説明

挟持装置

【課題】対象物の形状に応じ把持部が変形可能な挟持装置を提供する。
【解決手段】一方に把持部11、12が他方に操作部13、14が設けられた対となる挟持部材15、16を回動自在に連結し、把持部11、12が閉じた状態でその先端が当接して小物を把持でき、対向する把持部11、12の中間で大物を把持可能な挟持装置10において、対となる把持部11、12は、弾性曲げ可能で先端で連結された外側部材17、18及び内側部材19、20と、外側部材17、18と内側部材19、20との間に隙間を有して配置された複数の支持部材21、22とをそれぞれ有し、支持部材21、22の端部は、外側部材17、18の内側及び内側部材19、20の外側に傾動自在に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対となる把持部で小物や大物の対象物を把持する挟持装置に係り、特に対象物の形状に沿って把持部が屈曲する挟持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
挟持装置の一例である主として手術用に使用する鉗子は、主に物(生体の一部、手術用の糸、器具)をつかむ、抑える、牽引することに使用され、例えば、特許文献1や、特許文献2には、臓器等の組織の固定、剥離、切離、切断、把持、牽引、縫合等を行う手術用器具として提案されている。図8に一般的に使用されている鉗子80を示すが、一方に把持部81、82が他方に操作部の一例である取っ手83、84が設けられた対となる挟持部材(鉗子部材)85、86の中央を、ピン(ねじ)87を介して回動自在に連結している。
【0003】
そして、鉗子80を側面視した場合、把持部81、82の先側が上方に湾曲し、把持部81、82が閉じた状態で対向する把持部81、82の先端が当接して小物(例えば、縫合に使用する糸等)を把持でき、対向する把持部81、82の中間で大物(例えば、血管や腸等)を把持可能としている。
なお、88は対向する取っ手83、84に設けられたラチェット機構を示し、挟持部材85、86を所定の角度で保持できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−294746号公報
【特許文献2】特開2004−209009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図8に示すように鉗子80の対向する把持部81、82が腸や血管等の対象物を把持する場合、把持部81、82の材質が硬いので、把持部81、82のそのままの形状を維持した状態で対象物を掴んでしまい、場合によって、対象物を圧迫するような場合もあった。そこで、対象物の形状に合わせて把持部を湾曲させることも可能であるが、これでは対象物の大きさに合わせて多数種の鉗子を用意する必要がある。
また、把持部を柔らかい材質で構成すると、対象物の把持力が弱くなり、鉗子としての十分な機能を発揮せず、部材が十分な剛性を有さないため、把持部の先端での把持力も弱まるという問題があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、対象物の形状に応じて把持部が変形可能な挟持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る挟持装置は、一方に把持部が他方に操作部が設けられた対となる挟持部材を回動自在に連結し、前記把持部が閉じた状態で対向する前記把持部の先端が当接して小物を把持でき、対向する前記把持部の中間で大物を把持可能な挟持装置において、
対となる前記把持部は、弾性曲げ可能で先端で連結された外側部材及び内側部材と、該外側部材と該内側部材との間に隙間を有して配置された複数の支持部材とをそれぞれ有し、しかも、前記支持部材の端部は、前記外側部材の内側及び前記内側部材の外側に傾動自在に連結されている。
なお、本願発明に係る挟持装置は、手術用の鉗子は勿論として、例えば、産業用機械のロボットアームのハンド(掴み装置)の部分にも適用可能である。
【0008】
また、第2の発明に係る挟持装置は、第1の発明に係る挟持装置において、前記外側部材の曲げ剛性は、前記内側部材の曲げ剛性の0.8〜2.5(より好ましくは、1〜1.6)倍の範囲にある。外側部材の曲げ剛性が内側部材の曲げ剛性の下限より小さくなると、把持部の先端の把持力が小さくなり、上限より大きいと外側部材が内側部材を拘束する力が大きくなり、内側部材の対象物に沿った変形が少なくなる。
【0009】
