説明

振盪装置

【課題】簡素な構成で有効かつ効果的に振盪振幅を調整可能な振盪装置を提供する。
【解決手段】一端部が支点板16の一側で駆動軸線17のまわりに回動するとともに、他端部が支点板16の他側で駆動軸線17のまわりに追従回動する相互に平行配置された一対のトルクシャフト15と、トルクシャフト15の他端部に結合し、振盪運動可能に支持された振盪プレート11と、支点板16をその一側および他側間で往復動可能に支持するスライド機構とを備える。スライド機構による支点板16の往復動により、振盪プレート11の振盪振幅を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野等において被検体を収容した試験管等を振り動かすように構成された振盪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体である臨床血液検査の前処理、病理検査の組織浸透、遺伝子診断の染色あるいは脱色、寒天培養のような液体や粉体の攪拌混合においては、被検体を収容した試験管やビーカー等を振り動かすことによって行われる。この場合、試験管等を機械的に振り動かすために振盪装置が使用される。
【0003】
振盪装置としてはシーソ式、振動式、旋回式、上下動式あるいは往復動式等があり、被検体容器を振盪テーブル上に載置し、該振盪テーブルを所望の振盪量で振り動かす。いずれの方式の場合も振盪効果は、振盪周波数、振盪振幅および振盪時間等のパラメータにより変化し、作業目的に応じて最適なパラメータ条件を設定する必要がある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−308820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の振盪装置では主にカムもしくはカム機構を用いて動作するように構成され、たとえば旋回式のものでもモータ等によってカムを回転駆動する。この場合、振盪振幅はカム寸法によって決定されてしまう。このため振盪振幅を変えたい場合、装置を一旦停止させてカムを交換する必要があった。また、振盪振幅を調整可能な機構であっても、その構成部品に複雑な加工を施し、あるいは構成が複雑化せざるを得なかった。さらに、装置の作動中に任意に振盪振幅を変更するのは実質的に困難であった。
【0006】
なお、特許文献1に記載の振盪器では、振盪振幅を連続可変可能ではあるが、構成部品に複雑な加工を施す必要があった。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑み、簡素な構成でありながら有効かつ効果的に振盪振幅を調整可能な振盪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振盪装置は、一端部が支点板の一側で駆動軸線のまわりに回動するとともに、他端部が前記支点板の他側で前記駆動軸線のまわりに追従回動する相互に平行配置された一対のトルクシャフトと、前記トルクシャフトの他端部に結合し、振盪運動可能に支持された振盪プレートと、前記支点板をその一側および他側間で往復動可能に支持するスライド機構とを備え、前記スライド機構による前記支点板の往復動により、前記振盪プレートの振盪振幅を調整し得るようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の振盪装置において、前記スライド機構は、前記振盪プレートの振盪面に直交配置されたリニアガイドと、前記支点板と係合して前記リニアガイドに沿って往復動させる支点板駆動手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の振盪装置において、前記支点板駆動手段は、前記リニアガイドと平行配置されるとともに、前記支点板と螺合する送りネジにより構成され、該送りネジの回転で前記支点板を往復動させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の振盪装置において、前記トルクシャフトの一端部を回動駆動する駆動モータと、前記送りネジを回転駆動する駆動モータを備え、装置動作中にこれらの駆動モータの出力を制御して前記振盪プレートの振盪回転数および振盪振幅を可変調整するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動モータにより回動板が回転駆動され、トルクシャフトの下端部が所定の回転半径で回動する。トルクシャフトの下端部が回動することでその上端部は、支点板を支点にして駆動軸線のまわりを回動する。このように一対のトルクシャフトが同期して回動することで、これらに結合する振盪プレートが振盪運動する。
【0013】
この場合、支点板の上下動によりトルクシャフトの傾斜角度が変化し、支点板を支点にして駆動軸線のまわりを回動するトルクシャフトの上端部の回転半径が変化する。これにより振盪プレートの振盪振幅を連続して可変調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明による振盪装置の好適な実施の形態を説明する。
図1は、この実施形態における振盪装置10の概略構成を示している。なお、図2はその側面図、図3は平面図、図4は底面図である。この実施形態において、たとえば血液検査等で血液等の被検体を収容した試験管等を振り動かすべく、該試験管を後述する振盪プレート上に載置するものとする。この例では、振盪装置10の上部で振盪プレート11を支持する。
