説明

抽出装置

【課題】高い収率で所望の物質を得る抽出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】重液と軽液とを混合する複数の混合室と該混合物を重液と軽液とに分離する複数の分離室とは、上位に混合室、下位に分離室が配されるように互いに連接された混合室と分離室との組が上下方向に複数段配列するように配され、供給された軽液は、最下段の混合室にて重液と混合され、下位の分離室にて分離され、管を介して、上方次段の混合室及び分離室に順次供給されて最上段の分離室にて分離された後に排出され、供給された重液は、最上段の混合室にて軽液と混合され、下位の分離室にて分離された後、下方次段の混合室及び分離室に順次供給され、最下段の分離室にて分離された後に排出されるように構成された抽出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、所望の物質を高い収率で得られる、抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、混合されにくい複数種の物質同士、例えば、重液と軽液とを混合し、それにより、所望の物質を得る場合、種々の混合装置が用いられている。
【0003】
かかる混合装置としては、例えば、抽出塔を隔壁で仕切って複数の混合室を配設し、これらの混合室の上方に分離室をそれぞれ設け、分離室と該分離室の下方で、混合室と分離室との少なくとも1組を隔てた混合室とを重液移送管で接続せしめ、混合室中に攪拌翼を装着せしめた塔型混合装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の混合装置を用いて、例えば、抽出対象物質を含む重液と、軽液とを混合し、得られた混合物から、重液と、該抽出対象物質が移された軽液とを分離して、当該抽出対象物質の抽出を行なった場合には、抽出操作が滞る場合があり、かつ抽出対象物質を高い収率で得ることができない場合があるという欠点がある。また、前記特許文献1に記載の混合装置では、前記重液として、固体が分散した分散液、懸濁液、流動性のある固体等を用いた場合には、抽出操作が滞る場合があるという欠点がある。
【特許文献1】特許第3129395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の欠点に鑑みてなされたものであり、例えば、重液と軽液とを混合することにより、所望の物質を得るに際して、高い収率で所望の物質を得ることができる、抽出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の要旨は、重液と軽液とを混合して混合物とする複数の混合室と、該混合物を重液と軽液とに分離する複数の分離室とを有したものであり、供給された重液及び軽液を混合し分離することによって一方の液中に含まれる所定成分を他方の液中に抽出させるように構成されている抽出塔を備えている抽出装置であって、
前記混合室及び分離室は、上位に混合室が配され、下位に分離室が配されるように互いに連接された混合室と分離室との組が上下方向に複数段配列するように配されたものであり、
供給された軽液は、最下段の混合室にて重液と混合され、下位の分離室にて分離された後、管を介して、上方次段の混合室及び分離室に順次供給されて最上段の分離室にて分離された後に排出されるように構成され、
供給された重液は、最上段の混合室にて軽液と混合され、下位の分離室にて分離された後、下方次段の混合室及び分離室に順次供給され、最下段の分離室にて分離された後に排出されるように構成されていることを特徴とする、抽出装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抽出装置によれば、前記混合室及び分離室は、上位に混合室が配され、下位に分離室が配されるように互いに連接された混合室と分離室との組が上下方向に複数段配列するように配され、供給された軽液は、最下段の混合室にて重液と混合され、下位の分離室にて分離された後、管を介して、上方次段の混合室及び分離室に順次供給されて最上段の分離室にて分離された後に排出される構成により、重液と軽液との混合及び分離を複数回行なうことができ、効率よく抽出操作をおこなうことができる。