説明

振動式部品供給装置

【課題】消費電流が小さく、コンパクトで効率よく部品を搬送することができる振動式部品供給装置を提供する。
【解決手段】加振機構7の電磁石12の吸引方式を垂直吸引式とすることにより、水平吸引式のものよりも電磁石12と可動鉄芯13の間の隙間を小さくして、加振機構7の消費電流を低減できるようにするとともに、可動鉄芯13を一体の磁性材料で形成してその形状の簡素化および外形寸法の高精度化を図ることにより、上部振動体5の剛性が確保されるように上部振動体5の凹部に可動鉄芯13を隙間なく嵌め込むことができ、それによって装置全体の高さ方向のコンパクト化と効率的な部品搬送を両立できるようにしたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動により部品を整列搬送して次工程に供給する振動式部品供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な振動式部品供給装置のうち、電磁石と可動鉄芯とからなる加振機構の振動を利用して部品を搬送するタイプのものは、その加振機構の電磁石が可動鉄芯を吸引する方向によって、垂直吸引式(例えば、特許文献1参照。)と水平吸引式(例えば、特許文献2参照。)とに大別される。そのうちの垂直吸引式の装置の一例を図5に示す。この部品供給装置は、防振部材51を介して床上の基台52に支持された下部振動体53と、直線状の搬送路を有するシュート(部品搬送部材)54を取り付けた上部振動体55とを前後一対の傾斜板ばね56で連結して、これらの両振動体53、55の間に両振動体53、55を振動させる加振機構57を設けたものである。その加振機構57は、下部振動体53に取り付けられる交流電磁石58と、上部振動体55に取り付けられる可動鉄芯59とを垂直方向で近接対向させたもので、電磁石58に交流電流を印加することにより、上部振動体55とシュート54が概ね傾斜板ばね56の板厚方向に一体に振動し、シュート54上の部品が一定方向に搬送されるようになっている。
【特許文献1】実開昭56−24716号公報(第1図、第2図)
【特許文献2】特開平8−239113号公報
【0003】
ところで、この部品供給装置では、加振機構57を構成する交流電磁石58のコア材料および可動鉄芯59として、磁力の大きさや発熱量の少なさ等の性能面から、電磁鋼板の薄片60を数十枚積層したものを用いている。積層した薄片60の固定方法は、図4に可動鉄芯59の例を示すように、各薄片60の所定位置に予め厚み方向の貫通孔をあけておき、各薄片60を貫通孔の位置が一致するように重ねて貫通孔に通したリベット61で固定する方法をとっている。なお、このようなリベット止めに代えて、ねじ止めや積層体側面からの溶接による接合固定などを行う場合もある。
【0004】
また、可動鉄芯59は、電磁石58に吸引される方向を薄片60と平行な方向とする必要があるので、上部振動体55の下面側への取り付けのために、図4に示すように積層体側面に断面L字形の補助取付板62を接合するか、あるいは上面に平板状の補助取付板を接合している(図示省略)。
【0005】
従って、上記のように電磁鋼板の薄片を積層した交流電磁石のコア材料や可動鉄芯は、性能面の利点はあるが、製造コストが高いうえ、外形寸法を精度よく仕上げることが難しいという問題もある。
【0006】
また、このような垂直吸引式の部品供給装置は、水平吸引式のものに比べて高さ方向に大型化しやすいので、上部振動体の下面側に設けた凹部に可動鉄芯の一部を挿入して高さ寸法を抑えていることが多いが(図5参照)、そのために上部振動体の剛性が低下して振動が効率よく部品搬送部材に伝達されないことがある。その上部振動体の剛性の低下は、主として、上述したように可動鉄芯の形状が補助取付板の接合等によって複雑となり、上部振動体の凹部の形状を可動鉄芯に合わせることが難しいことや、可動鉄芯の外形寸法精度が低く、上部振動体と可動鉄芯の接続部にガタが生じやすいことに起因している。
【0007】