【0015】
フレーム12の頂部には複数(この例では3つ)の受け駒13が配設され、振盪プレート11はこれらの受け駒13上にスライド可能に支持される。なお、ここでフレーム12は、左右の側板12a、背板12bおよび底板12cにより概略箱型を呈し、ベース枠体14上に搭載支持される。振盪装置10全体はベース枠体14を介して、所望の設置場所に設置されるようになっている。
【0016】
振盪プレート11は、略上下方向に配置された一対のトルクシャフト15によって振盪駆動される。トルクシャフト15は相互に平行に所定距離だけ隔置されており、その下端部が支点板16の下方で駆動軸線17のまわりに回動するとともに、上端部が支点板16の上方で駆動軸線17のまわりに追従回動する。
【0017】
底板12c上には各駆動軸線17と同心に回動板18が回転自在に配設されている。トルクシャフト15の下端部は図5(あるいは図6)等に示されるように、駆動軸線17の軸心から半径r1(図9参照)の位置に偏心して、自在軸受19を介して回動板18と結合する。この場合、トルクシャフト15の下端部は自在軸受19とピッタリと嵌合するが、その軸方向には嵌合状態を維持しながら移動し得るように結合する。
【0018】
ここで、支点板16は後述するスライド機構によって、その上側および下側間で、すなわちこの例では上下方向に往復動可能に支持される。そして該スライド機構による支点板16の往復動により、振盪プレート11の振盪振幅を調整し得るようにしている。トルクシャフト15は、支点板16に装着された自在軸受20に対して、相対的にスライド可能に嵌合する。自在軸受20は常に駆動軸線17上に位置し、すなわち支点板16が上下動した際、その位置に保持される。
【0019】
トルクシャフト15の上端部は図5等に示されるように、自在軸受21を介して振盪プレート11と結合する。自在軸受21は、振盪プレート11に設けた支持部材22に装着される。この場合トルクシャフト15は自在軸受21に対して軸方向の移動が規制され、すなわち軸方向には固定される。
【0020】
支点板16を支持するスライド機構は、振盪プレート11の振盪面に直交配置されたリニアガイド23と、支点板16と係合してリニアガイド23に沿って往復動させる支点板駆動手段とを有する。この支点板駆動手段は本実施形態では、リニアガイド23と平行配置されるとともに、支点板16と螺合する送りネジ24により構成され、送りネジ24の回転で支点板16を往復動させることができる。
【0021】
この実施形態では図5あるいは図8等を参照して、フレーム12の背板12bに沿って延設され、かつトルクシャフト15に略対応して相互に平行に所定距離だけ隔置された一対のリニアガイド23を持つ。支点板16は図5に示されるように、リニアガイド23に係合するスライダ25を介して支持される。
【0022】
送りネジ24はフレーム12の底板12cから立設され、支点板16の略中央部付近で螺合する。底板12cには図8に示されるように、送りネジ24を支持する軸受26が配設され、これにより送りネジ24は回転自在に支持される。この例では送りネジ24の下端部付近に操作部27が付設され、操作部27の操作で送りネジ24を正逆回転させることができる。
【0023】
なお、送りネジ24を駆動モータにより回転駆動することも可能である。装置フレーム(フレーム12あるいはベース枠体14)の適所にたとえばステッピングモータ等を搭載し、送りネジ24と連結する。このステッピングモータを制御することで、振盪プレート11の振盪振幅を自動で可変制御し、あるいはコンピュータプログラムにより周期的に変化させるようにしてもよい。
【0024】
ここで、トルクシャフト15の駆動系について説明する。この例では振盪装置10の背面下部付近に駆動モータ28が搭載され、この駆動モータ28によりトルクシャフト15を回動駆動するようにしている。図7および図8等に示されるように、駆動モータ28の出力軸にはプーリ29が固着するとともに、底板12cの下面には各駆動軸線17と同心に一対のプーリ30が配置される。回動板18の支軸31は軸受32によって軸支され、それぞれプーリ30と結合している。
【0025】
3つのプーリ29,30,30には図4のようにタイミングベルト33が装架される。これらのプーリ相互間にはアイドラ34が配設され、タイミングベルト33の適性テンションが確保される。このように駆動モータ28からトルクシャフト15に至る駆動系が構成される。
【0026】
本発明の振盪装置10は上記のように構成されており、つぎにその作用を説明する。
本発明による振盪装置10の実使用において、たとえば血液等の被検体を収容した試験管等を振り動かすべく、図9に示したように複数の試験管を収容する収容台もしくはパレット100が振盪プレート11上に載置される。振盪プレート11の振盪振幅および振盪回転数は、被検体の種類等に応じて予め決めておいてもよい。
【0027】
先ず、駆動モータ28を作動することにより、タイミングベルト33を介して一対のプーリ30、従って各回動板18が回転駆動される。トルクシャフト15の下端部は、図9のように半径r1の回転半径で回動する。トルクシャフト15の下端部が回動することでその上端部は、支点板16(の自在軸受20)を支点にして駆動軸線17のまわりを回動する。このように一対のトルクシャフト15が同期して回動することで、これらに結合する振盪プレート11が振盪運動する。
