説明

押出成形装置の引取機

【課題】押出成形装置により製造される成形品の形状の変更に際して無端ベルトの交換作業を容易とし、作業効率の向上を図るとともに、無端ベルトの劣化を低減できる押出成形装置の引取機を提供する。
【解決手段】本発明は、一対の無端ベルト26A,26Bを、その直線走行面を合成樹脂成形品の搬送通路24を挟むように対向配置し、これら無端ベルト26A,26Bを駆動して前記各走行面に形成された保持面により前記成形品の一方の面とその反対側の面とを挟持して該成形品を一方向に引き取る押出成形装置の引取機1において、一対の無端ベルト26A,26Bをこれら無端ベルト26A,26Bの幅方向Wに位置をずらして複数組設置し、これら一対の無端ベルト26A,26B、27A,27Bの各組を選択的に合成樹脂成形品P1の挟持位置へ平行移動させる移動機構11を設けてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒樋又は竪樋等の長尺の合成樹脂成形品を製造する際に用いられる押出成形装置の引取機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、軒樋や竪樋等の長尺の合成樹脂製品を製造する場合には押出成形装置を用いる。この押出成形装置は、押出機により樹脂を溶融して押出し、押し出された樹脂を成形金型に通して所定の断面形状に成形し、成形されたものを冷却機により冷却し、引取機により引き取った後、切断して成形品を得る。
このような押出成形装置において、上記の引取機としては、例えば下記特許文献1に記載されているように、成形品の搬送通路に沿う略平坦な保持面を有する上下一対の無端ベルトを上下方向に対向するように配置し、これら無端ベルトを回転駆動することによりその走行面で成形品を引き取るものが知られている。この引取機は、上下非対称な成形品を保持、搬送し得るように上方の無端ベルトと下方の無端ベルトの高さ位置をそれぞれ調整して芯高及び加圧を調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−301268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては、合成樹脂製品の用途の多様化に伴って押出成形装置で製造される成形品の外形が多様化しており、従来のように平坦な保持面を互いに対向させる無端ベルトでは引き取りできない成形品が多数開発されている。
しかし、上記特許文献1の引取機では、平坦な保持面を対向させてなる上下一対の無端ベルトが一組だけ駆動ドラムに設置されているのみであるため、当該無端ベルトによって保持,搬送可能な形状を有する成形品以外の成形品を引き取らせたい場合には、当該成形品の形状に適合する形状を有する無端ベルトに逐一掛け換えなければならなかった。
従って、一の無端ベルトでは対応不能な外形を有する成形品を製造するたびに無端ベルトを掛け換えるための手間が掛かり、不便でかつ作業効率が悪いという問題があった。
【0005】
また、無端ベルトを交換するにあたっては、無端ベルトを伸張させたり、駆動ドラムに掛けた際に再度テンションを掛けたりする必要があるため、無端ベルトが劣化しやすいという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて、押出成形装置により製造される成形品の形状の変更に際して無端ベルトの交換作業を容易とし、作業効率の向上を図るとともに、無端ベルトの劣化を低減できる押出成形装置の引取機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記手段を有する押出成形装置の引取機を提供する。
請求項1の発明は、一対の無端ベルトを、その直線走行面を合成樹脂成形品の搬送通路を挟むように対向配置し、これら無端ベルトを駆動して前記各走行面に形成された保持面により前記成形品の一方の面とその反対側の面とを挟持して該成形品を一方向に引き取る押出成形装置の引取機において、前記一対の無端ベルトをこれら無端ベルトの幅方向に位置をずらして複数組設置し、これら一対の無端ベルトの各組を選択的に前記合成樹脂成形品の挟持位置へ平行移動させる移動機構を設けてなることを特徴とする。
本発明では、複数組からなる一対の無端ベルトと、これら一対の無端ベルトの各組を選択的に合成樹脂成形品の挟持位置へ平行移動させる移動機構とを有しているため、一対の無端ベルトを他の一対の無端ベルトに容易に交換することができる。
【0007】
