拡散板
【課題】光源の配置・形状に因らずに、面全体に明るく均一にムラ無く発光し、ランプムラを消すことのできる拡散板を提供する。
【解決手段】一方の面に、同一形状のプリズムレンズが複数並設され、該プリズムレンズの断面形状が、底辺とのなす角θが0°<θ<90°である直線からなる4本以上の斜辺と、曲線からなる頂部とを左右対称に連結した形状である拡散板。
【解決手段】一方の面に、同一形状のプリズムレンズが複数並設され、該プリズムレンズの断面形状が、底辺とのなす角θが0°<θ<90°である直線からなる4本以上の斜辺と、曲線からなる頂部とを左右対称に連結した形状である拡散板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散板、該拡散板を搭載した直下型バックライト及び液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管に変わり液晶テレビやプラズマテレビといった平面薄型テレビが拡大し、特に液晶テレビが急成長している。液晶というのは自発光ではないのでバックライト(背面光源装置とも呼ぶ)が必要であり、バックライトにはエッジライト型と直下型の2つが一般的に用いられている。
【0003】
エッジライト型は液晶パネルのエッジに線状光源を置き導光板で面発光させる方法で、薄くて軽いパソコンモニターなどに好適とされるが、大画面化や高輝度化が困難といわれている。一方、直下型は液晶パネル直下に線状光源を多数本並べ、拡散板で面発光させる方法で、大画面化や高輝度化に対応が容易で液晶テレビ用に好まれて使われている。
【0004】
直下型バックライト式液晶ディスプレイは反射板、線状光源、拡散板、光学フィルム、液晶パネルが順に配設された構造をしている。その部品の中でも拡散板は、線状光源の光を散乱し、線状光源真上の明線と隣り合う線状光源間隙にできる線状の明暗(いわゆるランプムラ)をぼかし、均斉を向上させる重要な光学的役割を持っている。
【0005】
近年、コストダウンのためバックライトに使われる線状光源を削減する動きがあり、隣り合う線状光源の間隔(いわゆるランプピッチ)が広がる傾向にあり、ランプピッチが広がるとランプムラが目立つため液晶テレビの品位上問題となっていた。
【0006】
ランプムラを解消する方法として、光拡散材を配合した樹脂拡散板において、光拡散材を濃くする手法が考えられるが、この方法では輝度が低下するという問題があった。
【0007】
特許文献1〜2では、拡散板表面にプリズムレンズ形状をつけ、レンズによる光の集光機能によって輝度低下を防ぎ、かつランプムラの解消を図った高機能板の開発も行われている。
【0008】
しかし、特許文献1〜2では、ランプムラを完全に消すまでには至っていない。
【0009】
【特許文献1】特開2007−18939号公報
【特許文献2】特開平7−230002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、面全体に明るく均一にムラ無く発光し、ランプムラを消すことのできる拡散板並びに該拡散板を搭載した直下型バックライト及び液晶ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の拡散板は、一方の面に、同一形状のプリズムレンズが複数並設され、該プリズムレンズの断面形状が、底辺とのなす角θが0°<θ<90°である直線からなる4本以上の斜辺と、曲線からなる頂部とを左右対称に連結した形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の拡散板を用いると、直下型バックライト式液晶ディスプレイにおいて、輝度の低下を防ぎ、かつランプムラを消すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
<バックライト、液晶ディスプレイ>
図1に、本発明の直下型バックライト式液晶ディスプレイの一例を示す。
【0015】
図1に示す通り、液晶ディスプレイには、内側から反射板1、線状光源2、拡散板3、光学フィルム4、液晶パネル5が順に配設されている。このうち、反射板1から光学フィルム4までで直下型バックライト6を構成している。
【0016】
反射板1は、金属板に反射材が塗布されていたり、白色や銀色のポリエチレンテレフタレート(PET)系、もしくはポリカーボネート(PC)系の反射フィルムが使われる。
【0017】
線状光源2とは、線状の形をした光源で、液晶ディスプレイに用いられる線状光源として最も一般的なのは冷陰極管(略称CCFL)と呼ばれる直径2〜4mmの蛍光管である。冷陰極管には直線状やU字管、W字管などがあり、線状の部分が長いほど大画面用に好まれる。
【0018】
拡散板3は、線状光源2の光を散乱させ、線状の光源を面状の光源に変換する重要な光学部材である。拡散板3は、図1に示すように、レンズ形成面が線状光源2と反対側となり、かつレンズの長手方向と線状光源4の長手方向が一致するように配設されている。拡散板3の詳細については後述する。
