説明

振動計

【課題】設置場所の自由度が高いうえに、長期間にわたり安定した計測をおこなうことが可能な振動計を提供する。
【解決手段】地震によって起きる振動を検知してその応答加速度を計測する振動計1である。
そして、加速度を計測する加速度センサ2と、加速度センサによって計測された計測値を記録させる記憶部21と、加速度センサを作動させる電力を供給するバッテリー3と、バッテリー3から加速度センサへの通電及び遮断を制御する通電制御部4と、所定の大きさ以上の振動を検知したときに通電制御部を起動させる振動検知部5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震などによって地面や構造物が振動した際の加速度を計測する振動計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地震によって建物が被害を受けたときに、地震時に建物に発生した加速度の大きさからその建物の損傷度を判定する方法が知られている(特許文献1など参照)。
【0003】
この特許文献1には、建物に設置される加速度センサを備えた建物損傷度判定装置が開示されており、この装置によって建物損傷度を判定するに際しては、加速度センサで計測された最大加速度データを使用している。
【0004】
このような加速度センサは、通常、電力会社などの商用電源から供給される電力によって常時作動させるため、加速度センサを設置する場所まで配線をおこなう必要がある。
【0005】
一方、特許文献2には、建物に発生するひずみをひずみセンサで計測することによって、建物の損傷の程度や位置を検知させる建築構造物損傷検知装置が開示されている。
【0006】
そして、このひずみセンサを作動させるために振動発電装置や太陽光発電装置などの発電装置が利用できることが記載されている。このように自然エネルギーを利用して発電された電力を使用するのであれば、センサまでの配線を省略することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−20056号公報
【特許文献2】特開2006−29931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されている自然エネルギーを利用した発電装置は、発電量が不安定であり、その電力に基づいて計測をおこなう構成では欠測などが生じるおそれがある。
【0009】
また、バッテリーを使用することで、配線を無くし、設置場所の自由度を高めることはできるが、常時モニタリングなどでバッテリーの電力を常に消費する構成では、バッテリーの消耗が激しく頻繁に交換をおこなわなければならなくなり、実用的ではない。
【0010】
そこで、本発明は、設置場所の自由度が高いうえに、長期間にわたり安定した計測をおこなうことが可能な振動計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の振動計は、振動を検知してその加速度を計測する振動計であって、前記加速度を計測する加速度センサと、前記加速度センサによって計測された計測値を記録させる記憶部と、前記加速度センサを作動させる電力を供給する蓄電部と、前記蓄電部から前記加速度センサへの通電及び遮断を制御する通電制御部と、所定の大きさ以上の振動を検知したときに前記通電制御部を起動させる振動検知部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記振動検知部は、振動エネルギーによって発電をおこなう振動発電部と、前記振動発電部の発電量が所定の大きさ以上に達したときに前記通電制御部を起動させる起動スイッチ部とを備えた構成とすることができる。例えば、前記起動スイッチ部は、ツェナーダイオードを備えており、そのツェナーダイオードに印加される電圧が所定の大きさ以上に達したときに前記通電制御部が起動される構成にできる。
【0013】
また、前記振動検知部は、振動エネルギーによって変動する揺動部と、その揺動部との接触によって前記通電制御部を起動させる通電端子部とを備えた構成とすることができる。
【0014】
さらに、前記通電制御部は、計時部を備えており、一度起動されると前記計時部から所定の時間が経過したことを知らせる信号が生成されるまで前記加速度センサに対する通電が継続される構成にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明の振動計は、加速度センサは蓄電部から供給される安定した電力によって作動させる。また、蓄電部から加速度センサへの通電及び遮断を制御する通電制御部は、振動検知部が振動を検知したときにのみ起動される。
