説明

拭き取りシート及びその製造方法

【課題】柔軟性が優れ、水分、油分のいずれも十分に吸収できると共に、再汚染を防止できる拭き取りシート及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、親水性が異なる第1繊維シート1と、第2繊維シート2とが積層された拭き取りシート10であって、第1繊維シート1と第2繊維シート2とが係止部3を介して一体となっており、係止部3が、第1繊維シート1の繊維の一部を、第2繊維シート2の繊維に係止させることにより形成されたものである拭き取りシート10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拭き取りシート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
拭き取りシートは、机、床、ガラス等の汚れを拭き取るための雑巾や靴の裏についた汚れを取るための足拭きマットとして用いられる。
【0003】
このような拭き取りシートとしては、水分だけでなく油分も拭き取る観点から、異なる物性の繊維を積層させたものが知られている。
例えば、液透過性の表面シートと、液保持性の吸収シートとを熱エンボス処理にて一体化した清掃シート(例えば、特許文献1参照)、捲縮疎水性長繊維不織布と、親水性短繊維不織布とを熱圧着にて積層させた複合不織布ワイパー(例えば、特許文献2参照)、メルトブローン不織布と、他の繊維集合物とを熱処理により接着したワイパー(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3621223号公報
【特許文献2】特開2004−97462号公報
【特許文献3】特許第4227630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の熱を用いて積層された拭き取りシートは、いずれも2つの層の界面を熱で軟化させるので、必然的に拭き取りシート自体が固くなるという欠点がある。
また、軟化により、界面の繊維の密度が高くなり、明確なバリアー壁が生じるので、水分及び油分の両方を同時に吸収するのは困難である。
さらに、汚れを拭き取ることにより拭き取りシートに付着した汚れが、対象物を汚染する場合がある(以下かかる現象を「再汚染」という。)。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、柔軟性が優れ、水分、油分のいずれも十分に吸収できると共に、再汚染を防止できる拭き取りシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、第1繊維シートと第2繊維シートとを係止部を介して繊維シート同士を一体とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)親水性が異なる第1繊維シートと、第2繊維シートとが積層された拭き取りシートであって、第1繊維シートと第2繊維シートとが係止部を介して一体となっており、係止部が、第1繊維シートの繊維の一部を、第2繊維シートの繊維に係止させることにより形成されたものである拭き取りシートに存する。
【0009】
本発明は、(2)係止部が、第2繊維シートを突き抜けている上記(1)記載の拭き取りシートに存する。
【0010】
本発明は、(3)係止部の突き抜けた部分同士が、編まれている上記(1)又は(2)に記載の拭き取りシートに存する。
【0011】
本発明は、(4)係止部が、ニードルパンチ処理により形成されたものである上記(1)又は(2)に記載の拭き取りシートに存する。
【0012】
本発明は、(5)係止部が5〜200個/cmの割合で形成されている上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の拭き取りシートに存する。
【0013】
本発明は、(6)第1繊維シートと第2繊維シートとが部分的に接着剤で貼着されている上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の拭き取りシートに存する。
【0014】
本発明は、(7)第2繊維シートには樹脂層が積層されている上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の拭き取りシートに存する。
【0015】
本発明は、(8)第1繊維シートが親水性繊維からなり、第2繊維シートが親油性繊維からなる上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の拭き取りシートに存する。
【0016】
本発明は、(9)第1繊維シート及び第2繊維シートがいずれも不織布である上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の拭き取りシートに存する。
【0017】
