説明

排ガス冷却装置

【課題】短い運転停止期間で、ダストが付着・堆積した装置をダストの無い装置とすることができる排ガス冷却装置を提供することを課題とする。
【解決手段】排ガスを冷却するための排ガス冷却装置3であって、その下部3aを、分割可能に構成するようにし、これによって、ダストの無い下部3bとの交換を可能とする。その結果、短い運転停止期間で、ダストが付着・堆積した下部3aをダストの無い下部3bとする排ガス冷却装置3を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスを冷却する排ガス冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却炉等からの排ガスを冷却する装置として、排ガスを上部から下向流で導入し当該排ガスを水噴霧により冷却してその下部から後段に排出する減温塔(急冷塔とも称す)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−83346号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記減温塔にあっては、排ガスに随伴されるダストが装置下部(底部)に落下して付着し堆積してしまうという問題があり、特に、ダストが水噴霧により水分を吸収し付着性が高くなることから、その傾向は顕著となる。従って、焼却炉等を含む設備の運転を停止し作業者によりダストを除去するダスト除去作業が必要となる。
【0004】
ここで、作業者によるダスト除去作業にあっては、作業者が減温塔内に入れる温度まで冷やすことが必要であると共に、ダイオキシン対策等が必要であることから、設備の運転停止期間が長く、例えば、(4日間/回)×(4回/年)=16日/年も停めなくてはならない。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、短い運転停止期間で、ダストが堆積した装置をダストの無い装置とすることができる排ガス冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による排ガス冷却装置は、排ガスを冷却する排ガス冷却装置において、その下部が分割可能に構成されていることを特徴としている。
【0007】
このような排ガス冷却装置によれば、その下部が分割可能に構成されているため、ダストの無い下部との交換が可能とされ、従って、短い運転停止期間で、ダストが堆積した下部をダストの無い下部とすることができる。
【0008】
ここで、排ガスを水噴霧により冷却する構成であると、ダストが水噴霧により水分を吸収し付着性が高くなることから、その適用が効果的である。
【0009】
また、具体的には、下部に対する交換用の下部を有し、これらの下部が走行可能に構成され、走行により交換可能とされているのが好ましい。このような構成を採用した場合、設備の運転を停止して行う交換作業が容易とされて短時間で実施され、設備の運転を直ちに再開できる。そして、今回外した下部を次回の交換用の下部とする場合には、設備の運転中にそのダスト除去作業を十分に実施することが可能とされ、また、今回外した下部に代えて新規(新品)の下部を次回の交換用の下部とする場合には、設備の運転中にその交換作業を実施することが可能とされる。従って、短い運転停止期間で、ダストが堆積した下部をダストの無い下部とすることができる。
【0010】
また、下部は、装置を構成する作業位置と、第一の退避位置又は第二の退避位置の何れか一方の位置とに走行により移動可能とされ、交換用の下部は、第一の退避位置又は第二の退避位置の他方の位置と、作業位置とに走行により移動可能とされる構成であると、その交換作業が一層容易とされて一層短時間で実施され、運転停止期間を一層短くできる。
【0011】
また、第一の退避位置と第二の退避位置との間に作業位置が位置する構成であると、その交換作業が一層容易とされて一層短時間で実施され、運転停止期間を一層短くできると共に、装置の省スペース化が図られる。
【0012】
また、下部及び交換用の下部には、排ガスを後段に流すためのダクトが接続されていると、下部に接続されてダストが堆積するダクトも、下部と共にダスト除去済み又は新規なダクトと交換可能とされ、従って、上記短い運転停止期間で、ダストの無いダクトとすることができる。
【0013】
