説明

押出成形装置

【課題】全方向で強度が高い成形品を得ることができ、発熱が生じにくく、しかも押出し動力が低く駆動源の小型化が可能な押出成形装置を提供する。
【解決手段】成形材料を搬送する搬送通路2と、搬送通路2に設けられたダイス3と、ダイス3に形成された押出孔4に向けて成形材料を押し出すスクリュー7とを備えた装置であり、スクリュー7の主軸7aの先端に攪拌軸10を同軸状に取付けている。攪拌軸10は押出孔4の内部に同心に位置しており、攪拌軸10の外周には、軸方向に延びる溝13が形成されている。補強繊維f入りの成形材料がスクリュー7でダイス3の押出孔4へ押し込まれると、同時に攪拌軸10の溝13によって回転方向の力が加えられるので、成形材料は螺旋運動をしながら、押出孔4から押し出される。成形材料内に混入されている補強繊維fも成形品内で螺旋状になり、全方向で割れにくい成形品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形装置に関する。さらに詳しくは、補強繊維を混入した成形材料を、円柱状または円筒状の成形品に成形するために使用される押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、触媒、触媒担体、吸着材、乾燥材、調湿材等は、直径1〜20mm、長さ1〜20mm程度の円柱状または円筒形の成形品に成形され、これを反応器に充填して種々の化学反応プロセスに使用される。このような触媒等の成形品を製造するために、従来から押出成形装置が用いられている。
【0003】
上記の成形品は、たとえばアルミナ等の軟質な粘土状材料を用い、これをダイから連続的に押し出して棒状品に成形し、さらに小さく切断して円柱状または円筒状の成形品にしている。
【0004】
ところで、上記成形品が主材料の粘土のみであると強度が弱く割れやすいため、成形材料に補強繊維を混ぜ込み、強度を向上させることが行われている。ところが、押出成形により製造した成形品は、たとえ補強繊維が分散されていても、床に落すなどの衝撃を加えた場合、簡単に割れてしまうという問題があった。とくに円柱形または円筒形の成形品の場合、その軸方向に割れやすかった。なぜならば、図7(B)に示すように、押出成形された成形品Cに含まれる補強繊維fは、成形材料と同様に押出し方向に向けて揃えられるため、補強繊維が半径方向の強度向上には寄与しなかったからである。
【0005】
特許文献1には、そのような成形品における補強繊維の配向方向を変化させることを考慮した押出成形装置が開示されている。この装置では、スクリュー軸に攪拌手段を取付け、この攪拌手段をダイに形成した押出孔の内部で回転させるように構成している。攪拌手段としては、押出孔内で軸方向に延びるピンと、このピンに対し半径方向に延びる突起を取付けたものが用いられている。
この従来技術によれば、押出時に成形材料内の補強繊維がランダムに分散し、成形品の機械的強度が向上するとされている。
【0006】
しかしながら上記従来技術では、押出孔内で半径方向に延びる突起が回転するが、その突起は成形材料の押出し方向に対し直角方向に存在するので、押出し抵抗が大きく、高い押出し動力を必要としていた。また、突起が押出し材料の流動を妨げやすいので、発熱量が大きく押出し不良が生じやすかった。
【0007】
【特許文献1】特開2006−272961
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、全方向で強度が高い成形品を得ることができ、発熱が生じにくく、しかも動力源の小型化が可能な押出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の押出成形装置は、補強繊維を混入した成形材料を押し出し成形するダイスと、該ダイスに形成された押出孔に向けて成形材料を押し出す搬送手段とを備えた押出成形装置であって、前記搬送手段の主軸の先端に、攪拌軸を同軸状に取付けており、該攪拌軸は前記押出孔の内部に同心に位置しており、前記攪拌軸は、その外周に軸方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする。
第2発明の押出成形装置は、第1発明において、前記攪拌軸が、その外周に1本の溝を形成したものであることを特徴とする。
第3発明の押出成形装置は、第1発明において、前記攪拌軸が、その外周に2本の溝を対称に形成したものであることを特徴とする。
第4発明の押出成形装置は、第1発明において、前記攪拌軸が、その外周に4本の溝を中心対称に形成したものであることを特徴とする。