請求項2の発明は、前記各組の無端ベルトのうち、少なくとも一の前記無端ベルトの前記保持面の断面形状が他の無端ベルトの前記保持面の断面形状と異なることを特徴とする。
本発明では、一の無端ベルトの保持面の断面形状が他の無端ベルトのものと異なるため、多種類の外形を有する成形品に対応して簡便に無端ベルトを切換えることができる。
【0008】
請求項3の発明は、前記成形品として管を成形対象とし、前記各一対の無端ベルトの組のうち少なくとも一の一対の無端ベルトは、前記保持面の断面形状が、前記無端ベルトの幅方向の中心部から両端部方向へ向かって互いに拡開するようにハ字状に傾斜する一対の傾斜面を備えていることを特徴とする。
本発明は、保持面の断面形状が、無端ベルトの幅方向の中心部から両端部方向へ向かって互いに拡開するように傾斜する一対の傾斜面を備えているため、一対の無端ベルトの種類を変更することなく外径の異なる管状の成形品に適応させやすくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る押出成形装置の引取機によれば、複数組からなる一対の無端ベルトと、これら一対の無端ベルトの各組を選択的に合成樹脂成形品の挟持位置へ平行移動させる移動機構とを有しているため、無端ベルトを他の一組の無端ベルトに簡便に交換することができる。したがって、異なる種類の無端ベルトを複数組設置した場合には、多様な外形を有する成形品に適合する無端ベルトを選択して配置することが容易となり、また、同種の無端ベルトを複数組設置した場合には、使用中の無端ベルトについて保守、点検または整備が必要となったときに、他の一組の無端ベルトに切り替えることで作業の中断時間を最小限に抑え、当該他の一組の無端ベルトを作動させながら、使用していた一組の無端ベルトを効率よく保守,点検又は整備することが可能となるという効果を奏する。
【0010】
また、複数組の無端ベルトから一対の無端ベルトを選択し合成樹脂成形品の挟持位置へ平行移動させる構成となっているため、無端ベルトの掛け替えを回避して、該無端ベルトの劣化を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】は、本発明の一実施形態として示した押出成形装置の引取機の概略構成を示した斜視図である。
【図2】は、本発明の一実施形態として示した押出成形装置の引取機の概略構成を示した平面図である。
【図3】は、本発明の一実施形態として示した押出成形装置の引取機の無端ベルトを示した断面図である。
【図4】は、本発明の一実施形態として示した押出成形装置の引取機の無端ベルトを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の押出成形装置の引取機1(以下、単に「引取機1」と称する)の概略構成を示した斜視図である。なお、本実施形態においては、押出成形装置の成形対象が建築構造において雨水の排水に用いる竪樋である場合について説明する。
【0013】
図1に示すように、引取機1は、第1,第2の引取機構3A,3Bを備えたものであり、引取機構3A,3Bを切り替えて選択的に使用することによって、図3,図4に示す断面形状の異なる竪樋P1,P2を、引取機1の構成部品の掛け換え交換を要することなく引き取りができるようにしたものである。
引取機構3A,3Bは、支持フレーム4に支持されており、支持フレーム4は基台5上に支持されている。
【0014】
支持フレーム4は、矩形の上枠6,下枠7及びこれら上下枠6,7間に設けられた竪枠8を備えており、下枠7には基板9が固定されている。
基台5は、支持部材10により定位置に固定されたものであり、その上面には支持フレーム4を上下動させる移動機構であるジャッキ11,11・・が設けられている。
ジャッキ11は、駆動軸12を回転駆動することによって昇降軸13を上下動させ、この昇降軸13によって基板9を上下動させ、更に支持フレーム4を上下動させるものである。
【0015】
基板9の上面には、駆動モータ20,20及び減速機21,21が設けられている。駆動モータ20の回転力は、タイミングベルト22を介して減速機21に伝達され、減速機21の上方へ突出する駆動軸23が回転駆動するようになっている。
【0016】
図2に示すように、引取機構3Aは、竪樋P1の搬送通路24に沿って配設された一対の回転体25A,25Aと、これら回転体25A,25Aに巻回された無端ベルト26Aと、この無端ベルト26Aに対して搬送通路24を挟んだ反対側に、該搬送通路24に沿って配置された一対の回転体25B,25Bと、これら回転体25B,25Bに巻回された無端ベルト26Bとを備えたものである。
