説明

掃除機用床ノズル及び電気掃除機

【課題】絨毯の被掃除面に附着した塵埃を除去することができ、フローリングや畳の拭き掃きも行うことができることから塵埃除去性能に優れ、且つロータの直径を大きくすることなく、清掃体がロータから抜けるのを防止することができる掃除機用床ノズル及び電気掃除機を提供する。
【解決手段】回転ロータ16は、ロータ4と、該ロータ4の外周の長手方向に形成された複数の挿入溝5の各々に装着された複数の清掃体1、2、3とからなり、該清掃体1、2、3の少なくとも一つは、ループ状に形成され、且つ該ループ状の清掃体1の両端部近傍の長手方向に抜け止め片1cが各々少なくとも片面に形成されてあり、該抜け止め片1cを、前記挿入溝5の1つの内部に形成され且つ、前記ロータ4の軸心からの距離が異なる第1溝部5aと第2溝部5bとに各々嵌合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除機用床ノズル及び、それを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の清掃装置の回転ロータとして、ロータと、このロータに一端が保持される清掃体と、この清掃体を覆うようにループ状部を形成する塵埃押出し体とで構成されたものがある(特許文献1)。また別の回転ロータは、ロータと、このロータの外周の長手方向に装着された複数の清掃体とからなり、この清掃体の一つをループ状の掻き上げムチ部が形成されたものがある(特許文献2)。
【0003】
また、別の回転ロータは、ロータと、複数の清掃体とからなり、清掃体の一つがチャンネルブラシで構成され、清掃体は、ロータに形成された螺旋状の溝部に挿入されたものがある(特許文献3)。さらに、別の回転ロータとして、回転ロータを構成する清掃体が長尺の繊維束を蛇行状に折曲した所定幅の帯板状体の長手方向両縁部に紐状の取付用部材を縫い付けて構成し、この清掃体をその幅方向の中央付近で折り返して、両縁の取付用部材を各々ロータに設けられた外周に開口する複数条の支持溝に挿入固定することにより清掃体の自由端にループパイル部を形成したものがある(特許文献4)。
【特許文献1】特開2007−163111号公報
【特許文献2】特開2007−14370号公報
【特許文献3】特開2006−326249号公報
【特許文献4】特開2002−517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された回転ロータでは、ロータの一つの溝に、2つの清掃体の基部を挿入固定することができるものの、溝を大きくしなければならないことから、ロータの直径を大きくしなければならなかった。また、ロータからの清掃体の抜けを防止する対策が必要であった。また、特許文献2に開示された回転ロータでは、ループ状の掻き上げムチ部は絨毯のゴミを掻き上げる機能のみのものであり、フローリングや畳の拭き掃きには適さなかった。また、特許文献3に開示された回転ロータでは、清掃体の先端にループが形成されていない為、フローリングや畳の拭き掃きには適さず、清掃機能が限定されていた。一方、特許文献4に開示された回転ロータでは、フローリングや畳の拭き掃きには対応できるものの、絨毯に付着した塵埃を除去するのには適さなかった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、絨毯の被掃除面に附着した塵埃を除去することができ、フローリングや畳の拭き掃きも行うことができることから塵埃除去性能に優れ、且つロータの直径を大きくすることなく、清掃体がロータから抜けるのを防止することができる掃除機用床ノズル及び電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、電動送風機を内蔵する電気掃除機本体に連通するように接続されると共に、塵埃を掻き上げる回転ロータを回転自在に収納した掃除機用床ノズルにおいて、前記回転ロータは、ロータと、該ロータの外周の長手方向に形成された複数の挿入溝の各々に装着された複数の清掃体とからなり、該清掃体の少なくとも一つは、ループ状に形成され、且つ該ループ状の清掃体の両端部近傍の長手方向に抜け止め片が各々少なくとも片面に形成されてあり、該抜け止め片を、前記挿入溝の1つの内部に形成され且つ、前記ロータの軸心からの距離が異なる第1溝部と第2溝部とに各々嵌合したことに特徴を有する。