説明

担架転換型鞄

【課題】 消防団員が現場に持参する必要備品を収容する鞄であって、且つこれが担架にもなり得る担架転換型鞄を提供することを目的とする。
【解決手段】 担架転換型鞄10は、底面部11の各辺から前面部13,後面部12,左側面部14,右側面部15が連なって立設し、更に後面部12に蓋(上面部16,垂れ部17)が連接されており、内部に消防団用備品を収納できる。スライドファスナー26L,26Rを開けて展開し、上記面部13,11,12,16,17を長く連ねた形とする。ループ23L,23R,22L,22R,21L,21Rにそれぞれトビ30を挿通することで、担架として利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鞄に関するものであり、殊に災害等の救援活動の際に有用な担架転換型鞄に関するものである。
【背景技術】
【0002】
市町村の消防機関の一つとして消防団が設置されており、消火活動の他、大規模災害発生時の救助・救出活動等を行っている。消防団員は、普段は各自の職業に就き、火災等の際に急きょ出動するものであり、予てから緊急出動に備えて各種備品をそれぞれの自宅等に準備している。この備品としては、ヘルメット,活動服,防火衣,雨合羽,手袋,ゴーグル,安全帯,ゴム長靴,編上安全靴,簡易救急セット,マルチナイフ,水筒,懐中電灯,救助ロープ,警笛,信号灯等があり、予めこれらをまとめて鞄に詰めておき、緊急出動時にその鞄一つを持参するだけで済む様にすることが推奨されている。
【0003】
ところで災害現場ではしばしば負傷者が出ることがあり、この負傷者を担架によって搬送することが行われる。
【0004】
担架としては、2本の長い棒(或いはパイプ)の間に布地を張り付けたものが一般的であるが、この他、キャスター付き脚部が折畳み自在に設けられたもの(ストレッチャー)等も知られている。また特許文献1には、身体防護の目的で使用する耐炎性シート(該耐炎性シートを羽織って火災の熱等から身を守る)を利用し、これに形成された通し孔に竹竿を通して担架として兼用することも提案されている。
【特許文献1】特開平10−248950号公報(特に段落〔0009〕,〔0017〕,〔0037〕、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の様に消防団活動に必要な各種備品をまとめて一つの鞄に収納しておくことが推奨されているものの、上記備品には様々なものがあって嵩張ることから、市販されている鞄には適当なものがあまりなく、消防団用備品専用の鞄が要望されている。
【0006】
他方、災害時には担架を含めて様々なものが必要とされるが、緊急出動に際してあらゆる物を持参することは困難であり、最小限必要な備品にとどめざるを得ない。
【0007】
そこで本発明は、消防団員が現場に持参する必要備品を収容する鞄であって、且つこれが担架にもなり得る担架転換型鞄を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る担架転換型鞄は、少なくとも底面部,前面部,後面部,左側面部,及び右側面部を備えた収納用鞄であって、これら面部間の稜辺部の一部または全部に開閉自在ファスナーを設けることによって、(1)前記前面部〜前記底面部〜前記後面部が連接して鞄素材を長く平面状に展開自在であるか、(2)前記左側面部〜前記後面部か前記底面部か前記前面部のいずれか〜前記右側面部が連接して鞄素材を長く平面状に展開自在に構成され、前記長く展開された鞄素材の長手方向の両辺部分或いはその近傍に沿って、それぞれ連続的または断続的に長尺棒挿通用のループが設けられたものであることを特徴とする。
【0009】
つまり収納用鞄でありながらも、該鞄の少なくとも3つの面部を長く連接させたものとしつつ一部の稜辺を分離して平面状に展開自在とし、且つ展開状態のときに長手方向となる両辺部分(或いはその近傍)に沿って、長尺棒挿通用ループを設けたものである。そして該鞄を展開したときに、このループに長尺の棒状物を挿通することで、担架として使用できるものである。
【0010】
該担架転換型鞄は鞄形状(立体的形状)のときは、消防団活動に必要な各種備品を収納することができる。そして消防団員は必ずこの備品を現場に持参するから、これらを収容する担架転換型鞄も現場に持ち込まれることになる。また消防団員の使用する消防車に少なくとも2本のトビが必ず設置されているので、このトビを上記ループに通す棒状物として使用することができる。従ってわざわざ専用の担架を現場に持参しなくても、上記担架転換型鞄を簡易な担架として用いることができ、便利である。
【0011】