【0017】
竪樋Pの搬送方向(矢印D)の先端側に位置する回転体25A,25Bは、それぞれ回転軸30A,30Bに固定されており、これらの回転軸30A,30Bは支持フレーム4に回転自在に支持されている。
また、図1に示すように、回転軸30A,30Bは、支持フレーム4の内部下方へ延びており、その下端部は減速機21の駆動軸23とスプライン結合されている。この構成の下に、駆動モータ20を駆動させてタイミングベルト22を介して減速機21の駆動軸23を回転させたときに、回転体25A,25Bが回転駆動されるようになっている。なお、回転体25A,25Bを回転させるこれらの部品は、駆動機構を構成している。
【0018】
また、引取機構3Bは、上記引取機構3Aと同様に構成されたものであり、無端ベルト26A,26Bの幅方向Wに位置をずらした引取機構3Aの下方において、引取機構3Aの回転軸30A,30Bを共通の回転軸として回転体25A,25B(図1には不図示)が固定され、これら回転体25A,25Bに無端ベルト27A,27Bが巻回されている。
【0019】
上記の構成において、図2に示す無端ベルト26A,26Bの直線走行面Y,Yは、搬送通路24を挟んで対向配置されており、また無端ベルト27A,27B(図1参照)の直線走行面も同様に、搬送通路24を挟んで対向配置されている。そして、引取機構3A,3Bは、搬送通路24における竪樋P1の挟持位置にて該竪樋P1に正対するように、上下動して選択的に切り替えられるようになっている。
この切替えは、図示しない制御部を制御することによって、ジャッキ11が動作して基板9及び支持フレーム4が上下動し、これによって引取機構3A,3Bの回転軸30A,30Bが上下動することによって成される。
【0020】
図3に示すように、一組の無端ベルト26A,26Bは、竪樋Pの搬送方向(紙面奥行き方向)に見たときに、保持面26a,26bが鉛直方向に立ち上がるように形成されており、例えば断面が略四角柱形状の竪樋P1を引き取るのに適した形状となっている。
【0021】
また、図4に示すように、他の一組の無端ベルト27A,27Bの保持面27a,27bは、無端ベルト27A,27Bの幅方向の中心部から両端部t,t方向へ向かって互いに拡開するようにハ字状に傾斜する一対の傾斜面となっており、これら一対の保持面27a,27a及び保持面27b、27bが管形状の竪樋P2に当接して該竪樋P2を搬送できるようになっている。
【0022】
次に、引取機1によって竪樋1を引き取る方法について説明する。
押出成形装置の押出機から押し出され、成形金型を通り冷却機で冷却された竪樋P1を搬出して引き取るにあたっては、まず、図1に示すジャッキ11を操作して基板9及び支持フレーム4を上下動させ、竪樋P1の外形に合う引出機構3Aを搬送通路24の挟持位置に合わせて、図3に示す無端ベルト26A,26Bの各保持面26a,26bが竪樋P1に正対するように設定する。そして、不図示の制御部を操作して駆動機構20を駆動させると、図1に示す駆動モータ20の回転力がタイミングベルト22を介して減速機21に伝達され、減速機21の駆動軸23を回転させ、更に、駆動軸23に連結された回転軸30A,30Bを回転させる。この回転軸30A,30Bの回転により回転体25A,25Bが回転し、無端ベルト26A,26Bが周回を始め、無端ベルト26A,26Bの保持面26a、26bが竪樋P1に当接してこれら無端ベルト26A,26Bの周回により竪樋P1を搬送方向Dに引き取る。
【0023】
上記は竪樋P1を引き取る場合の作用であるが、竪樋P1の引き取りを完了させて他の形状の竪樋P2を成形し引き取る場合には、引取機1のジャッキ11を操作して基板9及び支持フレーム4を上下動させることにより、図4に示す管形状の竪樋P2に適合する引出機構3Bを搬送通路24の高さに合わせ、上記と同様に駆動機構を操作すると、無端ベルト27A,27Bの保持面27a,27a及び保持面27b、27bが竪樋P2の外面に当接し、無端ベルト27A,27Bの回転により該竪樋P2を搬送方向Dへ引き取る。
【0024】
以上のように、本発明の引取機1によれば、押出成形装置により成形する竪樋を竪樋P1から外形の異なる竪樋P2に変更したい場合には、無端ベルト26A,26Bを無端ベルト27A,27Bに掛け換えることなく、移動機構11を操作して引取機構3A,3Bの高さ位置を変更するだけで、簡便に適用する無端ベルトを切換えることができる。したがって、成形する竪樋Pの種類を変更する場合の作業効率が上がるという効果が得られる。