本発明は、(10)第1繊維シートが不織布であり、第2繊維シートが織物又は編物である上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の拭き取りシートに存する。
【0018】
本発明は、(11)第1繊維シートが織物又は編物であり、第2繊維シートが不織布である上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の拭き取りシートに存する。
【0019】
本発明は、(12)第1繊維シートが織物又は編物であり、第2繊維シートが織物又は編物である上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の拭き取りシートに存する。
【0020】
本発明は、(13)上記(9)記載の拭き取りシートの製造方法であって、第1繊維シートの原料となるウェブと、不織布からなる第2繊維シートとを積層し、ニードルパンチ処理を施して係止部を形成し両シートを結合させる拭き取りシートの製造方法に存する。
【0021】
本発明は、(14)上記(10)記載の拭き取りシートの製造方法であって、第1繊維シートの原料となるウェブと、織物又は編物からなる第2繊維シートとを積層し、ニードルパンチ処理を施して係止部を形成し両シートを結合させる拭き取りシートの製造方法に存する。
【0022】
本発明は、(15)上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載の拭き取りシートの製造方法であって、第1繊維シートと、第2繊維シートとを積層し、ニードルパンチ処理を施して係止部を形成し両シートを結合させる拭き取りシートの製造方法に存する。
【0023】
本発明は、(16)上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載の拭き取りシートの製造方法であって、第1繊維シートと、第2繊維シートとを積層し、縫製処理を施して編まれた係止部を形成し両シートを結合させる拭き取りシートの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の拭き取りシートは、対象物の汚れを拭き取る際、拭き取りシートを汚れの部分に押し当てられる。また、足拭きマットとして用いる場合は、踏みつけられる。すなわち、拭き取りシートは圧縮されると共に、水分及び油分の汚れが吸着される。
このとき、上記拭き取りシートは、親水性が異なる(親油性も異なる)第1繊維シートと、第2繊維シートと別々に備えるので、水分、油分を分離して十分に吸収できる。例えば、第1繊維シートが、親水性が高い親水性繊維からなり、第2繊維シートが親水性が低い親油性繊維からなる場合、第1繊維シートが水分を吸収し、第2繊維シートが油分を吸収する。
【0025】
また、拭き取りシートは、係止部を備えるので、例えば、親水性が低いほうの繊維シートに水分が存在する場合、いわゆる導水現象により、係止部を伝って親水性が高いほうの繊維シートに水分を移行させることができる。このため、親水性が低いほうの繊維シート(親油性の繊維シート)が過分に水分を含むことや親水性が高いほうの繊維シート(親水性の繊維シート)が過分に油分を含むことが抑制され、拭き取りシートを再利用する際の再汚染が防止できる。なお、係止部は30個/cmの割合で形成されていることが好ましい。
【0026】
さらに、拭き取りシートは、熱を用いずに第1繊維シートと、第2繊維シートとを係止部を介して一体化させるので、第1繊維シートと第2繊維シートとの間にバリアー壁が形成されず、水分、油分を十分に吸収できると共に、柔軟性にも優れるものとなる。
【0027】
本発明の拭き取りシートにおいては、係止部が、第2繊維シートを突き抜けている場合、突き抜けた部分の係止部同士が絡み合うことで、係止強度をより向上させることができる。なお、係止部の突き抜けた部分同士が、編まれていると、係止強度をより一層向上させることができ、摩擦による剥離や磨耗に対しても耐久性が向上する。
【0028】
本発明の拭き取りシートは、係止部がニードルパンチ処理により形成されたものであると、係止部の形成が容易であり、一定の深さの係止部を形成することができるので、係止強度のばらつきが抑制される。
【0029】
本発明の拭き取りシートは、第1繊維シートと第2繊維シートとが部分的に接着剤で貼着されていると、第1繊維シートと第2繊維シートとが係止されているのに加え、一部が接着されるので、剥離がより抑制される。なお、第1繊維シートと第2繊維シートとの間に接着剤が部分的に存在しても係止部が存在するので、上述した水分の移行の妨げにはならない。
【0030】
本発明の拭き取りシートは、第2繊維シートに樹脂層が積層されていると、例えば、足拭きマットに用いる場合、形状を保持できる。また、雑巾として用いる場合、質感が向上する。
【0031】
