説明

押下ヘッドの位置合わせ機構

【課題】容器体に装着した固定吸引部に対して上方付勢状態で押し下げ可能に装着した作動噴出部を備え、該噴出部の上下動で容器体内の液を固定吸引部内に吸引するとともに、作動噴出部の上端を構成する押下ヘッドの噴出口より噴出する如く構成したディスペンサーに於ける押下ヘッドの位置合わせ機構であって、使用者が無理に回動させようとしても極めて外れ難く、効率の良い液の噴出をより確実に行える機構を提供する。
【解決手段】ディスペンサーを容器体口頸部101に嵌合させる装着筒部材A1の上面に立設したガイド筒14と、押下ヘッドとのいずれか一方にアリ溝型のガイド溝16を縦設し、他方にガイド溝の横断面と横断面が相似してガイド溝に上下動可能に嵌合する突部25を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押下ヘッドの位置合わせ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ式のディスペンサーとして、容器体に装着した固定吸引部と、該固定吸引部に対して上方付勢状態で押し下げ可能に装着した作動噴出部を備え、作動噴出部の上下動により容器体内の液を固定吸引部内に吸引するとともに、作動噴出部の上端を構成する押下ヘッドの噴出口より噴出する如く構成したものが知られている。
【0003】
また、これらのディスペンサーとして、収納液を最後まで効率良く噴出する目的で、固定吸引部下端を構成する吸い上げ用のパイプの下端開口を容器体底部前方隅部に屈曲配置させ、一方、押下ヘッドの噴出口の開口方向をパイプの下端開口方向と合わせて押下ヘッドを上下動させる如く構成したものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
前記ディスペンサーは、ベースキャップの開口部及び押下ヘッドの横断面形状が概略楕円形をしていて、押下ヘッドの注出口が概略弾縁径の長径若しくは短径方向に向けて設けてあり、押下ヘッドの注出口の有る側では、軸芯からの距離が押下ヘッドの注出口のある側とは反対側の概略楕円形断面よりも長径若しくは短径方向で短寸になっており、押下ヘッドを周方向へ回動させる力とほぼ直交する方向に延びる直線部を備えた段差部が設けてある。前記段差部形態を具体的にいえば、押下ヘッドの周面前部に幅広で突出幅の大きい縦長矩形状突部を突設し、一方ベースキャップの開口部対応位置の頂壁部に前記突部が上下動可能に嵌合する嵌合凹部を凹設している。また、押下ヘッド周面前部に幅広で凹み幅の大きい縦長矩形状凹部を凹設し、一方ベースキャップの開口部対応位置の頂壁部に前記凹部が上下動可能に嵌合する案内突部を突設している。
【特許文献1】特開平11−198954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の位置合わせ機構は、パイプの下端開口位置に簡単に注出口の方向を向かせることができ、また、注出口のベースキャップに対する位置ズレも少なく、効率の良い収納液の噴出を行うという目的を充分達成できるものではあるが、機構の充分な強度を保つために上記した突部或いは凹部の突出幅或いは凹み幅が大きいものとなり、それらが著しく目立つ存在で外観を損ねる場合がある。また、反面それらの不都合を解消すべく突出幅或いは凹み幅を小さいものとした場合には、係合が簡単に外れてしまうという不都合がある。この種のディスペンサーは従来押下ヘッドが回動する為、使用者が誤って押下ヘッドを強引に回動させると、この種のディスペンサーが一般に合成樹脂製であることもあって、凹部から突部を外してしまう虞れがある。また、押下ヘッドの外周が楕円形状をなすという特定の形態に限定されるため、押下ヘッド等の形状に自由度がなく限定された形態のみ採用されるという不都合も有る。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、固定吸引部に対する押下ヘッドの位置合わせは従前通り行えるとともに、使用者の無茶な取り扱いにあっても外れ難く耐久性に優れ、しかも外観の美麗さを発揮できる等種々の利点を備えた押下ヘッドの位置合わせ機構を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、容器体100 に嵌着した固定吸引部Aに対して上方付勢状態で押し下げ可能に装着した作動噴出部Bを備え、作動噴出部Bの上下動により容器体100 内の液を固定吸引部A内に吸引するとともに、作動噴出部Bの上端を構成する押下ヘッドB2の噴出口24より噴出する如く構成したディスペンサー於ける押下ヘッドの位置合わせ機構であって、固定吸引部の一部を構成し且つディスペンサーを容器体口頸部101 に嵌合させる装着筒部材A1の上面に立設したガイド筒14と、押下ヘッドB2とのいずれか一方にアリ溝型のガイド溝16を設け、他方にガイド溝16の横断面と横断面が相似してガイド溝16に上下動可能に嵌合する突部25を設けた。
【0008】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、前記ガイド筒14を、装着筒部材A1の上面よりそれぞれ同心円状に立設した内外一対の内ガイド筒14a 及び外ガイド筒14b とで構成し、押下ヘッドB2の周壁部22を両ガイド筒間に上下動が可能に垂設し、内ガイド筒14a 外面と押下ヘッド周壁部22の内面との間に前記ガイド溝16及び突部25を設けた。
