説明

押出加工用ダイス装置

【課題】均一な肉厚の製品を押出加工できるようにした押出加工用ダイス装置と押出部品の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、組立ダイスが、突起部を有するオスダイスと、突起部を挿入する孔部を有するメスダイスを備え、メスダイスがオスダイスを一体化するための円柱状のボディを有してなり、ダイホルダの支持孔が素材ビレット導入側に向かって先窄まり形状とされ、メスダイスのボディの先端側に先窄まり形状の支持孔に嵌り込む嵌合部が形成されるとともに、バックプレートに組立ダイスを通過した押出品を通過させる通過孔が形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種のアルミニウム熱交換器に用いられる扁平多穴チューブなどを押出加工する際に用いて好適な押出加工用ダイス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エバポレータ、コンデンサ、ラジエータ等の熱交換器に用いられる各種のアルミニウム製熱交換用チューブを製造するにあたり、素材であるアルミニウムの融点が低いことから、押出加工法が広く用いられている。
このような押出加工法は、例えば図7に示すように、先端部にダイス101を固定したコンテナ102の孔部内にアルミニウム素材(ビレット)103を挿入し、このコンテナ102内のビレット103を加圧板(ステム)104によってダイス101に形成された開口部105方向へ押圧し、開口部105内に形成された一定の断面形状を有する隙間(型孔105a)から上記アルミニウム素材103を押出すことにより、上記素材を一定の断面形状の押出部品に押出加工するものである。この押出加工法によれば、コンテナ102内に挿入されたビレット103に圧縮力を作用させることにより、一段の変形で非常に複雑な形状の押出部品を得ることができる。
【0003】
図8は、このようなアルミニウムの押出加工法によって成形される、アルミニウム製熱交換器用偏平多穴チューブ106の一例を示すものである。そして、この押出偏平多穴チューブ106の製造に好適な押出用ダイス装置として、従来から、以下の特許文献1に記載のインサート型のダイスが知られている。
図9と図10に、特許文献1に記載された従来のインサート型のダイス装置の一例を示すが、この例のダイス100は、図8に示すアルミニウム製の押出偏平多穴チューブ106を押出加工するためのもので、図10に示す円盤状のダイスホルダDに形成された複数の貫通孔Hに挿脱自在とされた、嵌合離脱自在な一対の厚肉円盤ブロック状のメスダイス111とオスダイス112とから構成されている。
【0004】
図9においてメスダイス111は、先のオスダイス112と対向する端面の外周に、環状のメス側インロー部113が形成され、このインロー部113の中央側端面114に凹部115が形成されている。そして、凹部115の中央部には、メスダイス111の中心軸線に沿って一端から他端に向けて貫通するスリット状の孔部116が穿設されている。また、前記凹部115を囲む位置には、2つのねじ穴119と2つのピン穴120とが対称位置に形成されている。
【0005】
図9においてオスダイス112は、先のメスダイス111と対向する端面にオス側インロー部122が形成されている。このオスダイス112の中央部には、複数の突起片からなる櫛歯状の突起部123が形成されている。この突起部123は、先のメスダイス111の孔部116内に挿入されることによって孔部116との間に製品形状となる間隙(型孔)を画成するためのものである。そして、オスダイス112には、突起部123の両側に沿うようにオスダイス112の両端面に開口する貫通孔124、124が形成されている。また、オスダイス112において先の貫通孔124、124の周囲側には、2つのねじ穴125と2つのピン126が形成されている。
【0006】
そして、前記構成のオスダイス112とメスダイス111を互いのインロー部113、122を嵌合し、ピン126をピン穴120に嵌合させることにより両者を円柱状に一体化してダイス100が構成され、図10に示す円盤状のダイスホルダDに4基のダイス100を装着して全体を図7に示すコンテナ102に取り付けることで押出加工に供することができる。また、この構成のダイス100はダイスホルダDにおいて1基のダイス100が不良となった場合、該当する1基のダイス100のみ、あるいは、該当するメスダイス111かオスダイス112のみ交換することにより押出加工を再開できるので、一体型のダイスに比較して経済的であるなどの利点を有する。