【0016】
このため、商用電源に接続させるための配線をしなくても良く、設置場所の自由度が高い。また、振動検知部を設けることによって計測したい大きさの振動が検知されたときにだけ蓄電部の電力が消費されるので、再充電が必要になるまでの蓄電部の寿命が長く、長期間にわたり蓄電部の電力によって安定した計測をおこなうことができる。
【0017】
また、振動エネルギーによって発電をおこなう振動発電部を備えた振動検知部であれば、回路に振動発電部を接続するだけで簡単に構成することができる。さらに、ツェナーダイオードを備えた構成であれば、振動検知部によって検知させる振動の大きさを容易に変更することができる。
【0018】
また、振動エネルギーによって変動する揺動部を備えた機械式の振動検知部であれば、屋外や温度差が激しい厳しい環境においても安定して作動させることができる。
【0019】
さらに、通電制御部に計時部を設け、一度起動された後は、所定の時間が経過するまで加速度センサによる計測をおこなわせるようにすれば、途中で振動が弱まったりしても、時系列の計測をおこなうことができ、加速度波形を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の振動計の構成を示した回路図である。
【図2】(a)は加速度と発電電圧との関係を示した図、(b)はツェナーダイオードの特性を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態の振動検知部の動作フローを説明するフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態の通電制御部及び加速度センサの動作フローを説明するフローチャートである。
【図5】実施例1の振動計の構成を示した回路図である。
【図6】実施例2の振動計の構成を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態で説明する振動計1の構成を説明する回路図である。この振動計1は、例えば、ビルや住宅などの建物、橋梁やダムやトンネルなどの土木構造物などの任意の場所に設置され、地震などによってそれらの構造物が受けた加速度の履歴を記録するために利用される。また、振動計1を地面に設置すれば地震計となる。
【0022】
本実施の形態の振動計1は、加速度を計測する加速度センサ2と、加速度センサ2によって計測された計測値を記録させる記憶部21と、加速度センサ2を作動させる電力を供給する蓄電部としてのバッテリー3と、バッテリー3から加速度センサ2への通電及び遮断を制御する通電制御部4と、所定の大きさ以上の振動を検知したときに通電制御部4を起動させる振動検知部5とを主に備えている。
【0023】
この加速度センサ2は、設置されている場所の振動によって生じる加速度を検知して計測する装置である。すなわち、構造物に設置されていれば、構造物の応答加速度が計測され、地面に設置されていれば地面の振動によって生じる加速度を計測することになる。
【0024】
また、この加速度センサ2には、計測値を記録させる記憶部21が接続されている。この記憶部21には、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、光ディスクなどの記憶媒体が使用できる。さらに、加速度センサ2と記憶部21とが一体になった加速度データロガーを使用することもできる。
【0025】
この加速度センサ2は、バッテリー3の電力によって作動するが、この加速度センサ2に通電させるか否かの制御は通電制御部4によっておこなう。この通電制御部4は、電子式スイッチを有するマイコンによって構成することができ、計時部としてのタイマー41とスイッチ42とを備えている。
【0026】
このタイマー41は、マイコンに組み込まれているクロックを分周して生成された時間を計測したり、それに基づいて一定間隔で生成されるパルス信号をカウントしたりすることで、時間を管理する装置である。
【0027】
そして、タイマー41の始動によって生成される信号によってスイッチ42がオンになり、電気回路A3が形成されて加速度センサ2にバッテリー3の電力が供給される。また、タイマー41が予め設定された時間を計測した後に生成される信号によってスイッチ42がオフになり、加速度センサ2への電力の供給が遮断される。
【0028】
一方、振動検知部5は、地震などの振動エネルギーによって発電をおこなう振動発電部51と、振動発電部51の発電量が所定の大きさ以上に達したときに通電制御部4を起動させる起動スイッチ部52とを主に備えている。
