説明

押出し材用エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム及び押出し材

【課題】 圧縮永久歪性に優れ、押出し材料の切断面にブルームを起さず、伸び特性に優れ、しかも機械的強度、耐寒性及び加工性を十分に満足できる水準に維持した押出し材用エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴム及び該共重合ゴムを用いた押出し材を提供する。
【解決手段】 エチレン/α−オレフィンの重量比が64/36〜58/42であり、非共役ジエン含量が12〜16重量%であり、かつムーニー粘度(ML1+4100℃)が85〜100である押出し材用エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、押出し材用エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴム及び押出し材に関するものである。更に詳しくは、本発明は、圧縮永久歪性に優れ、押出し材料の切断面にブルームを起さず、伸び特性に優れ 且つ高充填が可能であるという特徴を有する押出し材用エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴム及び該共重合ゴムを用いた押出し材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムは、耐候性、耐熱性等の性質に優れ、ガラスランを含む種々の自動車外装部品等の用途に用いられている。そして、該用途の製品は、押出し成形により製造されるのが一般である。ところで、これらの用途においては、圧縮永久歪性に優れ、押出し材料の切断面にブルームを起さず、かつ伸び特性に優れることが要求される。そしてその要求水準は、近年一層高度なものとなりつつある。かかる現状に照らすとき、従来のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムの組成物は、必ずしも満足できるものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような現状の下、本発明が解決しようとする課題は、圧縮永久歪性に優れ、押出し材料の切断面にブルームを起さず、伸び特性に優れ、しかも機械的強度、耐寒性及び加工性を十分に満足できる水準に維持した押出し材用エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴム及び該共重合ゴムを用いた押出し材を提供する点に存するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明のうち第一の発明は、エチレン/α−オレフィンの重量比が64/36〜58/42であり、非共役ジエン含量が12〜16重量%であり、かつムーニー粘度(ML1+4100℃)が85〜100である押出し材用エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムに係るものである。本発明のうち第二の発明は、上記の共重合体ゴム100重量部並びにカーボンブラック及び可塑剤の合計含有量190〜350重量部を含有する押出し材用ゴム組成物に係るものである。また、本発明のうち第三の発明は、上記のゴム組成物からなる押出し材に係るものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムのα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどがあげられ、なかでもプロピレンが好ましい。また、非共役ジエンとしては、たとえば1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどがあげられ、なかでも5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
【0006】エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムのエチレン/α−オレフィンの重量比は64/36〜58/42であり、好ましくは62/38〜60/40である。該比が過小であると引張強度が低下し、一方該比が過大であると低温時の硬度が上昇し、低温圧縮永久歪性が悪化する等、耐寒性に劣る。
【0007】エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムにおける非共役ジエン含量は12〜16重量%であり、このましくは12〜14重量%である。非共役ジエン含量が過少であると圧縮永久歪性に劣り、一方非共役ジエン含量が過多であると、圧縮永久歪性の改良効果が飽和し、不経済である。
【0008】エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムにおけるゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)に於けるQ値(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が3〜5であることが好ましい。Q値が3よりも過小であれば混練時の加工性が劣る場合があり、一方Q値が5よりも過大であれば引張強度の低下、圧縮永久歪の悪化等、加硫ゴムの物性が劣る場合がある。
【0009】なお、GPCの測定条件は以下のとおりである。
GPC:Waters社製 150C−PLUS型カラム:東ソー株式会社製 TSK−GEL GMHHR−H(S)2本使用サンプル量:300μl(ポリマー濃度0.1重量%)
流量:1ml/分温度:140℃溶媒:オルトジクロルベンゼン検量線は東洋曹達(株)製の標準ポリスチレンを使用し、常法により作製する。
【0010】エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4100℃)は85〜100であり、好ましくは90〜100である。該ムーニー粘度が低すぎると機械的強度(引張強度)に劣り、一方該ムーニー粘度が過大であると加工性に劣る。ムーニー粘度を測定するための試料作成には、ロール間隙0.18mm、40℃に調整したロールを用い、該エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを2回ロールに通し、更にロール間隙1.4mmに調整した後、該エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムをロールに3回通しムーニー粘度測定用の試料を作成し、ムーニー粘度を測定する。
【0011】本発明のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを製造する方法としては、公知の溶液重合方法又はスラリー重合方法により製造することができる。その具体例を示すならば、次のとおりである。触媒としては、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒が使用され、有機アルミニウム化合物及び炭化水素溶媒に可溶な3〜5価のバナジウム化合物を組み合わせて用いられる。アルミニウム化合物としては、アルキルアルミニウムセスキクロライド、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムモノクロライド又はこれらの混合物が好ましく、バナジウム化合物としては、オキシ三塩化バナジウム、四塩化バナジウム又はVO(OR)nX3-n (0<n≦3、Rは炭素数1〜10の直鎖、分岐又は環状の炭化水素を表す。)で示されるバナデート化合物が好ましい。ここで、有機アルミニウム化合物とバナジウム化合物の使用量モル比は、通常2〜100、好ましくは5〜20である。また、該当の市販品を用いてもよい。
【0012】本発明のゴム組成物は、上記のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム及びカーボンブラックと可塑剤を含有するものである。
【0013】ゴム組成物中のカーボンブラックと可塑剤の合計含有量は、共重合体ゴム100重量部あたり190〜350重量部であることが好ましく、更に好ましくは210〜300重量部である。カーボンブラックと可塑剤の合計含有量が過少であると押出し特性が劣り、一方がカーボンブラックと可塑剤の合計含有量が過多であると圧縮永久歪みが悪化する場合がある。可塑剤としてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルをあげることができる。
【0014】本発明のゴム組成物には、カーボンブラック、可塑剤以外に、通常、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、粘着付与剤、脱水剤等が含まれる。カーボンブラックとしては、平均粒子径が50〜100nm、好ましくは70〜90nmのものを用いることができる。
【0015】本発明のゴム組成物を得るには、バンバリーなどの混練機で混練すればよい
【0016】本発明のゴム組成物は、押出し成形により成形体とされ得る。成形の条件としては、HAV加硫、UHF加硫を例示することができる。
【0017】本発明のゴム組成物を用いた成形体としては、ガラスラン、ベルトラインモール(アウター、インナー)、ドアWSのウエザーストリップを含む種々の自動車外装部品等をあげることができる。(図1及び図2を参照)
【0018】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。表に示す配合処方にしたがって、各実施例、比較例のゴム組成物を得た。硫黄及び加硫促進剤を除く各配合剤を密閉混練機でミキシング後、硫黄及び加硫促進剤を投入し、密閉混練機及びオープンロールで混練し練生地を得た。続いて、練生地から、加硫プレス成形(シート 厚さ2.0±0.2mm:170×10分、圧縮永久歪 測定用テストピースとしてJIS K 6262 直径29±0.5mm 厚さ12.5±0.3mm:170℃×15分)で、各テストピースを作製した。得られた各テストピースの硬度、引張強さ、伸びをJIS(引張試験 JIS K 6251:圧縮永久歪 JIS K 6262:硬さ JIS K 6253:低温性 JIS K 6261)に従い測定した。
【0019】エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムに補強剤(カーボンブラック)、可塑剤、加硫剤などの各種配合剤を秤量して配合を行い、バンバリーミキサー、インターミックス、ニーダーなどの密閉式混練機、練りロール機などの混練機で混合する混練工程と、混練工程で作られたゴム組成物の練生地を押出・加硫又は成形型の中でされる成形・加硫工程により製造することができる。
【0020】実施例1及び実施例2本発明によるポリマーA(エチレン/プロピレン比 60/40 Q値 3.2)
本発明によるポリマーB(エチレン/プロピレン比 62/38 Q値 3.3)
本発明によるポリマーC(エチレン/プロピレン比 64/36 Q値 3.4)
本発明によらないポリマーD(エチレン/プロピレン比 69/31 Q値 3.4)
本発明によらないポリマーE(エチレン/プロピレン比 54/46 Q値 3.5)
上記ポリマー(ジエン含量12.5% 100℃ムーニー粘度 85)
【0021】
【表1】