本発明の拭き取りシートは、第1繊維シート及び第2繊維シートがいずれも不織布であると、軽量であり、水分又は油分の吸収性も向上する。このため、雑巾の用途に好適である。
【0032】
本発明の拭き取りシートは、第1繊維シートが不織布であり、第2繊維シートが織物又は編物である場合、又は、第1繊維シートが織物又は編物であり、第2繊維シートが不織布である場合、強度や厚みを調整できる。なお、厚みを大きくすると、保持できる油又は水の量が多くなる。このため、足拭きマットの用途に好適である。
【0033】
本発明の拭き取りシートは、第1繊維シート及び第2繊維シートがいずれも織物又は編物であると、繊維が連続するので耐久性が優れる。ニットは厚さを保ち易いので油を含有させやすいという利点がある。
【0034】
本発明の拭き取りシートの製造方法は、ニードルパンチ処理を用いることにより、ウェブからの不織布作製と、係止部の形成と、第1繊維シート及び第2繊維シートの結合と、を同時に行うことが可能である。
また、第1繊維シートと第2繊維シートとを積層し、縫製処理を施すことにより、第1繊維シート及び第2繊維シートを結合させると共に、編まれた係止部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、第1実施形態に係る拭き取りシートを模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る拭き取りシートの製造方法におけるニードルパンチ処理を示す概略図である。
【図3】図3は、第2実施形態に係る拭き取りシートを模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、第3実施形態に係る拭き取りシートを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、必要に応じて図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0037】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る拭き取りシートの第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る拭き取りシートを模式的に示す断面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る拭き取りシート10は、親水性が異なる第1繊維シート1と、第2繊維シート2とが積層されており、第1繊維シート1と第2繊維シート2とが係止部3を介して一体となっている。
【0038】
第1実施形態に係る拭き取りシート10においては、第1繊維シート1が親水性であり、第2繊維シート2が親油性である。すなわち、第1繊維シート1が第2繊維シート2よりも親水性が高くなっている。
【0039】
第1実施形態に係る拭き取りシート10は、汚れを拭き取る際、汚れの部分に押し当てられる。また、足拭きマットとして用いる場合は、靴底に汚れがついた状態で踏みつけられる。すなわち、これらの場合、拭き取りシート10は圧縮されると共に、水分及び油分の汚れが吸着される。
このとき、上記拭き取りシートは、親水性である第1繊維シート1と、親油性である第2繊維シート2とを備えるので、第1繊維シート1が水分を吸収し、第2繊維シート2が油分を吸収することになる。
また、第1繊維シート1と、第2繊維シート2とが別々の層になっているので、水分と油分とが分離して吸収される。
【0040】
親水性の第1繊維シート1は、不織布からなる。このため、水分を十分に吸収できる。
第1繊維シート1に用いられる親水性繊維としては、レーヨン、コットン、ウール等の天然繊維、アクリル、ナイロン、ポリエステル、ビニロン等の極性基を有する合成繊維が挙げられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
これらの中でも、第1繊維シート1に用いられる繊維は、親水性及び耐久性の観点から、レーヨン及びポリエステルの複合物であることが好ましい。
【0041】
親油性の第2繊維シート2は、不織布からなる。このため、油分を十分に吸収できる。
第2繊維シート2に用いられる親油性繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の非極性の合成繊維が挙げられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
これらの中でも、第2繊維シート2に用いられる繊維は、汎用性及び耐久性の観点から、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0042】
上記拭き取りシート10においては、第1繊維シート及び第2繊維シートがいずれも不織布であるので、軽量であり、水分又は油分の吸収性も向上する。このため、雑巾の用途に好適である。
【0043】
