説明

押出プレスのフィックスダミーブロック端面潤滑装置

【課題】押出のサイクル時間を短縮して生産性を向上させることのできるリアローディング型ショートストローク押出プレスに用いるフィックスダミーブロック端面潤滑装置を提供することを目的とする。
【解決手段】フィックスダミーブロック端面潤滑装置の焼き付き防止用固形潤滑材を保持する保持部材を、フィックスダミーブロックの端面に押付けられるように軸線方向に進退自在に、且つ、保持部材をフィックスダミーブロックの端面に対面した位置から対面しない外部の位置へ移動可能に構成し、フィックスダミーブロック端面への焼き付き防止用固形潤滑材の塗布を、押出プレスのステムの待機位置で行なうようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出プレスのステムの先端部に固定され、押出プレスで押出される高温のビレットに接するフィックスダミーブロックの端面に、固形潤滑剤を焼き付き防止用として塗布する潤滑装置に関し、特に、ビレットの押出プレスへの供給に際してステムを移動させるショートストローク型の押出プレスに用いる潤滑装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来型の押出プレスのフィックスダミーブロック端面潤滑装置としては、例えば引用文献1や引用文献2に開示されているような装置がある。
フィックスダミーブロック端面潤滑装置は、押出プレス内のタイバーの一部に取付けられており、潤滑材塗布部、直線運動部及びスイング部から構成されている。
潤滑材塗布部は直線運動部及びスイング部に連結されたアームの先端に取付けられ前後進自在に、且つ、揺動自在に配置されている。潤滑材塗布部には複数の円筒状の固形潤滑材が保持部材を介して回転自在に設けられ、押出プレスの中心軸線位置にあるフィックスダミーブロック端面に固形潤滑材を押圧した状態で回転させることによって塗布されるようになっている。
潤滑装置は潤滑材の塗布が完了した後に、アームを後退させるとともに旋回させフィックスダミーブロックの端面と対面しない押出プレスの外部位置に移動する構成になっている。
【0003】
ところで、前述した従来型の潤滑装置をリアローディング型のショートストローク押出プレスに用いた場合、フィックスダミーブロック端面への潤滑は、押出が完了しステムが後退した後のステムが押出プレスの中心軸線位置にあり、且つ、ビレットを供給するために移動する前に行なわなければならない。このためフィックスダミーブロック端面への潤滑が完了するまではステムを移動させることができず、フィックスダミーブロック端面への焼き付き材塗布時間がサイクルタイムを長くして、押出プレスの生産性の低下を招いていた。図4に従来型の潤滑装置の作動工程を示す。
【特許文献1】特開平1−113113
【特許文献2】特開平7−204730
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、その目的は、押出のサイクル時間を短縮して生産性を向上させることのできる押出プレスに用いるフィックスダミーブロック端面潤滑装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ビレットを供給する際にステムが押出位置から待機位置まで移動するリアローディング型ショートストローク押出プレスのフィックスダミーブロック端面潤滑装置であって、焼き付き防止用固形潤滑材を保持する保持部材をフィックスダミーブロックの端面に押付けられるように軸線方向に進退自在に、且つ、前記保持部材を前記フィックスダミーブロックの端面に対面した位置から対面しない外部の位置へ移動可能に構成し、前記フィックスダミーブロック端面への焼き付き防止用固形潤滑材の塗布を、前記ステムの待機位置で行なうことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の潤滑装置において、前記焼き付き防止用固形潤滑材の形状を前記フィックスダミーブロック端面の形状に略同一の円筒状又は円環状とし、前記焼き付き防止用固形潤滑材の塗布は前記フィックスダミーブロック端面への押圧によって行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明に係る押出プレスのフィックスダミーブロック端面潤滑装置は、ステムがスライドして移動した待機位置でフィックスダミーブロック端面の潤滑を行なう構成としたので、焼き付き防止用固形潤滑材を塗布している間にビレットを押出プレス内に供給することができる。このため、焼き付き防止用固形潤滑材の塗布はアイドルタイム中に終了し、フィックスダミーブロック端面の潤滑を行なっても押出のサイクル時間が延長されることが無く、押出プレスの生産性が向上する。