第3の発明に係る挟持装置は、第1、第2の発明に係る挟持装置において、先側半分の前記外側部材の平均曲げ剛性は、残りの基側の前記外側部材の平均曲げ剛性より小さくしている。これによって、外側部材の先側半分が曲がり易くなり、把持部がより湾曲して対象物を把持できる。
【0010】
第4の発明に係る挟持装置は、第1〜第3の発明に係る挟持装置において、前記支持部材の少なくとも一方の端は、前記内側部材及び前記外側部材にピンを介して回動自在に取付けられている。
また、第5の発明に係る挟持装置は、第1〜第3の発明に係る挟持装置において、前記支持部材の少なくとも一方の端は、前記内側部材及び前記外側部材に折り曲げ自在な連結部材を介して屈曲自在に取付けられている。これによって、支持部材は押圧力は伝えるが、モーメントは伝えないことになる。
【0011】
第6の発明に係る挟持装置は、第1〜第5の発明に係る挟持装置において、前記複数の支持部材の隙間は、前記内側部材と前記外側部材の内側最大幅の0.5〜1.2倍の範囲にある。これによって、湾曲した内側部材の受ける荷重を支持部材を介して効率よく外側部材に伝えることができる。
【0012】
第7の発明に係る挟持装置は、第1〜第6の発明に係る挟持装置において、前記対となる把持部は、側面視して一方側に湾曲している。これによって、把持部の先端部の作業性が向上する。
【0013】
第8の発明に係る挟持装置は、第1〜第7の発明に係る挟持装置において、前記内側部材の内側には滑り止めが形成又は設けられている。これによって、挟む対象物への保持力を増している。
【0014】
第9の発明に係る挟持装置は、第1〜第8の発明に係る挟持装置において、前記対となる把持部は、それぞれ前記操作部に一体的に連接される挟持基部に取り外し可能に固着されている。これによって、把持部の交換が可能となり、また、把持部の製造も容易となる。

【0015】
第10の発明に係る挟持装置は、第1〜第9の発明に係る挟持装置において、前記挟持部材はそれぞれステンレス、チタン又はチタン合金、シリコン樹脂、ウレタン、その他のプラスチック、又はカーボンナノチューブによって構成されている。これによって、挟持装置が錆びない又は錆びにくいので、手術用に使用する鉗子に適している。
【0016】
第11の発明に係る挟持装置は、一方に把持部が他方に操作部が設けられた対となる挟持部材を回動自在に連結し、前記把持部が閉じた状態で対向する前記把持部の先端が当接して小物を把持でき、対向する前記把持部の中間で大物を把持可能な挟持装置において、
対となる前記把持部は、弾性曲げ可能で先端で連結された外側部材及び内側部材とを有し、前記外側部材の曲げ剛性が、前記内側部材の曲げ剛性より大きい。
これによって、内側部材で対象物(大物)を把持した場合、内側部材が曲がり、これに引っ張られて外側部材が湾曲する。なお、外側部材の曲げ剛性は内側部材の曲げ剛性の1倍を超え3倍以下(より好ましくは、1.2〜2.5倍)程度がよい。外側部材の曲げ剛性が大きすぎると、外側部材が湾曲しないだけでなく、内側部材も外側部材に引っ張られて湾曲しない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜10記載の挟持装置は、把持部が閉じた状態で対向する把持部の先端が当接して小物対象物を把持できる他、対となる把持部は、弾性曲げ可能で先端で連結された外側部材及び内側部材と、外側部材と内側部材との間に隙間を有して配置された複数の支持部材とをそれぞれ有し、しかも、支持部材の端部は、外側部材の内側及び内側部材の外側に傾動自在に連結されているので、把持部の中間(先端及び基側を除く部分)で大物対象物を把持した場合には、内側部材が湾曲すると共に、これに伴い支持部材を介して外側部材も押圧されて、把持部が大物対象物を囲むように内側部材が屈曲して把持できる。これによって、大物対象物への把持力が増すことになる。
【0018】
請求項11、12記載の挟持装置においては、把持部の先端で小物対象物を把持できることは当然として、把持部の中間で大物対象物を挟持する場合には、対向する内側部材が湾曲し、それに引っ張られて外側部材が湾曲化し、大物対象物を囲むように把持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る挟持装置の平面図、図2(A)は同挟持装置の部分拡大平面図、(B)は同挟持装置の部分側面図、図3(A)は同挟持装置の部分拡大平面図、(B)は本発明の他の実施の形態に係る挟持装置の部分拡大平面図、図4(A)は本発明の第1の実施の形態に係る挟持装置の開いた状態の平面図、(B)、(C)は同挟持装置で対象物を挟んだ状態の平面図及び斜視図、図5(A)は本発明の第2の実施の形態に係る挟持装置(鉗子)の平面図、(B)は同挟持装置の部分側面図、図6は本発明の第3の実施の形態に係る挟持装置(鉗子)の平面図、図7(A)、(B)はそれぞれ本発明の変形例に係る挟持装置の平面図、(C)は本発明の変形例に係る搬送装置の平面図である。

