説明

拡散符号生成装置、通信システム、送信装置、受信装置、ならびに、プログラム

【課題】複数の原始根符号からより長い符号を生成し、当該符号を用いて通信を行うのに好適な拡散符号生成装置等を提供する。
【解決手段】拡散符号生成装置401において、符号生成部402は、素数と原始根とシフト量との組を受け付けて当該素数と同じ長さの原始根符号を生成し、数列生成部403は、複数の数列を受け付けて新たな数列を生成し、当該生成された数列の長さは、受け付けた数列の長さの積であり、生成制御部404は、符号生成部402に、素数と原始根とシフト量との組を複数与えて、生成された原始根符号を数列生成部403に与えて、生成された数列を拡散符号とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の原始根符号からより長い符号を生成し、当該符号を用いて通信を行うのに好適な拡散符号生成装置、通信システム、送信装置、受信装置、これらをコンピュータ上にて実現するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CDMA通信の分野では、通信性能の向上を図る技術が種々提案されている。たとえば、後に掲げる特許文献1においては、受信装置において、送信装置がカオス符号により直接拡散して送信した信号を受信し、受信された信号を成分分析して複数の成分に分離し、分離された複数の成分のそれぞれを当該カオス符号により逆拡散した複数の信号を得て、逆拡散された複数の信号から、強度が大きい信号を選択して出力する技術が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−243277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような通信技術の分野においては、相関特性が良好で、分離性能の高い拡散符号が求められており、特に、長さの長い拡散符号を生成するための技術に対する要望は強い。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するものであって、複数の原始根符号からより長い符号を生成し、当該符号を用いて通信を行うのに好適な拡散符号生成装置、通信システム、送信装置、受信装置、これらをコンピュータ上にて実現するプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明の原理にしたがって、下記の発明を開示する。
【0007】
本発明の第1の観点に係る拡散符号生成装置は、符号生成部、数列生成部、生成制御部を備え、以下のように構成する。
【0008】
ここで、符号生成部は、
素数pと、
当該素数pを法とする有限体のいずれかの原始根rと、
1以上当該素数p未満のいずれかの整数であるシフト量kと、の組を受け付けて、
1のp乗根の一つ
ωp = exp(2πi/p)
と、当該素数pを法とする羃乗演算
F(a,b) = ab (mod p)
と、により定義される長さpの原始根符号
E(p,r,k) = (1,ωpF(r,k+0),ωpF(r,k+1),ωpF(r,k+2),…,ωpF(r,k+p-2))
を生成する。
【0009】
一方、数列生成部は、2つの数列
a = (a0,a1,a2,…,aL-1)
および、
b = (b0,b1,b2,…,aM-1)
を受け付けて、整数sに対して定義される演算
G(s,a,b) = as mod L bs mod M
により定義される長さLMの数列
(G(0,a,b),G(1,a,b),G(2,a,b),…,G(LM-1,a,b))
を生成する。
【0010】
さらに、生成制御部は、
符号生成部に、第1の素数と、当該第1の素数に対する第1の原始根と、当該第1の素数に対する第1のシフト量と、の組を与えて、第1の原始根符号を生成させ、
符号生成部に、第1の素数とは異なる第2の素数と、当該第2の素数に対する第2の原始根と、当該第2の素数に対する第2のシフト量と、の組を与えて、第2の原始根符号を生成させ、
当該第1の原始根符号と、当該第2の原始根符号と、を、数列生成部に与えて、数列を生成させ、
当該生成される数列を拡散符号とする。
【0011】
本発明のその他の観点に係る拡散符号生成装置は、符号生成部、数列生成部、生成制御部を備え、以下のように構成する。
【0012】
ここで、符号生成部は、
素数pと、
当該素数pを法とする有限体のいずれかの原始根rと、
1以上当該素数p未満のいずれかの整数であるシフト量kと、の組を受け付けて、
1のp乗根の一つ
ωp = exp(2πi/p)
と、当該素数pを法とする羃乗演算
F(a,b) = ab (mod p)
と、により定義される長さpの原始根符号
E(p,r,k) = (1,ωpF(r,k+0),ωpF(r,k+1),ωpF(r,k+2),…,ωpF(r,k+p-2))
を生成する。