【0008】
また、焼き付き防止用固形潤滑材の形状をフィックスダミーブロック端面の形状に略同一の円筒状又は円環状の一体型とし、フィックスダミーブロック端面に押圧することで塗布する構成とした。このため、焼き付き防止用固形潤滑材の塗布に際して焼き付き防止用固形潤滑材を回転させる手段を必要とせず、潤滑材塗布部の構造の簡略化と軽量化を達成でき、駆動動力と製造コストの低減を図ることができる。
さらに、潤滑材塗布部に焼き付き防止用固形潤滑材の回転駆動手段を有しない構成としたので、押出プレスのステムが後退した際にフィックスダミーブロック端面とコンテナ端面との隙間を小さく設定することができ、押出プレスの機長及び押出ストロークを最少化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明のフィックスダミーブロック端面潤滑装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は押出プレスに取付けられたフィックスダミーブロック端面潤滑装置の正面図、図2は構成を説明するための斜視図、図3は工程動作を説明するための作動工程図である。
【0010】
図1は公知の構成の押出プレスを軸線方向と交差方向に切断した断面図であり、11はタイバー、12はプリコンチューブ、13はガイドフレーム、14はコンテナホルダ、15はコンテナである。符号16はステムであり、ステム16は待機位置Aから押出位置Bまで移動自在に設けられた構成となっている。
図1及び図2に示すように、フィックスダミーブロック端面潤滑装置21は、コンテナ15の端面とステム16の先端に設けられたフィックスダミーブロック17の端面との隙間に進退自在にプリコンチューブ12に取付けられている。そして、フィックスダミーブロック端面潤滑装置21は、スイング部31、直線運動部41及び潤滑材塗布部51等から基本構成される。
図示していないが本発明のフィックスダミーブロック端面とは、押出プレスで押出される高温のビレット端面にフィックスダミーブロックが接する部分をいう。
【0011】
スイング部31は、揺動用減速機付電動機32、回転軸33、軸受34及びボス部35を有するアーム36等からなっている。回転軸33は揺動用減速機付電動機32の出力軸と連結され、さらに軸受34により回転自在に軸支されている。揺動用減速機付電動機32の回転に伴って回転軸33の回転は、図示しないキーによりボス部35に伝えられ、ボス部の回転によってアーム36がスイング動作する。
【0012】
直線運動部41は、アーム36の先端部に設けられ、ガイドボックス42と駆動手段となる空圧シリンダ32とにより基本構成される。
潤滑材塗布部51は、直線運動部31の空圧シリンダ32に連結された保持部材52と保持部材52に着脱自在に取付けられた円環状で一体型の焼き付き防止用固形潤滑材53とにより基本構成される。保持部材51は、図示しないガイドボックス42に設けられたガイド装置により押出プレスの軸線方向に摺動自在に取付けられ、空圧シリンダ32により直線駆動される。
また、アーム36のスイング動作により、フィックスダミーブロックの端面に対面した位置即ち、ステム待機位置(潤滑材塗布位置)Aから対面しない外部の位置である潤滑装置待機位置Cの間を移動できるようになっている。
【0013】
焼き付き防止用固形潤滑材53をダミーブロック17へ押圧する押付力は、焼き付き防止用固形潤滑材の移動手段である空圧シリンダ32の出力が作用して押し潰されることを防止するために、図示しない弾性体(例えば、スプリング、バネ等)を介して所定の押圧力が作用する構成とした。この構成では、焼き付き防止用固形潤滑材53が過度に塗布され、消費量が多くなり過ぎることも防止する。また、焼き付き防止用固形潤滑材53の形状をダミーブロック17と総型の円筒状又は円環状とし、押圧することで塗布する構成としたので、潤滑の塗布時間を短縮することができる。図1及び図2において焼き付き防止用固形潤滑材53の形状は円環状として図示している。
なお、前述した実施の形態においてアーム36のスイング動作に減速機付電動機を、潤滑材塗布部の直線運動部に空圧シリンダを用いる構成としたが、この駆動手段に限らず公知の駆動手段、例えばスイング動作を電動サーボモータで行ない、焼き付き防止用固形潤滑材の直線動作部に回転運動を直線運動に変換する手段を用いる構成であっても良い。また、回転軸33は減速機付電動機32の出力軸と連結する構成としたが、回転軸33と減速機付電動機32の出力軸とを平行に配置し、それぞれの軸を巻き掛け伝動手段で連結する駆動構成であっても良い。
