説明

振動型モータの駆動制御装置、駆動制御方法、及びプログラム

【課題】振動型モータの起動から定常速度に到達するまでの加速期間における速度追従性を向上させる。
【解決手段】駆動開始直後の振動型モータの実速度を初速取り込み手段により検出し、初速取り込み手段により検出された振動型モータの実際の初速値が、振動型モータの実際の初速値と比較するための基準値である初速比較値よりも大きい場合には、振動型モータに対して印加する周波信号の周波数を更新せずに初期周波数を維持するように制御して、振動型モータの起動直後における速度変動を軽減させ、加速期間における振動型モータの速度追従性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型モータの駆動制御装置、駆動制御方法、及びプログラムに関し、詳しくは振動型モータの速度制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
振動型モータは、超音波領域周波数の機械振動を利用して駆動を得るものである。振動型モータは、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子に位相の異なる2相の周波電圧を印加することによって振動体の表面に進行性振動波を励起し、その振動体の表面に加圧接触する移動子を相対的に移動させ駆動を得る。
【0003】
振動型モータは、印加される周波電圧の周波数が高い場合には回転速度が低く、周波数を下げていくことで回転速度が高くなる特性を持つ。振動型モータの速度制御を行う場合には、振動型モータの回転軸上に配備されたロータリーエンコーダ等から回転速度を検出する。そして、検出されたモータの実速度と指令速度値(目標速度値)とを逐次比較し、指令速度値との偏差を所定の演算方法によりゲインをもたせ、振動型モータに与える周波電圧の周波数を操作して駆動を行う、所謂フィードバック制御方式が一般的である。
【0004】
また、加速時の制御においては振動型モータに限らず電磁モータにおいても指令速度値を関数として持ち、制御開始時点からの時間軸に対して指令値となる目標速度を逐次変化させ、この目標速度に対してモータの回転を追従させる方法が一般的である。加速時の指令速度値となる関数には制御対象及び負荷条件等により1次関数や2次以降の高次の関数を組み合わせて摘要し、起動、加速、定速の状態を滑らかに移行させる方法についてさまざまな提案がなされている。
【0005】
図14に指令速度値の時間変化の一例を示す。図14において、横軸は時間であり、縦軸は回転速度(回転数)である。図14に示す例において、指令速度値は制御開始となった時点から指令速度を徐々に増加させ所望の回転数に達したところで一定値としている。また、例えば、特許文献1に記載された速度制御では、加速時間の前半に許容される最大加速度を要求する時間を設け、加速時間の後半は加速度を滑らかに零に導くように、指令速度曲線を設定し駆動初期における速度追従性を向上させている。
【0006】
また、振動型モータの起動時における処理としては、振動型モータに印加する周波電圧を高周波側から低周波側に向かって周波数掃引させる方法や、固定高周波電圧を印加して起動開始させる方法等がある。しかし、速度制御においてはいずれの場合でも振動型モータが回転を始めてから最初の速度値が確定するのを待って速度制御処理を開始することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-67750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
振動型モータは、振動体とその表面に加圧接触する移動子との摩擦力によって駆動を得るものであり、接触面が静止摩擦状態から動摩擦状態になったときに急激に回転を生じる特性を持つ。そのため、特に起動直後には急激なオーバースピード状態になりやすい。その状態から目標速度に対して追従させるフィードバック制御をかけた場合には、目標速度に対して追従しようとするために、結果として加速中でありながら一旦減速し、その後また加速するといった挙動が発生する。このような挙動が発生したときの回転速度及び駆動周波数(振動型モータに印加する周波電圧の周波数)の例を図15に示す。
【0009】
図15(A)には、起動開始からの振動型モータの指令速度値及び実速度の時間変化を示している。図15(A)において、横軸は時間であり、縦軸は回転速度(回転数)である。また、ISは指令速度値であり、RSは実速度である。図15(A)に示したように、起動してから速度が検出可能となった時点(エンコーダエッジが最初に確定したタイミング)で振動型モータの実速度(実回転数)が既に指令速度値から大きく外れており、起動開始以降も指令速度値に対する実速度の追従性が悪い。このような場合には、フィードバック制御系の演算ゲインを調整しても収束させることが困難であった。図15(B)には、図15(A)と同じ時間軸における駆動周波数を示している。図15(B)において、横軸は時間であり、縦軸は駆動周波数である。初期周波数39kHzで起動開始し、振動型モータのオーバースピード状態を認識すると減速させるために一時的に駆動周波数を40kHzあたりまで上げている。
【0010】
このように振動型モータの起動から定常速度に到達するまでの加速期間においては、一旦、指令速度値から大きく外れてしまうとその後収束するまでに無駄な時間を要してしまい、指令速度値に対する実速度の速度追従性を悪化させてしまうという問題があった。また、この速度追従性の悪化から、振動型モータ自体の振動や騒音等の不具合を引き起こすことも考えられ、その制御性が問題となっていた。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、振動型モータの起動から定常速度に到達するまでの加速期間における速度追従性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る振動型モータの駆動制御装置は、電気−機械エネルギー変換素子により励振される振動体を有し、前記電気−機械エネルギー変換素子に周波信号が印加されることにより駆動される振動型モータの駆動制御装置であって、前記振動型モータへ与える指令速度値を算出する指令速度計算手段と、前記振動型モータの速度を検出する速度検出手段と、前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの速度及び前記指令速度計算手段により算出された前記指令速度値に応じて、前記電気−機械エネルギー変換素子に印加する前記周波信号の周波数を制御する駆動周波数制御手段とを備え、前記駆動周波数制御手段は、前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの駆動開始直後の速度が基準値よりも速い場合には、前記指令速度計算手段により算出された前記指令速度値に応じた周波数とは異なる周波数に前記周波信号の周波数を制御することを特徴とする。
