説明

振動ふるい機とそれを用いたふるい方法

【課題】簡素な構造でありながら粉体がふるい網の有効領域に広範囲に広がって短時間のうちに能率良く処理される振動ふるい機を提供することを課題としている。
【解決手段】ふるい2と、そのふるいを振動させる圧電素子で構成された複数個の加振器3と、各加振器3を制御するコントローラ5を設け、加振器3の各々を周方向に位置を異ならせてふるい枠6に装着し、各加振器3を同時に駆動し、振動の周波数、位相、振幅、波形、デューティー比をコントローラ5で制御してふるい網7上に投入された粉体をふるいに掛けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体をふるい分ける振動ふるい機に関する。詳しくは、処理能力を高めて作業時間の大幅短縮を可能にした振動ふるい機とそれを用いたふるい方法に関する。
【背景技術】
【0002】
首記の振動ふるい機の従来技術として、例えば、下記特許文献1、2に示されるようなものがある。
【0003】
特許文献1に開示された振動ふるい機は、加振源の振動モータを有する振動容器内に超音波発信器を取り付けた共振リングを設け、その共振リングの上面に金属製のふるい網(漉し網)を接着剤で固定し、さらに、その金属製ふるい網上に金属製ふるい網よりも目数の多い合成樹脂性のふるい網を重ねている。
【0004】
また、特許文献2に開示された振動ふるい装置は、前下がり傾斜のトラフ内に、方形ふるい枠にふるい網を張った構造の枠張りふるいを、トラフ内搬送路の側板として機能させる上フレームと下フレーム間に上記方形ふるい枠を挟んで設け、上記上フレームと下フレームをトラフの底板に押し付けて枠張りふるいをトラフに固定し、複数の振動発生装置でトラフを加振して枠張りふるいを振動させるものになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−313038号公報
【特許文献2】特開平5−68946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の振動ふるい機は、樹脂製ふるい網を使用したときに起こる処理能力低下の問題を解決するものである。
【0007】
樹脂製ふるい網は、金属製ふるい網に比べて網目(目開き)を小さくし得る反面、振動の伝達が金属製ふるい網よりも悪いため、処理能力が低下する。そこで、特許文献1は、樹脂製ふるい網に対する振動の伝達を、金属製ふるい網を介して行うことで伝達中の振動減衰を抑制している。
【0008】
しかしながら、特許文献1のふるい機は、共振リングの一部に超音波発信器を固定しているので、市販のふるい機と同様の問題が起こることが懸念される。
【0009】
その問題とは、ふるい枠の内部にふるい網を張ったふるいを1個の加振器で振動させる市販の振動ふるい機を使用して粉体をふるいに掛けたところ、ふるい網の振動が網の各部で不均一になり、それが原因で処理対象の粉体がふるい網上の限られた箇所に偏り、狭い領域でふるい分けがなされて処理時間短縮の要求に応えることができなかった。特許文献1のふるい機は、これと同様の偏り現象が発生してふるいの作業時間が長くなる可能性が高い。
【0010】
また、特許文献1のふるい機は、振動容器を基台上にばねで支えて設置する必要があり、構造が複雑になる。
【0011】
特許文献2のふるい装置は、枠張りふるいとトラフを傾斜させているので、ふるい網上に投入された粉体は、下方に流れながらふるい分けられる。従って、ふるい網上で粉体が偏ることは考え難いが、装置が複雑かつ大掛かりになる。
【0012】
そこで、この発明は、簡素な構造でありながら粉体がふるい網の有効領域に広範囲に広がって短時間のうちに能率良く処理される振動ふるい機と、その振動ふるい機で流動性があまりよくない粉体のふるい処理を効果的に行うことを可能となすふるい方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、この発明は、振動ふるい機を以下のように構成した。即ち、ふるい枠の内側にふるい網を張ったふるいと、そのふるいに、横向きの振動成分が含まれる振動を加えてそのふるいを振動させる圧電素子(ピエゾ素子:PZT)で構成された複数個の加振器と、各加振器を制御するコントローラとから成り、前記加振器の各々を周方向に位置を異ならせて前記ふるい枠に装着し、各加振器を同時に駆動し、振動の周波数、位相、振幅、波形、デューティー比を制御してふるい網上に投入された粉体をふるいに掛けるようにした。
