説明

捕虫器

【課題】構造の簡略化、虫を誘引可能な範囲の拡大化、回収した捕虫シートの取扱性の改善を図ること。
【解決手段】虫を誘引する誘引手段12と、誘引手段12の近傍に繰り出される捕虫シート11と、この捕虫シート11を繰り出し可能に保持する保持手段13とを備えて捕虫器10が構成されている。捕虫シート11は、帯状をなす基材シート11Aと、この基材シート11Aの一方の面に積層された接着剤層11Bと、この接着剤層11Bによって仮着された剥離シート11Cとを備えている。保持手段13は、捕虫シート11を支持する支持手段25と、剥離された剥離シート11Cと使用済みの基材シート11Aとを巻き取り可能に設けられた単一の巻取軸37を有する回収手段27とを備える。支持手段25及び回収手段27の少なくとも一つの手段に前記繰り出しの逆方向に進行することを規制する逆行規制手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕虫器に係り、更に詳しくは、効率良く捕虫を行うことができる捕虫器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、食品や粘着シート、精密機械等の製品に虫が混入することを防止するために捕虫器が利用されている(特許文献1参照)。特許文献1の捕虫器は、捕虫用の光源と、この光源の周りに掛け回された粘着シートとを備えている。粘着シートは、ロール状に巻回された状態から光源の近傍に繰り出されて停止した状態で光源に誘引された虫を捕獲し、その後、再度繰り出しを行うことで回転軸にロール状に巻き取られて回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−41584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、粘着シートが光を通すために透明となるので、回転軸に巻き取られたロール状の粘着シートに捕獲された多数の虫が見えることとなる。このため、回収した粘着シートを廃棄する際、巻き取った粘着シートが不衛生な印象となり、廃棄する作業者に不快感を付与して作業性を損なう、という不都合がある。
【0005】
ところで、本出願人は、捕虫シートの基材シートから剥離シートを剥離及び回収して接着剤層を表出するとともに、捕虫を終えた使用済みの基材シートを回収する捕虫器を提案した(特願2006−274350号)。この捕虫器では、剥離シートの巻取軸と基材シートの巻取軸とが別個独立して設けられた構造となっており、当該構造の簡略化を図る要請がある他、捕虫シートにより虫を捕獲できる領域を拡大化する要請がある。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、前述の不都合に着目しつつ前記要請に対応するように案出されたものであり、その目的は、構造の簡略化、虫を誘引可能な範囲の拡大化を図ることができ、回収した捕虫シートの取扱性を改善することができる捕虫器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、虫を誘引する誘引手段と、前記誘引手段の近傍に繰り出される捕虫シートと、この捕虫シートの繰り出しを許容し当該捕虫シートを保持する保持手段とを備えた捕虫器において、
前記捕虫シートは、帯状をなす基材シートと、この基材シートの一方の面に積層された接着剤層と、この接着剤層によって仮着された剥離シートとを含む少なくとも3層構造の積層シートであって、
前記保持手段は、前記捕虫シートを支持する支持手段と、前記捕虫シートから剥離シートを剥離する剥離手段と、この剥離手段により剥離された剥離シートと使用済みの基材シートとを巻き取り可能に設けられた単一の巻取軸を有する回収手段とを備え、
前記支持手段及び回収手段の少なくとも一つに前記捕虫シートが繰り出しの逆方向に進行することを規制する逆行規制手段が設けられる、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記巻取軸は、使用済みの基材シートの接着剤層に剥離シートを再度仮着し、これらを同時に巻き取る、という構成が好ましくは採用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用済みの基材シートと剥離シートとを巻き取る巻取軸を単一としたので、回収手段の構造の簡素化やコンパクト化を図ることができ、且つ、これらシートを単一のロール体として回収でき、廃棄作業の負担を軽減することが可能となる。
【0010】
また、使用済みの基材シートの接着剤層に剥離シートを再度仮着して巻き取るので、巻き取られたロール状の捕虫シートにおいて、捕獲された多数の虫を剥離シートにより隠して見えないようにすることができる。これにより、従来のように、不衛生な印象や不快感を付与することを防止することができ、廃棄等の作業性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る捕虫器の概略正面図。
【図2】図1のB−B線に沿う断面図。
【図3】(A)は、捕虫シートの正面図であり、(B)は、(A)のC−C線に沿う断面図である。
【図4】巻取軸による巻き取り要領を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「未使用」とは、接着剤層を表出する前の状態を意味する他、捕虫を行うべく接着剤層を表出した直後の状態も意味する。また、「使用済み」とは、捕虫を行った後の状態を意味する他、虫が捕獲されていない状態であっても、所定期間捕虫の用に供した状態も意味する。