【0007】
また、本願出願人は、先の押出用の型孔を構成する突起部の部分をコア部材としてオスダイスの他の部分と個別に交換できるように構成したダイスについて特許出願している。(特許文献2参照)
この特許文献2に記載の技術によれば、突起部を備えたコア部材とコア部材を装着するコアケースとからオスダイスを構成し、コア部材を摩耗に強い超硬合金から、コアケースを通常のダイス鋼から構成することにより、ダイスの長寿命化を図り、部分的に損耗や破損を生じた場合の交換性を高めることができるという特徴を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−124634号公報
【特許文献2】特開2002−45913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述のダイスホルダDにダイス100を取り付けて押出加工を行う構成のダイス装置においては、ステム104がアルミニウム素材103をダイス100に押し付け、アルミニウム素材の流動性を利用してダイス100のオスダイス112側の貫通孔124、124からメスダイス111側の孔部116に突起部123を介して流動させながら押出加工がなされるが、図8に示す薄肉の偏平多穴チューブ106を押出加工する場合、ダイス100から押し出される偏平多穴チューブ106のうち、一部の偏平多穴チューブ106の肉厚が部分的に変動するという問題が生じている。例えば、扁平多穴チューブ106は扁平チューブ状の周壁106aと周壁106aを複数の流路に区画する複数の隔壁106bとが一体化された構造となっているが、複数の隔壁106bにおいて、肉厚の変動を生じやすいという問題が生じている。
この原因について本発明者らが研究したところ、ステム104によって高圧でアルミニウム素材103を押し出そうとするので、ダイスホルダDの支持孔Hに取り付けたダイス100の位置がアルミニウム素材103に受ける圧力により微妙に変動し、これが原因になって、部分的に肉厚の異なる扁平多穴チューブ106が生産されてしまうのではないかと考えている。
また、特許文献2、3に記載の如くオスダイスを突起部とコア部に分割した構造のダイス装置にあっては、オスダイス自体が分割されているので、アルミニウム素材103の圧力により、コア部材あるいはボディが個々に位置ずれする可能性があるので、偏肉を生じるという面においては不利な構造であった。
【0010】
本発明は前記した問題に鑑み創案されたものであり、ダイホルダに対して組立ダイスを支持した状態で強固に安定支持することができ、薄肉の押出部品を製造しても押出部品に肉厚の変動を生じることのないダイス装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、ダイホルダと、該ダイホルダに形成された支持孔に挿入されて前記ダイホルダに組み込まれた組立ダイスと、前記ダイホルダの背後側に設けられて前記組立ダイスを受けるバックプレートを具備し、前記組立ダイスを通過させるように素材ビレットを押圧して前記組立ダイスの型孔を通過させて目的の形状の押出品とするためのダイス装置において、前記組立ダイスが、突起部を有するオスダイスと、前記突起部を挿入する孔部を有するメスダイスを備え、前記メスダイスが前記オスダイスを一体化するための円柱状のボディを有してなり、前記ダイホルダの支持孔が前記素材ビレット導入側に向かって先窄まり形状とされ、前記メスダイスのボディの先端側に前記先窄まり形状の支持孔に嵌り込む嵌合部が形成されるとともに、前記バックプレートに前記組立ダイスを通過した押出品を通過させる通過孔が形成されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記オスダイスが、前記突起部を有するコア部材と、このコア部材を装着するコアケースと、前記コアケースに装着されたコア部材の後部側を覆って前記コアケースに装着されるキャップ部材とを具備してなり、
