説明

挟持具

【課題】片手での物品等の挟持を安定的に行うことが可能であり、かつ複数回の使用によっても摩耗や変形等の破損のおそれの少ない、優れた耐久性を有する挟持具の提供を課題とする。
【解決手段】挟持具1は、把持部9及び挟持部10を有し、対向面6に夫々設けられた凹状の移動規制部5を備える一対の挟持片3a,3bと、一対の挟持片3a,3bの間に移動規制部5の移動規制面5aと当接するように介設され、挟持片3a,3bの長手方向に沿って移動可能な移動軸部2と、一対の挟持片3a,3bを挟持位置及び挟持解除位置に弾性力を利用して付勢する弾性バネ4とを主に具備し、移動軸部2は、一対のフランジ17及びフランジ17を連結する連結軸19を有する軸本体15と、軸本体15の連結軸19に回動規制片20による回動範囲を規制した状態で嵌合される一対の回動摺動部16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持具に関するものであり、特に、洗濯の際に使用される洗濯ばさみ(ピンチ)、或いは書類挟みまたはクリップ等の文房具類に利用可能に形成され、バネの弾性力を利用して物品を二方向から挟込んで保持する挟持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、バネの弾性力を利用して物品を挟持する洗濯ばさみ等の挟持具が種々の分野及び用途において数多く用いられている。例えば、一般的な洗濯ばさみについて例示すると、一対の挟持片同士を軸部で軸支し、挟持片の一端部同士が近接するようにリング状のバネを利用して付勢するものが知られている。使用者は、挟持片の把持部を親指及び人指し指でそれぞれ把持し、バネの付勢力に抗する力を加えることにより、把持部同士を近接させる(挟持部を離間させる)開操作を行うことができる。すなわち、互いの軸部を支点として、挟持片の挟持部が互いに離間し、挟持部間のスペースに物品(洗濯物等)を挿入することが可能となる。そして、物品を挿入した後に、把持部に加えている力を解除する。これにより、バネの弾性力によって再び挟持部同士が近接し、物品が一対の挟持部によって挟込まれた状態となり、係る状態が維持される。
【0003】
ここで、上述した洗濯ばさみによる挟持の例は、所謂「テコの原理」を応用したものであり、上記例では、軸部が支点、挟持部が作用点、及び把持部が力点にそれぞれ相当する。なお、洗濯ばさみ以外のクリップ、書類挟み、トング等の各種の挟持具は、いずれも道央にテコの原理を応用したものである。
【0004】
物品を挟持具で挟持する場合、上述したように親指及び人指し指によって、一対の把持部同士を近接させるように、バネの付勢力に抗する力を加える操作をする必要がある。そのため、指先の力の弱い高齢者や要介護者の人々にとっては、上記の大きな力を必要とする開操作を安定して行うことができない場合があった。また、挟持部同士を離間させた状態を保持しながら、その挟持部の間のスペースに物品を挿入する場合には、通常は、挟持具を把持し、開操作を片手で行うとともに、物品を把持し、当該空間に挿入する動作をもう一方の手で行う必要があった。すなわち、係る物品の挟持動作は、原則的に両手を使用して行うものであった。
【0005】
これに対し、挟持動作を安定して行うことを目的として、例えば、ピンチ本体(挟持片)を軸支した軸部(支点)の両側にバネ支持駒を設け、バネ支持駒に装着したリング状バネの弾性力が作用する付勢位置(作用点)を変化させることにより、挟持具を開状態及び閉状態のいずれか一方に操作に応じて付勢可能な技術が開発されている(特許文献1参照)。係る構成により、支点よりも前側(挟持部側)に弾性力が付勢される場合、通常の洗濯ばさみ等のように挟持部同士が近接し、一方、支点よりも後側(把持部側)に弾性力が付勢される場合、挟持部同士が離間する状態を創出することが可能となる。これにより、挟持部を片手で操作することが可能となり、高齢者や片手の不自由な人々であっても洗濯物干し等の挟持動作を安定して行うことができる。