更に、本明細書の方向若しくは位置を示す用語は、特に明示しない限り、図2中矢印A方向から見た場合を基準とし、「前」とは矢印A方向から見た場合の手前側を示す一方、「後」とは、同奥行き側について用いられる。
【0013】
図1には、本実施形態に係る捕虫器の概略正面図が示され、図2には、図1のB−B線に沿う断面図が示されている。これらの図において、捕虫器10は、虫を捕獲するための捕虫シート11と、この捕虫シート11に沿って位置する誘引手段12と、捕虫シート11の繰り出しを許容し保持可能に設けられた保持手段13と、誘引手段12と捕虫シート11との間に設けられた案内手段15とを備えて構成されている。
【0014】
前記捕虫シート11は、ロール状に巻回された状態から誘引手段12の近傍における後方を通過するように下方に繰り出された後、誘引手段12の前方を通過するように上方に繰り出されるようになっている。捕虫シート11は、図3(A)及び(B)に示されるように、帯状をなす基材シート11Aと、この基材シート11Aの一方の面(図3(B)中上面)に積層された接着剤層11Bと、この接着剤層11Bによって仮着された剥離シート11Cとを備えた3層構造となっている。基材シート11Aの繰り出し方向に沿う両端、すなわち、図3中左右両端に沿う位置には、前記接着剤層11Bを積層しない非接着領域11Dがそれぞれ設けられている。
【0015】
前記誘引手段12は、図2に示されるように、図示しない電力源に接続される蛍光灯18により構成されている。蛍光灯18は、脚部材20から立設された左右一対の側面フレーム21、22のうち、右側の側面フレーム21に支持されている。なお、蛍光灯18は、虫を誘引可能な波長の光、例えば紫外線を発光するものが好ましい。
【0016】
前記保持手段13は、ロール状に巻回された捕虫シート11を支持する支持手段25と、この支持手段25の近傍に設けられた剥離手段26及び回収手段27と、支持手段25及び回収手段27に連結され、支持手段25から回収手段27に基材シート11A及び剥離シート11Cを繰り出す繰出手段28とを備えて構成されている。
【0017】
前記支持手段25は、ロール状に巻回された捕虫シート11の回転中心軸位置に設けられた支持軸30を備え、この支持軸30は、前記右側の側面フレーム21を上方に延長して形成されるブラケット部31に片持ち支持されている。支持軸30は、前記繰出手段28の作動により、ロール状の捕虫シート11を回転させて剥離手段26側へ繰り出すようになっている。
【0018】
前記剥離手段26は、支持手段25からその下方に位置するガイドローラ33を通過した捕虫シート11の剥離シート11Cを折り返し、当該剥離シート11Cを上方へ導く剥離用ローラ34を備えている。剥離用ローラ34は、前記ブラケット部31により片持ち支持されている。剥離用ローラ34により剥離された剥離シート11Cは、前後一対の上ガイドローラ35に巻回されて回収手段27へ案内される。また、剥離シート11Cが剥離された後の基材シート11Aは、未使用の接着剤層11Bを表出しつつ案内手段15に沿って誘引手段12の前後両側を通過し、回収手段27へ案内される。
【0019】
前記回収手段27は、前記ブラケット部31により片持ち支持された単一の巻取軸37により構成され、この巻取軸37は、前記繰出手段28の作動により図2中矢印R1方向に回転可能となっている。
【0020】
前記繰出手段28は、前記支持軸30及び巻取軸37にそれぞれ連結されたプーリ39、40と、これらプーリ39、40に掛け回されたベルト41と、前記巻取軸37に連結された操作ハンドル42とを備えて構成されている。
【0021】
前記案内手段15は、誘引手段12の前後両側において、上下に所定間隔を隔てて複数設けられた棒状部材44を備えている。各棒状部材44のうち、最下位の二本の棒状部材44は、前記各側面フレーム21、22の内面に連結され、それ以外の棒状部材44は、各側面フレーム21、22に連結されて前後に延びる支持体45を介して支持されている。各棒状部材44は、基材シート11Aの接着剤層11Bとは反対の面に当接可能に設けられ、基材シート11Aが誘引手段12側に撓んだり、ばたつくことを抑制できるようになっている。また、各棒状部材44は、基材シート11Aを剥離用ローラ34から誘引手段12の後側を下方に向かって導いた後、誘引手段12の前側で上方へ繰り出すようにガイドする。これにより、基材シート11Aの接着剤層11Bは、誘引手段12を挟む二面すなわち前後両面側に表出することとなる。
【0022】
前記捕虫器10は、図1に示される状態から、蛍光灯18を発光させると、その光は、基材シート11A及び接着剤層11Bを透過して外部に発せられる。すると、その光に誘引されて虫が蛍光灯18に近付くように飛来し、接着剤層11Bに接触した虫が当該接着剤層11Bに接着されて捕獲される。
【0023】
そして、一定期間捕虫を行った後、未使用の接着剤層11Bを前後両側に表出させる場合、前記繰出手段28の操作ハンドル42を回転操作する。これにより、巻取軸37が図2中矢印R1方向に回転するとともに、支持軸30が同図中R2方向に回転し、基材シート11A及び剥離シート11Cが巻き取られて回収される。この巻き取りにより、支持軸30に支持されたロール状の捕虫シート11が下方に繰り出され、剥離用ローラ34を通過する時に剥離シート11Cが順次剥離される。これと同時に、未使用の接着剤層11Bが表出した後、誘引手段12の前後に位置する基材シート11Aが各棒状部材44に案内されて図2中矢印S1方向に繰り出される。