また、本発明に係る振動型モータの駆動制御装置は、電気−機械エネルギー変換素子により励振される振動体を有し、前記電気−機械エネルギー変換素子に周波信号が印加されることにより駆動される振動型モータの駆動制御装置であって、前記振動型モータへ与える指令速度値を算出する指令速度計算手段と、前記振動型モータの速度を検出する速度検出手段と、前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの速度及び前記指令速度計算手段により算出された前記指令速度値に応じて、前記電気−機械エネルギー変換素子に印加する前記周波信号の周波数を制御する駆動周波数制御手段とを備え、前記指令速度計算手段は、前記振動型モータの初速値を加算して前記振動型モータへ与える指令速度値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動初期において振動型モータに対して印加する周波信号の周波数を制御することにより、振動型モータの起動直後における速度変動を軽減させることが可能となり、加速期間における振動型モータの速度追従性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る振動型モータの駆動制御装置の構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態における速度制御部の機能構成例を示す図である。
【図3】第1の実施形態における駆動制御を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態における回転速度及び駆動周波数の一例を示す図である。
【図5】第2の実施形態における速度制御部の機能構成例を示す図である。
【図6】第2の実施形態における駆動制御を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態における回転速度及び駆動周波数の一例を示す図である。
【図8】第3の実施形態における速度制御部の機能構成例を示す図である。
【図9】第3の実施形態における駆動制御を示すフローチャートである。
【図10】第3の実施形態における回転速度及び駆動周波数の一例を示す図である。
【図11】第4の実施形態における速度制御部の機能構成例を示す図である。
【図12】第4の実施形態における駆動制御を示すフローチャートである。
【図13】第4の実施形態における回転速度及び駆動周波数の一例を示す図である。
【図14】指令速度値の時間変化の一例を示す図である。
【図15】従来の速度制御による回転速度及び駆動周波数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、駆動初期において振動型モータの実速度が基準値よりも速い場合には、駆動周波数の更新を行わずに駆動周波数を維持する駆動制御を行うことで、起動直後における速度変動を軽減させる。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係る振動型モータの駆動制御装置の構成例を示すブロック図である。図1において、100は速度制御部、103はパルス生成回路、104は昇圧回路、105は振動型モータ、106はエンコーダである。速度制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、速度制御回路102、速度検出回路107、及び速度差検出回路108を有する。
【0018】
CPU101は、装置全体のさまざまな動作をつかさどっているものである。CPU101は、例えば後述するような動作を実現するためのソフトウェア(プログラム)を図示しない記憶部(記録媒体を含む)から読み出して実行することで、各機能部を統括的に制御する。なお、以下の説明において、CPU101については振動型モータ105の制御関連の動作のみ説明し、振動型モータの制御関連以外の動作に関する説明は省略する。
【0019】
CPU101は、速度差検出回路108から供給される速度差情報を基に、振動型モータ105の回転速度を決定する目標指令速度を作成して速度制御回路102へ出力する。速度制御回路102は、CPU101から出力される目標指令速度を基に、振動型モータ105の回転速度を決定する駆動周波数指令を作成してパルス生成回路103へ出力する。パルス生成回路103は、速度制御回路102から出力される駆動周波数指令に応じて、駆動パルスを生成し出力する。
【0020】
パルス生成回路103から出力される駆動パルスは、振動型モータ105を駆動し得る電圧に昇圧回路104で昇圧された後に振動型モータ105に供給される。これにより、振動型モータ105が回転駆動される。振動型モータ105は、電気−機械エネルギー変換素子により励振される振動体を有し、その電気−機械エネルギー変換素子に周波信号が印加されることにより駆動される。具体的には、振動型モータ105は、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子に位相の異なる2相の周波電圧を印加することにより振動体の表面に進行性振動波を励起し、振動体の表面に加圧接触する移動子を相対的に移動させ駆動を得る。
【0021】
エンコーダ106は、振動型モータ105の回転状態に応じたパルス情報を出力する。速度検出回路107は、エンコーダ106から出力されるパルス情報を基に、振動型モータ105の回転速度(実速度)を検出する。速度差検出回路108は、速度制御回路102から供給される目標速度と、速度検出回路107によって検出された振動型モータ105の実速度とを基に、目標速度と実速度との速度差に係る速度差情報を検出する。速度差検出回路108により検出された速度差情報は、CPU101に供給される。
【0022】
このように図1に示した構成では、振動型モータ105の駆動制御に係るフィードバックループが形成される。そして、フィードバック制御により振動型モータ105の駆動制御を行うことで、振動型モータ105において目標速度による回転が維持される。