また、本願出願人等は、さらに上記操作を安定して行うことの可能な優れた作用効果を奏する挟持具を開発している(特許文献2参照)。すなわち、挟持片同士の間に介設された移動軸部が挟持片間の所定の移動範囲を移動(摺動)することによって軸移動(支点移動)が行われ、係る移動によってバネの弾性力の付勢方向を変化させ、片手での操作をさらに安定したものとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、一般的な洗濯ばさみ等の挟持具の場合、片手の不自由な人、或いは指先の力の弱い高齢者にとっては、安定した挟持動作を行うことができなかった。これに対し、特許文献1に示されるような構成は、軸部(支点)の近傍にバネ支持駒を設けたものであり、リング状バネの弾性力が作用する付勢位置を支点の前後に変化させることができ、挟持動作を比較的容易に行うことが可能である。しかしながら、支点に対する付勢位置の変化は、非常に僅かであり、ピンチ本体に力が加わると、いずれか一方に付勢されたリング状バネの付勢が容易に解除される可能性が高かった。このため、挟持動作の途中で付勢方向が変化し、元の状態(挟持部同士が近接した状態)に戻ることがあり、反って作業効率が低下することがあった。
【0007】
一方、本願出願人等が開発した新規構造の挟持具(特許文献2参照)は、上記不具合を解消し、挟持具の各状態を確実に保持し、作業効率が低下するおそれはなかった。一般に、洗濯ばさみ等の挟持具は、ポリプロピレン等のプラスチック樹脂から主に構成されるものであり、繰り返しの使用によって耐久性の問題を生じることがあった。ここで、挟持片に対して移動軸部が移動可能な挟持具の場合、移動時に挟持片及び移動軸部の境界で常に接触が生じ、応力または摩擦熱による変形或いは摩耗が発生するおそれがあった。そのため、使用開始直後は良好な移動が可能であっても数千回から数万回の開閉操作の後には変形や摩耗によって移動軸部の安定した移動ができない可能性があった。そのため、片手での使用が可能であり、かつ特に耐久性に優れた挟持具の開発が望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、片手での物品等の挟持を安定的に行うことが可能であり、かつ複数回の使用によっても摩耗や変形等の破損のおそれの少ない、優れた耐久性を有する挟持具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の挟持具は、「把持部及び挟持部を有し、凹状の移動規制部を有する一対の挟持片と、互いの移動規制部を相対するように配置した一対の前記挟持片の間に介設され、前記移動規制部による規制範囲を移動可能な移動軸部と、前記移動軸部による支点変化を利用して互いの前記挟持部同士を近接させる挟持位置及び前記挟持部同士を離間させる挟持解除位置に弾性力を利用して夫々付勢する弾性付勢手段とを具備し、前記移動軸部は、前記挟持片の挟持片外側面と当接するフランジ面を有し、前記移動軸部の移動方向を前記挟持片の長手方向に規制する半月板状の一対のフランジ、前記フランジ面を互いに平行に配した一対の前記フランジを連結する連結軸、及び前記連結軸の軸端部から互いに相対する軸周方向に向かって夫々突設された一対の回動規制片を有する軸本体と、前記連結軸に回動自在に嵌設される断面C字形状の回動部及び前記回動部の外側に設けられ、前記移動規制部の移動規制面と当接可能な摺動面を有する断面扇形状の摺動部を備える一対の回動摺動部と」を具備するものから主に構成されている。
【0010】
ここで、挟持片とは、両端部に夫々把持部及び挟持部を有する複数の平面によって構成された長手形状の部材から構成され、その一面に凹状に窪んだ移動規制部が形成されているものである。係る移動規制部によって、後述する移動軸部は、移動規制部の窪んだ範囲(規制範囲)を挟持片の長手方向に沿って移動することになる。なお、挟持片に使用される素材は、特に限定されないが、洗濯ばさみ等の日用品を製作する際に一般的に使用されるポリプロピレン樹脂を射出成形したもの、或いはアルミニウム等の金属材料を切削加工することにより所望の形状の挟持片を構成することが可能となる。
