説明

振出式シャープペンシル

【課題】線をコイル状に巻回しかつ前部12A及び後部12Cにコイルスプリング部12B、12Dを構成した重量体12が、確実に長手方向に摺動できるとともに重量体12の接触音が少ない振出式シャープペンシルに適用できる。
【解決手段】振ることにより生じる重量体12の慣性力によりチャック1を前進させて芯3を繰り出す。また、重量体12の前部12Aと後部12Cの間に線をコイル状に密着させた細径部12Eを構成し、細径部12Eの内径を前部12A及び後部12Cの内径より細径に構成する。更に、軸筒の内面と重量体12の前部12A外面及び後部12C外面との隙間より重量体12の細径部12E内面と芯タンク4の外面との隙間の方が狭く構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振ることにより生じる重量体の慣性力を利用して芯を繰り出す振出式シャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、線をコイル状に巻回して重量体を構成し、その前部及び後部をコイルスプリング部として弾性を持たせ、振ることにより生ずる重量体の慣性力を利用して芯を繰り出すシャープペンシルが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、上記シャープペンシルは、重量体が摺動した時、前部及び後部のコイルスプリング部が軸筒の内面に接触すると、コイルスプリング部が撓んで摩擦抵抗が増大し摺動しにくくなるとともに、接触音が発生してしまうという問題があった。そのため、従来は余裕をとって重量体の外面と軸筒の内面の隙間を大きくしなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−23181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、重量体の外面と軸筒の内面の隙間を大きくすると軸筒の外径が太くなってしまう点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予備の芯を収納する芯タンクと軸筒の間に重量体を摺動可能に設け、振ることにより生じる重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルであって、線をコイル状に巻回して重量体を構成し、その重量体の前部及び後部にコイルスプリング部を構成し、かつ、前部と後部の間に線をコイル状に密着させた細径部を構成し、細径部の内径を前部及び後部の内径より細径に構成し、更に、軸筒の内面と重量体の前部及び後部の外面との隙間より重量体の細径部の内面と芯タンクの外面との隙間の方が狭く構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、コイルスプリング部を有する前部及び後部の内径より細径部の内径を細径に構成し、かつ、軸筒の内面と重量体の前部及び後部の外面との隙間より重量体の細径部の内面と芯タンクの外面との隙間の方が狭く構成することにより、重量体の前部及び後部が軸筒の内面及び芯タンクの外面に接触する恐れがなく、重量体の摺動を確実に行えるとともに重量体と軸筒の接触音が発生しないという利点が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の実施例1の振出式シャープペンシルを示す断面図である。(実施例1)
【図2】図2は図1の重量体を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図3】図3は図1のA−A線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図4】図4は図1のB−B線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図5】図5は図1のC−C線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図6】図6は本発明の実施例2の振出式シャープペンシルを示す断面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前部と後部の間に線をコイル状に密着させて細径部を構成し、細径部内径を前部及び後部の内径より細径に構成するとともに、軸筒の内面と重量体の前部及び後部の外面との隙間より重量体の細径部の内面と芯タンクの外面との隙間の方が狭く構成して、重量体の摺動を確実に行うとともに重量体と軸筒の接触音を少なくする振出式シャープペンシルを実現した。
【実施例1】
【0010】
以下、図1、図2、図3、図4及び図5に基づいて本発明における実施例1の振出式シャープペンシルを説明する。また、図1の左側を前方とし右側を後方とする。先ず、金属製のチャック1の後部に合成樹脂パイプ製のコネクター2を圧入固着する。このコネクター2の後部2Aに予備の芯3を収納した合成樹脂製の芯タンク4の前部を圧入固着する。前記チャック1の頭部1Aに締具5を外嵌し、締具5を受け止める連結具6とコネクター2の間に200g以下の取付時荷重でスプリング7を取り付け、振出式シャープペンシルの機構部を構成する。
【0011】
前記機構部の芯タンク4及びコネクター2が挿通可能に前軸8の前部孔8Aを構成し、前軸8の前端と前軸8の前部に着脱可能に螺合された先部材9の内段9Aにより連結具6を挾持する。前記先部材9には芯3を適度の力で保持するゴム等の弾性体で構成された芯ホルダー10が内蔵されている。また、前軸8の前部細径部8Bにはゴム製の軟質材で構成されたグリップ11が取り付けられる。更に、前軸8には、前部孔8Aより太径の内孔8Cを形成するとともに、後端から開口されかつ前記内孔8Cより太径の後部孔8Dを形成する。更に、前軸8の後部に係止窓8Eを形成し、この係止窓8Eと対向する位置に後端から長手方向前方に伸びた凹溝8Fを形成する。
