説明

拡散板

【課題】光源の配置・形状に因らずに、面全体に明るく均一にムラ無く発光し、ランプムラを消すことのできる拡散板を提供する。
【解決手段】一方の面に、断面が楕円の一部をなす同一形状の楕円柱レンズ7が、該楕円の長軸が該面8に直交するように複数並設され、前記楕円の楕円率(長径/短径)b/aと、隣接する楕円柱レンズ7により形成される谷部の角度θが、下記範囲である拡散板。
1.5≦b/a
0°<θ≦70°

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散板、該拡散板を搭載した直下型バックライト及び液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管に変わり液晶テレビやプラズマテレビといった平面薄型テレビが拡大し、特に液晶テレビが急成長している。液晶というのは自発光ではないのでバックライト(背面光源装置とも呼ぶ)が必要であり、バックライトにはエッジライト型と直下型の2つが一般的に用いられている。
【0003】
エッジライト型は液晶パネルのエッジに線状光源を置き導光板で面発光させる方法で、薄くて軽いパソコンモニターなどに好適とされるが、大画面化や高輝度化が困難といわれている。一方、直下型は液晶パネル直下に線状光源を多数本並べ、拡散板で面発光させる方法で、大画面化や高輝度化に対応が容易で液晶テレビ用に好まれて使われている。
【0004】
直下型バックライト式液晶ディスプレイは反射板、線状光源、拡散板、光学フィルム、液晶パネルが順に配設された構造をしている。その部品の中でも拡散板は、線状光源の光を散乱し、線状光源真上の明線と隣り合う線状光源間隙にできる線状の明暗(いわゆるランプムラ)をぼかし、均斉を向上させる重要な光学的役割を持っている。
【0005】
近年、コストダウンのためバックライトに使われる線状光源を削減する動きがあり、隣り合う線状光源の間隔(いわゆるランプピッチ)が広がる傾向にあり、ランプピッチが広がるとランプムラが目立つため液晶テレビの品位上問題となっていた。
【0006】
ランプムラを解消する方法として、光拡散材を配合した樹脂拡散板において、光拡散材を濃くする手法が考えられるが、この方法では輝度が低下するという問題があった。
【0007】
特許文献1〜3では、拡散板表面にプリズム形状、楕円柱形状等のレンズ形状をつけ、レンズによる光の集光機能によって輝度低下を防ぎ、かつランプムラの解消を図った高機能板の開発も行われている。
【0008】
しかし、特許文献1〜3では、ランプムラを完全に消すまでには至っていない。さらに、光源の配置(光源間距離、光源と拡散板との距離)が変更されると拡散板に入射する光の角度や光束密度が変わって、均一な出光を満たす条件が変わるため、光源の配置・形状毎に、拡散板の形状を変更せざるを得ないという問題もあった。
【0009】
【特許文献1】特開2007−18939号公報
【特許文献2】特開2006−162887号公報
【特許文献3】特公昭51−15418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
昨今のディスプレイ業界は、コスト削減のための光源削減の他にも、嗜好の多様化に伴う意匠の多品種化(例、薄型化)等々で、光源の配置はめまぐるしく変化し、変化のスピードは加速している。一方、拡散板の形状の変更には金型形状の変更が不可避であるが、金型作製には数ヶ月の期間を要するため業界の変化のスピードに対応していくことがますます困難になっている。
【0011】
そこで、本発明は、光源の配置・形状に因らずに、面全体に明るく均一にムラ無く発光し、ランプムラを消すことのできる拡散板並びに該拡散板を搭載した直下型バックライト及び液晶ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明の拡散板は、一方の面に、断面が楕円の一部をなす同一形状の楕円柱レンズが、該楕円の長軸が該面に直交するように複数並設され、前記楕円の楕円率(長径/短径)b/aと、隣接する楕円柱レンズにより形成される谷部の角度θが、下記範囲であることを特徴とする。
【0013】
1.5≦b/a
0°<θ≦70°
【発明の効果】
【0014】