第5発明の押出成形装置は、第1発明において、前記攪拌軸の先端に、該攪拌軸よりも直径の細いピンを同心状に取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、補強繊維入りの成形材料が搬送手段でダイスの押出孔へ押し込まれると、同時に攪拌軸の溝によって回転方向の力が加えられるので、成形材料は螺旋運動をしながら、押出孔から押し出される。このため、成形材料内に混入されている補強繊維も成形品内で螺旋状に存在することとなり、成形品の軸方向だけでなく半径方向にも補強効果が生じ、全方向で割れにくい成形品が得られる。また、攪拌軸も溝も押出孔内で同軸方向に延びているので、成形材料が押出孔内を通過するときの抵抗が小さい。このため、発熱による成形不良が生じにくく、低回転数または低攪拌動力で回転方向の力を加えることができるので動力源を小型化できる。
第2発明によれば、攪拌軸に設けた溝が1本なので、断面積の大きな溝を形成でき、成形材料への回転方向の力を加えて補強繊維を成形品内で螺旋方向に向けることができる。このため、全方向で強度の強い成形品を得ることができる。
第3発明によれば、攪拌軸に設けた溝が2本なので、溝が1本の場合に比べて、攪拌軸の回転数が同一であれば攪拌効果が高く、同じ攪拌効果を得るなら1/2の回転数ですむ。
第4発明によれば、攪拌軸に設けた溝が4本なので、溝が1本の場合に比べて、攪拌軸の回転数が同一であれば攪拌効果が高く、同じ攪拌効果を得るなら1/4の回転数ですむ。
第5発明によれば、攪拌軸の先端にピンがあることにより、ピンのまわりを成形材料が押し出されていき、成形品をその中心に孔のある円筒状に成形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の押出成形装置は、粘土状材料に補強繊維を混入した成形材料を搬送手段により加圧搬送してダイスから押出して成形品を製造する装置である。以下の例では、搬送手段がスクリュー方式の場合を代表として説明するが、成形材料の搬送方式(押出し機構)は、とくに限定されない。
【0012】
また、本発明の押出成形装置が成形する成形材料は補強繊維を混入したものであり、混入する補強繊維としては、アルミナ、シリカアルミナ、石英、ガラス、炭化珪素、窒化珪素、ホウ酸アルミニウムなどで、繊維径が0.1〜20μm、繊維長が1〜1000μmの公知のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の押出成形装置の概略を、図1に基づき説明する。
同図において、符号2はスクリューケース等の搬送通路を示している。この搬送通路2内には、中空な筒状の空間が形成されており、この搬送通路2の軸方向の一端にはダイス3が設けられている。また、ダイス3の中心には押出孔4が形成されている。
【0014】
前記搬送通路2には、成形材料を搬送通路2内に供給するホッパー5が設けられている。なお、この例では、ホッパー5を通して成形材料を搬送通路2内に供給しているが、搬送通路2内に成形材料を供給する方法は特に限定されない。
【0015】
前記搬送通路2内の空間には、搬送手段の一例であるスクリュー7が配設され、このスクリュー7の基端は、減速機8を介してモータ等の駆動源9に連結されている。
このスクリュー7は主軸7aと羽根7bから構成されたものであり、主軸7aはダイス3に形成された押出孔4と同心に配置されている。
そして、主軸7aの先端には、本発明に係る攪拌軸10が同心状に取付けられているが、その詳細は後述する。
【0016】
以上のごとき構成であるから、ホッパー5を通して、補強繊維入りの成形材料を搬送通路2内に供給し、スクリュー7を回転させれば、成形材料は加圧されながらダイス3に向かって搬送される。
そして、成形材料は、ダイス3の押出孔4から押出されて、補強繊維入りの円柱状の成形品となって出ていき、円柱状の成形品は所定の長さに切断される。
【0017】
ところで、上記補強繊維を成形品中で螺旋状に配向する手段として、本発明では、スクリュー7の主軸7aに取付けられる攪拌軸10を採用している。
つぎに、その攪拌軸10を、図2〜図5に基づき説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図2の(A)図は本発明の第1実施形態に係る攪拌軸10とダイス3を示す断面図、(B)図は攪拌軸10の斜視図である。
