説明

振動低減構造

【課題】土留壁等の施工を不要とすることで、使用材料数の減少、工期の短縮化を可能とするとともに、必要最小限の部材で効果的に振動を低減できる振動低減構造を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明は、地盤G中を伝播する振動Vを遮断して該振動Vを低減する遮断面15を備える振動低減構造10であって、前記遮断面15a等は、列状に配置された複数の柱状体10a等により構成され、前記柱状体10a等は、前記地盤G中に鉛直方向と所定の傾斜角度で配置されるとともに隣り合う前記柱状体が所定の間隔で配置されていることを特徴とする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上鉄道、平面道路、高架道路、工場、工事現場等の地上に位置するものや、地下鉄道、地下道路等の地下に位置するものから発生した振動が地盤を通じて伝播され、地盤内もしくは地盤上に存在する構造物に影響を及ぼす場合において、かかる振動を低減して構造物に伝播される振動を低減する振動低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路等を通行する車両や建設工事現場で使用される建設機械等を振動源として発せられた振動が、住宅やオフィス等の生活環境の存する建物等に伝播して快適な生活空間を害することが問題となっている。具体的には、建物内部にいる人が振動により不快感を感じたり、振動により電化製品や電子機器等が故障することや、振動により建物内に配置された家具や建物自体が破損してしまう問題等である。
【0003】
そして、このような振動は、振動源から地盤を通じて生活環境の存する建物に伝播されるため、建物の基礎に振動が伝播される前の段階で該振動を低減させる種々の試みが提案され、実施されている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、建物の基礎の側方の地盤中にコンクリート製の表面が平坦な地中壁を設け、外部から伝播されてくる振動を遮断するとともに地中壁中に設けた振動低減層によって地中壁の外壁面に伝播された振動を低減するようにした振動低減工法が開示されている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、建物の地中壁と、該地中壁の外方に設けられる表面が平坦な連続壁との間に溝状の間隙を設け、該間隙に多数のゴム球を充填することで外部から伝播されてくる振動を吸収して低減するようにした振動低減工法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−241061号公報
【特許文献2】特開平6−10369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記技術は、それぞれ地中に連続壁を構成するものである。連続壁を施工するにあたっては、地盤を掘削した上で連続壁を形成するものや深層混合処理工法により連続壁を形成するもの等がある。地盤を掘削した上で連続壁を形成する場合には掘削構内への周辺地盤の落ち込みを防止するため、仮設工事として土留壁を形成することが求められる場合があり、そのような場合には結果として使用材料数の増大、工期の長期化を招くことになる。また、深層混合処理工法により連続壁を形成する場合には施工費用がかかるといった問題を生じる。したがって、従来に比べて簡易な工程により施工可能であって、施工費用を押さえて必要最小限の部材で効果的に振動を低減できる振動低減構造が求められていた。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、土留壁等の施工を不要とすることで、使用材料数の減少、工期の短縮化を可能とするとともに、必要最小限の部材で効果的に振動を低減できる振動低減構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記の課題を解決するため、以下の手段を採用した。すなわち、地盤中を伝播する振動を遮断するように配置される遮断面を備えることにより該振動を低減する振動低減構造であって、前記遮断面は、列状に配置された複数の柱状体により形成され、前
記柱状体は、前記地盤中に鉛直方向と所定の傾斜角度で配置されるとともに隣り合う前記柱状体が所定の間隔で配置されていることを特徴とする。
【0009】
