説明

掃除用具

【課題】 本発明は、吸着保持したアレルゲンの働きを抑制し、吸着保持したアレルゲンを原因とするアレルギー疾患の発生を抑制することができる掃除用具を提供する。
【解決手段】 本発明の掃除用具は、上述の如き構成を有しているので、掃除用具に吸着保持したアレルゲンを変性し或いは吸着し、アレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制するので、掃除用具に一旦、吸着保持させたアレルゲンがそれらの有する特異抗体に対する反応性を保持した状態で再度、ばらまかれることがなく、よって、本発明の掃除用具を用いることによって、アレルゲンを効果的に吸着保持してアレルゲンを除去することができると共に、吸着保持したアレルゲンの有する特異抗体に対する反応性を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲンを効果的に吸着保持してアレルゲンを除去することができると共に、吸着保持したアレルゲンの有する特異抗体に対する反応性を抑制する掃除用具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの多くのアレルギー疾患が問題となってきている。このアレルギー疾患の主な原因としては、住居内に生息するダニ類、特に、室内塵中に多く存在するヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)や、主に春季に多量に空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、Cryj2)などのアレルゲンが生活空間内に増加してきているためである。
【0003】
そして、例えば、ヒョウヒダニのアレルゲンは、ヒョウヒダニを駆除してもその死骸もアレルゲンとなるため、ヒョウヒダニを駆除したり増殖を防止したりするだけでは、アレルギー疾患の根本的な解決には至らない。
【0004】
又、スギ花粉アレルゲンであるCrij1は分子量が約40kDaの糖タンパク質であり、Crij2は分子量が約37kDaの糖タンパク質であり、これらのスギ花粉アレルゲンは、鼻粘膜などに付着すると生体外異物として認識されて炎症反応を引き起こす。
【0005】
従って、アレルギー疾患の症状を軽減し或いは新たなアレルギー症状を防止するためには、生活空間からアレルゲンを完全に取り除くか、アレルゲンを変性させるなどして不活性化させることが必要となる。
【0006】
又、住居内に生息するダニ類は、床面(フローリング、畳、カーペット)、ソファー、椅子、寝具などの表面の塵埃やダスト中に生息し、蛋白性の汚れや塵を餌に増殖する。このような環境下において塵埃やダストを除去する目的で床面を雑巾、モップ、その他ワイパーなどを用いて掃除すると、床面に生息するダニの多くは使用した掃除用具に吸着保持されることになる。
【0007】
しかしながら、ダニ類が吸着保持された掃除用具には同時にダニの餌となる蛋白性の塵も吸着保持されており、これらが適当な温度(20−30℃程度)と湿度(60−80%)の環境下に置かれればダニが急激に増殖することになる。このような掃除用具が再度、室内の掃除に使用されると、逆に多くのダニアレルゲンが室内の多方面にばらまかれることとなり、かえって健康上、大きな問題となる可能性がある。
【0008】
そこで、これらの問題を解決する手段として、特許文献1には、掃除用具表面或いは内部を防ダニ処理することで、ダニの増殖を抑えアレルゲンの発生を抑える掃除用具が提案されている。
【0009】
しかしながら、上記掃除用具は、ダニの増殖を抑制するものであって、アレルゲンそのものを無害化するものではなく、アレルギー疾患の症状を軽減し或いは新たなアレルギー症状を防止するには不十分であるという問題があった。
【0010】
又、特許文献2には、アレルゲン抑制化合物を含浸させた清拭シートが提案されているが、基材にアレルゲン低減化物質を単に含浸させているに過ぎず、生活用品表面に存在するアレルゲンを効果的に抑制することができないことがあるといった問題点を有していた。
【0011】
【特許文献1】特開平10−75924号公報
【特許文献2】特開2003−81842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、吸着保持したアレルゲンの働きを抑制し、吸着保持したアレルゲンを原因とするアレルギー疾患の発生を抑制することができる掃除用具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の掃除用具は、掃除用具の表面にアレルゲン抑制化合物を0.05〜20g/m2 存在させていることを特徴とする。
【0014】
そして、上記掃除用具において、掃除用具の表面にアレルゲン抑制化合物及びダスト吸着用油剤が存在することを特徴とする。
【0015】
又、上記掃除用具において、ダスト吸着用油剤中にアレルゲン抑制化合物が溶解していることを特徴とする。
【0016】
更に、上記掃除用具において、ダスト吸着用油剤中にアレルゲン抑制化合物が分散していることを特徴とする。
【0017】
そして、上記掃除用具において、アレルゲン抑制化合物が、体積が5×10-4μm3 〜1×10-3mm3 の粒子状であることを特徴とする。
【0018】
又、上記掃除用具において、アレルゲン抑制化合物が非水溶性化合物であることを特徴とする。
【0019】
更に、上記掃除用具において、アレルゲン抑制化合物が非水溶性有機化合物であることを特徴とする。
【0020】
加えて、上記掃除用具において、掃除用具が室内用であることを特徴とする。
【0021】
又、上記掃除用具において、掃除用具がモップであって、モップのモップコード糸の表面にアレルゲン抑制化合物を存在させていることを特徴とする。
【0022】
最後に、上記掃除用具において、掃除用具が不織布又は織布であって、この不織布の表面にアレルゲン抑制化合物を存在させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の掃除用具は、上述の如き構成を有しているので、掃除用具に吸着保持したアレルゲンを変性し或いは吸着し、アレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制するので、掃除用具に一旦、吸着保持させたアレルゲンがそれらの有する特異抗体に対する反応性を保持した状態で再度、ばらまかれることがなく、よって、本発明の掃除用具を用いることによって、アレルゲンを効果的に吸着保持してアレルゲンを除去することができると共に、吸着保持したアレルゲンの有する特異抗体に対する反応性を抑制することができ、掃除用具に吸着保持させたアレルゲンに起因した健康上の問題が生じるのを概ね防止することができる。
【0024】
又、上記掃除用具において、掃除用具の表面にアレルゲン抑制化合物及びダスト吸着用油剤が存在する場合には、アレルゲン抑制化合物をより効果的に吸着保持してアレルゲンをより確実に除去することができると共に、掃除用具の表面においてダスト吸着用油剤を介してアレルゲン抑制化合物を円滑に移動させてアレルゲンへの作用をより確実なものとすることができ、より効果的なアレルゲン抑制効果を奏する。
【0025】
更に、上記掃除用具において、アレルゲン抑制化合物が、体積が5×10-4μm3 〜1×10-3mm3 の粒子状である場合には、アレルゲン抑制化合物のアレルゲンに対する抑制効果を向上させながら、掃除用具の表面に効果的に存在させておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の掃除用具は、掃除用具の表面にアレルゲン抑制化合物を0.05〜20g/m2存在させていることを特徴とする。
【0027】
上記アレルゲン抑制化合物としては、アレルゲン抑制効果を有し、アレルギー疾患の原因となる抗原抗体反応を抑制する化合物であれば、特に限定されるものではなく、従来公知から用いられているアレルゲン抑制化合物を使用することができる。
【0028】