【0023】
図2は、図1に示した速度制御部100の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図2において、201は初速取り込み手段、202は速度検出手段、203Aは指令速度計算手段、204は制御単位時間管理手段である。また、205は第1の格納手段、206Aは比較手段、207は速度差検出手段、208は駆動周波数計算手段、209は第2の格納手段、210Aは駆動周波数出力手段である。例えば、初速取り込み手段201及び速度検出手段202は、速度検出回路107により実現され、指令速度計算手段203A、制御単位時間管理手段204、及び比較手段206Aは、CPU101により実現される。また、例えば、速度差検出手段207は速度差検出回路108により実現され、駆動周波数計算手段208はCPU101及び速度制御回路102により実現され、駆動周波数出力手段210Aは速度制御回路102により実現される。
【0024】
初速取り込み手段201は、エンコーダ106からのパルス情報に基づいて、起動時(駆動開始直後)の振動型モータ105の回転速度(実速度)を検出する。すなわち、初速取り込み手段201は、振動型モータ105の駆動を開始してから最初に速度が検出可能となった時点(エンコーダエッジが最初に確定したタイミング)での振動型モータ105の回転速度を検出する。また、速度検出手段202は、エンコーダ106からのパルス情報に基づいて、起動後の振動型モータ105の回転速度(実速度)を検出する。指令速度計算手段203Aは、制御単位時間管理手段204からの通知に従って、振動型モータ105へ与える指令速度値を算出する。制御単位時間管理手段204は、タイマー等の制御周期の時間的管理を行う。
【0025】
第1の格納手段205には、初速比較値aが格納される。初速比較値aは、振動型モータ105の実際の初速値(初速取り込み手段201により検出された回転速度)と比較するための基準値であり、任意の値を設定可能であるが、ここでは一例として振動型モータ105の理想的な初速値の2倍の値とする。比較手段206Aは、振動型モータ105の実際の初速値と初速比較値aとを比較する。比較手段206Aは、振動型モータ105の実際の初速値が初速比較値aよりも大きい場合には、出力する駆動周波数を切り替えるための通知を駆動周波数出力手段210Aに対して行う。
【0026】
速度差検出手段207は、速度検出手段202によって検出された振動型モータ105の回転速度(実速度)と、指令速度計算手段203Aによって算出された指令速度値とを比較し、実際の回転速度と指令速度との速度差を算出する。駆動周波数計算手段208は、速度差検出手段207によって算出された速度差に応じて、振動型モータ105を駆動する駆動周波数を決定する。
【0027】
第2の格納手段には、振動型モータ105の起動時に与える駆動周波数を示す初期周波数f0が格納される。駆動周波数出力手段210Aは、決定された駆動周波数の周波信号を振動型モータ105に与えるための駆動周波数指令を出力する。駆動周波数出力手段210Aは、振動型モータ105の起動時に初期周波数f0を示す駆動周波数指令を出力し、その後において通常は、駆動周波数計算手段208により決定された駆動周波数を示す駆動周波数指令を出力する。ただし、駆動周波数出力手段210Aは、振動型モータ105の起動時に初速取り込み手段201により検出された速度値が初期比較値aよりも大きく比較手段206Aからの通知を受けた場合には、初期周波数f0を示す駆動周波数指令を出力する。
【0028】
次に、第1の実施形態における振動型モータの駆動制御について説明する。なお、以下では、振動型モータ105の起動(駆動開始)から定常速度に到達するまでの加速期間における速度制御部100による制御について説明する。図3は、第1の実施形態における駆動制御を示すフローチャートである。
【0029】
まず、例えばCPU101によって、振動型モータ105の実際の初速値と比較するための基準値である初速比較値aが第1の格納手段205に設定される(ステップS101)。次に、駆動周波数出力手段210Aが初期周波数f0を示す駆動周波数指令を出力して振動型モータ105の駆動が開始されると、初速取り込み手段201は振動型モータ105の駆動開始直後の最初の実速度y0を取り込む(ステップS102)。
【0030】
次に、比較手段206Aは、初速取り込み手段201が取り込んだ振動型モータ105の実速度y0と初速比較値aとを比較する(ステップS103)。比較の結果、振動型モータ105の実速度y0が初速比較値aより大きい場合には、初期周波数維持フラグに「1」をセット(ステップS111)して、ステップS104へ進む。一方、振動型モータ105の実速度y0が初速比較値a以下である場合には、そのままステップS104へ進む。
【0031】
次に、指令速度計算手段203Aは、振動型モータ105へ与える目標速度としての指令速度を計算する(ステップS104)。次に、指令速度計算手段203A及び駆動周波数計算手段208は、制御を行う単位時間毎に計算した指令速度値を出力して(ステップS105)、振動型モータ105へ目標速度として与える。具体的には、計算した指令速度値に応じた駆動周波数を示す駆動周波数指令が駆動周波数出力手段210Aより出力される。
【0032】
続いて、速度検出手段202は、目標速度を与えられた振動型モータ105の実速度(実際の回転速度)を計測する(ステップS106)。次に、速度差検出手段207は、振動型モータ105に対する指令速度値と振動型モータ105の実速度との比較演算処理を行う。そして、駆動周波数計算手段208は、速度差検出手段207での比較演算処理により得られた速度差から、次回の制御周期で駆動する駆動周波数を算出する(ステップS107)。
【0033】
次に、駆動周波数出力手段210Aは、初期周波数維持フラグの判定を行う(ステップS108)。判定の結果、初期周波数維持フラグに「1」が立っていたら初期周波数f0を維持する処理、すなわち、振動型モータ105へ与える駆動周波数データを更新しない処理(ステップS112)を行う。一方、初期周波数維持フラグが「0」の場合には、ステップS107において駆動周波数計算手段208により算出された駆動周波数データfoutを出力する(ステップS109)。
【0034】