また、下部は、分割位置を複数備えていると、例えばダストの堆積等に応じて、分割位置を選択して交換できる。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、短い運転停止期間で、ダストが堆積した装置をダストの無い装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による排ガス処理装置の好適な実施形態について図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る排ガス処理装置を備えた設備を示す側面図、図2は、排ガス処理装置の下部及びその周辺を示す背面図、図3は、図2の平面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の排ガス処理設備100は、例えば廃棄物等の被処理物を燃焼するための燃焼装置としてのロータリーキルン1と、このロータリーキルン1の出口側となる後端部が回転可能に挿入された二次燃焼塔2と、この二次燃焼塔2からの排ガスを冷却するための減温塔(排ガス冷却装置)3と、この減温塔3からの排ガス中のダストを除去するためのバグフィルタ4と、を具備し、さらに、ロータリーキルン1からの排ガスを上記各種排ガス処理装置3,4を通して下流側に導くべく、二次燃焼塔2の上部の排ガス出口部と減温塔3の上部の排ガス入口部とを接続する排ガスダクトD1と、減温塔3の下部の排ガス出口部とバグフィルタ4の排ガス入口部とを接続する排ガスダクトD2と、を備えている。
【0017】
なお、ここでは、燃焼装置をロータリーキルンとしているが、例えば他の焼却炉、溶融炉、還元炉等であっても良い。また、バグフィルタ4の後段には、必要に応じて種々の排ガス処理装置が接続される。
【0018】
そして、減温塔3は、二次燃焼塔2の後方(背面側;図の右側)に位置し、バグフィルタ4は、減温塔3の後方に位置する配置構成とされ、二次燃焼塔2及び減温塔3等は、図1に仮想線で示す支持枠(建屋枠)5に支持されて立設した状態とされている。
【0019】
ここで、減温塔3は、上下端が閉じられた円筒状に構成されると共に、上部内に水噴霧ノズル(不図示)を備え、当該水噴霧ノズルから水噴霧を行うことによって、二次燃焼塔2から導入された排ガスを冷却する。この減温塔3は、その下部3aが、図1〜図3に示すように、これより上部の円筒状に続く有底円筒状に構成され、図2に示すように、底部下の中央に立設されてその出力軸が底部内に進入した縦型電動機8の駆動により、底部内に配設されたスクレーパ(不図示)が回転し、底部上に落下したダストを外周側に掻き寄せ、底部の外周側に設けられた排出口(不図示)、底部下に連設されたダブルダンパ9を介して外部に排出する構成とされている。
【0020】
特に本実施形態の減温塔3は、図1及び図2に示すように、その下部3aが分割可能に構成されている。具体的には、排ガスダクトD2との接続部より上方の近傍位置が分割位置Eとされ、この分割位置Eより下側の下部3aが、これより上部側の本体部3mに対して分割可能とされている。この下部3aは、車輪6a及び作業用の足場6bを有し走行可能な架台6に搭載されている。そして、この下部3aが本体部3mに連結された状態(運転時の状態)を、図2及び図3に示すように、作業位置CCに位置している状態と呼ぶ。なお、減温塔3の下部3aとバグフィルタ4とを接続する排ガスダクトD2における上記下部3aに対する接続部位のダクトD2Aは、これより下流側の排ガスダクトに対して分割可能とされている。
【0021】
一方、支持枠5には、二次燃焼塔2と減温塔3の並設方向(図2の紙面垂直方向)に対して直交し水平方向に延びる一対のレール7,7が、上記架台6の車輪6aに対応するものとして架設されている。この一対のレール7,7は、上記下部3aの下方に位置すると共に、この下部3aの下方位置を中心として両端側(図2及び図3の左右方向)に均等に延びるように配設されている。
【0022】
そして、この一対のレール7,7に上記架台6の車輪6a,6aが乗ることで当該架台6が走行可能とされ、下部3aは一対のレール7,7に案内されて当該レール7,7の架設方向(延在方向)に移動可能とされている。
【0023】
また、本実施形態の減温塔3にあっては、車輪6a、足場6b付きの架台6及びこの架台6に搭載された下部3aと同様な構成の車輪16a、足場16b付きの交換用の架台16及びこの架台16に搭載された交換用の下部3bが付設されている。なお、交換用の下部3bには、下部3aに接続される接続ダクトD2Aと同様な接続ダクトD2Bが接続されている。
【0024】
そして、交換用の下部3bは、ここでは、上記作業位置CCからレール7,7に沿って一方側(図2及び図3の左側)に離間する第一の退避位置CLに位置する構成とされている。
【0025】
なお、詳しくは後述するが、交換用の下部3bを、レール7,7に沿って他方側(図2及び図3の右側)に離間すると共に第一の退避位置CLとにより作業位置CCを間に挟む第二の退避位置CRに位置するように構成しても良い。
【0026】
また、本実施形態の排ガス処理設備100は、図1に示すように、二次燃焼塔2と排ガスダクトD2(上記接続ダクトD2Aより下流側の部分)とを接続するバイパスダクトBDを備えている。このバイパスダクトBDは、その入口側及び出口側にダンパ(不図示)を各々有している。そして、これらのダンパは、運転時にあっては閉とされ、排ガスがバイパスダクトBD側へバイパスしない構成とされている。