前記メスダイスが円柱状のボディと、このボディに装着され孔部を備えたプレート部材とを具備してなり、前記ボディの後部側に形成された嵌合溝部に、前記コア部材とキャップ部材を備えた前記コアケースが嵌合され一体化され、
前記メスダイスと前記オスダイスとを一体化した組立ダイスが、キャップ部材の両端部とコアケースの両端部とボディの周囲部分を前記先窄まり状の支持孔の内面に当接させて支持孔の内部に装着されてなることを特徴とする構成でも良い。
【0013】
本発明において、前記コアケースの両端面が前記支持孔の内面に合致する凸曲面状の傾斜面に加工されて前記組立ダイスの前記支持孔への嵌合時にそれらの両端部が前記支持孔の内面に嵌め込まれてなることを特徴とする。
本発明において、前記ダイホルダの支持孔において前記素材ビレット側の開口部に、前記オスダイスのキャップ部材に沿って前記開口部中央を横切るように設けられて前記キャップ部材を受けると共に、前記キャップ部材に対する素材ビレットの圧力を軽減するブリッジ部が設けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、組立ダイスを取り付けるダイホルダの支持孔を先窄まり状に形成し、その支持孔に嵌り込むようにメスダイスのボディの先端側に嵌合部を設けたので、組立ダイスをダイホルダの支持孔に装着する場合の位置決めが明確になされる。即ち、組立ダイスのボディの嵌合部をダイホルダの支持孔に嵌合することにより、支持孔の内部においてメスダイスがダイホルダの支持孔の径方向及び深さ方向に確実に位置決めされる結果、素材ビレットの圧力によりメスダイスの位置をずらす方向に圧力が作用してもメスダイスの位置変動が起きないので、薄肉の押出部品を製造した場合であっても部分的に肉厚変動を起こすことなく押出部品を製造することができる。
例えば素材ビレットとしてアルミニウム合金を用い、熱交換器用扁平多穴チューブなどのように肉薄の壁部が複数形成されていて、これらの肉薄の壁部にて流路を区分するような構成の押出部品であっても、流路を仕切る複数の壁部の肉厚を均一化することができ、高品質の熱交換器用扁平多穴チューブを製造することができる。
【0015】
本発明において、オスダイスがコア部材とコアケースとキャップ部材とからなり、メスダイスがボディとプレート部材とからなることで、素材ビレットから圧力を受ける部材を複数に分割しているので、仮に上述のいずれかの部分が損傷しても損傷した部分のみを交換することで、オスダイスの他の部分あるいはメスダイスの他の部分を再利用して押出品の生産が可能となる。
また、このように部分毎に交換可能な分割構造のオスダイスとメスダイスとしながら、コアケース、キャップ部材、ボディをそれぞれ支持孔の内部側に確実に嵌合位置決め固定できるので、品質の安定した肉厚バラツキの生じていない押出部品を製造できる。
【0016】
本発明は、ダイホルダの支持孔において素材ビレット側の開口部にブリッジ部を設けることにより、ダイホルダの支持孔に嵌合した組立ダイスをバックプレートとブリッジ部との間に配置するので、支持孔の深さ方向においても組立ダイスの位置決めを正確になし得ることができ、これにより正確な押出成形品を製造できる特徴を発揮する。
本発明は、ダイホルダの支持孔において素材ビレット側の開口部にブリッジ部を設けることにより、組立ダイスのオスダイスのキャップ部材がこのブリッジ部の後ろ側に配置されることとなり、ブリッジ部が素材ビレット流入時の圧力の一部を受けるので、ブリッジ部側への素材ビレットの流入時の圧力を一部軽減することができ、ブリッジ部の保護、ひいてはオスダイスの保護をなし得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る一実施形態の押出加工用ダイス装置を備えた押出加工装置の一例を示す断面図。
【図2】図2は、同装置と押出部品とを示すための簡略図。
【図3】図3は、同装置に備えられるダイホルダの平面図。
【図4】図4は、本発明に適用される組立ダイスの一例を示すもので、図4(A)はボディと入れ子部材とコアケースとコア部材とキャップ部材の組立図、図4(B)はボディの正面図、図4(C)は入れ子部材の正面図、図4(D)はコアケースの正面図、図4(E)はコア部材の正面図、図4(F)はキャップ部材の正面図。
【図5】図5は、本発明に適用される組立ダイスに備えられるボディの一例を示すもので、図5(A)は平面図、図5(B)は右側面図、図5(C)は正面図。