【0020】
図1、図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る挟持装置10は、中間部で回動自在に連結され、一方に把持部11、12が他方に操作部の一例である取っ手13、14が設けられた対となる挟持部材15、16を有し、対となる把持部11、12には、弾性曲げ可能で先端で連結された外側部材17、18と内側部材19、20と、外側部材17、18と内側部材19、20との間に隙間を有して配置された複数の支持部材21、22とを有している。以下、これらについて詳しく説明する。
【0021】
この挟持装置10においては、把持部11、12は取っ手13、14と一体となった挟持基部23、24にねじ留めされている。なお、挟持基部23、24と把持部11、12をそれぞれ一体構造とする場合もある。対となる挟持部材15、16は中間部でピン25によって回動自在に連結されている。
【0022】
取っ手13、14及びこれに連接される挟持基部23、24はステンレスからなって、棒状の取っ手13、14には樹脂製のカバー26、27が被さっている。なお、棒状の取っ手13、14の代わりに、図8に示すように、リング状の取っ手とすることもでき、更には、ピン25によって回動自在に連結されている挟持部材15、16を所定角度で保つラチェット機構(図8参照)を設けることもでき、これによって把持部11、12で把持又は挟持した大物、小物の対象物をその状態で保持できる。
【0023】
把持部11、12は、耐熱性プラスチック又は耐蝕性を有する金属(例えば、ステンレス、チタン、チタン合金、シリコン樹脂、ウレタン、その他のプラスチック、又はカーボンナノチューブ)からなって、一方側の把持部11は基端及び先端が連結された外側部材17と内側部材19とを有し、他方側の把持部12は基端及び先端が連結された外側部材18と内側部材20とを有している。外側部材17、18及び内側部材19、20は板状材(又はパイプ等)からなって、図1に示す平面視した挟持装置10において、外側部材17、18及び内側部材19、20の板幅が縦(垂直)に、板厚が平面視できるように配置され(図2参照)、図1においてa−b方向に把持部11、12が屈曲可能となっている。
【0024】
取っ手13、14を閉じて、把持部11、12を閉じるようにした場合、図2(A)、(B)に示すように、把持部11、12の先端29、30が当接して、例えば、縫合糸30a(小物の一例)等を把持できるようになっている。この場合、先端29、30を除く対向する把持部11、12の間は隙間(例えば、1〜5mm)が形成されるように、内側部材19、20の内側が湾曲している。なお、この実施の形態に係る挟持装置10の把持部11、12の内側には、滑り止め31、32がコーティングされて(又は形成されて、設けられて)いる。
【0025】
外側部材17、18も内側部材19、20と同様板状となって、内側部材19、20と略同一の幅(高さ)を有している。外側部材17、18は内側部材19、20より小さな曲率で湾曲し、外側部材17、18と内側部材19、20との間に先端から基側にかけてその幅が大きくなる隙間33、34がそれぞれ形成されている。
【0026】
図4(B)、(C)に示すように、内側部材19、20はその中間部に大物対象物36を挟持すると、対象物36に沿って外側に屈曲できる曲げ剛性(曲げ強度)を有する。そして、外側部材17、18の曲げ剛性(EI)は、内側部材19、20の曲げ剛性の0.8〜2.5(より好ましくは1〜2、更に好ましくは1.1〜1.8)倍程度となっている。ここで、外側部材17、18の曲げ剛性が内側部材19、20の曲げ剛性より前記した範囲を超えて小さい場合、対向する挟持部材15、16の先端29、30で小物対象物を把持する場合の力が弱くなり、外側部材17、18の曲げ剛性が内側部材19、20の曲げ剛性より前記した範囲を超えて大きい場合、内側部材19、20が外側部材17、18に引っ張られて大物対象物に沿って湾曲しにくくなる。なお、ここで、Iは部材の断面二次モーメント、Eは縦弾性係数である。
【0027】
なお、外側部材17、18の先側半分の平均曲げ剛性が、外側部材17、18の残りの基側の平均曲げ剛性より小さくすると、外側部材17、18の先側半分が曲がり易くなり、大物対象物を挟む場合は把持部11、12が対象物に沿ってより湾曲する。