このようなアレルゲン抑制化合物としては、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族ポリエーテル、2,5−ジヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシ安息香酸、フェノール樹脂、タンニン酸やカテキンなどの植物抽出物、アルカリ金属の炭酸塩、明礬、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、リン酸塩、硫酸亜鉛、酢酸鉛などが挙げられ、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族ポリエーテル、ヒドロキシ安息香酸、タンニン酸等の有機化合物が好ましい。なお、アレルゲン抑制化合物は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0029】
又、アレルゲン抑制化合物は、水溶性であっても非水溶性であってもよいが、非水溶性のものが好ましい。非水溶性のアレルゲン抑制化合物としては、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族ポリエーテル、フェノール樹脂などの非水溶性の有機化合物の他に、タンニン酸などの水溶性のアレルゲン抑制化合物を架橋剤などで架橋して非水溶性としたもの、タンニン酸などの水溶性のアレルゲン抑制化合物を重合により高分子量化して非水溶性としたもの、タンニン酸などの水溶性のアレルゲン抑制化合物をタルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、シリカ、バーミュライト、パーライトなどの無機担体やポリエチレン、ポリプロピレンなどの有機高分子担体に吸着させて非水溶性としたもの、タンニン酸などの水溶性のアレルゲン抑制化合物をグラフトなどの化学結合やバインダーによる結合によって非水溶性としたものなどが挙げられる。
【0030】
ここで、非水溶性とは、20℃で且つpHが5〜9である水100gに対して溶解可能なグラム数(以下「溶解度」という)が1以下であることをいう。
【0031】
なお、アレルゲン抑制化合物とはアレルゲン抑制効果を有するものをいい、又、「アレルゲン抑制効果」とは、ヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、Cryj2)、犬や猫に起因するアレルゲン(Can f1、Fel d1)などのアレルゲンを変性し或いは吸着し、アレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制する効果をいう。このようなアレルゲン抑制効果を確認する方法としては、例えば、LCDアレルギー研究所社から市販されているELISAキットを用いてELISA法によりアレルゲン量を測定する方法、アレルゲン測定具(シントーファイン社製 商品名「マイティーチェッカー」)を用いてアレルゲン性を評価する方法などが挙げられる。
【0032】
先ず、上記芳香族ヒドロキシ化合物について説明する。上記芳香族ヒドロキシ化合物としては、芳香族ヒドロキシル基を有し且つアレルゲン抑制効果を備えたものであれば、特に限定されず、例えば、線状高分子に下記式(1)〜(6)で示される置換基のうちの少なくとも一つの置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物などの、式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロキシ化合物;芳香族複素環式ヒドロキシ化合物;線状高分子に置換基として芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物などの、芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロキシ化合物、鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物などが挙げられる。
【0033】
先ず、式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロキシ化合物について説明する。この芳香族ヒドロキシ化合物の置換基は、下記式(1)〜(6)で示される。
【0034】
【化1】

【0035】
なお、式(1)〜(6)において、nは、0〜5の整数である。これは、nが6以上となると、式(1)〜(6)で示される置換基が発現するアレルゲン抑制効果が不充分となるからである。
【0036】
各式中の複数個ある置換基R1 、R1 、R1 ・・・において、各置換基R1 は、水素又は水酸基である。更に、各式中、複数個ある置換基R1 の少なくとも一つは、芳香族ヒドロキシ化合物がアレルゲン抑制効果を発揮するために、水酸基である必要がある。しかしながら、水酸基の数が多過ぎると、水素アレルゲン抑制化剤を施したものが着色したり或いは変色し易くなるため、水酸基の数は一つが好ましい。即ち、各式中、複数個ある置換基R1 のうちの一つのみが水酸基である一方、この置換基以外の置換基R1 が全て水素であることが好ましい。
【0037】
更に、水酸基の位置は、立体障害の最も少ない位置に結合していることが好ましく、例えば、式(1)では、水酸基がパラ位に結合していることが好ましい。
【0038】
上記式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体としては、式(1)〜(6)で示される置換基を有しておれば、特に限定されず、例えば、ビニルフェノール、チロシン、1,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エテン(式(7))などの一価のフェノール基を有する単量体が挙げられる。
【0039】
【化2】

【0040】
更に、芳香族ヒドロキシ化合物のアレルゲン抑制効果を阻害しない範囲内において、式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体、好ましくは、一価のフェノール基を一個以上有する単量体に、この単量体と共重合可能な単量体を共重合させてもよい。
【0041】
このような単量体としては、例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロシキエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、スチレンなどが挙げられる。
【0042】
そして、式(1)〜(6)で示される置換基が結合している線状高分子としては、特に限定されず、ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。この線状高分子と式(1)〜(6)で示される置換基との間の化学結合については、特に限定されず、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などが挙げられる。
【0043】
ここで、線状高分子に式(1)〜(6)で示される置換基のうちの少なくとも一つの置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、(1) 式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体の重合体又は共重合体、(2) 式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体と、この単量体と共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられる。
【0044】
そして、線状高分子に式(1)〜(6)で示される置換基のうちの少なくとも一つの置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物としては、具体的には、ポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)、ポリビニルフェノール、ポリチロシン、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシナフタレン) 、ポリ(1−ビニル−6−ヒドロキシナフタレン) 、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシアントラセン) が好ましい。
【0045】
なお、上記単量体を重合させて得られる芳香族ヒドロキシ化合物の分子量としては、特に限定されないが、単量体を2個以上重合させてなる芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく、単量体を5個以上重合させてなる芳香族ヒドロキシ化合物がより好ましい。
【0046】