【0011】
一方、移動軸部は、軸本体及び一対の回動摺動部から主に構築され、移動規制部の移動規制面と回動摺動部の少なくとも一部(摺動面の一部)が当接可能に形成されている。ここで、移動軸部についてさらに詳述すると、軸本体は、挟持片の挟持片外側面、換言すると、移動規制部が設けられた面を挟み、当該面に直交して設けられた面とそれぞれ当接可能なフランジ面を有する半月板状の一対のフランジと、フランジ面が互いに平行となるように配置した一対のフランジの略中心同士を連結する略円柱棒状の連結軸と、連結軸の夫々の軸端部から互いに相対する軸周方向に向かって突設された一対の回動規制片とを具備して主に構成されている。これにより、一対の挟持片に移動軸部を介設すると、一対のフランジによって一対の挟持片の夫々が挟込まれた状態となる。その結果、移動軸部の移動方向は、一対のフランジによって規制され、挟持片の長手方向に限定される。
【0012】
さらに、移動軸部の軸本体は、移動規制部の移動規制面と直に接していない構成となっている。すなわち、軸本体及び移動規制部(移動規制面)の間には、回動摺動部が介在している。ここで、回動摺動部は、軸本体の連結軸に嵌合され、軸周を回動可能な断面C字形状の回動部と、回動部の外側に設けられ、移動規制面と当接する摺動面を有する摺動部とによって構成されている。さらに、連結軸の軸端部にそれぞれ設けられた一対の回動規制片によって回動摺動部の回動範囲が一定範囲に規制されることになる。
【0013】
一方、弾性付勢手段とは、一対の挟持片に対して弾性力を付与することで、一対の挟持片を特定方向に付勢することを可能とするものであり、従来から使用されているリング状バネ、スプリング等の周知の弾性部材を適宜利用することが可能である。なお、挟持片の外側に弾性部材が突出しないように、挟持片及び移動軸部の間に収容することが可能な略M字形状或いはその他の特殊な態様の構成を採用した弾性付勢手段であっても構わない。
【0014】
したがって、本発明の挟持具によれば、一対の挟持片の一面に夫々設けられた移動規制部に沿って移動軸部が規制範囲を移動可能に形成されている。これにより、挟持具の開閉操作を行うことにより、テコの原理のおいて支点となる移動軸部が移動する。すなわち、支点移動が生じることになる。その結果、把持部同士を近接させ、挟持部同士を離間させる開操作を行うことにより、移動軸部の摺動部の摺動面が移動規制部の移動規制面と当接しながら連結軸の軸周を回動する。これにより、移動軸部は、把持部側から挟持部側に僅かに押出され、支点が挟持部側に偏った状態となる。その結果、弾性付勢手段による弾性力の付勢位置(付勢方向)が移動軸部と把持部との間に変位し、把持部同士が近接した状態(挟持解除位置)を維持するように付勢力が作用する。
【0015】
一方、上記状態(挟持解除位置)から挟持部同士を近接させる閉操作を行うことにより、移動軸部は、上記と逆の作用を奏することとなり、把持部側に押出され、支点が把持部側に偏った状態に遷移する。その結果、弾性付勢手段による弾性力の付勢位置が移動軸部と挟持部の間に変位し、挟持部同士が近接した状態(挟持位置)を維持するように付勢力が作用することになる。
【0016】
ここで、移動軸部は、上記開閉操作において、軸本体と挟持片の移動規制部とが直に接するものではなく、移動軸部の回動摺動部の摺動部が移動軸部と接している。そのため、開操作または閉操作によって移動軸部が所定方向に押出される場合、移動規制部の移動規制面と接している摺動部が軸本体の連結軸の軸周に沿って回動することになる。これにより、移動軸部の移動によって生じる摩擦熱や応力による変形を軽減化することが可能となる。その結果、移動軸部の移動による挟持具の態様の変化を円滑に行うことが可能となる。
【0017】
