説明

振出式シャープペンシル

【課題】芯タンクに外嵌した重量体を、軸筒を振って重量体の前方側と後方側に設けた重量体と当接する前方受け部と後方受け部間を前後動させ、重量体を前方受け部材に当接してチャックを前進させることで、チャックに連接した芯タンク内に収容した芯を繰り出し可能な振出式シャープペンシルにおいて、軸筒を振った際に重量体が後方受け部材に当接して発生する衝撃音を小さくする。
【解決手段】クリップ14を一体に形成して設けた頭冠15の軸筒2の後端部内に挿入した内筒部15bの内壁面に、該内壁面より内方に向かって突出し、かつ円周方向に周状に芯タンク5の外周面より離間して伸びた、2つの弾性片20を形成して後方当接体21とする。重量体12が後方当接体21に当接した際に、弾性片20が後方に撓むことにより衝撃を吸収し、衝撃音を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒を振って芯タンクに外嵌した重量体を前後動することで芯タンクに連接したチャックが前進し、芯タンク内に収容した芯を繰り出す振出式シャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、芯タンクに外嵌した重量体を、軸筒を振って重量体の前方側と後方側に設けた重量体と当接する前方当接体と後方当接体間を前後動させ、重量体を前方当接体材に当接してチャックを前進させることで、チャックに連接した芯タンク内に収容した芯を繰り出し可能な振出式シャープペンシルについては知られているが、前記重量体は、軸筒を振ると前方当接体と後方当接体に当接するために、その際の衝撃音が発生するという問題がある。
【0003】
ところで、前記前方当接体は重量体が当接した際に、芯を繰り出す繰出機構を構成するチャックが前進するように、チャックに連接した例えばコネクターや芯タンク等に固定して設けて、コネクターや芯タンク等が前進可能としてある。そのために前方当接体は重量体の当接時の衝撃を若干吸収するようになっているが、これに対し前記後方当接体は、芯タンク内の芯を繰り出すためのノック式の繰出機構を構成する部材、例えばノック体の前端部を後方当接体としている場合等では、ノック体は重量体が当接しても後退しないように設けてあるので、後方当接体は重量体の当接時の衝撃を吸収することがなく、またノック体は硬質な合成樹脂で形成してあるので大きな衝撃音が発生してしまう。
【0004】
後方当接体と重量体との当接時の衝撃音を低減する構造として、芯繰出機構の前後に錘体受け部材を配置して、その錘体受け部材に弾性体を各々設け、その各々設けられた弾生体間に錘体(重量体)を配置し、該錘体(重量体)による衝撃を弾性体で吸収することで衝撃音を小さくする技術が特開2010−52214号公報により提案されており、具体的な構造として、錘体(重量体)の後方側に、ノック部材12の内面の下端に凹部12aを形成し、その凹部12aに錘体20の座部20Cと当接・離脱するOリングなどの弾性体22を固定する構造が開示されている。
【0005】
しかし、前記した構造では、重量体の重量や軸筒を振る速さにより重量体の衝撃力は増減し、重量体がOリング等の弾性体に当接した際の弾性体の変形量も変化する。特に、ノック部材12の内面の下端に凹部12aを形成し、その凹部12aに弾性体22を固定する構造では、弾性体の形状を大きなものとすることができず、衝撃力の大きさによっては弾性体22が変形し過ぎて重量体がノック部材12の内面の下端に当接し、衝撃音をあまり小さくすることができないという問題がある。また、その問題を解消するためには、重量体の重量や弾性体の形状、材質等を考慮する必要があり設計上の煩わしさがある。
【0006】
また他の後方当接体と重量体との当接時の衝撃音を小さくする構造として、実開昭55−2611号公報に、芯ケース(芯タンク)18の後端付近外周にリング20を固定し、リング20より前方の芯ケース18の外周にスプリングSをはめ、スプリングSの後端をリング20に取付けて、重錘19が後退したときスプリングSに当接することで、重錘19による衝撃音を防ぐ技術が開示されている。この構造では、芯繰出機構を構成するスプリングの他に新たに衝撃音をやわらげるためのスプリングSと該スプリングSを固定するためのリング20を設ける必要があり、2つの部材を新たに設けることになる。また、リング20に重錘19による衝撃が何度も加わると、リング20が移動してしまう虞があるので、移動しないように接着剤を用いると接着工程の煩わしさや確実性の問題が生じるし、他の手段を用いるにしても製造上の煩わしさが生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−52214号公報