【0019】
光学フィルム4は、拡散板3を透過してきた光を更に散乱もしくは集光させる拡散フィルム4−1、散乱光を集光させるプリズムフィルム4−2、反射偏光フィルム4−3など、いわゆる輝度を向上させるフィルムなど高機能な複数のフィルム群である。
【0020】
液晶パネル5としては、VAタイプ、IPSタイプ等、公知のものを使用できる。
【0021】
<拡散板>
図2に、本発明の拡散板の一例の概略斜視図を示す。また、図3に、図2の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図を示す。
【0022】
図2に示す様に、本発明の拡散板は、一方の面に、同一形状のプリズムレンズ7が、隣接するプリズムレンズ7同士が、シート面8で接した状態で、母線が平行となるように複数並設されている。
【0023】
図3に示す様に、プリズムレンズ7の断面形状は、シート面8を形成する底辺9と、直線からなる4本の斜辺10〜14と、曲線からなる頂部12とを左右対称に連結した形状となっている。そして、斜辺10と底辺9とのなす角は80°、斜辺11と底辺9とのなす角は40°(斜辺10,11により形成される内角が140°)、斜辺13と底辺9とのなす角は40°(斜辺13,14により形成される内角が140°)、斜辺14と底辺9とのなす角は80°であり、頂部12は円弧により形成されている。
【0024】
プリズムレンズ7の断面形状は、図3に示すものに限定されないが、斜辺は4本以上であることが必要である。斜辺が4本未満では、明部に比べて暗部の占める割合が多く、明暗のコントラストも大きいため、直下型バックライトに用いた場合、たとえ光学シートを組み合わせても、明暗のコントラストを消しきることができず、均一な発光にならない。本発明では、暗部の輝度を高めて均一な発光を達成するために、プリズムの指向性を利用して効果的に暗部の発生を抑えた発光を可能にした。
【0025】
また、斜辺と底辺とのなす角θは、0°<θ<90°であることが必要である。斜辺と底辺とのなす角θが90°を超えると、拡散板を成形する金型の製作が非常に困難になり、また金型から樹脂への転写率も大幅に低下するため実用的でない。
【0026】
斜辺と底辺とのなす角θの値は、暗部の輝度を高め、コントラストを限りなく小さくし、均一な発光とするために、拡散板の暗部の位置r(拡散板の線状光源の真上に相当する位置から拡散板の暗部までの最短距離)に応じて下記式を基に決定することが好ましい。
r=d・tanα+(t+1/2・tanθ)tan{θ−arcsin(1/n・sinθ)}
d:線状光源から拡散板までの距離
α:線状光源から拡散板への入射角(拡散板の法線を0°とする)
t:拡散板の厚み
n:拡散板樹脂の屈折率
【0027】
また、斜辺と底辺とのなす角θは、2種(2組)以上の異なる角度(θ1、θ2、・・・θm、・・・θn・・・)をとるが、そのうちの少なくとも1つ(1組)は45°以上であることが好ましい。
【0028】
更に、異なる角度θmとθnの差は10°以上であることが好ましい。10°未満の場合は、暗部の輝度を高める効果が低くなる可能性がある。
【0029】
また、頂部は曲線、好ましくは円弧からなる必要がある。頂部が曲線でない場合には、発光面の明暗のコントラストが大きいため、直下型バックライトに用いた場合、たとえ光学シートを組み合わせても明暗のコントラストを消しきることができない。
【0030】
プリズムレンズのピッチ(底辺の長さ)は、50μm〜500μmであることが好ましい。ピッチが50μm未満では、拡散板を成形する金型の加工精度に起因して、レンズからの出射光が意図したパターンにならない可能性があり、500μmを超えると、単一レンズ内でも、入射光の角度や密度が受光箇所で著しく異なり、意図した出射パターンにならない可能性がある。
【0031】
また、プリズムレンズの高さも特に限定されないが、25μm〜1000μmであることが好ましい。
【0032】
拡散板の板厚は、0.4mm〜5mmであることが好ましく、1mm〜3mmであることがより好ましい。
【0033】
拡散板は、透光性樹脂に光拡散材として光拡散微粒子が配合されているものが好ましい。
【0034】
透光性樹脂としては、光学特性、特に透過率が高いアクリル系樹脂、スチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂(MS樹脂)、スチレン系樹脂、PC系樹脂、環状オレフィン系樹脂などが好ましいが、ディスプレイ内部での吸水による変形を防ぐため吸水率の低い樹脂がより好ましい。例えばスチレン系樹脂、MS樹脂、PC系樹脂、環状オレフィン系樹脂がより好ましい。
【0035】
透光性樹脂に配合することが好ましい光拡散微粒子は、有機系、無機系いずれの微粒子でもよく、例えばアクリル系架橋微粒子、MS系架橋微粒子、スチレン系架橋微粒子、シリコーン系架橋微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、マイカなどが挙げられる。