ステップS112において初期周波数f0を維持する処理を行った後に、初期周波数f0と駆動周波数データfoutの比較が行われる(ステップS113)。その結果、初期周波数f0が駆動周波数データfoutより大きい場合には、初期周波数維持フラグをクリア(ステップS114)し、ステップS109に移行する。一方、ステップS113において、初期周波数f0が駆動周波数データfout以下である場合には、ステップS105へ移行する。
【0035】
ステップS109の処理を行った後に、振動型モータ105の実速度が定常速度(最終目標速度)に到達したか否かの判定がCPU101等によって行われる(ステップS110)。そして、振動型モータ105の実速度が定常速度に到達した場合には加速期間における処理を終了し、定常速度に未到達である場合にはステップS105へ移行する。
【0036】
図4は、第1の実施形態における振動型モータの駆動制御を行ったときの回転速度及び駆動周波数の一例を示す図である。図4(A)には、起動開始からの振動型モータの指令速度値IS及び実速度RSの時間変化を示しており、横軸は時間、縦軸は回転速度(回転数)である。図4(A)においては、破線が指令速度値ISを表し、実線が実速度RSを表している。図4(A)と図15(A)とを比較すると、振動型モータ105の回転速度が検出可能となった時点での実速度(初速)は同じレベルではあるが、第1の実施形態におけるその後の挙動は実速度が指令速度値を下回るまでは初速と同じ速度を維持している。また、図4(B)には、図4(A)と同じ時間軸における駆動周波数DRを示しており、横軸は時間、縦軸は駆動周波数である。本実施形態では、図4(B)に示されるように、初期周波数39kHzで起動開始し、振動型モータの実速度が指令速度値を下回るまでは初期周波数を維持させている。すなわち、前述したように振動型モータの駆動制御を行うことで、図15(A)に示した減速と加速を繰り返すような速度変動が軽減され、振動型モータの起動から定常速度に到達するまでの加速期間における速度追従性を向上させることができる。
【0037】
以上説明したように第1の実施形態によれば、駆動初期において振動型モータの実速度が指令速度よりも所定量以上速かった場合には、駆動周波数の更新を行わずに初期周波数を維持するように制御する。これにより、加速と減速が交互に繰り返されるような振動型モータの起動直後における速度変動を軽減させることが可能となり、加速期間における振動型モータの速度追従性を向上させることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、駆動初期において振動型モータの実速度が基準値よりも速い場合には、駆動周波数の変化量に上限を設け、それ以上の変化量での駆動周波数の更新を行わない駆動制御を行うことで、起動直後における速度変動を軽減させる。なお、第2の実施形態に係る振動型モータの駆動制御装置の全体構成は、図1に示した第1の実施形態に係る振動型モータの駆動制御装置と同様であるので、その説明は省略する。
【0039】
図5は、第2の実施形態における速度制御部100の機能的な構成を示す機能ブロック図である。この図5において、図2に示したブロック等と同一の機能を有するブロック等には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図2において、206Bは比較手段、210Bは駆動周波数出力手段、211は駆動周波数制御手段、212は第3の格納手段である。例えば、比較手段206BはCPU101により実現され、駆動周波数出力手段210B及び駆動周波数制御手段211は速度制御回路102により実現される。
【0040】
比較手段206Bは、振動型モータ105の実際の初速値と初速比較値aとを比較する。比較手段206Bは、振動型モータ105の実際の初速値が初速比較値aよりも大きい場合には、駆動周波数制御手段211に対して通知を行う。第3の格納手段212には、周波数更新上限値bが格納される。周波数更新上限値bは、駆動周波数計算手段208によって算出された駆動周波数の更新量と比較し、その更新分にリミットをかけるための基準値である。周波数更新上限値bは、任意の値を設定可能であるが、ここでは一例として500Hzとする。
【0041】
駆動周波数制御手段211は、駆動周波数計算手段208によって算出された駆動周波数に基づいて、最終的に振動型モータ105を駆動する駆動周波数を決定する。駆動周波数制御手段211は、通常、駆動周波数計算手段208によって算出された駆動周波数を、最終的に振動型モータを駆動する駆動周波数に決定する。ただし、駆動周波数制御手段211は、振動型モータ105の起動時に初速取り込み手段201により検出された速度値が初期比較値aよりも大きく比較手段206Bからの通知を受けた場合には、駆動周波数の最大更新量を周波数更新上限値bに制限する。駆動周波数出力手段210Bは、駆動周波数制御手段211により決定された駆動周波数を示す駆動周波数指令を出力する。
【0042】
第2の実施形態における振動型モータの駆動制御について説明する。以下では、振動型モータ105の起動(駆動開始)から定常速度に到達するまでの加速期間における速度制御部100による制御について説明する。図6は、第2の実施形態における駆動制御を示すフローチャートである。
【0043】
まず、例えばCPU101によって、振動型モータ105へ与える駆動周波数の変化量に制限をかけるための基準値である周波数更新上限値bが第3の格納手段212に設定される(ステップS200)。また、例えばCPU101によって、振動型モータ105の実際の初速値と比較するための基準値である初速比較値aが第1の格納手段205に設定される(ステップS201)。次に、駆動周波数出力手段210Bより初期周波数を示す駆動周波数指令が出力され振動型モータ105の駆動が開始されると、初速取り込み手段201は振動型モータ105の駆動開始直後の最初の実速度y0を取り込む(ステップS202)。
【0044】
次に、比較手段206Bは、初速取り込み手段201が取り込んだ振動型モータ105の実速度y0と初速比較値aとを比較する(ステップS203)。比較の結果、振動型モータ105の実速度y0が初速比較値aより大きい場合には、駆動周波数更新リミットフラグに「1」をセット(ステップS211)して、ステップS204へ進む。一方、振動型モータ105の実速度y0が初速比較値a以下である場合には、そのままステップS204へ進む。
【0045】