本発明の拡散板を用いると、直下型バックライト式液晶ディスプレイにおいて、輝度の低下を防ぎ、かつランプムラを消すことができる。また、直下型バックライトの光源の形状や配置が変更されても、その効果は変わらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
<バックライト、液晶ディスプレイ>
図1に、本発明の直下型バックライト式液晶ディスプレイの一例を示す。
【0017】
図1に示す通り、液晶ディスプレイには、内側から反射板1、線状光源2、拡散板3、光学フィルム4、液晶パネル5が順に配設されている。このうち、反射板1から光学フィルム4までで直下型バックライト6を構成している。
【0018】
反射板1は、金属板に反射材が塗布されていたり、白色や銀色のポリエチレンテレフタレート(PET)系、もしくはポリカーボネート(PC)系の反射フィルムが使われる。
【0019】
線状光源2とは、線状の形をした光源で、液晶ディスプレイに用いられる線状光源として最も一般的なのは冷陰極管(略称CCFL)と呼ばれる直径2〜4mmの蛍光管である。冷陰極管には直線状やU字管、W字管などがあり、線状の部分が長いほど大画面用に好まれる。
【0020】
拡散板3は、線状光源2の光を散乱させ、線状の光源を面状の光源に変換する重要な光学部材である。拡散板3は、図1に示すように、レンズ形成面が線状光源2と反対側となり、かつレンズの長手方向と線状光源4の長手方向が一致するように配設されている。拡散板3の詳細については後述する。
【0021】
光学フィルム4は、拡散板3を透過してきた光を更に散乱もしくは集光させる拡散フィルム4−1、散乱光を集光させるプリズムフィルム4−2、反射偏光フィルム4−3など、いわゆる輝度を向上させるフィルムなど高機能な複数のフィルム群である。
【0022】
液晶パネル5としては、VAタイプ、IPSタイプ等、公知のものを使用できる。
【0023】
<拡散板>
図2に、本発明の拡散板の一例の概略斜視図を示す。また、図3に、図2の拡散板の楕円柱レンズ部分の概略拡大図を示す。
【0024】
図2に示す様に、本発明の拡散板は、一方の面に、同一形状の楕円柱レンズ7が、隣接する楕円柱レンズ7同士が、シート面8で接した状態で母線が平行となる様に複数並設されている。また、図3に示す様に、楕円柱レンズ7は、その断面が楕円9の一部をなしており、楕円9の長軸bがシート面8に直交するように配置されている。
【0025】
楕円9の楕円率(長径/短径)b/aは1.5≦b/aであり、好ましくは1.7≦b/a、さらに好ましくは2.2≦b/aである。レンズ部分での光の出射角度は、拡散板内を透過する光の角度と出射面角度、樹脂の屈折率で決定されるが、b/aが1.5未満では、入射角が大きくなるに従って、レンズからの出光のうち正面出光する出光部位の面積が急激に小さくなる。そのため、直下型バックライトに用いた場合、線状光源直上に比べて、線状光源間上の輝度が低く(暗部が発生し)、均一な発光とならない。
【0026】
また、隣接する楕円柱レンズ7により形成される谷部の角度、即ち、隣り合う楕円柱レンズ7が接する点における接線同士のなす角度θは、0°<θ≦70°であり、好ましくは20°≦θ≦70°である。前述のように、レンズ部分での光の出射角度は、拡散板内を透過する光の角度と出射面角度、樹脂の屈折率で決定されるが、谷部の角度θが70°を超えると、線状光源間中央近傍で突然出射光が著しく減少してしまう。そのため、直下型バックライトに用いた場合、線状光源直上に比べて、線状光源間上の輝度が低く(暗部が発生し)、均一な発光とならない。
【0027】
楕円柱レンズ7のピッチは、50μm〜500μmであることが好ましい。ピッチが50μm未満では、拡散板を成形する金型の加工精度に起因して、レンズからの出射光が意図したパターンにならない可能性があり、500μmを超えると、単一レンズ内でも、入射光の角度や密度が受光箇所で著しく異なり、意図した出射パターンにならない可能性がある。
【0028】
楕円9の長径は特に限定されないが、75μm〜22800μmであることが好ましい。また、楕円9の短径も特に限定されないが、50μm〜3600μmであることが好ましく、50μm〜2800μmであることがより好ましい。また、楕円柱レンズ7の高さも特に限定されないが、15μm〜1020μmであることが好ましく、15μm〜500μmであることがより好ましい。