【0012】
更に、図2に示したように、重量体12は金属製の線を巻回して円筒状に構成し、この重量体12の前部12Aにコイルスプリング部12Bを構成するとともに重量体12の後部12Cにコイルスプリング部12Dを構成する。前記前部12Aと後部12Cの間には線をコイル状に密着させて細径部12Eを構成し、細径部12Eの内径を前部12A及び後部12Cの内径より細径に構成する。この重量体12を、前軸8の内孔8Cと芯タンク4の間に長手方向に摺動可能に配置する。また、前軸8の内孔8C内面と重量体12の前部12A外面及び後部12C外面との隙間より重量体12の細径部12E内面と芯タンク4の外面との隙間の方が狭く構成する。更に、重量体12の前部12Aと後部12Cの長手寸法をコネクター2の後部2Aの長手寸法より長く構成する。
【0013】
更にまた、後軸13は上側にクリップ14を一体に形成するとともに、前部に細径部13Aを形成する。この細径部13Aの外周面には前記クリップ14の真下に位置して突起13Bを形成するとともに、細径部13Aの両側部に長手方向に伸びた開口窓13Cを対向して形成し、突起13Bが位置する細径部13Aが適宜弾性変形可能に構成する。この後軸13には、前部内側に芯タンク4の横振れを防止するための内鍔13Dが形成されるとともに、後部内側にはリターンスプリング15を当接するための段部13Eが形成される。更に、後軸13の後部孔の上下には前記開口窓13Cと軸心に対して90度ずれた位置にキー溝13Fが対向して形成されている。
【0014】
更にまた、押圧部材16の前部筒16A外周面にはそれぞれ突起16Bが形成されるとともに、前部筒16Aの上下に開口窓16Cが対向して形成され、突起16Bが位置する前部筒16Aが弾性変形可能に構成されている。この押圧部材16の後部には外鍔部16Dが形成され、この外鍔部16Dの上下には前記突起16Bと軸心に対して90度ずれた位置に外方に突出したキー16Eがそれぞれ形成される。更に、押圧部材16の内面には芯挿通孔を有する内鍔16Fが形成され、この内鍔16Fの前面が芯タンク4の後端を押圧する押圧面となっている。
【0015】
この押圧部材16の前部にリターンスプリング15を外嵌した後、後軸13の後方より押圧部材16を後軸13のキー溝13Fに押圧部材16のキー16Eを合わせて挿入し、押圧部材16の突起16Bを後軸13の開口窓13Cに長手方向に摺動可能に遊嵌する。しかも前記リターンスプリング15が後軸13の段部13Eと押圧部材16の外鍔部16Dの間に350g程度の取付時荷重で取り付けられることにより、通常押圧部材16は長手方向後方に付勢されている。しかも押圧部材16の前部内孔16Gには芯タンク4の後部が挿入され、芯タンク4の後端と押圧部材16の押圧面は適宜離間して構成されている。更に、押圧部材16の後部内孔16Hには消しゴム17が嵌合されて取り付けられ、かつ、消しゴム17を覆うノブ18が押圧部材16の後部外面16Iに嵌合される。
【0016】
このように組み立てられた後軸13を前記前軸8の後端より挿入し、後軸13の隆起部13Gを前軸8の凹溝8Fに合わせて後軸13を前進させ、後軸13の突起13Bを前軸8の係止窓8Eに嵌め込み、後軸13を前軸8に取り付ける。この前軸8と後軸13により軸筒を構成する。しかも、前軸8の係止窓8E及び後軸13の突起13Bはクリップ14により隠されるために外観を損なうことはない。また、後軸13の内鍔13Dには前記芯タンク4の後部が挿入されるとともに、前記重量体12はコネクター2の外鍔2Bと後軸13の内鍔13Dにより長手方向の摺動が規制される。
【0017】
以上説明した振出式シャープペンシルは、前軸8と後軸13からなる軸筒を振ることにより生じる重量体12の慣性力によりスプリング7を圧縮してチャック1を前進させ芯3を繰り出す。この時、前軸8の内孔8C内面と重量体12の前部12A外面及び後部12C外面との隙間より重量体12の細径部12E内面と芯タンク4の外面との隙間の方が狭く構成されているので、重量体12が長手方向に摺動する時、重量体12の細径部12E内面と芯タンク4の外面は接触するが、重量体12の前部12A内面あるいは後部12C内面と芯タンク4の外面が接触したり重量体12の前部12A外面あるいは後部12C外面と前軸8の内孔8C内面が接触する恐れはなく、重量体12の前部12Aに構成したコイルスプリング部12Bや重量体12の後部12Cに構成したコイルスプリング部12Dに応力が加えられる心配は全くない。したがって、重量体12の長手方向の摺動を確実に行うことができる。また、重量体12のやや太径にした前部12Aと後部12Cの長手寸法をコネクター2の後部2Aの長手寸法より長く構成することにより、コネクター2の後部2Aを芯タンク4の前部に圧入固着して芯タンク4の前部が若干太くなっても重量体12の前部12A内面に芯タンク4の前部が接触する恐れはない。尚、重量体12は前後同形に形成されているので、取付時に重量体12をどちら向きに取り付けても問題が生じない。
【実施例2】
【0018】
以下、図6に基づいて本発明の実施例2の振出式シャープペンシルを説明する。尚、図1と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。先ず、前軸108を透明あるいは着色された透明性を有する合成樹脂で構成し、かつ、前軸108の前部孔108Aは機構部の芯タンク4及びコネクター2が挿通可能に構成する。この前軸108の前部孔108Aより機構部を挿入し、前軸108の前端と前軸108の前部に螺合された先部材9の内段9Aにより連結具6を挾持する。
