説明

振出容器

【課題】タブレットを1個ずつ確実に取り出すことができると共に、紙箱等に梱包する際にも嵩張ることがない振出容器を提供する。
【解決手段】複数のタブレットを収容する収容空間20を備える容器本体10と、蓋部材50を備える振出容器。蓋部材50は、振出口35を閉じる閉位置と、同振出口35を開ける開位置との間をスライド可能である。収容空間20は、タブレットが1つだけ入ることができる待機スペース30を介して振出口35と連通している。蓋部材内面の第1隆起部58が待機ペース30の高さを、タブレット1つの全厚にほぼ等しく制限している。蓋部材50が閉位置から開位置へとスライドして振出口35を開けるとき、蓋部材50の内面に設けたシャッタ部材55が、収容空間20と待機スペース30との連通部を閉じる。したがって、振出口35から振り出されるタブレットは常に1つだけである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤状の医薬品、粒状の清涼剤等の内容物を、小出しに使用する携帯用の振出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錠剤状の医薬品や粒状の清涼剤等を収納して、小出しに使用する振出容器としては、例えば、容器本体に設けた小出し用取出口を摺動可能な蓋体で開閉するようにしたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された携帯用ケースは、内容物の小出し用取出口と収納部が連通しているために、蓋体を開方向側に摺動させて小出し用取出口を開放し、この小出し用取出口から内容物を取り出す際に、前記取出口を下側に向けると、内容物が複数個出てくる。このため、例えば、内容物を1個だけ取り出したい場合、内容物を確実に1個だけ取り出すことは結構困難であった。
【0004】
そこで、上記問題を解決するものとして、小出し用取出口から確実に内容物を1個だけ取り出す振出容器が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。この特許文献2に開示された振出容器は、容器本体に設けた小出し用取出口と内容物収納部の間の容器本体内側に突き出る凸部を設けると共に、蓋体の前記凸部に対応する位置に外側に突き出る膨出部を形成することにより、複数種類の内容物を各1個ずつ確実に取り出すようにしたものである。
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の振出容器は、蓋体に膨出部を有するために、紙箱等に梱包する際には、整列した状態で梱包することができないために(嵩張るために)無駄な空間ができ、入数に対する紙箱のコストがアップするといった問題や店頭で販売する際にも陳列し難いといった問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−105949号公報
【特許文献2】特開2001−240158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決するために創案されたものであって、内容物を1個ずつ確実に取り出すことができると共に、紙箱等に梱包する際にも嵩張ることがない振出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振出容器は、「底壁および外周壁を有するとともに内部に複数のタブレットを収容する収容空間を備える容器本体」と「容器本体の外周壁に設けられた振出口を閉じる閉位置と、同振出口を開ける開位置との間をスライド可能に、容器本体に連結された蓋部材」とを備える。
収容空間は、タブレットが1つだけ入ることができる待機スペースを介して、振出口と連通している。収容空間は、その高さがタブレット2つを重ねた場合の全厚よりも大きく設定されているが、待機ペースにおいては、蓋部材の内面に設けた第1隆起部が当該待機スペースの高さをタブレット1つの全厚にほぼ等しく制限している。
蓋部材が閉位置から開位置へとスライドして振出口を開けるとき、蓋部材の内面に立設したシャッタ部材が、収容空間と待機スペースとの連通部を閉じる。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を備えた本発明の振出容器においては、待機スペースは、タブレットが1つだけ入ることができるように、その寸法が設定されている。そして、蓋部材がスライドして振出口が開かれたとき、蓋部材に設けたシャッタ部材が、待機スペースと収容空間との連通部を閉じる。この状態では、新たなタブレットが待機スペースに入り込むことはできないので、振出口から振り出されるタブレットは常に1つだけである。
また、待機スペースにはタブレットは1つしか入り得ないが、収容空間の高さは、タブレット2つを重ねた場合の全厚よりも大きく設定されているので、十分に大きな内容積が確保される。しかも、上記構成であれば、容器本体から外部へ向かって突出する膨出部を無くすことができるので、梱包の際に嵩張ることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
