説明

捕虫具

【課題】保管時や搬送時の他、使用時や使用後の取扱性を向上させることができる捕虫具を提供すること。
【解決手段】捕虫具10は、接着剤層14を介して接着可能なベースシート11及び曲面形成シート12を備えて構成されている。曲面形成シート12は、ベースシート11と一端側同士が連設された状態でベースシート11から剥離したときに、曲面形状に形成可能に設けられる。接着剤層14は、曲面形成シート12をベースシート11から剥離したときに、ベースシート11及び曲面形成シート12の各相対面にそれぞれ形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕虫具に係り、更に詳しくは、接着剤層に虫を接着して捕獲することができる捕虫具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、食品や粘着シート、精密機械等の製品に虫が混入することを防止するために捕虫具が利用され、かかる捕虫具としては、例えば、特許文献1及び2に開示されている。特許文献1の捕虫具では、一方の面に粘着面を形成したシートを当該粘着面が内側になるように半円筒状に折り曲げ、虫の侵入を許容する半円状の開放部を両端に形成可能となっている。特許文献2の捕虫具は、連結位置で折り曲げ可能な正面板及び背面板と、これら正面板及び背面板の間において当該正面板及び背面板と別体として設けられる粘着紙とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−236398号公報
【特許文献2】特開2006−101758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、シートを折り曲げる使用前の状態で、平面積が大きくなり、搬送等において取り扱い難くなるばかりでなく、保管場所に広いスペースを要する、という不都合がある。また、使用直前まで粘着面に剥離紙が貼付されるので、使用にあたり剥離された剥離紙が邪魔になったり、剥離紙の処分に手間がかかり、しかも、捕虫用の粘着剤は転着し易く取り除くことが困難な性質を有するので、剥離紙に付着した粘着剤が他のものに付着すると、これを取り除くのに面倒な労力を要する、という不都合も生じる。
更に、特許文献2にあっては、正面板及び背面板に対して粘着紙を保持したり引っ掛けたりすることが必要になり、セッティング作業に手間がかかる上、正面板及び背面板と粘着紙とで保管場所が別々になって取扱性が悪くなる、という不都合を招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、保管時や搬送時等における取扱性と、使用時や使用後の取扱性との両方を向上させることができる捕虫具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、ベースシートと、このベースシートの一方の面に設けられた接着剤層と、この接着剤層を介して前記ベースシートと接着可能に設けられるとともに、前記ベースシートと一端側同士が連設された状態で当該ベースシートから剥離したときに曲面形状に形成可能な曲面形成シートとを備えた捕虫具であって、
前記曲面形成シートをベースシートから剥離したときに、それらの相対面にそれぞれ接着剤層が形成される、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記曲面形成シートが呈する曲面形状を維持可能な維持手段を備える、という構成を採ることが好ましい。
【0008】
また、前記曲面形成シート及びベースシートの外側へ前記接着剤層を構成する接着剤が流出することを規制可能な流出防止手段を備える、という構成も好ましくは採用される。
【0009】
更に、前記曲面形成シートをベースシートから剥離して曲面形状に形成した状態で、接着剤層が形成された領域のベースシートを部分的に曲面形成シート側に変位可能な変位手段を備える、という構成を採用してもよい。
【0010】
また、前記ベースシートの接着剤層と反対面であって前記変位手段の形成領域へ接着剤層を構成する接着剤が漏洩することを規制可能な漏洩防止手段を備える、という構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、捕虫を行う前にベースシートと曲面形成シートとを接着した状態で取り扱うことができ、使用にあたりシートを折り曲げて使用する従来タイプのものに比べ、平面積を小さくした状態として保管時や搬送時等における取扱性を向上させることが可能となる。しかも、ベースシートと曲面形成シートとの間に接着剤層が位置するので、剥離紙を不要として当該剥離紙の剥離作業や処分等の負担をなくすことができるので使用時(セッティンク時)の取扱性を向上させることも可能となるばかりでなく、使用後に破棄するときには、ベースシートと曲面形成シートとを使用前の状態に戻すだけでよいので、使用後の取扱性をも向上させることが可能となる。
【0012】
また、維持手段により曲面形成シートが呈する曲面形状を安定して維持することが可能となる。
【0013】
更に、接着剤の流出防止手段により、曲面形成シート及びベースシートの外側に接着剤がはみ出ることを防止でき、保管時や運搬時、更には、使用後に周囲のものを接着剤で汚染することを回避することが可能となる。
【0014】
また、変位手段により接着剤層が形成された領域のベースシートを部分的に起き上がるように変位させることができ、曲面形成シート及びベースシートの接着剤層間に飛来した虫を接着剤層に効率良く接着して捕虫することが可能となる。