【0036】
光拡散微粒子は、真球状、球状、楕円状、扁平形状、鱗片形状、多角形状、立方体、直方体が好ましく、その粒径は光散乱性能が良好な1〜30μmが好ましい。
【0037】
光拡散微粒子の配合量は、輝度低下を防ぐため、透光性樹脂100重量部に対し3重量部以下であることが好ましい。
【0038】
拡散板は透光性樹脂に光拡散材(光拡散微粒子)を配合した単一のシートであってもよいが、耐光性改良や表面硬度改良のため積層シートであってもよい。特に耐光性改良のため紫外線吸収剤を配合した10〜100μmの表面層を積層することはより好ましい。
【0039】
拡散板表面にレンズを形成する方法には、押出賦型、UV造型、熱転写、圧縮成形、削りだし、エッチングその他各種方法が挙げられる。
【0040】
押出賦型や熱転写は、拡散板を作製する押出し工程の中で、切削加工やエッチングによってレンズ形状を彫り込んだ金型ロールの表面形状を拡散板表面に転写し冷却固化させる連続賦型プロセスである。UV造型は、連続押出し工程でも枚葉のバッチ工程でもよいが、冷却固化ではなく紫外線硬化によってレンズ形状を拡散板表面に形成する方法である。圧縮成形は、レンズ形状を彫り込んだ平面金型を拡散板表面に熱圧縮して形状を形成する方法である。
【0041】
金型ロールや平面金型を作製する方法は、切削加工、エッチング、放電加工など所定のレンズ形状が掘り込めるのであればいずれの方法で加工しても構わない。
【実施例】
【0042】
<評価方法>
(1)レンズ形状の測定
拡散板を、割断または切削研磨してプリズム断面を露出させ、光学顕微鏡下で、斜辺と底辺とのなす角θ、底辺の長さ、高さを計測した。
【0043】
(2)平均輝度、コントラスト比、光源像の視認度
拡散板を、32インチの直下型バックライト式評価用液晶表示装置に搭載し、輝度と光源像の視認度を測定した。
【0044】
評価用液晶表示装置は、図1に示すように、白色PET製反射シート(反射板1)に、線状光源2として直径3mmの冷陰極管12本がピッチ33mm間隔で平行に並べられており、その上に拡散板3が設けられ、更に光学フィルム4として拡散フィルム4−1、プリズムフィルム4−2、反射偏光フィルム4−3が順次配設され、その上にVAタイプの液晶パネル5が搭載されている。尚、拡散板3は、レンズ形成面が光学フィルム4と接するように、かつレンズと線状光源の長手方向が一致するように搭載した。
【0045】
(2−1)平均輝度、コントラスト比
光学フィルム4、液晶パネル5を取り除き、輝度計(トプコン社製BM−7)を用い、50cm離れた位置から画面中央部の輝度を測定し、平均値を求めた。
【0046】
また、コントラスト比を下記式より算出した。
【0047】
コントラスト比=(最大輝度値−最小輝度値)/(最大輝度値+最小輝度値)
【0048】
(2−2)光源像の視認度
液晶パネル5を取り除き、画面正面から光源像が目視で観察されるか否かを確認し、以下の基準で評価した。
◎:光源像が斜めからも正面からも見えない
○:光源像が正面から見えない
△:光源像がやや見える
×:光源像が明らかに見える
【0049】
<実施例1>
透光性樹脂としてポリスチレン樹脂(PSジャパン社製GPPS)100重量部に、拡散材としてシリコーン系架橋微粒子(信越化学社製KMP、平均粒子径2μm)0.1重量部を配合し押出機に投入した。
【0050】
押出機で溶融混練された樹脂をシート用Tダイと呼ばれる金型で拡幅吐出し、3本の冷却ロールに巻きつけ接触させることによって、板厚1.5mmのシートに成形した。
【0051】
このシートを約200℃に加熱し、表面に図3に示す断面形状のプリズム形状が並列に配列された溝が彫り込まれた金型を熱圧着して、図2に示す拡散板を得た。
【0052】
評価結果を表1に示す。尚、表1の斜辺と底辺とのなす角θの欄における括弧内の数値は、斜辺同士のなす内角である。
【0053】
<実施例2〜5、比較例1〜6>
レンズ形状を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして拡散板を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の拡散板は、直下型バックライト式液晶ディスプレイの拡散板として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の液晶ディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の拡散板の一例の概略斜視図である。