【0029】
拡散板の板厚は、0.4mm〜5mmであることが好ましく、1mm〜3mmであることがより好ましい。
【0030】
拡散板は、透光性樹脂に光拡散材として光拡散微粒子が配合されているものが好ましい。
【0031】
透光性樹脂としては、光学特性、特に透過率が高いアクリル系樹脂、スチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂(MS樹脂)、スチレン系樹脂、PC系樹脂、環状オレフィン系樹脂などが好ましいが、ディスプレイ内部での吸水による変形を防ぐため吸水率の低い樹脂がより好ましい。例えばスチレン系樹脂、MS樹脂、PC系樹脂、環状オレフィン系樹脂がより好ましい。
【0032】
透光性樹脂に配合することが好ましい光拡散微粒子は、有機系、無機系いずれの微粒子でもよく、例えばアクリル系架橋微粒子、MS系架橋微粒子、スチレン系架橋微粒子、シリコーン系架橋微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、マイカなどが挙げられる。
【0033】
光拡散微粒子は、真球状、球状、楕円状、扁平形状、鱗片形状、多角形状、立方体、直方体が好ましく、その粒径は光散乱性能が良好な1〜30μmが好ましい。
【0034】
光拡散微粒子の配合量は、輝度低下を防ぐため、透光性樹脂100重量部に対し3重量部以下であることが好ましい。
【0035】
拡散板は透光性樹脂に光拡散材(光拡散微粒子)を配合した単一のシートであってもよいが、耐光性改良や表面硬度改良のため積層シートであってもよい。特に耐光性改良のため紫外線吸収剤を配合した10〜100μmの表面層を積層することはより好ましい。
【0036】
拡散板表面にレンズを形成する方法には、押出賦型、UV造型、熱転写、圧縮成形、削りだし、エッチングその他各種方法が挙げられる。
【0037】
押出賦型や熱転写は、拡散板を作製する押出し工程の中で、切削加工やエッチングによってレンズ形状を彫り込んだ金型ロールの表面形状を拡散板表面に転写し冷却固化させる連続賦型プロセスである。UV造型は、連続押出し工程でも枚葉のバッチ工程でもよいが、冷却固化ではなく紫外線硬化によってレンズ形状を拡散板表面に形成する方法である。圧縮成形は、レンズ形状を彫り込んだ平面金型を拡散板表面に熱圧縮して形状を形成する方法である。
【0038】
金型ロールや平面金型を作製する方法は、切削加工、エッチング、放電加工など所定のレンズ形状が掘り込めるのであればいずれの方法で加工しても構わない。
【実施例】
【0039】
<評価方法>
(1)レンズ形状の測定
拡散板を割断してレンズ断面を露出し、レンズのピッチと高さを光学顕微鏡観察下で計測した。次いでレンズの断面写真を撮影して、画像ソフトで断面写真と基本楕円形状を照合してレンズの楕円率を決定した。得られたピッチと高さ、楕円率を楕円の公式に代入し、レンズの裾部の接線角度を算出した。さらに接線角度から谷部の角度θを求めた。
【0040】
(2)輝度、光源像の視認度
拡散板を、32インチの直下型バックライト式評価用液晶表示装置I〜IIIに搭載し、輝度と光源像の視認度を測定した。
【0041】
それぞれの評価用液晶表示装置は、図1に示すように、白色PET製反射シート(反射板1)に、線状光源2として直径3mmの冷陰極管が、表1に示す本数・ピッチ間隔で平行に並べられており、その上に表1に示す距離で拡散板3が設けられ、更に光学フィルム4として拡散フィルム4−1、プリズムフィルム4−2、反射偏光フィルム4−3が順次配設され、その上にVAタイプの液晶パネル5が搭載されている。尚、拡散板3は、レンズ形成面が光学フィルム4と接するように、かつレンズと線状光源の長手方向が一致するように搭載した。
【0042】
【表1】

【0043】
(2−1)輝度
輝度計(トプコン社製BM−7)を用い、50cm離れた位置から画面中央部の輝度を測定した。
【0044】
(2−2)光源像の視認度
画面正面から光源像が目視で観察されるか否かを確認し、以下の基準で評価した。
○:光源像が見えない
△:光源像がやや見える
×:光源像が明らかに見える