このように本発明に係る振動低減構造は、複数の柱状体が遮断面を形成するように列状に配置されることで、遮断面としての機能を発揮し、振動源から伝播される振動を低減することが可能となる。また、遮断面を構成する柱状体は地表面から孔を掘削することにより地盤中に配置可能であり、仮設工事として土留壁の施工は不要となり使用材料数を減少することができ、その結果工期の短縮化を図ることができる。さらに、前記柱状体は鉛直方向と所定の傾斜角度をもって配置されることから、鉛直方向に配置する場合よりも鉛直方向の投影面積が増大し、結果として鉛直方向に配置する場合に比べて少ない柱状体数で振動低減を図ることができる。すなわち、必要最小限の部材で効果的に振動を低減することができる。
【0010】
本発明に係る振動低減構造を構成する遮断面は、地盤中を伝播する振動を遮断する方向、換言すると、地盤中を伝播する振動の伝播方向に配置される。具体的には、振動源に近接する付近、振動が伝播される構造物の近接付近、又は振動源と前記構造物の中間位置等に配置することができる。いずれの位置に配置した場合においても、前記構造物に伝播される振動を低減することができるが、振動源に近接する付近に配置することで、振動源の周囲に位置する構造物へ伝播される振動を未然に低減することができる。なお、振動源には、地上鉄道、平面道路、高架道路、工場、工事現場等の地上に位置するものや、地下鉄道、地下道路等地下に位置するものが例示される。
【0011】
本発明に係る振動低減構造は、列状に配置された複数の柱状体により形成される。列状に配置されるとは、柱状体が連なって配置されていることを意味する。このように列状に配置されることで、前記柱状体は全体として一つの遮断面を形成して、振動源から伝播される振動を遮断して振動を低減することができる。
【0012】
前記柱状体を構成する材質は特に限定されない。例えば、鉄、コンクリート、地盤改良体、アスファルト、ゴム等により構成することができ、これらは中空部を有するものであってもよい。また、前記柱状体そのものを空洞、すなわち柱状の孔により形成してもよい。コンクリートで構成する場合にあっては、RCコンクリート、PCコンクリートどちらで構成してもよい。なお、例えばコンクリートやアスファルトの破砕物を使用することもでき、この場合資源の有効利用を図ることもできる。また、前記柱状体の断面形状は特に限定される訳ではない。円形、矩形、楕円形等いずれであってもよい。また、柱状体の断面の大きさや長手方向の長さは、振動源の位置、振動の大きさ、地盤条件、構造物への影響等を考慮して決定することができる。
【0013】
前記柱状体は、鉛直方向と所定の傾斜角度で配置される。鉛直に配置せず、傾斜角度を持たせて配置することで、鉛直に配置した場合に比べて鉛直方向の投影面積が増大し、結果として鉛直方向に配置する場合に比べて少ない柱状体数で振動の低減を図ることができる。なお、柱状体を傾ける方向は、遮断面を構成する柱状体を全て同じ方向に傾けてもよいし、それぞれを異なる方向に傾けることとしてもよい。また、前記所定の傾斜角度についても遮断面を構成する柱状体の全てを同じ角度で傾けてもよいし、それぞれを異なる角度で傾けることとしてもよい。
【0014】
また、前記柱状体は、鉛直方向と所定の傾斜角度で配置されるとともに隣り合う柱状体が所定の間隔で配置されるものである。所定の間隔を設けて、柱状体を配置する構成とすることで使用する柱状体の数を減らすことができる。また、本発明に係る柱状体は、上述のように所定の間隔を設けて配置されるとともに、所定の傾斜角度を持たせて配置されるものである。したがって、本来、柱状体の本数を減らすことは、振動低減効果を減少させ
ることになるが、本発明のように所定の傾斜角度を持たせて配置することで、必要最小限の柱状体で効果的に振動を遮断することができる。なお、所定の間隔についても、遮断面を構成する柱状体を全て同じ間隔としてもよいし、それぞれを異なる間隔で配置してもよい。
【0015】
また、所定の間隔を設けて柱状体を配置する構成とすることで、前記間隔が地盤に含まれる水の通り道となることができる。すなわち、板状の部材等で構成される連続壁の場合には、水抜き孔等を設けない限り壁を隔てた両側の水圧の均衡を保つことはできないが、本発明に係る振動低減構造においては、前記所定の間隔が水の通り道となるため、壁の両側の水圧の均衡を保つことができる。
【0016】
本発明に係る振動低減構造において、前記所定の傾斜角度は、5度よりも大きく45度よりも小さい値であることとすることができる。
【0017】
前記所定の傾斜角度を上記のような値とすることで、鉛直方向の投影面積を増加させることができ、柱状体を少ない本数で効果的に振動低減を行うことが可能となる。
【0018】
本発明に係る振動低減構造は、前記柱状体は円柱であって、前記所定の間隔は、前記柱状体の径の略3倍であるものとすることができる。