尚上記特許文献1に記載の身体防護シートの場合、これを担架として用いることができると共に、梱包材としても利用することができるものの、この梱包材としての利用法は風呂敷の様に1枚のシートで包む手法であり、本発明の如く鞄となるものではない。加えて本発明の担架転換型鞄と違って、上記身体防護シートは消防団員が必ず持参するという訳ではなく、意図的に持参する必要があり、結局のところ従来の様に別途担架を持参することと変わりがないものである。
【0012】
本発明において上述の、少なくとも3つの面部を連接して鞄素材を長くする態様について詳しく述べると、(1)前面部〜底面部〜後面部と連接したもの、(2)として(2-1)左側面部〜後面部〜右側面部と連接したもの、(2-2)左側面部〜底面部〜右側面部と連接したもの、(2-3)前記左側面部〜前記前面部〜前記右側面部と連接したもの、更に(2-4)左側面部〜後面部〜右側面部〜前面部(或いは後面部〜右側面部〜前面部〜左側面部、右側面部〜前面部〜左側面部〜後面部、前面部〜左側面部〜後面部〜右側面部)と連接したものが挙げられる。
【0013】
また上記開閉自在ファスナーとしては、スライドファスナーや面ファスナーの他、複数の鳩目ホックを線状に並べたもの等が挙げられる。
【0014】
上記ループとしては長く展開された鞄素材の長手方向の全範囲に必ずしも設ける必要はなく、その一部に設ける様にしても良い。例えば前面部〜底面部〜後面部と連接したものの場合では、中央に位置する底面部にはループを設けずに、端側に位置する前面部と後面部にループを設ける様にしても良い。この様に少なくとも端側の位置にループを設けることで、担架を両端でしっかりと支えることができる。尚この場合にあって、ループを底面部に設けても勿論良く、よりしっかりと支えることが可能となる。
【0015】
上記ループは連続的なもの、断続的なもののいずれでも良いが、断続的なものであることがより好ましい。例えば展開時の長手方向全体に一続きのループとして形成されたものの場合は、棒状物を挿通するにあたってループの途中で引っ掛かって通し辛いこともあるが、上記の様に断続的なものであれば、比較的短いループの一つずつに通すという手法となるから、通し易い。
【0016】
加えて本発明における前記担架転換型鞄はその蓋を構成する上面部を備え、該上面部が前記後面部或いは前記前面部に連接されたものであり、前記上面部の左右の辺部分或いはその近傍に沿って、それぞれ連続的または断続的に長尺棒挿通用のループが設けられたものであることが好ましい。或いは前記担架転換型鞄はその蓋を構成する上面部及び垂れ部を備え、前記上面部が前記後面部或いは前記前面部に連接されたものであり、前記垂れ部が前記上面部に連接され、且つ前記前面部或いは前記後面部の少なくとも一部を覆うものであり、前記上面部及び/または前記垂れ部における左右の辺部分或いはその近傍に沿って、それぞれ連続的または断続的に長尺棒挿通用のループが設けられたものであることが好ましい。
【0017】
この様に上面部、或いはこれと垂れ部が連接したものでは、前面部〜底面部〜後面部と連接して展開したときに、上面部,垂れ部が連なった分、長いものとなり、担架とした際に比較的身長の高い人も運ぶことが可能となる。尤も蓋のないタイプの担架転換型鞄であっても、前面部,後面部として縦に長いものを用いる(鞄の高さを高くする)こと等によって、展開状態のときに長いものとすることができるが、鞄容量が必要以上に大きくなる懸念がある。この点において蓋のあるタイプ(上面部,垂れ部を備えたもの)は鞄容量を大きくすることなく、長い担架とすることができる。
【0018】
また本発明に係る担架転換型鞄においては、展開時に、前記左側面部と前記右側面部が対向した位置関係で前記底面部或いは前記前面部,前記後面部のいずれかにそれぞれ連接した状態となるものであり、前記左側面部と前記右側面部に一対の着脱部材を備え、該着脱部材によって環状に連結されるものであることが好ましい。担架とした際に、上記着脱部材によって担架に載置された人の胴回り等を止めることができ、安定性が増す。
【0019】
更に前記着脱部材が、帯状部とその一方端に設けられた着脱ユニットとを備えるものであって、前記左側面部と前記右側面部に前記帯状部の他方端がそれぞれ取り付けられたものであることが好ましい。この様に帯状部で長くなった着脱部材であれば、鞄状態のときに、離れて位置する左側面部と右側面部を着脱部材によって架け渡すことができ、これにより鞄の内包物を保持することができる。加えて上記帯状部に長さ調節機構を設けたり、或いは上記着脱ユニットとして着脱位置調整可能なもの(例えば一対の面ファスナーを用いた場合、係合位置をずらすことができる)を用いたりすることにより、担架に載置された人の身体にフィットさせて着脱部材を連結させることが可能である。
【0020】