【0025】
また、同種の無端ベルトを引取機構3A,3Bに設置しておいた場合には、使用中の無端ベルトについて保守、点検または整備が必要となったときに、他の一組の無端ベルトに切り替えることで作業の中断時間を最小限に抑え、当該他の一組の無端ベルトを作動させながら、使用していた一組の無端ベルトを効率よく保守,点検又は整備することが可能となるという効果が得られる。
【0026】
また、一対の無端ベルト26A,26Bから異なる形状の無端ベルト27A,27Bに変更して引取機1を使用する場合において、同一の回転体25A,25Bに異なる無端ベルト27A,27Bを掛け替えることを回避することで、該無端ベルト26A,26B及び無端ベルト27A,27Bの劣化を防止することができるという効果が得られる。
【0027】
また、無端ベルト27A,27Bの保持面27a,27bの断面形状が、無端ベルト27A,27Bの幅方向の中心部から両端部t,t方向へ向かって互いに拡開するようにハ字状に傾斜する一対の傾斜面となっているため、無端ベルト27Aに対して無端ベルト27B及びその駆動機構を移動させ挟持位置の幅寸法を調整できるようにすることにより、引取機構3Bのみによって異なる外径寸法を有する管形状の竪樋Pに適用することができるという効果が得られる。
【0028】
なお、上記実施形態の引取機1においては、2組の引取機構3A,3Bを設けて断面形状の異なる2種類の成形品を引き取りできるように構成したが、引取機構は3組以上設けて3種類以上の成形品を引き取りできるように構成してもよい。
【0029】
また、引取機1は、引取機構3A,3Bを搬送通路24沿ってその両側方から対向させてこれら引取機構3A,3Bを鉛直方向に移動させる構成としたが、引取機構3A,3Bを搬送通路24に沿ってその上下方向から対向させ、移動機構11によって引取機構3A,3Bを水平方向に移動させる構成とするものであってもよい。
かかる構成とすることにより、引取機1の設置スペースをコンパクトにすることができる。
【0030】
また、引取機1においては、一対の無端ベルト26A,26B又は無端ベルト27A,27Bの各保持面26a,26b及び保持面27a,27bが対称形状となるものが例示されているが、これに限られるものではなく、一対の無端ベルトの保持面が非対称形状に形成されたものであってもよい。また、引取機1は、押出成形で製造されるものであれば、竪樋Pではなく軒樋その他の成形品に用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 押出成形装置の引取機
11 ジャッキ(移動機構)
24 搬送通路
26A,26B 無端ベルト
26a,26b 保持面
27A,27B 無端ベルト
27a,27b 保持面
P,P1,P2 竪樋(合成樹脂成形品)
Y 直線走行面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の無端ベルトを、その直線走行面を合成樹脂成形品の搬送通路を挟むように対向配置し、これら無端ベルトを駆動して前記各走行面に形成された保持面により前記成形品の一方の面とその反対側の面とを挟持して該成形品を一方向に引き取る押出成形装置の引取機において、
前記一対の無端ベルトをこれら無端ベルトの幅方向に位置をずらして複数組設置し、
これら一対の無端ベルトの各組を選択的に前記合成樹脂成形品の挟持位置へ平行移動させる移動機構を設けてなることを特徴とする押出成形装置の引取機。
【請求項2】
請求項1に記載の押出成形装置の引取機において、
前記各組の無端ベルトのうち、少なくとも一の前記無端ベルトの前記保持面の断面形状が他の無端ベルトの前記保持面の断面形状と異なることを特徴とする押出成形装置の引取機。
【請求項3】
請求項1に記載の押出成形装置の引取機において、
前記成形品として管を成形対象とし、
前記各一対の無端ベルトの組のうち少なくとも一の一対の無端ベルトは、
前記保持面の断面形状が、前記無端ベルトの幅方向の中心部から両端部方向へ向かって互いに拡開するようにハ字状に傾斜する一対の傾斜面を備えていることを特徴とする押出成形装置の引取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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