【図6】図6は、同組立ダイスに備えられるキャップ部材の一例を示すもので、図6(A)は正面図、図6(B)は右側面図、図6(C)は平面図。
【図7】図7は従来の押出加工装置の一例を示す断面図。
【図8】図8は押出加工装置により製造される熱交換器用扁平多穴チューブの一例を示す斜視図。
【図9】図9は従来の押出加工装置に適用されている組立ダイス装置の一例を示す分解斜視図。
【図10】図10は同組立ダイス装置の一例が取り付けられるダイホルダの一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の押出加工用ダイス装置の第1実施形態について説明する。
図1は本発明に係る第1実施形態の押出加工用ダイス装置を備えた押出加工装置の一例を示す断面図、図2は同押出加工装置の簡略図、図3はダイスホルダの背面図、図4はダイスホルダに取り付けられる組立ダイスの一例を示す分解図、図5は同組立ダイスのボディ部分の詳細図、図6は同組立ダイスのキャップ部分の詳細図である。
図1に示す実施形態の押出加工装置Aは、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる素材ビレットBを収容する収容部1を備えた肉厚筒形容器であるコンテナ2と、このコンテナ2の一側に設けられて収容部1の素材ビレットBを押出自在に設けられたステム(加圧手段)3と、コンテナ2においてステム3の設置側と反対側に設けられたダイホルダ5とバックプレート6とボルスター7とを主体として構成されている。
【0019】
図1に示す実施形態の構造では、ダイリング8の内側に肉厚円盤状のダイホルダ5とバックプレート6とが挿入されて一体化された構成とされている。
前記ダイホルダ5の内部にはその中心軸回りの対称位置に4つの支持孔9が形成され、これらの支持孔9にそれぞれ図4に示す構造の組立ダイス10が装着されている。
図4に示す如くこの例の組立ダイス10は、円筒ブロック状のボディ11と、このボディ11の中心部に装着される平面視レーストラック形状の厚肉のプレート部材(入れ子部材)12と、プレート部材12の上側においてボディ11に重ねるように装着されるコアケース13と、このコアケース13に挿入されるコア部材15と、このコア部材15を部分的に覆ってコアケース13とボディ11とに装着されるキャップ部材16とを主体として構成されている。これらの部材は素材ビレットBとしてアルミニウム合金を想定した場合、ハイスピード鋼、ダイス鋼あるいは超硬合金から構成されることが好ましいが、特に、高圧の素材ビレットBと接触する部分が多い部材については超硬合金から形成することが望ましい。
【0020】
前記ボディ11は、図5に詳細に示す如く、円筒状の基台部20と、この基台部20の上部側から傾斜面21を有して若干先窄まり状に形成された嵌合部22と、この嵌合部22の上部両側に180゜間隔で突出形成された2つの突起部23とを主体として構成されている。また、各突起部23はそれらの中央部分で嵌合溝部24を介して2つに分割されているとともに、各突起部23の外周面は上窄まり状のテーパを有した傾斜面23aとされている。更に、基台部20の上面側において左右の突起部23、23の間の部分は幅広で先の嵌合溝部24よりも若干深い位置にあって基台部20の両端部まで達する凹溝部30が形成されている。
前記基台部20の中央側には基台部20の中央部を貫通するスリット状の長円形状の中央孔25が形成されるとともに、基台部20の中央上部側には中央孔25に連通する入れ子用の挿入孔26が先の凹溝部30の中央部に開口するように形成されていて、この挿入孔26に前記プレート部材(入れ子部材)12が嵌め込まれるように構成されている。また、基台部20の両側には基台部20と嵌合部21とを貫通して嵌合溝部24の中央部に開口する取付孔27が形成されている。これらの取付孔27は、後述するコアケース13とキャップ部材16とをボディ11に装着した場合にそれらの両端側に後述の如く形成されている孔と位置合わせができるように形成されている。
【0021】
前記プレート部材(入れ子部材)12はその中央部にスリット状の長円形の孔部31が形成され、この孔部31は先のボディ11の中央孔25とほぼ同じ横断面形状とされている。このプレート部材12は前記ボディ11の挿入孔26に嵌め込み自在な大きさとされていて、挿入孔26にプレート部材12を嵌合した場合にプレート部材12の孔部31がボディ11の凹溝部30の中央部に位置して前記ボディ11の中央孔25と連通するように形成されている。