【0027】
このように構成された排ガス処理設備100によれば、ロータリーキルン1内に供給された廃棄物等の被処理物は、当該キルン1の回転に従い入口側から出口側(図示右側)へ搬送され、この間に熱が与えられて燃焼する。このとき生じる排ガスは、下流側のファン(不図示)により下流側に吸引され、ダストを随伴しながら、二次燃焼を行う二次燃焼塔2、排ガスダクトD1を介して減温塔3に導入される。そして、この減温塔3では、上部から下部へ向かう排ガスの下向流に対して、その上部において水噴霧が実施されて排ガスが冷却され、減温された排ガスは、排ガスダクトD2を介してバグフィルタ4に導入され、排ガス中のダストが捕捉されて除去される。
【0028】
ここで、上記運転を継続していくと、特に減温塔3の底部にダストが付着し堆積していき、スクレーパでは排除ができなくなるため、本実施形態の減温塔3では、作業位置CCに位置している下部3aを、第一の退避位置CLに位置している交換用の下部3bと交換する。
【0029】
具体的には、先ず、ロータリーキルン1を含む設備の運転を停止し、次いで、バイパスダクトBDの入口側及び出口側のダンパを各々開とする。すると、減温塔3より上流側の二次燃焼塔2側の熱気が、前述した下流側のファンにより下流側に吸引されてバイパスダクトBDを通り、交換を行う下部3aに向かわないように逃がされるため、交換作業の開始が早められる。
【0030】
そして、作業者は、作業位置CCに位置している下部3aを、本体部3mから分離する(連結を解除する)と共に、接続ダクトD2Aをこれより下流側の排ガスダクトに対して分離し、例えばチェーンブロック等の工具を用い架台6をレール7,7に沿って引っ張り走行させることで、図2及び図3に一点鎖線で示す第二の退避位置CRに移動させる。
【0031】
次いで、作業者は、第一の退避位置CLに待機している交換用の下部3bを、下部3aの場合と同様に、例えばチェーンブロック等の工具を用い架台16をレール7,7に沿って引っ張り走行させることで、作業位置CCに移動させる。その後、作業者は、交換用の下部3bを本体部3mに対して連結すると共に、接続ダクトD2Bをこれより下流側の排ガスダクトに対して連結し、交換作業を完了とする。
【0032】
なお、交換用の下部3bを、第二の退避位置CRに待機させている場合には、作業位置CCに位置している下部3aを、第一の退避位置CLに移動させ、その後、第二の退避位置CRの交換用の下部3bを、作業位置CCに移動させれば良い。
【0033】
また、ここでは、例えばチェーンブロック等の工具を用い作業者の作業により架台6及び下部3a、架台16及び下部3bを走行させるようにしているが、自動化して走行させることも勿論可能である。また、例えば下部3a,3b同士(架台6,16同士)を連結し、一緒に走行させて移動させるようにしても良い。
【0034】
そして、このようにして交換作業が完了したら、バイパスダクトBDの入口側及び出口側のダンパを各々閉とし、その後、ロータリーキルン1を含む設備の運転を再開する。
【0035】
一方、再開した運転と並行して(運転中に)、作業者は以下の作業を行う。すなわち、今回本体部3mから外した下部3aを次回の交換用の下部とする場合には、移動させた退避位置において、下部3aに対してダスト除去作業を行う。このようにダスト除去作業は、運転と並行して行われるため、十分な実施が可能である。
【0036】
また、今回本体部3mから外した下部3aに代えて新規(新品)の下部を次回の交換用の下部とする場合には、移動させた退避位置において、設備の運転中にその交換作業を行う。
【0037】
このように、本実施形態においては、減温塔3のその下部3aが分割可能に構成されているため、ダストの無い下部3bとの交換が可能とされ、従って、短い運転停止期間で、ダストが堆積した下部3aをダストの無い下部3bとすることができる。
【0038】
また、下部3a及び交換用の下部3bが共に走行可能に構成され、走行により交換可能とされるため、設備の運転を停止して行う交換作業が容易とされて短時間で実施され、設備の運転を直ちに再開できる一方で、再開した運転中に、交換した下部3aのダスト除去作業や新規下部への交換作業を並行して実施でき、その結果、短い運転停止期間で、ダストが堆積した下部3aをダストの無い下部3bとすることができる。
【0039】
また、下部3aが、作業位置CCと、第一の退避位置CL又は第二の退避位置CRの何れか一方の位置とに走行により移動し、交換用の下部3bが、第一の退避位置CL又は第二の退避位置CRの他方の位置と、作業位置CCとに走行により移動するため、その交換作業が一層容易とされて一層短時間で実施され、運転停止期間を一層短くできる。
【0040】
