説明

振出し口つきスライドカートン

【目的】錠剤形状のガム等の菓子を片手のみの一動作をもってカートン内部に隠れていた振出し口15を顕出させて、体裁よく簡単に取り出せるようにする。
【構成】角筒状スリーブAと該スリーブA内を摺動可能な振出し口15つき内箱Bとからなる二重構造のカートンである。前記スリーブAの天板1には内箱Bを前後に摺動させるための窓穴2を設けてある。該窓穴2の区画範囲内で顕出する内箱Bの振出し口15を有する天板11に滑り止め用の切込み16A,16Bを刻設し、前壁部の上、下縁には一対となした完全ストッパー19A,19Bを、後壁部18の横端側縁には半ストッパー20をそれぞれ設ける。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、錠剤形状のガムまたは丸型(ボール状)に仕上げたチョコレート等の菓子を片手のみの一動作をもってカートン内部に隠れていた振出し口を顕出させて、体裁よく簡単に取り出せるようになした振出し口つきスライドカートンの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より市販されている錠剤形状のガムまたは丸型(ボール状)に仕上げたチョコレート等の菓子(以下、錠剤形状のガムと総称する。)の包装形態としては、プラスチック製であって、振出し機能を付与された小形容器のものが一般的である。該形態は、容器自体の大きさ、形状あるいは機能について設計上の自由度が高く、製作上の制限が少ないという利点があることから、この種の容器の主流となっている。
錠剤形状のガムの包装面に着目した場合、他の菓子と同様に、香味揮散、吸湿、乾燥の防止に注意を払う必要があることから、包装の三大機能とも称される保護性(商品の傷み、変質を防ぎ価値を維持すること。)、便利性(輸送、保管に便利であること。)、快適性(包装内容の商品の価値について外部に働きかけ高めること。)を充足しなければならない。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
前記したプラスチック製の振出し機能を有する小形容器は、確かに前記包装の三大機能を発揮する効果が認められる。しかしながら、需要者が使用した後の環境問題または焼却にまつわる公害問題や、リサイクルに関して解決すべき課題があることから、その解決のためにプラスチック製から紙製へと転換することによって、前記問題を克服する方策をとることが挙げられ、例えば実開昭63−190022号公報(スライド式カートン)が提案されている。
しかし、紙製とした場合に、プラスチック製に引けを取らない容器自体の保形性、すなわち潰れや歪みを生じることがないようにすることの困難性がある。
また、従来の振出し口を有する紙箱の多くは、いったん開封されると、蓋体の部分が取り除かれて開口状態のままとなるか、または蓋体の復元性が不良となりがちのため、本来の閉蓋機能を十分に果せなかったこと、そのため蓋体の密閉機能として確実なものを求める場合には、複雑な構造を採らざるを得なかった。
【0004】
本考案は、前記した従来の錠剤形状のガムの包装に内在する課題を解決するとともに、後述する効果、すなわち、開封性、取り出し性、保形性、使用後のリサイクル性等の向上を図る振出し口つきスライドカートンの提供を目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成する本考案に係る振出し口つきスライドカートンの構成を具体的に説明すると、角筒状スリーブと該スリーブ内を摺動可能な振出し口つき内箱とからなる二重構造のカートンにおいて、前記スリーブの天板には内箱を前後に摺動させるための窓穴を設け、前記内箱前壁部の上、下縁には一対となした完全ストッパーを、後壁部の横端側縁には半ストッパーをそれぞれ設けてなる振出し口つきスライドカートンであり、また前記窓穴により形成された区画範囲内で顕出される内箱の天板に滑り止め用の切込みを刻設することもよく、更には前記スリーブの底板内面または底板内側に貼着した貼着片内面あるいは内箱の底板外面に摩擦抵抗低減用のリブを複数設けることも好ましい。
【0006】
【作用】
本考案は前述した構成を有するので、角筒状スリーブの窓穴から内箱に指を接当して押し出すと内箱後壁部の横端側縁に設けた半ストッパーがぱちんという音を発しながら解除され、前壁部側である内箱頭部が角筒状スリーブ前方から飛び出し、錠剤形状のガムを取り出せる。この際、内箱の天板に設けた切込み部分を指で押さえると、当該部分が下降し、切込み端面に指が十分掛かるので、内箱の押し出しが容易に行われる。また、押し戻しに際しては、前壁部の完全ストッパーにより前記スリーブの開口縁において、確実に停止して振出し口が隠され閉蓋する。
前記押し戻しに伴い内箱の後壁部が角筒状スリーブの他方の開口縁に達すると同時に、内箱の内面で強制的に抑制されていた半ストッパーの折曲げが解放されて、ぱちんと心地よい軽快音を発して正常な閉蓋が行われたことを使用者に知らせる。
加えて、角筒状スリーブの底板内面または底板内側に貼着した貼着片内面あるいは内箱の底板外面に設けた複数のリブは、相互の接触面積を少なくするため、内箱の滑りがよくなり、摺動操作がスムーズで快適に行える。