【0019】
前記柱状体が円柱である場合、換言すると前記柱状体の断面が円である場合において、柱状体と柱状体との間隔を上記のような値とすることで効果的に振動の低減を図ることができる。なお、所定の間隔は、一つの遮断面を構成する隣り合う柱状体の断面中心点間の距離をいう。また、前記柱状体の断面が円以外の形状を有する場合においても、上記構成に準ずる構成とすることで効果的に振動低減を行うことができる。すなわち、例えば前記柱状体の断面形状が矩形である場合には、前記所定の間隔を矩形の一辺の長さの略3倍とすることで効果的に振動低減を行うことができる。
【0020】
本発明に係る振動低減構造は、前記遮断面が複数列構成されているものとしてもよい。
【0021】
これにより、1つの遮断面により構成する場合に比べて振動低減を効果的に行うことができる。遮断面と遮断面は、並行に配置してもよいし、それぞれを異なる方向に配置してもよい。また、それぞれの遮断面を構成する柱状体については例えば以下のように配置することができる。すなわち、振動源側に形成する遮断面を構成する柱状体のそれぞれを柱状体の連なる方向に所定の傾斜角度で傾けるとともに所定の間隔で配置し、構造物側に配置される遮断面を構成する柱状体のそれぞれは、前記振動源側に形成する遮断面を構成する柱状体とは逆の方向に所定の傾斜角度で傾け更に所定の間隔で配置することができる。また、振動源側、構造物側のそれぞれに形成される遮断面を構成する柱状体を同方向に同じ傾斜角度で配置するとともに、構造物側に配置される柱状体を振動源側に配置される柱状体と柱状体との間に位置するように配置してもよい。
【0022】
本発明に係る振動低減構造は、前記柱状体は円柱であって、前記遮断面と遮断面との間隔は、前記柱状体の径の略2倍であることとしてもよい。これにより、遮断面を複数構成する場合において、振動の低減をより効果的に行うことができる。
【0023】
本発明に係る振動低減構造は、前記柱状体が弾性体により形成されていることとしてもよい。これにより、柱状体を形成する弾性体が振動を吸収することになり振動の低減をより効果的に行うことができる。弾性体は、特に限定されるわけではないが振動を吸収しやすいゴム等が適している。なお、前記柱状体はその全てを弾性体により構成してもよいし、内部に弾性体を有する構成としてもよい。また、内部に弾性体を有する柱状体の例とし
ては、弾性体が柱の中に任意に散りばめられているものや柱の中心に軸方向に沿って弾性体が配置されているものが挙げられる。
【0024】
本発明に係る振動低減構造は、前記柱状体は円柱であって、前記柱状体の外周に螺旋状に連続羽根が形成されていることとしてもよい。
【0025】
これにより地盤中を伝播する振動が柱状体の本体のみならず前記連続羽根によっても遮断されることになり、より効果的に振動の低減を図ることができる。また、柱状体及び連続羽根を鉄などの硬質部材で形成することにより、地盤中に直接ねじ込むことが可能となる。その結果、掘削してから柱状体を配置する場合に比べて工程数を削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明における振動低減構造は、土留壁等の施工が不要となることから、使用材料数の減少、工期の短縮化を図るとともに、必要最小限の部材で効果的に地盤中を伝播する振動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明に係る振動低減構造の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、同一の構成要素については同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
【0028】
図1は、本発明に係る振動低減構造の配置状況を示す図である。同図に示すように、本発明に係る振動低減構造10は、道路を走行する車両2等を振動源として発せられた地盤Gを通じて構造物1に伝播される振動Vを低減するために設けられる。なお、振動源には車両2の他、工事現場で使用される建設機械3や地下鉄道4が例示される。また、構造物1には、生活環境である居住スペースやオフィスが例示できる。
【0029】
図1に示す振動低減構造10は、構造物1の基礎の側面に配置されている。すなわち地盤G中を伝播する振動Vを遮断する方向に配置されている。このように配置することで、車両2等から発せられた振動Vが振動低減構造10で遮断され、構造物1へ伝播される振動Vが低減される。なお、振動低減構造10の配置個所は上記に限定されるわけではない。振動源である地下鉄道4等に近接する付近や振動源である地下鉄道4等と構造物1の中間位置等に配置することができる。なお、例えば振動源である地下鉄道4に沿って又は囲むように配置することで、振動源の周囲に位置する構造物へ伝播される振動Vを未然に低減することができる。