次に、指令速度計算手段203Aは、振動型モータ105へ与える目標速度としての指令速度を計算する(ステップS204)。次に、指令速度計算手段203A及び駆動周波数計算手段208は、駆動周波数制御手段211及び駆動周波数出力手段210Bを介して、制御を行う単位時間毎に計算した指令速度値を出力して(ステップS205)、振動型モータ105へ目標速度として与える。
【0046】
続いて、速度検出手段202は、目標速度を与えられた振動型モータ105の実速度(実際の回転速度)を計測する(ステップS206)。次に、速度差検出手段207は、振動型モータ105に対する指令速度値と振動型モータ105の実速度との比較演算処理を行う。そして、駆動周波数計算手段208は、速度差検出手段207での比較演算処理により得られた速度差から、次回の制御周期で駆動する駆動周波数を算出する(ステップS207)。
【0047】
次に、駆動周波数制御手段211は、駆動周波数更新リミットフラグの判定を行い(ステップS208)、駆動周波数更新リミットフラグが「1」の場合にはステップS212へ進み、駆動周波数更新リミットフラグが「0」の場合にはステップS209へ進む。ステップS209にて、駆動周波数制御手段211は、ステップS207において駆動周波数計算手段208により算出された駆動周波数をそのまま駆動周波数出力手段210Bを介して出力する。
【0048】
ステップS212にて、駆動周波数制御手段211は、初期周波数とステップS207において算出した駆動周波数との差分から駆動周波数の更新量を算出し、この更新量が周波数更新上限値bよりも大きいか否かの判定を行う。その結果、駆動周波数の更新量が周波数更新上限値bよりも大きい場合にはステップS213に進み、駆動周波数制御手段211は、周波数更新分を周波数更新上限値bに差し替えて得られた駆動周波数を、駆動周波数出力手段210Bを介して出力する。一方、ステップS212での判定の結果、駆動周波数の更新量が周波数更新上限値b以下である場合にはステップS209に進む。
【0049】
その後、振動型モータ105の実速度が定常速度(最終目標速度)に到達したか否かの判定がCPU101等によって行われる(ステップS210)。そして、振動型モータ105の実速度が定常速度に到達した場合には加速期間における処理を終了し、定常速度に未到達である場合にはステップS205へ移行する。なお、駆動周波数更新リミットフラグは、例えば駆動周波数計算手段208により算出された駆動周波数が所定の駆動周波数(例えば初期周波数)以下となった場合にクリアするようにすれば良い。
【0050】
図7は、第2の実施形態における振動型モータの駆動制御を行ったときの回転速度及び駆動周波数の一例を示す図である。図7(A)には、起動開始からの振動型モータの指令速度値IS及び実速度RSの時間変化を示しており、横軸は時間、縦軸は回転速度(回転数)である。図7(A)においては、破線が指令速度値ISを表し、実線が実速度RSを表している。図7(A)と図15(A)とを比較すると、振動型モータ105の回転速度が検出可能となった時点での実速度(初速)は同じレベルではあるが、第2の実施形態では減速の度合いが緩やかになった分、実速度が指令速度値を下回った後の速度変動が軽減されている。また、図7(B)には、図7(A)と同じ時間軸における駆動周波数DRを示しており、横軸は時間、縦軸は駆動周波数である。本実施形態では、図7(B)に示されるように、初期周波数39kHzで起動開始し、一旦、駆動周波数が39.5kHzまで上昇するがそこでリミットがかかり、その後は駆動周波数を緩やかに下げてきている。すなわち、前述したように振動型モータの駆動制御を行うことで、図15(A)に示した指令速度値を下回った後の減速と加速を繰り返すような速度変動が軽減され、振動型モータの加速期間における速度追従性を向上させることができる。
【0051】
以上説明したように第2の実施形態によれば、駆動初期において振動型モータの実速度が指令速度よりも所定量以上速かった場合には、駆動周波数の変化量を制限し、その制限を超えた駆動周波数の更新を行わないように制御する。これにより、振動型モータの起動直後における急激な減速を防止して速度変動を軽減させることが可能となり、加速期間における振動型モータの速度追従性を向上させることができる。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、振動型モータの過去の駆動履歴から起動時に発すると予想される初速値を任意の固定値として予め準備しておく。その任意の固定値を指令速度の計算式に加算する形で速度のかさ上げを行って指令速度値を算出することにより、起動直後の速度変動を軽減させる。なお、第3の実施形態に係る振動型モータの駆動制御装置の全体構成は、図1に示した第1の実施形態に係る振動型モータの駆動制御装置と同様であるので、その説明は省略する。
【0053】
図8は、第3の実施形態における速度制御部100の機能的な構成を示す機能ブロック図である。この図8において、図2に示したブロック等と同一の機能を有するブロック等には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図8において、203Bは指令速度計算手段、210Cは駆動周波数出力手段、213は第4の格納手段である。例えば、指令速度計算手段203BはCPU101により実現され、駆動周波数出力手段210Cは速度制御回路102により実現される。
【0054】
第4の格納手段213には、かさ上げ速度値v0が格納される。本実施形態において、かさ上げ速度値v0は、振動型モータ105の過去の駆動履歴から導き出される起動時に発すると予想される初速値とし、任意の固定値を設定可能とする。なお、かさ上げ速度値v0は、他の方法で決められる初速値でも良く、例えば前回の駆動時における振動型モータ105の初速値を記憶しておき、それを次回の駆動時のかさ上げ速度値v0として使用するようにしても良い。また、例えば、駆動する度に学習形式で振動型モータ105の初速値を更新してかさ上げ速度値v0を決めるようにしても良い。
【0055】
指令速度計算手段203Bは、制御単位時間管理手段204からの通知に従って、下記(式1)として示す3次関数式を用いて振動型モータ105へ与える指令速度値を算出する。なお、下記(式1)として示した3次関数式は一例であって、指令速度値の計算式は、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
V(t)=−Y4/4X3×t3+3Y3/4X2×t2+v0 ・・・(式1)