*1 カーボンブラック:平均粒子径 80nm*2 可塑剤:パラフィン系プロセスオイルエチレン含量が64〜58%の範囲であれば低温特性、加硫ゴム物性を十分であるが、エチレン含量が64%よりも高いと低温性(ゲーマンねじり試験T5:−32℃以下)を満足させることができず、エチレン含量が58%よりも低いと硬度及び引張強度が低く、十分に加硫ゴム物性を満足しない。
【0022】実施例4及び実施例5本発明によるポリマーF(100℃ムーにー粘度 86 Q値 4.2)
本発明によるポリマーG(100℃ムーニー粘度 95 Q値 4.1)
本発明によらないポリマーH(100℃ムーニー粘度 104 Q値 4.1)
本発明によらないポリマーI(100℃ムーニー粘度 75 Q値 4.6)
上記ポリマー(エチレン/プロピレン比 62/38 ジエン含量12.5%)
【0023】
【表2】


*1 カーボンブラック:平均粒子径 80nm*2 可塑剤:パラフィン系プロセスオイル
【0024】ポリマーのムーニー粘度が85〜100の範囲であれば、混練加工性が良好で加硫ゴム物性の良好なゴム組成物が得られる。ポリマーのムーニー粘度が100よりも高いと、分散不良及び練生地シートの穴あき、密閉式混練機において発熱が大きいために加工できず、ポリマーのムーニー粘度が85よりも低いと、ロール及び密閉式混練機への粘着、製品押出時の形状ダレ、加硫ゴムの引張強度が低下し十分な物性が得られない。
【0025】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明により、圧縮永久歪性に優れ、押出し材料の切断面にブルームを起さず、伸び特性に優れ、しかも機械的強度、耐寒性及び加工性を十分に満足できる水準に維持した押出し材用エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴム及び該共重合ゴムを用いた押出し材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガラスランの断面を示す図である。
【図2】ベルトラインモール(アウター)の断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エチレン/α−オレフィンの重量比が64/36〜58/42であり、非共役ジエン含量が12〜16重量%であり、かつムーニー粘度(ML1+4100℃)が85〜100である押出し材用エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム。
【請求項2】 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定におけるQ値(重量平均分子鎖長/数平均分子鎖長)が3〜5である請求項1記載の共重合体ゴム。
【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の共重合体ゴム100重量部並びにカーボンブラック及び可塑剤の合計含有量190〜350重量部を含有する押出し材用ゴム組成物。
【請求項4】 請求項3記載のゴム組成物からなる押出し材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−179739(P2002−179739A)
【公開日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−379988(P2000−379988)
【出願日】平成12年12月14日(2000.12.14)
【出願人】(000002093)住友化学工業株式会社 (8,981)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】