【0013】
一方、数列生成部は、
N個の数列
a[1] = (a[1]0,a[1]1,a[1]2,…,a[1]L[1]-1);
a[2] = (a[2]0,a[2]1,a[2]2,…,a[2]L[2]-1);
…;
a[N] = (a[N]0,a[N]1,a[N]2,…,a[N]L[N]-1)
を受け付けて、整数sに対して定義される演算
G(s,a[1],a[2],…,a[N]) = Πt=1N a[t]s mod L[t]
により定義される長さΠt=1N L[t]の数列
(G(0,a[1],a[2],…,a[N]),G(1,a[1],a[2],…,a[N]),G(2,a[1],a[2],…,a[N]),…,G(Πt=1N L[t] - 1,a[1],a[2],…,a[N]))
を生成する。
【0014】
さらに、生成制御部は、互いに異なるN個の素数のそれぞれについて、
符号生成部に、当該素数と、当該素数に対する原始根と、当該素数に対するシフト量と、の組を与えて、原始根符号を生成させ、
生成されたN個の原始根符号を、数列生成部に与えて、数列を生成させ、
当該生成される数列を拡散符号とする。
【0015】
本発明のその他の観点に係る通信システムは、送信装置と、受信装置と、を備え、以下のように構成する。
【0016】
すなわち、送信装置と、受信装置と、は、いずれも、上記の拡散符号生成装置を備える。
【0017】
ここで、当該両拡散符号生成装置は、共通する組により、拡散符号を生成する。
【0018】
一方、送信装置は、伝送すべき信号を受け付ける受付部、受け付けられた信号を、拡散符号生成装置により生成された拡散符号により拡散する拡散部、拡散された信号を送信する送信部を備える。
【0019】
さらに、受信装置は、送信装置から送信された信号を受信する受信部、受信された信号を、拡散符号生成装置により生成された拡散符号により逆拡散する逆拡散部、逆拡散された信号を伝送された信号として出力する出力部を備える。
【0020】
本発明のその他の観点に係る送信装置は、上記の通信システムにおける送信装置である。
【0021】
本発明のその他の観点に係る受信装置は、上記の通信システムにおける受信装置である。
【0022】
本発明のその他の観点に係る拡散符号生成方法は、符号生成工程、数列生成工程、生成制御工程を備え、以下のように構成する。
【0023】
すなわち、符号生成工程では、
素数pと、
当該素数pを法とする有限体のいずれかの原始根rと、
1以上当該素数p未満のいずれかの整数であるシフト量kと、の組を受け付けて、
1のp乗根の一つ
ωp = exp(2πi/p)
と、当該素数pを法とする羃乗演算
F(a,b) = ab (mod p)
と、により定義される長さpの原始根符号
E(p,r,k) = (1,ωpF(r,k+0),ωpF(r,k+1),ωpF(r,k+2),…,ωpF(r,k+p-2))
を生成する。
【0024】
一方、数列生成工程では、
2つの数列
a = (a0,a1,a2,…,aL-1)
および、
b = (b0,b1,b2,…,aM-1)
を受け付けて、整数sに対して定義される演算
G(s,a,b) = as mod L bs mod M
により定義される長さLMの数列
(G(0,a,b),G(1,a,b),G(2,a,b),…,G(LM-1,a,b))
を生成する。
【0025】
さらに、生成制御工程では、
符号生成工程に、第1の素数と、当該第1の素数に対する第1の原始根と、当該第1の素数に対する第1のシフト量と、の組を与えて、第1の原始根符号を生成させ、
符号生成工程に、第1の素数とは異なる第2の素数と、当該第2の素数に対する第2の原始根と、当該第2の素数に対する第2のシフト量と、の組を与えて、第2の原始根符号を生成させ、
当該第1の原始根符号と、当該第2の原始根符号と、を、数列生成工程に与えて、数列を生成させ、
当該生成される数列を拡散符号とする。
【0026】
本発明のその他の観点に係る拡散符号生成方法は、符号生成工程、数列生成工程、生成制御工程を備え、以下のように構成する。
【0027】
すなわち、符号生成工程では、
素数pと、
当該素数pを法とする有限体のいずれかの原始根rと、
1以上当該素数p未満のいずれかの整数であるシフト量kと、の組を受け付けて、
1のp乗根の一つ
ωp = exp(2πi/p)
と、当該素数pを法とする羃乗演算
F(a,b) = ab (mod p)
と、により定義される長さpの原始根符号
E(p,r,k) = (1,ωpF(r,k+0),ωpF(r,k+1),ωpF(r,k+2),…,ωpF(r,k+p-2))
を生成する。
【0028】
一方、数列生成工程では、
N個の数列
a[1] = (a[1]0,a[1]1,a[1]2,…,a[1]L[1]-1);
a[2] = (a[2]0,a[2]1,a[2]2,…,a[2]L[2]-1);
…;