【0022】
図4に示すコアケース13は、前記ボディ11における2分割された突起部23の間の嵌合溝部24に、コアケース13の左右両端部13aを嵌め込み自在な大きさの横長の板状に形成され、コアケース13の両端部13aを嵌合溝部24に嵌め込み接合した状態において、前記ボディ11の突起部23の外側面の凸曲面状の傾斜面23aに沿うように、コアケース13の両端部13aの外側面には凸曲面状の傾斜面13bが形状されている。
【0023】
前記コアケース13は、前記嵌合溝部24の溝底側に向く底面13cとその両側に配置された前述の傾斜面13bと、これらの傾斜面13b、13bと底面13cに連続する支持面13d、13dと、前記底面13cに対向する支持面13eを有してなり、コアケース13の中央部には、後述のコア部材15を嵌め込むためのスリット状の嵌合孔35がコアケース13を貫通して底面13cと支持面13eの中央部に開口するように形成され、底面13cにおいて嵌合孔35の開口部の両側には突起部36が形成されている。
更に、コアケース13の両端部13aには、コアケース13の両端部13aを嵌合溝部24に嵌め込み接合した状態において前述のボディ11の取付孔27に連通するための挿通孔37が両端部13aを個々に貫通するように形成されている。また、前記突起36の底面13cからの突出長さは、図4(A)に示す如くコアケース13の両端部13aをボディ11の嵌合溝部24に嵌め込み接合した状態において、突起部36の先端がボディ11内のプレート部材12と若干の間隔をあけて対向するように形成されている。
次にコアケース13の支持面13d、13dの中央側に、突起部36、36の間に位置して先の嵌合孔35の延在方向に沿って支持面13dの上部側から底部側にまで延出する段部13gが形成されている。これらの段部13g、13gは押出加工時にコアケース13に沿って流動する素材ビレットの流れを円滑にするための作用を奏する。
【0024】
前記コア部材15は、前記コアケース13のスリット状の嵌合孔35に挿通自在な大きさの扁平のヘッド部15aとヘッド部15aの先端部側に形成された櫛刃状の突起部15bとヘッド部15aの後端側に左右に突出するように形成されたストッパ片15dとからなり、ヘッド部15aの後端部左右側において各ストッパ片15dの基端部側には半円形状の受部15eが形成されている。この構成のコア部材15は、ヘッド部15aを先のコアケース13の嵌合孔35に挿通すると同時に、ストッパ片15dがコアケース13の支持面13eに当接することにより、ヘッド部15の櫛刃部15bを先のプレート部材12の長円形状の孔部31に部分的に対峙させて、孔部31の開口部と櫛刃部15bの先端部との間に隙間を形成することで、この隙間を組立ダイス10における押出成形用の型孔10Aとするように構成されている。
【0025】
前記キャップ部材16は、先のコアケース13の支持面13eに当接される所望の肉厚の横長の板状の部材であり、コアケース13の支持面13eに当接される底面16aと、この底面16aに連続する左右の側面16bと、正面または背面となる主面16dと、先の底面16aに対向する天面16eを有してなる。
また、キャップ部材16の主面16dの中央には、キャップ部材16とコアケース13とを接合一体化した際に先に説明のコアケース13に形成されている段部13gと連続する段部16gが形成されている。このキャップ部材16の段部16gにあっても先のコアケース13の段部と同様に押出加工時の素材ビレットの流れを円滑にする。
【0026】
前記底面部16aの中央部には先のコア15のストッパ片15dを嵌め込み覆うことができる凹部16fが形成され、キャップ部材16の両端部側にはキャップ16をコアケース13の支持面13eに当接させた状態においてコアケース13の挿通孔37に連通するためのネジ穴40が形成されている。
これらのネジ穴40は、ボディ11に対して図4(A)に示すようにプレート部材12とコアケース13とコア部材15とキャップ部材16とを装着した状態において、コアケース13の挿通孔37とボディ11の段付き孔型の取付孔27とに連通するように形成されていて、これらの孔を貫通してネジ穴40にボルトなどの締結具を螺合することでボディ11とプレート部材12とコアケース13とコア部材15とキャップ部材16とを強固に一体化できるように構成されている。
