説明

押圧力測定装置

【課題】第1の部材に対して第2の部材を摺動させることによって第1及び第2の部材間に押圧力を発生させる押圧機構において、第1及び第2の部材間に発生する押圧力を測定可能な押圧力測定装置を提供すること。
【解決手段】第1の部材を保持する第1の保持体2と第2の部材を保持する第2の保持体4との間に調整板10を配置し、調整板10に対して、第2の部材の摺動方向には相対的に移動不可能であって押圧力の発生方向には相対的に移動可能に摺動板11を配置し、調整板10と摺動板11との間にロードセル9を配置し、押圧機構によって調整板10と摺動板11との間に押圧力を発生させるときに、摺動板11が第2の部材の摺動方向に相対的に摺動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材間に押圧力を発生させる押圧機構の押圧力を測定する押圧力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部材間に押圧力を発生させる押圧機構を備えた装置の一例として、スライディングノズル装置(以下「SN装置」という。)がある。
【0003】
SN装置は、溶融金属の流量制御を正確に行うことができるという利点を有することから、溶鋼鍋やタンディッシュなどの溶融金属容器で広く利用されている。このSN装置は、2枚又は3枚のプレートを備え、これらのプレート間に面圧(押圧力)を負荷して使用される。
【0004】
図8に2枚のプレートを備えたSN装置の一般的な構成を示す。同図(a)は正面から見た断面図、(b)は側面から見た断面図である。
【0005】
図8に示すSN装置は、溶融金属容器の一例であるタンディッシュから排出される溶鋼の流量制御に使用されるもので、タンディッシュ1の底部に固定された固定金枠2と、固定金枠2に開閉可能に連結された開閉金枠3と、開閉金枠3に摺動可能に配置された摺動金枠4とを備え、固定金枠2に上プレート5が、摺動金枠4に下プレート6が、それぞれ配置されている。そして、開閉金枠3に装着されたコイルスプリング7の弾発力によって、開閉金枠3及び摺動金枠4を介して下プレート6を上方に押圧し、プレート間に面圧を負荷する。
【0006】
このようなSN装置におけるプレート間の面圧は、ロードセルによって測定することができる。具体的には、図9に示すように、固定金枠2と摺動金枠4との間に2枚の調整鉄板8a,8bを配置し、これらの調整鉄板8a,8bの間にロードセル9を配置する。このとき、調整鉄板8a,8b及びロードセル9の総厚みが、図8に示した上プレート5及び下プレート6の総厚みと等しくなるように調整鉄板8a,8bの厚みを調整する。そして、図9の状態で面圧を負荷することによりプレート間に発生する面圧を測定する。
【0007】
ところで、SN装置においては上述のようにコイルスプリング7の弾発力によってプレート間に面圧を負荷するが、その弾発力はコイルスプリング7を圧縮することで得られる。したがって、SN装置にはコイルスプリング7を圧縮させる面圧負荷機構が必要である。この面圧負荷機構には、手動によるものと自動によるものとがある。手動による面圧負荷機構では、プレートを静止させた状態で面圧を負荷することができるが、自動による面圧負荷機構(以下「自動面圧負荷機構」という。)では、ほとんどの場合、摺動金枠4を摺動させることで面圧を負荷するようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0008】
しかし、上述のように摺動金枠を摺動させることで面圧を負荷する自動面圧負荷機構を採用したSN装置において、上述の図9の方法でプレート間に発生する面圧を測定しようとすると、面圧を負荷するときに摺動金枠4が摺動し、これに伴いロードセル9に横方向の力が作用するから、面圧の測定が不可能になり、無理に測定しようとするとロードセル9が故障あるいは破損するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2002/090017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、SN装置における自動面圧負荷機構のように、第1の部材に対して第2の部材を摺動させることによって第1及び第2の部材間に押圧力を発生させる押圧機構において、第1及び第2の部材間に発生する押圧力を測定可能な押圧力測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の押圧力測定装置は、第1の部材に対して第2の部材を摺動させることによって第1及び第2の部材間に押圧力を発生させる押圧機構において、第1及び第2の部材間に発生する押圧力を測定する押圧力測定装置であって、第1の部材又は第1の部材を保持する第1の保持体と第2の部材を保持する第2の保持体との間に配置された調整板と、調整板に対して、前記第2の部材の摺動方向には相対的に移動不可能であって押圧力の発生方向には相対的に移動可能に配置された摺動板と、調整板と摺動板との間に配置されたロードセルとを備え、前記押圧機構によって調整板と摺動板との間に押圧力を発生させるときに、摺動板が前記第2の部材の摺動方向に相対的に摺動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、上述のような関係で調整板、摺動板及びロードセルを配置したので、摺動板が第2の部材の摺動方向に相対的に摺動する際、調整板、摺動板及びロードセルは一体的に摺動するから、ロードセルには横方向の力が作用しない。したがって、第1の部材に対して第2の部材を摺動させることによって第1及び第2の部材間に押圧力を発生させる押圧機構においても、第1及び第2の部材間に発生する押圧力を測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の押圧力測定装置をSN装置のプレート間の面圧測定に適用した本発明の第1実施例を示す。