ここで、第1繊維シート1及び第2繊維シート2の製造方法は特に限定されない。例えば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法、スチームジェット法等により不織布とされる。
【0044】
第1繊維シート1に用いられる繊維の繊度は、1〜30dtexであることが好ましい。繊度が1dtex未満であると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、磨耗に対して耐久性が不十分となる傾向があり、繊度が30dtexを超えると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、水分の貯蓄力が低下する傾向がある。
第2繊維シート2に用いられる繊維の繊度は、0.5〜30dtexであることが好ましい。繊度が0.5dtex未満であると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、生地としての強度が不十分となる傾向があり、繊度が30dtexを超えると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、油分の貯蓄力が低下する傾向がある。
【0045】
第1繊維シートに用いられる繊維は、2種類以上の太さの繊維を混合することが好ましい。例えば、1〜3dtex程度の細い繊維は、水分や油分の貯蓄力が向上したり、いわゆる毛細管現象によって、拭き取った液体を生地全体へ拡散させたりする傾向があり、20〜30dtex程度の太い繊維は、拭き取りたい水分や油分を対象物から掻き取る効果が高い傾向にある。
したがって、2種類以上の太さの繊維を混合すると、水分や油分の貯蓄力が向上すると共に、拭き取りたい水分や油分を対象物から掻き取る効果が得られる。
【0046】
係止部3は、第1繊維シート1の繊維の一部を、第2繊維シート2の繊維に係止させることにより形成される。
図1に示すように、第1実施形態に係る拭き取りシート10においては、係止部3が、第1繊維シート1の繊維の一部を、第2繊維シート2の繊維に係止させることにより形成されている。
また、係止部3は、第2繊維シート2を突き抜けている。
【0047】
拭き取りシート10は、係止部3を備えるので、例えば、第1繊維シート1に油分が存在する場合、いわゆる毛細管現象により、係止部3を伝って第2繊維シート2に油分を移行させることができる。なお、第2繊維シートは親水性が低く、親油性が高いため、水分は第1繊維シートから第2繊維シートへの移行が少ない。これにより、親水性の第1繊維シート1が水分を吸収し、親油性の第2繊維シート2が油分を吸収することになる。その結果、水分と油分とが分離される。
したがって、水分を吸収しにくい親油性の第2繊維シート2が水分を含まなくなり、油分を吸収しにくい親水性の第1繊維シート1が油分を含まなくなるので、拭き取りシート10を再利用する際、水分又は油分が脱落し、対象物への再汚染が生じるのを防止できる。
【0048】
拭き取りシート10においては、係止部3が、第2繊維シート2を突き抜けているので、突き抜けた部分の係止部3同士が絡み合うことにより、第1繊維シート1と第2繊維シート2との係止強度を向上させることができる。
【0049】
拭き取りシート10においては、熱を用いずに第1繊維シート1と、第2繊維シート2とを係止部3にて一体化させるので、第1繊維シート1と第2繊維シート2との接着性の相性を考慮する必要はなく、物理的にあらゆる種類の繊維を組み合わせることが可能であり、第1繊維シート1と第2繊維シート2との間にバリアー壁が形成されないので、水分、油分を十分に吸収でき、柔軟性にも優れる。
【0050】
拭き取りシート10において、係止部3は、第1繊維シート1と第2繊維シート2とを重ね、第1繊維シート1側から後述するニードルパンチ処理により形成される。
このように、係止部3は、ニードルパンチ処理により形成されたものであると、係止部3の形成が容易であり、一定の深さの係止部3を形成することができるので、係止強度のばらつきが抑制される。なお、ここでいう係止強度とは、第1繊維シート1と第2繊維シート2とを剥がそうとする力に対抗する力を意味する。
【0051】
ここで、係止部3は5〜200個/cmの割合で形成されていることが好ましい。係止部3の割合が5個/cm未満であると、係止部3の割合が上記範囲内にある場合と比較して、係止強度が不十分となる傾向があり、係止部3の割合が200個/cmを超えると、係止部3の割合が上記範囲内にある場合と比較して、風合いが損なわれる傾向がある。
【0052】
第1実施形態に係る拭き取りシート10においては、第1繊維シート1と第2繊維シート2との間に、接着剤からなる接着部(図示しない)が部分的に設けられていてもよい。すなわち、第1繊維シート1と第2繊維シート2とが接着剤で貼着されていてもよい。