【0027】
以上説明の如く構成されたボディ11に、図4(A)に示す如くプレート部材12とコアケース13とコア部材15とキャップ部材16とを装着し、ボディ11の取付孔27とコアケース13の挿通孔37を介してボルトをキャップ部材16のネジ穴40に螺合することによりこれらを一体化し、組立ダイス10とすることができる。
この組立ダイス10を4基用意し、これらを図1に示すダイホルダ5の4つの支持孔9に個々に挿入することでダイホルダ5が完成する。
【0028】
ダイホルダ5の支持孔9は、コンテナ2の収容部1側に向いて若干先窄まり状となっている輪郭釣鐘型形状とされている。この支持孔9において収容部1側が導入口9aとされ、この導入口9aの部分から若干拡がるように形成された保持孔9bの部分に図4(A)に示す如く組み立てられた組立ダイス10が挿入され、固定されている。支持孔9の導入口9aの部分にはこの導入口9aの中心部を通過するようにロッド状のブリッジ部41が形成されるとともに、導入口9aの開口周縁部には、ダイホルダ5の収容部1側の面に段部42を形成して導入口9aの開口部が拡張されている。
【0029】
本実施形態において、円盤型のダイホルダ5には図3に示す如くその中心部を囲む点対称位置に等間隔で4つの支持孔9が設けられ、これら4つの支持孔9において各導入口9aに形成されている段部42の一例形状を図3に示す。ダイホルダ5において、4つの導入口9aは収容部1側から見ると図3に示す如く個々にブリッジ部41にて2分割されたように見えているので、実際に1つの導入口9aに対してそれぞれ対になるように上下に段部42a、42bが形成されている。
【0030】
これらの支持孔9に組立ダイス10を嵌合して組立ダイス10をダイホルダ5に取り付ける場合、組立ダイス10のキャップ部材16をブリッジ部41の長さ方向に揃って隣接するように配置する。これにより、支持孔9の内部側に、ブリッジ部41の両側に配置された導入口9a、9aから、キャップ部材16の幅方向両側の空間部と、コアケース13の幅方向両側の空間部に連通する素材ビレットの流動路を画成することができる。また、この流動路はボディ11の凹溝部30に至り、組立ダイス10のコア部材15とプレート部材12の開口部との間に画成されている型孔10Aを介し、プレート部材12の内部空間を通過してボディ11の中央孔25に至る一連の流動路を構成する。
【0031】
図3に示すダイホルダ5における段部42の配置構成において、4つの導入口9aの配置された領域において、内側よりに位置する4つの段部42aは、導入口9aの開口部の半円形状の部分を囲み、それよりも若干縦横ともに大きい正面視横長の長方形状に形成され、4つの導入口9aの配置された領域の外側よりに位置する他の4つの段部42bは、先の段部42aよりもダイホルダ5の外側よりの外側部分に膨出部42cが形成されて大きくされ、その他の部分は段部42aと同等の大きさに形成されてなる。
図3では一例として段部42bにおいてそれらの外側部分に膨出部42cを左右方向及び上下方向側に若干膨出させた形状として表記しているが、この膨出形状は一例に過ぎない。本発明では図3に示す形状に限るものではなく、4つの導入口9aがダイホルダ5の中央部側に90゜間隔で配置された場合、4つの導入口9aが占める領域の外側の領域に位置する段部42bの端部側を図3の上下左右のいずれかの方向に必要な幅のみ、任意の方向に他の段部と干渉しないように拡張すれば良い。このように段部を拡張してなる膨出部42bを備えることで、後述する素材ビレット3を押し出す場合の流動抵抗を低減することができる。
【0032】
次に、前述の如く4つの支持孔9が形成されているダイホルダ5の背面側に図1に示す如く設けられたバックプレート6にはダイホルダ5の各支持孔9に連通する通過孔6aが形成され、更にその背面側に設けられているボルスター7にも同様に通過孔7aが形成され、組立ダイス10にて押出加工した押出部品Cを移動することができるように構成されている。なお、図1の構造ではボルスター7の外側に更にプッシュ部材Pが設けられているが、この部材は略しても差し支えない。
【0033】