a[N] = (a[N]0,a[N]1,a[N]2,…,a[N]L[N]-1)
を受け付けて、整数sに対して定義される演算
G(s,a[1],a[2],…,a[N]) = Πt=1N a[t]s mod L[t]
により定義される長さΠt=1N L[t]の数列
(G(0,a[1],a[2],…,a[N]),G(1,a[1],a[2],…,a[N]),G(2,a[1],a[2],…,a[N]),…,G(Πt=1N L[t] - 1,a[1],a[2],…,a[N]))
を生成する。
【0029】
さらに、生成制御工程では、互いに異なるN個の素数のそれぞれについて、
符号生成工程に、当該素数と、当該素数に対する原始根と、当該素数に対するシフト量と、の組を与えて、原始根符号を生成させ、
生成されたN個の原始根符号を、数列生成工程に与えて、数列を生成させ、
当該生成される数列を拡散符号とする。
【0030】
本発明のその他の観点に係るプログラムは、コンピュータを上記拡散符号生成装置として機能させるように構成する。
【0031】
本発明のその他の観点に係るプログラムは、通信機能を備えるコンピュータを上記送信装置として機能させるように構成する。
【0032】
本発明のその他の観点に係るプログラムは、通信機能を備えるコンピュータを上記受信装置として機能させるように構成する。
【0033】
当該プログラムは、典型的には、コンピュータ読み書き可能な情報記録媒体に記録され、たとえば、コンパクトディスクと同型のもの、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスクと同型のもの、ディジタルビデオディスクと同型のもの、磁気テープ、または、半導体メモリ等を利用することができる。
【0034】
そして、上記の情報記録媒体は、コンピュータとは独立して配布、販売することができるほか、インターネット等のコンピュータ通信網を介して上記のプログラムそのものを配布、販売することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、複数の原始根符号からより長い符号を生成し、当該符号を用いて通信を行うのに好適な拡散符号生成装置、通信システム、送信装置、受信装置、これらをコンピュータ上にて実現するプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、以下にあげる実施形態は、説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素または全要素を、これと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【実施例1】
【0037】
本実施形態では、原始根を利用した直交符号を複数組み合わせて、新たな、より長さの長い直交符号を生成することとしている。以下では、まず、原始根符号について説明し、次に、本実施形態に係る拡散符号生成技術について説明するものとする。
【0038】
原始根符号を生成する際には、素数pを法とする有限体
Fp = {0,1,2,…,p-1}
を考える。有限体Fpにおいては、加算、減算、乗算は、素数pによる剰余によって演算される。この旨を特に強調したい場合には、演算の末尾に(mod p)のように表記するのが慣例となっている。
【0039】
有限体Fpの原始根rとは、1≦k<p-1なる整数kに対しては、いずれも
rk ≠ 1 (mod p)
であり、さらに、
rp-1 = 1 (mod p)
を満たす整数をいう。
【0040】
たとえば、F3においては、2が原始根であり、F5においては、2,3が原始根であり、F7においては、3,5が原始根であり、F11においては、2,6,7,8が原始根である。
【0041】
以下、理解を容易にするため、適宜
F(a,b) = ab (mod p)
のような表記を用いる。
【0042】
原始根については、
{F(r,1),F(r,2),…,F(r,p-1)} = {1,2,…,p-1}
が成立することが、広く知られている。すなわち、数列
1,2,…,p-1
の順序を適宜変更すると、数列
F(r,1),F(r,2),…,F(r,p-1)
に一致させることができる。
【0043】
さて、1のp乗根の一つ
ωp = exp(2πi/p)
と、1≦k<pを満たす整数kに対する数列
1,ωpF(r,k+0),ωpF(r,k+1),ωpF(r,k+2),…,ωpF(r,k+p-2)
を、素数pの原始根rおよびシフト量kに対する原始根符号E(p,r,k)、と呼ぶ。すなわち、
E(p,r,k) = (1,ωpF(r,k+0),ωpF(r,k+1),ωpF(r,k+2),…,ωpF(r,k+p-2))
である。
【0044】
たとえば、
E(3,2,1) = (1,ω3F(2,1),ω3F(2,2)) = (1,ω32,ω31) = (α0,α2,α1)
であり、