また、第一の退避位置CLと第二の退避位置CRとの間に作業位置CCが位置しているため、その交換作業が一層容易とされて一層短時間で実施され、運転停止期間を一層短くできると共に、装置の省スペース化が図られている。
【0041】
さらに、下部3a、交換用の下部3bには、排ガスを後段に流すための接続ダクトD2A,D2Bが各々接続されているため、下部3aとの接続によりダストが堆積する接続ダクトD2Aも、下部3aと共にダスト除去済み又は新規なダクトD2Bと交換され、従って、上記短い運転停止期間で、ダストの無い接続ダクトD2Bとすることができる。
【0042】
因みに、下部3a,3b同士を走行により交換する場合には、設備の運転停止期間が、(1日間/回)×(4回/年)=4日/年となり、16日/年の従来の1/4となる。
【0043】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、減温塔3の下部の形状を有底円筒状としているが、勿論これに限定されるものではなく、例えば円錐や四角錐等を逆さにした形状等であっても良い。
【0044】
また、上記実施形態においては、下部3a,3bが、架台6,16を介してレール7,7を走行する構成としているが、モノレールのように懸吊されて走行する構成でも良い。
【0045】
また、上記実施形態においては、接続ダクトD2Aのダストも無くすことができるとして、分割位置を、接続ダクトD2Aとの接続部より上方の近傍位置Eとしているが、例えば、図2に示すように、接続ダクトD2Aより下方の分割位置Fとすることも可能である。また、分割位置を複数備えていると、ダストの堆積等に応じて、分割位置を選択して交換できる。さらに、下部が、接続ダクトD2Aとの接続部より上方及び下方の両方に分割位置E,Fを備えていると、接続ダクトD2Aのダストの堆積等に応じて、接続ダクトD2Aを含む下部又は接続ダクトD2Aを含まない下部を選択して交換できることになる。
【0046】
また、排ガスを水噴霧により冷却する構成であると、ダストが水噴霧により水分を吸収し付着性が高くなることから、その適用が効果的であるとして、減温塔3に対する適用を述べているが、例えばボイラ等の下部に対しても適用でき、要は、ダストが下部に付着する傾向がある排ガス冷却装置に対して適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る排ガス処理装置を備えた設備を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る排ガス処理装置の下部及びその周辺を示す背面図である。
【図3】図2の平面図である。
【符号の説明】
【0048】
3…減温塔(排ガス冷却装置)、3a…下部、3b…交換用の下部、6,16…架台、6a,16a…車輪、7…レール、CC…作業位置、CL…第一の退避位置、CR…第二の退避位置、D2A…接続ダクト、D2B…交換用の接続ダクト、E,F…分割位置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを冷却する排ガス冷却装置において、
その下部が分割可能に構成されていることを特徴とする排ガス冷却装置。
【請求項2】
前記排ガスを水噴霧により冷却することを特徴とする請求項1記載の排ガス冷却装置。
【請求項3】
前記下部に対する交換用の下部を有し、
これらの下部が走行可能に構成され、走行により交換可能とされていることを特徴とする請求項1又は2記載の排ガス冷却装置。
【請求項4】
前記下部は、装置を構成する作業位置と、第一の退避位置又は第二の退避位置の何れか一方の位置とに走行により移動可能とされ、
前記交換用の下部は、前記第一の退避位置又は前記第二の退避位置の他方の位置と、前記作業位置とに走行により移動可能とされることを特徴とする請求項3記載の排ガス冷却装置。
【請求項5】
前記第一の退避位置と前記第二の退避位置との間に前記作業位置が位置することを特徴とする請求項4記載の排ガス冷却装置。
【請求項6】
前記下部及び前記交換用の下部には、排ガスを後段に流すためのダクトが接続されていることを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の排ガス冷却装置。
【請求項7】
前記下部は、分割位置を複数備えることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の排ガス冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−186099(P2009−186099A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26783(P2008−26783)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(595131374)大阪製鐵株式会社 (17)
【Fターム(参考)】