本発明の振出容器は、容器本体10と蓋部材50から構成される。図1は容器本体10を、図2は蓋部材50を示す斜視図である。
【0011】
≪容器本体10:図1≫
容器本体10は、平たいトレイ状であって、底壁11および外周壁12を有する。容器本体10の内部には、複数のタブレット5を収容する収容空間20を備える。図示の例では、収容空間20は、その高さがタブレット2つの全厚にほぼ等しく設定されている。すなわち、後述する蓋部材50を取り付けた状態において、収容空間20内で2枚のタブレット5が積み重なることができる。
【0012】
収容空間20の高さをさらに高くして、3枚以上のタブレットが積み重なり得るように構成することも可能である。詳しくは後述するが、いずれの場合でも、第1隆起部58の存在により、待機スペース30には、タブレットが1枚だけ導入されることとなる。
【0013】
収容空間20は、容器本体10の周壁12と、仕切り板25、26、31で囲まれており、待機スペース30に連なっている。待機スペース30は、対向する仕切り板31、32に挟まれた空間であって、ここにはタブレット5が1つだけ入り込むことができるように、仕切り板31、32の間隔(すなわち、待機スペース30の幅寸法)が設定されている。
詳しくは後述するが、第1隆起部58の存在により、待機スペース30の高さは、タブレットが1枚だけ入り得るように制限される。
【0014】
また、待機スペース30の箇所において、容器本体10の周壁12が途切れていて、ここに振出口35が形成されている。すなわち、収容空間20内のタブレット5は、詳しくは後述するように、まず待機スペース30に入って、その後、振出口35から振り出される。
【0015】
≪蓋部材50:図2、図3≫
図2は、蓋部材50を示す上方斜視図である。蓋部材50は、容器本体の収容空間20を閉じる天板51と、その三片から立設するガイド壁52から構成される。
蓋部材50を容器本体10に取り付けたとき、ガイド壁52は、容器本体の周壁12の外側に位置する。そして、ガイド壁52の端縁に設けた返り部53が容器本体の底面側に係合し、これにより、蓋部材50は、容器本体10に対してスライド可能に連結される。
ただし、容器本体10と蓋部材50とをスライド可能に連結する具体的な機構は、これに限らず、適宜の構成を採用できる。
【0016】
蓋部材50の天板51の内面には、板状のシャッタ部材55、第1隆起部58、第2隆起部59が立設されている。図3は、天板51の内面側を示す要部斜視図である。
天板51の端縁近傍に立設されたシャッタ部材55は、その高さがタブレット2枚の全厚とほぼ等しく、したがって、蓋部材50を容器本体10に組み付けたとき、シャッタ部材55の先端は底壁11の近傍にまで達する。このシャッタ部材55は、詳しくは後述するように、蓋部材50とともにスライド移動して、待機スペース30と収容空間20との連通部の開閉を行う。
【0017】
シャッタ部材55の周辺には、長板58が3枚、短板59aが3枚、1/4のドーム状部材59bが1つ、配置されている。これらの部材58、59a、59bは、いずれも天板51の内面からの突出高さが、シャッタ部材55のほぼ半分(つまり、タブレット1枚の全厚にほぼ等しい)。
【0018】
3枚の長板58は、全体として第1隆起部として機能し、これにより、容器本体内の待機スペース30の高さ寸法をタブレット1枚分にほぼ等しく制限する。この機能が達成される限り、第1隆起部58は3枚の板部材で構成される必要はなく、中実の隆起部やフレーム体で構成されてもよい。
【0019】
3枚の短板59aは、収容空間20の待機スペース近傍領域における高さ寸法をタブレット1枚分にほぼ等しく制限している。また、ドーム状部材59bは、最大高さ部分の高さが短板59aとほぼ等しく、その湾曲した斜面により、タブレット5の移動がスムーズとなるようにガイドする。3枚の短板59aおよびドーム状部材59bが一体となって第2隆起部59として機能する。
つまり、第2隆起部59が存在することにより、タブレット2枚分の高さの収容空間20から、タブレット1枚分の高さの待機スペース30へと、タブレット5がスムーズに移動できる。ドーム状部材59bの斜面は、図示したように湾曲しているものの他、平坦な斜面であってもよい。
以上の機能が達成される限り、第2隆起部59は、複数の部材から構成される必要はなく、中実の隆起部やフレーム体で構成されてもよい。
【0020】
次に、図4〜図6を参照して、本発明の振出容器において、タブレット5が1個づつ振り出される機構について説明する。これらの図においては、説明を分かりやすくするために、容器本体10を破線で、蓋部材50を実線で示している。
【0021】
≪振出し機構:図4〜図6≫
(1)図4は、蓋部材50が閉位置にある状態を示している。すなわち、蓋部材50は容器本体10を完全に閉じていて、ガイド壁52が振出口35を閉止している。この状態で容器を傾けると、タブレット5が1個だけ待機スペース30内に位置する。既に説明した通り、待機スペース30は、タブレット5が1つだけ入り込むことができるように、その幅寸法が設定されている。
また、待機スペース30の高さ寸法については、蓋部材50の内面から下方へ膨出する第1隆起部58により、タブレット1枚分の高さに制限されている。したがって、タブレット5が2枚積み重なった状態で待機スペース30に入り込むこともあり得ない。