又、上記芳香族複素環式ヒドロキシ化合物としては、アレルゲン抑制効果を奏すれば、特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシフラン、2−ヒドロキシチオフェン、ヒドロキシベンゾフラン、3−ヒドロキシピリジンなどが挙げられる。
【0047】
次に、線状高分子に置換基として芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物などの、芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロシキ化合物について説明する。
【0048】
上記芳香族複素環式ヒドロキシ基としては、チオフェンやフランなどの複素環骨格にヒドロキシ基が結合したもの(式(8)(9))や、複素環と芳香族環とを持つ骨格にヒドロキシ基が結合したもの(式(10))、複素環骨格にヒドロキシ基及び炭素数が5以下のアルキル基が結合したもの、複素環と芳香族環とを持つ骨格にヒドロキシ基及び炭素数が5以下のアルキル基が結合したものなどが挙げられる。
【0049】
【化3】

【0050】
そして、芳香族複素環式ヒドロキシ基が結合している線状高分子としては、特に限定されず、ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。この線状高分子と芳香族複素環式ヒドロキシ基との間の化学結合については、特に限定されず、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などが挙げられる。
【0051】
このような芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体を重合又は共重合してなる化合物としては、例えば、(1) 芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体の重合体又は共重合体、(2)芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体と、この単量体と共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられる。
【0052】
上記芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロシキエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、スチレンなどが挙げられる。
【0053】
続いて、鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物について説明する。この鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物は、鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有し且つ鎖状高分子の主鎖或いは側鎖にフェノール基を有する芳香族ヒドロキシ化合物であるが、掃除用具の風合いを損ねないという点から、上記脂環式構造が式(11)又は式(12)であることが好ましい。
【0054】
【化4】

【0055】
ここで、式(11)(12)において、R2 〜R9 は、水素、炭化水素基又はフェノール基である。この炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、シクロブテニル基などのシクロアルケニル基、フェニル基、エチルフェニル基などのアリール基、アラルキル基などが挙げられる。
【0056】
更に、上記脂環式構造部分に式(13)で示される置換基を有することが好ましく、式(11)のR2 〜R5 のうちの少なくとも一つの置換基が式(13)で示される置換基であることがより好ましい。
【0057】
【化5】

【0058】
ここで、式(13)において、R10〜R14は水素又はヒドロキシル基であり、R10〜R14のうちの少なくとも一つはヒドロキシル基である。これは、R10〜R14のうちの少なくとも一つがヒドロキシル基でない場合、非水溶性アレルゲン抑制化合物のアレルゲン抑制効果が低下する虞れがあるからである。しかしながら、ヒドロキシル基の数が増加すると、非水溶性アレルゲン抑制化合物の着色性が強くなることがあるので、式(13)におけるR10〜R14のうち、一つの置換基のみがヒドロキシル基であって且つ残余の置換基が水素であることが好ましく、立体障害が少ないことから、R12がヒドロキシル基であって且つR10、R11、R13及びR14が水素であることがより好ましい。
【0059】
又、式(13)において、Xは直接結合又は炭化水素基であり、このような炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基などが挙げられる。
【0060】
なお、鎖状高分子の主鎖に式(11)で示される脂環式構造を有し且つこの脂環式構造部分に式(13)で示される置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物は、液状ポリブタジエンとフェノールとを原料に用いて合成することができ、例えば、新日本石油社から商品名「PPシリーズ」で市販されており、鎖状高分子の主鎖に式(12)で示される脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物は、ジシクロペンタジエンとフェノールとを原料に用いて合成することができ、例えば、新日本石油社から商品名「DPPシリーズ」「DPAシリーズ」で市販されている。
【0061】
更に、芳香族ポリエーテル化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリアリレートなどが挙げられ、生活用品への着色をより効果的に防止することができることから、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルケトンが好ましく、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンがより好ましい。
【0062】
そして、上記芳香族ポリエーテル化合物のなかでも、ビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのモノマーと、エピクロロヒドリンとの重縮合或いは酸化カップリング反応により重合して得られるエポキシ樹脂やフェノキシ樹脂;ビスフェノールのアルカリ金属塩と、−SO2 −、−CO−、−CNなどの電子吸引性基によって活性化された芳香族ジハライドとを極性溶媒中で加熱して重縮合させる芳香族求核置換重合法や、ジフェニルエーテルのような電子に富む芳香族化合物と、芳香族二酸クロリドとをルイス酸触媒下に重合させるFriedel−Craftsシアル化反応を応用した芳香族求電子置換重合法によって得られる、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルスルホン又はポリエーテルケトンがより好ましい。
【0063】
更に、生活用品への着色を特に効果的に防止することができることから、芳香族ポリエーテル化合物は、式(14)及び/又は式(15)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有するものが好ましい。
【0064】
【化6】

【0065】
(R15〜R26は水素又は炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよい。Xは、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、Z1 及びZ2 は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群から選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合である。)
【0066】
ここで、式(14)(15)において、R15〜R26は水素又は炭化水素基である。この炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、シクロブテニル基などのシクロアルケニル基、フェニル基、エチルフェニル基などのアリール基、アラルキル基などが挙げられ、R15〜R26の全てが水素である場合が好ましい。
【0067】