【0029】
この振動発電部51は、地震などによって発生する振動計1の設置場所の揺れによる振動エネルギーを電力に変換する装置である。この振動発電部51の原理には、圧電素子(ピエゾ素子)が歪む際に電気が生成される圧電型、磁石とコイルの移動によりコイルを通る磁束が変化して電気が生成される電磁誘導型、電荷を帯びた電極同士の位置がずれることで電気が生成される静電誘導型などがある。
【0030】
また、起動スイッチ部52は、図1に示すように、機械式スイッチとツェナーダイオード521とによって構成される。この機械式スイッチは、鉄心部523と、その鉄心部523に巻き付けられるコイル部522と、棒状磁性体のシーソー部526と、シーソー部526の鉄心部523側の端部に取り付けられる接触子524と、接触子524と反対側のシーソー部526の端部に接続されるバネ部525とによって主に構成される。
【0031】
この機械式スイッチは、コイル部522に通電されていないときはバネ部525の復元力によってシーソー部526の接触子524側が上がり、鉄心部523とシーソー部526とが離隔している。
【0032】
これに対して、コイル部522に通電されると、鉄心部523に磁力が発生し、シーソー部526が鉄心部523の頭部に吸着される。そして、下がった接触子524が通電制御部4に繋がる端子527に接触し、電気回路A2が形成される。
【0033】
このコイル部522への通電は、振動発電部51の発電による。この振動発電部51の発電電圧は、図2(a)に示すように、振動による加速度αの増加に伴って増加する。
【0034】
他方、振動発電部51は、小さな振動でも発電をおこなうため、振動発電部51とコイル部522とを直接、繋ぐと、交通振動、風振動又は計測する必要のない小地震による振動によっても起動スイッチ部52によって通電制御部4が起動され、バッテリー3を消耗させる原因になる。
【0035】
そこで、コイル部522と振動発電部51との間にツェナーダイオード521を介在させて通電を制御する。このツェナーダイオード521は、図2(b)に示すように、逆方向電圧がある値に達するまでは電流をほとんど遮断し、設定された降伏電圧V以上の電圧が印加されると逆方向電流が流れるようになる半導体である。
【0036】
このため、振動発電部51によって発電された電力の電流が、ツェナーダイオード521の逆方向電流の向きに流れるように接続すると、振動発電部51の発電電圧Vが降伏電圧Vに至るまではコイル部522に電流は流れず、降伏電圧V以上の電圧が印加されると電気回路A1が形成されてコイル部522に通電され、鉄心部523に磁力が発生することになる。
【0037】
一方、このツェナーダイオード521の降伏電圧Vは、図2(a)に示すように振動発電部51の発電電圧Vと加速度αとの関係で設定することができる。すなわち、振動計1によって計測をおこないたい地震の加速度αが加速度αであったとすると、その加速度αが作用したときの振動発電部51の発電電圧Vが図2(a)から求められるので、V=Vとなるツェナーダイオード521を選んで配置すればよい。
【0038】
このツェナーダイオード521の降伏電圧Vは、3V〜50Vくらいまで幅広く、また細かい区分で存在するため、計測したい振動の大きさを任意に設定することが可能になる。
【0039】
次に、本実施の形態の振動計1の動作フローについて、図3,4に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0040】
まず、振動計1を加速度の履歴を計測したい建物に設置する。この際、バッテリー3の充電は最大容量までしておく。そして、その建物に振動が発生するのを待つ。
【0041】
この状態で地震が発生すると(図3のステップS1)、その加速度αによって振動発電部51が発電を始める(ステップS2)。ここで、風や小さな地震によって建物が振動しても、振動発電部51の発電電圧Vは降伏電圧V以上にならないため、起動スイッチ部52に通電されることはない(ステップS3)。
【0042】
他方、ステップS3において振動発電部51の発電電圧Vが降伏電圧V以上になると、ツェナーダイオード521に電流が流れて電気回路A1が形成され、コイル部522に通電される(ステップS4)。
【0043】
そして、コイル部522の通電によって鉄心部523に磁力が発生してシーソー部526が鉄心部523に引き寄せられると、接触子524が端子527に接触して電気回路A2が形成される(ステップS5)。
【0044】