ここで言う、横向きの振動成分が含まれる振動とは、水平振動や水平面に対して傾きのある斜め振動を指す。
【0014】
各加振器は、同一仕様のものを、前記ふるい枠の周方向等分点に、ふるいの中心までの距離を等しくして配置すると好ましいが、仕様の異なる加振器を組み合わせて使用することやふるい枠の周方向等分点からずれた位置に加振器を配置することも許される。このようなケースでも、各加振器の加振の条件を適切に設定すれば、ふるい作業の能率向上に関してある程度の効果を得ることができる。
【0015】
この振動ふるい機は、各加振器をふるい枠に対して個別に着脱自在に固定する取り付け具を備えたものが好ましい。
【0016】
また、前記取り付け具が、ふるい枠の上縁部を跨いでふるい枠に取り付ける保持ブロックを備え、その保持ブロックに、当該保持ブロックをふるい枠に取り付けた状態で径方向外側に水平又は斜めに延び出す支軸を設け、その支軸の外端に前記加振器を固定したものが、構造が特に簡素で加振器の位置の調節もしやすくて好ましい。
【0017】
加振器は、円盤状のものを用いると、円盤の中心を前記支軸に固定してその支軸に軸心方向の振動を加えることができる。
【0018】
この発明の振動ふるい機は、全加振器を各加振器の振動の方向が一致するように制御してもよいが、それよりは、少なくともひとつの加振器の振動の向きが他の加振器とは逆になるようにしたときの方が好結果が得られた。その傾向が、ふるいに掛ける粉体の種類によってはより顕著であった。
【0019】
全加振器を、自己の振動の方向が一致するように振動させると、2個の加振器が対をなし、その対をなす2個がふるいの中心を間に挟んで対向するように配置されている場合には、対向位置の2個の加振器から逆位相の振動(ふるいの中心基準で方向が逆になる振動)がふるいに付与されてその振動が互いに打ち消しあう。
或いは、n(n≧3)個の加振器が(360°/n)ピッチで配置されている場合には、各加振器から印加される振動が互いに打ち消しあって、流動性があまり良くない粉体の処理ではふるいの効率向上に悪影響がでた。
この発明は、その問題の対策として、加振器のすくなくともひとつを、他の加振器とは自己の振動の向きが逆になるように駆動する(このときには、2個の加振器がふるいの中心基準で対向配置されていたとすると、2個の加振器からふるいに加えられる振動の位相が同位相になる)ふるい方法も併せて提供する。
【発明の効果】
【0020】
この発明の振動ふるい機は、複数の加振器をふるい枠に周方向に位置を異ならせて装着し、その複数の加振器を同時に駆動する。このときの、各加振器の駆動状況によって、ふるいに加えられる振動波がふるい枠の内側で干渉し合ったり、互いに合成されたりする。
【0021】
振動波が適度に干渉し合うと、横向きの振動のみを加えるときにも縦向きの振動成分が生じてふるい網が上下にも振動し、さらに、ふるい網の各部での振動条件も平均化される。振動波が互いに合成されるときにも、似たような状況が生じると考えられ、これにより、粉体がふるい網の有効領域に広範囲に広がり、ふるい落としの効率も良くなって投入された粉体が短時間のうちに処理される。
【0022】
なお、この発明の振動ふるい機は、ふるい枠とふるい網から成るふるいと、各々が取り付け具を備えた複数の加振器と、加振器の加振状態を制御するコントローラがあればよく、構造の簡素化も図れる。
【0023】
