説明

押出成形装置

【課題】アルミニウム合金などの押出プレスによる脱気押出成形に際し、所定の脱気通路を確保して脱気を十分に行って、コンテナ内の真空度にばらつきのない押出成形装置を提供する。
【解決手段】コンテナ端面および押出ステム外周面をシールするシール部材31とシール手段とを有する脱気手段を備えた押出成形装置の押出ステム18の先端部に、コンテナ内壁面と密接し得るフィックスダミーブロックを設け、フィックスダミーブロック19は、フィックスダミーブロック19の先端部が外径方向に広がり得るアウターリング42と、アウターリング42の内側にあってアウターリング42と排気弁装置50を構成するダミーコア44とを有し、アウターリング外周部には排気弁装置50の環状脱気通路に連通する脱気通路45を複数個設けて押出開始前にコンテナ内の空気を吸引脱気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金などの押出プレスによる押出成形に際して、押出ステムに対して着脱自在な構成の脱気手段で閉じると同時に、前記脱気手段のコンテナ側に配設したシール部材を押圧装置でコンテナに押圧した後、ビレットが押出される前にコンテナとビレットの間の空気をコンテナ外に排出し、空気を含まず効果的で無駄なくビレットを押出すための改善された押出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンテナ内径よりも少し小径のビレットをコンテナ内に装填した後、コンテナ内のビレットを後方の押出ステムでダイスに押し当て、いわゆるアプセットすると、ビレットが押し潰されコンテナとビレットの間の空気が圧縮される。この圧縮された空気を、押出ステムのフィックスダミーブロック側からコンテナの外へ排出するために、例えば、ビレットが装填されるコンテナライナを有するコンテナの押出ステム側端面に設けたリング状のシール部と、前記押出ステムの軸線方向と交差方向に2つ割のシールブロックと、前記シールブロックを閉じた時前記シールブロックの当接面に貼着したシール部材および前記シールブロックの押出ステム側端面に設けたシール部材を介して前記リング状シール部の側端面と押出ステムの外周面を同時に密接させ得るようにし、前記シールブロックのコンテナ側端面に設けたシール部材を前記リング状シール部に押圧する押圧装置を押出ステムの軸線方向に移動自在に配設した脱気装置を備えて、コンテナ内をシール材でシールしつつフィックスダミーブロック外周面とコンテナ内周壁面との隙間から吸引脱気する方法が特開平10−128432号広報に開示されている。
【0003】
前記従来の方法では、ビレットのアプセット時にアルミニウム合金などがフィックスダミーブロック外周面とコンテナ内周壁面との隙間に侵入してフィックスダミーブロックの機能を害することがなく、また、脱気のための通路面積を確保してコンテナ内の空気を十分に吸引して所定の真空度が得られるように、前記フィックスダミーブロック外周面とコンテナ内周壁面との隙間が設定されている。
しかしながら、フィックスダミーブロック外周面の磨耗や拡径機能の低下およびコンテナ内周面に付着したアルミニウム合金粕のフィックスダミーブロック外周面への付着などの経時変化からフィックスダミーブロック外周面とコンテナ内周壁面との隙間を一定に保持することが困難で、脱気通路面積が変化して脱気が十分に行えず、コンテナ内の真空度にばらつきが発生するといった問題があった。
【特許文献1】特開平10−128432号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする問題は、アルミニウム合金などの押出プレスによる脱気押出成形に際して、脱気通路面積が変化して脱気が十分に行えずコンテナ内の真空度にばらつきが発生することである。
本発明の目的は、アルミニウム合金などの押出プレスによる脱気押出成形に際し、所定の脱気通路を確保して脱気を十分に行って、コンテナ内の真空度にばらつきのない押出成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、コンテナの端面と押出ステムの外周面をシールするシール部材およびシール手段を有するコンテナの脱気手段を備えた押出成形機であって、押出ステムの先端に前記コンテナの内壁面と密接し得るフィックスダミーブロックを設け、前記フィックスダミーブロックは先端部が外径方向に広がり得るアウターリングと、前記アウターリング内にあって脱気通路に連結して軸線方向に移動自在なダミーコアとにより構成された脱気弁装置を軸心先端部に有し、前記脱気通路が前記脱気手段と連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