X :加速開始を原点とした加速完了までの位置
v0:かさ上げ速度値
Y :(目標速度値−かさ上げ速度値)
t :時間
【0056】
ここで、目標速度となる指令速度値V(t)は、制御単位時間管理手段204からの時間出力である周期t毎に計算される。このように指令速度値の計算式に振動型モータ105の初速の要素を加える、すなわちかさ上げ速度値v0を加算することにより、制御対象となる振動型モータ105に適した指令速度値を算出することが可能となる。
駆動周波数出力手段210Cは、駆動周波数計算手段208により決定された駆動周波数を示す駆動周波数指令を出力する。
【0057】
第3の実施形態における振動型モータの駆動制御について説明する。以下では、振動型モータ105の起動(駆動開始)から定常速度に到達するまでの加速期間における速度制御部100による制御について説明する。図9は、第3の実施形態における駆動制御を示すフローチャートである。
【0058】
まず、例えばCPU101によって、かさ上げ速度値v0が第4の格納手段213に設定される(ステップS301)。次に、指令速度計算手段203Bは、(式1)として示した計算式を用いて振動型モータ105へ与える指令速度を計算する(ステップS302)。ここでは、前述したように目標速度となる指令速度値V(t)を算出するにあたり、指令速度の計算式にかさ上げ速度値v0を加算することにより、制御対象となる振動型モータ105に適した指令速度値を算出する。
【0059】
次に、指令速度計算手段203B及び駆動周波数計算手段208は、制御を行う単位時間毎に計算した指令速度値を出力して(ステップS303)、振動型モータ105へ目標速度として与える。具体的には、計算した指令速度値に応じた駆動周波数を示す駆動周波数指令が駆動周波数出力手段210Cより出力される。
【0060】
続いて、速度検出手段202は、目標速度を与えられた振動型モータ105の実速度(実際の回転速度)を計測する(ステップS304)。次に、速度差検出手段207は、振動型モータ105に対する指令速度値と振動型モータ105の実速度との比較演算処理を行う。そして、駆動周波数計算手段208は、速度差検出手段207での比較演算処理により得られた速度差から、次回の制御周期で駆動する駆動周波数を算出する(ステップS305)。
【0061】
次に、駆動周波数出力手段210Cは、駆動周波数計算手段208により算出された駆動周波数データを振動型モータ105に対して出力する(ステップS306)。次に、振動型モータ105の実速度が定常速度(最終目標速度)に到達したか否かの判定がCPU101等によって行われる(ステップS307)。そして、振動型モータ105の実速度が定常速度に到達した場合には加速期間における処理を終了し、定常速度に未到達である場合にはステップS303へ移行する。
【0062】
図10は、第3の実施形態における振動型モータの駆動制御を行ったときの回転速度及び駆動周波数の一例を示す図である。図10(A)には、起動開始からの振動型モータの指令速度値IS及び実速度RSの時間変化を示しており、横軸は時間、縦軸は回転速度(回転数)である。図10(A)においては、破線が指令速度値ISを表し、実線が実速度RSを表している。図10(A)に示されるように、本実施形態では、指令速度値の計算の際に、振動型モータ105の起動時に発すると予想される初速値を加算する形で速度のかさ上げを行う。この速度のかさ上げにより振動型モータ105の起動直後において指令速度値と実速度との差がほとんど無くなり、その後の速度追従性に関しても改善が見られることがわかる。また、図10(B)には、図10(A)と同じ時間軸における駆動周波数DRを示しており、横軸は時間、縦軸は駆動周波数である。本実施形態では、図10(B)に示されるように、初期周波数39kHzで起動開始し、その後は駆動周波数を緩やかに下げていく理想的な駆動周波数制御曲線を描いている。
【0063】
以上説明したように第3の実施形態によれば、振動型モータの過去の駆動履歴から起動時に発すると予想される初速値を任意の固定値として予め準備しておき、その任意の固定値を指令速度の計算式に加算する形で速度のかさ上げを行って指令速度値を算出する。これにより、振動型モータの起動直後における速度変動を軽減させることが可能となり、加速期間における振動型モータの速度追従性を向上させることができる。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、振動型モータの実際の初速値に任意の固定値を加えたものを振動型モータの初速値として扱う。その振動型モータの初速値を指令速度の計算式に加算する形で速度のかさ上げを行って指令速度値を算出することにより、起動直後の速度変動を軽減させる。なお、第4の実施形態に係る振動型モータの駆動制御装置の全体構成は、図1に示した第1の実施形態に係る振動型モータの駆動制御装置と同様であるので、その説明は省略する。
【0065】
図11は、第4の実施形態における速度制御部100の機能的な構成を示す機能ブロック図である。この図11において、図2、図8に示したブロック等と同一の機能を有するブロック等には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図11において、203Cは指令速度計算手段である。例えば、指令速度計算手段203CはCPU101により実現される。
【0066】
本実施形態において、第4の格納手段213には、振動型モータ105の実際の初速値に対してプラスαするための値であるかさ上げ速度値v1が格納される。かさ上げ速度値v1は、任意の固定値を設定可能であるが、本実施形態においては25rpmとする。
【0067】
指令速度計算手段203Cは、制御単位時間管理手段204からの通知に従って、下記(式2)として示す3次関数式を用いて振動型モータ105へ与える指令速度値を算出する。なお、下記(式2)として示した3次関数式は一例であって、指令速度値の計算式は、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
V(t)=−Y4/4X3×t3+3Y3/4X2×t2+(y0+v1) ・・・(式2)
X :加速開始を原点とした加速完了までの位置
y0:振動型モータ105の実際の初速値
v1:かさ上げ速度値
Y :(目標速度値−(y0+v1))
t :時間
【0068】