E(5,2,1) = (1,ω5F(2,1),ω5F(2,2),ω5F(2,3),ω5F(2,4)) = (1,ω52,ω54,ω53,ω51)) = (β0,β2,β4,β3,β1))
である。ここで、読み易さのため、α = ω3,β = ω5と置き換えている。
【0045】
図1は、複素平面上の単位円に配置される原始根符号E(3,2,1)の要素が、どの順序であるか、を示す説明図である。
【0046】
図2は、複素平面上の単位円に配置される原始根符号E(5,2,1)の要素が、どの順序であるか、を示す説明図である。
【0047】
以下、これらの図を参照して説明する。
【0048】
これらの図に示すように、各数列は、単位円上の各要素を、まんべんなく偏りなくたどるものであることがわかる。これは、原始根符号の性質によるものである。
【0049】
原始根符号E(p,r,k)は、長さpの複素ベクトルと考えることができる。複素ベクトルの内積を、《・,・》により表記するものとすると、
《E(p,r,k),E(p,r,k)》 = p
かつ、任意のk ≠ k'に対して、
《E(p,r,k),E(p,r,k')》 = 0
が成立する。
【0050】
このように、素数pの原始根rから得られる原始根符号は、シフト量kについて直交するので、p-1個のチャンネルを用いた通信が可能となる。
【0051】
このような原始根符号は、長さが素数pに限られる。そこで、素数p以外の長さの直交符号を生成する技術が強く求められる。本実施形態は、このような要望に応えるものである。
【0052】
発明者は、研究の末、既存の複数の原始根符号から、新たな、より長い直交符号を生成する技術を発明した。理解を容易にするため、まず、E(3,2,1)とE(5,2,1)から新たな原始根符号を生成する例について説明する。
【0053】
上記のように、
E(3,2,1) = = (α0,α2,α1)
であり、
E(5,2,1) = (β0,β2,β4,β3,β1)
である。そこで、E(3,2,1)については、相手方の素数5回、各要素を並べ、E(5,2,1)については、相手方の素数3回、各要素を並べる。すると、
α0,α2,α1,α0,α2,α1,α0,α2,α1,α0,α2,α1,α0,α2,α1
β0,β2,β4,β3,β1,β0,β2,β4,β3,β1,β0,β2,β4,β3,β1
のように、長さ15の数列が2つできることになる。
【0054】
次に、各数列の要素を、同じ順序のもの同士乗じる。すると、
α0×β0,α2×β2,α1×β4,α0×β3,α2×β1,α1×β0,α0×β2,α2×β4,α1×β3,α0×β1,α2×β0,α1×β2,α0×β4,α2×β3,α1×β1
のような、長さ15の数列が得られる。
【0055】
このような手順で、2つの数列から新たな数列を得る演算(×)を、一般に、以下のように定義する。すなわち、2つの数列
a = (a0,a1,a2,…,aL-1)
および、
b = (b0,b1,b2,…,aM-1)
を受け付けて、整数sに対して定義される演算
G(s,a,b) = as mod L bs mod M
により、長さLMの数列
a(×)b = (G(0,a,b),G(1,a,b),G(2,a,b),…,G(LM-1,a,b))
が得られる。ここで、a mod bは、aをbで割った余りである。
【0056】
上記の例でいえば、
E(3,2,1) (×) E(5,2,1) = (α0×β0,α2×β2,α1×β4,α0×β3,α2×β^β0,α1×β0,α0×β2,α2×β4,α1×β3,α0×β^β0,α2×β0,α1×β2,α0×β4,α2×β3,α1×β1)
となる。
【0057】
図3は、複素平面上の単位円に配置されるE(3,2,1) (×) E(5,2,1)の要素が、どの順序であるか、を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0058】
本図に示すように、E(3,2,1) (×) E(5,2,1)も、単位円上の各要素を、まんべんなく偏りなくたどるものである。
【0059】
そして、演算・(×)・によって得られた新たな数列についても、当該数列を生成する元となった原始根符号のシフト量について、直交性が成立することが判明している。すなわち、j≠j',k≠k'な整数j,j',k,k'について、
《E(3,2,j) (×) E(5,2,k),E(3,2,j) (×) E(5,2,k)》 = 3×5;
《E(3,2,j) (×) E(5,2,k),E(3,2,j) (×) E(5,2,k')》 = 0;
《E(3,2,j) (×) E(5,2,k),E(3,2,j') (×) E(5,2,k)》 = 0;
《E(3,2,j) (×) E(5,2,k),E(3,2,j') (×) E(5,2,k')》 = 0
が成立する。
【0060】
一般に、
(1)素数と、