したがって、清掃体の一つをループ状に形成することができるので、絨毯の被掃除面に附着した塵埃を除去することができ、且つ他の清掃体によって、フローリングや畳の拭き掃きも行うことができる。また、第1溝部と第2溝部とを、ロータの軸心からの距離が異なる位置に配置しているので、第1溝部と第2溝部との幅方向の距離を短くすることができる為、ロータの直径を小さくすることができると共に、ロータから清掃体が抜けるのを防止することができる。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、ループ状の清掃体は、表側に起毛布が位置し、該起毛布が植毛された基部が裏側に位置することに特徴を有する。したがって、清掃体の製作が容易であると共に、起毛布によって、絨毯の被掃除面に附着した塵埃を確実に除去することができる。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、抜け止め片は、清掃体の表側と裏側とに各々形成されていることに特徴を有する。したがって、ロータの軸心に近い方の抜け止め片が溝の外側に引っ張られた場合に、もう一方の抜け止め片に当接するので、清掃体がロータから外れるのを防ぐことができる。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、ロータの外周の長手方向に形成された複数の挿入溝は螺旋状に形成されてあることに特徴を有する。したがって、清掃体に付着した塵埃を螺旋の向きに従って一方向に集めることができ、この塵埃を掃除機の吸込み口から確実に回収することができる。
【0010】
また、請求項5の発明は、吸引力を発生させる電動送風機と、塵埃を捕集する集塵室と、請求項1〜4のいずれか1項に記載の掃除機用床ノズルを備えた電気掃除機に特徴を有する。したがって、清掃体の一つをループ状に形成することができるので、絨毯の被掃除面に附着した塵埃を除去することができ、且つ他の清掃体によって、フローリングや畳の拭き掃きも行うことができる。また、第1溝部と第2溝部とを、ロータの軸心からの距離が異なる位置に配置しているので、ロータの直径を小さくすることができると共に、ロータから清掃体が抜けるのを防止することができる。さらに、清掃体の製作が容易であると共に、起毛布によって、絨毯の被掃除面に附着した塵埃を確実に除去することができ、清掃体に付着した塵埃を螺旋の向きに従って一方向に集めることができ、この塵埃を掃除機の吸込み口から確実に回収することができる床ノズルを備えた電気掃除機である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によって、絨毯の被掃除面に附着した塵埃を除去することができると共に、フローリングや畳の拭き掃きも行うことができるので、塵埃除去性能を向上させることができる。また、ロータからの清掃体の抜けを防止することができると共に、ロータの直径を小さくすることができる。また、請求項2の発明によって、清掃体の製作が容易であると共に、起毛布によって、絨毯の被掃除面に附着した塵埃を確実に除去することができる。また、請求項3の発明によって、清掃体がロータから外れるのを確実に防ぐことができる。また、請求項4の発明によって、清掃体に付着した塵埃を螺旋の向きに従って一方向に集めることができ、この塵埃を掃除機の吸込み口から確実に回収することができる。さらに、請求項5の発明によって、上記請求項1から請求項4の効果を奏することができる床ノズルを備えた電気掃除機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明における掃除機用床ノズルについて図を用いて説明する。図1は、本発明に係る掃除機用床ノズルの一部破断斜視図である。図1において、10は、図示しない電気掃除機に連通接続される掃除機用床ノズルで、その外郭11は、上ケース12と、下面に吸い込み口13を有する下ケース14から構成されている。床ノズル10の外周には、掃除の際に家具などへの傷付を防止するためのバンパー15が設けられ、前部には、回転ロータ16を回転自在に収納すると共に吸い込み口13と連通する回転ロータ室17が配されている。
【0013】
また、床ノズル10の後部には、延長管(図示せず)などを介して、電気掃除機(図示せず)に連通接続される接続管18が傾動自在に取着されている。20は、下ケース14の底面の前部、後部にそれぞれ一対ずつ設けられた走行用ローラーで、床ノズル10を、木床などの被掃除面に置いたとき、その被掃除面と下ケース14の底面との間に所定の隙間を確保して、電気掃除機による吸引力で、床ノズル10の底部が被掃除面に密着して操作性が悪くなることの無いようにするものである。