【0019】
また、前軸108には、後端より開口されかつ前記前部孔108Aより太径の後部孔108Dを形成するとともに、前軸108の後部に係止窓108Eを形成する。更に、前軸108の係止窓108Eと対向する位置に後端より長手方向前方に伸びた凹溝108Fを形成する。この前軸108の後部孔108Dに重量体12が摺動可能に内蔵され、この重量体12の貫通孔に芯タンク4が挿入される。後軸113は、着色された不透明の合成樹脂で構成され、後部上側にクリップ114を一体に形成するとともに、太径の後部から前方に伸びて前軸108内に後方から挿入される細径部113Aの長手方向寸法は前軸108の全長の半分以上好ましくは8割程度の長さに構成する。この細径部113Aの後部外周面には前記クリップ114の真下に位置して突起113Bを形成する。更に、細径部113Aの両側部に長手方向に伸びた開口窓を対向して形成し、突起113Bが位置する細径部113Aが適宜弾性変形可能に構成する。また、後軸113の細径部113Aに、突起113Bの反対側に位置しかつ長手方向に伸びた隆起部113Gを形成する。この後軸113には、芯タンク4の横振れを防止するための内鍔113Dが形成されるとともに、後部内側にはリターンスプリング15を当接するための段部113Eが形成される。更に、後軸113の後部孔の上下には前記開口窓と軸心に対して90度ずれた位置にキー溝113Fが対向して形成されている。この後軸113の細径部113Aの円周にわずかに凹陥した凹部を長手方向に長く伸ばして形成し、この凹部に印刷により表示を設ける。
【0020】
前記後軸113が前軸108の後端より挿入され、後軸113の隆起部113Gが前軸108の凹溝108Fに合わせて後軸113を前進させ、後軸113の突起113Bを前軸108の係止窓108Eに嵌合させ、後軸113を前軸108に取り付ける。この前軸108と後軸113により軸筒を構成する。尚、前軸108の係止窓108E及び後軸113の突起113Bはクリップ114により隠されるために外観を損なうことはない。また、後軸113の内鍔113Dには前記芯タンク4の後部が挿通されるとともに、重量体12はコネクター2の外鍔2Aと後軸113の内鍔113Dとの間を長手方向に摺動可能に構成する。また、後軸113の細径部113A内面と重量体12の前部12A外面及び後部12C外面との隙間より重量体12の細径部12Eと芯タンク4の外面との隙間の方が狭く構成する。
【0021】
以上説明した振出式シャープペンシルは、前軸108と後軸113からなる軸筒を振ることにより生じる重量体12の慣性力によりスプリング7を圧縮してチャック1を前進させ芯3を繰り出す。この時、後軸113の細径部113A内面と重量体12の前部12A外面及び後部12C外面との隙間より重量体12の細径部12E内面と芯タンク4の外面との隙間の方が狭く構成されているので、重量体12が長手方向に摺動する時、重量体12の細径部12E内面と芯タンク4の外面は接触するが、重量体12の前部12A内面あるいは後部12C内面と芯タンク4の外面が接触したり重量体12の前部12A外面あるいは後部12C外面と後軸113の細径部113A内面が接触する恐れはなく、重量体12の前部12Aに構成したコイルスプリング部12Bや重量体12の後部12Cに構成したコイルスプリング部12Dに応力が加えられる心配は全くない。したがって、重量体12の長手方向の摺動を確実に行うことが出来る。
【0022】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、前軸、後軸、押圧部材といった部材は説明を簡略化するためにそれぞれ1個の部材として図示しているが、それぞれ2個以上の部材を螺合、圧入等により一体化すれば良い。また、コネクターと芯タンクを一体に構成したり、前軸と後軸を一体に構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
線をコイル状に巻回しかつ前部及び後部にコイルスプリング部を構成した重量体が、確実に長手方向に摺動できるとともに重量体の接触音が少ない振出式シャープペンシルに適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 チャック
3 芯
4 芯タンク
12 重量体
12A 重量体12の前部
12B 重量体12のコイルスプリング部
12C 重量体12の後部
12D 重量体12のコイルスプリング部
12E 重量体12の細径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備の芯を収納する芯タンクと軸筒の間に重量体を摺動可能に設け、振ることにより生じる重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルであって、線をコイル状に巻回して重量体を構成し、その重量体の前部及び後部にコイルスプリング部を構成し、かつ、前部と後部の間に線をコイル状に密着させた細径部を構成し、細径部の内径を前部及び後部の内径より細径に構成し、更に、軸筒の内面と重量体の前部外面及び後部外面との隙間より重量体の細径部の内面と芯タンクの外面との隙間の方が狭く構成したことを特徴とする振出式シャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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