更に、式(14)において、Xは、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、メチレン基、プロピリデン基、スルホニル基が好ましい。
【0068】
又、式(14)(15)において、Z1 及びZ2 は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群から選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合であり、メチレン基、ヒドロキシトリメチレン基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合が好ましく、Z1 は、ヒドロキシトリメチレン基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合がより好ましく、Z2 は、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基がより好ましい。
【0069】
そして、上記フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基としては、特に限定されないが、例えば、下記の式(16)〜(18)に示す構造を有する有機基が挙げられる。
【0070】
【化7】

【0071】
又、芳香族ポリエーテル化合物が式(14)及び/又は式(15)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物である場合、式(14)又は式(15)の構成単位を主たる繰返し単位としているか、或いは、式(14)及び式(15)の構成単位を主たる繰返し単位としておればよく、他の構成単位を含有していてもよい。
【0072】
上記式(14)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物としては、具体的には、ビスフェノールAとビス(4−クロロフェニル)スルホンとを重縮合させて得られるポリスルホン;ビスフェノールAやビスフェノールFと、エピクロロヒドリンとの重縮合により得られるエポキシ樹脂が好ましい。
【0073】
又、上記式(15)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物としては、具体的には、4−クロロ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンのカリウム塩を用いた溶液重縮合法により得られるポリエーテルスルホン、4−フルオロ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンのカリウム塩を用いた溶液重縮合法により得られるポリエーテルスルホン;4,4’−ビフェニルジスルホニルクロリドとジフェニルエーテルとを重縮合させて得られるポリアリルスルホンなどが好ましい。
【0074】
そして、上記芳香族ポリエーテル化合物の重量平均分子量は、小さいと、アレルゲン抑制効果が発現しないことがあるので、1500以上が好ましく、2500以上がより好ましいが、大きすぎると、アレルゲン抑制化合物の取り扱い性が低下することがあるので、50万以下が好ましい。
【0075】
上記アルカリ金属の炭酸塩を構成するアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムなどが挙げられ、アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。
【0076】
上記明礬としては、例えば、硫酸アルミニウムと、アルカリ金属、タリウム、アンモニウムなどの1価イオンの硫酸塩とからなる複塩などが挙げられる。又、上記複塩の硫酸アルミニウムを硫酸クロム、硫酸鉄などに置き換えた複塩であってもよい。明礬としては、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウムが好ましい。特に、アレルゲン抑制効果の高い硫酸アルミニウムカリウムは、主に十二水和物(AlK(SO4 2 ・12H2 O)又は無水物(AlK(SO4 2 )が用いられるが、水和物が水分子を段階的に失う過程で存在する部分的な水和物であってもよい。明礬の一部は、カリミョウバンとして食品添加物や化粧品原料に指定されており、人体に対する安全性が高い物質である。
【0077】
上記ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩の塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミンなどのアミン塩などが挙げられ、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩が好ましい。
【0078】
上記リン酸塩は、水系溶媒に溶解したときにPO4 3-イオンを生成する塩類であり、例えば、リン酸二水素ナトリウム(リン酸一ナトリウム)、リン酸水素二ナトリウム(リン酸二ナトリウム)、リン酸二水素カリウムなどが挙げられる。
【0079】
上記硫酸亜鉛としては、主に水和物(七水和物)あるいは無水物が用いられるが、水和物が水分子を段階的に失う過程で存在する部分的な水和物であってもよい。硫酸亜鉛は、白ばんあるいは亜鉛華として知られており、日本薬局方にも収載されている物質である。
【0080】
上記酢酸鉛としては、水和物(三水和物)あるいは無水物が用いられるが、水和物が水分子を段階的に失う過程で存在する部分的な水和物であっても良い。上記酢酸鉛は、鉛糖として知られており、日本薬局方にも収載されている物質である。
【0081】
更に、アレルゲン抑制化合物に、アレルゲン抑制効果を阻害しない範囲において、分散補助剤、湿潤剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの製剤用補助剤や、殺ダニ剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤などの添加剤が添加されてもよい。
【0082】
又、アレルゲン抑制化合物とアレルゲンが反応する場を形成するという観点から、吸湿性や保湿性に優れた化合物などが配合されていることが好ましい。これら化合物を配合することにより、乾燥状態でもアレルゲン抑制効果が発現しやすくなる。なお、このような化合物としては、分子量は関係なく低分子であっても高分子であってよい。
【0083】
そして、吸湿性や保湿性に優れた化合物としては、特に限定されてないが、例えば、リン酸エステル系界面活性剤(例えば、北広ケミカル社製 商品名「ES−F」)や特殊両性界面活性剤(例えば、北広ケミカル社製 商品名「TA−290」)などの耐電防止剤;アニオン系乳化油剤(例えば、北広ケミカル社製 商品名「ソフテックスFT−775」)、特殊非イオン系乳化油剤(ソフテックスN−491)、特殊高分子界面活性剤(例えば、北広ケミカル社製 商品名「ソフテックK−190」)などの柔軟剤、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、シリカゲルなどの無機物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシメチレンなどのポリエーテル;ポリビニルアルコールなどのポリアルコール;ポリアクリル酸ナトリウム塩などのポリマー塩;ポリアクリル酸などのポリマー酸などを含む高分子化合物などが挙げられる。
【0084】
そして、上記アレルゲン抑制化合物は、掃除用具の表面に0.05〜20g/m2 の割合で存在している。上記掃除用具としては、例えば、モップのモップコード糸、不織布、織布、掃除機の集塵袋などが挙げられ、室内用であっても屋外用であってもよいが、アレルゲンの存在が懸念される室内の清掃用であることが好ましい。
【0085】
又、モップのモップコード糸を構成しているパイルの直径は、0.5〜3mmが好ましく、又、不織布若しくは織布の厚みは、0.5〜3mmが好ましい。このようにパイルの直径や、不織布又は織布の厚みを調整することによってアレルゲン抑制化合物によるアレルゲン抑制効果を効果的に発現させることができる。
【0086】
なお、モップのモップコード糸を構成しているパイルは、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロンなどの合成繊維や、綿などの天然繊維などから構成されている。
【0087】