一方、電磁石の吸引方式を水平吸引式にすれば、可動鉄芯を上部振動体の凹部に挿入しなくても装置全体の高さ寸法を抑えることができる。しかし、水平吸引式の装置の場合、電磁石と可動鉄芯の間の隙間はほぼ上部振動体の振幅分だけ確保する必要があるので、垂直吸引式に比べて隙間が大きい分、磁力の吸引効率が低く消費電流が大きいという難点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、消費電流が小さく、コンパクトで効率よく部品を搬送することができる振動式部品供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、防振部材を介して床上に支持された下部振動体と、部品搬送部材を取り付けた上部振動体とを板ばねで連結し、前記下部振動体に取り付けられる交流電磁石と、前記上部振動体に取り付けられる可動鉄芯とを垂直方向で近接対向させて前記両振動体を振動させる加振機構を形成した振動式部品供給装置において、前記可動鉄芯を一体の磁性材料で形成し、この可動鉄芯を前記上部振動体の下面側に形成した凹部に嵌め込んだ構成とした。
【0010】
すなわち、加振機構の電磁石の吸引方式を水平吸引式よりも消費電流の小さい垂直吸引式とした装置において、可動鉄芯を一体の磁性材料で形成してその形状の簡素化および外形寸法の高精度化を図ることにより、上部振動体の凹部に可動鉄芯を嵌め込んでも上部振動体の剛性が確保されるようにして、装置全体の高さ方向のコンパクト化と効率的な部品搬送を両立できるようにしたのである。
【0011】
ここで、前記部品搬送部材および可動鉄芯を、垂直方向で前記上部振動体を挟む位置に配し、前記部品搬送部材の上面側から上部振動体を貫通して可動鉄芯までねじ込まれるねじで一体に固定するようにすれば、装置全体を高さ方向によりコンパクトにすることができる。
【0012】
また、前記板ばねを許容応力の大きい炭素繊維強化樹脂で形成したものとすれば、特に大きな振幅が必要とされる場合にも対応することができる。
【0013】
本発明は、前記部品搬送部材が直線状の搬送路を有するものである部品供給装置に対して、特に有効に適用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の振動式部品供給装置は、上述したように、加振機構の電磁石の吸引方式が垂直吸引式であるから、その消費電流が水平吸引式のものよりも小さい。しかも、加振機構の可動鉄芯を一体の磁性材料で形成して、上部振動体の剛性を確保しながらその凹部に嵌め込めるようにしたので、装置全体の高さ方向のコンパクト化が図れ、部品搬送も効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1乃至図3に基づき本発明の実施形態を説明する。この振動式部品供給装置の基本的な構成は、前述した従来のもの(図5参照)と同じである。すなわち、この部品供給装置は、図1および図2に示すように、防振部材1を介して床上の基台2に支持された下部振動体3と、直線状の搬送路を有するシュート(部品搬送部材)4を取り付けた上部振動体5とを前後一対の傾斜板ばね6で連結して、これらの両振動体3、5の間に両振動体3、5を振動させる加振機構7を設けた直進フィーダである。
【0016】
前記防振部材1には、一般的な防振ゴムよりも基台2への振動伝達が少なく、大きな振幅をとれる防振ばねを採用している。また、板ばね6についても、大きな振幅が必要な場合に対応できるように、一般的なばね鋼よりも許容応力の大きい炭素繊維強化樹脂(CFRP)で形成されたものを採用している。
【0017】
前記下部振動体3には、シュート4の前後の振動のバラツキを抑えるためのカウンターウェイト8、および加振機構7を覆うカバー9が取り付けられている。また、上部振動体5は、軽量化のために薄肉のアルミニウム鋳造材で形成されている。
【0018】
前記シュート4は、シュート本体10(図1、2中に二点鎖線で示した部分)とシュート取付台11とからなる。シュート取付台11は、後述するように上部振動体5に接続された状態で、シュート本体10の下面側に形成された2条のリブ10aの間に挿入されてねじ止めされる。
【0019】
前記加振機構7は、下部振動体3に取り付けられる交流電磁石12と、上部振動体5に取り付けられる可動鉄芯13とを垂直方向で近接対向させた垂直吸引式のもので、その電磁石12に交流電流を印加することにより、上部振動体5とシュート4が概ね傾斜板ばね6の板厚方向に一体に振動し、シュート4上の部品が一定方向に搬送されるようになっている。ここで、電磁石12と可動鉄芯13の間の隙間は約1mmで、水平吸引式とした場合(4mm程度)よりもかなり小さくなっている。
【0020】