さらに、本発明の挟持具は、上記構成に加え、「前記挟持片は、前記フランジ面と当接する前記挟持片外側面に前記挟持片の長手方向に沿って穿設された摺動溝部をさらに具備し、前記フランジは、前記フランジ面から突設され、前記摺動溝部に少なくとも一部を挿入可能な摺動ガイド部を」具備するものであっても構わない。
【0018】
したがって、本発明の挟持具によれば、挟持片の挟持片外側面の夫々に長手方向に沿って摺動溝部が設けられている。そして、当該摺動溝部に挿入可能にフランジ面から突設された突起状の摺動ガイド部が設けられている。これにより、摺動溝部に摺動ガイド部を挿入した状態で本発明の挟持具を構築した場合、フランジの移動方向、すなわち、移動軸部の移動方向は摺動溝部に従って規制されることになる。そのため、移動軸部の移動が安定したものとなる。なお、フランジに設けられる摺動ガイド部は、一対の挟持片の夫々の挟持片外側面に形成された摺動溝部に挿入可能なように、所定の間隔で連結軸を挟んで左右対称に設けられていることが望ましい。
【0019】
さらに、本発明の挟持具は、上記構成に加え、「前記移動規制部の前記移動規制面及び前記摺動部の前記摺動面の少なくとも一方に、摩擦抵抗増大手段を」具備するものであっても構わない。
【0020】
したがって、本発明の挟持具によれば、移動規制面及び摺動面の少なくとも一方に互いが接した際の摩擦抵抗を増大させる手段が設けられている。ここで、摩擦抵抗増大手段の一例としては、例えば、移動規制面及び摺動面の双方に凹凸を設けたり、ヤスリがけによって互いを粗面化したり、或いは複数の溝等を付けることなどが想定される。なお、移動軸部の移動方向に直交となる方向に沿って複数の溝または溝部を形成する手法が簡易かつ効果的に摩擦力を増大されることが可能な好適な一例である。これにより、摩擦抵抗増大手段を移動規制部若しくは摺動部に構築することによって、移動軸部の移動の際に当該境界面での滑りが発生することがない。その結果、摩擦抵抗の増大によって連結軸に回動自在に軸支された回動摺動部の回動が容易に行われるようになる。その結果、移動軸部による移動が安定する。なお、摺動面及び移動規制面の間で摩擦が増大した場合であっても、上記のように回動摺動部による回動に抵抗による力が転換されるため、当該境界面での摩擦熱はほとんど発生しない。そのため、摩擦熱による挟持片及び移動軸部の変形等が発生することはない。
【0021】
さらに、本発明の挟持具は、上記構成に加え、「前記挟持片は、前記挟持片の両端がそれぞれ前記把持部及び前記挟持部の双方の機能を奏する」ものであっても構わない。
【0022】
したがって、本発明の挟持具によれば、挟持片が左右対称形状に形成され、挟持片のそれぞれの両端が把持部及び挟持部のいずれとしても機能するようになっている。そのため、移動軸部を移動させ、支点を変化させることにより、挟持具の持替え動作を行う必要がなく、物品等を挟持する動作を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の効果として、挟持片に沿って移動し支点を変化させる移動軸部を具備することにより、挟持具の開閉動作によって挟持位置及び挟持解除位置の任意の態様に挟持具を変化させ、さらに弾性力を利用して当該状態を維持することができる。これにより、片手であっても洗濯物を干す等の作業を容易に行うことができ、指先の弱い高齢者等にとって当該作業を楽にこなすことができる。さらに、移動軸部を軸本体及び軸本体に回動自在に軸支された一対の回動摺動部によって構成することにより、移動軸部の移動時に加わる応力や挟持片との接触の際の摩擦熱の発生を抑えることが可能となる。その結果、挟持具自体の操作安定性及び耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の挟持具の構成を示す斜視図である。
【図2】挟持具の構成を示す分解斜視図である。
【図3】移動軸部の構成を示す(a)斜視図、及び(b)断面図である。