ここで、目標速度となる指令速度値V(t)は、制御単位時間管理手段204からの時間出力である周期t毎に計算される。このように指令速度値の計算式に振動型モータ105の初速の要素を加える、すなわち初速取り込み手段201で検出された振動型モータ105の実際の初速値とかさ上げ速度値v1を計算式に加算する形で加えて、指令速度値V(t)を算出する。なお、前述のようにして振動型モータ105へ与える指令速度値V(t)を算出することで、振動型モータ105の実際の初速値y0のみを計算式に代入して指令速度値V(t)を算出した場合よりも、起動後の速度追従性を含めて良好な特性が得られる。
【0069】
第4の実施形態における振動型モータの駆動制御について説明する。以下では、振動型モータ105の起動(駆動開始)から定常速度に到達するまでの加速期間における速度制御部100による制御について説明する。図12は、第4の実施形態における駆動制御を示すフローチャートである。
【0070】
まず、例えばCPU101によって、かさ上げ速度値v1が第4の格納手段213に設定される(ステップS401)。次に、駆動周波数出力手段210Cより初期周波数を示す駆動周波数指令が出力され振動型モータ105の駆動が開始されると、初速取り込み手段201は振動型モータ105の駆動開始直後の最初の実速度y0を取り込む(ステップS402)。
【0071】
次に、指令速度計算手段203Cは、(式2)として示した計算式を用いて振動型モータ105へ与える指令速度を計算する(ステップS403)。ここでは、前述したように目標速度となる指令速度値V(t)を算出するにあたり、指令速度の計算式に(実際の初速値y0+かさ上げ速度値v1)を加算することにより、制御対象となる振動型モータ105に適した指令速度値を算出する。
【0072】
次に、指令速度計算手段203C及び駆動周波数計算手段208は、制御を行う単位時間毎に計算した指令速度値を出力して(ステップS404)、振動型モータ105へ目標速度として与える。具体的には、計算した指令速度値に応じた駆動周波数を示す駆動周波数指令が駆動周波数出力手段210Cより出力される。
【0073】
続いて、速度検出手段202は、目標速度を与えられた振動型モータ105の実速度(実際の回転速度)を計測する(ステップS405)。次に、速度差検出手段207は、振動型モータ105に対する指令速度値と振動型モータ105の実速度との比較演算処理を行う。そして、駆動周波数計算手段208は、速度差検出手段207での比較演算処理により得られた速度差から、次回の制御周期で駆動する駆動周波数を算出する(ステップS406)。
【0074】
次に、駆動周波数出力手段210Cは、駆動周波数計算手段208により算出された駆動周波数データを振動型モータ105に対して出力する(ステップS407)。次に、振動型モータ105の実速度が定常速度(最終目標速度)に到達したか否かの判定がCPU101等によって行われる(ステップS408)。そして、振動型モータ105の実速度が定常速度に到達した場合には加速期間における処理を終了し、定常速度に未到達である場合にはステップS404へ移行する。
【0075】
図13は、第4の実施形態における振動型モータの駆動制御を行ったときの回転速度及び駆動周波数の一例を示す図である。図13(A)には、起動開始からの振動型モータの指令速度値IS及び実速度RSの時間変化を示しており、横軸は時間、縦軸は回転速度(回転数)である。図13(A)においては、破線が指令速度値ISを表し、実線が実速度RSを表している。図13(A)に示されるように、本実施形態では、指令速度値の計算の際に、振動型モータ105の実際の初速値に任意の固定値を加えたものを振動型モータの初速値として扱い、その初速値を指令速度の計算式に代入して速度のかさ上げを行う。この速度のかさ上げにより振動型モータ105の起動直後において指令速度値と実速度との差がほとんど無くなり、その後の速度追従性に関しても改善が見られることがわかる。また、図13(B)には、図13(A)と同じ時間軸における駆動周波数DRを示しており、横軸は時間、縦軸は駆動周波数である。本実施形態では、図13(B)に示されるように、初期周波数39kHzで起動開始し、一旦加速させるために駆動周波数を下げているが、その後は駆動周波数を緩やかに下げていく理想的な駆動周波数制御曲線を描いている。
【0076】
以上説明したように第4の実施形態によれば、振動型モータの実際の初速値に任意の固定値を加えたものを振動型モータの初速値として扱い、その初速値を指令速度の計算式に加算する形で速度のかさ上げを行って指令速度値を算出する。これにより、振動型モータの起動直後における速度変動を軽減させることが可能となり、加速期間における振動型モータの速度追従性を向上させることができる。
【0077】
(本発明の他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0078】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
100 速度制御部、101 CPU、102 速度制御回路、105 振動型モータ、107 速度検出回路、108 速度差検出回路、201 初速取り込み手段、202 速度検出手段、203A 指令速度計算手段、204 制御単位時間管理手段、206A 比較手段、207 速度差検出手段、208 駆動周波数計算手段、210 駆動周波数出力手段、211 駆動周波数制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子により励振される振動体を有し、前記電気−機械エネルギー変換素子に周波信号が印加されることにより駆動される振動型モータの駆動制御装置であって、
前記振動型モータへ与える指令速度値を算出する指令速度計算手段と、
前記振動型モータの速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの速度及び前記指令速度計算手段により算出された前記指令速度値に応じて、前記電気−機械エネルギー変換素子に印加する前記周波信号の周波数を制御する駆動周波数制御手段とを備え、
前記駆動周波数制御手段は、前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの駆動開始直後の速度が基準値よりも速い場合には、前記指令速度計算手段により算出された前記指令速度値に応じた周波数とは異なる周波数に前記周波信号の周波数を制御することを特徴とする振動型モータの駆動制御装置。
【請求項2】