(2)その素数を法とする有限体の原始根と、
(3)その素数に対するシフト量と、
の三つ組が与えられると、原始根符号を生成することができる。
【0061】
ここで、素数と原始根を固定し、シフト量を可変とすると、生成される原始根符号の種類の数は、当該素数より1だけ小さい数である。また、原始根符号の長さは、当該素数に等しい。
【0062】
そして、生成された2個以上の原始根符号に対して上記の演算(×)を適用すると、新たな直交符号が得られ、その直交符号の元の原始根符号の長さの積となるのである。
【0063】
また、元の原始根符号の素数と原始根符号を固定して、シフト量を可変とした場合には、生成される新たな直交符号の種類の数は、当該直交符号の長さと等しい。
【0064】
(拡散符号生成装置)
以下では、本直交符号を拡散符号として出力する拡散符号生成装置の詳細について説明する。
【0065】
図4は、本発明の実施形態の一つに係る拡散符号生成装置の概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0066】
ここで、拡散符号生成装置401は、符号生成部402、数列生成部403、生成制御部404を備える。
【0067】
符号生成部402は、原始根符号を生成するものであり、
素数pと、
当該素数pを法とする有限体のいずれかの原始根rと、
1以上当該素数p未満のいずれかの整数であるシフト量kと、の組を受け付けて、
1のp乗根の一つ
ωp = exp(2πi/p)
と、当該素数pを法とする羃乗演算
F(a,b) = ab (mod p)
と、により定義される長さpの原始根符号
E(p,r,k) = (1,ωpF(r,k+0),ωpF(r,k+1),ωpF(r,k+2),…,ωpF(r,k+p-2))
を生成する。これは単純な複素数演算の組み合わせによって実現することが可能であり、コンピュータや専用電子回路によって計算が可能である。
【0068】
なお、任意の素数pや原始根rが与えられることとしても良いし、1のp乗根が何種類か、あらかじめ用意されており、用意されたもののそれぞれに対する原始根rもあらかじめ用意されており、その中からいずれかを選択することで、原始根符号を生成するような態様を採用しても良い。
【0069】
一方、数列生成部403は、2つの数列
a = (a0,a1,a2,…,aL-1)
および、
b = (b0,b1,b2,…,aM-1)
を受け付けて、整数sに対して定義される演算
G(s,a,b) = as mod L bs mod M
により定義される長さLMの数列
a(×)b = (G(0,a,b),G(1,a,b),G(2,a,b),…,G(LM-1,a,b))
を生成する。
【0070】
また、数列生成部403は、一般に、N個の数列
a[1] = (a[1]0,a[1]1,a[1]2,…,a[1]L[1]-1);
a[2] = (a[2]0,a[2]1,a[2]2,…,a[2]L[2]-1);
…;
a[N] = (a[N]0,a[N]1,a[N]2,…,a[N]L[N]-1)
を受け付けて、整数sに対して定義される演算
G(s,a[1],a[2],…,a[N]) = Πt=1N a[t]s mod L[t]
により定義される長さΠt=1N L[t]の数列
a[1](×)a[2](×)…(×)a[N] = (G(0,a[1],a[2],…,a[N]),G(1,a[1],a[2],…,a[N]),G(2,a[1],a[2],…,a[N]),…,G(Πt=1N L[t] - 1,a[1],a[2],…,a[N]))
を生成する。
【0071】
これもまた、単純な複素数演算の組み合わせによって実現することが可能であり、コンピュータや専用電子回路によって計算が可能である。
【0072】
さらに、生成制御部404は、まず、符号生成部402に、第1の素数p[1]と、当該第1の素数p[1]に対する第1の原始根r[1]と、当該第1の素数p[1]に対する第1のシフト量k[1]と、の組を与えて、第1の原始根符号E(p[1],r[1],k[1])を生成させる。原始根符号E(p[1],r[1],k[1])の長さは、p[1]である。
【0073】
ついで、符号生成部402に、第1の素数p[1]とは異なる第2の素数p[2]と、当該第2の素数p[2]に対する第2の原始根r[2]と、当該第2の素数p[2]に対する第2のシフト量k[2]と、の組を与えて、第2の原始根符号E(p[2],r[2],k[2])を生成させる。原始根符号E(p[2],r[2],k[2])の長さは、p[2]である。
【0074】
そして、当該第1の原始根符号E(p[1],r[1],k[1])と、当該第2の原始根符号E(p[2],r[2],k[2])と、を、数列生成部403に与えて、数列を生成させ、当該生成される数列を拡散符号とする。当該拡散符号の長さは、p[1]p[2]である。
【0075】