そして、掃除用具の表面におけるアレルゲン抑制化合物の存在量は、少ないと、掃除用具に付着したアレルゲンに作用することができず、アレルゲン抑制効果を発現させることができない一方、多いと、掃除用具の風合いを阻害するので、0.05〜20g/m2 に限定され、0.1〜10g/m2 が好ましい。
【0088】
更に、掃除用具の表面におけるアレルゲン抑制化合物の存在形態としては、特に限定されないが、アレルゲン抑制化合物は、掃除用具の表面に粒子状に分散した状態に存在していることが好ましい。
【0089】
掃除用具の表面に粒子状の形態にて存在しているアレルゲン抑制化合物の体積は、小さいと、掃除用具の内部に浸透してしまい、掃除用具のアレルゲン抑制効果が低減することがある一方、大きいと、アレルゲン抑制化合物の総表面積が小さくなって、アレルゲンとの接触面積が小さくなり、アレルゲン抑制効果が低下する虞れがあるので、5×10-4μm3 〜1×10-3mm3 が好ましく、6.5×10-2μm3 〜2.7×10-4mm3 がより好ましく、6.5×10-2μm3 〜3.5×10-5mm3 が特に好ましい。
【0090】
又、アレルゲン抑制化合物の平均粒径は、小さいと、掃除用具の内部に浸透してしまい、掃除用具のアレルゲン抑制効果が低減することがある一方、大きいと、アレルゲン抑制化合物の総表面積が小さくなって、アレルゲンとの接触面積が小さくなり、アレルゲン抑制効果が低下する虞れがあるので、0.5〜80μmが好ましく、0.5〜40μmがより好ましい。
【0091】
ここで、本発明において、アレルゲン抑制化合物の体積は、アレルゲン抑制化合物の平均粒径を動的光散乱法によって測定し、この平均粒径と同一寸法の直径を有する真球の体積をいう。なお、アレルゲン抑制化合物の平均粒径は、例えば、HORIBA社から商品名「LA−910」にて販売されている動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0092】
又、アレルゲン抑制化合物を掃除用具の表面にダスト吸着用油剤と共に存在させてもよい。上記ダスト吸着用油剤としては、ダストを吸着できれば特には限定されず、従来からダスト吸着用途に用いられている鉱物油、合成潤滑油などが挙げられる。
【0093】
上記鉱物油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族炭化水素系などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。鉱物油としては、具体的には、流動パラフィン、スピンドル油、マシン油、冷凍機油、その他の石油系潤滑油などが挙げられる。
【0094】
又、上記合成潤滑油としては、例えば、ポリオレフィン油(α−オレフィン油)、エステル油、ポリグリコール油、ポリブテン油、アルキルベンゼン油、シリコーン油等が挙げられる。
【0095】
そして、アレルゲン抑制化合物をダスト吸着用油剤と共に掃除用具の表面に存在させている場合、アレルゲン抑制化合物をダスト吸着用油剤中に溶解させ或いは分散させた状態とすることが好ましい。このように、アレルゲン抑制化合物をダスト吸着用油剤中に溶解或いは分散させることによって、アレルゲン抑制化合物がダスト吸着用油剤を介して掃除用具の表面を容易に移動することが可能となり、アレルゲン抑制化合物とアレルゲンとを効率的に接触させることができ、アレルゲン抑制効果を向上させることができると共に、アレルゲン抑制化合物を掃除用具表面に容易に処理することができるようになり、掃除用具の製造を効率良く行うことができる。
【0096】
アレルゲン抑制化合物がダスト吸着用油剤中に分散している場合、アレルゲン抑制化合物の体積は、小さいと、ダスト吸着用油剤と共に掃除用具の内部に浸透してしまい、掃除用具のアレルゲン抑制効果が低減することがある一方、大きいと、アレルゲン抑制化合物の総表面積が小さくなって、アレルゲンとの接触面積が小さくなり、アレルゲン抑制効果が低下する虞れがあるので、5×10-4μm3 〜1×10-3mm3 が好ましく、6.5×10-2μm3 〜2.7×10-4mm3 がより好ましく、6.5×10-2μm3 〜3.5×10-5mm3 が特に好ましい。
【0097】
そして、アレルゲン抑制化合物がダスト吸着用油剤中に分散或いは溶解している場合、掃除用具の表面に存在しているアレルゲン抑制化合物の90重量%以上がダスト吸着用油剤中に含有されていることが好ましい。
【0098】
次に、本発明の掃除用具の製造方法について説明する。掃除用具の製造方法としては、特に限定されず、例えば、アレルゲン抑制化合物を分散或いは溶解させた処理液に掃除用具を浸漬した後、掃除用具に付着した溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0099】
又、アレルゲン抑制化合物がダスト吸着用油剤と共に掃除用具の表面に存在している場合には、掃除用具の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、水とダスト吸着用油剤とを攪拌混合してダスト吸着用油剤が水中に分散してなる分散水を作製して、この分散水中に非水溶性のアレルゲン抑制化合物を添加し、分散水中のダスト吸着用油剤中にアレルゲン抑制化合物を溶解或いは分散させてなるアレルゲン抑制化合物分散液を作製し、次に、このアレルゲン抑制化合物分散液中に掃除用具を浸漬した後、掃除用具に付着した水を除去する方法が挙げられる。
【0100】
上記掃除用具の製造方法において、アレルゲン抑制化合物分散液中に追込剤を分散して、ダスト吸着用油剤及びアレルゲン抑制化合物の水中中における分散状態を不安定にして掃除用具にダスト吸着用油剤及びアレルゲン抑制化合物が移行し易いようにすることが好ましい。
【0101】
なお、上記追込剤としては、例えば、酢酸などの酸、塩化カルシウムなどの無機塩などが挙げられる。
【0102】
上記方法の他に、特公平5−10935号公報、特開2004−283204号公報、特開2004−283208号公報に記載の方法を採用してもよい。
【実施例】
【0103】
(アレルゲン抑制化合物Aの製造)
アレルゲン抑制化合物としてポリ(4−ビニルフェノール)(丸善石油化学社製 商品名「マルカリンカーM」、重量平均分子量(Mw):5500)20重量部を6重量%の水酸化ナトリウム水溶液80重量部中に供給して完全に溶解させてポリ(4−ビニルフェノール)水溶液を作製した。このポリ(4−ビニルフェノール)水溶液にイオン交換水65重量部及び特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製 商品名「デモールSNB」)10重量部を加えて攪拌機(エム・テクニック社製 商品名「クリアミックスCLM−0.8S」)を用いて17000rpmの攪拌速度にて攪拌しながら、4.5重量%の塩酸(pH1)80重量部を徐々に供給してポリ(4−ビニルフェノール)を微粒子状に析出、分散させ、更に、4.5重量%の塩酸をポリ(4−ビニルフェノール)水溶液中に加えてpHが7.6となるように調整した後、ポリ(4−ビニルフェノール)水溶液を20000rpmの攪拌速度にて5分間に亘って攪拌して、ポリ(4−ビニルフェノール)粒子が分散してなる懸濁液Aを得た。なお、懸濁液A中のポリ(4−ビニルフェノール)粒子の濃度は、7.5重量%であり、又、ポリ(4−ビニルフェノール)粒子は球状であり、平均粒子径は3.3μmであった。
【0104】
(アレルゲン抑制化合物Bの製造)
アレルゲン抑制化合物としてポリ(4−ビニルフェノール)(丸善石油化学社製 商品名「マルカリンカーM」、重量平均分子量(Mw):5500)をエタノール中に溶解させて7.5重量%のポリ(4−ビニルフェノール)含有エタノール溶液Bを作製した。
【0105】
(アレルゲン抑制化合物Cの製造)
アレルゲン抑制化合物としてポリ(4−ビニルフェノール)(丸善石油化学社製 商品名「マルカリンカーM」、重量平均分子量(Mw):5500)15重量部、イオン交換水176重量部及びポリスチレンスルホン酸型高分子界面活性剤7重量部を混合して攪拌機(特殊幾化社製 商品名「ホモミクサーMARK II」)を用いて3、000rpmの攪拌速度にて10分間に亘って攪拌して懸濁液を得た。得られた懸濁液にダイユータンガム( CP Kelco U.S.Inc.製 商品名「ケルコクリート200」)2重量部を添加して溶解させて、ポリ(4−ビニルフェノール)粒子が分散してなる懸濁液Cを得た。なお、懸濁液C中のポリ(4−ビニルフェノール)粒子の濃度は、7.5重量%であり、又、ポリ(4−ビニルフェノール)粒子は球状であり、平均粒径130μmであった。