この電気回路A2には、バッテリー3の電力が供給され、図4のステップS51に示すように、その電力によって通電制御部4が起動される。この通電制御部4が起動されると、まず、タイマー41がカウントnを開始する(ステップS52)。
【0045】
続いて、通電制御部4のスイッチ42が入り、電気回路A3が形成される。この電気回路A3の形成によって加速度センサ2及び記憶部21にバッテリー3の電力が供給される(ステップS53)。
【0046】
通電された加速度センサ2は、そのときの建物の振動を加速度αとして計測し(ステップS54)、その計測値を記憶部21の空いている領域に逐次、記録する(ステップS55)。この計測及び記録は、タイマー41のカウントnが予め設定された設定カウントN(例えば時間で2分程度)に至るまで継続しておこなわれる(ステップS56)。
【0047】
一方、図3のステップS6に示すように、起動スイッチ部52の通電は振動発電部51の発電電圧Vが降伏電圧V以上の間は持続され、発電電圧Vが降伏電圧Vを下回ると、鉄心部523の磁力が消滅してバネ部525の復元力によって接触子524が端子527から離れ、起動スイッチ部52の通電は遮断される(ステップS7)。
【0048】
そこで、図4のステップS57に示すように、タイマー41のカウントnが設定カウントNに達した時点で発電電圧Vが降伏電圧V以上であるかを判定し、降伏電圧V以上であればカウントnを初期化(ステップS58)して加速度センサ2による計測及び記録を続ける。
【0049】
これに対して、ステップS57のときに発電電圧Vが降伏電圧Vを下回っていれば、通電制御部4のスイッチ42を切って加速度センサ2への通電を遮断する(ステップS59)。
【0050】
また、振動計1の加速度センサ2によって計測され、記憶部21に記録された計測値のデータは、定期的に記憶部21から有線又は無線を介して送信させたり、記憶部21を交換したりすることで取り出すことができる。例えば、有線方式であればデータ集計装置を記憶部21に直接結線する方法がある。無線方式であれば、特定小電力無線などの送信機を記憶部21に接続しておき、記憶部21に記録された計測値をその送信機によってデータ集計装置に無線送信させる方法が適用できる。また、RFID(Radio Frequency IDentification)などで用いられている方法であるが、誘導電磁界を発生するデータ集計装置を記憶部21に接続された送信機に近づけ、送信機に発生した誘起電力を電力として用いれば、バッテリー3を消耗させることなく、記憶部21に記録された計測値をデータ集計装置へ無線送信させることができる。
【0051】
次に、本実施の形態の振動計1の作用について説明する。
【0052】
このように構成された本実施の形態の振動計1は、加速度センサ2はバッテリー3から供給される安定した電力によって作動させる。また、バッテリー3から加速度センサ2への通電及び遮断を制御する通電制御部4は、振動検知部5が振動を検知したときにのみ起動される。
【0053】
このため、設置場所に合わせて商用電源に接続させるための配線をしなくても良く、建物の電源位置に制限されることなく、建物内外の任意の位置に振動計1を置くことができる。
【0054】
一般に、地震による建物の揺れの程度は、加速度波形データを入力値として地震応答解析をおこなうことで推定することができるが、入力値として気象庁が設置する近傍の地震計から得られた計測値を利用するよりも、解析対象構造物である建物が建っている地盤上や建物の基礎部に設置された振動計1の計測値のデータを利用することによってより現実に近い推定が可能となる。
【0055】
なお、この振動計1では、通電制御部4が起動するまでの間の地震初期の振動を計測することはできないが、最も必要とされるのは、建物が受けた最大応答加速度又はその近辺の加速度波形であるため、振動計1としての機能を充分に果たすことができる。
【0056】
そして、大地震が起きた場合に、建物や橋梁などに設置されていた振動計1の記憶部21から計測値のデータを取り出し、記録された最大応答加速度や加速度波形を分析することによって、建物に立ち入っても良いかや橋梁が通行可能か否かなどの判断を、迅速におこなうことができる。さらに、地震後の復旧計画を立てるに際しても、これらの計測値のデータに基づいて的確な復旧計画を立案することができる。
【0057】
また、通電制御部4にタイマー41を設け、一度起動された後は、所定の時間が経過するまで加速度センサ2による計測をおこなわせるようにすれば、途中で振動が弱まったりしても、時系列の計測をおこなうことができ、上述した解析などに必要となる加速度波形を得ることができる。