【0015】
更に、漏洩防止手段により、使用時、使用後にベースシートにおける接着剤層の反対面側に接着剤や捕獲した虫が流出することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は実施形態に係る捕虫具の部分破断正面図、(B)は、図1(A)の断面図。
【図2】(A)は使用状態を示す捕虫具の正面図、(B)は、組立途中の断面図、(C)は、組立後の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書の方向若しくは位置を示す用語は、特に明示しない限り、図1(A)を正面から見た場合を基準とし、「前」とは同図中手前側を示す一方、「後」とは、同奥行き側について用いられ、「左」「右」も同様に正面から見た場合を基準とする。
【0018】
捕虫具10は、図1(B)中右側に位置するベースシート11と、同図中左側に位置してベースシート11と重なり合う曲面形成シート12と、ベースシート11前面と曲面形成シート12後面との間に設けられて、これらを接着可能な接着剤層14及び流出防止手段15と、ベースシート11に形成された維持手段16及び変位手段17と、ベースシート11における接着剤層14の反対面すなわち後面側に設けられた漏洩防止手段19とを備えて構成されている。ベースシート11及び曲面形成シート12は、紙や樹脂シート等が例示できる。
【0019】
前記ベースシート11は、図1(A)に示されるように、上下に長い長方形状に形成されている。ベースシート11の上端側には、壁掛け用の穴22が形成されている。
【0020】
前記曲面形成シート12は、ベースシート11と略同一の平面形状に形成されている。曲面形成シート12は、図2(B)に示されるように、ベースシート11から剥離可能に設けられ、当該剥離したときに前方に膨出する曲面形状に形成可能となっている。
【0021】
前記接着剤層14は、図1(B)の状態において、ベースシート11及び曲面形成シート12の面内中央領域に積層される。接着剤層14は、流動性を有する接着剤からなり、曲面形成シート12をベースシート11から剥離したときに、厚み方向中間部で分断するように構成されている。従って、接着剤層14は、図2(B)の状態において、曲面形成シート12及びベースシート11の各相対面にそれぞれ形成され、曲面形成シート12の後面及びベースシート11の前面の両方において虫を捕獲できるようになっている。
【0022】
前記流出防止手段15は、接着剤層14の上下左右を囲う領域に設けられている。流出防止手段15は、ベースシート11及び曲面形成シート12の一端側すなわち下端側に沿う領域に設けられた強粘着剤層25と、穴22と接着剤層14との間で左右方向に延びた領域及び接着剤層14の左右両側で上下方向に延びた領域に設けられた弱粘着剤層24とを備え、図1の状態で接着剤層14を構成する接着剤が外側に流動しても、各シート11、12の外側に流出することを規制可能に設けられている。強粘着剤層25は、意図的な強力な外力を付与しない限り、ベースシート11及び曲面形成シート12の連結した状態が保たれる接着力を有し、弱粘着剤層24は、強粘着剤層25に比べて相対的に弱い接着力で曲面形成シート12に接着している。なお、弱粘着剤層24は、再接着可能に設けられている。
【0023】
前記維持手段16は、弱粘着剤層25の内側における接着剤層14上方の2箇所位置に設けられ、一対の傾斜切り込み27と、これら傾斜切り込み27の一端側を連結する連結切り込み28とにより形成され、各傾斜切り込み27の他端側の図1(A)中点線で示される部位を折り曲げ位置として下端側が前方に変位可能となっている。これにより、図2に示されるように、維持手段16の後面側に曲面形成シート12の上端側を差し込んで保持可能となり、曲面形成シート12が呈する曲面形状を維持可能となっている。
【0024】
前記変位手段17は、一対の傾斜切り込み31と、これら傾斜切り込み31の一端側を連結する連結切り込み30とにより形成され、各傾斜切り込み31の他端側の図1(A)中点線で示される部位を折り曲げ位置として前方に向かって起立可能となっている。これにより、図2(C)に示されるように、接着剤層14が形成された領域のベースシート11を部分的に曲面形成シート12側に変位可能となる。なお、各変位手段17は、前方に向かって起立させたときの前後幅が、曲面形状となる曲面形成シート12の膨らみの大きさに応じて異なるようになっている。つまり、曲面形成シート12の膨らみが最も大きくなる位置に対応する変位手段17は、前後幅が最も大きく、膨らみが小さくなる位置に応じて変位手段17の前後幅も小さくなるように設定されている。
【0025】
前記漏洩防止手段19は、ベースシート11の後面に貼付可能なシートからなり、変位手段17が面内に収まるサイズに形成され、各変位手段17が起立されることで形成される開口をカバーして接着剤層14の接着剤がベースシート11の後面側に漏洩することを規制可能となっている。なお、漏洩防止手段19は、紙や樹脂シート等を基材とする接着シートが例示でき、予めベースシート11の後面に貼付されていてもよいし、変位手段17を起立させてから貼付するようにしてもよい。
【0026】
次に、捕虫具10の使用方法について説明する。
【0027】