【0106】
(アレルゲン抑制化合物Dの製造)
アレルゲン抑制化合物としてフェノール樹脂(新日本石油化学社製 商品名「PP−700−300」、溶解度:1以下)25重量部、イオン交換水100重量部及び特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製 商品名「デモールSNB」)5重量部を混合して攪拌機(エム・テクニック株式会社製 商品名「クリアミックスCLM−0.8S」)を用いて攪拌速度20000rpmで60分間に亘って攪拌した後、更に、攪拌速度21500rpmで10分間に亘って撹拌して、水中に球状のフェノール樹脂粒子が分散してなる懸濁液Dを作製した。得られた懸濁液Dを室温にて30分間に亘って静置した後、懸濁液D中の沈殿物を除去した。なお、沈殿物の量は14.5重量部であった。懸濁液D中におけるフェノール樹脂粒子の濃度は9.1重量%であり、フェノール樹脂粒子の平均粒径は6.9μmであった。
【0107】
(アレルゲン抑制化合物Eの製造)
アレルゲン抑制化合物としてポリエーテルスルホン(スミカエクセル社製 商品名「4100P」、溶解度:1以下)20重量部、イオン交換水100重量部及びポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤(ライオン社製 商品名「ポリティーPS−1900」)5重量部を混合して攪拌機(エム・テクニック株式会社製 商品名「クリアミックスCLM−0.8S」)を用いて攪拌速度20000rpmで60分間に亘って攪拌した後、更に、攪拌速度21500rpmで10分間に亘って撹拌して、水中に球状のポリエーテルスルホン粒子が分散してなる懸濁液Eを作製した。得られた懸濁液Eを室温にて30分間に亘って静置した後、懸濁液E中の沈殿物を除去した。なお、沈殿物の量は8.5重量部であった。なお、懸濁液E中におけるポリエーテルスルホン粒子の濃度は9.9重量%であり、ポリエーテルスルホン粒子の平均粒径は9.5μmであった。
【0108】
(実施例1)
ポリ(4−ビニルフェノール)粒子を分散させてなる懸濁液A10重量部と、2重量%の特殊両性界面活性剤(北広ケミカル社製 商品名「TA−290」)水溶液10重量部と、イオン交換水20重量部とからなる処理液に、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬した。
【0109】
しかる後、布を処理液から取り出して布に付着した余分な水分を除去した後、布を60℃にて1時間に亘って乾燥して掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には粒子状のポリ(4−ビニルフェノール)が0.29g/m2 存在していた。
【0110】
又、上記とは別に、ポリ(4−ビニルフェノール)粒子を分散させてなる懸濁液Aを3倍に希釈してなる懸濁液A’を用意し、この懸濁液A’に、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬した。
【0111】
しかる後、布を処理液から取り出して布に付着した余分な水分を除去した後、布を60℃にて1時間に亘って乾燥して掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には粒子状のポリ(4−ビニルフェノール)が0.11g/m2 存在していた。
【0112】
(実施例2)
ポリ(4−ビニルフェノール)粒子含有エタノール溶液B10重量部と、エタノール30重量部とを攪拌混合してなる処理液に、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬した。
【0113】
しかる後、布を処理液から取り出して布に付着した余分な水分を除去した後、布を60℃にて1時間に亘って乾燥した。更に、2重量%の特殊両イオン界面活性剤(北広ケミカル社製 商品名「TA−290」)水溶液10重量部と、イオン交換水30重量部とを混合してなる処理液に上記布を浸漬した後、布を処理液から取り出して布に付着した余分な水分を除去した上で、布を60℃にて1時間に亘って乾燥して掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面にはポリ(4−ビニルフェノール)が0.18g/m2 存在していた。
【0114】
又、上記とは別に、ポリ(4−ビニルフェノール)粒子含有エタノール溶液Bを3倍に希釈してなるエタノール溶液B’と、エタノール30重量部とを攪拌混合してなる処理液を用意し、この処理液に、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬した。
【0115】
しかる後、布を処理液から取り出して布に付着した余分な水分を除去した後、布を60℃にて1時間に亘って乾燥した。更に、2重量%の特殊両イオン界面活性剤(北広ケミカル社製 商品名「TA−290」)水溶液10重量部と、イオン交換水30重量部とを混合してなる処理液に上記布を浸漬した後、布を処理液から取り出して布に付着した余分な水分を除去した上で、布を60℃にて1時間に亘って乾燥して掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面にはポリ(4−ビニルフェノール)が0.04g/m2 存在していた。
【0116】
懸濁液Bを3倍に希釈してなる懸濁液B’を用いて得られた掃除用具は、その表面にポリ(4−ビニルフェノール)が0.04g/m2 しか存在しておらず、比較例となるが、便宜上、表1及び明細書の実施例2において記載した。
【0117】
(実施例3)
懸濁液Aの代わりに、ポリ(4−ビニルフェノール)粒子を分散させてなる懸濁液Cを用いたこと以外は実施例1と同様の要領で、二種類の掃除用具を得た。なお、原液の懸濁液Cを用いて得られた掃除用具の表面には、粒子状のポリ(4−ビニルフェノール)が0.32g/m2 存在しており、3倍に希釈した懸濁液C’を用いて得られた掃除用具の表面には、粒子状のポリ(4−ビニルフェノール)が0.12g/m2 存在していた。
【0118】
(実施例4)
フェノール樹脂を分散させてなる懸濁液D10重量部と、2重量%の特殊両性界面活性剤(北広ケミカル社製 商品名「TA−290」)水溶液10重量部と、イオン交換水20重量部とを混合してなる処理液に、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬した。
【0119】
しかる後、布を処理液から取り出して布に付着した余分な水分を除去した後、布を60℃にて1時間に亘って乾燥して掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、粒子状のフェノール樹脂が0.40g/m2 存在していた。
【0120】
上記とは別に、懸濁液Dを3倍に希釈してなる懸濁液D’を用意し、この懸濁液D’と、2重量%の特殊両性界面活性剤(北広ケミカル社製 商品名「TA−290」)水溶液10重量部と、イオン交換水20重量部とを混合してなる処理液に、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬した。
【0121】
しかる後、布を処理液から取り出して布に付着した余分な水分を除去した後、布を60℃にて1時間に亘って乾燥して掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、粒子状のフェノール樹脂が0.12g/m2 存在していた。
【0122】
(実施例5)
懸濁液Dの代わりに、ポリエーテルスルホンを分散させてなる懸濁液Eを用いたこと以外は、実施例4と同様にして二種類の掃除用具を得た。なお、原液の懸濁液Eを用いて得られた掃除用具の表面には、粒子状のポリエーテルスルホンが0.35g/m2 存在しており、懸濁液Eを3倍に希釈した懸濁液E’を用いて得られた掃除用具の表面には、粒子状のポリエーテルスルホンが0.12g/m2 存在していた。
【0123】
(実施例6)