【図3】図2の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図4】実施例2の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図5】実施例3の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図6】実施例4の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図7】実施例5の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図8】比較例1の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図9】比較例2の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図10】比較例3の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図11】比較例4の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図12】比較例5の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図13】比較例6の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 反射板
2 線状光源(冷陰極管)
3 拡散板
4 光学フィルム
4−1 拡散フィルム
4−2 プリズムフィルム
4−3 反射偏光フィルム
5 液晶パネル
6 直下型バックライト
7 プリズムレンズ
8 シート面
9 底辺
10,11,13,14 斜辺
12 頂部
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散板、該拡散板を搭載した直下型バックライト及び液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管に変わり液晶テレビやプラズマテレビといった平面薄型テレビが拡大し、特に液晶テレビが急成長している。液晶というのは自発光ではないのでバックライト(背面光源装置とも呼ぶ)が必要であり、バックライトにはエッジライト型と直下型の2つが一般的に用いられている。
【0003】
エッジライト型は液晶パネルのエッジに線状光源を置き導光板で面発光させる方法で、薄くて軽いパソコンモニターなどに好適とされるが、大画面化や高輝度化が困難といわれている。一方、直下型は液晶パネル直下に線状光源を多数本並べ、拡散板で面発光させる方法で、大画面化や高輝度化に対応が容易で液晶テレビ用に好まれて使われている。
【0004】
直下型バックライト式液晶ディスプレイは反射板、線状光源、拡散板、光学フィルム、液晶パネルが順に配設された構造をしている。その部品の中でも拡散板は、線状光源の光を散乱し、線状光源真上の明線と隣り合う線状光源間隙にできる線状の明暗(いわゆるランプムラ)をぼかし、均斉を向上させる重要な光学的役割を持っている。
【0005】
近年、コストダウンのためバックライトに使われる線状光源を削減する動きがあり、隣り合う線状光源の間隔(いわゆるランプピッチ)が広がる傾向にあり、ランプピッチが広がるとランプムラが目立つため液晶テレビの品位上問題となっていた。
【0006】
ランプムラを解消する方法として、光拡散材を配合した樹脂拡散板において、光拡散材を濃くする手法が考えられるが、この方法では輝度が低下するという問題があった。
【0007】
特許文献1〜2では、拡散板表面にプリズムレンズ形状をつけ、レンズによる光の集光機能によって輝度低下を防ぎ、かつランプムラの解消を図った高機能板の開発も行われている。
【0008】
しかし、特許文献1〜2では、ランプムラを完全に消すまでには至っていない。
【0009】
【特許文献1】特開2007−18939号公報
【特許文献2】特開平7−230002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、面全体に明るく均一にムラ無く発光し、ランプムラを消すことのできる拡散板並びに該拡散板を搭載した直下型バックライト及び液晶ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の拡散板は、一方の面に、同一形状のプリズムレンズが複数並設され、該プリズムレンズの断面形状が、底辺とのなす角θが0°<θ<90°である直線からなる4本以上の斜辺と、曲線からなる頂部とを左右対称に連結した形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の拡散板を用いると、直下型バックライト式液晶ディスプレイにおいて、輝度の低下を防ぎ、かつランプムラを消すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
<バックライト、液晶ディスプレイ>
図1に、本発明の直下型バックライト式液晶ディスプレイの一例を示す。
【0015】
図1に示す通り、液晶ディスプレイには、内側から反射板1、線状光源2、拡散板3、光学フィルム4、液晶パネル5が順に配設されている。このうち、反射板1から光学フィルム4までで直下型バックライト6を構成している。
【0016】
反射板1は、金属板に反射材が塗布されていたり、白色や銀色のポリエチレンテレフタレート(PET)系、もしくはポリカーボネート(PC)系の反射フィルムが使われる。