このとき、接着部は、係止部3を介した水分と油分との移行を妨げないようにするため、層状ではなく、ドット状のように部分的に設けられている。
この場合、第1繊維シート1と第2繊維シート2とが係止されているのに加え、接着されるので、剥離がより抑制される。
【0053】
上記接着剤としては、EVA、ナイロン、変性アクリル樹脂や合成ゴム等の粘着材等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
【0054】
本実施形態に係る拭き取りシート10は、雑巾、足拭きマット等の用途に好適に用いられる。
【0055】
次に、拭き取りシート10の製造方法の一例について説明する。
拭き取りシート10は、まず、第2繊維シート2の原料となる繊維塊を帯状のウェブとし、公知の方法で不織布とする。
そして、第1繊維シート1の原料となる繊維塊を帯状のウェブとし、不織布からなる第2繊維シートと積層させ、ニードルパンチ処理を施して両シートを一体に結合する。
【0056】
図2は、本実施形態に係る拭き取りシートの製造方法におけるニードルパンチ処理を示す概略図である。
図2に示すように、拭き取りシート10の製造方法においては、第1繊維シート1の原料となる繊維塊を帯状としたウェブ51と、不織布からなる第2繊維シート2とをローラー55を介して積層させる(拡大部P1参照)。なお、この時点では一体化されていない。
【0057】
次に、ウェブ51と第2繊維シート2とが積層された状態のまま、ニードルパンチ装置56にて、矢印Aの方向にニードルパンチ処理が施される。
このとき、かえしのある針を突き刺して、機械的にウェブ51の繊維をかえしの部分に引掛け、更に、第2繊維シート2を貫通させ、ウェブ51の繊維が第2繊維シート2の繊維に係止される。
こうして、結果的にウェブ51が不織布からなる第1繊維シート1となると共に、第1繊維シート1の繊維が第2繊維シート2の繊維に係止された拭き取りシート10が得られる(拡大部P2参照)。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る拭き取りシートの第2実施形態について説明する。
図3は、第2実施形態に係る拭き取りシートを模式的に示す断面図である。
図3に示すように、第2実施形態に係る拭き取りシート20は、親水性が異なる第1繊維シート11と、第2繊維シート12と、樹脂層14とがこの順序で積層されており、第1繊維シート11と第2繊維シート12とが係止部13を介して一体に結合されている。
すなわち、第2繊維シート12に樹脂層14が積層されている点、及び後述する第2繊維シート12が織物又は編物からなる点で第1実施形態に係る拭き取りシート10と異なる。
【0059】
拭き取りシート20は、樹脂層14が外側に積層されているので、例えば、足拭きマットに用いる場合、床との摩擦に強くなる。また、雑巾として用いる場合、質感が向上する。
【0060】
樹脂層14は、第2繊維シート12に樹脂を付与し硬化させることにより形成される。
かかる樹脂としては、NBR、SBR、EVA等の合成ゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
【0061】
第1繊維シート11は、不織布からなり、第1実施形態に係る拭き取りシート10における第1繊維シート2と同様である。
第2繊維シート12は、織物又は編物からなる。このため、強度や厚みを調整できる。なお、厚みを大きくすると、保持できる油の量が多くなる。
【0062】
第2繊維シート12に用いられる繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の非極性の合成繊維が挙げられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
これらの中でも、第2繊維シート12に用いられる繊維は、汎用性及び耐久性の観点から、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0063】
第2繊維シート12に用いられる繊維は、マルチフィラメントの糸を使用していることが好ましい。
また、構成するフィラメントの繊度は、0.5〜20dtexであることが好ましい。繊度が0.5dtex未満であると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、強度が不十分となる傾向があり、繊度が20dtexを超えると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、油分の貯蓄力が低下する傾向がある。
【0064】
次に、拭き取りシート20の製造方法の一例について説明する。
拭き取りシート20は、まず、第2繊維シート12の原料となる糸を公知の方法で織物又は編物とする。
そして、第1繊維シート11の原料となる繊維塊を帯状のウェブとし、織物又は編物からなる第2繊維シート12と積層させ、第1実施形態に係る拭き取りシート10の製造方法と同様にして、ニードルパンチ処理を施す。