流動パラフィン95重量%、ポリオキシエチレンオレイルイミダゾリン1重量%、高級アルコールエーテルリン酸エステル1重量%、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル1.5重量%及びオレイン酸1.5重量%からなるダスト吸着用油剤(パラフィン系鉱物油)4重量部、ポリ(4−ビニルフェノール)を分散させてなる懸濁液Aを10倍に希釈してなる希釈液1重量部と、水95重量部とを混合してなる処理液200ミリリットルに、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬し、追込剤として35重量%の酢酸水溶液2ミリリットルを処理液に添加して、布にダスト吸着剤とアレルゲン抑制化合物を付着させ、布を60℃にて1時間に亘って乾燥させて掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、ポリ(4−ビニルフェノール)が0.47g/m2 存在していた。又、ポリ(4−ビニルフェノール)はダスト吸着用油剤中に粒子状に分散していた。
【0124】
(実施例7)
流動パラフィン95重量%、ポリオキシエチレンオレイルイミダゾリン1重量%、高級アルコールエーテルリン酸エステル1重量%、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル1.5重量%及びオレイン酸1.5重量%からなるダスト吸着用油剤(パラフィン系鉱物油)4重量部、水95重量部、並びに、アレルゲン抑制化合物としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製)1重量部からなる処理液200ミリリットルに、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬し、追込剤として35重量%の酢酸水溶液2ミリリットルを処理液に添加して、布にダスト吸着剤とポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを付着させた。なお、掃除用具の表面には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが0.49g/m2 存在していた。又、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムは、ダスト吸着剤中に溶解していた。
【0125】
(実施例8)
アレルゲン抑制化合物として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムの代わりにラウリル硫酸ナトリウム(花王社製)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、ラウリル硫酸ナトリウムが0.44g/m2 存在していた。又、ラウリル硫酸ナトリウムは、ダスト吸着剤中に溶解していた。
【0126】
(実施例9)
布の代わりにモップのモップコード糸を用いたこと以外は実施例6にして掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、ポリ(4−ビニルフェノール)が0.43g/m2 存在していた。又、ポリ(4−ビニルフェノール)はダスト吸着用油剤中に粒子状に分散していた。
【0127】
(実施例10)
布の代わりにモップのモップコード糸を用いたこと以外は実施例7にして掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが0.41g/m2 存在していた。又、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムはダスト吸着用油剤中に溶解していた。
【0128】
(実施例11)
懸濁液Aの代わりに懸濁液Dを用い、布の代わりにモップのモップコード糸を用いたこと以外は実施例6と同様にして掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、フェノール樹脂が0.61g/m2 存在していた。又、フェノール樹脂はダスト吸着用油剤中に粒子状に分散していた。
【0129】
(実施例12)
懸濁液Aの代わりに懸濁液Eを用いたこと、布の代わりにモップのモップコード糸を用いたこと以外は実施例6と同様にして掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、ポリエーテルスルホンが0.53g/m2 存在していた。又、ポリエーテルスルホンはダスト吸着用油剤中に粒子状に分散していた。
【0130】
(実施例13)
懸濁液Aの代わりに懸濁液Dを用いたこと以外は実施例6と同様にして掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、フェノール樹脂が0.46g/m2 存在していた。又、フェノール樹脂はダスト吸着用油剤中に粒子状に分散していた。
【0131】
(実施例14)
懸濁液Aの代わりに懸濁液Eを用いたこと以外は実施例6と同様にして掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、ポリエーテルスルホンが0.47g/m2 存在していた。又、ポリエーテルスルホンはダスト吸着用油剤中に粒子状に分散していた。
【0132】
(比較例1)
2重量%の特殊両性界面活性剤(北広ケミカル社製 商品名「TA−290」)水溶液10重量部とイオン交換水30重量部とからなる処理液に、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬した。
【0133】
しかる後、布を処理液から取り出して布に付着した余分な水分を除去した後、布を60℃にて1時間に亘って乾燥して掃除用具を得た。
【0134】
(比較例2)
ポリ(4−ビニルフェノール)を分散させてなる懸濁液A10重量部と、2重量%の特殊両性界面活性剤(北広ケミカル社製 商品名「TA−290」)水溶液10重量部と、イオン交換水20重量部とからなる処理液に、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を浸漬した後、綿布を処理液から取り出して余分な水分を除去した上で、綿布を60℃で1時間に亘って乾燥し処理布を作製した。なお、処理布の表面には、粒子状のポリ(4−ビニルフェノール)が0.21g/m2 存在していた。又、ポリ(4−ビニルフェノール)は綿布の表面に粒子状の形態にて存在していた。
【0135】
しかる後、別に綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を二枚用意し、この二枚の綿布間に上記処理布を挟んだ状態に重ね合わせて三枚の綿布を縫合一体化して掃除用具を得た。
【0136】
(比較例3)
水99重量%と、懸濁液Aを10倍に希釈した希釈液1重量%とからなる処理液200ミリリットルに、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬し、上記処理液に追込剤として35重量%の酢酸水溶液を2ミリリットル添加して、布の表面にポリ(4−ビニルフェノール)を付着させて掃除用具を得た。なお、掃除用具の表面には、粒子状のポリ(4−ビニルフェノール)が存在していたが、ポリ(4−ビニルフェール)の存在量は0.005g/m2 未満であった。
【0137】
(比較例4)
流動パラフィン95重量%、ポリオキシエチレンオレイルイミダゾリン1重量%、高級アルコールエーテルリン酸エステル1重量%、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル1.5重量%及びオレイン酸1.5重量%からなるダスト吸着用油剤(パラフィン系鉱物油)4重量%と、水96重量%とからなる処理液200ミリリットルに、綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を3枚重ねして縫合一体化してなる厚みが約0.7mmの布を浸漬し、追込剤として35重量%の酢酸水溶液を処理液に2ミリリットル添加して、布にダスト吸着用油剤を付着させて60℃で1時間に亘って乾燥して掃除用具を得た。
【0138】
(比較例5)
綿布の代わりにモップのモップコード糸を用いたこと以外は比較例4と同様にして掃除用具を得た。
【0139】
得られた掃除用具の表面に存在しているアレルゲン抑制化合物の量、平均粒径及び体積、掃除用具中に含有されているアレルゲン抑制化合物の量、アレルゲン抑制化合物のダスト吸着用油剤中における存在率、並びに、掃除用具のアレルゲン抑制効果及び掃除性能を下記の要領で測定し、その結果を表1〜3に示した。
【0140】
〔アレルゲン抑制効果〕
(チリゴミ法)