【0014】
図3により、このように構成されたフィックスダミーブロック端面潤滑装置21の動作について説明する。ビレットの押出が完了して押出ステム16とフィックスダミーブロック17が後退限位置にあるとき、揺動用減速機付電動機32を作動により潤滑材塗布部51を、アーム36を介してスイングさせて、潤滑装置待機位置Cから潤滑材塗布位置Aまで移動させる。一方、押出プレスは、ステム16及びフィックスダミーブロック17が押出位置Bからステム待機位置Aまで移動するとともに、ビレットを載置したビレットローダが前進移動する。
【0015】
次いで、直線運動部31の空圧シリンダ32を作動させて焼き付き防止用固形潤滑材53をフィックスダミーブロック17の端面に押付けて均一に塗布する。塗布は、予め設定したタイマの所定時間行ない、タイマの計時の後に再び空圧シリンダ32を作動させて焼き付き防止用固形潤滑材53を後退させ、フィックスダミーブロック17の端面から引き離す。この間に、押出プレスではインサータが前進してビレットをコンテナ15内に挿入し、該ビレットの挿入完了でビレットローダが後退を開始する。
【0016】
焼き付き防止用固形潤滑材53の後退完了とともに、揺動用減速機付電動機32を作動により潤滑材塗布部51を、アーム36を介してスイングさせて、潤滑材塗布位置Cまで移動させる
この間押出プレスは、前記ビレットローダの後退途中でステム16及びフィックスダミーブロック17のスライド下降が開始され、ステム待機位置Aからステム押出位置Bへ移動する。そして、次の押出サイクルが継続される。
【0017】
以上説明したように、本発明のフィックスダミーブロック端面潤滑装置を用いた押出プレスでは、ステム待機位置で焼き付き防止用固形潤滑材の塗布を行ない、焼き付き防止用固形潤滑材の塗布と同時にステムが移動した空間を使用してビレットの供給を行なうことができる。このため、押出プレスのアイドル時間である、ステムの移動工程及びビレットの供給工程中に焼き付き防止用固形潤滑材の塗布工程が完了する。
よって、本発明のフィックスダミーブロック端面潤滑装置を用いた押出プレスでは、押出のサイクル時間を延長することなくフィックスダミーブロックの端面に焼き付き防止材の塗布が行なえ、押出プレスの生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のフィックスダミーブロック端面潤滑装置の正面図である。
【図2】本発明の構成を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の工程動作を説明するための作動工程図である。
【図4】従来の工程動作を説明するための作動工程図である。
【符号の説明】
【0019】
16 ステム
17 フィックスダミーブロック
21 フィックスダミーブロック端面潤滑装置
31 スイング部
41 直線運動部
51 潤滑材塗布部
52 保持部材
53 焼き付き防止用固形潤滑剤
A ステム待機位置、潤滑材塗布位置
B ステム押出位置
C 潤滑装置待機位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビレットを供給する際にステムが押出位置から待機位置まで移動するリアローディング型ショートストローク押出プレスのフィックスダミーブロック端面潤滑装置であって、
焼き付き防止用固形潤滑材を保持する保持部材をフィックスダミーブロックの端面に押付けられるように軸線方向に進退自在に、且つ、前記保持部材を前記フィックスダミーブロックの端面に対面した位置から対面しない外部の位置へ移動可能に構成し、
前記フィックスダミーブロック端面への焼き付き防止用固形潤滑材の塗布を、前記ステムの待機位置で行なうことを特徴とする押出プレスのフィックスダミーブロック端面潤滑装置。
【請求項2】
前記焼き付き防止用固形潤滑材の形状を前記フィックスダミーブロック端面の形状に略同一の円筒状又は円環状とし、前記焼き付き防止用固形潤滑材の塗布は前記フィックスダミーブロック端面への押圧によって行なうことを特徴とする請求項1に記載の押出プレスのフィックスダミーブロック端面潤滑装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−172897(P2010−172897A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14905(P2009−14905)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】