【0017】
線状光源2とは、線状の形をした光源で、液晶ディスプレイに用いられる線状光源として最も一般的なのは冷陰極管(略称CCFL)と呼ばれる直径2〜4mmの蛍光管である。冷陰極管には直線状やU字管、W字管などがあり、線状の部分が長いほど大画面用に好まれる。
【0018】
拡散板3は、線状光源2の光を散乱させ、線状の光源を面状の光源に変換する重要な光学部材である。拡散板3は、図1に示すように、レンズ形成面が線状光源2と反対側となり、かつレンズの長手方向と線状光源4の長手方向が一致するように配設されている。拡散板3の詳細については後述する。
【0019】
光学フィルム4は、拡散板3を透過してきた光を更に散乱もしくは集光させる拡散フィルム4−1、散乱光を集光させるプリズムフィルム4−2、反射偏光フィルム4−3など、いわゆる輝度を向上させるフィルムなど高機能な複数のフィルム群である。
【0020】
液晶パネル5としては、VAタイプ、IPSタイプ等、公知のものを使用できる。
【0021】
<拡散板>
図2に、本発明の拡散板の一例の概略斜視図を示す。また、図3に、図2の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図を示す。
【0022】
図2に示す様に、本発明の拡散板は、一方の面に、同一形状のプリズムレンズ7が、隣接するプリズムレンズ7同士が、シート面8で接した状態で、母線が平行となるように複数並設されている。
【0023】
図3に示す様に、プリズムレンズ7の断面形状は、シート面8を形成する底辺9と、直線からなる4本の斜辺10〜14と、曲線からなる頂部12とを左右対称に連結した形状となっている。そして、斜辺10と底辺9とのなす角は80°、斜辺11と底辺9とのなす角は40°(斜辺10,11により形成される内角が140°)、斜辺13と底辺9とのなす角は40°(斜辺13,14により形成される内角が140°)、斜辺14と底辺9とのなす角は80°であり、頂部12は円弧により形成されている。
【0024】
プリズムレンズ7の断面形状は、図3に示すものに限定されないが、斜辺は4本以上であることが必要である。斜辺が4本未満では、明部に比べて暗部の占める割合が多く、明暗のコントラストも大きいため、直下型バックライトに用いた場合、たとえ光学シートを組み合わせても、明暗のコントラストを消しきることができず、均一な発光にならない。本発明では、暗部の輝度を高めて均一な発光を達成するために、プリズムの指向性を利用して効果的に暗部の発生を抑えた発光を可能にした。
【0025】
また、斜辺と底辺とのなす角θは、0°<θ<90°であることが必要である。斜辺と底辺とのなす角θが90°を超えると、拡散板を成形する金型の製作が非常に困難になり、また金型から樹脂への転写率も大幅に低下するため実用的でない。
【0026】
斜辺と底辺とのなす角θの値は、暗部の輝度を高め、コントラストを限りなく小さくし、均一な発光とするために、拡散板の暗部の位置r(拡散板の線状光源の真上に相当する位置から拡散板の暗部までの最短距離)に応じて下記式を基に決定することが好ましい。
r=d・tanα+(t+1/2・tanθ)tan{θ−arcsin(1/n・sinθ)}
d:線状光源から拡散板までの距離
α:線状光源から拡散板への入射角(拡散板の法線を0°とする)
t:拡散板の厚み
n:拡散板樹脂の屈折率
【0027】
また、斜辺と底辺とのなす角θは、2種(2組)以上の異なる角度(θ1、θ2、・・・θm、・・・θn・・・)をとるが、そのうちの少なくとも1つ(1組)は45°以上であることが好ましい。
【0028】
更に、異なる角度θmとθnの差は10°以上であることが好ましい。10°未満の場合は、暗部の輝度を高める効果が低くなる可能性がある。
【0029】
また、頂部は曲線、好ましくは円弧からなる必要がある。頂部が曲線でない場合には、発光面の明暗のコントラストが大きいため、直下型バックライトに用いた場合、たとえ光学シートを組み合わせても明暗のコントラストを消しきることができない。
【0030】
プリズムレンズのピッチ(底辺の長さ)は、50μm〜500μmであることが好ましい。ピッチが50μm未満では、拡散板を成形する金型の加工精度に起因して、レンズからの出射光が意図したパターンにならない可能性があり、500μmを超えると、単一レンズ内でも、入射光の角度や密度が受光箇所で著しく異なり、意図した出射パターンにならない可能性がある。
【0031】
また、プリズムレンズの高さも特に限定されないが、25μm〜1000μmであることが好ましい。
【0032】
拡散板の板厚は、0.4mm〜5mmであることが好ましく、1mm〜3mmであることがより好ましい。
【0033】
拡散板は、透光性樹脂に光拡散材として光拡散微粒子が配合されているものが好ましい。
【0034】