【0007】
【実施例】
次に、本考案の実施例について説明すると、図面は本考案の一実施例を示すもので、図1は内箱の展開図、図2は角筒状スリーブ内側の展開図、図3は角筒状スリーブの斜視図、図4は角筒状スリーブ内部の説明図、図5は内箱の斜視図、図6は図5の逆方向より視た斜視図、図7は組立完成斜視図、図8は図7の反対側から視た斜視図、図9は角筒状スリーブに限り側板内面に近接する部位の継断面を示し、角筒状スリーブの天板に設けた窓穴から内箱に指を接当し押し出す直前の状態を示す説明図、図10は錠剤形状のガムを振出し口から取り出している使用状態説明図である。
【0008】
図面上、Aは角筒状スリーブ、Bは内箱、Mは収納対象物の錠剤形状のガムである。
まず、角筒状スリーブAにおいて、1は長方形状の天板であり、長手方向に短冊形の窓穴2を透設してある。
3A,3Bは天板1を介しそれぞれ折目4A,4Bを経て対設せる側板、5は折目4Cを経て側板3Aと連設する底板であり、天板1と対面している。
6は側板3Bと折目4Dを介して連設し底板5内側に貼着する貼着片である。
実施上、該貼着片6内面に長手方向と直交する複数のリブ7を設けることもよく、また図示を省略したが、変形例として、貼着片6を底板5外側に貼着し、底板5内面に前記したリブを同様に設けることもよい。
【0009】
次に、内箱Bについて説明すると、11は折目25A,25Bにより区画される天板であり、折目25Jを経て舌片11Aを有し、該天板11の一端には振出し口15を形成し、かつ折目25A,25Bを跨がる切込み16A,16Bを刻設してある。
12A,12Bは折目25A,25Bを経て天板11を介してそれぞれ連設する側板であり、13は折目25Cを経て貼着片14を有し折目25Dを介して側板12Aと連設する底板である。
また図示を省略したが、変形例として、内箱Bの底板13外面に複数のリブを設け、角筒状スリーブA側のリブを省略してもよい。
なお、21A,21Bは折目25E,25Fを経て底板13に付設した舌片である。
側板12Aには折目25G,25Hを経てそれぞれ前壁部17、後壁部18を設けてある。
前壁部17の上、下縁には一対となした完全ストッパー19A,19Bを、また後壁部18の横端側縁には半ストッパー20をそれぞれ形成してある。
ここで完全ストッパー19A,19Bとは、前壁部17を角筒状スリーブA内に進入させないストッパーをいい、半ストッパー20とは、角筒状スリーブAの開口縁に仮係止するストッパーをいい、内箱Bの押し出しにより、係止が容易に解除されるストッパーをいう。
側板12Bには折目25K,25Lを介しそれぞれ補助片22A,22Bを対設してある。
本考案によれば、角筒状スリーブA(図3、4)および内箱B(図5、6)は、図7、8の斜視図のごとく組立てられて完成するものであり、特に錠剤形状のガムのような収納対象物を内装してから、既知の透明フィルムにてラップされるものである。
【0010】
そこで、図1ないし図10に従い、その組立ないし使用要領を説明する。
角筒状スリーブAは、折目4A,4B,4C,4Dにて折り曲げてから、貼着片6を対向する底板5内面に既知の接着手段をもって接合する。
内箱Bについては、天板11を基準として、折目25A,25Bによって、それぞれ側板12A,12Bを折曲し、更に折目25C,25Dをそれぞれ介して内折し貼着片14を側板12B内側に貼着する。
次に、折目25Jによって内折した舌片11A、および折目25E,25Fにより内折した舌片21A,21Bを折目25K,25Lにより折曲した補助片22A,22B内面にそれぞれ貼着し、更に該補助片22A,22B上面に折目25G,25Hにより内折した前壁部17、後壁部18をそれぞれ貼着する。
【0011】
前記のとおり組立てた天板1を上面とする角筒状スリーブAのいずれか一方の開口面に内箱Bを内装する。内箱Bの内装方向としては、内箱Bの後壁部18を先部として先行させるが、その場合、半ストッパー20自体は文字どおり単一にして低く形成することにより、紙質の可撓性を利用して強制的に挿入される。内箱Bの挿入に伴い、前壁部17の上、下縁に形成した完全ストッパー19A,19Bが後方に位置する前記開口面に到達し確実に接当することによって挿入を停止する。
前記挿入に際しては、半ストッパー20は進行方向に強制的に内折され、それは前記完全ストッパー19A,19Bが前記開口面に接当すると同時に、側板3Aまたは3B内面との摺動が解かれ外部に顕出することとなる。
【0012】
以上の要領により形成される本考案によれば、需要者が振出し口つきスライドカートンを開封し収納された錠剤形状のガムMを取り出すには、まず角筒状スリーブAの窓穴2に囲まれている内箱B天板11の切込み16A,16Bに指先を接当したまま(図9)、前方に押し出すに伴い半ストッパー20が解除され、その頭部、すなわち内箱Bの前壁部17から振出し口15にかけての部分が、角筒状スリーブA前方から飛び出し突出することになる。