これにより、ウェブが不織布からなる第1繊維シート11となると共に、第1繊維シート11の繊維が第2繊維シート12の繊維に係止される。
【0065】
そして、第2繊維シート12の第1繊維シート11とは反対の面に、樹脂を付与する。付与方法は、特に限定されず、コーティング、スプレー等が挙げられる。
樹脂を硬化させ、樹脂層14を形成することにより、拭き取りシート20が得られる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る拭き取りシートの第3実施形態について説明する。
図4は、第3実施形態に係る拭き取りシートを模式的に示す断面図である。
図4に示すように、第3実施形態に係る拭き取りシート30は、親水性が異なる第1繊維シート21と、第2繊維シート22と、が積層されており、第1繊維シート21と第2繊維シート22とが縫製処理を施して形成された係止部23を介して一体となっている。また、係止部23の突き抜けた部分同士が編まれている。すなわち、係止部23が縫製処理により形成されており、係止部23の突き抜けた部分同士が編まれている点、及び後述する第1繊維シート21と第2繊維シート22とが共に織物又は編物である点で第1実施形態に係る拭き取りシート10と異なる。
【0067】
拭き取りシート30は、係止部23の突き抜けた部分同士が、編まれているので、係止強度をより一層向上させることができ、摩擦による剥離や磨耗に対しても耐久性が向上する。
拭き取りシート30は、第1繊維シート21及び第2繊維シート22がいずれも織物又は編物であるので耐久性が優れる。また、ニットは厚さを保ち易いので油を含有させやすいという利点がある。
【0068】
第1繊維シート21及び第2繊維シート22は、織物又は編物からなり、第2実施形態に係る拭き取りシート20における第2繊維シート12と同様である。なお、第1繊維シート21と第2繊維シート22とは同一の形態であっても異なる形態であってもよい。
【0069】
次に、拭き取りシート30の製造方法の一例について説明する。
拭き取りシート30は、まず、第1繊維シート21の原料となる糸を公知の方法で織物又は編物とし、同様に、第2繊維シート22の原料となる糸を公知の方法で織物又は編物とする。
そして、織物又は編物からなる第1繊維シート21と、織物又は編物からなる第2繊維シート22と積層させ、縫製処理を施す。
これにより、第1繊維シート21と第2繊維シート22とを一体に結合すると共に、第2繊維シート22側の突き抜けた部分同士を編み込んだ係止部23が形成される。
【0070】
このように、係止部23は、縫製処理により編まれて形成されたものであると、係止部23の形成が容易であり、貫通した糸が第1繊維シート21と第2繊維シート22を強固に結合することができるので、係止強度のばらつきが抑制される。また、拭き取り時の磨耗にも耐え、シートの耐久性が増す。
また、係止部23の突き抜けた部分同士を編み込むことにより、係止強度をより一層向上させることができ、摩擦による剥離や磨耗に対しても耐久性を向上させることができる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0072】
例えば、第1実施形態に係る拭き取りシート10においては、第1繊維シート1を親水性繊維からなるものとし、第2繊維シート2を親油性繊維からなるものとしているが、第1繊維シートを親油性繊維からなるものとし、第2繊維シートを親水性繊維からなるものとしてもよい。
【0073】
第2実施形態に係る拭き取りシート20においては、第1繊維シート11を不織布とし、第2繊維シート12を織物又は編物としているが、第1繊維シートを織物又は編物とし、第2繊維シートを不織布としてもよい。
【0074】
第1〜第3実施形態に係る拭き取りシートにおいて、係止部は、第2繊維シートを突き抜けているが、当然、第2繊維シートを突き抜けていないものが混在していてもよい。
【0075】
第1〜第3実施形態に係る拭き取りシートにおいては、第1繊維シートの表面(第2繊維シートの反対側)には樹脂が塗布されていてもよい。この場合、拭き取り時の摩擦に対して耐久性が向上する。また、質感が向上する。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
第1繊維シートとして、レーヨン(繊度5.6dtex、繊維長51mm)が80質量%、ポリエステル(繊度11dtex、繊維長51mm)が20質量%、含まれている繊維塊を帯状のウェブとした。
第2繊維シートとして、ポリプロピレン(繊度6.6dtex、繊維長51mm)の繊維塊を帯状のウェブとし、ニードルパンチ処理にて不織布(以下便宜的に「第1不織布」という。)とした。
【0078】
そして、ウェブと第1不織布とを図2に示すようにして積層させ、ニードルパンチ処理を施すことにより、第1繊維シート(100g/m)と第2繊維シート(100g/m)とが一体化された拭き取りシートを得た。