【特許文献2】実開昭55−2611号公報
【特許文献3】特許第4293803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、芯タンクに外嵌した重量体を、軸筒を振って重量体の前方側と後方側に設けた重量体と当接する前方当接体と後方当接体間を前後動させ、重量体を前方当接体材に当接してチャックを前進させることで、チャックに連接した芯タンク内に収容した芯を繰り出し可能な振出式シャープペンシルにおいて、簡単な構造で容易に組立てられ、かつ従来の振出式シャープペンシルの構造に新たな1つの部材を追加することで、軸筒を振った際に、重量体の後方当接体材との当接時の衝撃を吸収して衝撃音を低減する振出式シャープペンシルを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
「1.芯タンクに外嵌した重量体を、軸筒を振って重量体の前方側と後方側に設けた重量体と当接する前方当接体と後方当接体間を前後動させ、重量体を前方当接体に当接してチャックを前進させることで、チャックに連接した芯タンク内に収容した芯を繰り出し可能な振出式シャープペンシルにおいて、少なくとも前記後方当接体を、芯タンクの外周面に対向した軸筒または軸筒内に装着した部材の内壁面に、該内壁面より内方に向かって突出した弾性片を設け、重量体が後方当接体に当接した際に、弾性片が後方に撓むことにより衝撃を吸収可能としたことを特徴とする振出式シャープペンシル。
2.前記弾性片の前方当接体側の表面に、前方当接体に向かって突出した突部を形成してなる、前記1項に記載の振出式シャープペンシル。
3.前記1項または2項に記載の振出式シャープペンシルにおいて、前方当接体を、チャックに連接した部材の外周面にOリング等の弾性体を設けることで、または前記部材の外周面に軸径方向に伸びた弾性片を設けることで形成してなる振出式シャープペンシル。」
である。
【0010】
本発明の振出式シャープペンシルは、軸筒を振って重量体が後方当接体に当接した際に後方当接体が後退するように設けて、重量体と後方当接体材との当接時の衝撃を吸収して衝撃音を低減するようにするものであるが、後方当接体の材質については特に限定されないが、後方へ撓み可能な材質や形状にしなければならない。
【0011】
また本発明においては、重量体が前方当接体に当接した際にも当接時の衝撃音を低減するようにした方が好ましく、その手段としては、前記したように前方当接体を、前記した特開2010−52214号公報により開示されているような、チャックに連結した部材の外周部に、受け部材を固定し、外受け部材に重量体の先端部と当接・離脱するOリング等の弾性体を固定した構成としても良いし、または特許第4293803号公報に開示されているように、チャックに連結した合成樹脂製の部材に基部より円周方向に伸びた弾性片を形成し、弾性片の先端部に長手方向後方に突出した突部を形成して設けた構成としても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の振出式シャープペンシルは前記したような構造なので、重量体が後方当接体に当接した際は、後方当接体の弾性片が後方に撓み重量体による衝撃を吸収するので、重量体と後方当接体の当接時に発生する衝撃音を低減することができる。また、従来の振出式シャープペンシルに対して、部材を新たな形状にして後方当接体とするので、構造も簡単で組立ても容易であるので、従来の振出式シャープペンシルの製造コストに比べて、それほど高くならないという利点がある。
【0013】
請求項2に係る発明とすることで、後方当接体の弾性片が後方に撓み易くなり、重量体による衝撃をより吸収し易くなるので、より衝撃音を低減することができる。
【0014】
請求項3に係る発明とすることで、重量体と前方当接体の当接時に発生する衝撃音も低減するので、さらにより衝撃音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の振出式シャープペンシルの実施例を示す、要部を断面した振出式シャープペンシルの縦断面図である。
【図2】図1におけるA−A線部分のクリップ部分を省力した拡大横端面図である。
【図3】図1におけるB−B線部分のクリップ部分を省力した拡大横端面図である。
【図4】図1の実施例における前方当接体を設けたコネクターの拡大正面図である。
【図5】図4におけるC−C線部分の拡大横端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