実施例1〜8、13、14及び比較例1〜4で作製された掃除用具から一辺が5cmの平面正方形状の試験片を切り出した。家庭内で採取したチリゴミ4mgを試験片に均一になるようにひろげ、25℃、相対湿度75%の高温高湿槽内で72時間放置した後、ダニアレルゲン測定キット「ダニスキャン」(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製)を用いて試験片のアレルゲン抑制効果を評価した。そして、ダニスキャンのテストライン(Tライン)発色度合いをコントロールライン(Cライン)の発色度合いと比較して下記の通り評価した。
判定基準
1・・・Tラインなし
2・・・Tラインが僅かに発色している
3・・・Tラインの発色がCラインより薄い
4・・・Tラインの発色がCラインより僅かに薄い
5・・・TラインとCラインが同程度の発色をしている
6・・・Cラインより濃くTラインが発色している
【0141】
(溶液法)
アレルゲンの冷結乾燥粉末(コスモ・バイオ社製 商品名「Mite Extract-Dp」) をタンパク量が10μg/ミリリットルになるようにリン酸バッファー(pH7.6)に溶解させてアレルゲン溶液を作製した。
【0142】
実施例1〜8、13、14及び比較例1〜4で作製された掃除用具から10cm2 の試験片を切り出すと共に、実施例9〜12、比較例5で作製された掃除用具からモップコード糸3本を試験片として切り出して試験管に入れた。この試験管にアレルゲン溶液3.5ミリリットルを添加して37℃で16時間に亘って振とうした。
【0143】
続いて、試験管内のアレルゲン溶液100マイクロリットルを屋内塵性ダニ簡易検査キット(シントーファイン社製 商品名「マイティーチェッカー」)に添加してアレルゲン抑制効果を評価した。そして、マイティーチェッカーのテストライン(Tライン)発色度合いを目視観察して下記の通り評価した。
【0144】
1・・・Tラインなし
2・・・Tラインが僅かに発色している
3・・・Tラインがうっすらと発色している
4・・・Tラインがハッキリと発色している
5・・・Tラインが濃く、太いハッキリと発色している
【0145】
(掃除性能)
縦50cm×横30cm×高さ20cmの直方体形状の箱内に、家庭で採取したチリゴミ100mgを入れて、箱内にチリゴミが均一に分散するように充分に振り、1時間に亘って静置した後、実施例1、6及び比較例1、4で作製された掃除用具を用いて、箱の内面全てを1度づつ拭き取った。
【0146】
次に、掃除用具を25℃、相対湿度75%の高温高湿槽内に72時間に亘って放置した後、ダニアレルゲン測定キット「ダニスキャン」(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製)を用いて掃除用具のアレルゲン抑制効果を上述のアレルゲン抑制効果のチリゴミ法と同様の要領で評価し、表3の「掃除用具」の欄に記載した。
【0147】
又、箱内に残ったチリコミを掃除機で回収し、リン酸バッファー(pH7.6)5ミリリットルを用いてアレルゲンを抽出し、抽出液100マイクロリットルを屋内塵性ダニ簡易検査キット(シントーファイン社製 商品名「マイティーチェッカー」)に添加してアレルゲン抑制効果を上述のアレルゲン抑制効果の溶液法に示した基準に準拠して評価し、表3の「箱内」の欄に記載した。
【0148】
〔アレルゲン抑制化合物の平均粒径〕
動的光散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製 商品名「LA−910」)を用いて、攪拌3、循環3、超音波なしの条件で、粒子径基準を体積とした表示条件でアレルゲン抑制化合物の平均粒径を測定し、更に、アレルゲン抑制化合物が真球状であるとして、アレルゲン抑制化合物の体積を上記平均粒径に基づいて算出した。
【0149】
〔アレルゲン抑制化合物の掃除用具表面における存在量〕
実施例1〜14及び比較例2、3で得られた掃除用具を5個づつ用意した。各掃除用具の表面全面に粘着テープを貼付し、この粘着テープ上に質量2kgのローラを速度5mm/秒でもって2往復させた。しかる後、上記粘着テープを掃除用具の表面から剥離した。
【0150】
更に、新しい粘着テープを用意し、この粘着テープを用いて同一の掃除用具について上記手順を2回づつ繰返して行った。なお、上記3回の手順においては全て、新しい粘着テープを用いた。
【0151】
しかる後、3回の工程で用いられた粘着テープに付着したアレルゲン抑制化合物の総量を溶剤又は水を用いて抽出、測定した。なお、粘着テープとしては、JIS Z0237に準拠した測定方法による粘着力が2.0N/cmであるものを用いる。
【0152】
次に、各掃除用具について測定されたアレルゲン抑制化合物の総量の相加平均値をアレルゲン抑制化合物の表面存在量(g)とし、各掃除用具の表面積の相加平均値を平均表面積(m2 )として下記式に基づいて表面付着量を算出した。
表面付着量(g/m2 )=アレルゲン抑制化合物の表面存在量(g)/平均表面積(m2
【0153】
〔掃除用具中に含有されているアレルゲン抑制化合物の量〕
掃除用具を5個づつ用意し、各掃除用具中に含有されているアレルゲン抑制化合物を溶剤又は水を用いて抽出して掃除用具中に含有されているアレルゲン抑制化合物の量を測定した。
【0154】
次に、各掃除用具について測定されたアレルゲン抑制化合物の量の相加平均値をアレルゲン抑制化合物の含有量(g)とし、各掃除用具の表面積の相加平均値を平均表面積(m2 )として下記式に基づいて付着量を算出した。
付着量(g/m2 )=アレルゲン抑制化合物の含有量(g)/平均表面積(m2
【0155】
そして、下記式に基づいて表面付着率(%)を算出した。
表面付着率(%)=100×表面付着量(g/m2 )/付着量(g/m2
【0156】
〔アレルゲン抑制化合物のダスト吸着用油剤中における存在率〕
実施例6〜14において、掃除用具を、アレルゲン抑制化合物を溶解せず且つダスト吸着用油剤を溶解する疎水溶液を用いて、ダスト吸着用油剤を抽出した。この抽出したダスト吸着用油剤中に含まれているアレルゲン抑制化合物の量を測定した。
【0157】
そして、アレルゲン抑制化合物のダスト吸着用油剤中における存在率を下記式に基づいて算出した。なお、表2では単に「油剤中の存在率」と表記した。なお、アレルゲン抑制化合物はダスト吸着用油剤中に掃除用具の部位にかかわらず略同一割合で含有されていることから、このアレルゲン抑制化合物のダスト吸着用油剤中における存在率と、掃除用具の表面に存在しているアレルゲン抑制化合物のうち、ダスト吸着用油剤中に含有されているアレルゲン抑制化合物の百分率とは、同一視することができる。
アレルゲン抑制化合物のダスト吸着用油剤中における存在率(%)
=100×ダスト吸着用油剤中に含まれているアレルゲン抑制化合物の量
/掃除用具中に含有されているアレルゲン抑制化合物の量
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃除用具の表面にアレルゲン抑制化合物を0.05〜20g/m2 存在させていることを特徴とする掃除用具。
【請求項2】
掃除用具の表面にアレルゲン抑制化合物及びダスト吸着用油剤が存在することを特徴とする請求項1に記載の掃除用具。
【請求項3】
ダスト吸着用油剤中にアレルゲン抑制化合物が溶解していることを特徴とする請求項2に記載の掃除用具。
【請求項4】
ダスト吸着用油剤中にアレルゲン抑制化合物が分散していることを特徴とする請求項2に記載の掃除用具。
【請求項5】
アレルゲン抑制化合物が、体積が5×10-4μm3 〜1×10-3mm3 の粒子状であることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項4に記載の掃除用具。
【請求項6】
アレルゲン抑制化合物が非水溶性化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の掃除用具。
【請求項7】
アレルゲン抑制化合物が非水溶性有機化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の掃除用具。
【請求項8】
掃除用具が室内用であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の掃除用具。
【請求項9】
掃除用具がモップであって、モップのモップコード糸の表面にアレルゲン抑制化合物を存在させていることを特徴とする請求項1に記載の掃除用具。
【請求項10】
掃除用具が不織布又は織布であって、この不織布の表面にアレルゲン抑制化合物を存在させていることを特徴とする請求項1に記載の掃除用具。