【0079】
(実施例2)
第1繊維シートとして、レーヨン(繊度5.6dtex、繊維長51mm)が80質量%、ポリエステル(繊度11dtex、繊維長51mm)が20質量%、含まれている繊維塊を帯状のウェブとした。
第2繊維シートとして、ポリプロピレンを用い、スパンボンド法にて不織布(以下便宜的に「第2不織布」という。)とした。
【0080】
そして、ウェブと第2不織布とを図2に示すようにして積層させ、ニードルパンチ処理を施すことにより、第1繊維シート(100g/m)と第2繊維シート(100g/m)とを一体化させた。
さらに、第2繊維シートの表面に、NBR樹脂(100%)をスプレーにより付与して樹脂層を形成することにより、拭き取りシートを得た。
【0081】
(実施例3)
第1繊維シートとして、レーヨンを40番手(綿番手)に紡績して糸を作成し、13ゲージの天竺編み組織で編み立てた。
第2繊維シートとして、ポリプロピレン(繊度2.2dtex、繊維長51mm)が100質量%の繊維隗を帯状のウェブとし、ニードルパンチ処理にて不織布とした。
【0082】
そして、第1繊維シート(100g/m)と、第2繊維シート(100g/m)を重ね合わせ、150dtexのポリエステルマルチフィラメントを経糸とし、18ゲージの間隔でラッセル編みによってボンディングすることにより、拭き取りシートを得た。
【0083】
(比較例1)
レーヨン(繊度5.6dtex、繊維長51mm)が80質量%、ポリエステル(繊度11dtex、繊維長51mm)が20質量%、含まれている繊維塊を帯状のウェブとし、ニードルパンチ処理にて200g/mの不織布とし、拭き取りシートとした。
【0084】
(比較例2)
ポリプロピレン(繊度2.2dtex、繊維長51mm)が80質量%、ポリエステル(繊度11dtex、繊維長51mm)が20質量%、含まれている繊維塊を帯状のウェブとし、ニードルパンチ処理にて200g/mの不織布とし、拭き取りシートとした。
【0085】
(評価)
[拭き取り性]
実施例1〜3及び比較例1,2の拭き取りシートについて拭き取り性を確認した。
まず、サラダ油90質量部及び水10質量部を混合した液体を、天然ゴムの板の上に約10cc滴下し、10cm四方にカットした拭き取りシートを一往復させて拭き取った。
そして、ゴム板の上に残ったサラダ油及び水の状況を目視で評価した。拭き取り性は、目視で確認できないほどの汚れしかない場合を「○」とし、若干の汚れが確認できる場合を「△」とし、汚れが拭き取れていない場合を「×」として評価した。得られた結果を表1に示す。
【0086】
[再汚染性]
実施例1〜3及び比較例1,2の拭き取りシートについて再汚染性を確認した。
まず、10cm四方にカットした拭き取りシートに、サラダ油90質量部及び水10質量部を混合した液体を30cc含ませた。
そして、汚れていないゴム板の上にかかる拭き取りシートを一往復させて、ゴム板に転写した汚れ(再汚染)の状況を目視で確認した。
再汚染性は、目視で確認できないほどの汚れしかない場合を「○」とし、若干の汚れが確認できる場合を「△」とし、目視で容易に汚れが確認できる場合を「×」として評価した。得られた結果を表1に示す。
【0087】
[水分、油分保持量]
実施例1〜3及び比較例1,2の拭き取りシートについて水分保持量及び油分保持量を測定した。
まず、10cm四方にカットした拭き取りシートを1分間、水面の上に載置することにより、水を浸漬させた。浸漬後、拭き取りシートを約1cm角のメッシュの上に静置し、余分な水分を滴下させた。
浸漬前と浸漬後の重量の差を測定し、拭き取りシートの生地重量で割ることによって、生地1g当たりの水分保持量を算出した。得られた結果を表1に示す。
また、水の代わりにサラダ油を用い同様にして油分保持量を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0088】
[耐久性]
実施例1〜3及び比較例1,2の拭き取りシートについて耐久性を測定した。
まず、サラダ油90質量部、水10質量部を混合した液体を、1000番の荒さをもつ耐水サンドペーパーの上に約20cc滴下した。
そして、拭き取りシートを耐水サンドペーパー上で5往復させ、拭き取りシート表面の毛羽立ち状況や、サンドペーパー上に脱落した繊維の量を目視で確認した。
耐久性は、毛羽立ちや繊維の脱落がほとんど確認できない場合を「○」とし、表面が若干毛羽立ったり繊維の脱落が若干確認できるが、拭き取り性能にほとんど影響がない場合を「△」とし、表面が著しく毛羽立ったり、繊維の脱落が激しい場合を「×」として評価した。得られた結果を表1に示す。
【0089】
〔表1〕

【0090】
表1の結果より、実施例1〜3に係る拭き取りシートは、いずれの評価も比較例よりも優れるものであった。