芯タンクに外嵌した重量体を、軸筒を振って重量体の前方側と後方側に設けた重量体と当接する前方当接体と後方当接体間を前後動させ、重量体を前方当接体材に当接してチャックを前進させることで、チャックに連接した芯タンク内に収容した芯を繰り出し可能な振出式シャープペンシルにおいて、前記後方当接体が重量体に当接した際に、後方当接体を構成する重量体と当接する部分が後方に撓むように設けて、当接時の衝撃を吸収するようにする。
【実施例】
【0017】
本発明の振出式シャープペンシルの実施例を図面を用いて説明するが、図において左側を前方とし右側を後方とする。本発明の振出式シャープペンシルの実施例として、軸筒の後端に、従来の振出式シャープペンシルにも見られるようなクリップを一体に形成して設けた頭冠を挿着した構造の場合について説明するが、本構造に限定されるものではない。本実施例の振出式シャープペンシル1は、従来の振出式シャープペンシルと同様に、軸筒2内に、チャック3の後部にコネクター4を圧入固着し、該コネクター4の後部にパイプ材からなる芯タンク5を連結して収容してある。チャック3の頭部3aには締リング6が外嵌され、締リング6を受け止める連結具7とコネクター4の間にスプリング8を張架してある。
【0018】
連結具7は、軸筒2の前端と軸筒2の前端に螺合された口金9の内段9aにより挟持されており、口金9には芯10を適度の力で保持する合成ゴム等の弾性体で形成した芯ホルダー11を内蔵してある。
【0019】
前記芯タンク5には、金属細線をコイル状に巻回して筒状に形成した重量体12を、芯タンク5に対して摺動可能に外嵌してある。尚、重量体12はこれに限定されるものではなく、重量体12が当接して前方への移動を阻止するためのコネクター4に形成した前方当接体13との当接時の衝撃力をやわらげるために、図示していないが、重量体12の前端部および後端部において、隣り合う金属細線が離間することで構成されたスプリング部を有した構造のものでも良いし、また重量体12を、金属製の筒体とした構造のものでも良い。
【0020】
コネクター4には、図7および図8に示すように、コネクター4の略中間部の基部4aの対向する2カ所に設けた、基部4aより円周方向に周状に伸びた弾性片4bと、それぞれの弾性片4bの先端部に軸心方向の後方に向かって突出させて設けた突部4cとで構成した、前記重量体12が当接して前方への移動を阻止するための前方当接体13を設けてある。重量体12が前方当接体13に当接した際には、当接時の衝撃力を弾性片4bが撓むことにより吸収するとともに、チャック3および芯タンク5を前進させて、芯タンク5内に収容した芯10を一定量繰り出せるようにしてある。また、コネクター4の後部に前方面が垂直で後方面が傾斜した外鍔4dを2つ設けてあり、芯タンク5の前部に圧入固着できるようにしてある。
【0021】
本実施例では、前方当接体13を前記のようにして形成したが、図示していないがコネクター4の外周面にOリングなどの弾性体を装着して設けた構造でも良い。ただし、重量体12が前方当接体13に当接した際に、チャック3および芯タンク5を前進させるようにコネクター4の外周面に固着する必要がある。
【0022】
軸筒2の後端には、従来の振出式シャープペンシルにも見られるように、クリップ14を一体に形成して設けた頭冠15を挿着してある。該頭冠15は、軸筒2の後端より外方に突出しクリップ14を有した外筒部15aと軸筒2の後端部内に挿入した内筒部15bとで構成されている。外筒部15aの内径は内筒部15bの内径より大径に形成してある。内筒部15bの対向した2カ所には、内筒部15bの内外を連通する前後に伸びたガイド孔16を形成してある(図3を参照)。該ガイド孔16の前方端の内筒部15bには外周面には外方に突出したリング状の鍔部17を形成してあり、該鍔部17が軸筒2の内壁面と当接することで、内筒部15bの軸径方向へのがたつきを抑制してある。また、鍔部17のクリップ14に対向した位置の外周面には突出部18を設けてあり、該突出部18を軸筒2の内壁面に形成した後端を開口したガイド溝19に係合して挿入することで、図示していないが、内筒部15bの外周面に形成した突起を軸筒2の後端部に形成した係止孔に簡単に係止できようにして、軸筒2に対して頭冠15が回転したり外れたりしないようにしてある。
【0023】
また、芯タンク5の外周面に対向した内筒部15bの内壁面には、図2に示すように、内方に向かって突出し円周方向に周状に芯タンク5の外周面より離間して伸びた、対向する2つの弾性片20で構成された後方当接部21を一体に設けてある。それぞれの弾性片20の先端部には、軸心方向の前方に向かって突出した突部22を形成してある。重量体12は内筒部15b内を移動可能な外径で、前記後方当接体21の突部22に当接可能であり、軸体2を振って重量体12は後方に移動した際には前記突部22に当接し、弾性片20が後方に撓むことで、当接時の衝撃を吸収する。