左・右側面部への上記着脱部材の取付位置としては、左側面部,右側面部のそれぞれ開放端側(展開状態のときの端側)、上記底面部(或いは前面部,後面部)との連接辺部分近傍、左側面部,右側面部の中央部分等のいずれの位置であっても良い。
【0021】
また前記担架転換型鞄が、前記後面部に連接された前記上面部を備えるか、或いは前記後面部に連接された前記上面部及びこの上面部に連接された前記垂れ部を備えたものにおいて、展開時に、前記後面部に前記左側面部と前記右側面部が連接した状態となるものであることが好ましい。上記の如く上面部、或いは上面部と垂れ部を備えたものの場合は、展開時において、担架に載置された人の腰の辺りが後面部の位置にくることから、後面部に連なった左・右側面部を着脱部材で連結することにより、身体のほぼ中心部分が止められて、安定性が良い。
【0022】
更に本発明において、前記垂れ部の内部または内側面にクッション材が添設されたものであることが好ましい。担架とした際、垂れ部の方を頭側とした場合に、上記クッション材が枕の役目を果たし、載置された人にとって比較的楽である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る担架転換型鞄によれば、消防団員が現場に持参する各種の備品を一纏めに収容する鞄としての役目を果たし、且つこれを展開状態とすれば、担架として利用することができる。そして消防団の必要備品を収納した上記担架転換型鞄は現場に持ち込まれることになるので、別途担架を持参しなくても、緊急に担架が必要となった場合にその要請に応えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<実施形態1>
図1,2は本発明の実施形態1に係る担架転換型鞄10を示す図であり、図1は鞄状態としたときの斜視図であって、その(a)は外観図、(b)は蓋を開けて中を見た図であり、図2は平面状に展開したときの平面図である。
【0025】
この担架転換型鞄10は、図1に示す様に矩形の底面部11の各辺からそれぞれ矩形の前面部13,後面部12,左側面部14,右側面部15が連なって立設して、この内部に各種物品を収納できる様になっている。そしてこの鞄開口(前面部13,左側面部14,後面部12,右側面部15の各上辺13a,14a,12a,15aで形成される鞄開口)を覆う上面部16が後面部12の上辺12aから連なり、続いてこの上面部16の前辺16aから垂れ部17が連なって蓋ができる様になっている。垂れ部17の先端には留め部材18が設けられており、蓋部分(上面部16及び垂れ部17)を前面部13の外側面に留めることができる。
【0026】
鞄本体を構成する上記底面部11,前面部13,後面部12,左側面部14,右側面部15,上面部16及び垂れ部17の素材には、例えばポリアミド(ナイロン)製布地が用いられている。この様に鞄本体の素材には十分な強度があり、また汚れが付着し難いものを用いるのが良い。また垂れ部17は二重になった布の間に発泡ポリウレタンシート等のクッション材が挟まれている。
【0027】
上面部16にはその前後の辺16a,12a及び右辺16cに沿う様にその近傍に切れ目29a,29b,29cが設けられ、このうちの前後辺16a,12a近傍の切れ目29a,29bにはスライドファスナー19が取り付けられている。また両スライドファスナー19のスライダー19aを繋げる様に引張紐32が取り付けられている。これらのスライドファスナー19を開けることで、上面部16の中央部分が切れ目29a,29b,29cに沿って開き、内容物を簡易的に取り出せる様になっている。
【0028】
更に後面部12の上辺12aには取っ手(把手)31が取り付けられ、この取っ手31により鞄10を持てる様になっている。加えて左側面部14及び右側面部15のそれぞれ上辺14a,15aには、肩掛け紐(図示せず)を取り付ける為のアタッチメント33がそれぞれ設けられている。尚図1では取っ手31を1つ設けたものを示したが、2つ以上設けても勿論良く(例えば後述の図7に示す例の様に後面部及び前面部13の上辺にそれぞれ1つずつ(合計2つ)設ける等)、取っ手31をいくつ、いずれの様に設けても良い。
【0029】
左側面部14及び右側面部15の内側面には、やや後面部12との連接辺(稜辺部)12b,12c寄りであって高さ方向の中程に、それぞれ着脱部材24の帯状部24aの一方端が縫着されている。これら帯状部24aの他方端には一対の面ファスナー(鈎,ループ型係合部材24b1,24b2)(着脱ユニット)がそれぞれ取り付けられており、左側面部14側の面ファスナーの鈎型係合部材24b1と右側面部15側の面ファスナーのループ型係合部材24b2を係脱自在に係合することができる。
【0030】