先ず、各維持手段16の後面側を前方に押し出し、下端側を前方に変位させておく。次に、曲面形成シート12を上端側からベースシート11から剥離し、各シート11、12が強粘着剤層25だけで連結される状態とする。これにより、接着剤層14が厚さ方向中間で分断され、曲面形成シート12の後面及びベースシート11の前面にそれぞれ接着剤層14が積層された状態となる。次いで、曲面形成シート12を前方に膨らむ曲面形状に変形させつつ、下端側を前方に変位させておいた各維持手段16の後面側に曲面形成シート12の上端側を差し込む。これにより、各維持手段16によって曲面形成シート12の上端側が保持され、ベースシート11と曲面形成シート12との間に虫の侵入を許容するスペースSが形成される(図2(B)参照)。
【0028】
次に、各変位手段17の後面側を前方に押し出し、前方に向かって起立させる。この立ち上げによって、各変位手段17の内側領域がスペースS内を埋める障害物ができ、スペースS内に飛来した虫が当該スペースS内を通過し難くなり、接着剤層14に虫を効率良く接触させて捕獲し易くなっている。なお、各変位手段17は、図2(C)に示されるように、各変位手段17が側面視で一部が重なり合うような配置とすることが好ましい。これにより、図2(A)に示されるように、スペースS内に飛来した虫Iの直進を阻害することができ、接着剤層14に虫を接触させ易くすることができる。各変位手段17を起立させた後、ベースシート11の後面に漏洩防止手段19を貼付し、穴22を介して捕虫具10を吊り下げる。そして、所定期間が経過したら、曲面形成シート12を各維持手段16から引き抜き、初めの状態つまり図1の状態に戻す。このとき変位手段17は、曲面形成シート12に押されて初めの状態に戻り、当該捕虫具10を破棄するときも、流出防止手段15と漏洩防止手段19とによって、接着剤層14の接着剤や、捕獲した虫が当該捕虫具10から流出することを防止することができる。
【0029】
従って、このような実施形態によれば、捕虫を行う前にベースシート11と曲面形成シート12とを接着した状態で取り扱うことができ、保管時や搬送時等における取扱性を向上させることが可能となる。しかも、ベースシート11と曲面形成シート12との間に接着剤層14が位置するので、ベースシート11から曲面形成シート12を剥離し、当該曲面形成シート12を維持手段16に差し込むだけでセッティンクができるので、使用時の取扱性を向上させることも可能となるばかりでなく、使用後に破棄するときには、ベースシート11と曲面形成シート12とを使用前の状態に戻すだけでよいので、使用後の取扱性をも向上させることが可能となる。
【0030】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0031】
例えば、1枚のシートを折り曲げてベースシート11及び曲面形成シート12を連なって設け、強粘着剤層25を省略した構成としてもよい。この場合、流出防止手段15は、シートの折り曲げ縁と弱粘着剤層24とにより構成される。
【0032】
また、前記変位手段17の形状は、種々の変更が可能であり、例えば、立ち上げた際の前端側形状を、曲面形状を呈する曲面形成シート12に沿って曲線状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 捕虫具
11 ベースシート
12 曲面形成シート
14 接着剤層
15 流出防止手段
16 維持手段
17 変位手段
19 漏洩防止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースシートと、このベースシートの一方の面に設けられた接着剤層と、この接着剤層を介して前記ベースシートと接着可能に設けられるとともに、前記ベースシートと一端側同士が連設された状態で当該ベースシートから剥離したときに曲面形状に形成可能な曲面形成シートとを備えた捕虫具であって、
前記曲面形成シートをベースシートから剥離したときに、それらの相対面にそれぞれ接着剤層が形成されることを特徴とする捕虫具。
【請求項2】
前記曲面形成シートが呈する曲面形状を維持可能な維持手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の捕虫具。
【請求項3】
前記曲面形成シート及びベースシートの外側へ前記接着剤層を構成する接着剤が流出することを規制可能な流出防止手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の捕虫具。
【請求項4】
前記曲面形成シートをベースシートから剥離して曲面形状に形成した状態で、接着剤層が形成された領域のベースシートを部分的に曲面形成シート側に変位可能な変位手段を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の捕虫具。
【請求項5】
前記ベースシートの接着剤層と反対面であって前記変位手段の形成領域へ接着剤層を構成する接着剤が漏洩することを規制可能な漏洩防止手段を備えていることを特徴とする請求項4記載の捕虫具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−115183(P2012−115183A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266389(P2010−266389)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】