説明

排ガス冷却塔のダスト付着防止構造

【課題】ガス流通管内でのダストの付着を効果的に防止して、大掛かりな機器を使用する、あるいは作業員の作業負担が大きいダスト除去作業を不要とした排ガス冷却塔のダスト付着防止構造を提供する。
【解決手段】排ガスを流通させるガス流通管2を複数並設し、これらガス流通管2の外周に冷媒を流通させた排ガス冷却塔において、ガス流通管2の流入口21をガス流入側に向けてテーパ状に拡開させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス冷却塔のダスト付着防止構造に関し、特に、排ガスが流通するガス流通管の外周を冷媒で冷却する間接冷却式の排ガス冷却塔におけるダスト付着防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼電気炉の排ガス冷却塔として、排ガスが流通するガス流通管の外周に水等の冷媒を流通させて排ガスを冷却する間接冷却式の冷却塔が使用されることがある。これは、排ガスを空気希釈したり、排ガスに水をスプレーをする、いわゆる直接冷却式に比して、排ガス系の容量を大きく増大させることがない点で有利である。そしてこの場合、冷却効率を上げるためにガス流通管を複数並設して、これらガス流通管に排ガスを分流させ、各ガス流通管の外周に冷却水を流通させて、排ガスと冷却水の熱交換によって排ガスを冷却している。
【0003】
なお、特許文献1には、複数並設した伝熱管の内部に冷却空気を流通させて、伝熱管の外周を流通する排ガスを冷却する構造とした間接冷却式排ガス冷却塔が示されており、ここでは伝熱管の側面に沿って揺動する縦スクレーパと横スクレーパとで、伝熱管外周に付着したダストを払い落としている。
【0004】
ところで、ガス流通管内に排ガスを流通させる構造の排ガス冷却塔では、ダストがガス流通管内に付着するため、上記特許文献で示されたような縦スクレーパと横スクレーパで伝熱管外周の付着ダストを除去する機構は採用することができない。そこで、従来は、ダスト除去が必要な都度、操業を停止し、高圧ジェット水をガス流通管内へ上方から噴射して付着ダストを下方へ洗い流し、あるいは作業員がワイヤブラシをガス流通管内へ挿入して付着ダストを掻き落とす等の方法で付着ダストの除去を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−130586
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、高圧ジェット水を使用するダスト除去はジェット水の供給やジェット水とともに排出されるダストの捕集に大掛かりな機器を必要とするという問題があり、また付着ダストを掻き落とす方法では作業員の作業負担が大きいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、ガス流通管内でのダストの付着を効果的に防止して、大掛かりな機器を使用する、あるいは作業員の作業負担が大きいダスト除去作業を不要とした排ガス冷却塔のダスト付着防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明はガス流通管内でのダスト付着はその流入口部分において大部分が生じ、ガス流通管の中間部では殆ど生じない、という発明者の知見に基づいてなされたものである。すなわち本第1発明では、排ガスを流通させるガス流通管(2)を複数並設し、これらガス流通管(2)の外周に冷媒を流通させた排ガス冷却塔において、ガス流通管(2)の流入口(21)をガス流入側に向けてテーパ状に拡開させる。
【0009】
本第1発明によれば、流入口をガス流入側の上方へ向けてテーパ状に拡開させているからこの部分で排ガスが渦を生じて滞留することはなく、これにより排ガス流通管内でのダストの付着が防止される。
【0010】
本第2発明はガス流通管内でのダスト付着はその流入口部分の次に流出口部分が多い、という発明者の知見に基づいてなされたものである。すなわち本第2発明では、前記ガス流通管(2)の流出口(22)をガス流出側に向けてテーパ状に拡開させる。本第2発明においては、流出口をガス流出側の下方へ向けてテーパ状に拡開させたからこの部分で排ガスが渦を生じて滞留することはなく、これによりガス流通管内でのダストの付着が防止される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、ガス流通管内でのダストの付着を効果的に防止できるから、従来のような大掛かりな機器を使用し、あるいは作業員の作業負担が大きいダストの除去作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における排ガス冷却塔の全体縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った排ガス冷却塔の全体縦断面図である。