【0058】
さらに、振動検知部5を設けることによって計測したい大きさの振動が検知されたときにだけバッテリー3の電力が消費されるので、再充電が必要になるまでのバッテリー3の寿命が長く、一度の設置で長期間にわたり安定した計測をおこなうことができる。すなわち、検知可能な振動が発生しなければ、自然放電分以上のバッテリー3の消費がなく、常時モニタリングのように僅かであっても常に作動電力が必要な構成に比べてバッテリー3の交換時期を遅らせることができる。
【0059】
また、振動検知部5で検知されたものだけ計測する構成であれば、計測対象でない振動による誤作動を減らすことができるうえに、不要な計測値が無駄に蓄積されることがなく、記憶部21の記憶容量を節約することができる。さらに、計測値の整理にかかる時間も短縮できる。
【0060】
また、振動エネルギーによって発電をおこなう振動発電部51を備えた振動検知部5であれば、回路に振動発電部51を接続するだけで簡単に構成することができる。
【0061】
さらに、ツェナーダイオード521を備えた構成であれば、所望する降伏電圧Vのものに付け替えるだけで、振動検知部5によって検知させる振動の大きさを容易に変更することができる。
【実施例1】
【0062】
以下、この実施例1では、前記した実施の形態とは別の実施の形態について図5を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0063】
前記実施の形態では、起動スイッチ部52を機械式スイッチにしたが、この実施例1では、電子式スイッチで構成された起動スイッチ部53を備えた振動計1Aについて説明する。
【0064】
この起動スイッチ部53は、図5に示すように、ツェナーダイオード531と、発光ダイオード532と、フォトトランジスタ533とによって主に構成される。
【0065】
このフォトトランジスタ533は、光信号によって電流を制御するトランジスタである。ここでは、発光ダイオード532とフォトトランジスタ533とが封入されたフォトカプラを使用する。
【0066】
このように構成された振動計1Aは、振動が発生して振動発電部51の発電電圧Vがツェナーダイオード531の降伏電圧V以上になると、電気回路B1が形成されて発光ダイオード532が発光する。
【0067】
そして、発光ダイオード532の光によってフォトトランジスタ533が通電可能状態になると電気回路B2が形成される。この電気回路B2が形成されると、バッテリー3の電力によって通電制御部4が起動し、前記実施の形態で説明したようにスイッチ42が入ると、電気回路B3が形成される。
【0068】
このように構成された実施例1の振動計1Aは、起動スイッチ部53をフォトカプラとツェナーダイオード531とを繋げるだけで容易に製作することができる。
【0069】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0070】
以下、この実施例2では、前記した実施の形態及び実施例1とは別の実施の形態について図6を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0071】
前記実施の形態及び実施例1では、振動発電部51を備えた振動検知部5,5Aの構成について説明したが、この実施例2では、機械式の振動検知部6の構成について説明する。
【0072】
この振動検知部6は、振動エネルギーによって変動する揺動部61と、その揺動部61との接触によって通電制御部4を起動させる通電端子部62とを主に備えている。
【0073】
この通電端子部62は、図6に示すように中が空洞の箱状の電導体によって形成されており、上端が通電制御部4に接続されている。また、通電端子部62の下部は、絶縁体の底部63によって塞がれている。
【0074】
そして、この底部63の上面に揺動部61が設けられる。この揺動部61は、電導体によって形成されるバネ部61bと、そのバネ部61bの上端に設けられる電導体によって形成される球体状の錘部61aとを備えている。
【0075】
この揺動部61は、箱状の通電端子部62と底部63とによって形成される空間に収容される。また、バネ部61bの下端はバッテリー3に接続される端子64に接続されている。
【0076】
このように構成された振動検知部6は、振動計1Bの設置場所が振動していないと、錘部61aと通電端子部62の内面とが離隔していて、電気回路C1が形成されることはない。
【0077】