【0022】
(2)蓋部材50は、図4の閉位置から、図6の開位置までスライド可能である。図5はその中間位置にある状態を示している。
蓋部材50のスライド移動に伴って、振出口35が開き始める。これと同時に、シャッタ部材55が、収容空間20と待機スペース30との連通部を閉じ始めている。
【0023】
(3)図6の開位置では、蓋部材50は容器本体10に対して最大限右方向に相対移動しており、振出口35が完全に開いている。また、シャッタ部材55が待機スペース30を閉じることで、収容空間20から完全に分断している。シャッタ部材55は、第1隆起部58および第2隆起部59よりも立設寸法が高く、容器本体10の底壁11の表面近傍にまで延在しているため、タブレット5がシャッタ部材55をくぐり抜けて待機スペース30に入り込むことはない。
この状態で容器を振って振出動作を行っても、収容空間20内のタブレット5は、待機スペース30内へと移動することはできない。したがって、勢いよく振ったとしても、振り出されるタブレットは1つだけである。
【0024】
シャッタ部材55は、図示の例では板状の部材であるが、蓋部材50が振出口35を閉じたとき(図4:閉位置)、待機スペース30と収容空間20を連通させ、蓋部材50が振出口35を開いたとき(図6:開位置)、待機スペース30と収容空間20を分断できるものであれば、その具体的構成は問わない。
【0025】
蓋部材50が図6の開位置にあるとき、収容空間20を規定する一方の仕切り板26の端部にシャッタ部材55が当接することで、ストッパとしての機能を果たす。すなわち、このストッパ機構により、蓋部材50がそれ以上相対スライドして、容器本体10から離脱することが防がれる。
ストッパ機構として、一般的に知られた他の機構を利用することも可能であるが、シャッタ部材55をストッパと兼用することで、構造の簡単化、ひいてはコストダウンを実現できる。
【0026】
図示の例では、蓋部材50のガイド壁52を用いて振出口35の開閉を行っているが、蓋部材50のスライド移動に伴って移動する何らかの部材を用いて振出口35の開閉を行うことができれば、他の構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の振出容器を構成する容器本体の斜視図。
【図2】本発明の振出容器を構成する蓋部材の斜視図。
【図3】図2の蓋部材の内面側を示す要部斜視図。
【図4】本発明の振出容器を、蓋部材が閉位置にある状態で示す斜視図。
【図5】本発明の振出容器を、蓋部材が中間位置にある状態で示す斜視図。
【図6】本発明の振出容器を、蓋部材が開位置にある状態で示す斜視図。
【符号の説明】
【0028】
5 タブレット
10 容器本体
11 底壁
12 周壁
20 収容空間
25、26 仕切り板
30 待機スペース
31、32 仕切り板
35 振出口
50 蓋部材
51 天板
52 ガイド壁
53 返り部
55 シャッタ部材
58 第1隆起部
59 第2隆起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁(11)および外周壁(12)を有するとともに内部に複数のタブレット(5)を収容する収容空間(20)を備える容器本体(10)と、
容器本体の外周壁(12)に設けられた振出口(35)を閉じる閉位置と、同振出口(35)を開ける開位置との間をスライド可能に、容器本体(10)に連結された蓋部材(50)と、を備える振出容器であって、
収容空間(20)は、タブレットが1つだけ入ることができる待機スペース(30)を介して、振出口(35)と連通しており、
収容空間(20)は、その高さがタブレット2つを重ねた場合の全厚よりも大きく設定されているが、待機ペース(30)においては、蓋部材の内面に設けた第1隆起部(58)が当該待機ペース(30)の高さをタブレット1つの全厚にほぼ等しく制限しており、
蓋部材(50)が閉位置から開位置へとスライドして振出口(35)を開けるとき、蓋部材の内面に立設したシャッタ部材(55)が、収容空間(20)と待機スペース(30)との連通部を閉じることを特徴とする、振出容器。
【請求項2】
上記蓋部材(50)の内面には、収容空間(20)の待機スペース(30)近傍領域において、収容空間から待機スペースへとタブレット(5)の移動をガイドする斜面を備えた第2隆起部(59)が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の振出容器。
【請求項3】
上記シャッタ部材(55)は、蓋部材(50)が容器本体(10)に対して開位置を超えて相対スライドして離脱することを防ぐストッパとして機能することを特徴とする、請求項1または2記載の振出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−83897(P2009−83897A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254888(P2007−254888)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】