外側部材17、18及び内側部材19、20の各隙間33、34には、複数の支持部材21、22が傾動自在に配置されている。図3(A)に示すように、この支持部材21(22も同様)は外側部材17及び内側部材19の所定位置に糸、紐又はワイヤの結束材37によって回動自在に連結され、支持部材21の軸方向からの荷重は外側部材17及び内側部材19に伝えるが、支持部材21からのモーメントは外側部材17及び内側部材19に伝えないようにしている。
【0028】
これによって、図4(A)に示すように開いた状態の挟持装置10が把持部11、12の中間位置で、図4(B)、(C)に示すように、大物対象物36を挟持すると、内側部材19、20が対象物36の外側に沿って曲がり、この曲がりは把持部11、12の先側部分(対象物36に当接している部分より先側)を内側に屈曲させることになり、より円滑に内側部材19、20が対象物36に沿って曲がり易くなる。
【0029】
この実施の形態においては、支持部材21、22を結束材37の一例である細い紐又は太い糸で外側部材17、18及び内側部材19、20に連結しているが、図3(B)に示すように、外側部材39の内側、及び内側部材40の外側でそれぞれ対向するピン受部41、42を設け、支持部材の両端とピン43、44を用いて回動自在に連結することも可能である。
【0030】
この支持部材21、22の間隔は外側部材17と内側部材19との内側最大幅の0.5〜1.2倍とするのがよい。これによって、把持部11、12が疑似フィーレンデール構造となって、把持部全体としての必要な剛性を確保すると同時に、把持部11、12の中間に把持対象物による荷重がかかった場合には、内側部材19、20の中間部が折れ曲がり、支持部材21、22を介して外側部材17、18を外側方向に押すことで外側部材17,18もそれに沿って湾曲し、そのことにより把持部11、12の先側が内側によく湾曲することになり把持部11、12の先端29、30の押圧力が大きくなる。
【0031】
この挟持装置10においては、取っ手13、14及び把持部11、12が同一平面上に形成されているが、把持部11、12を把持部11、12の回動面とは直交する方向に湾曲(即ち、側面視して一方側に湾曲)させることもできる。これによって、把持部11、12の操作性が向上する。
【0032】
次に、図5(A)、(B)に示す本発明の第2の実施の形態に係る挟持装置の一例である鉗子46について説明する。
この鉗子46は、オールステンレス(又はチタン、チタン合金、シリコン樹脂、ウレタン、その他のプラスチック、カーボンナノチューブ)からなって、一方に把持部47、48が他方に操作部の一例である取っ手49、50が設けられた対となる挟持部材(鉗子部材)51、52がピン(ねじ)53を介して回動自在に連結され、把持部47、48が閉じた状態で対向する把持部47、48の先端が当接して小物を把持でき、対向する把持部47、48の中間で大物を把持可能となっている。
【0033】
そして、対となる把持部47、48は、それぞれ外側部材54、55及び内側部材56、57とを有している。そして、把持部47、48は把持部47、48の開閉方向c−dに対して直交する方向に湾曲している。把持部47、48の湾曲の程度は、把持部47、48の水平長さをg、水平面に対する先端高さをhとすると、h/gが0.1〜1.5程度であるが用途に応じて自由に決めることができる。
【0034】
外側部材54、55及び内側部材56、57はそれぞれ同一幅の板材からなって、その基側及び先側は連結されている。そして、外側部材54と内側部材56並びに外側部材55と内側部材57の間には、隙間を有して複数の支持部材58、59を有している。この支持部材58、59は、その両端部がそれぞれ外側部材54と内側部材56並びに外側部材55と内側部材57に回動可能(折れ曲がり可能)に連結されている。
【0035】
外側部材54(55も同様)と支持部材58との連結は、支持部材58の厚みを薄くし、かつ一定の長さを有するようにした連結部材60が弾性変形内で屈曲できるようにしている。また、内側部材56(57も同様)と支持部材58とを繋ぐ連結部材61も同一構造となって、支持部材58の少しの動き(傾き)に対しては厚みを薄く、しかも一定の長さを有する連結部材60が弾性限度内の変形で対応できるようになっている
【0036】
。なお、この連結部材60、61は、全体がステンレス又はチタンの場合は、支持部材58、59の厚みに対して極めて薄くなるが、全体が合成樹脂の場合は、合成樹脂自体の曲げ剛性が小さいので、ある程度の厚みを有することができる。