押出ステム先端部のフィックスダミーブロックの軸心先端部分に脱気弁装置を設け、フィックスダミーブロック軸心部よりフィックスダミーブロックの外周部へコンテナ内の空気を吸引排出する構成としたので、フィックスダミーブロック外周部の経時変化や押出粕が脱気通路に堆積するなどの影響を受けることがなく所定の脱気通路面積が確保でき、十分な脱気が行えコンテナ内の真空度にばらつきが発生することがない。
そして、コンテナの端面と押出ステムの外周面をシール部材およびシール手段でシールを有する脱気手段を備えたので、コンテナのシールが十分で到達真空度が高く、脱気が十分に行える。
さらに、シール部材はコンテナの端面と押出ステム外周面に当接するまでは離間しており熱影響を回避してシール材の寿命が長く、安定してシール性能を保持することができる。
【0007】
ビレット押出後の押出ステムを後退させる際に、フィックスダミーブロックの外周面によって掻きだされるアルミニウム合金などの粕がシール部材に堆積することがないように押出ステムおよびコンテナから離間する構成としたので、高いシール性を長期間に亘って保持できる。
このように、コンテナ内の脱気が十分に、且つ、ばらつきなく行えるので、空気を巻き込んでいない良品質の押出材を得ることできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の押出成形装置の実施形態について図1〜図3を用いて詳細に説明する。ただし、図4は本発明実施形態の押出成形装置と比較する比較例を示したものであり、本発明の実施形態を表わすものではない。
図1は本発明に係る押出成形装置の概要を示す説明図、図2は図1の要部拡大図、図3は図2のA〜Aからみた断面図である。
【0009】
図1に示すようにエンドプラテン11側にコンテナライナ12a、コンテナタイヤ12bおよびコンテナホルダ12cから構成されるコンテナ12を摺動させるコンテナシリンダ13が配設されている。符号13aはコンテナシリンダ13の本体の一部を構成するシリンダチューブ、13bはピストン、13cはピストンロッドである。
符号14はダイスであって、ダイス14は外周を図示しないダイリングの内周面に摺動自在に嵌合保持してある。16は、コンテナライナ12aの内周壁面とビレット17の外周面との隙間であり、脱気空間でもある。一方、ビレット17を押し込む押出ステム18の先端にはコンテナライナ12aの内周壁面と密接し得るフィックスダミーブロック19が設けられている。
符号20は、押出ステム18の前進に伴ってビレット17が押し潰され、ダイス14から押出される押出材である。
【0010】
本実施形態における、脱気空間16内の圧縮空気を吸引除去するための脱気手段21について説明する。
まず、コンテナ12内の押出ステム18側より空気を吸引除去するための脱気手段21は、コンテナ12の押出ステム側端面に配設され、押出ステム18の軸線方向と交差方向に開閉自在に設けた2つ割のシールブロック22を備え、閉じたときに当接面35と押出ステム18の外周面に前記シールブロック22を密接させるとともに、押出ステム18の軸線方向に移動してコンテナ端面に前記シールブロックを密接させてコンテナ12を密封する構成となっている。符号23はシールブロック22の押出ステム18の軸線方向への移動と押圧のための押圧装置である。
そして、脱気手段21は、真空吸引装置24を有している。真空吸引装置24は、真空ポンプ25、真空タンク26、電磁弁27、真空計28aなどを備え、コンテナ12内の吸引脱気の際に脱気手段21と配管29を介して脱気空間16と連通する構成となっている。
【0011】
また、前記シールブロック22には図2および図3に示すように、押出ステム18の軸線方向と交差方向へ移動して押出ステム18またはフィックスダミーブロック19の外周面に密接してシールするシール材30と、押出ステム18の軸線方向へ移動してコンテナ側端面のリング状シール部34に密接してシールするシール材31と、シールブロック22が閉じたときの当接面35と密接してシールするシール材32が貼着されている。符号36は、シールブロック22が押出ステム18の軸線方向と交差方向へ移動するための開閉装置である。