透光性樹脂としては、光学特性、特に透過率が高いアクリル系樹脂、スチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂(MS樹脂)、スチレン系樹脂、PC系樹脂、環状オレフィン系樹脂などが好ましいが、ディスプレイ内部での吸水による変形を防ぐため吸水率の低い樹脂がより好ましい。例えばスチレン系樹脂、MS樹脂、PC系樹脂、環状オレフィン系樹脂がより好ましい。
【0035】
透光性樹脂に配合することが好ましい光拡散微粒子は、有機系、無機系いずれの微粒子でもよく、例えばアクリル系架橋微粒子、MS系架橋微粒子、スチレン系架橋微粒子、シリコーン系架橋微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、マイカなどが挙げられる。
【0036】
光拡散微粒子は、真球状、球状、楕円状、扁平形状、鱗片形状、多角形状、立方体、直方体が好ましく、その粒径は光散乱性能が良好な1〜30μmが好ましい。
【0037】
光拡散微粒子の配合量は、輝度低下を防ぐため、透光性樹脂100重量部に対し3重量部以下であることが好ましい。
【0038】
拡散板は透光性樹脂に光拡散材(光拡散微粒子)を配合した単一のシートであってもよいが、耐光性改良や表面硬度改良のため積層シートであってもよい。特に耐光性改良のため紫外線吸収剤を配合した10〜100μmの表面層を積層することはより好ましい。
【0039】
拡散板表面にレンズを形成する方法には、押出賦型、UV造型、熱転写、圧縮成形、削りだし、エッチングその他各種方法が挙げられる。
【0040】
押出賦型や熱転写は、拡散板を作製する押出し工程の中で、切削加工やエッチングによってレンズ形状を彫り込んだ金型ロールの表面形状を拡散板表面に転写し冷却固化させる連続賦型プロセスである。UV造型は、連続押出し工程でも枚葉のバッチ工程でもよいが、冷却固化ではなく紫外線硬化によってレンズ形状を拡散板表面に形成する方法である。圧縮成形は、レンズ形状を彫り込んだ平面金型を拡散板表面に熱圧縮して形状を形成する方法である。
【0041】
金型ロールや平面金型を作製する方法は、切削加工、エッチング、放電加工など所定のレンズ形状が掘り込めるのであればいずれの方法で加工しても構わない。
【実施例】
【0042】
<評価方法>
(1)レンズ形状の測定
拡散板を、割断または切削研磨してプリズム断面を露出させ、光学顕微鏡下で、斜辺と底辺とのなす角θ、底辺の長さ、高さを計測した。
【0043】
(2)平均輝度、コントラスト比、光源像の視認度
拡散板を、32インチの直下型バックライト式評価用液晶表示装置に搭載し、輝度と光源像の視認度を測定した。
【0044】
評価用液晶表示装置は、図1に示すように、白色PET製反射シート(反射板1)に、線状光源2として直径3mmの冷陰極管12本がピッチ33mm間隔で平行に並べられており、その上に拡散板3が設けられ、更に光学フィルム4として拡散フィルム4−1、プリズムフィルム4−2、反射偏光フィルム4−3が順次配設され、その上にVAタイプの液晶パネル5が搭載されている。尚、拡散板3は、レンズ形成面が光学フィルム4と接するように、かつレンズと線状光源の長手方向が一致するように搭載した。
【0045】
(2−1)平均輝度、コントラスト比
光学フィルム4、液晶パネル5を取り除き、輝度計(トプコン社製BM−7)を用い、50cm離れた位置から画面中央部の輝度を測定し、平均値を求めた。
【0046】
また、コントラスト比を下記式より算出した。
【0047】
コントラスト比=(最大輝度値−最小輝度値)/(最大輝度値+最小輝度値)
【0048】
(2−2)光源像の視認度
液晶パネル5を取り除き、画面正面から光源像が目視で観察されるか否かを確認し、以下の基準で評価した。
◎:光源像が斜めからも正面からも見えない
○:光源像が正面から見えない
△:光源像がやや見える
×:光源像が明らかに見える
【0049】
<実施例1>
透光性樹脂としてポリスチレン樹脂(PSジャパン社製GPPS)100重量部に、拡散材としてシリコーン系架橋微粒子(信越化学社製KMP、平均粒子径2μm)0.1重量部を配合し押出機に投入した。
【0050】
押出機で溶融混練された樹脂をシート用Tダイと呼ばれる金型で拡幅吐出し、3本の冷却ロールに巻きつけ接触させることによって、板厚1.5mmのシートに成形した。
【0051】
このシートを約200℃に加熱し、表面に図3に示す断面形状のプリズム形状が並列に配列された溝が彫り込まれた金型を熱圧着して、図2に示す拡散板を得た。
【0052】
評価結果を表1に示す。尚、表1の斜辺と底辺とのなす角θの欄における括弧内の数値は、斜辺同士のなす内角である。
【0053】
<実施例2〜5、比較例1〜6>
レンズ形状を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして拡散板を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の拡散板は、直下型バックライト式液晶ディスプレイの拡散板として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の液晶ディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の拡散板の一例の概略斜視図である。