第1実施形態の攪拌軸10は、ボス部11と軸部12と有している。ボス部11はスクリュー7の主軸7aとほぼ同じ直径の部材であり、その後端にネジ部11aを備えている。このネジ部11aは主軸7aに攪拌軸10を取付けるための部材である。図示のごとく、この攪拌軸10の軸部12は押出孔4の内部で同心状に位置している。
そして、前記軸部12には溝13が形成されている。この溝13は軸部12の外周に軸方向に沿って1本形成されたものである。溝13の断面形状は、半円形や角形、U字形などが任意に採用でき、成形材料や、それに混入されている補強繊維に回転方向の力を加え得るものであればよい。
【0019】
上記第1実施形態の攪拌軸10は、溝13が1本なので、断面積の大きな溝を形成できる。この断面積の大きい溝13を有する攪拌軸10を回転させると成形材料と、それに含まれる補強繊維への回転方向の力を加えることができるので、図7(A)に示すように、補強繊維fを成形品C内で螺旋方向に向けることができる。なお、補強繊維fは主として螺旋配向されるのであるが、ランダムな方向に向く補強繊維fも混在する。このように、補強繊維fが螺旋方向やランダムな方向に向けられるので、本実施形態の押出成形装置によれば、全方向で強度の強い成形品を得ることができる。
【0020】
(第2実施形態)
図3の(A)図は本発明の第2実施形態に係る攪拌軸10とダイス3を示す断面図、(B)図は攪拌軸10の斜視図である。
第2実施形態の攪拌軸10も、ボス部11と軸部12からなる基本構成は、図2の攪拌軸10と同様であり、相違するのは、溝13が2本になっている点である。この2本の溝13は軸部12に中心対称に形成されている。
本実施形態においても、攪拌軸10が回転すると、溝13で成形材料とそれに含まれる補強繊維に回転方向の力を加えるので、図7(A)に示すように、補強繊維fを成形品C内で主として螺旋方向に向けることができる。この結果、全方向で強度の強い成形品Cを得ることができる。
また、本実施形態の攪拌軸10は、溝が1本の場合に比べて、攪拌軸10の回転数が同一であれば攪拌効果が高く、同じ攪拌効果を得るなら1/2の回転数ですむという利点がある。
【0021】
(第3実施形態)
図4の(A)図は本発明の第3実施形態に係る攪拌軸10とダイス3を示す断面図、(B)図は攪拌軸10の斜視図である。
第3実施形態の攪拌軸10も、ボス部11と軸部12からなる基本構成は、図2の攪拌軸10と同様であり、相違するのは、溝13が4本になっている点である。この4本の溝13は軸部12に中心対称に形成されている。
【0022】
本実施形態においても、攪拌軸10が回転すると、溝13で成形材料とそれに含まれる補強繊維に回転方向の力を加えるので、図7(A)に示すように、補強繊維fを成形品C内で主として螺旋方向に向けることができる。この結果、全方向で強度の強い成形品Cを得ることができる。
また、本実施形態の攪拌軸10は、攪拌軸10に設けた溝が4本なので、溝が1本の場合に比べて、攪拌軸10の回転数が同一であれば攪拌効果が高く、同じ攪拌効果を得るなら1/4の回転数ですむという利点がある。
【0023】
(第4実施形態)
図5の(A)図は本発明の第4実施形態に係る攪拌軸10とダイス3を示す断面図である。
第4実施形態の攪拌軸10は、軸部12の先端にピン15を同心状に取付けたものであり、このピン15は軸部12よりも直径の細いものである。なお、本実施形態において軸部12に設ける溝13の数は任意であり、上記図2〜図4に示す攪拌軸10、またこれらに図示した以外の溝数をもつ攪拌軸10にも、本実施形態のピン15を取付けることが可能である。
【0024】
本実施形態においても、攪拌軸10が回転すると、溝13で成形材料とそれに含まれる補強繊維に回転方向の力を加えるので、図7(A)に示すように、補強繊維fを成形品C内で主として螺旋方向に向けることができる。この結果、全方向で強度の強い成形品Cを得ることができる。
また、本実施形態では、攪拌軸10の先端にピン15があることにより、ピン15のまわりを成形材料が押出されていくので、成形品を中心に孔のある円筒状に成形できる。
【0025】
(第5実施形態)
図6の(A)図は本発明の第5実施形態に係る押出成形装置の要部を示す断面図、(B)図は同正面図である。
本実施形態は複数個の押出孔4を有する押出成形装置である。同図に示すように、主搬送手段27を内蔵する主搬送通路22の先端にはダイス3が設けられている。このダイス3には、複数個の搬送通路2が形成されており、各搬送通路2は正面視で見て円周上に等間隔に配置されていて、各搬送通路2は主搬送通路22に連通している。また、押出孔4が各搬送通路2の先端に形成されている。
【0026】