したがって、本発明の抽出装置によれば、例えば、互いに混合されにくい重液と軽液とを用いた場合であっても、高い収率で所望の物質を得ることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、1つの側面では、重液と軽液とを混合して混合物とする複数の混合室と、該混合物を重液と軽液とに分離する複数の分離室とを有したものであり、供給された重液及び軽液を混合し分離することによって一方の液中に含まれる所定成分を他方の液中に抽出させるように構成されている抽出塔を備えている抽出装置であって、
前記混合室及び分離室は、上位に混合室が配され、下位に分離室が配されるように互いに連接された混合室と分離室との組が上下方向に複数段配列するように配されたものであり、
供給された軽液は、最下段の混合室にて重液と混合され、下位の分離室にて分離された後、管を介して、上方次段の混合室及び分離室に順次供給されて最上段の分離室にて分離された後に排出されるように構成され、
供給された重液は、最上段の混合室にて軽液と混合され、下位の分離室にて分離された後、下方次段の混合室及び分離室に順次供給され、最下段の分離室にて分離された後に排出されるように構成されていることを特徴とする、抽出装置に関する。
【0009】
本発明の抽出装置の実施態様の一例としては、例えば、図1に示される抽出装置が挙げられる。図1の抽出装置は、抽出塔1において、混合室6と分離室7との組が、混合室6aと分離室7aとの組、混合室6bと分離室7bとの組、及び混合室6cと分離室7cとの組の3段設けられている、いわゆる「3段抽出装置」の例である。本発明においては、前記混合室6と分離室7との組を、さらに複数段設けることにより、多段抽出装置とすることができる。以下、図1に示される実施態様の抽出装置を一例として挙げ、説明するが、本発明は、かかる実施態様に限定されるものではない。
【0010】
図1の抽出装置は、具体的には、例えば、供給された重液と軽液とを混合して混合物とするための複数の混合室6と、混合室6で得られた混合物を重液と軽液とに分離するための複数の分離室7とを有し、供給された重液及び軽液を混合し分離することによって一方の液中に含まれる所定成分を他方の液中に抽出させるように構成された抽出塔1を備え、
抽出塔1が、重液を排出するための重液排出口2と、重液を供給するための重液供給口3と、軽液を排出するための軽液排出口4と、軽液を供給するための軽液供給口5とを有したものであり、
混合室6a、6b、6cと分離室7a、7b、7cとが、それぞれ対応して隔壁によって仕切られたものであり、
抽出塔1内において、重液供給口3から供給された重液を最上段の混合室6aに供給するための重液供給室8が、最上段の混合室6aの上位に連接して設けられ、
重液供給口3が、抽出塔1の外部から重液供給室8に設けられ、
重液排出口2が、抽出塔1の底部に設けられ、
軽液排出口4が、抽出塔1の上部に設けられ、
抽出塔1の外部から最下段の混合室6cに、軽液供給口5が設けられ、
最上段の混合室6cの下方に分離室7cが位置せしめられ、
一の分離室7と、上方次段の混合室6(すなわち、分離室7の上位に配されている混合室6と他の分離室7との1組を隔てて位置する他の混合室6)とが、該一の分離室7で分離された軽液を移送するための軽液移送管9を介して互いに接続せしめられ、
最上段の分離室7aと、重液供給室8とが、分離室7aで分離された軽液を移送するための軽液移送管9aを介して互いに接続せしめられ、
混合室6の上部の隔壁13及び下部の隔壁14のそれぞれの中央に設けられた開口16(図2、図3)に、重液と軽液とを攪拌して混合するための攪拌翼11を装着するための攪拌軸10が挿通され、
混合室6とその上位に連接する分離室7とが、上位に連接する分離室7で分離された重液を移送するための重液移送部(例えば、図2における重液移送孔15)を介して配設され、