そして、振動計1Bの設置場所が振動すると、バネ部61bが揺動して錘部61aが傾き、振動が大きくなると錘部61aと通電端子部62の内面とが接触して電気回路C1が形成される。
【0078】
さらに、電気回路C1が形成されると、バッテリー3の電力によって通電制御部4が起動し、前記実施の形態で説明したようにスイッチ42が入ると、電気回路C2が形成される。
【0079】
このように構成された実施例2の振動計1Bは、振動エネルギーによって変動する揺動部61を備えた機械式の振動検知部6であるため、屋外や温度差が激しい厳しい環境でも安定して作動させることができる。
【0080】
また、通電端子部62の内空の大きさ、錘部61aの重さや形状、又はバネ部61bの強さなどを変更することによって、揺動部61が通電端子部62に接触する振動の大きさ、換言すると振動検知部6に検知させる振動の大きさを容易に調整することができる。
【0081】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0082】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0083】
例えば、前記実施の形態又は実施例1では、ツェナーダイオード521(531)を使って起動スイッチ部52(53)を制御する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、起動スイッチ部のリレーの定格電圧を調節する構成であってもよい。さらに、小さな振動であっても計測をおこないたい場合は、ツェナーダイオード521(531)を省略することもできる。
【0084】
また、前記実施の形態又は実施例の振動計1,1A,1BにGPSアンテナ及びGPS受信機を搭載させ、加速度センサ2に通電中にGPS衛星から受信した電波に含まれる時刻情報を取り込み、計測値と一緒に絶対的な時刻を記録させる構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0085】
1 振動計
2 加速度センサ
21 記憶部
3 バッテリー(蓄電部)
4 通電制御部
41 タイマー(計時部)
42 スイッチ
5 振動検知部
51 振動発電部
52 起動スイッチ部
521 ツェナーダイオード
1A 振動計
5A 振動検知部
53 起動スイッチ部
531 ツェナーダイオード
1B 振動計
6 振動検知部
61 揺動部
62 通電端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を検知してその加速度を計測する振動計であって、
前記加速度を計測する加速度センサと、
前記加速度センサによって計測された計測値を記録させる記憶部と、
前記加速度センサを作動させる電力を供給する蓄電部と、
前記蓄電部から前記加速度センサへの通電及び遮断を制御する通電制御部と、
所定の大きさ以上の振動を検知したときに前記通電制御部を起動させる振動検知部とを備えたことを特徴とする振動計。
【請求項2】
前記振動検知部は、振動エネルギーによって発電をおこなう振動発電部と、前記振動発電部の発電量が所定の大きさ以上に達したときに前記通電制御部を起動させる起動スイッチ部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の振動計。
【請求項3】
前記起動スイッチ部は、ツェナーダイオードを備えており、そのツェナーダイオードに印加される電圧が所定の大きさ以上に達したときに前記通電制御部が起動されることを特徴とする請求項2に記載の振動計。
【請求項4】
前記振動検知部は、振動エネルギーによって変動する揺動部と、その揺動部との接触によって前記通電制御部を起動させる通電端子部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の振動計。
【請求項5】
前記通電制御部は、計時部を備えており、一度起動されると前記計時部から所定の時間が経過したことを知らせる信号が生成されるまで前記加速度センサに対する通電が継続されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の振動計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−168019(P2012−168019A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29271(P2011−29271)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】