図2に示す様に、前面部13,後面部12の内面側において、それぞれ左右の連接辺(稜辺部)13b,13c,12b,12cの近傍には、長尺棒挿通用のループ23L,23R,22L,22Rがそれぞれ設けられており、また上面部16と垂れ部17の内面側における左右の辺16b,16c,17b,17cの近傍には、これら上面部16から垂れ部17にかけて一続きの長尺棒挿通用のループ21L,21Rが設けられている。
【0031】
前面部13と左側面部14の連接辺(稜辺部)13bから底面部11と左側面部14の連接辺(稜辺部)11bにかけて、及び前面部13と右側面部15の連接辺(稜辺部)13cから底面部11と右側面部15の連接辺(稜辺部)11cにかけて、それぞれスライドファスナー26L,26Rが設けられている。尚図中26aはこのスライドファスナー26L,26Rのスライダーである。
【0032】
前面部13と底面部11の連接辺(稜辺部)11d、底面部11と後面部12の連接辺(稜辺部)12d、後面部12と上面部16の連接辺(稜辺部)12a、上面部16と垂れ部17の連接辺(稜辺部)16aは、それぞれ分離できない様に繋がっており、展開時にこれら前面部13,底面部11,後面部12,上面部16,垂れ部17が直線状に長く連なる様になる。また後面部12と左側面部14の連接辺(稜辺部)12b、及び後面部12と右側面部15の連接辺(稜辺部)12cも、それぞれ分離できない様に繋がっている。
【0033】
尚、上記担架転換型鞄10における各部のサイズの一例について述べると、前面部13,後面部12の縦長さ(鞄状態のときの高さ)T:43cm、底面部11,前面部13,後面部12,上面部16,垂れ部17の幅(鞄状態のときの横幅)W:63cm、底面部11,上面部16,左側面部14,右側面部15の奥行き幅(鞄状態のときの奥行き)S:25cm、垂れ部17の長さ(蓋の前垂れ長さ)U:17cmで、展開状態のときの長手方向の長さV:153cmであり、ループ23L,23Rの長さL3:39cm、ループ22L,22Rの長さL2:33cm、ループ21L,21Rの長さL1:39cmのものが挙げられる。
【0034】
次にこの実施形態1の担架転換型鞄10の使用法について説明する。
【0035】
鞄として用いるにあたっては、図1に示す様に左右のスライドファスナー26L,26Rを閉めて直方体型(尚、該直方体型には角部分が丸くなったもの等も含まれる)の鞄形状にする。このとき、左側面部14側の面ファスナーの鈎型係合部材24b1と右側面部15側の面ファスナーのループ型係合部材24b2を係合することによって、鞄内の中程において左側面部14から右側面部15に着脱部材24が架け渡され、これによって内容物を支えることができる(図1(b))。
【0036】
担架として用いるにあたっては、留め部材18を外して蓋(上面部16及び垂れ部17)を開け、左右のスライドファスナー26L,26Rを開けて平面状に展開する。これにより図2に示す様に、前面部13〜底面部11〜後面部12〜上面部16〜垂れ部17が、直線状に長く連なり、また後面部12から左・右側面部14,15が連なった状態となる。そして左右のループ23L,23R,22L,22R,21L,21Rにそれぞれトビ30を挿通する(図3:展開状態の担架転換型鞄10にトビ30を取り付けた様子を表す上面図)。このとき、図に示す様に左右のループがそれぞれ3つに分離し(ループ23L,22L,21L、ループ22R,23R,21R)、且つ各々離れて位置しているから、一続きのループの場合と違って、トビ(長尺棒)30を挿通し易い。尚図3中、36はトビ30の棒部、34はトビ30の鎌部、35は鎌部34のカバーである。
【0037】
以上の様にして担架の形となり、人を乗せて運ぶことができる。
【0038】
尚トビ30の長さは一般に182cmであり、十分に長いので上述の如くループに通す長尺棒として利用できる。しかもトビ30は消防団員の消防車に必ず2本以上設置されているから、別途長尺棒を準備する必要もない。
【0039】
図4は担架転換型鞄10を担架の状態として、人40を乗せた様子を表す上面図である。人40が垂れ部17側を頭にして横臥したとき、人40の腰部分に着脱部材24が位置し、この着脱部材24を係合する(左側面部14側の面ファスナーの鈎型係合部材24b1と右側面部15側の面ファスナーのループ型係合部材24b2を係合する)ことによって、人40を腰の位置でしっかりと保持することができ、安定性が増す。
【0040】
尚面ファスナーのループ型係合部材24b2として長いものを用いることで、これに鈎型係合部材24b1を係合させるにあたり、その係合位置を調整して人40の身体に着脱部材24をフィットさせることができる。
【0041】
また垂れ部17にはクッション材が添設されているから、担架に乗った人40にとって枕をあてがった様になり、楽である。
【0042】