かくしてから、振出し口15を下方に向けることによって、必要量の錠剤形状のガムMを掌中に取り出すことができ(図10)、その後は前記同様に指先で切込み16Bが窓穴2内側の位置に至るまで後退させると、前記のとおり半ストッパー20が外部に顕出し、同時に強制的に内折されていた半ストッパー20は、ぱちんと軽快音を発することになる。この音は前述の半ストッパー20の解除の際にも発生する。
また、図9のように、角筒状スリーブBの底板5内側に貼着した貼着片6内面に突出するリブ7を設けておくと、内箱Bの摺動がスムーズで安定する。
【0013】
【考案の効果】
以上のとおりの構成並びに使用要領により実施される本考案は、次の効果をもたらすものである。
すなわち、請求項1の本考案においては、第1に、角筒状スリーブA上面の窓穴2を経て指先で内箱Bを前後に摺動させると、内箱Bの頭部が出没し、押し出しに伴い振出し口15が表れるので、錠剤形状のガムMを簡単に取り出せるとともに、完全ストッパー19A,19Bによって前記スリーブA開口面との接当が確実な閉蓋を約束するものであり、しかも半ストッパー20の発する軽快音は使用者に開閉蓋事実を知らせることになるものである。
第2に、錠剤形状のガムMを消費する途次において、前記閉蓋事実を確認されているので、不意に残りの錠剤形状のガムMがこぼれ出たりしないし、あるいは塵埃等の侵入防止の効果が期待できるものである。
第3に、角筒状のスリーブAと内箱Bとの組合せであるので、従来のプラスチック製小形容器と比較し遜色がなくその保形性が良好である。
第4に、半ストッパーで仮係止されているものの、指先による一動作で内箱Bの頭部が飛び出し、しかも取り出しの後閉蓋時に発する軽快音は心地のよいものであって、ファッショナブルな感覚を与えるものとして提供される。
第5に、紙器であって簡易な構成であるのでリサイクル可能で量産に適し経済的であり、かつ低廉に供給できる等の実用性に富むものである。
請求項2の本考案においては、内箱の天板に滑り止め用の切込みを刻設しているので、内箱の押し出し、押し戻しを的確に安定して行える。
請求項3の本考案においては、角筒状スリーブAの底板内面または底板内側に貼着した貼着片内面あるいは内箱Bの底板外面にリブを設けることによって、内箱Bの摺動がスムーズで安定し、紙器全体の補強にもなる。
また、前記リブによって手の中から滑り落ちるのを防止するストッパーの役目を果すのみならず、内箱Bの滑り止め用切込み16A,16Bとともに、内箱Bの出入操作を安定させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内箱の展開図である。
【図2】角筒状スリーブ内側の展開図である。
【図3】角筒状スリーブの斜視図である。
【図4】角筒状スリーブ内部の説明図である。
【図5】内箱の斜視図である。
【図6】図5の逆方向より視た斜視図である。
【図7】組立完成斜視図である。
【図8】図7の反対側から視た斜視図である。
【図9】角筒状スリーブに限り側板内面に近接する部位の継断面を示し、角筒状スリーブの天板に設けた窓穴から内箱に指を接当し押し出す直前の状態を示す説明図である。
【図10】錠剤形状のガムを振出し口から取り出している使用状態説明図である。
【符号の説明】
A 角筒状スリーブ
B 内箱
M 収納対象物の錠剤形状のガム
1 天板
2 窓穴
3A,3B 側板
4A,4B,4C,4D 折目
5 底板
6 貼着片
7 リブ
11 天板
11A 舌片
12A,12B 側板
13 底板
14 貼着片
15 振出し口
16A,16B 切込み
17 前壁部
18 後壁部
19A,19B 完全ストッパー
20 半ストッパー
21A,21B 舌片
22A,22B 補助片
22 後板
25A,25B,25C,25D,25E,25F,25G,25H,25J,25K,25L 折目

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 角筒状スリーブと該スリーブ内を摺動可能な振出し口つき内箱とからなる二重構造のカートンにおいて、前記スリーブの天板には内箱を前後に摺動させるための窓穴を設け、前記内箱前壁部の上、下縁には一対となした完全ストッパーを、後壁部の横端側縁には半ストッパーをそれぞれ設けてなる振出し口つきスライドカートン。
【請求項2】 前記窓穴により形成された区画範囲内で顕出される内箱の天板に滑り止め用の切込みを刻設してなる請求項1記載の振出し口つきスライドカートン。
【請求項3】 前記スリーブの底板内面または底板内側に貼着した貼着片内面あるいは内箱の底板外面に摩擦抵抗低減用のリブを複数設けてなる請求項1または2記載の振出し口つきスライドカートン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【登録番号】第3013549号
【登録日】平成7年(1995)5月10日
【発行日】平成7年(1995)7月18日
【考案の名称】振出し口つきスライドカートン
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平7−384
【出願日】平成7年(1995)1月10日
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)