【0028】
この場合、図9に示すように長さLのトルクシャフト15が、支点板16の上下で図示のように長さL1,L2となるとき、トルクシャフト15の上端部の回転半径r2とする。なお、トルクシャフト15の駆動軸線17に対する傾斜角度θとする。ここで、支点板16の高さ位置は、送りネジ24の回動操作により変化させることができる。送りネジ24の回転によりこれに螺合する支点板16は、上方または下方に付勢され、スライダ25を介してリニアガイド23に沿って上下動する。
【0029】
たとえば支点板16が図5のように上昇することで、L1>L2となる。このときトルクシャフト15の上端部の回転半径r2は、下端部の回転半径r1よりも小さくなる。また、トルクシャフト15の傾斜角度θも比較的小さい。このような状態から操作部27の操作で送りネジ24を回転させることにより、支点板16を図6のように下降させることで、L1<L2となる。このときトルクシャフト15の上端部の回転半径r2は、下端部の回転半径r1よりも大きくなる。このように支点板16の上下動により振盪プレート11の振盪振幅を可変調整することができる。なお、いずれの場合においても振盪回転数は、駆動モータ28の出力回転数の制御により調整することができる。
【0030】
ここで、たとえば図5および図6のように支点板16を移動することで、トルクシャフト15の傾斜角度θが変化すると、トルクシャフト15の下端部を支持する自在軸受19と上端部を支持する自在軸受21との距離は、図6の場合の方が長くなる。このような場合、トルクシャフト15の下端部は自在軸受19に対して、軸方向には嵌合状態を維持しながら移動することができるため、かかる距離変化に有効に対応し得る。これにより装置の円滑動作が保証される。
【0031】
以上、本発明を種々の実施形態とともに説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
たとえば、本発明装置を縦置きの例で説明したが、装置作動的には横置きとすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態における振盪装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態における振盪装置の側面図である。
【図3】本発明の実施形態における振盪装置の平面図である。
【図4】本発明の実施形態における振盪装置の底面図である。
【図5】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図2のC−C線に沿う断面図である。
【図9】本発明の振盪装置の作用を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 振盪装置
11 振盪プレート
12 フレーム
14 ベース枠体
15 トルクシャフト
16 支点板
17 駆動軸線
18 回動板
19,20,21 自在軸受
22 支持部材
23 リニアガイド
24 送りネジ
25 スライダ
28 駆動モータ
29,30 プーリ
33 タイミングベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が支点板の一側で駆動軸線のまわりに回動するとともに、他端部が前記支点板の他側で前記駆動軸線のまわりに追従回動する相互に平行配置された一対のトルクシャフトと、前記トルクシャフトの他端部に結合し、振盪運動可能に支持された振盪プレートと、前記支点板をその一側および他側間で往復動可能に支持するスライド機構とを備え、
前記スライド機構による前記支点板の往復動により、前記振盪プレートの振盪振幅を調整し得るようにしたことを特徴とする振盪装置。
【請求項2】
前記スライド機構は、前記振盪プレートの振盪面に直交配置されたリニアガイドと、前記支点板と係合して前記リニアガイドに沿って往復動させる支点板駆動手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の振盪装置。
【請求項3】
前記支点板駆動手段は、前記リニアガイドと平行配置されるとともに、前記支点板と螺合する送りネジにより構成され、該送りネジの回転で前記支点板を往復動させることを特徴とする請求項2に記載の振盪装置。
【請求項4】
前記トルクシャフトの一端部を回動駆動する駆動モータと、前記送りネジを回転駆動する駆動モータを備え、装置動作中にこれらの駆動モータの出力を制御して前記振盪プレートの振盪回転数および振盪振幅を可変調整するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の振盪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−246742(P2006−246742A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65317(P2005−65317)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】