この発明のふるい方法では、異方向(各加振器)から加えられる振動が互いに打ち消しあう現象が緩和される。打ち消しあう度合いが強すぎると、ふるいに掛ける粉体の種類によっては、逆効果となって良好な結果が得られない。その問題が、加振器のすくなくともひとつを、自己の振動の向きが他の加振器とは逆になるように制御することによって解消される。振動の向きが逆になるとは、他の加振器がふるい中心側に向かって振れるときに、ふるい中心から離れる方向に振れることを言う。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の振動ふるい機の一形態を示す平面図
【図2】図1の振動ふるい機の斜視図
【図3】図1の振動ふるい機に設けた加振器の側面図
【図4】図1の振動ふるい機に採用したふるいの部分破断正面図
【図5】この発明の振動ふるい機の他の形態を示す平面図
【図6】図1の振動ふるい機のふるいに投入された粉体のふるい網上での広がりの状況を時系列的に示す図
【図7】性能評価試験に用いた比較品の振動ふるい機の平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面の1〜6に基づいてこの発明の振動ふるい機の実施の形態を説明する。
【0026】
図1〜図4は、この発明の振動ふるい機の一形態を表している。この振動ふるい機1は、ふるい2と、各々が取り付け具4を伴った3個の加振器3と、各加振器3の動きを制御するコントローラ5からなる。
【0027】
ふるい2は、円筒形をなすふるい枠6の内側にふるい網7を張った構造である。ふるい枠6は、図4に示すように、上枠6aと下枠6bを組み合わせており、上下の枠間にふるい網7の周縁が挟み込まれている。また、下枠6bの外周には、Oリング6cが装着されている。そのOリング6cは、同一ふるいを数段積み重ねたときに重ねたふるい枠間の隙間をシールする働きをするが必須ではない。ふるい枠が円筒形状であることも必須ではない。
【0028】
このふるい2は、内径φ75mm〜300mm程度のものが市販されている。図示の
ふるい2もその市販品である。
【0029】
加振器3は、ピエゾ素子(PZT)を用いた円盤状のアクチュエータで構成されている。
ピエゾ素子を駆動源とするその加振器3は、振動周波数を80Hz〜20KHz程度の範囲で調整できるものが市販品として存在する。例示の振動ふるい機1に採用した加振器3は、外径がφ50mmであり、中心のボス部3aがM3のねじ8で支軸9の先端に固定される。このときに、加振器3の取り付けの方向を異ならせる(表面、裏面のどちらを支軸9側に配置するか)ことで各加振器の振動の向きを逆にすることができる。
【0030】
取り付け具4は、保持ブロック(図のそれは樹脂製)10を備えている。その保持ブロック10は、スリット10aを間に挟んで対向配置した係止爪10bと反力受け10cを有している。その保持ブロック10の反力受け10cにロックねじ11を螺合させ、さらに、外端10dに水平方向に延びだす前記支軸9を設けて取り付け具4が構成されている。
【0031】
この保持ブロック10は、下向き開放のスリット10aにふるい枠6を入り込ませてふるい枠6の上縁部を跨がせる。そして、その状態で反力受け10cにねじ込んだロックねじ11を締めつけ、そのロックねじ11と係止爪10bとの間にふるい枠6を挟む。これにより、取り付け具4も含めて加振器3がふるい2に固定される。
【0032】
支軸9は、保持ブロック10をふるい2に取り付けた状態でふるい2の中心側から径方向外側に水平向きに延び出す。その支軸9の先端に加振器3が固定されている。その加振器3は、通電すると支軸9の長手方向に振動し、その振動が支軸9、保持ブロック10経由でふるい枠6に伝わってふるい2が振動する。
【0033】
なお、取り付け具4は、バンドなどであってもよい。ふるい枠6の外周に巻きつける1本のバンド(好ましくは金属製)に1個の加振器を固定して加振ユニットを構成し、その加振ユニットをふるい枠6に装着する方法でふるい枠6に加振器3を複数取り付けることもできる。ただし、バンドよりも図示の取り付け具4が、互いの位置が重なり合う心配が無く、また、ふるい枠への着脱が所謂ワンタッチ操作で行え、複数設ける加振器3の周方向設置点を変更したり、各加振器の高さ位置を揃えたりすることも容易で、使い勝手に優れる。
【0034】
