状のバネではなく、絶縁体の面方向を向いたベース基材の、一端を二股状に分けて断面形状を略Y字状としそれぞれの接点部を両開口部より突出させて、他端を係止部としている。
このようにバネ材を上下分岐させる構造であるため、コンタクトは非常に薄く形成出来、薄いシート状の絶縁体を用いてコネクタを薄型化出来る。
コンタクトは上下のシート状絶縁体に係止部を接着挟持することで絶縁体に取り付けることができる。
このように、コンタクトは係止部をシート状の絶縁体間に狭持して位置決めと固定を行うため、貫通孔の壁面を利用した外形位置決めや固定の必要が無い。
コンタクトは、このように絶縁体の間に係止部を挟み接着する構造とするため、バネ材の切れ目線を軸に回転対称にする事が出来る。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタでは、コンタクトは係止部と係止部からそれぞれ上下方向に延在させた接点部としているため、コンタクトを薄く形成出来るため、シート状の絶縁体を用いた非常に薄型のコネクタ構造が得られる。
又、本発明に係るコネクタにおいては、コンタクトの位置の固定を、従来のコネクタのように圧入により固定せず、コンタクト係止部をシート状の絶縁体間で挟持して行っている。
このことから取り付け位置が、圧入による固定のように不安定となることは無く、一定となり接点部の接触圧力を均一化出来る。
また、コンタクトをバネ材の切れ目線を軸に回転対称にすると、複数のコンタクトをケース等に収納した状態から振込機で治具上に整列させて、一括してシート状の絶縁体に接着可能であるため非常に生産性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図5に本発明に係るコネクタの実施例を示す。
図5(イ)が上面図を示し、図5(ロ)が下面図を示し、図5(ハ)が側面図を示す。
コネクタ10は複数のコンタクト30を絶縁体20の面方向に配置している。
コネクタ10は、LGAソケットとして図5(ロ)に示す一面側にLGAタイプのLSIを装着しプリント基板との接続を行う。
図1(イ)はコネクタ10のコンタクト30付近を拡大した縦断面の模式図を示し、図1(ロ)はA−A線断面図を示し、図1(ハ)はB視要部図を示す。
又、図2に貫通孔24と、貫通孔24内に配置されたコンタクト30を絶縁体20を透視して描いたコンタクト付近の要部斜視図を示す。
コネクタ10は、シート状の絶縁体20の厚み方向に絶縁体20を貫通させた貫通孔24にコンタクト30を備えている。
コンタクト30は、係止部32をシート状の上側絶縁体21と下側絶縁体22との間の狭持部23に接着し、貫通孔24内から上下に延在して接点部33a、33bを配置している。
接点部33a、33bはバネ材の一方を断面略Y字状に分岐させて上下に対で形成している。
この接点部33a、33bは貫通孔24の上下の開口部24b、24cからその頂部を突出させるように延在している。
このように、接点部33a、33bを板バネ材を上下に分岐し、延在させて設けることで、コンタクト30を絶縁体20の厚み方向に薄くすることが出来、加えてシート状の絶縁体21、22を用いることでコネクタ10を薄型化出来る。
上側絶縁体21と下側絶縁体22とは間に接着層40を介在させて互いに接着し、またこの接着層40により係止部32を接着固定している。
このように、コンタクト30の係止部32をシート状の絶縁体21、22間に狭持してコンタクト30を位置固定することで、接点部33a、33bの取り付け高さを正確で安定化させることが出来る。
【0009】
絶縁体へのコンタクトの装着について、図3(イ)に示す要部分解斜視図と図3(ロ)に示す縦断面図を用いて説明する。
上側絶縁体21と下側絶縁体22の対向面には、予め接着剤を塗布して接着層40を設ける。
コンタクト30は上側絶縁体21の係止部受け部21aと下側絶縁体22の係止部受け部22aの間に係止部32を位置決めして上側絶縁体21と下側絶縁体22を合わせることで接着固定される。
コンタクト30は中心軸(切れ目線)回転対称形状であることから、絶縁体への装着を、ケース等にバラ状に収納した状態から振込機で治具上に整列させた上で、その上から一方の絶縁体を貼り付け、反転させた後にもう一方の絶縁体を貼り合わせて行うことが出来、非常に生産性が良い。
【0010】
次に本発明のコネクタを用いた電子部品の接続について図4を用いて説明する。
コネクタ10は、図4(イ)に示すように電子部品として接続対象のLSI1とプリント基板2との間に配置する。
そして、LSI1とプリント基板2とは、図4(ロ)に示すようにコネクタ10を介して積み重ねるように接続する。
LSI1とプリント基板2の対向位置のランド(電極)1a、2aは接点部33a、33bに押圧接触し、コンタクト30を介して互いに導通する。
ここで、接点部33a、33bは図1(ロ)、図1(ハ)に示すように板状のバネ材を絶縁体20の面方向に切れ目31で切り分けて形成しているためLSIの電極1aとプリント基板2の電極2aとで押圧して弾性変形しても互いに直接干渉することがない。
このため、コネクタ10を薄型化しても大きな曲げストロークを得ることが出来る。
そして、接点部33a、33bは弾性変形する際に、貫通孔24の内壁と干渉しないことから、曲げストローク範囲において安定した接触圧力で電極に接触する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コンタクト部分の拡大図で、(イ)は縦断面の模式図を示し、(ロ)はA−A線断面図を示し、(ハ)はB視要部図を示す。
【図2】コンタクト部分の要部斜視図を示す。
【図3】絶縁体とコンタクトを分解した説明図を示す。
【図4】電子部品同士をコネクタを用いて接続する状態の説明図を示す。
【図5】本発明に係るコネクタの実施例を示す。
【図6】従来のコネクタ例を示す。
【図7】従来のコネクタ例を示す。
【符号の説明】
【0012】
1 LGAタイプのLSI(電子部品)
1a LGAタイプのLSIランド(電子部品電極)
2 プリント基板(電子部品)
2a プリント基板ランド(電子部品電極)
10 押え接続型コネクタ(LGAソケット)
20 絶縁体
21 上側絶縁体
21a 上側絶縁体係止部受け部
22 下側絶縁体
22a 下側絶縁体係止部受け部
23 コンタクト係止部の狭持部
24 貫通孔
24a 貫通孔の壁面
24b、24c 貫通孔開口部
30 コンタクト
31 コンタクト切れ目
32 コンタクト係止部
33a、33b コンタクト接点部
40 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体に複数の貫通孔を形成して、この貫通孔内に、上下に接点部を有するコンタクトを備えた押え接続型コネクタにおいて、
コンタクトは、係止部と係止部からそれぞれ上下方向に延在させた一対の接点部を備え、絶縁体はシート状の絶縁体を少なくとも二枚以上重ね合わせて形成し、
コンタクトの係止部をこのシート状の絶縁体間で挟持したことを特徴とする押え接続型コネクタ。
【請求項2】
コンタクトは、一枚のバネ材に切れ目を入れ、切れ目を入れた一方を上方に曲げ、他方を下方に曲げて一対の接点部としたことを特徴とする請求項1記載の押え接続型コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−40658(P2006−40658A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216868(P2004−216868)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)