混合室6の下部の隔壁14の中央に設けられた開口16の周縁部に、該混合室6で得られた混合物を下位の分離室7に移送するための混合物移送孔17(図3)が穿設され、かつ
攪拌翼11が攪拌軸10に装着されて混合室6内に設けられたものであり、
ここで、軽液供給口5から供給された軽液は、最下段の混合室6cにて攪拌翼11により重液と混合され、下位の分離室7cにて分離され、軽液移送管9cを介して上方次段の混合室6bに移送され、混合室6bにて攪拌翼11により重液と混合され、その下位の分離室7bにて分離され、ついで、軽液移送管9bを介してさらに上方次段の混合室6aに移送され、混合室6aにて攪拌翼11により重液と混合され、その下位の分離室7aにて分離され、その後、軽液移送管9aを介して重液供給室8に供給され、軽液排出口4から排出されるように構成されており、
重液供給口3から供給された重液は、重液供給室8から最上段の混合室6aに供給され、混合室6aにて攪拌翼11により軽液と混合され、重液移送部(例えば、重液移送孔15)を介して下位の分離室7aに供給され、分離室7aにて分離され、下方次段の混合室6bに供給され、混合室6bにて攪拌翼11により軽液と混合され、重液移送部(例えば、重液移送孔15)を介して下位の分離室7bに供給され、分離室7bにて分離され、下方次段の混合室6cに供給され、混合室6cにて攪拌翼11により軽液と混合され、重液移送部(例えば、重液移送孔15)を介して下位の分離室7cに供給され、分離室7cにて分離され、重液排出口2から排出されるように構成されている。
【0011】
ここで、例えば、前記抽出対象物質を含有した溶液(例えば、スラリー、懸濁液等)から、当該抽出対象物質を抽出するに際して、抽出に用いられる抽出用溶液が、前記抽出対象となる物質を溶解せしめる性質を有する場合、軽液排出口4から排出される溶液を回収することにより、より精製された状態で、抽出対象物質を得ることができる。一方、抽出に用いられる抽出用溶液が、前記抽出対象となる物質以外の物質を溶解せしめる性質を有する場合、重液排出口2から排出される溶液を回収することにより、より精製された状態で、抽出対象物質を得ることができる。なお、本発明においては、重液と軽液との関係が逆の場合であってもよい。
【0012】
前記抽出塔1としては、重液と軽液との混合及び所望の物質の抽出を良好に行なうことができる形状を有するものであればよく、例えば、中空体等が挙げられる。前記抽出塔1の水平面形状としては、例えば、真円、楕円等の円等が挙げられる。なお、本明細書において、前記水平面形状は、抽出塔1の長軸線を水平面に対して垂直になるように設置した場合に、水平面と平行になる断面の形状を意味する。
【0013】
前記抽出塔1の材質は、物質の混合及び所望の物質の抽出に適した材質であればよく、特に限定されないが、例えば、ステンレス等が挙げられる。なお、前記抽出塔1は、その内部及び/又は外部が、適切な被覆材により被覆されたものであってもよい。
【0014】
前記抽出塔1は、重液と軽液とを混合して混合物とする複数の混合室6と、該混合物を重液と軽液とに分離する複数の分離室7とを有する。また、前記抽出塔1は、重液排出口2と、重液供給口3と、軽液排出口4と、軽液供給口5とを備えたものである。
【0015】
前記抽出塔1は、当該抽出塔1の長軸線に直交した隔壁によって仕切られた複数の室、すなわち、隔壁によって仕切られた複数の混合室6及び複数の分離室7と、最上段の混合室6aの上位に配した重液供給室8とから実質的に構成される。より具体的には、抽出塔1内には、上位から順に、重液供給室8と、混合室6aと、分離室7aと、混合室6bと、分離室7bと、混合室6cと、分離室7cとが設けられている。なお、本明細書において、混合室6の下部の障壁、すなわち、混合室6とその下方に連接する分離室7とを仕切る隔壁を、「下部隔壁」(下部隔壁14)と称し、混合室の上部の障壁、すなわち、混合室6とその上位に連接する分離室7とを仕切る隔壁を「上部隔壁」(上部隔壁13)と称する場合がある。