このことから、本発明によれば、柔軟性のみならず、拭き取り性及び耐久性が優れ、水分、油分のいずれも十分に吸収できると共に、再汚染を防止できる拭き取りシートが得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の拭き取りシートによれば、柔軟性が優れ、水分、油分のいずれも十分に吸収できると共に、再汚染を防止できる。このため、机、床、ガラス等の汚れを拭き取るための雑巾や靴の裏についた汚れを取るための足拭きマットに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0092】
1,11,21・・・第1繊維シート
2,12,22・・・第2繊維シート
3,13,23・・・係止部
10,20,30・・・拭き取りシート
14・・・樹脂層
51・・・ウェブ
55・・・ローラー
56・・・ニードルパンチ装置
P1,P2・・・拡大部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性が異なる第1繊維シートと、第2繊維シートとが積層された拭き取りシートであって、
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートとが係止部を介して一体となっており、
前記係止部が、前記第1繊維シートの繊維の一部を、前記第2繊維シートの繊維に係止させることにより形成されたものである拭き取りシート。
【請求項2】
前記係止部が、前記第2繊維シートを突き抜けている請求項1記載の拭き取りシート。
【請求項3】
前記係止部の突き抜けた部分同士が、編まれている請求項1又は2に記載の拭き取りシート。
【請求項4】
前記係止部が、ニードルパンチ処理により形成されたものである請求項1又は2に記載の拭き取りシート。
【請求項5】
前記係止部が5〜200個/cmの割合で形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の拭き取りシート。
【請求項6】
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートとが部分的に接着剤で貼着されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の拭き取りシート。
【請求項7】
前記第2繊維シートには樹脂層が積層されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の拭き取りシート。
【請求項8】
前記第1繊維シートが親水性繊維からなり、前記第2繊維シートが親油性繊維からなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の拭き取りシート。
【請求項9】
前記第1繊維シート及び前記第2繊維シートがいずれも不織布である請求項1〜8のいずれか一項に記載の拭き取りシート。
【請求項10】
前記第1繊維シートが不織布であり、前記第2繊維シートが織物又は編物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の拭き取りシート。
【請求項11】
前記第1繊維シートが織物又は編物であり、前記第2繊維シートが不織布である請求項1〜8のいずれか一項に記載の拭き取りシート。
【請求項12】
前記第1繊維シートが織物又は編物であり、前記第2繊維シートが織物又は編物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の拭き取りシート。
【請求項13】
請求項9記載の拭き取りシートの製造方法であって、
前記第1繊維シートの原料となるウェブと、不織布からなる前記第2繊維シートとを積層し、ニードルパンチ処理を施して係止部を形成し両シートを結合させる拭き取りシートの製造方法。
【請求項14】
請求項10記載の拭き取りシートの製造方法であって、
前記第1繊維シートの原料となるウェブと、織物又は編物からなる前記第2繊維シートとを積層し、ニードルパンチ処理を施して係止部を形成し両シートを結合させる拭き取りシートの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の拭き取りシートの製造方法であって、
前記第1繊維シートと、前記第2繊維シートとを積層し、ニードルパンチ処理を施して係止部を形成し両シートを結合させる拭き取りシートの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の拭き取りシートの製造方法であって、
前記第1繊維シートと、前記第2繊維シートとを積層し、縫製処理を施して編まれた係止部を形成し両シートを結合させる拭き取りシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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