一般に、生成制御部404は、互いに異なるN個の素数のそれぞれについて、符号生成部402に、当該素数と、当該素数に対する原始根と、当該素数に対するシフト量と、の組を与えて、原始根符号を生成させる。
【0076】
そして、生成されたN個の原始根符号を、数列生成部403に与えて、数列を生成させて、当該生成される数列を拡散符号とする。
【0077】
(送信装置と受信装置)
以下では、本発明の実施形態の一つに係る通信システムについて説明する。当該通信システムの送信装置と受信装置は、上記の拡散符号生成装置を利用して通信する。
【0078】
図5は、本発明の実施形態の一つに係る通信システムの概要構成を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0079】
通信システム501は、送信装置521と、受信装置541と、を備える。ここで、送信装置521と、受信装置541と、は、いずれも、上記の拡散符号生成装置401を備える。
【0080】
送信装置521の拡散符号生成装置401と、受信装置541の拡散符号生成装置401と、には、共通する複数の組が与えられて、拡散符号が生成される。生成される拡散符号の長さは、与えられる複数の組に含まれる素数の積である。
【0081】
本実施形態では、この拡散符号は複素直交符号であり、これをそのまま利用することで、CDMA(Code Division Multiple Access)通信が可能となる。
【0082】
すなわち、送信装置521において、受付部522は、伝送すべき信号を受け付け、拡散部523は、受け付けられた信号を、拡散符号生成装置401により生成された拡散符号により拡散し、送信部524は、拡散された信号を送信する。
【0083】
一方、受信装置541において、受信部542が、送信装置521から送信された信号を受信し、逆拡散部543が、受信された信号を、拡散符号生成装置401により生成された拡散符号により逆拡散し、出力部544が、逆拡散された信号を伝送された信号として出力する。
【0084】
拡散ならびに逆拡散については、直接拡散などの公知の技術を適用することができる。また、本態様においては、同じ素数や原始根を利用した場合であっても、シフト量を可変とすることで、多数の拡散符号を得ることができる。
【0085】
そこで、複数の通信チャンネルのそれぞれに生成された拡散符号のそれぞれを利用するような態様に拡張することも可能である。特に、OFDMのような複数のサブチャネルを有する通信システムにおいて、各サブチャネルに異なるシフト量のセットから生成された拡散符号を割り当てて、各サブチャネル間の分離性能を向上させることができる。
【0086】
なお、これらの送信装置521や受信装置541は、通信機能を有するコンピュータにプログラムを実行させることにより実現できるほか、通信機能を有する専用の電子回路やソフトウェアラジオなどのプログラム可能な電子回路によっても実現が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明によれば、複数の原始根符号からより長い符号を生成し、当該符号を用いて通信を行うのに好適な拡散符号生成装置、通信システム、送信装置、受信装置、これらをコンピュータ上にて実現するプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】複素平面上の単位円に配置される原始根符号E(3,2,1)の要素が、どの順序であるか、を示す説明図である。
【図2】複素平面上の単位円に配置される原始根符号E(5,2,1)の要素が、どの順序であるか、を示す説明図である。
【図3】複素平面上の単位円に配置されるE(3,2,1) (×) E(5,2,1)の要素が、どの順序であるか、を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態の一つに係る拡散符号生成装置の概要構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態の一つに係る通信システムの概要構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0089】
401 拡散符号生成装置
402 符号生成部
403 数列生成部
404 生成制御部
501 通信システム
521 送信装置
522 受付部
523 拡散部
524 送信部
541 受信装置
542 受信部
543 逆拡散部
544 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素数pと、
当該素数pを法とする有限体のいずれかの原始根rと、
1以上当該素数p未満のいずれかの整数であるシフト量kと、の組を受け付けて、
1のp乗根の一つ
ωp = exp(2πi/p)
と、当該素数pを法とする羃乗演算
F(a,b) = ab (mod p)