【図3】ガス流通管の流入口側の拡大断面図である。
【図4】ガス流通管の流出口側の拡大断面図である。
【図5】従来のガス流通管の流入口側の拡大断面図である。
【図6】従来のガス流通管の流出口側の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には排ガス冷却塔の全体縦断面図を示し、図2にはその横断面図を示す。排ガス冷却塔は起立した円筒状のハウジング1を備えており、当該ハウジング1は上端部が水平な隔板11によって区画されて、ガス流入室13となっている。ハウジング1の下端部はやや下方へ湾曲する水平な隔板12によって区画されて、下方へ漸次縮径するガス流出室14となっている。ガス流入室13にはその周壁の一箇所にガス流入口15が開口している。また、ガス流出室14にはその周壁の一箇所にガス流出口16が開口している。さらに、ガス流出室14の下端にはダスト排出用のスクリューコンベア17の一端が位置している。
【0014】
上下の隔壁11,12によって区画形成されたハウジング1内の冷却室18には多数のガス流通管2が上下方向へ並設してあり、各ガス流通管2の上端は隔板11を貫通してガス流入室13に開口し流入口21となっている。また、各ガス流通管2の下端は隔板12を貫通してガス流出室14に開口し流出口22となっている。
【0015】
これらガス流通管2は図2に示すように、ハウジング1の中心軸Xに対して同心状に配置されている。電気炉等から排出された排ガスは、ガス流入室13に流入し、ここから各ガス流通管2の流入口21を経て当該流通管2内を下方へ流れ、流出口22からガス流出室14に至ってガス流出口16から後段のフィルタ装置へ流出させられる。
【0016】
ここで、各ガス流通管2の上端部に形成された流入口21は、図3に示すように、ガス流入側の上方へ向けてテーパ状に漸次拡開させてある。また、各ガス流通管2の下端部に形成された流出口22は、図4に示すように、ガス流出側の下方へ向けてテーパ状に漸次拡開させてある。
【0017】
ハウジング1の下端部外周にはそのほぼ全周を囲むようにヘッダ管3が配設してある(図2)。ヘッダ管3の給水口31からその管内へ供給された冷媒としての冷却水は、ヘッダ管3の周方向の複数位置で分岐された枝管32を通って冷却室18内へ供給される。冷却室18内へ供給された冷却水はガス流通管2の間の間隙を通って上方へ流通し、この間にガス流通管2内を流通する排ガスと熱交換してこれを冷却する。
【0018】
ハウジング1の上端部外周には、ガス流入口15の部分を除いた範囲に上方開放の集水槽4(図1)が設けられており、冷却室18内を上方へ流通した冷却水は周方向の適宜位置に設けられた枝管41(うち一つを図1に示す)を経て集水槽4内へ流入させられるとともに、集水槽4の複数箇所に設けた排水口(図示略)から流出させられる。
【0019】
従来の排ガス冷却塔のガス流通管でダストが付着する理由は、発明者の知見によれば、図5の矢印で示すように、ガス流通管2´の流入口23側でガス流入室13から相対的に細径のガス流通管2´へ流入する排ガスが、流入口23の開口部で一部渦を生じて滞留することにより当該流入口23内にダストDが付着する。また、流出口24側では、図6の矢印で示すように、相対的に細径のガス流通管2´からガス流出室14へ流出する排ガスが、流出口24の開口部で渦を生じて滞留することによりダストDが当該流出口24内に付着する。
【0020】
これに対して本実施形態では、ガス流通管2の流入口21はガス流入側の上方へ向けてテーパ状に漸次拡開させてあり(図3)、また、流出口22はガス流出側の下方へ向けてテーパ状に漸次拡開させてある(図4)。これにより、流入口21および流出口22のいずれにおいても排ガスは円滑に流通して(各図の矢印)渦を生じ滞留することはなく、これによりガス流通管2内でのダストの付着が回避される。なお、ダストの付着は流出口22に比して流入口21において甚だしいから、流入口21のみをテーパ状に拡開させるだけでも従来に比して十分な効果が得られる。
【符号の説明】
【0021】
2…ガス流通管、21…流入口、22…流出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを流通させるガス流通管を複数並設し、これらガス流通管の外周に冷媒を流通させた排ガス冷却塔において、ガス流通管の流入口をガス流入側に向けてテーパ状に拡開させたことを特徴とする排ガス冷却塔のダスト付着防止構造。
【請求項2】
前記ガス流通管の流出口をガス流出側に向けてテーパ状に拡開させた請求項1に記載の排ガス冷却塔のダスト付着防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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