前記各搬送通路2内には、それぞれ搬送手段であるスクリュー7が配置され、このスクリュー7の主軸先端には前記各実施形態の攪拌軸10が取付けられている。
この実施形態では、それぞれの押出孔4でスクリュー7の回転数をそれぞれ異なるように調整して、押出孔4から押出される円柱状または円筒状成形品の長さを異ならせることができる。
【0027】
また、前記図示の各実施形態では、攪拌軸10はスクリュー7の主軸7aに固定的に取付けたものであったが、図6に示すように、主軸7aとは別の軸で個別に回転するようにしてもよい。
この場合、主軸7aの内部に同心状に攪拌軸10用の駆動軸10aを回転自在に挿入し、この駆動軸10aの先端を主軸7aから突出させて攪拌軸10を取付け、駆動軸10aの基端をモータ等の駆動源に連結することで、スクリュー7とは別に回転させることができる。
【0028】
この実施形態であると、スクリュー7の主軸7aに溝数の異なる攪拌軸10を適宜付け替えて、溝数に適合した回転数で攪拌軸10を回転させることができる。このため、補強繊維や成形材料の性質に合わせた運転が可能となる。また、それぞれの押出孔4から押出される円柱状または円筒状成形品に最適の攪拌を加えるため、攪拌軸10の回転数をスクリュー7の回転数と同じにしたり、あるいは異なるように変えることが可能となる。
【0029】
つぎに、本発明の他の実施形態を説明する。
上記各実施形態における攪拌軸10の溝13の数は、1本、2本および4本であったが、これら以外の3本でもよく、5本以上であってもよい。要は、成形材料と共に補強繊維に回転方向の力を加えて、補強繊維を成形品内で螺旋状に配向させることができればよいのである。
【0030】
本発明における上記いずれの実施形態においても、攪拌軸10と溝13は押出孔4内で同軸方向に延びているので、成形材料が押出孔4内を通過するときの抵抗は小さい。このため、発熱量が少ないので発熱による成形不良が生じにくい。また、低回転数または低攪拌動力で回転方向の力を加えることができるので動力源を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の押出成形装置の概略断面図である。
【図2】(A)図は本発明の第1実施形態に係る攪拌軸とダイスを示す断面図、(B)図は攪拌軸の斜視図である。
【図3】(A)図は本発明の第2実施形態に係る攪拌軸とダイスを示す断面図、(B)図は攪拌軸の斜視図である。
【図4】(A)図は本発明の第3実施形態に係る攪拌軸とダイスを示す断面図、(B)図は攪拌軸の斜視図である。
【図5】(A)図は本発明の第4実施形態に係る攪拌軸とダイスを示す断面図である。
【図6】(A)図は本発明の第5実施形態に係る押出成形装置の要部を示す断面図、(B)図は同正面図である。
【図7】(A)図は本発明の押出成形装置で得られる成形品Cの説明図、(B)図は従来の押出成形装置で得られる成形品Cの説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 押出成形装置
2 搬送通路
3 ダイス
4 押出孔
6 搬送手段
7 スクリュー
10 攪拌軸
13 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強繊維を混入した成形材料を押し出し成形するダイスと、該ダイスに形成された押出孔に向けて成形材料を押し出す搬送手段とを備えた押出成形装置であって、
前記搬送手段の主軸の先端に、攪拌軸を同軸状に取付けており、
該攪拌軸は前記押出孔の内部に同心に位置しており、
前記攪拌軸は、その外周に軸方向に延びる溝が形成されている
ことを特徴とする押出成形装置。
【請求項2】
前記攪拌軸が、その外周に1本の溝を形成したものである
ことを特徴とする請求項1記載の押出成形装置。
【請求項3】
前記攪拌軸が、その外周に2本の溝を対称に形成したものである
ことを特徴とする請求項1記載の押出成形装置。
【請求項4】
前記攪拌軸が、その外周に4本の溝を中心対称に形成したものである
ことを特徴とする請求項1記載の押出成形装置。
【請求項5】
前記攪拌軸の先端に、該攪拌軸よりも直径の細いピンを同心状に取付けた
ことを特徴とする請求項1記載の押出成形装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−220467(P2009−220467A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68790(P2008−68790)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】