以上説明の如く構成された押出加工装置により熱交換器用の扁平多穴チューブなどの押出部品を製造するには、組立ダイス10をダイホルダ5に装着して図1に示す押出加工装置にセットし、収容部1にアルミニウムあるいはアルミニウム合金などの素材ビレットBを収容し、この素材ビレットBにステム3で圧力を加える。
この操作により素材ビレットBは収容部1から段部42a、42bを介してダイホルダ5の導入口9a側に流入し、キャップ部材16の幅方向両側の支持孔内空間部と、コアケース13の幅方向両側の支持孔内空間部を通過し、ボディ11の凹溝部30側に至り、組立ダイス10のコア部材15とプレート部材12の開口部との間に画成されている型孔10Aを通過し、この型孔10Aの形状に加工された後、バックプレート6の通過孔6aとボルスター7の通過孔7aとを通過して押出部品Cとして得られる。
本実施形態では図4に示す如く櫛刃状の突起部15bと長円形状の孔部31を有するプレート部材12とにより画成される型孔10Aにより、図2に概略で示す横断面形状の扁平多穴チューブ(押出部品)Cが得られる。この扁平多穴チューブCは、横断面長円形状の周壁50の内側に複数の隔壁51が平行に所定の間隔で複数並列形成された扁平筒形のものとなる。
【0034】
以上説明した押出加工工程において、ステム3の押圧力により素材ビレットBに押出方向の面方向に均等に圧力を印加して4つの組立ダイス10側に押し出して成形しようとしても、4つの導入口9aの全面積において如何なる部分であっても等速で素材ビレットBが流動することにはならない。即ち、4つの導入口9aを図3に示すように視認した場合、ダイホルダ5の中心に近い側の導入口9aの一部分とダイホルダ5の外周に近い側の導入口9aの一部分との比較では、中心に近い側を流動する素材の流速が、外周に近い側を流動する素材の流速よりも早くなろうとする。
そこで本実施形態では、4つの導入口9aを配置した領域に位置する段部42において外側部分に膨出部42cを形成して段部の面積を大きくして導入口9aに素材を流れ込み易くしたので、4つの導入口9aの全断面積においてできるだけ素材ビレットBの流動状態を均一化できる結果として組立ダイス10の各部分に均等な圧力を付加することができ、組立ダイス10の各部分に対して適正な押出圧力を印加できる結果として、隔壁51の部分に偏肉の生じていない、均一な肉厚の高品質の扁平多穴チューブCを製造することができる。
【0035】
また、本実施形態のダイス装置では、導入口9aの素材ビレットB側の開口部に段部42a、42bを設けることで、導入口9aに対する素材ビレットBの導入部分での面積を拡大し、素材導入時の流動抵抗を減少させているので、段部を設けていない従来のダイス装置よりも円滑な素材の流れを生み出すことができ、少ない抵抗で押出加工ができる特徴を有する。
【0036】
次に、本実施形態のダイス装置では、組立ダイス10のキャップ部材16の素材ビレットB側にダイホルダ5のブリッジ部41を設け、このブリッジ部41が素材ビレットBからの圧力を直接受けるように構成し、ブリッジ部41の背後側に存在する組立ダイス10のキャップ部材16に作用する素材ビレットからの圧力を軽減したので、組立ダイス10の特にキャップ部材16に押出成形時の圧力が直に作用することを抑制することができ、ブリッジ部41によりキャップ部材16への圧力軽減、ひいては組立ダイス10の他の部分への印加圧力軽減をなし得、組立出ダイス10を保護し、それらの破損や損傷を防止あるいは抑制することができる構造とした。
【0037】
次に、本実施形態のダイス装置では、キャップ部材16の主面16d、16dの中央部に段部16gを形成しているので、この段部16gに沿って素材ビレットBが流動する際の案内としなって素材ビレットの流れを安定化する。これにより素材ビレットBの流動性を制御して流動抵抗を軽減する。
そして、この素材ビレットBの流れは次にコアケース13の段部13gに至り、段部13gにおいても素材ビレットBの流動性を整えつつ櫛刃状の突起部15bとプレート部材12の孔部31との間に画成されている型孔10Aを通過して目的の形状に押出加工される。本実施形態のダイス装置では、このようにキャップ部材16とコアケース13のいずれにおいても素材ビレットBの流れを整えることができ、型孔10Aまでの素材ビレットBの流れを円滑にすることができ、押出加工においてもできる限り円滑な加工ができる特徴を有する。
【0038】