【図4】挟持具の(a)挟持位置、(b)動作途中、及び(c)挟持解除位置の夫々の状態を示す説明図である。
【図5】図4における挟持具の(a)挟持位置、(b)動作途中、及び(c)挟持解除位置の夫々の状態を示す断面図である。
【図6】移動軸部の別例構成を示す(a)斜視図及び(b)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態である挟持具1について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の挟持具1の構成を示す斜視図であり、図2は挟持具1の構成を示す分解斜視図であり、図3は移動軸部2の構成を示す(a)斜視図、及び(b)断面図であり、図4は挟持具1の(a)挟持位置CP、(b)動作途中、及び(c)挟持解除位置DPの夫々の状態を示す説明図であり、図5は図4における挟持具1の(a)挟持位置CP、(b)動作途中、及び(c)挟持解除位置DPの夫々の状態を示す断面図である。ここで、本実施形態の挟持具1は、片手でも使用可能な洗濯ばさみに適用した例について説明を行うものとする。
【0026】
本実施形態の挟持具1は、図1乃至図5に示すように、複数の面を有して構成される長手形状の一対の挟持片3a,3bと、該挟持片3a,3bの間に介設され、挟持片3a等の長手方向に沿って予め規定された規制範囲を移動可能な移動軸部2と、移動軸部2を介設した状態で挟持具1を挟持位置CP及び挟持解除位置DPのいずれかの態様に弾性力を利用して付勢する略M字形状の弾性バネ4とを主に具備して構成されている。ここで、図2等に示される弾性バネ4が本発明の弾性付勢手段に相当する。
【0027】
さらに詳細に説明すると、一対の挟持片3a等は、互いに対向するように配した対向面6の夫々に中央から僅かに一方に偏った位置に凹状に窪んだ移動規制部5が設けられている。ここで、移動規制部5の移動規制面5aは、挟持片3a等の長手方向に直交する方向に沿って複数の微細な溝部25(図2におけるハッチング部位参照)による凹凸が形成されている。ここで、当該溝が本発明の摩擦抵抗増大手段の一部に相当する。さらに挟持片3a,3bの夫々の端部の内側には、洗濯物等の物品(図示しない)を挟持する際の滑り止めとして機能する複数の粒状突起部7が半球ドーム状の滑止部8の半球表面に設けられている。なお、本実施形態の挟持具1では、図5に示されるように、挟持部10側の滑止部8は、挟持性を高めるためにゴム製素材で別途構築し、挟持片3a,3bの挟持部10側に貫通して設けた貫通孔(図示しない)に嵌設されている。係る構成は特に限定されるものではなく、把持部9側に示すように、挟持片3a,3bと一体的に成形したものであっても構わない。なお、本実施形態の挟持具3a,3bは、双方の端部が夫々把持部9また挟持部10としての機能を奏するような構成で形成されている。
【0028】
一方、挟持片3a,3bの互いに対向した夫々の挟持片外側面11には、長手方向に沿って摺動溝部12が穿設されている。さらに、挟持片3a,3bの中央部分は、対向面6に向かって貫通した長孔状の貫通長孔13が形成されている。係る貫通長孔13は、上述の弾性バネ4のバネ端部14を挿入し、一対の挟持片3a,3bによって移動軸部2を介設した状態にするものである。この挟持片3a,3bに取付けられるバネ端部14の位置(図5参照)によって、弾性力の付勢方向が決定する。また、挟持片3a,3bは、上述のゴム製素材を除き、ポリプロピレン樹脂を素材として一体成形によって形成されている。
【0029】