【0016】
重液供給室8と混合室6aとは、上部隔壁13aにより仕切られ、混合室6aと分離室7bとは、下部隔壁14により仕切られている。また、分離室7bと混合室6cとは、上部隔壁13bにより仕切られ、混合室6cと分離室7cとは、下部隔壁14により仕切られている。
【0017】
前記混合室6は、重液と軽液とを混合するための領域である。
【0018】
また、前記分離室7は、前記混合室6で得られた混合物を、重液と軽液とに分離するための領域である。
【0019】
本明細書においては、説明の便宜上、混合室6とその下方の連接する分離室7とを1組として表す。
【0020】
混合室6と分離室7とからなる組の数は、少なくとも1組であり、本発明の抽出装置の使用形態に応じて、適宜設定されうる。
【0021】
分離室7aと重液供給室8とは、軽液移送管9aで互いに接続されている。また、分離室7bと混合室6aとは、軽液移送管9bで、分離室7cと混合室6bとは、軽液移送管9cで互いに接続されている。
【0022】
混合室6a、6b及び6cそれぞれには、攪拌軸10に装着された状態で、攪拌翼11が設けられている。
【0023】
前記攪拌軸10は、抽出塔1の水平面の中央から、重液供給室8の中央と、混合室6aの中央と、分離室7aの中央と、混合室6bの中央と、分離室7bの中央と、混合室6cの中央とに貫設されている。ここで、攪拌軸10と、各隔壁とは、接触していてもよく、接触していなくてもよい。攪拌軸10が各隔壁に接触している場合、磨耗により生じた物質が混入しないように構成され、攪拌軸10が各隔壁に接触しない場合には、攪拌軸10と各隔壁との隙間が適度に保たれるように構成されることが望ましい。
【0024】
また、軽液排出口4の下方に位置するように軽液移送管9aが設けられ、重液供給室8に分離室7aからの軽液の供給が可能な構造となっている。これにより、重液供給室8が、分離室としての役割を兼ねることができ、重液が軽液に同伴して流出することが防がれうる。
【0025】
さらに、抽出塔1の外部から重液供給室8に、軽液排出口4の下方、かつ軽液移送管9aが設けられた位置より下方に位置するように重液供給口3が貫設され、抽出塔1の外部から重液供給室8に、重液を供給できる構造になっている。これにより、重液と軽液との間の比重差が小さい場合であっても、重液が軽液排出口4から流出することが妨げられうる。
【0026】
混合室6b及び混合室6cそれぞれの上部隔壁13bでは、重液移送部として、分離室7a及び分離室7bで混合物を重液と軽液とに分離するに十分な滞留時間を維持できるような構造となる孔径及び数の重液移送孔15(図2)が設けられている。重液移送部15は、中央開口16の周囲に設けられている。なお、混合室6aの上部隔壁13aでは、重液移送部として、上部隔壁13bと同様に重液移送孔15が設けられている。
【0027】
混合室6a、混合室6b及び混合室6cそれぞれの下部隔壁14では、図3に示されるように、重液移送部として、混合物移送孔17が、中央開口16の周囲に設けられている。なお、混合物移送孔17の孔径を、重液移送孔15の孔径よりもが大きくすることにより、軽液と重液との混合・分離等の操作をより円滑に進めることが可能になる。
【0028】
混合室6cには、抽出塔1の外部から、軽液供給口5が貫設されている。これにより、軽液は、混合室6cにおいて、上位の分離室7b等から流下してきた重液と混合される。その後、下方の分離層7cでは、再度、軽液と重液とが分離されることとなる。
【0029】
分離室7a、7b及び7cそれぞれの上位には、分離帯12が設けられている。これにより、重液が軽液移送管9a、9b及び9cに流入することを防ぐことができる。
【0030】
分離室7cでは、重液排出口2の方向に向かって、途中までの部分は、他の分離室と同一の内径となるようにし、途中より、徐々に内径を小さくし、底部に重液排出口2を設けている。これにより、重液を効率よく排出させることができる。
【0031】