【0014】
21は、床ノズル10の略中央でかつ回転ロータ16の後方に位置し、回転ロータ室17と接続管18とを連通する吸引口である。22は、ベルト23を介して回転ロータ16を回転駆動する駆動手段となる電動機である。
【0015】
図2は、本発明の床ノズルに使用される回転ロータ16の断面図である。図2に示すように、回転ロータ16を構成するロータ4には、清掃体1、3やブレード2が挿入される溝部が6箇所に形成されている。その中の4箇所に形成された溝部には、清掃体3やブレード2の基部が挿入される抜け止め部がロータの軸心からの距離が等距離となるように左右に形成されており、フローリングや畳において、拭き掃き効果を奏することができる清掃体3やブレード2が挿入固定される。一方、他の2箇所に形成された溝部5には、ロータ4の軸心からの距離が異なる第1溝部5aと第2溝部5bとが形成されている。
【0016】
そして、清掃体1は、ループ状に形成されており、このループ状の清掃体1の両端部近傍の長手方向に抜け止め片1cが両面に形成されてある。この抜け止め片1cが、挿入溝5の内部に形成され且つ、ロータ4の軸心からの距離が異なる第1溝部5aと第2溝部5bとに各々嵌合される構成となっている。したがって、ロータ4の軸心に近い第1溝部5aの抜け止め片1cが溝5の外側に引っ張られた場合に、もう一方の第2溝部5bの抜け止め片1cに当接するので、清掃体1がロータ4から外れるのを確実に防ぐことができるのである。
【0017】
図3は、本発明の床ノズルに使用されるロータ4の斜視図である。このロータ4は、前述したように、清掃体1、2、3が挿入される溝部が6箇所に形成されており、その中の4箇所に形成された溝部には、清掃体3やブレード2の基部が挿入される抜け止め部がロータの軸心からの距離が等距離となるように左右に形成されている。そして、他の2箇所に形成された溝部5には、ロータ4の軸心からの距離が異なる第1溝部5aと第2溝部5bとが形成されている。さらに、溝部5は所定の角度で螺旋状に捻られて、螺旋状部4aが形成されている。
【0018】
図4は、本発明の床ノズルに使用されるループ状の清掃体1を平面に置いた状態を示す斜視図である。この図に示すように、清掃体1は、基部1aの上に起毛布1bが植毛されており、基部1aの両端部近傍の表側及び裏側には各々、抜け止め片1cが固定されている。そして、図2で示したように、ループ状の清掃体1の形状とする場合には、起毛布1bが植毛されている面が表側に位置するようにループが形成されるのである。
【0019】
図5は、本発明の床ノズルに使用される他の回転ロータ16の断面図である。図5に示す回転ロータ16は、ループ状の清掃体1の両端部近傍の長手方向に抜け止め片1cが片面に形成されてある。この抜け止め片1cが、挿入溝5の内部に形成され且つ、ロータ4の軸心からの距離が異なる第1溝部5aと第2溝部5bとに各々嵌合される構成となっている。
【0020】
図6は、抜け止め片1c近傍に位置決め片6、6a、6bを設置した実施形態を示す説明図である。図6(a)では、第1溝部5aに嵌合する抜け止め片1cが固定された基部1aの反対側に、断面四角状の位置決め片6が固定されている。このように、構成することによって、位置決め片6の上部に第2溝部5bに嵌合する抜け止め片1cが当接して位置決めがなされる。図6(b)も同様に、第1溝部5aに嵌合する抜け止め片1cが固定された基部1aの反対側に、断面半円状の位置決め片6aが固定されている。このように、構成することによって、位置決め片6aの上部に第2溝部5bに嵌合する抜け止め片1cが当接して位置決めがなされる。同様にして、図6(c)に示すように、第1溝部5aに嵌合する抜け止め片1cが固定された基部1aの反対側に位置決め片6bが固定され、この位置決め片6bが、他方の抜け止め片1dの一部と嵌合する実施形態を採用することもできる。これらの構成をとることによって、ループ状の清掃体1をロータ4の第1溝部5aと第2溝部5bとに各々嵌合される前の段階で、位置決めを行うことができるので、回転ロータ16の製造作業を簡易に行うことができる。
【0021】