【0012】
上記に示すシール材30、31、32のうちシール材30と31の材質は比較的硬質で耐熱性を有する材質、例えばシリコンゴムやフッソゴムを紐状に加工したものが好ましい。また、シール材32は耐熱性を有する材質、例えばシリコンゴムやフッソゴムをスポンジ態様のシート状に加工したものであることが好ましい。なお、シール材30、31は図2に示すように2個のシール材を離間して2重に配設して脱気時に外部より空気が侵入しないようにしているが、これに限定されるものではなく3列またはそれ以上に配設することは、到達真空度を維持するうえで好ましい。
【0013】
次に、押出ステム18の先端に設けられたフィックスダミーブロック19について説明する。
図2に示すように、フィックスダミーブロック19は、押出ステム18の先端部に螺設されたねじと螺合されているコネクティングロッド41と、コネクティングロッド41の先端部に螺設されたねじと螺合されその先端部が外径方向に広がってコンテナ12の内周面に密接し得る鼓形のアウターリング42と、アウターリング42およびコネクティングロッド41内の軸心部にあって先端部がテーパ状の弁座43aを有しアウターリング42との間で脱気通路45となる環状隙間を形成するダミーコア44、およびコネクティングロッド41内にあってダミーコア44にねじで取り付けられているアダプター46などによって構成されている。
【0014】
アウターリング42とダミーコア44などからなる排気弁装置50は、図示したようにアウターリング42の内面がテーパ状の弁座43bとなっており、弁座43a、43bが当接して環状の脱気通路45が閉じられる。そして、アウターリング42の鼓形の略中央部には、環状の脱気通路45に連通する複数個のアウターリング脱気通路48が設けられている。
排気弁装置50は、通常はコネクティングロッド41内の弾性体47の作用で開いているが、押出時のビレット17の反力がダミーコア44に作用して閉じられるようになっている。そして、排気弁装置50の脱気通路45は、複数個のアウターリング脱気通路48、シールブロック脱気通路49を介して、真空吸引装置24と連通される構成となっている。
【0015】
以上のように、押出時のビレット17の反力によってダミーコア44のテーパ状の弁座43aとアウターリング42のテーパ状の弁座43bが当接して脱気通路45を遮断する構成としたので、アウターリング42の先端部が外周に向けて広がり、コンテナ12の内周壁面に密接し得るようになっている。また、ダミーコア44の先端面は、アウターリング42の先端面よりも僅かに突出させて設けられている。これは、ビレット17を押す際に、アウターリング42の先端面にすぐビレット17の押出ステム側端面が当たらないようにしたもので、脱気作用を確実容易に行えるようにしたためのものである。
【0016】
次に、押出成形装置の押出動作について説明する。
図1に示すように、まず、コンテナシリンダ13のロッド13c室に圧油を供給し、ピストン13bを押出方向へ移動させ、ダイス14とコンテナ12を当接する。次いで、ビレット17が載置された図示しないビレットローダが上昇し、押出ステム18を前進させると、ビレット17がコンテナ12内に押し込まれる。そして、ビレット17の押出ステム側端面がコンテナの押出ステム側端面より内側に押し込まれた状態で押出ステム18の前進を停止させ、脱気手段21を動作させてコンテナ12とビレット17との隙間である脱気空間16と真空吸引装置24とが連通されるようにする。
【0017】
図2および図3に示すように、開閉装置36を作動させてシールブロック22を閉じた後、押圧装置23を作動させて閉じた状態のシールブロック22をコンテナ12の押出ステム側端面のリング状シール部34に押し付ける。これらの動作により、シールブロック22の当接面35と押出ステム18外周面とコンテナ12の押出ステム側端面がそれぞれのシール材30、31、32によってシールされ、コンテナ12は密封される。そして、真空吸引装置24を起動することで脱気空間16内の空気は排出される。
脱気空間16内の空気排出は、ビレット17とフィックスダミーブロック19のアウターリング42との端面隙間、アウターリング42とダミーコア44とのテーパ状の環状隙間および環状の脱気通路45、複数のアウターリング脱気通路48、そして、シールブロック脱気通路49および配管49を介して真空吸引装置24により行われる。
【0018】