【0030】
次に、前記振動低減構造10について図2に基づいて、より詳細に説明する。図2は、図1に示す振動低減構造10の拡大図面であり、(a)は、本発明に係る振動低減構造の第1の実施形態、(b)は本発明に係る振動低減構造の第2の実施形態を示す。
【0031】
図2(a)に示す第1の実施形態に係る振動低減構造10は、振動Vを遮断する第1の遮断面15aを形成する円柱の列からなる柱状体10a〜10d、振動Vを遮断する第2の遮断面15bを形成する円柱の列からなる柱状体11a〜11cを備える構成である。そして、第1の遮断面15aと第2の遮断面15bは、略並行に配置されている。また、本実施形態に係る振動低減構造10は、第1の遮断面15aを形成する柱状体10a〜10dが、鉛直方向に対して同じ傾斜角度で配置されるとともに、それぞれが同じ間隔で配置されている。また、第2の遮断面15bを形成する柱状体11a〜11cは、前記第1の遮断面15aを形成する柱状体10a〜10dとは、逆の傾斜角度で配置されるとともに、それぞれが同じ間隔で配置されている。このように柱状体10a等を規則的な配置とすることで、効果的に振動Vを遮断して、構造物1に伝播される振動Vを低減することが
できる。
【0032】
図2(b)に示す第2の実施形態に係る振動低減構造10は、円柱からなる柱状体10a〜10cと六角柱からなる柱状体12a〜12cを備える構成である。そして、本実施形態においては柱状体10a〜10cおよび柱状体12a〜12cにより第1の遮断面15aを形成している。すなわち、本実施形態においては、柱状体10a等のそれぞれが全て異なる傾斜角度および異なる間隔で配置されて、全体として1つの遮断面を形成している。このように柱状体10a等を上述した第1の実施形態と異なり、ランダムな配置とすることでも、振動Vを遮断して、構造物1に伝播される振動Vを低減することができる。
【0033】
次に、本発明に係る振動低減構造10のその他の実施形態について図面に基づいて更に詳細に説明する。
【0034】
図3は、本発明に係る振動低減構造の第3の実施形態を示す図である。(a)は上面図、(b)はA方向、(c)はB方向から見た図である。(a)に示すように、本実施形態に係る振動低減構造10は、第1の遮断面15aを形成する径がDである柱状体10a〜10eが、それぞれが同じ間隔3Dで配置されている。また、第2の遮断面15bを形成する柱状体11a〜11eは、それぞれが同じ間隔3Dであって、第1の遮断面15aを形成する柱状体10a〜10eの間に位置するように配置されている。また、(b)に示すようにA方向から見た場合には柱状体10a等に傾きは見られない。しかし、(c)に示すように、B方向から見た場合には、柱状体10a〜10eは、柱状体10a〜10eが連なる方向(紙面上側)に鉛直方向に対して傾斜角度20度で配置され、柱状体11a〜11eは、逆の向き(紙面下側)に傾斜角度20度で配置されている。なお、柱状体10a等の径は、200〜1000mmであることが望ましい。また、長さについては、振動源の高さ方向における位置、振動源から振動低減構造10までの距離、低減したい振動量、地盤条件等により異なり、これらに基づいて決定することができる。
【0035】
このように、柱状体10a等を上記のような傾斜角度を持たせて配置することで、鉛直方向に配置する場合に比べて鉛直方向の投影面積が増大し、結果として鉛直方向に配置する場合に比べて少ない数の柱状体で振動Vを遮断することできる。なお、投影面積が増大した部分とは、図3(a)についてみれば、傾斜角度を持たせて配置したことにより投影される点線部分を指す。また、本実施形態のように柱状体10a等を規則的な配置とすることで、振動Vが同図に示す第1の遮断面15aおよび第2の遮断面15bと略直角方向から伝播される場合に、効果的に振動Vを遮断することが可能となる。すなわち、柱状体10aと10bの間を伝播する振動Vを柱状体11aにより効果的に遮断することができる。その結果、構造物1に伝播される振動Vを低減することができる。
【0036】