と、により定義される長さpの原始根符号
E(p,r,k) = (1,ωpF(r,k+0),ωpF(r,k+1),ωpF(r,k+2),…,ωpF(r,k+p-2))
を生成する符号生成部、
2つの数列
a = (a0,a1,a2,…,aL-1)
および、
b = (b0,b1,b2,…,aM-1)
を受け付けて、整数sに対して定義される演算
G(s,a,b) = as mod L bs mod M
により定義される長さLMの数列
(G(0,a,b),G(1,a,b),G(2,a,b),…,G(LM-1,a,b))
を生成する数列生成部、
前記符号生成部に、第1の素数と、当該第1の素数に対する第1の原始根と、当該第1の素数に対する第1のシフト量と、の組を与えて、第1の原始根符号を生成させ、前記符号生成部に、前記第1の素数とは異なる第2の素数と、当該第2の素数に対する第2の原始根と、当該第2の素数に対する第2のシフト量と、の組を与えて、第2の原始根符号を生成させ、当該第1の原始根符号と、当該第2の原始根符号と、を、前記数列生成部に与えて、数列を生成させ、当該生成される数列を拡散符号とする生成制御部
を備えることを特徴とする拡散符号生成装置。
【請求項2】
素数pと、
当該素数pを法とする有限体のいずれかの原始根rと、
1以上当該素数p未満のいずれかの整数であるシフト量kと、の組を受け付けて、
1のp乗根の一つ
ωp = exp(2πi/p)
と、当該素数pを法とする羃乗演算
F(a,b) = ab (mod p)
と、により定義される長さpの原始根符号
E(p,r,k) = (1,ωpF(r,k+0),ωpF(r,k+1),ωpF(r,k+2),…,ωpF(r,k+p-2))
を生成する符号生成部、
N個の数列
a[1] = (a[1]0,a[1]1,a[1]2,…,a[1]L[1]-1);
a[2] = (a[2]0,a[2]1,a[2]2,…,a[2]L[2]-1);
…;
a[N] = (a[N]0,a[N]1,a[N]2,…,a[N]L[N]-1)
を受け付けて、整数sに対して定義される演算
G(s,a[1],a[2],…,a[N]) = Πt=1N a[t]s mod L[t]
により定義される長さΠt=1N L[t]の数列
(G(0,a[1],a[2],…,a[N]),G(1,a[1],a[2],…,a[N]),G(2,a[1],a[2],…,a[N]),…,G(Πt=1N L[t] - 1,a[1],a[2],…,a[N]))
を生成する数列生成部、
互いに異なるN個の素数のそれぞれについて、前記符号生成部に、当該素数と、当該素数に対する原始根と、当該素数に対するシフト量と、の組を与えて、原始根符号を生成させ、前記生成されたN個の原始根符号を、前記数列生成部に与えて、数列を生成させ、当該生成される数列を拡散符号とする生成制御部
を備えることを特徴とする拡散符号生成装置。
【請求項3】
送信装置と、受信装置と、を備える通信システムであって、
前記送信装置と、前記受信装置と、は、いずれも、請求項1または2に記載の拡散符号生成装置を備え、当該両拡散符号生成装置は、共通する組により、拡散符号を生成し、
前記送信装置は、
伝送すべき信号を受け付ける受付部、
前記受け付けられた信号を、前記拡散符号生成装置により生成された拡散符号により拡散する拡散部、
前記拡散された信号を送信する送信部
を備え、
前記受信装置は、
前記送信装置から送信された信号を受信する受信部、
前記受信された信号を、前記拡散符号生成装置により生成された拡散符号により逆拡散する逆拡散部、
前記逆拡散された信号を伝送された信号として出力する出力部
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の通信システムにおける送信装置。
【請求項5】
請求項3に記載の通信システムにおける受信装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1または2に記載の拡散符号生成装置の各部として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項4に記載の送信装置の各部として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項5に記載の受信装置の各部として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−130623(P2010−130623A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306275(P2008−306275)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(304001545)株式会社カオスウェア (28)
【Fターム(参考)】