一方、移動軸部2は、挟持片3a,3bに設けられた移動規制部5に沿って規制範囲を移動するものであり、大別すると、軸本体15と、左右対称一対の回動摺動部16とによって構成されている(図2参照)。なお、本実施形態の挟持具1は、移動軸部2も挟持片3a等と同様にポリプロピレン樹脂等の硬質プラスチックを原材料として採用している。ここで、軸本体15について詳述すると、一対の半月板状のフランジ17と、当該フランジ17のフランジ面18を互いに平行に配した状態で、フランジ面18の略中央付近同士を連結する円柱棒状の連結軸19と、連結軸19の軸端部(フランジ面18との接合箇所)から互いに相対する軸周方向に夫々突設した角柱状の一対の回動規制片20と、フランジ面18から挟持片外側面11に設けられた摺動溝部12に挿入可能なように突設された一対の摺動ガイド部21とを具備して主に構成されている。ここで、一対の回動規制片20は、連結軸19の互いの軸端部に設けられ、突出方向が180°相違している。
【0030】
これに対し、移動軸部2の回動摺動部16は、断面C形状を呈する回動部22と、回動部22の外側に設けられた断面扇形状の摺動部23とによって構成されている。ここで、回動部22は、一対のフランジ17の間隔(連結軸19の軸長さに相当)の約半分の幅に形成され、一方のフランジ17のフランジ面18に近接可能に形成されている。さらに、回動部22のC字形状の先端の空隙は連結軸19の軸径よりも小さく形成されている。しかしながら、回動部22は樹脂製素材を利用して形成されるため、空隙部分を連結軸19に押当て、回動部22を弾性変形させながら更に押込むことにより、連結軸19に回動部22を嵌設することができる。これにより、回動部22は連結軸19の軸周を回動することができる。しかしながら、連結軸19の軸端部に設けられた回動規制片20によって回動範囲は一定に規制されることになる。また、上述の弾性変形させながら連結軸19に嵌設する場合には、回動規制片20が設けられた裏側の位置から回動部22を嵌設する必要がある。また、回動部22の一部は、前述の弾性バネ4との干渉を防ぐために切欠き24が設けられている。
【0031】
一方、摺動部23は、回動部22の外側から延設され、一対のフランジ17の間隔(連結軸19の軸長さに相当)と略一致する幅に形成され、移動規制面5aと当接する外面(摺動面23a)には、移動軸部2の移動方向に直交する方向に沿って複数の縦溝からなる溝部25が設けられている。ここで、当該溝部25が先に示した移動規制面5aの溝部25と同様に本願発明の摩擦抵抗増大手段に相当する。これにより、移動規制面5aの溝部25及び摺動部23の摺動面23aの溝部25との接触により、摩擦抵抗が増大し、連結軸19に対する回動摺動部16の回動を円滑化させることが可能となる。一対の回動摺動部16は、連結軸19に対して点対称となるようにセットされる(図3参照)。
【0032】
上述して組立てられた移動軸部2を一対の挟持片3a,3bに介設し、さらに弾性バネ4を取設することにより、本実施形態の挟持具1が構築される。このとき、移動軸部2のフランジ17の摺動ガイド部21を挟持片3a等の摺動溝部12に挿入する必要がある。これにより、本実施形態の挟持具1が完成する(図1参照)。
【0033】
次に、本実施形態の挟持具1の使用方法、換言すれば、挟持位置CPから挟持解除位置DPに一対の挟持片3a,3bを変位させる際の挟持具1の動きについて主に図4及び図5に基づいて詳述する。なお、初期状態として挟持部10同士が近接した挟持位置CP(図4(a)及び図5(a)参照)にある挟持具1から変化するものを示す。ここで、初期状態の挟持位置CPの場合、右側の把持部9は互いに離間した状態にあり、弾性バネ4が取設された挟持片3a,3bの付勢位置よりも右側に変位している。また、図5(a)に示されるように、移動軸部2の一対の回動摺動部16は、連結軸19に対して挟持部10側(図5における紙面左側に相当)に位置している。
【0034】