また、本実施形態において組立ダイス10を支持孔9に嵌合した場合、メスダイスのボディ11の傾斜面23aが支持孔9の先窄まり形状の傾斜面9cに合致して位置決めとなるので、組立ダイス10の径方向及び長軸方向への位置ずれを防止することができ、この結果として肉厚変動の無い押出部品を製造することが可能であり、例えば、隔壁51の部分に偏肉の生じていない、均一な肉厚の高品質の扁平多穴チューブCを製造することができる。
【0039】
更に本実施形態において、組立ダイス10を支持孔9に嵌合した場合、コアケース13の両端部に形成されている傾斜面13bが支持孔9の先窄まり状の内面と合致するので支持孔9の内面に挟まれた状態でコアケース13の位置決めもなされ、コアケース13の位置ずれも抑制される結果として、肉厚変動の無い押出部品を製造することが可能であり、例えば、隔壁51の部分に偏肉の生じていない、均一な肉厚の高品質の扁平多穴チューブCを製造することができる。
【符号の説明】
【0040】
A…押出加工装置、B…素材ビレット、C…扁平多穴チューブ(押出部品)、1…収容部、2…コンテナ、3…ステム、5…ダイホルダ、6…バックプレート、6a…通過孔、7…ボルスター、8…ダイリング、9…支持孔、10…組立ダイス、10A…型孔、11…ボディ、12…プレート部材(入れ子部材)、13…コアケース、13b…傾斜面、15…コア部材、15b…突起部、16…キャップ部材、22…嵌合部、24…嵌合溝部、31…孔部、41…ブリッジ部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイホルダと、該ダイホルダに形成された支持孔に挿入されて前記ダイホルダに組み込まれた組立ダイスと、前記ダイホルダの背後側に設けられて前記組立ダイスを受けるバックプレートを具備し、前記組立ダイスを通過させるように素材ビレットを押圧して前記組立ダイスの型孔を通過させて目的の形状の押出品とするためのダイス装置において、
前記組立ダイスが、突起部を有するオスダイスと、前記突起部を挿入する孔部を有するメスダイスを備え、前記メスダイスが前記オスダイスを一体化するための円柱状のボディを有してなり、
前記ダイホルダの支持孔が前記素材ビレット導入側に向かって先窄まり形状とされ、前記メスダイスのボディの先端側に前記先窄まり形状の支持孔に嵌り込む嵌合部が形成されるとともに、前記バックプレートに前記組立ダイスを通過した押出品を通過させる通過孔が形成されてなることを特徴とする押出加工用ダイス装置。
【請求項2】
前記オスダイスが、前記突起部を有するコア部材と、このコア部材を装着するコアケースと、前記コアケースに装着されたコア部材の後部側を覆って前記コアケースに装着されるキャップ部材とを具備してなり、
前記メスダイスが円柱状のボディと、このボディに装着され孔部を備えたプレート部材とを具備してなり、前記ボディの後部側に形成された嵌合溝部に、前記コア部材とキャップ部材を備えた前記コアケースが嵌合され一体化され、
前記メスダイスと前記オスダイスとを一体化した組立ダイスが、キャップ部材の両端部とコアケースの両端部とボディの周囲部分を前記支持孔の内面に当接させて支持孔の内部に装着されてなることを特徴とする請求項1に記載の押出加工用ダイス装置。
【請求項3】
前記コアケースの両端面が前記支持孔の内面に合致する凸曲面状の傾斜面に加工されて前記組立ダイスの前記支持孔への嵌合時にそれらの両端部が前記支持孔の内面に嵌め込まれてなることを特徴とする請求項2に記載の押出加工用ダイス装置。
【請求項4】
前記ダイホルダの支持孔において前記素材ビレット側の開口部に、前記オスダイスのキャップ部材に沿って前記開口部中央を横切るように設けられて前記キャップ部材を受けると共に、前記キャップ部材に対する素材ビレットの圧力を軽減するブリッジ部が設けられてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の押出加工用ダイス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−30258(P2012−30258A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172857(P2010−172857)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)
【Fターム(参考)】