前記駆動周波数制御手段は、前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの駆動開始直後の速度が前記基準値よりも速い場合には、前記周波信号の周波数を維持することを特徴とする請求項1記載の振動型モータの駆動制御装置。
【請求項3】
前記駆動周波数制御手段は、前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの駆動開始直後の速度が前記基準値よりも速い場合には、前記周波信号の周波数の変化量を制限することを特徴とする請求項1記載の振動型モータの駆動制御装置。
【請求項4】
前記駆動周波数制御手段は、前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの駆動開始直後の速度が前記基準値よりも速く、かつ前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの速度及び前記指令速度計算手段により算出された前記指令速度値に応じた前記周波信号の周波数の変化量が所定の上限値を超える場合には、前記周波信号の周波数を前記上限値だけ変化させることを特徴とする請求項3記載の振動型モータの駆動制御装置。
【請求項5】
電気−機械エネルギー変換素子により励振される振動体を有し、前記電気−機械エネルギー変換素子に周波信号が印加されることにより駆動される振動型モータの駆動制御装置であって、
前記振動型モータへ与える指令速度値を算出する指令速度計算手段と、
前記振動型モータの速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの速度及び前記指令速度計算手段により算出された前記指令速度値に応じて、前記電気−機械エネルギー変換素子に印加する前記周波信号の周波数を制御する駆動周波数制御手段とを備え、
前記指令速度計算手段は、前記振動型モータの初速値を加算して前記振動型モータへ与える指令速度値を算出することを特徴とする振動型モータの駆動制御装置。
【請求項6】
前記振動型モータの初速値は、前記振動型モータにおける過去の駆動履歴から導き出される固定値であることを特徴とする請求項5記載の振動型モータの駆動制御装置。
【請求項7】
前記振動型モータの初速値は、前記速度検出手段により検出された前記振動型モータの駆動開始直後の速度と任意の固定値とを加算した値であることを特徴とする請求項5記載の振動型モータの駆動制御装置。
【請求項8】
電気−機械エネルギー変換素子により励振される振動体を有し、前記電気−機械エネルギー変換素子に周波信号が印加されることにより駆動される振動型モータの駆動制御方法であって、
前記振動型モータへ与える指令速度値を算出する指令速度計算工程と、
前記振動型モータの速度を検出する速度検出工程と、
前記速度検出工程にて検出された前記振動型モータの速度及び前記指令速度計算工程にて算出された前記指令速度値に応じて、前記電気−機械エネルギー変換素子に印加する前記周波信号の周波数を制御する駆動周波数制御工程とを有し、
前記駆動周波数制御工程では、前記速度検出工程にて検出された前記振動型モータの駆動開始直後の速度が基準値よりも速い場合には、前記指令速度計算工程にて算出された前記指令速度値に応じた周波数とは異なる周波数に前記周波信号の周波数を制御することを特徴とする振動型モータの駆動制御方法。
【請求項9】
電気−機械エネルギー変換素子により励振される振動体を有し、前記電気−機械エネルギー変換素子に周波信号が印加されることにより駆動される振動型モータの駆動制御方法であって、
前記振動型モータへ与える指令速度値を算出する指令速度計算工程と、
前記振動型モータの速度を検出する速度検出工程と、
前記速度検出工程にて検出された前記振動型モータの速度及び前記指令速度計算工程にて算出された前記指令速度値に応じて、前記電気−機械エネルギー変換素子に印加する前記周波信号の周波数を制御する駆動周波数制御工程とを有し、
前記指令速度計算工程では、前記振動型モータの初速値を加算して前記振動型モータへ与える指令速度値を算出することを特徴とする振動型モータの駆動制御方法。
【請求項10】
電気−機械エネルギー変換素子により励振される振動体を有し、前記電気−機械エネルギー変換素子に周波信号が印加されることにより駆動される振動型モータの駆動制御に係る処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記振動型モータへ与える指令速度値を算出する指令速度計算ステップと、
前記振動型モータの速度を検出する速度検出ステップと、
前記速度検出ステップにて検出された前記振動型モータの速度及び前記指令速度計算ステップにて算出された前記指令速度値に応じて、前記電気−機械エネルギー変換素子に印加する前記周波信号の周波数を制御する駆動周波数制御ステップとをコンピュータに実行させ、
かつ前記駆動周波数制御ステップでは、前記速度検出ステップにて検出された前記振動型モータの駆動開始直後の速度が基準値よりも速い場合には、前記指令速度計算ステップにて算出された前記指令速度値に応じた周波数とは異なる周波数に前記周波信号の周波数を制御することを特徴とするプログラム。
【請求項11】
電気−機械エネルギー変換素子により励振される振動体を有し、前記電気−機械エネルギー変換素子に周波信号が印加されることにより駆動される振動型モータの駆動制御に係る処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記振動型モータへ与える指令速度値を算出する指令速度計算ステップと、
前記振動型モータの速度を検出する速度検出ステップと、
前記速度検出ステップにて検出された前記振動型モータの速度及び前記指令速度計算ステップにて算出された前記指令速度値に応じて、前記電気−機械エネルギー変換素子に印加する前記周波信号の周波数を制御する駆動周波数制御ステップとをコンピュータに実行させ、
かつ前記指令速度計算ステップでは、前記振動型モータの初速値を加算して前記振動型モータへ与える指令速度値を算出することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−46556(P2013−46556A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185104(P2011−185104)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】