前記重液排出口2は、抽出塔1内から重液を排出するためのものである。かかる重液排出口2は、前記抽出塔1の底部に設けられる。
【0032】
また、重液供給口3は、抽出塔1内に重液を供給するためのものである。前記重液供給口は、抽出塔1の外部から重液供給室8に貫設される。具体的には、例えば、重液は、重液供給口3から、抽出塔1内の重液供給室8に供給され、最下段の分離室7cから重液排出口2を介して抽出塔1の外部に排出される。
【0033】
前記軽液排出口4は、抽出塔1から軽液を排出するためのものである。軽液排出口4は、前記抽出塔の上部に設けられる。なお、前記軽液排出口4は、好ましくは、前記重液供給口3よりも上方に設けられていることが望ましい。かかる配置を採用することにより、軽液を効率よく排出することができる点で有利である。また、軽液供給口5は、抽出塔1に軽液を供給するためのものである。軽液供給口は、抽出塔の外部から最下段の混合室に貫設される。具体的には、例えば、軽液は、軽液供給口3から、抽出塔1内の最下段の混合室6cに供給され、重液供給室8から軽液排出口4を介して抽出塔1の外部に排出される。
【0034】
本発明の抽出装置は、上位に混合室が配され、下位に分離室が配されるように互いに連接された混合室と分離室との組が上下方向に複数段配列するように配されていることに1つの大きな特徴がある。すなわち、本発明の抽出装置において、混合室6と分離室7とからなる組が複数段配列されている場合、前記抽出塔内において、上方から順に、混合室6a、分離室7a、混合室6b、分離室7b、混合室6c、分離室7cのように配置されることとなる。
【0035】
したがって、本発明の抽出装置においては、例えば、重液と軽液との混合物は、下向きの流れで混合室6から分離室7に移送される。
【0036】
前記重液供給室8は、重液を最上段の混合室に供給するための領域である。なお、かかる重液供給室8には、抽出塔1の外部から重液供給口3を介して重液が供給される。
【0037】
前記混合室6とその上位に連接する分離室7とは、該混合室6に重液を送るための重液移送部を介して配設される。
【0038】
前記重液移送部としては、前記混合室の上部の隔壁の攪拌軸挿通部の周縁部に穿設された重液移送孔15、又は該混合室とその上位に連接する分離室とに接続された重液移送管が挙げられる。
【0039】
前記重液移送孔15は、重液を混合室6に移送するための孔である。前記重液移送孔15の数は、少なくとも1つであり、重液の物性、本発明の抽出装置による処理量、所望の抽出速度等に応じて適宜設定されうる。また、前記重液移送孔15の大きさも重液の物性、本発明の抽出装置による処理量、所望の抽出速度等に応じて適宜設定されうる。
【0040】
前記重液移送管は、重液を混合室に移送するための管である。重液移送管の材質としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス等が挙げられる。また、前記重液移送管には、逆流を防止すべく、重液の移送方向を定められた方向に実質的に維持するための逆支弁を備えていてもよい。
【0041】
前記分離室7の上部には、分離帯12が設けられうる。前記分離帯12は、混合物からの重液と軽液との分離を良好に維持するためのものである。かかる分離帯12を設けることにより、重液及び軽液それぞれの流れをより一層良好に維持することができる点で有利である。前記分離帯12は、後述する軽液移送管9の配置に対して、好ましくは、前記軽液移送管9よりも下方になるように配され、該軽液移送管9の内径分程度の距離を移送管接続部から離すように配されることが望ましい。前記分離帯12は、前記分離室7の上部に設けられた隔壁に設けられうる。
【0042】
前記攪拌翼11としては、重液と軽液との混合を十分に行なえるものであればよい。また、前記攪拌翼11は、より高い抽出効率を得る観点から、好ましくは、上昇流を実質的に生じない攪拌翼である。前記攪拌翼と11しては、具体的には、例えば、平羽、ディスクタービン等が挙げられる。前記攪拌翼11の大きさは、回転径として、混合室6の内径(直径)に対して、攪拌翼の直径が2/3〜4/5程度であることが望ましい。また、混合室6内において、攪拌翼11の設置高さは、当該攪拌翼11の回転中心の位置が、抽出塔の水平面の中心と同じであり、攪拌翼11の上部が軽液移送管の接続部よりも下方に位置する高さであることが望ましい。