【0009】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、前記ガイド筒14を押下ヘッドB2の周壁部22外方に立設してその内面に前記ガイド溝を縦設し、前記突部25をガイド溝14内の押下ヘッド周壁部22外周に突設した。
【0010】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段のいずれかの手段に於いて、前記突部25を前記ガイド溝16と同様の縦長に形成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用者が誤って押下ヘッドB2を回動しようとしても、回転方向に掛かった力はアリ溝の広がり部分に食い込む方向に掛かり、簡単にガイド溝16と突部25との係合が外れることはなく、常時安定して容器体100 内の液を最後まで効率よく噴出することができる。また、ガイド溝16と突部25とが外れない為、それらを各一箇所設けても充分な外れ防止を行えるとともに、一箇所設けた場合にはその方向性を特定できるため、押下ヘッドB2が外れる不都合が有った場合でも確実にもとの状態に戻すことができる利点もある。
【0012】
前記ガイド筒14を、装着筒部材A1の上面よりそれぞれ同心円状に立設した内外一対の内ガイド筒14a 及び外ガイド筒14b とで構成し、押下ヘッドB2の周壁部22を両ガイド筒間に上下動が可能に垂設し、内ガイド筒14a 外面と押下ヘッド周壁部22の内面との間に前記ガイド溝16及び突部25を設けた場合には、外部からガイド溝16や突部25を隠すことができる外観上の利点を兼ね備える。
【0013】
前記ガイド筒14を押下ヘッドB2の周壁部22外方に立設してその内面に前記ガイド溝を縦設し、前記突部25をガイド溝14内の押下ヘッド周壁部22外周に突設した場合には、この場合もガイド筒14によりガイド溝16及び突部25を隠すことができるという外観上の利点を伴う。
【0014】
前記突部25を前記ガイド溝16と同様の縦長に形成した場合には、押下ヘッドB2の上下動をより安定的に行えるとともに、使用者による誤った回動があったとしても更に確実にガイド溝16と突部25との外れを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1乃至図3は本発明の押下ヘッドの位置合わせ機構を備えたポンプ式のディスペンサー1の一例を示し、該ディスペンサー1は、容器体100 内の液を内部構造等の選択により霧状或いは泡状或いは水柱状などの状態で噴出するもので、固定吸引部Aと、作動噴出部Bとを備えている。
【0017】
固定吸引部Aは上端部を容器体100 に固定し、下部を容器体100 内に垂下して装着している。図示例では、容器体100 の口頸部101 に嵌着した装着筒部材A1により、容器体100 内に下部を垂下したシリンダA2の上部を固定している。装着筒部材A1は、容器体口頸部101 の外周に螺着させた周壁10の上端よりフランジ状の周壁11を延設している。また、周壁11上面中央部の作動噴出部Bが突出する窓孔周縁よりガイド筒14を構成する内ガイド筒14a を立設し、周壁11周縁部からはガイド筒14を構成する外ガイド筒14b を立設している。更に、シリンダA2の下端には吸い上げ用のパイプ15を嵌着し、該パイプ15は屈曲させてその下端を容器体100 内の底部隅部に開口している。
【0018】
作動噴出部Bは装着筒部材A1の周壁11中央の窓孔より上方付勢状態で押込み可能に突設したステムB1の上端に押下ヘッドB2を嵌着している。押下ヘッドB2は、ステムB1の外周上端に嵌合させた縦筒20を頂板21の裏面より垂設し、頂板21の周縁部から周壁部22を垂設している。また、縦筒20の上端部に基端を連通して他端を周壁部22を貫通してその外方に開口した横筒23を備え、横筒23の先端に噴出口24を開口している。周壁部22の下端部は内ガイド筒14a と外ガイド筒14b との間に押し下げ可能に垂設している。また、作動噴出部Bとして、シリンダA2内に垂設したステムB1の下部に、シリンダA2内に摺動可能に嵌合させた環状ピストン(図示せず)を備えている。また、作動噴出部Bの上方付勢は、シリンダA2内に介在させたコイルスプリング(図示せず)により行っている。また、シリンダA2内下端部には吸い込み弁(図示せず)を、ステムB1内には吐出弁(図示せず)を設けて、これらによりポンプ機構を現出している。そして、作動噴出部Bの上下動により容器体内の液をシリンダA2内に吸引するとともに、シリンダA2内の液を噴出口24より噴出する如く構成している。
【0019】
本発明の押下ヘッドの位置合わせ機構は上記した如きディスペンサー1に設けたもので、この位置合わせ機構はガイド溝16と突部25とから構成している。本例に於けるガイド溝16は、内ガイド筒14a の前後外面に縦設し、図2或いは図3に示す如く、それぞれアリ溝形態をなしている。
【0020】
また、突部25はガイド溝16の横断面形状より僅かに小さい相似状の横断面形状をなし、対向位置の押下ヘッド周壁部22内面にそれぞれ縦設している。
【0021】
ガイド溝16は少なくとも押下ヘッドB2の押し下げ幅に合わせた縦長に形成する必要があり、一方、突部25は必要なガイド溝16の長さより短くて良いが、本例の如く縦長に形成することにより両者の係合強度があがり、無理な押し下げヘッドB2の回転での外れをより確実に防止できる。この様な縦長な突部25の構成は他の例にも当然採用できる。