なお、一対の回動摺動部16の間には僅かに空隙が設けられている。係る状態で、把持部9を親指及び人指し指で把持し、把持部9同士を近接させる。このとき、弾性バネ4によって挟持部10同士を近接させる方向に弾性力によって付勢されているため、当該付勢力に抗する力を加える必要がある。係る力が加えられると、移動軸部2は挟持部10側に向かって移動しようとする。このとき、フランジ17のフランジ面18に設けられた摺動ガイド部21と挟持片3a等の摺動溝部12によって移動軸部2の移動方向が挟持片3a等の長手方向に規制される。そして、移動軸部2は挟持部10側(図5等における紙面左側)に移動する。このとき、移動軸部2の軸本体15が紙面左側に押出されると、軸本体15の連結軸19に軸支された回動摺動部16が軸周に従って回動し、連結軸19の挟持部10側から分かれ、連結軸19の上下に位置する(図5(b)参照)。なお、図5(b)は断面図であり、紙面手前側の回動摺動部16の一部構成についての図示は省略されている。その後、さらに把持部9を近接させることにより、把持部9同士が近接した状態(挟持解除位置DP)に変位する。
【0035】
このとき、移動軸部2の回動摺動部16は、連結軸19に対して把持部9側(図5等における紙面右側)に移動している。さらに、弾性バネ4の付勢位置は、移動軸部2の連結軸19の右側に位置している。そのため、挟持解除位置DPの状態を維持することが可能となる。なお、挟持解除位置DPから挟持位置CPに復帰させる場合には、上述の動作と逆の動作、すなわち、挟持部10を互いに近接させる方向に力を加えることにより、移動軸部2が紙面左から右方向に移動することができ、挟持位置CPに復帰することができる。
【0036】
ここで、上述した移動軸部2の移動において、移動軸部2の軸本体15と挟持片3a等は直に接していることがなく、これらの間で摩擦や応力等による変形を生じることがない。さらに、移動規制部5の移動規制面5a及び回動摺動部16の摺動部23の摺動面23aに互いに溝及び溝部25が形成されているため、当該接触部分での摩擦抵抗が増大し、回動摺動部16の連結軸19の軸周に沿った回動が円滑に行われる。これにより、移動軸部2の移動がスムースになる。その結果、挟持具1の開閉動作において、無用なストレスが挟持具1に加わることがなく、かつ摩擦熱の発生による挟持片3a等の変形を生じることがない。さらに、フランジ17に設けられた摺動ガイド部21及び摺動溝部12によって上記ストレスを分散しながら移動軸部2の移動方向を規制することができる。これにより、挟持具1の耐久性を向上させることが可能となる。
【0037】
また、指先に力の弱い高齢者等であっても、片手で挟持動作及び挟持解除動作を安定し、かつ楽に行うことができる。さらに、本実施形態の挟持具1の場合、挟持片3a,3bを略左右対称に形成し、挟持片3a,3bの双方を把持部9及び挟持部10として機能可能に形成している。そのため、上記説明では、挟持片3a,3bの左端を挟持部10及び右端を把持部9として説明したが、同様に左端が把持部9及び右端が挟持部10として機能することもできる。そのため、従来の洗濯ばさみ等のように挟持方向が一方向に限定されるものではない。そのため、使用者が本実施形態の挟持具1を把持し、そのまま挟持方向に合わせる持ち替え動作を行わずに、そのまま挟持動作や挟持解除動作を行うことが可能となる。そのため、片手の不自由な人々等にとってさらに使用感が良好なものとなる。
【0038】
さらに、複数に曲折し、略M字形状に形成された弾性バネ4を用いることにより、一対の挟持片3a等の間に挟まれた空間に係る弾性バネ4を収容することができる。そのため、従来使用されているリング状バネのように、挟持片3a等の外側にバネ部分がはみ出すことがない。
【0039】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は当該実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0040】