コントローラ5は、直流電源で作動して各加振器3の振動の周波数、位相、振幅、波形、デューティー比を制御するものである。振動の周波数は、処理する粉体の粒径や質量に応じて先に述べた80Hz〜20KHz程度の範囲で適切な値が選択される。
【0035】
振動の波形は、正弦波(sin波)、矩形波(パルス波)のどちらにも対応できる。デューティー比も可変のコントローラである。図示のコントローラ5は、2チャンネル独立制御方式であり、出力端子を4個有する。
【0036】
このコントローラ5を使用して加振器3で発生させる振動の周波数、位相、振幅、波形、デューティー比を制御することで、ふるいが効果的に行なわれる共振点(共振周波数)を簡単に見つけだすことができる。
【0037】
また、各加振器3の取り付け位置が可変であるので、各加振器の最適設置点を見出すのも容易である。加振器3の位置を任意に変動させ、それぞれの位置で周波数、位相、振幅、波形、デューティー比などを変えてふるいのテストを実施すると、最適な設置点と加振の条件を求めることができる。なお、各加振器が最適設置点にあるか否かは、投入した粉体のふるい網上で偏りの有無で判断することができる。
【0038】
加振器3は、少なくとも2個あればよい。その数は任意に増加させることができるが、コストと性能を併せ考えると、2〜4個ぐらいが適当と思われる。
【0039】
また、この加振器3は、ふるい枠6の周方向等分点に配置したが、ふるいの作業能率向上の目的は、加振器3が周方向に不均一ピッチで配置されたものや、水平面に対して軸心が傾く姿勢にして支軸9に取り付けたものでも達成される。
【0040】
支軸9の先端を下向き又は上向きに45°屈曲させ、そこに加振器3を、中心の軸が支軸9の軸心と平行になる向きに取り付けたものでも効果があった。ただし、支軸9を垂直向きにしたものは、殆ど効果が無かった。それは干渉波が生成されないからであろうと思われる。
【0041】
各加振器3は、個々の振動の向きが同一となるように駆動してもよいが、ふるいに掛ける粉末の種類によっては、加振器3のすくなくともひとつを、自己の振動の向きが他の加振器とは逆になるように駆動することが好結果をもたらす。
【実施例】
【0042】
−実施例1−
この発明の振動ふるい機を試作して性能を評価した。試作機は、ふるいとして東京スクリーン(株)製の試験用円筒形板ふるい(JIS Z 8801準拠品)を採用し、そのふるいの枠に、取り付け具を含む図3の加振器を3個取り付けた。
【0043】
ふるいの仕様は、目開き300μm、内径φ150mm、線径200μmである。また、加振器は、外径φ50、外周部の厚み5mmであり、中心に設けられたボス部が支軸の先端にねじで固定される。取り付け具の保持ブロックは、樹脂で形成されている。
【0044】
先ず、比較例1として、3個の加振器3を図7に示すように直列に並べて同一取り付け具4の1本の支軸9に取り付け、この加振器をふるい枠に固定し、JIS試験用標準粉体1,2種(けい砂)50gをふるいに掛けた。
このときの試験の条件は、振動周波数:320Hz、加振器出力:20W、印加電圧:
12V、振動波形:sin波とした。この条件でふるい網の中央に粉体を投入し、その粉体の全量がふるい網を通過するまでの所要時間を測定した。
【0045】
その結果、1回目の試験でのふるい時間は368秒、2回目の試験でのふるい時間は566秒、3回目の試験でのふるい時間は455秒であった。投入した粉体は3回とも加振器のある側とは反対側に流れて1箇所に偏り、分散性が悪いためにふるい網を通り抜けるのに時間がかかって上記の通り処理時間が長くなった。
【0046】
手動でふるったときの時間は244秒であり、それよりも、作業能率が悪かった。その原因は振動の印加が一方向からなされたことにある。
【0047】
次に、3個の加振器を120°ピッチでふるい枠に固定した発明品1を使用して比較例と同一試験条件で同一の試験用標準粉体(量も比較例と同一)をふるいに掛けた。この発明品1については、2個の加振器が同一向きに振動し、他の1個の加振器は、支軸に対する取り付けの向きを他の2個とは逆にして自己の振動の向きが他の2個とは逆になるように駆動した。