図4は、本発明に係る振動低減構造の第4の実施形態を示す図である。(a)は上面図、(b)はA方向、(c)はB方向から見た図である。(a)に示すように、本実施形態に係る振動低減構造10は、第1の遮断面15aを形成する径がDである柱状体10a〜10eが、それぞれが同じ間隔3Dで配置されている。また、第2の遮断面15bを形成する柱状体11a〜11eは、それぞれが同じ間隔3Dであって、第1の遮断面15aを形成する柱状体10a〜10eの間に位置するように配置されている。また、(b)に示すようにA方向から見た場合には、第1の遮断面15aを形成する柱状体10e等は傾斜角度20度で配置され、第2の遮断面15bを形成する柱状体11d等は、第1の遮断面15aを形成する柱状体10eとは逆の方向に傾斜角度20度で配置されている。また、(c)に示すように、B方向から見た場合には、柱状体10a〜10eは、柱状体10a〜10eが連なる方向(紙面上側)に鉛直方向に対して傾斜角度20度で配置され、柱状体11a〜11eもこれと同方向に傾斜角度20度で配置されている。
【0037】
図5は、本発明に係る振動低減構造の第5の実施形態を示す図である。(a)は上面図、(b)はA方向、(c)はB方向から見た図である。(a)に示すように、本実施形態に係る振動低減構造10は、第1の遮断面15aを形成する径がDである柱状体10a〜10eが、それぞれが同じ間隔3Dで配置されている。また、第2の遮断面15bを形成する柱状体11a〜11eは、それぞれが同じ間隔3Dであって、第1の遮断面15aを形成する柱状体10a〜10eの間に位置するように配置されている。また、(b)に示すようにA方向から見た場合には、第1の遮断面15aを形成する柱状体10e等および第2の遮断面15bを形成する11e等には傾きは見られない。しかし、(c)に示すように、B方向から見た場合には、柱状体10a〜10eは、柱状体10a〜10eが連なる方向(紙面上側)に鉛直方向に対して傾斜角度20度で配置され、柱状体11a〜11eについてもこれと同じ向きに傾斜角度20度で配置されている。
【0038】
上述した第3から第5の実施形態からわかるように、本発明に係る振動低減構造10を構成する柱状体10a等を傾ける方向は、任意に決定することができる。また、上述した第3〜第5の実施形態においては遮断面を2面設ける構成、換言すると2列構成としたがこれに限定されるわけではない。すなわち、遮断面を3面以上設けることとしてもよい。
【0039】
次に、本発明に係る振動低減構造を構成する柱状体の形状について図面に基づいて説明する。
【0040】
図6は、本発明に係る振動低減構造10を構成する柱状体の実施形態を示す図である。(a)は円柱状からなる柱状体の側面図、(b)は四角柱からなる柱状体の側面図、(c)は六角柱からなる柱状体の側面図、(d)円柱の周囲に長手方向と略直角方向に複数の凸部が形成された柱状体の側面図、(e)は先端に尖部を有し、円柱側面に螺旋状に配置された連続羽根が形成されている柱状体の側面図である。本発明に係る振動低減構造10を構成する柱状体には様々な形状の柱状体を用いることができる。また、(d)に示す実施形態においては、伝播する振動が柱状体の本体のみならず凸部によっても遮断されることになり、より効果的に振動の低減を図ることができる。更に、(e)に示す実施形態においては、前記連続羽根によっても振動が遮断されることになり、より効果的に振動の低減を図ることができるとともに、柱状体及び連続羽根を鉄などの硬質部材で形成することにより、地盤中に直接ねじ込むことが可能となり、掘削してから柱状体を配置する場合に比べて工程数を削減することが可能となる。
【0041】
なお、上述した柱状体を構成する素材は特に限定されない。鉄、コンクリート、地盤改良体、アスファルト、ゴム等の弾性体等により構成することができ、これらは中空部を有するものであってもよい。また、前記柱状体そのものを空洞、すなわち柱状の孔により形成してもよい。弾性体により構成する場合においては、前記柱状体はその全てを弾性体により構成してもよいし、内部に弾性体を有する構成としてもよい。また、内部に弾性体を有する柱状体の例としては、弾性体が柱の中に任意に散りばめられているものや柱の中心に軸方向に沿って配置されているものが挙げられる。前記柱状体を弾性体により構成することで弾性体が振動を吸収もしくは反射し、より効果的に振動を低減することができる。一方、コンクリートで構成する場合等においても、例えば中空部を備えるものとすることができる。中空部を有する構成とすることで、中空部が振動を吸収もしくは反射して効果的に振動を低減することができる。また、柱状体本体の重量を軽減できることから作業効率を向上させることも可能となる。なお、中空部を有するコンクリートからなる柱状体には、例えば使用済みの電信柱等を使用してもよい。これにより、資源の有効利用を図ることも可能となる。
【0042】
次に、本発明に係る振動低減構造の施工方法について従来技術と比較して説明する。
【0043】