【0024】
以上のように、捕虫器10において、単一の駆動源として操作ハンドル42を回転することにより、剥離シート11Cの剥離及び回収と、誘引手段12の前後両側への未使用の接着剤層11Bのセットと、使用済みの基材シート11Aの回収とを同時に行えるようになる。
【0025】
ここで、基材シート11A及び剥離シート11Cの巻き取りを図4を用いて更に詳述すると、支持軸30から捕虫シート11を所定長さ引き出し、基材シート11Aを棒状部材44に掛け回し、巻取軸37に固定する。一方、剥離シート11Cは、剥離用ローラ34、上ガイドローラ35に掛け回し、基材シート11Aと同様に巻取軸37に固定する。巻取軸37が同図中矢印R1方向に回転することにより、使用済みの基材シート11Aが同図中矢印S1方向に進行し、接着剤層11Bが内側に向けられるように巻き取られる。これと同時に、剥離シート11Cが同図中矢印S2方向に進行して巻き取られるが、同図中符号Pで示す位置、すなわち、基材シート11Aの巻き取りが開始される位置で、接着剤層11Bに剥離シート11Cが再度仮着され、基材シート11A及び剥離シート11Cを重ねた状態で同時に巻き取りが行われる。
【0026】
ところで、前記支持軸30及び巻取軸37の少なくとも一つに、捕虫シート11が前述した繰り出し方向に逆行する方向に進行することを規制する逆転防止手段が設けられる。この逆転防止手段としては、ラチェット機構や、各軸に対するピン止め構造、ワンウェイクラッチ構造が例示できる。
【0027】
従って、このような実施形態によれば、巻取軸37に巻き取られた捕虫シート11の外観において、接着剤層11Bに捕獲された虫が剥離シート11Cで隠れて見えないようにすることができる。これにより、巻き取られた捕虫シート11が不衛生に見えたりすることを回避できるばかりでなく、利用者に清潔な印象を付与することが可能となる。また、巻取軸37を単一としたので、回収手段27の構造を簡単にすることができる他、使用済みの基材シート11A及び剥離シート11Cを単一のロール体として廃棄作業の簡便化を図ることが可能となる。更に、接着剤層11Bが蛍光灯18の前後両側に位置するので、その光を広範囲に発することができ、捕虫シート11に効率良く虫を誘引することが可能となる。
【0028】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0029】
例えば、誘引手段12は、虫を誘引する作用を奏する限りにおいて種々の変更が可能であり、匂いや音等で誘引可能なものであってもよく、蛍光等18に代替、若しくは、蛍光灯18と併用することができる。また、紫外線の光源は蛍光灯18に替えてLED(発光ダイオード)等の他の発光源によって構成してもよい。
【0030】
また、案内手段15として複数の棒状部材44を用いたが、当該棒状部材44と同様の作用を奏する限りにおいて、側面フレーム21、22間に光を透過可能な樹脂板等を設けてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、捕虫シートとして3層構造の積層シートを用いて図示、説明したが、4層以上の積層シートであってもよい。
【0032】
更に、捕虫器10は、自立タイプに限られず、壁や天井等に取り付け可能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 捕虫器
11 捕虫シート
11A 基材シート
11B 接着剤層
11C 剥離シート
12 誘引手段
13 保持手段
25 支持手段
26 剥離手段
27 回収手段
37 巻取軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を誘引する誘引手段と、前記誘引手段の近傍に繰り出される捕虫シートと、この捕虫シートの繰り出しを許容し当該捕虫シートを保持する保持手段とを備えた捕虫器において、
前記捕虫シートは、帯状をなす基材シートと、この基材シートの一方の面に積層された接着剤層と、この接着剤層によって仮着された剥離シートとを含む少なくとも3層構造の積層シートであって、
前記保持手段は、前記捕虫シートを支持する支持手段と、前記捕虫シートから剥離シートを剥離する剥離手段と、この剥離手段により剥離された剥離シートと使用済みの基材シートとを巻き取り可能に設けられた単一の巻取軸を有する回収手段とを備え、
前記支持手段及び回収手段の少なくとも一つに前記捕虫シートが繰り出しの逆方向に進行することを規制する逆行規制手段が設けられていることを特徴とする捕虫器。
【請求項2】
前記巻取軸は、使用済みの基材シートの接着剤層に剥離シートを再度仮着し、これらを同時に巻き取ることを特徴とする請求項1記載の捕虫器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−65676(P2012−65676A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1959(P2012−1959)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2007−31797(P2007−31797)の分割
【原出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】