以上の様に担架転換型鞄10によれば、鞄としての用途の他、簡易な担架としても使用することができる。そしてこの担架転換型鞄10に消防団員が持参する備品を収容することにすれば、消防団員によって該担架転換型鞄10も現場に持ち込まれることになり、意識的に持参することなく、適宜担架として使用できて便利である。
【0043】
<実施形態2>
図5は本発明の実施形態2に係る担架転換型鞄20を示す図であって、これを平面状に展開したときの平面図である。尚図5において、ループに通したトビ30を併せて示している。また図1〜3と同じ構成部分については同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0044】
担架転換型鞄20の前面部13,底面部11,後面部12,上面部16,垂れ部17のそれぞれ左右の辺13b,13c,11b,11c,12b,12c,16b,16c,17b,17cの近傍には、上記実施形態1に比べて短めの長尺棒挿通用ループ43L,43R,41L,41R,42L,42R,46L,46R,47L,47Rがそれぞれ設けられている。また左側面部14及び右側面部15の開放端側辺14b,15bの近傍に着脱部材44が取り付けられている。該着脱部材44にはそれぞれ一対の面ファスナー44b1,44b2が設けられている。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0045】
本実施形態2の担架転換型鞄20を鞄として使用する際には、スライドファスナー26L,26Rを閉じて直方体型鞄とする。
【0046】
担架転換型鞄20を担架とする場合には、スライドファスナー26L,26Rを開けて展開状態とし、上記ループ43L,43R,41L,41R,42L,42R,46L,46R,47L,47Rにそれぞれトビ30を通す。そして人を乗せ、左側面部14と右側面部15を閉じる様にして面ファスナー44b1,44b2を係合し、載置された人を保持する。
【0047】
本実施形態2においても担架転換型鞄20を消防団員が持参する備品収容用の鞄として用いれば、該担架転換型鞄20が現場に持ち込まれることになり、適宜簡易な担架として使用できて便利である。
【0048】
<実施形態3,4>
図6,7は本発明の実施形態3,4に係る担架転換型鞄50,60を示す図であって、鞄形状にしたときの斜視図である。尚図1〜3と同じ構成部分については同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0049】
実施形態3の担架転換型鞄50(図6)は、上記実施形態1とは異なって垂れ部17がないものであり、上面部16のみで蓋がされている。そしてこの蓋(上面部16)を前面部13に止める為のスライドファスナー56が設けられている。
【0050】
実施形態4の担架転換型鞄60(図7)は蓋がなく、上方が開口したものとなっている。また前面部13と後面部12の上辺13a,12aのそれぞれに取っ手31が取り付けられている。
【0051】
これら担架転換型鞄50,60においても、スライドファスナー26L,26Rを閉じているときには、上記消防団用備品を収納する鞄として用いることができ、そしてスライドファスナー26L,26Rを開けることで平面状に展開できて、鞄内側面に設けられた長尺棒挿通用のループにトビ等を挿通することにより、担架として用いることができる。
【0052】
以上、本発明に係る担架転換型鞄に関して、例を示す図面を参照しつつ具体的に説明したが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
例えば上記実施形態1〜4では展開状態のときに、前面部13〜底面部11〜後面部12、或いは更に上面部16、更に垂れ部17が直線状に連なる担架転換型鞄10,20,50,60を示したが、これに限るものではなく、展開状態のとき左側面部14〜後面部12〜右側面部15〜前面部13が直線状に連なる様に構成され、各面部の上下辺(長手方向の辺部分)近傍に長尺棒挿通用のループを設けたもの等であっても良い。
【0054】
また上記実施形態1〜4では鞄状態のときに、直方体型を呈するものを示したが、これに限らず、例えば円筒状(或いは楕円筒状)となるものであっても良い。この場合において、前面部,底面部,後面部,上面部,垂れ部のそれぞれの境界は明瞭でないが、これらの位置関係によって前面部や底面部等と称される。
【0055】
更に例えば上記実施形態1における前面部13,底面部11,後面部12,上面部16,垂れ部17の一部または全部に発泡スチロール等の発泡合成樹脂製板状部材を添設しても良く(例えば2枚の布の間に発泡スチロール製板状部材を挟む)、これにより担架転換型鞄10の形がしっかりとする上、水難の際に浮きとしても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態1に係る担架転換型鞄について鞄状態としたときの斜視図であって、(a)は外観図、(b)は蓋を開けて中を見た図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る担架転換型鞄について平面状に展開したときの平面図である。