【0037】
前述のように、この連結部材60、61の代わりに、図3(B)に示すように、支持部材の両端をピン43、44及びピン受部(軸受部)41、42を介して外側部材39及び内側部材40に連結することもでき、これによって、より確実に支持部材の端部が外側部材39及び内側部材40に自由に傾動可能に連結できる。なお、周知の他の手段によって支持部材の端部を外側部材及び内側部材に連結する場合も本発明は適用される。
【0038】
このように、支持部材58、59の端部を、外側部材54、55及び内側部材56、57に回動又は屈曲自在に連結することによって、外側部材54、55及び内側部材56、57は支持部材58、59から推力と引っ張り力は受けるがモーメント荷重は受けないことになる。
ここで、外側部材54、55の曲げ剛性は、内側部材56、57の曲げ剛性の0.8〜2.5(より好ましくは、1〜1.5)の範囲にしておく。これによって、内側部材56、57が大物対象物からの荷重を受けた場合、内側部材56、57が対象物に沿って曲がる。内側部材56、57が曲がると、支持部材58、59によって内側部材56、57との間で距離が保たれている外側部材54、55が更に湾曲する。これによって、把持部47、48が大物対象物を取り囲むように湾曲する。
【0039】
次に、把持部47、48の先端で小物対象物(例えば、縫合糸)を挟む場合、把持部47、48は外側部材54、55及び内側部材56、57とこれらを所定間隔で連結する支持部材58、59を有しているので、全体が疑似フィーレンデール構造となって、把持部全体としての曲げ剛性が高くなり、そのことにより把持部47、48の先端部の把持力が十分確保できる。これによって、取っ手49、50の操作によって、強固に小物対象物を把持できる。
なお、取っ手49、50の間には周知の対向する鋸刃状歯の組み合わせからなるラチェット機構62が設けられ、取っ手49、50を所定の角度に保持できる。
【0040】
続いて、図6に示す本発明の第3の実施の形態に係る挟持装置の一例である鉗子64について説明する。
この鉗子64は、一方に把持部65、66が他方に操作部の一例である取っ手49、50が設けられた対となる挟持部材67、68をピン53を介して回動自在に連結し、把持部65、66が閉じた状態で対向する把持部65、66の先端が当接して小物対象物を把持でき、対向する把持部65、66の中間で大物対象物を把持できる。
【0041】
なお、この第3の実施の形態に係る鉗子64は、前記した第2の実施の形態に係る鉗子46において、外側部材54、55及び内側部材56、57の間にある支持部材58、59を除いた構造であるので、第2の実施の形態に係る鉗子46と同一の構成要素については、同一の番号を付して詳しい説明を省略する。
【0042】
この実施の形態においては、外側部材54、55及び内側部材56、57は把持中心を基準にしてそれぞれ外側に凸で湾曲している。そして、外側部材54、55及び内側部材56、57はその両端部で連結され、中間部では十分な隙間を有している。外側部材54、55の曲げ剛性は、内側部材56、57の曲げ剛性より大きくなって、例えば1.2〜3倍程度となっている。
【0043】
この鉗子64の使用にあっては、取っ手49、50の操作によって、小物対象物(例えば、縫合糸)を把持部65、66の先端で保持する場合、両端を連結された外側部材54、55及び内側部材56、57の両方の荷重が把持部65、66の先端にかかるので、十分な押圧力で小物対象物を把持できる。
【0044】
把持部65、66の中央で大物対象物を把持する場合には、内側部材56、57の曲げ剛性が小さいので、内側部材56、57は大物対象物に沿って湾曲変形し、これによって外側部材54、55も少しの範囲で湾曲化する。従って、例えば、図8に示す鉗子80において、把持部81、82の締め付け力を増す場合には、把持部81、82の曲げ剛性を大きくする必要があり、この場合、把持部81、82で大物対象物を把持すると把持部81、82の中間部の変形は殆どないが、この鉗子64においては、把持部65、66の中間部も湾曲変形して大物対象物の変形を少なくしてより強固に把持できる。
【0045】
前記実施の形態においては、操作部として人が手で操作する取っ手を用いて説明したが、開閉動作を行うロボットアームやロボットフィンガーの先に取付け、電動又は流体圧で把持部の開閉を行うこともできる。
また、前記実施の形態においては、対となる挟持部材は中間位置にあるピンを中心に回動させているが、挟持部材の基側を中心に挟持部材を回動させる場合も本発明は適用される。