【図2】図1のSN装置において面圧を負荷した状態を示す。
【図3】図1の押圧力測定装置における調整板及び固定板の配置の変更例を示す。
【図4】図1の押圧力測定装置における調整板及び摺動板の他の構成例を示す。
【図5】図4の構成例における調整板及び固定板の配置の変更例を示す。
【図6】本発明の押圧力測定装置を下部ノズルと浸漬ノズルとの間の押圧力測定に適用した本発明の第2実施例を示す。
【図7】下部ノズルと浸漬ノズルの接合構造を示す。
【図8】2枚のプレートを備えたSN装置の一般的な構成を示す。
【図9】SN装置のプレート間の面圧を測定する従来の面圧測定装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施例の形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の第1実施例を示す。本実施例は、本発明の押圧力測定装置をSN装置のプレート間の面圧測定に適用したもので、図1の(a)は正面から見た断面図、(b)は側面から見た断面図である。なお、SN装置の構成は、図8のものと同一であるので、図1において図8の構成と同一の構成には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0016】
図1に示す押圧力測定装置は、調整板10と、摺動板11と、ロードセル9と、固定板12とからなり、SN装置の固定金枠2と摺動金枠4との間に配置される。
【0017】
調整板10は、固定金枠2と摺動金枠4との間に配置される。この調整板10は、摺動金枠4に対して、その摺動方向には相対的に移動不可能に配置される。その一態様として、調整板10は摺動金枠4に固定してもよい。
【0018】
摺動板11は、調整板10に配置される。摺動板11は、調整板10に対して、摺動金枠4の摺動方向には相対的に移動不可能であって、面圧の負荷方向(押圧力の発生方向)には相対的に移動可能に配置される。具体的には、摺動板11は、調整板10から垂直に立ち上げた一対のガイド部10a,10b間に配置される。この一対のガイド部10a,10bは、摺動金枠4の摺動方向に間隔を開けて設けられ、その間隔を摺動板11の摺動方向長さとほぼ同一として、摺動板11を一対のガイド部10a,10b間に嵌め込む。これによって、摺動板11は、調整板10に対して、摺動金枠4の摺動方向には相対的に移動不可能であって、面圧の負荷方向には相対的に移動可能となる。
【0019】
ロードセル9は、調整板10と摺動板11との間に配置される。また、固定板12は、固定金枠2に固定される。そして、調整板10、摺動板11、ロードセル9及び固定板12の総厚みが、図8に示した上プレート5及び下プレート6の総厚みと等しくなるように調整板10、摺動板11あるいは固定板12の厚みを調整する。
【0020】
図1に示すSN装置は、自動面圧負荷機構を備える。すなわち、摺動金枠4を摺動させることで固定金枠2と摺動金枠4との間に面圧を負荷する。したがって、図1に示すように、面圧が負荷されていない状態で、固定金枠2と摺動金枠4との間に押圧力測定装置を配置した後、面圧を負荷すると、図2に示すように摺動金枠4が摺動した状態となる。このとき、本実施例では上述のような関係で調整板10、摺動板11及びロードセル9を配置したので、摺動金枠4の摺動により摺動板11が摺動する際、調整板10、摺動板11及びロードセル9は一体的に摺動するから、ロードセル9には横方向の力が作用しない。よって、SN装置のプレート間に負荷される面圧を問題なく測定できる。
【0021】
なお、以上の実施例では、調整板10を摺動金枠4に配置し、固定板12を固定金枠2に配置したが、これとは逆に、図3に示すとおり、調整板10を固定金枠2に配置し、固定板12を摺動金枠4に配置してもよい。
【0022】
図4は、調整板10及び摺動板11の他の構成例を示す。図4の例では摺動板11に一対のガイド部11a,11bを設け、その先端部分を調整板10に進退可能に嵌め込んでいる。この構成によっても、摺動板11は、調整板10に対して、摺動金枠4の摺動方向には相対的に移動不可能であって、面圧の負荷方向には相対的に移動可能となる。なお、図4の例では、調整板10を摺動金枠4に配置し、固定板12を固定金枠2に配置したが、これとは逆に、図5に示すとおり、調整板10を固定金枠2に配置し、固定板12を摺動金枠4に配置してもよい。
【0023】
以上の図3〜5の例においても、図1の例と同様に、摺動金枠4の摺動により摺動板11が相対的に摺動する際、調整板10、摺動板11及びロードセル9は一体的に摺動するから、ロードセル9には横方向の力が作用しない。よって、SN装置のプレート間に負荷される面圧を問題なく測定できる。
【0024】
なお、以上の例において、固定板12は必ずしも必要ではなく、摺動板11を直接、固定金枠2又は摺動金枠4に対して摺動させるようにすれば、固定板12は省略できる。ただし、摺動板11の摺動を円滑にするには固定板12を使用することが好ましい。