【0045】
<実施例1>
透光性樹脂としてポリスチレン樹脂(PSジャパン社製GPPS)100重量部に、拡散材としてシリコーン系架橋微粒子(信越化学社製KMP、平均粒子径2μm)0.1重量部を配合し押出機に投入した。
【0046】
押出機で溶融混練された樹脂をシート用Tダイと呼ばれる金型で拡幅吐出し、3本の冷却ロールに巻きつけ接触させることによって、板厚1.5mmのシートに成形した。
【0047】
このシートを約150℃に加熱し、表面に楕円柱形状が並列に配列された溝が彫り込まれた金型を熱圧着して、図2に示す拡散板を得た。評価結果を表2に示す。
【0048】
<実施例2〜12、比較例1〜6>
拡散材含有量、レンズ形状を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして拡散板を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
<比較例7>
拡散材含有量を表3に示すように変更し、レンズ形状を頂角110°、プリズムピッチ120μmの線状プリズムとした以外は実施例1と同様にして拡散板を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0051】
<比較例8,9>
拡散材含有量を表3に示すように変更し、レンズを形成しない以外は実施例1と同様にして拡散板を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0052】
<比較例10>
拡散材含有量を表3に示すように変更し、レンズを形成しないで、サンドブラス加工で表面を粗し、表面粗さRa=15とした以外は実施例1と同様にして拡散板を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の拡散板は、直下型バックライト式液晶ディスプレイの拡散板として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の液晶ディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の拡散板の一例の概略斜視図である。
【図3】図2の拡散板の楕円柱レンズ部分の概略拡大図である。
【符号の説明】
【0056】
1 反射板
2 線状光源(冷陰極管)
3 拡散板
4 光学フィルム
4−1 拡散フィルム
4−2 プリズムフィルム
4−3 反射偏光フィルム
5 液晶パネル
6 直下型バックライト
7 楕円柱レンズ
8 シート面
9 楕円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に、断面が楕円の一部をなす同一形状の楕円柱レンズが、該楕円の長軸が該面に直交するように複数並設され、前記楕円の楕円率(長径/短径)b/aと、隣接する楕円柱レンズにより形成される谷部の角度θが、下記範囲であることを特徴とする拡散板。
1.5≦b/a
0°<θ≦70°
【請求項2】
前記谷部の角度θが20°≦θ≦70°であることを特徴とする請求項1に記載の拡散板。
【請求項3】
前記楕円柱レンズのピッチが50μm〜500μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の拡散板。
【請求項4】
反射板、線状光源、拡散板、光学フィルムの順に配設された直下型バックライトであって、前記拡散坂が、請求項1〜3のいずれかに記載の拡散板であり、前記楕円柱レンズが前記線状光源と反対側となり、かつ該楕円柱レンズの長手方向と該線状光源の長手方向が一致するように配設されていることを特徴とする直下型バックライト。
【請求項5】
請求項4に記載の直下型バックライト上に液晶パネルが配設されていることを特徴とする液晶ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−304500(P2008−304500A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148784(P2007−148784)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】