真空吸引装置24の起動のタイミング即ち、脱気の開始は、コンテナ12内にビレット17を装填後のアプセット開始前、開始と同時または、アプセット開始後の所定時間を経過したいずれのタイミングであっても良く、押出の諸条件に適合した好適な開始時期を選定する。また、脱気空間16が所定の真空度に到達したことを検出して脱気を終了する。
ビレット17のアプセットが完了したことを検出した後、押出ステム18の前進に伴って押出が開始され、ダイス14から押出材20が押出される。
【0019】
一方で、脱気手段21は所定の真空度に到達したことを検出して真空吸引装置24が停止すると、押圧装置23および開閉装置36を動作させてそれぞれの後退限位置までもどり、次の動作に備え待機する。そして、その後も押出動作は継続して押出材20の押出が行われ、所定のディスカード寸法を押し残して押出が完了すると押出ステム18を後退させ、ディスカードをコンテナ12から分離して切断し、次サイクルに入ることとなる。
ここで、押出ステム18の前進とはコンテナ12内に進入していく方向の動作を、後退とはコンテナ12から抜け出る方向の動作をいう。
【0020】
以上説明したようにコンテナ内の空気を、コンテナのシール手段および空気の排出手段を設けるとともに、前記コンテナ内の空気をフィックスダミーブロックの先端軸心部に排出弁装置を設けて、真空吸引装置で押出ステム内部の通路から吸引除去することとしたので、本発明による押出成形装置は所定の脱気通路面積を確保して脱気が十分に行え、フィックスダミーブロック外周面の経時変化に起因するコンテナ内の真空度にばらつきが発生することとがない。
【0021】
さらに、ビレットが装填されるコンテナライナを有するコンテナの押出ステム側端面に設けたリング状のシール部と、押出ステムの軸線方向と交差方向に開閉自在に設けた2つ割のシールブロックと、シールブロックを閉じた時シールブロックの当接面に貼着したシール材とシールブロックの押出ステム側端面に設けたシール部材を介して押出ステムの外周面に同時に密接させ得るようにするとともに、シールブロックのコンテナ側端面に設けたシール部材をリング状シール部に押圧する押圧装置を押出ステムの軸線方向に移動自在に配設した脱気手段は、コンテナのシールが十分で到達真空度が高く、脱気を十分に行うことができる。
また、貼着によるシール材の交換が容易な構成は、シール材の交換時間が短く生産性を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る押出成形装置の概要を示す説明図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2のA〜Aからみた断面図である。
【図4】本発明実施形態の押出成形装置と比較する比較例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0023】
12 コンテナ
12a コンテナライナ
16 脱気空間
17 ビレット
18 押出ステム
19 フィックスダミーブロック
20 押出材
21 脱気手段
22 シールブロック
23 押圧装置
24 真空吸引装置
30、31、32 シール材
34 リング状シール部
35 当接面
36 開閉装置
42 アウターリング
44 ダミーコア
45 脱気通路
50 排気弁装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナの端面と押出ステムの外周面をシールするシール部材およびシール手段を有するコンテナの脱気手段を備えた押出成形機であって、
押出ステムの先端に前記コンテナの内壁面と密接し得るフィックスダミーブロックを設け、前記フィックスダミーブロックは、先端部が外径方向に広がり得るアウターリングと前記アウターリング内にあって脱気通路に連結して軸線方向に移動自在なダミーコアとにより構成された脱気弁装置を軸心先端部に有し、前記脱気通路が前記脱気手段と連通していることを特徴とする押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−260760(P2007−260760A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93035(P2006−93035)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)