【実施例2】
【0025】
図6は本発明の第2実施例を示す。本実施例は、本発明の押圧力測定装置を下部ノズルと浸漬ノズルとの間の押圧力測定に適用したもので、図6の(a)は正面から見た断面図、(b)は側面から見た断面図である。
【0026】
まず、図7を参照して、下部ノズルと浸漬ノズルの接合構造を説明する。下部ノズル13は、ノズル保持具14に保持され、SN装置の下プレート6の下部に接合される。そして、下部ノズル13の下部に浸漬ノズル15が接合される。なお、図7に示すSN装置は、上プレート5と下プレート6の間に摺動プレート16を備えた3枚プレート式のSN装置である。
【0027】
浸漬ノズル15の首部は、メタルケース15aで覆われ、その首部をクランパー17によって上方に押圧することによって、浸漬ノズル15が下部ノズル13に押圧されて保持される。クランパー17は、浸漬ノズル15の両側部にそれぞれ複数配置され、コイルスプリング18の弾発力によって上方への押圧力を発生させる。
【0028】
浸漬ノズル15の下部ノズル13への接合は、ガイドレール19を使用して行われる。すなわち、浸漬ノズル15をガイドレール19に沿って、図7(a)の矢印方向に移動させ、浸漬ノズル15の首部を下部ノズル13とクランパー17との間に挿入し、そのまま浸漬ノズル15を下部ノズル13に対して摺動させる。この浸漬ノズル14の摺動によってクランパー16による押圧力が負荷され、浸漬ノズル14が下部ノズル13に押圧されて保持される。
【0029】
このような押圧機構による押圧力を測定する本発明の押圧力測定装置は、図6に示すように、調整板10と、摺動板11と、ロードセル9とからなる。
【0030】
調整板10は、下部ノズル13とクランパー17との間に配置される。この調整板10は、図7に示した浸漬ノズル15と同様にガイドレール19に沿って移動可能である。
【0031】
摺動板11は、調整板10に配置される。摺動板11は、調整板10に対して、上述の浸漬ノズル15の摺動方向には相対的に移動不可能であって、クランパー17による押圧力の発生方向には相対的に移動可能に配置される。具体的には、摺動板11は、調整板10から垂直に立ち上げた一対のガイド部10a,10b間に配置される。この一対のガイド部10a,10bは、摺動方向に間隔を開けて設けられ、その間隔を摺動板11の摺動方向長さとほぼ同一として、摺動板11を一対のガイド部10a,10b間に嵌め込む。これによって、摺動板11は、調整板10に対して、浸漬ノズル15の摺動方向には相対的に移動不可能であって、クランパー17による押圧力の発生方向には相対的に移動可能となる。
【0032】
ロードセル9は、調整板10と摺動板11との間に配置される。そして、調整板10、摺動板11、ロードセル9の総厚みが、図7に示した浸漬ノズル15の首部の総厚みと等しくなるように調整板10あるいは摺動板11の厚みを調整する。
【0033】
上述のようにクランパー17は、浸漬ノズル15を下部ノズル13に対して摺動させることによって押圧力を発生させる。この押圧力を測定するには、調整板10と摺動板11とロードセル9とからなる本実施例の押圧力測定装置を浸漬ノズル15と同様に摺動させる。このとき、調整板10、摺動板11及びロードセル9は一体的に摺動するから、ロードセル9には横方向の力が作用しない。よってクランパー17による押圧力を問題なく測定できる。
【符号の説明】
【0034】
1 タンディッシュ
2 固定金枠(第1の保持体)
3 開閉金枠
4 摺動金枠(第2の保持体)
5 上プレート(第1の部材)
6 下プレート(第2の部材)
7 コイルスプリング
8a,8b 調整鉄板
9 ロードセル
10 調整板
10a,10b ガイド部
11 摺動板
11a,11b ガイド部
12 固定板
13 下部ノズル(第1の部材)
14 ノズル保持具(第1の保持体)
15 浸漬ノズル(第2の部材)
15a メタルケース
16 摺動プレート
17 クランパー(第2の保持体)
18 コイルスプリング
19 ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材に対して第2の部材を摺動させることによって第1及び第2の部材間に押圧力を発生させる押圧機構において、第1及び第2の部材間に発生する押圧力を測定する押圧力測定装置であって、
第1の部材又は第1の部材を保持する第1の保持体と第2の部材を保持する第2の保持体との間に配置された調整板と、
調整板に対して、前記第2の部材の摺動方向には相対的に移動不可能であって押圧力の発生方向には相対的に移動可能に配置された摺動板と、
調整板と摺動板との間に配置されたロードセルとを備え、
前記押圧機構によって調整板と摺動板との間に押圧力を発生させるときに、摺動板が前記第2の部材の摺動方向に相対的に摺動する押圧力測定装置。
【請求項2】
摺動板が、前記第1の保持体又は第2の保持体に固定された固定板の表面上を相対的に摺動する請求項1に記載の押圧力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−214924(P2011−214924A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81950(P2010−81950)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】