この加振機構7の可動鉄芯13は、図3にも示すように、一体の磁性材料を直方体状に加工したもので、取付用のねじ穴13aが4つあけられている。その磁性材料としては、虹技株式会社製の普通鋳鉄(FC200)の精密鋳造品(商品名デンスバー)を用いている。一方、電磁石12の方は、従来と同様、電磁鋼板の薄片を数十枚積層して固定したものを用いている。
【0021】
また、可動鉄芯13の上部振動体5への取り付けは、上部振動体5の下面側に可動鉄芯13が隙間なく嵌まり込む凹部5aを形成し、この凹部5aに嵌め込んだ可動鉄芯13とともに垂直方向で上部振動体5を挟む位置にシュート取付台11を配して、シュート取付台11の上面側から上部振動体5を貫通して可動鉄芯13までねじ込まれるねじ14により、シュート取付台11、上部振動体5および可動鉄芯13を一体に固定するようにしている。このようにすれば、上部振動体に可動鉄芯とシュート取付台を別々のねじで固定する場合に比べて、可動鉄芯固定用のねじの頭部高さ分だけ、装置全体の高さ寸法を小さくすることができる。
【0022】
この部品供給装置は、上記の構成であり、加振機構7の電磁石12の吸引方式が垂直吸引式なので、水平吸引式のものに比べて電磁石12と可動鉄芯13の間の隙間が小さい分、磁力の吸引効率が高く加振機構7の消費電流が小さくてすむ。
【0023】
しかも、可動鉄芯13は、一体の磁性材料で形成したので、従来の電磁鋼板の薄片の積層体とする場合に比べて製造コストの低減が図れるうえ、外形寸法や取付穴を精度よく加工でき、取付用部材等の接合を必要としない単純な形状とすることもできる。従って、上部振動体5の剛性が確保されるように上部振動体5の凹部5aに可動鉄芯13を隙間なく嵌め込むことができ、これにより装置全体の高さ方向のコンパクト化が図れ、部品搬送も効率よく行うことができる。
【0024】
なお、可動鉄芯13自体の磁力や発熱量等の性能面は従来の電磁鋼板積層体にやや劣るが、加振機構7に垂直吸引式を採用したことにより、その性能面のデメリットを補って上記のような効果を得ることができる。
【0025】
上述した実施形態ではシュート上の部品を直線的に搬送する直進フィーダについて代表例として説明したが、本発明の構成として、シュート取付台11と上部振動体5を一体にして可動鉄芯13を同様に固定すれば、より剛性を確保した構造で同じ効果を得ることができるし、螺旋状の搬送路を有するボウルを備えたボウルフィーダにももちろん適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の部品供給装置の正面断面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図1の部品供給装置の可動鉄芯の斜視図
【図4】従来の部品供給装置の可動鉄芯の斜視図
【図5】従来の部品供給装置の正面断面図
【符号の説明】
【0027】
1 防振部材
2 基台
3 下部振動体
4 シュート
5 上部振動体
5a 凹部
6 板ばね
7 加振機構
10 シュート本体
11 シュート取付台
12 交流電磁石
13 可動鉄芯
13a ねじ穴
14 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振部材を介して床上に支持された下部振動体と、部品搬送部材を取り付けた上部振動体とを板ばねで連結し、前記下部振動体に取り付けられる交流電磁石と、前記上部振動体に取り付けられる可動鉄芯とを垂直方向で近接対向させて前記両振動体を振動させる加振機構を形成した振動式部品供給装置において、前記可動鉄芯を一体の磁性材料で形成し、この可動鉄芯を前記上部振動体の下面側に形成した凹部に嵌め込んだことを特徴とする振動式部品供給装置。
【請求項2】
前記部品搬送部材および可動鉄芯を、垂直方向で前記上部振動体を挟む位置に配し、前記部品搬送部材の上面側から上部振動体を貫通して可動鉄芯までねじ込まれるねじで一体に固定したことを特徴とする請求項1に記載の振動式部品供給装置。
【請求項3】
前記板ばねを炭素繊維強化樹脂で形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の振動式部品供給装置。
【請求項4】
前記部品搬送部材が直線状の搬送路を有するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の振動式部品供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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