【0022】
この様に構成した押下ヘッドの位置合わせ機構は、噴出口24の開口方向がパイプ15の下端開口方向に向く如く設置する。例えば、ガイド溝16と突部25とが嵌合した状態で噴出口24開口方向とパイプ15の下端開口方向が合致する位置にそれぞれガイド溝16と突部25の位置を設定する。従って、位置合わせ用のガイド溝16は必ずしも噴出口24下方に突設しなくても良く、当然それに伴って突部25の位置も変更される。尚、ガイド溝16と突部25とは必ずしも一組設ける場合に限定されないが、一組設けることにより押下ヘッドB2の嵌合位置に選択性がなく噴出口24が確実に所定方向を向くとともに、セットも極めて容易であり、例えば押下ヘッドB2が外れた場合の再セットも使用者が容易に行えて、セット方向を間違える等の不都合を生じることがない。また、パイプ15の下端開口は容器体内底部隅部に開口させる。
【0023】
尚、本例ではガイド溝16を内ガイド筒14a に、突部25を押下ヘッド周壁部22に設けた例を示したが、その逆であっても良く、また、外ガイド筒14b と押下ヘッド周壁部22とのいずれか一方にガイド溝16を、他方に突部25を設けても良い。
【0024】
上記の如く構成したディスペンサー1を使用する場合に付いて説明する。液を噴出させる場合には、押下ヘッドB2を押し下げれば噴出口24より液が噴出する。収納液が少なくなっても、パイプ15の下端を底部前部隅部に開口し、また、噴出口24が前方を向くため残らず液を噴出することができる。
【0025】
図4乃至図6は他の例を示し、ガイド筒14を装着筒部材A1の上面周縁部より一箇所立設した例を示す。この場合にはガイド溝16をガイド筒14の内面前後に一対縦設し、また、突部25は、押下ヘッド周壁部22の前後外面下端部に一対突設している。この場合の突部25は上面がガイド筒14より上方に突設した状態で設けてもよいが、上面をガイド筒14の上端と同じかそれ以下とすることで不都合な突設部分として見えることがなく好ましい。その他の構成は基本的に図1の例と同様であるため、同符号を付して説明を省略する。
【0026】
この場合にも、ガイド溝16を押下ヘッド周壁部22に設け、突部25をガイド筒14に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ディスペンサーの一部切欠側面図である。(実施例1)
【図2】位置合わせ機構の横断面図である。(実施例1)
【図3】位置合わせ機構の要部拡大横断面図である。(実施例1)
【図4】ディスペンサーの一部切欠側面図である。(実施例2)
【図5】位置合わせ機構の横断面図である。。(実施例2)
【図6】位置合わせ機構の要部拡大横断面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0028】
1…ディスペンサー
A…固定吸引部
A1…装着筒部材
10…周壁,11…頂壁,14…ガイド筒,14a …内ガイド筒,14b …外ガイド筒,
15…パイプ,16…ガイド溝
A2…シリンダ
B…作動噴出部
B1…ステム
B2…押下ヘッド
20…縦筒,21…頂板,22…周壁部,23…横筒,24…噴出口,25…突部
100 …容器体
101…口頸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体100 に嵌着した固定吸引部Aに対して上方付勢状態で押し下げ可能に装着した作動噴出部Bを備え、作動噴出部Bの上下動により容器体100 内の液を固定吸引部A内に吸引するとともに、作動噴出部Bの上端を構成する押下ヘッドB2の噴出口24より噴出する如く構成したディスペンサー於ける押下ヘッドの位置合わせ機構であって、固定吸引部の一部を構成し且つディスペンサーを容器体口頸部101 に嵌合させる装着筒部材A1の上面に立設したガイド筒14と、押下ヘッドB2とのいずれか一方にアリ溝型のガイド溝16を設け、他方にガイド溝16の横断面と横断面が相似してガイド溝16に上下動可能に嵌合する突部25を設けたことを特徴とする押下ヘッドの位置合わせ機構。
【請求項2】
前記ガイド筒14を、装着筒部材A1の上面よりそれぞれ同心円状に立設した内外一対の内ガイド筒14a 及び外ガイド筒14b とで構成し、押下ヘッドB2の周壁部22を両ガイド筒間に上下動が可能に垂設し、内ガイド筒14a 外面と押下ヘッド周壁部22の内面との間に前記ガイド溝16及び突部25を設けた請求項1記載の押下ヘッドの位置合わせ機構。
【請求項3】
前記ガイド筒14を押下ヘッドB2の周壁部22外方に立設してその内面に前記ガイド溝を縦設し、前記突部25をガイド溝14内の押下ヘッド周壁部22外周に突設した請求項1記載の押下ヘッドの位置合わせ機構。
【請求項4】
前記突部25を前記ガイド溝16と同様の縦長に形成した請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の押下ヘッドの位置合わせ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−241961(P2009−241961A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91325(P2008−91325)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】