【0046】
次に、図7(A)、(B)、(C)を参照しながら、本発明を応用した変形例について説明する。図7(A)に示す挟持装置100においては、把持部101、102を有する対向する挟持部材103、104の一端部105、106を回動可能に連結している。そして、挟持部材103、104の他側には操作部の一例である取っ手107、108が設けられている。把持部101、102の構造は、第1の実施の形態に係る挟持装置10と同様で、外側部材17、18、内側部材19、20、及び、これらに傾動可能にかつ梯子状に連結する支持部材21、22を有している。
【0047】
なお、内側部材19、20はこの実施の形態では、内側あるいは外側に湾曲状、又は直線状となって、挟持部材103、104を無負荷で閉じた場合、内側部材19、20が当接するようになっている。使用にあっては対象物を挟んで取っ手107、108にP1、P2の荷重をかけると、内側部材19、20が湾曲して対象物を円滑に把持する。
【0048】
図7(B)に示す挟持装置110においては、中央に把持部111、112が両側には操作部の一例である取っ手113〜116が設けられた挟持部材117、118を用意し、取っ手113〜116に荷重P3〜P6をかけると、対象物を把持できる。この場合、把持部111、112の構造は、第1の実施の形態と同一であるので、対象物を内側部材19、20が湾曲して把持できる。
【0049】
図7(C)に示す搬送装置120においては、把持部(厳密には積載部材)121の一方に操作部の一例である取っ手122が設けられている。把持部121は、上部材123と下部材124と、上部材123と下部材124を連結する複数の支持部材125とを有している。支持部材125は、上部材123と下部材124に回動(傾動)可能に取付けられている。従って、上部材123の上に対象物126を載せると、上部材123が対象物126に沿って撓んで対象物126を円滑に受ける。
以上の変形例において、内側部材19、20及び上部材123と、外側部材17、18及び下部材124の曲げ剛性比は、前記した第1、第2の実施の形態に係る挟持装置と同じである。
【0050】
前記実施の形態において、具体的な数字を用いて説明したが、本発明の要旨を変更しない範囲での数値変更も可能であり、また、第1〜第3のいずれか1の実施の形態に係る挟持装置の一部を他の実施の形態に係る挟持装置に転用する場合も本発明は適用される。
また、いずれの実施の形態に係る挟持装置においても、対となる把持部が同一平面状にある場合の他、一方向に湾曲する場合も本発明は適用される。

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る挟持装置の平面図である。
【図2】(A)は同挟持装置の部分拡大平面図、(B)は同挟持装置の部分側面図である。
【図3】(A)は同挟持装置の部分拡大平面図、(B)は本発明の他の実施の形態に係る挟持装置の部分拡大平面図である。
【図4】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る挟持装置の開いた状態の平面図、(B)、(C)は同挟持装置が対象物を挟んだ状態の平面図及び斜視図である。
【図5】(A)は本発明の第2の実施の形態に係る挟持装置(鉗子)の平面図、(B)は同挟持装置の部分側面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る挟持装置(鉗子)の平面図である。
【図7】(A)、(B)はそれぞれ本発明の変形例に係る挟持装置の平面図、(C)は本発明の変形例に係る搬送装置の平面図である。
【図8】従来例に係る鉗子(挟持装置)の斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
10:挟持装置、11、12:把持部、13、14:取っ手、15、16:挟持部材、17、18:外側部材、19、20:内側部材、21、22:支持部材、23、24:挟持基部、25:ピン、26、27:カバー、29、30:先端、30a:縫合糸、31、32:滑り止め、33、34:隙間、36:対象物、37:結束材、39:外側部材、40:内側部材、41、42:ピン受部、43、44:ピン、46:鉗子、47、48:把持部、49、50:取っ手、51、52:挟持部材、53:ピン、54、55:外側部材、56、57:内側部材、58、59:支持部材、60、61:連結部材、62:ラチェット機構、64:鉗子、65、66:把持部、67、68:挟持部材、100:挟持装置、101、102:把持部、103、104:挟持部材、105、106:一端部、107、108:取っ手、110:挟持装置、111、112:把持部、113〜116:取っ手、117、118:挟持部材、120:搬送装置、121:把持部、122:取っ手、123:上部材、124:下部材、125:支持部材、126:対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に把持部が他方に操作部が設けられた対となる挟持部材を回動自在に連結し、前記把持部が閉じた状態で対向する前記把持部の先端が当接して小物を把持でき、対向する前記把持部の中間で大物を把持可能な挟持装置において、
対となる前記把持部は、弾性曲げ可能で先端で連結された外側部材及び内側部材と、該外側部材と該内側部材との間に隙間を有して配置された複数の支持部材とをそれぞれ有し、しかも、前記支持部材の端部は、前記外側部材の内側及び前記内側部材の外側に傾動自在に連結されていることを特徴とする挟持装置。
【請求項2】
請求項1記載の挟持装置において、前記外側部材の曲げ剛性は、前記内側部材の曲げ剛性の0.8〜2.5倍の範囲にあることを特徴とする挟持装置。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1記載の挟持装置において、先側半分の前記外側部材の平均曲げ剛性は、残りの基側の前記外側部材の平均曲げ剛性より小さいことを特徴とする挟持装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の挟持装置において、前記支持部材の少なくとも一方の端は、前記内側部材及び前記外側部材にピンを介して回動自在に取付けられていることを特徴とする挟持装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1記載の挟持装置において、前記支持部材の少なくとも一方の端は、前記内側部材及び前記外側部材に折り曲げ自在な連結部材を介して屈曲自在に取付けられていることを特徴とする挟持装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1記載の挟持装置において、前記複数の支持部材の隙間は、前記内側部材と前記外側部材の内側最大幅の0.5〜1.2倍の範囲にあることを特徴とする挟持装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1記載の挟持装置において、前記対となる把持部は、側面視して一方側に湾曲していることを特徴とする挟持装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1記載の挟持装置において、前記内側部材の内側には滑り止めが形成又は設けられていることを特徴とする挟持装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1記載の挟持装置において、前記対となる把持部は、それぞれ前記操作部に一体的に連接される挟持基部に取り外し可能に固着されていることを特徴とする挟持装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1記載の挟持装置において、前記挟持部材はそれぞれステンレス、チタン、チタン合金、シリコン樹脂、ウレタン、その他のプラスチック、又はカーボンナノチューブによって構成されていることを特徴とする挟持装置。
【請求項11】
一方に把持部が他方に操作部が設けられた対となる挟持部材を回動自在に連結し、前記把持部が閉じた状態で対向する前記把持部の先端が当接して小物を把持でき、対向する前記把持部の中間で大物を把持可能な挟持装置において、
対となる前記把持部は、弾性曲げ可能で先端で連結された外側部材及び内側部材とを有し、前記外側部材の曲げ剛性が、前記内側部材の曲げ剛性より大きいことを特徴とする挟持装置。
【請求項12】
請求項11記載の挟持装置において、前記外側部材の曲げ剛性が、前記内側部材の曲げ剛性の1.2〜3倍の範囲にあることを特徴とする挟持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−82180(P2010−82180A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254492(P2008−254492)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【Fターム(参考)】