【0043】
前記隔壁は、抽出塔の長軸線に直交した水平面形状と実質的に同じである。
【0044】
かかる隔壁の周縁部と、前記抽出塔1の周縁部とは、例えば、溶接等により、液体等の物質が漏出しないように封じられる。
【0045】
前記上部隔壁13及び下部隔壁14のそれぞれの中央には、中央開口16が設けられる。前記中央開口16には、攪拌軸10が挿通される。前記攪拌軸10は、例えば、抽出塔1の上位に配置されうる動力源からの回転力を伝達する。なお、本発明においては、前記中央開口16に中空筒体を設け、かかる中空筒体の内部に、攪拌軸10を挿通させればよい。前記中央開口16の形状及び中空筒体の水平面形状は、同一であり互いに対応していればよく、その形状の種類は、攪拌軸の回転に適したものであればよい。
【0046】
前記下部隔壁14には、該下部隔壁14の中央に設けられた中央開口16の周縁部に混合物移送孔17が穿設される。
【0047】
前記混合物移送孔17は、混合室6で得られた混合物を、その下位に連接された分離室7に移送するための孔である。前記混合物移送孔17の大きさは、前記溶液の物性、本発明の抽出装置による処理量、所望の抽出速度等に応じて適宜設定されうる。
【0048】
本発明の抽出装置において、一の分離室と、該分離室の上位の混合室と他の分離室とからなる少なくとも1組を隔てて位置する他の混合室とは、軽液移送管を介して互いに接続せしめられる。
【0049】
また、本発明の抽出装置は、一の分離室と、該分離室の上位の混合室と他の分離室とからなる少なくとも1組を隔てて位置する他の混合室とが、軽液移送管を介して互いに接続されていることにも1つの大きな特徴がある。
【0050】
したがって、本発明の抽出装置においては、重液と軽液とを用いた場合にあっては、分離室で分離された軽液が、当該軽液移送管を通して上部の混合室に供給される。
【0051】
これにより、本発明の抽出装置によれば、抽出操作に際して、重液及び軽液それぞれの流れが良好に維持されるため、抽出プロセスが実質的に滞ることなく進行するという優れた効果を発揮する。そのため、本発明の抽出装置は、高い操作性を発揮する。また、本発明の抽出装置によれば、高い収率で所望の物質を得ることができるという優れた効果を発揮する。
【0052】
前記軽液移送管9は、前記一の分離室7から、上方次段の混合室6、すなわち、一の分離室7の上位に連接された混合室6と他の分離室7とからなる少なくとも1組を隔てて位置する他の混合室6へ、軽液を移送するための管である。前記軽液移送管9は、軽液の逆流を防止する観点から、軽液の移送方向を定められた方向に実質的に維持するための逆支弁を備えたものが好ましい。また、前記軽液移送管9は、耐圧性の観点から、内径が、内圧を適切に維持し、かつ重液の流れを良好に維持できるように十分に大きいものであることが望ましい。
【0053】
最上段の混合室6aの上位には、重液供給室8が設けられる。かかる重液供給室8には、抽出塔1の外部から、重液供給口3が貫設される。また、前記重液供給室8と最上段の分離室7aとは、軽液移送管9aを介して互いに接続せしめられる。
【0054】
本発明の抽出装置は、抽出塔の内部の温度を制御するための温度制御用ジャケットを抽出塔1の外周面に備えたていることが好ましい。かかる温度制御用ジャケットを備えることにより、混合室における重液と軽液との混合時の温度を制御することができる。なお、本明細書において、「温度を制御する」とは、加熱及び冷却のいずれをも含む概念を意味する。前記温度制御用ジャケットは、抽出塔の外周面全体を覆うものであってもよく、部分的に覆うものであってもよい。
【0055】
本発明の抽出装置の使用法としては、目的となる物質(抽出対象物質)を含有した溶液からの当該物質の抽出等が挙げられる。
【0056】