図7は、従来技術における連続壁を施工する施工状況を示す図である。同図は従来技術の中でも、地盤を掘削した後に連続壁を形成する場合を示すものである。このような従来技術においては、(1)掘削、(2)土留壁の施工、(3)連続壁の形成、(4)埋め戻し、を行う必要がある。このように地盤を掘削した上で連続壁を形成する場合には掘削構内への周辺地盤の落ち込みを防止するため、仮設工事として土留壁を形成することが求められ、使用材料数の増大、工期の長期化を招いていた。また、地盤を掘削する際の掘削深さにも限界がある。
【0044】
これに対し、本発明に係る振動低減構造を施工する際には、既存の掘削機械により地盤に孔を開けるだけで作業を行うことができる。すなわち、(1)柱状体を挿入する孔の掘削、(2)柱状体の挿入、(3)埋め戻し、により施工することができる。このように、本発明に係る振動低減構造は、従来の連続壁を施工する場合に比べて、非常に簡易な工程で施工を行うことができる。なお、例えば掘削した孔にコンクリート等を直接充填して、柱状体を形成することも可能であり、このような場合には埋め戻しの作業もほとんど必要ない。また、上述したように螺旋状の連続羽根を備える柱状体を用いるような場合には、直接前記柱状体をねじ込むことが可能であり更に簡易な工程により施工することが可能となる。また、前記柱状体そのものを空洞、すなわち柱状の孔により形成する場合にあっては、柱状体の挿入、埋め戻しの工程を省略することができ、より簡易な工程により振動低減構造を施工することができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る振動低減構造はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る振動低減構造の配置状況を示す図である。
【図2】本発明に係る振動低減構造の第1、第2の実施形態を示す図である。
【図3】本発明に係る振動低減構造の第3の実施形態を示す図である。
【図4】本発明に係る振動低減構造の第4の実施形態を示す図である。
【図5】本発明に係る振動低減構造の第5の実施形態を示す図である。
【図6】本発明に係る振動低減構造を構成する柱状体の実施形態を示す図である。
【図7】従来技術における連続壁を施工する施工状況を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・構造物
2・・・車両
3・・・建設機械
4・・・地下鉄道
10・・・振動低減構造
10a〜10e、11a〜11e、12a〜12c・・・柱状体
15a、15b・・・遮断面
20・・・連続壁
30・・・土留壁
G・・・地盤
V・・・振動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中を伝播する振動を遮断するように配置される遮断面を備えることにより該振動を低減する振動低減構造であって、
前記遮断面は、列状に配置された複数の柱状体により形成され、
前記柱状体は、前記地盤中に鉛直方向と所定の傾斜角度で配置されるとともに隣り合う前記柱状体が所定の間隔で配置されていることを特徴とする振動低減構造。
【請求項2】
前記所定の傾斜角度は、5度よりも大きく45度よりも小さい値であることを特徴とする請求項1に記載の振動低減構造。
【請求項3】
前記柱状体は円柱であって、
前記所定の間隔は、前記柱状体の径の略3倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の振動低減構造。
【請求項4】
前記遮断面が複数列構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の振動低減構造。
【請求項5】
前記柱状体は円柱であって、
前記遮断面と遮断面との間隔は、前記柱状体の径の略2倍であることを特徴とする請求項4に記載の振動低減構造。
【請求項6】
前記柱状体が弾性体により形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の振動低減構造。
【請求項7】
前記柱状体は円柱であって、
前記柱状体の外周に螺旋状に連続羽根が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の振動低減構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−100325(P2007−100325A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288534(P2005−288534)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)