【図3】展開状態とした実施形態1の担架転換型鞄にトビを取り付けた様子を表す上面図である。
【図4】実施形態1の担架転換型鞄を担架の状態として、人を乗せた様子を表す上面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る担架転換型鞄について平面状に展開したときの平面図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る担架転換型鞄について鞄状態にしたときの斜視図である。
【図7】本発明の実施形態4に係る担架転換型鞄について鞄状態にしたときの斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
10,20,50,60 担架転換型鞄
11 底面部
12 後面部
13 前面部
14 左側面部
15 右側面部
16 上面部
17 垂れ部
21L,21R,22L,22R,23L,23R,41L,41R,42L,42R,43L,43R,46L,46R,47L,47R 長尺棒挿通用ループ
24,44 着脱部材
24a 帯状部
24b1 鈎型係合部材
24b2 ループ型係合部材
26L,26R スライドファスナー
30 トビ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底面部,前面部,後面部,左側面部,及び右側面部を備えた収納用鞄であって、
これら面部間の稜辺部の一部または全部に開閉自在ファスナーを設けることによって、(1)前記前面部〜前記底面部〜前記後面部が連接して鞄素材を長く平面状に展開自在であるか、
(2)前記左側面部〜前記後面部か前記底面部か前記前面部のいずれか〜前記右側面部が連接して鞄素材を長く平面状に展開自在に構成され、
前記長く展開された鞄素材の長手方向の両辺部分或いはその近傍に沿って、それぞれ連続的または断続的に長尺棒挿通用のループが設けられたものであることを特徴とする担架転換型鞄。
【請求項2】
前記担架転換型鞄はその蓋を構成する上面部を備え、
該上面部は前記後面部或いは前記前面部に連接されたものであり、
前記上面部の左右の辺部分或いはその近傍に沿って、それぞれ連続的または断続的に長尺棒挿通用のループが設けられたものである請求項1に記載の担架転換型鞄。
【請求項3】
前記担架転換型鞄はその蓋を構成する上面部及び垂れ部を備え、
前記上面部は、前記後面部或いは前記前面部に連接されたものであり、
前記垂れ部は、前記上面部に連接され、前記前面部或いは前記後面部の少なくとも一部を覆うものであり、
前記上面部及び/または前記垂れ部における左右の辺部分或いはその近傍に沿って、それぞれ連続的または断続的に長尺棒挿通用のループが設けられたものである請求項1に記載の担架転換型鞄。
【請求項4】
前記ループが、断続的なものである請求項1〜3のいずれかに記載の担架転換型鞄。
【請求項5】
展開時に、前記左側面部と前記右側面部が対向した位置関係で、前記底面部或いは前記前面部,前記後面部のいずれかにそれぞれ連接した状態となるものであり、
前記左側面部と前記右側面部に一対の着脱部材を備え、該着脱部材によって環状に連結されるものである請求項1〜4のいずれかに記載の担架転換型鞄。
【請求項6】
前記着脱部材が、帯状部とその一方端に設けられた着脱ユニットとを備え、
前記左側面部と前記右側面部に前記帯状部の他方端がそれぞれ取り付けられたものである請求項5に記載の担架転換型鞄。
【請求項7】
前記担架転換型鞄は、前記後面部に連接された前記上面部を備えるか、或いは前記後面部に連接された前記上面部及びこの上面部に連接された前記垂れ部を備え、
展開時に、前記後面部に前記左側面部と前記右側面部が連接した状態となるものである請求項5または6に記載の担架転換型鞄。
【請求項8】
前記垂れ部は、その内部または内側面にクッション材が添設されたものである請求項3〜7のいずれかに記載の担架転換型鞄。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−129940(P2006−129940A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319646(P2004−319646)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(397037786)株式会社クロスライン (2)
【Fターム(参考)】