すなわち、図6に示す別例構成の移動軸部30を利用するものであっても構わない。なお、その他の構成については略同一であり、詳細な説明を省略するものとする。これによると、一対のフランジ31の間に太軸の連結軸32を設けるとともに、当該連結軸32の上下に一対のローラ部材33を配した移動軸部30とすることができる。係るローラ部材33は、フランジ31のフランジ面34に対し、回転可能に軸支されており、当該ローラ部材33のローラ面35が挟持片の移動規制部の移動規制面(いずれも図示しない)と当接可能に配置される。これにより、移動軸部30が挟持片の長手方向に沿って移動する場合、移動規制部の移動規制面と当接したローラ部材33は、一対のフランジ31の間に回転可能に軸支されているため、移動規制面との接触により回転する。その結果、挟持片と移動軸部との間の摩擦熱が発生する等の不具合を生じることがない。そのため、移動軸部30のスムースな移動が可能となり、移動軸部30を利用した挟持具の耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 挟持具
2,30 移動軸部
3a,3b 挟持片
4 弾性バネ(弾性付勢手段)
5 移動規制部
5a 移動規制面
9 把持部
10 挟持部
11 挟持片外側面
12 摺動溝部
15 軸本体
16 回動摺動部
17,31 フランジ
18,34 フランジ面
19,32 連結軸
20 回動規制片
21 摺動ガイド部
22 回動部
23 摺動部
23a 摺動面
25 溝部(摩擦抵抗増大手段)
CP 挟持位置
DP 挟持解除位置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開2008−295986号公報
【特許文献2】特願2009−138023

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部及び挟持部を有し、凹状の移動規制部を有する一対の挟持片と、
互いの移動規制部を相対するように配置した一対の前記挟持片の間に介設され、前記移動規制部による規制範囲を移動可能な移動軸部と、
前記移動軸部による支点変化を利用して互いの前記挟持部同士を近接させる挟持位置及び前記挟持部同士を離間させる挟持解除位置に弾性力を利用して夫々付勢する弾性付勢手段と
を具備し、
前記移動軸部は、
前記挟持片の挟持片外側面と当接するフランジ面を有し、前記移動軸部の移動方向を前記挟持片の長手方向に規制する半月板状の一対のフランジ、前記フランジ面を互いに平行に配した一対の前記フランジを連結する連結軸、及び前記連結軸の軸端部から互いに相対する軸周方向に向かって夫々突設された一対の回動規制片を有する軸本体と、
前記連結軸に回動自在に嵌設される断面C字形状の回動部及び前記回動部の外側に設けられ、前記移動規制部の移動規制面と当接可能な摺動面を有する断面扇形状の摺動部を備える一対の回動摺動部と
をさらに具備することを特徴とする挟持具。
【請求項2】
前記挟持片は、
前記フランジ面と当接する前記挟持片外側面に前記挟持片の長手方向に沿って穿設された摺動溝部をさらに具備し、
前記フランジは、
前記フランジ面から突設され、前記摺動溝部に少なくとも一部を挿入可能な摺動ガイド部をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の挟持具。
【請求項3】
前記移動規制部の前記移動規制面及び前記摺動部の前記摺動面の少なくとも一方に、摩擦抵抗増大手段をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の挟持具。
【請求項4】
前記挟持片は、
前記挟持片の両端がそれぞれ前記把持部及び前記挟持部の双方の機能を奏することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の挟持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102763(P2012−102763A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249599(P2010−249599)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(304049857)
【出願人】(309017770)
【Fターム(参考)】