【0024】
従来の振出式シャープペンシルと同様に、消しゴム挿入部23と、芯タンク5の後端部が挿入する挿入孔24を有し芯タンク5の後端が当接可能な底部25を設けた本体部26とで構成されたノック体27を、本体部26を芯タンク5側に向けて頭冠15の外筒部15a側から挿入して、本体部26が後方当接体21の後方に位置するように配し、本体部26の外周面に形成した係止突起33を、頭冠15の内筒部15bに形成したガイド孔16に係止して、係止突起28がガイド孔16を構成する後端側の内筒部15bの端部15baに当接することで、ノック体27が頭冠15より抜け出さないように設けてある。尚、本体部26には、該本体部26を内筒部15bの内部に挿入可能とするために、スリット29を設けて縮径可能としてある(図3を参照)。消しゴム挿入部23の外周面には周状に突出させたスプリング受け部30を形成してあり、該スプリング受け部30と頭冠15の内部の内径差で構成された段部31との間にスプリング32を張架してノック体27を後方へ付勢してある。
【0025】
尚、前記消しゴム挿入部23には、消しゴム33を挿入して、前端をスプリング受け部30に当接したキャップ34を着脱自在に被覆してある。
【0026】
本実施例の振出式シャープペンシル1は、軸筒2を振ることにより重量体12が芯タンク5に沿って前後動し、重量体12がコネクター4に形成した前方当接体13としての弾性片4bに形成された突部4cに当接し、重量体12が当接した際の衝撃力を弾性片4bが撓むことによって吸収しながらコネクター4が前進するとともにチャック3および芯タンク5も前進して芯タンク5内に収容した芯10を一定量繰り出す。重量体12の前方当接体13に当接した際の衝撃力は前方当接体13の弾性片4bによって吸収されるので、その際の衝撃音は低減される。また、重量体12が後方当接体21に当接した際は、前方当接体13の場合と同様に、弾性片20によって吸収されるので、その際の衝撃音は低減される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、軸筒を振って重量体を前後動することにより、チャックを前進させて芯タンク内に収容した芯を繰り出し可能な振出式シャープペンシルにおいて、重量体が前後動して他の部材に当接することで生じる衝撃音を低減したい場合に適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 振出式ボールペン
2 軸筒
3 チャック
4 コネクター
5 芯タンク
10 芯
12 重量体
13 前方当接体
20 弾性片
21 後方当接体
22 突部
27 ノック体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯タンクに外嵌した重量体を、軸筒を振って重量体の前方側と後方側に設けた重量体と当接する前方当接体と後方当接体間を前後動させ、重量体を前方当接体に当接してチャックを前進させることで、チャックに連接した芯タンク内に収容した芯を繰り出し可能な振出式シャープペンシルにおいて、少なくとも前記後方当接体を、芯タンクの外周面に対向した軸筒または軸筒内に装着した部材の内壁面に、該内壁面より内方に向かって突出した弾性片を設け、重量体が後方当接体に当接した際に、弾性片が後方に撓むことにより衝撃を吸収可能としたことを特徴とする振出式シャープペンシル。
【請求項2】
前記弾性片の前方当接体側の表面に、前方当接体に向かって突出した突部を形成してなる、請求項1に記載の振出式シャープペンシル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の振出式シャープペンシルにおいて、前方当接体を、チャックに連接した部材の外周面にOリング等の弾性体を設けることで、または前記部材の外周面に軸径方向に伸びた弾性片を設けることで形成してなる振出式シャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−240407(P2012−240407A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116225(P2011−116225)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】