その結果、発明品1による1回目の試験でのふるい時間は48秒、2回目の試験でのふるい時間は62秒、3回目の試験でのふるい時間は58秒であった。
【0048】
発明品1のふるいに投入された粉体Pの、ふるい網7上での広がりの状況を図6に時系列的に示す。投入した粉体Pは3回ともふるい網7の全域にすみやかに広がって網目から円滑に流れ落ち、ふるいの全体がうまく活用されてふるいの時間が短縮されることを確認した。
【0049】
なお、発明品1の3個の加振器を、支軸に対する取り付けの向きを一致させて自己の振動の向きが同一となるように駆動し、この状況でも粉体Pをふるいに掛けてみた。このときには、ふるい網の中央に粉体が若干偏る傾向が見られ、粉体の広がりの状況が1個の加振器の振動の向きを他の2個と異ならせたときほど円滑でなかった。そのため、比較例ほどではないが1個の加振器の振動の向きを他の2個と異ならせたときよりも処理に時間がかかった。
【0050】
−実施例2−
実施例1で採用した3個の加振器を、図5に示すように、不均一ピッチでふるい枠に装着し、この振動ふるい機(発明品2)を用いて実施例1と同一条件で同一粉体をふるいに掛けた。
その結果、1回目の試験でのふるい時間は135秒、2回目の試験でのふるい時間は130秒であった。比較例に比べるとふるい時間は半分以下になったが、加振器のある側に粉体が集まる傾向が見られ、加振器を均一ピッチで配置した実施例1に比べると2倍以上の時間がかかった。試験の回数を重ねても同様の結果になることが予測されるため3回目の試験は省いた。
【0051】
上記試験でのふるい時間を表1にまとめる。
【表1】

【0052】
−実施例3−
下記の試料I〜IIIを準備した。
試料I:東京スクリーン(株)製 目開き300μm、内径φ150mmの試験用円筒形板ふるい(JIS Z 8801準拠品)。
試料II:(株)飯田製作所製 目開き180μm、内径φ200mmのJIS試験用ふるい。
試料III:東京スクリーン(株)製 目開き425μm、内径φ80mmの試験用円筒形板ふるい。
【0053】
これ等の試料について、JIS試験用標準粉体1(けい砂2種)のふるいが効果的になされるときの振動周波数を、データーロガー(キーエンス製NR−2000)を使用して測定した。各試料の加振は、外径φ50、外周部厚み5mmの図3の加振器をふるい枠の3箇所に120°ピッチで取り付け、その3個の加振器を2個の加振器が同一向きに振動し、他の1個の加振器は自己の振動の向きが他の2個とは逆になるように同時に駆動する方法で行った。
加振器出力:20W,印加電圧:12V,振動波形はsin波、デューティー比はほぼ1:1である。
なお、ふるいが効果的になされるか否かの判断は、ふるい網上の粉体の流出状況(網目の通過状態)を目視確認して行った。
【0054】
その結果、試料Iは、振動周波数270Hzと320Hzで粉体のふるい網通過が円滑で、ふるいの効果が特に高いことを確認した。
【0055】
また、試料IIは、振動周波数250Hz、270Hz、320Hz、352Hz,365Hzでふるいが良好になされ、中でも270Hz、320Hzで粉体のふるい網通過が特に円滑であった。
【0056】
さらに、試料IIIは、振動周波数210Hz、250Hz、280Hz、293Hz,320Hzでふるいが良好になされ、320Hzでの粉体のふるい網通過が特に円滑であった。
【0057】
試料I、IIについては振動周波数270Hzと320Hzのいずれかが、試料IIIについては振動周波数320Hがそれぞれ共振点と考えられる。このように、最適なふるいがなされる振動条件(周波数など)は、各加振器をコントロールすることで簡単に見出すことができる。
【0058】
−実施例4−
東京スクリーン(株)製の目開き150μm、内径φ150mmの試験用円筒形板ふるい(JIS Z 8801準拠品)の枠に、取り付け具を含む図3の加振器を周方向に定ピッチで2個取り付けた。
この振動ふるい機を使用してJIS試験用標準粉体1,2種(けい砂)よりも流動性の悪いJIS試験用粉体1,4種(タルク)、5gをふるいに掛けた。