図7は、本発明の電気掃除機の全体構成を示す図である。図7において、本実施例における電気掃除機40は、前部に塵埃を捕集する集塵室41と、後部に電動送風機42を内蔵した電動送風機室43をそれぞれ備えた掃除機本体44と、前記集塵室41に連通するように一端が掃除機本体44に接続されるホース45と、ホース45の他端に設けられたハンドルパイプ46に一端が着脱自在に接続される延長管47とを備え、前記延長管47の他端に、上記第1の実施例で述べた床吸込具10が接続されている。ハンドルパイプ46には、掃除機本体44の運転を操作する本体スイッチ46aと、床吸込具10に内蔵された電動機22の運転を操作する吸込具スイッチ46bが設けられている。
【0022】
上記のように構成された電気掃除機の動作、作用は、以下の通りである。掃除機本体44内に収納された電源コード(図示せず)を引き出し、そのプラグ(図示せず)を室内のコンセント(図示せず)に差し込んで、ハンドルパイプ46に設けた本体スイッチ46a、吸込具スイッチ46bを操作すると、電動送風機42及び床吸込具10内の電動機22の運転が開始し、それに伴い、吸込具10の底部に設けた吸い込み口13から、回転する回転ロータ16の清掃体1、2、3で掻き上げられた被掃除面上の塵埃が、外気と共に吸引され、延長管47、ハンドルパイプ46、ホース45を経て集塵室41に至り、そこで吸引風に含まれた塵埃が捕集され、きれいになった空気は、掃除機本体44の後部に設けた排気口(図示せず)から排気される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明に係る掃除機用床ノズルは、塵埃の除去性能に非常に優れているもので、電気掃除機に限らず、回転部材を用いて塵埃や他の目的物を収集または回収する各種機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る掃除機用床ノズルの一部破断斜視図。
【図2】本発明の床ノズルに使用される回転ロータの断面図。
【図3】本発明の床ノズルに使用されるロータの斜視図。
【図4】ループ状の清掃体を平面に置いた状態を示す斜視図。
【図5】本発明の床ノズルに使用される他の回転ロータの断面図。
【図6】抜け止め片の近傍に位置決め片を設置した実施形態を示す説明図。
【図7】本発明の電気掃除機の全体構成を示す図。
【符号の説明】
【0025】
1 ループ状の清掃体
1a 基部
1b 起毛布
1c、1d 抜け止め片
2 ブレード
3 清掃体
4 ロータ
4a 螺旋状部
5 挿入溝
5a 第1溝部
5b 第2溝部
6、6a、6b 位置決め片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機を内蔵する電気掃除機本体に連通するように接続されると共に、塵埃を掻き上げる回転ロータを回転自在に収納した掃除機用床ノズルにおいて、前記回転ロータは、ロータと、該ロータの外周の長手方向に形成された複数の挿入溝の各々に装着された複数の清掃体とからなり、該清掃体の少なくとも一つは、ループ状に形成され、且つ該ループ状の清掃体の両端部近傍の長手方向に抜け止め片が各々少なくとも片面に形成されてあり、該抜け止め片を、前記挿入溝の1つの内部に形成され且つ、前記ロータの軸心からの距離が異なる第1溝部と第2溝部とに各々嵌合したことを特徴とする掃除機用床ノズル。
【請求項2】
ループ状の清掃体は、表側に起毛布が位置し、該起毛布が植毛された基部が裏側に位置することを特徴とする請求項1に記載の掃除機用床ノズル。
【請求項3】
抜け止め片は、清掃体の表側と裏側とに各々形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の掃除機用床ノズル。
【請求項4】
ロータの外周の長手方向に形成された複数の挿入溝は、螺旋状に形成されてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の掃除機用床ノズル。
【請求項5】
吸引力を発生させる電動送風機と、塵埃を捕集する集塵室と、請求項1〜4のいずれか1項に記載の掃除機用床ノズルを備えた電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−35604(P2010−35604A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198599(P2008−198599)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】