【図3】図2の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図4】実施例2の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図5】実施例3の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図6】実施例4の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図7】実施例5の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図8】比較例1の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図9】比較例2の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図10】比較例3の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図11】比較例4の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図12】比較例5の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【図13】比較例6の拡散板のプリズムレンズの長手方向と直行する面での断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 反射板
2 線状光源(冷陰極管)
3 拡散板
4 光学フィルム
4−1 拡散フィルム
4−2 プリズムフィルム
4−3 反射偏光フィルム
5 液晶パネル
6 直下型バックライト
7 プリズムレンズ
8 シート面
9 底辺
10,11,13,14 斜辺
12 頂部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に、同一形状のプリズムレンズが複数並設され、該プリズムレンズの断面形状が、底辺とのなす角θが0°<θ<90°である直線からなる4本以上の斜辺と、曲線からなる頂部とを左右対称に連結した形状であることを特徴とする拡散板。
【請求項2】
前記底辺とのなす角θの少なくとも1つが、45°以上であることを特徴とする請求項1に記載の拡散板。
【請求項3】
前記曲線が円弧であることを特徴とする請求項1または2に記載の拡散板。
【請求項4】
前記プリズムレンズのピッチが50μm〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の拡散板。
【請求項5】
反射板、線状光源、拡散板、光学フィルムの順に配設された直下型バックライトであって、前記拡散坂が、請求項1〜4のいずれかに記載の拡散板であり、前記プリズムレンズが前記線状光源と反対側となり、かつ該プリズムレンズの長手方向と該線状光源の長手方向が一致するように配設されていることを特徴とする直下型バックライト。
【請求項6】
請求項5に記載の直下型バックライト上に液晶パネルが配設されていることを特徴とする液晶ディスプレイ。
【請求項1】
一方の面に、同一形状のプリズムレンズが複数並設され、該プリズムレンズの断面形状が、底辺とのなす角θが0°<θ<90°である直線からなる4本以上の斜辺と、曲線からなる頂部とを左右対称に連結した形状であることを特徴とする拡散板。
【請求項2】
前記底辺とのなす角θの少なくとも1つが、45°以上であることを特徴とする請求項1に記載の拡散板。
【請求項3】
前記曲線が円弧であることを特徴とする請求項1または2に記載の拡散板。
【請求項4】
前記プリズムレンズのピッチが50μm〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の拡散板。
【請求項5】
反射板、線状光源、拡散板、光学フィルムの順に配設された直下型バックライトであって、前記拡散坂が、請求項1〜4のいずれかに記載の拡散板であり、前記プリズムレンズが前記線状光源と反対側となり、かつ該プリズムレンズの長手方向と該線状光源の長手方向が一致するように配設されていることを特徴とする直下型バックライト。
【請求項6】
請求項5に記載の直下型バックライト上に液晶パネルが配設されていることを特徴とする液晶ディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−304501(P2008−304501A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148785(P2007−148785)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]