加振器は、振動周波数:387Hz、加振器出力:20W、印加電圧:12V、振動波形:sin波の条件で駆動した。また、その加振器は、2個の加振器の支軸に対する取り付けの向きを異ならせ、振動の向きが逆になるように(ふるいに加わる振動の位相は同位相になる)駆動した。
この条件でふるい網の中央に粉体を投入した結果、ふるい完了までの処理時間は32秒であった。
比較のために、前記2個の加振器を支軸に対して同一向きに取り付け、振動周波数:387Hz、加振器出力:20W、印加電圧:12V、振動波形:sin波の条件で、各々の振動の方向が同じになるように(ふるいに加わる振動の位相は逆位相になる)駆動して同一試験用粉体JIS試験用粉体1,4種(タルク)、5gをふるいに掛けてみた。その結果、ふるいに同位相の振動を加えたときと同一周波数の振動ではタルクは全くふるい網から落下しなかった。
そこで、各加振器の振動の振動周波数を609Hzに変更したところ、タルクが網目から落ちだしたが、このときには5gを全部ふるい終えるまでに230秒の時間を要した。この結果から、2個の加振器を逆方向に振動させる方が有利な場合があることがわかる。
【0059】
参考までに、ふるいを人手で動かして前記タルクをふるう方法及び超音波式の加振器で振動を加える方法も試みた。これ等の方法では、タルクが全くと言ってよいほど網目から落ちなかった。圧電素子を用いた加振器は超音波式加振器に比べて制御の自由度が高い。それにより、振動周波数を大きく変更し得た結果、時間はかかったが、ふるいに同位相の振動を加えたときにもふるいが可能であったと考えられる。
【0060】
以上述べたように、この発明の振動ふるい機とそれを用いたふるい方法によれば、複数の加振器を設けて異なる方向からふるいに振動を加えることでふるいの効率が高まり、ふるいの作業能率が従来品に比べて向上して処理時間が大幅に短縮される。
【符号の説明】
【0061】
1 振動ふるい機
2 ふるい
3 加振器
3a ボス部
4 取り付け具
5 コントローラ
6 ふるい枠
6a 上枠
6b 下枠
6c Oリング
7 ふるい網
8 ねじ
9 支軸
10 保持ブロック
10a スリット
10b 係止爪
10c 反力受け
10d 外側面
11 ロックねじ
P 粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ふるい枠(6)の内側にふるい網(7)を張ったふるい(2)と、そのふるい(2)を振動させる圧電素子で構成された複数個の加振器(3)と、各加振器(3)を制御するコントローラ(5)とから成り、前記加振器(3)の各々を周方向に位置を異ならせて前記ふるい枠(6)に装着し、各加振器(3)を同時に駆動し、振動の周波数、位相、振幅、波形、デューティー比を前記コントローラ(5)で制御してふるい(2)に投入された粉体をふるいに掛ける振動ふるい機。
【請求項2】
前記加振器(3)を前記ふるい枠(6)に対して個別に着脱自在に固定する取り付け具(4)を備えた請求項1に記載の振動ふるい機。
【請求項3】
前記取り付け具(4)が、前記ふるい枠(6)にその枠の上縁部を跨いで取り付ける保持ブロック(10)を備え、その保持ブロック(10)に、当該保持ブロック(10)が前記ふるい枠(6)の上縁部を跨いでいる状態で径方向外側に水平又は斜めに延び出す支軸(9)を設け、その支軸(9)の外端に前記加振器(3)を固定した請求項2に記載の振動ふるい機。
【請求項4】
前記加振器(3)が円盤状であり、その円盤の中心が前記支軸(9)に固定された請求項3に記載の振動ふるい機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の振動ふるい機(1)を使用し、複数ある加振器(3)の中の少なくとも1個を、その加振器(3)の振動の向きが他の加振器(3)の振動の向きと逆になるように制御し、この状態でふるい(2)のふるい網(7)上に粉体(P)を投入してその粉体をふるいに掛けるふるい方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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