本発明の抽出装置を用いる場合、重液及び軽液は、混合室で十分に混合が行なわれ、所定の流れとなるような速度で供給されることが望ましい。
【0057】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
図1に示される抽出装置において、抽出塔1の内径、すなわち、重液供給室8、混合室6a、分離室7a、混合室6b、分離室7b及び混合室6cそれぞれの内径は、300mmとし、抽出塔の高さは、3600mmとし、混合室と分離室とからなる組を7組備えた抽出装置を製造した。かかる抽出装置を用い、抽出操作を行なった。
【0059】
重液として、23000ppmの抽出対象物質(ショ糖脂肪酸エステル)とジメチルスルホキシドとを含有した水溶液を用い、軽液として、水を用いた。
【0060】
重液供給口3からの重液の供給量は、17.0kg/時間に設定し、軽液供給口5からの軽液の供給量は、34.0kg/時間に設定した。なお、上部隔壁13a及び上部隔壁13bそれぞれにおける重液移送孔15の孔径(内径)を、20mmとし、下部隔壁14における混合物移送孔17の孔径(内径)を、30mmとすることにより、重液排出口2からの重液の排出量を、16.7kg/時間とし、軽液排出口4からの軽液の排出量を、34.3kg/時間とした。重液及び軽液の供給から、15時間後、軽液排出口4からの抽出対象物質の量及び各分離室における抽出対象物質の量をそれぞれ測定した。
【0061】
その結果、前記抽出装置を用いることにより、99.9%の抽出率で抽出対象物質を得ることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、高い収率で、抽出物を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の抽出装置の一実施態様を示す概略説明図である。
【図2】図2は、上部隔壁の一例を示す概略説明図である。
【図3】図3は、下部隔壁の一例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 抽出塔
2 重液排出口
3 重液供給口
4 軽液排出口
5 軽液供給口
6 混合室
7 分離室
8 重液供給室
9 軽液移送管
10 攪拌軸
11 攪拌翼
12 分離帯
13 上部隔壁
14 下部隔壁
15 重液移送孔
16 中央開口
17 混合物移送孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重液と軽液とを混合して混合物とする複数の混合室と、該混合物を重液と軽液とに分離する複数の分離室とを有してなり、供給された重液及び軽液を混合し分離することによって一方の液中に含まれる所定成分を他方の液中に抽出させるように構成されてなる抽出塔を備えてなる抽出装置であって、
前記混合室及び分離室は、上位に混合室が配され、下位に分離室が配されるように互いに連接された混合室と分離室との組が上下方向に複数段配列するように配されてなり、
供給された軽液は、最下段の混合室にて重液と混合され、下位の分離室にて分離された後、管を介して、上方次段の混合室及び分離室に順次供給されて最上段の分離室にて分離された後に排出されるように構成され、
供給された重液は、最上段の混合室にて軽液と混合され、下位の分離室にて分離された後、下方次段の混合室及び分離室に順次供給され、最下段の分離室にて分離された後に排出されるように構成されてなることを特徴とする、抽出装置。
【請求項2】
該混合室に、上昇流を実質的に生じないものである重液と軽液とを混合して混合物とするための攪拌翼が設けられてなる、請求項1記載の抽出装置。
【請求項3】
該抽出塔の外周面に、該抽出塔の内部の温度を制御するための温度制御用ジャケットを備えてなる、請求項1又は2記載の抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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